労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  東京カンテイ 
事件番号  東京高裁平成16年(行コ)第233号 
控訴人  株式会社東京カンテイ 
被控訴人  東京都地方労働委員会 
申立人補助参加人  情報産業労働組合連合会 
申立人補助参加人  情報労連・東京カンテイ労働組合 
判決年月日  平成16年10月27日 
判決区分  控訴の棄却 
重要度   
事件概要  本件は、(1)会社役員らが全従業員と個別面談を行い、組合加入の 有無の確認や慎重な行動を求める旨の発言を行ったこと、(2)会社創業者が組合非難等の発言を行ったこと、(3)会社が労働 協約、便宜供与、賞与、賃金改定等に関する団体交渉に誠実に応じなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件であ る。東京地労委は、会社に対し、(1)組合の上部団体への加入非難、組合の解散、組合からの脱退を勧奨するなどしての支配介 入の禁止、(2)誠実団体交渉応諾、(3)文書手交を命じ、その余の申立てを棄却したところ、これを不服として会社が行政訴 訟を提起した。東京地裁は、会社の請求を棄却した。会社はこれを不服として、東京高裁に控訴したが、同高裁は控訴を棄却し た。 
判決主文  本件控訴を棄却する。
控訴費用は、控訴人の負担とする。
判決の要旨  2620 反組合的言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
2622 組合員調査
会社役員ら幹部は、組合結成通知の翌日、緊急の幹部会を開いて対応を協議し、従業員を対象として個別面談を行い、組合加入の 有無についての確認や、慎重な行動を求める旨の発言を行った事実が認められ、組合役員以外の構成員を明らかにしていない組合 にとって、会社役員による当該行為は、組合員に対し強度の精神的圧迫を加える結果となることは明らかであって、使用者による 組合の結成・運営に対する干渉行為であるとともに、組合を弱体化させる行為として、労組法7条3号の支配介入に該当するとし た原判決が相当であるとされた例。

2620 反組合的言動
2625 非組合員化の言動
3422 その他の者の言動
Y1は会社の創業者として創業以来約20年もの間、会社の代表取締役を務め、組合結成の前年の平成11年10月に代表取締役 を退任した後も、親族や支配会社の持ち分も含め会社株式の過半数を保有し、月1回の幹部会にも出席して議長役を務めるなどし ており、本件救済申立て時においても会社に対する多大な影響力を保持していたものと推認される上、組合構成の通知を受けた直 後にY1が主体となって対応が協議されており、Y1の組合役員らに対する発言においても、組合や上部団体に対する嫌悪の情を 露わにし、その活動を誹謗中傷するような内容を繰り返し述べ、さらには、自らの会社に対する影響力を背景に、組合役員らに対 し、組合を解散し上部団体と縁を切らなければ、不利益な処分をする旨の発言をした事実が認められ、本件救済申し立て後におい ても同趣旨の発言が繰り返されていることからすれば、一連のY1の発言は、組合解散・弱体化を企図する目的で、組合の結成・ 運営に対する会社による干渉行為としてなされたと評価し得ることは明らかであり、労組法7条3号の支配介入に該当するとした 原判決が相当であるとされた例。

2240 説明・説得の程度
2249 その他使用者の態度
4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
会社は、組合からの団体交渉申入れに対し、組合結成から本件命令時まで多数回の団体交渉要求に応じているが、団体交渉におけ る実際の会社の対応は、一切の譲歩をせず、必要な資料の提供や説明もしないというものであったところ、Y1の組合役員に対す る発言を考慮すると、このような会社の対応は、Y1による組合嫌悪の情に基づき、組合側からの一切の要求に応じない姿勢を貫 くことによって、組合の弱体化を企図したもので、当初から組合との実質的な交渉を行う意思を有していないと推認することがで き、労組法7条2号の不当労働行為に該当するとした原判決が相当であるとされた例。

2249 その他使用者の態度
4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
会社は、Y1の言動は一過性のもので組合には何らの実害もなく、将来同種の行為が繰り返される可能性が全くなく、会社と組合 らとの間には、現在まで多数回の団体交渉が行われるなど、正常な集団的労使関係秩序の迅速な回復・確保がなされているとし て、救済の必要がないにもかかわらず、救済を命じた本件命令は裁量権を濫用するものとして違法であると主張するが、Y1の言 動は一過性のものでも、組合に実害のないものということはできないし、会社が組合との団体交渉に誠実に対応しているとはいえ ず、未だ正常な労使関係が確保されているとはいい難いから、会社の主張は採用できないとした原判決が相当であるとされた例。

業種・規模  情報サービス・調査業(ソフトウェア業等)、広告業 
掲載文献   
評釈等情報  中央労働時報 2005年 7月10日 1045号 35頁 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京地労委平成 12年(不)第119号 一部救済 平成15年 9月 2日
東京地裁平成16 年(行ク)第66号 全部認容 平成16年 6月10日
東京地裁平成15 年(行ウ)第577号 棄却 平成16年6月10日