概要情報
事件名 |
南労会 |
事件番号 |
大阪高裁平成15年(行コ)第61号
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控訴人 |
全国金属機械労働組合港合同 |
控訴人 |
全国金属機械労働組合港合同南労会支部 |
被控訴人 |
大阪府地方労働委員会 |
被控訴人参加人 |
医療法人南労会 |
判決年月日 |
平成16年 5月28日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、(1)組合副執行委員長に対し、デイケア事業の業務指示をしたこと、(2)この業務指示を拒否したことを理由に、同人を懲戒解雇したこと、(3)診療所の鍼灸治療室を縮小したこと及び(1)から(3)の事項についての団交に不誠実な対応をしたことが不当労働行為であるとして争われた事件である。大阪地労委は、(1)組合執行委員長の懲戒解雇処分がなかったものとしての取扱い、(2)誠実団交応諾、(3)文書手交を命じ、その余の申立てを棄却したところ、これを不服として組合が行政訴訟を提起した。大阪地裁は、大阪地労委の命令を支持し、組合の請求を棄却した。組合はこれを不服として、大阪高裁に控訴を提起していたものであるが、同高裁は、組合の控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 |
判決の要旨 |
1604 その他
組合は、本件業務指示は単にデイケア事業の業務を命じるものではなく、労働委員会が会社に対し、なかったものとして取り扱った上で労使間で協議を行うよう命じた勤務時間や週休2日制を改めて病院が命じるものである等と主張するが、同指示がされた経緯及び同指示書の記載内容を総合すると、同指示は、あくまでもX1副委員長に対してデイケア業務に就くよう命じたものであって、同指示書に勤務時間や週休2日制である旨記載されているのは、勤務体制、勤務時間等の変更の結果を再度注意的に記載したものにすぎず、独立した業務命令としての意味を有するものではないというべきであるから、本件業務指示命令には一定の合理性があり、同指示それ自体が直ちに不当労働行為に該当するものとは到底認められないとされた例。
3106 その他の行為
組合は、本件診療所の鍼灸治療室の縮小は、全員が組合支部の組合員である鍼灸師の労働環境を悪化させることを意図したものであると主張するが、デイケア事業を実施するに当たっては、理学療法機能を拡充するため、鍼灸治療室を縮小する必要があること、病院においても、鍼灸個室の減少予定数を当初の予定から組合の主張に配慮して縮小していることをも併せ考慮すると、直ちに鍼灸治療室の縮小そのものが病院の不当労働行為意思のもとにされたものとまでみることができないとされた例。
3604 労働者に落度がある場合
組合は、X1副委員長は本件業務指示を拒否したものではないなどと主張するが、本件診療所分会のX2委員長自身、本件免許証を提出した翌日に府の国保課に行った主眼は、不当労働行為を行う企業である病院のデイケア事業を認めないように申し入れることにあったことを認める証言をしている上、X1副委員長は、病院が団体交渉に応じない以上、本件業務指示についても従うことはできないと述べたと証言していること、同副委員長は、Y1理事から業務命令応諾書の提出を命じられたにもかかわらず、これに応じなかったこと等からすると、同副委員長の態度は、条件付きではあっても、本件業務指示を拒否したものと評価すべきであり、病院が変更後の勤務時間等の遵守を強く要請していたとまでは認められないこと等の事情からすれば、同副委員長は本件業務指示を条件付きで拒否したことについて正当な理由を示さなかったと評価せざるを得ないとされた例。
3604 労働者に落度がある場合
4408 バックペイが認められなかった例
6226 救済方法の適法性
X1副委員長は、病院の本件業務指示に対して正当な理由を示さずにこれを拒否したものであり、また、病院が予定していたデイケア事業の実施に支障を生じさせたものと評価せざるを得ず、このような同副委員長の行為が就業規則の減給又は出勤停止事由に該当することは明らかであり、また論旨解雇事由、さらには、懲戒解雇事由に該当する可能性は否定できず、このような本件事案の内容や、本件命令は同副委員長に対して論旨解雇処分を課したものではなく、本件命令がバックペイを命じない救済命令を採用したことそれ自体によって、同副委員長が病院に対する本件懲戒解雇時から現実に就業する間の賃金相当額の請求権が失われるものではないことなどからすれば、本件命令が懲戒解雇に対する救済方法としてバックペイを命じなかったことに、裁量権の逸脱ないし濫用があるとまでは断定し難いとされた例。
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業種・規模 |
医療業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
中央労働時報 2005年2月10日 1037号 64頁 
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