事件名 |
鴻池運輸 |
事件番号 |
東京地裁平成14年(行ウ)第441号
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原告 |
鴻池運輸株式会社 |
被告 |
中央労働委員会 |
被告参加人 |
関西合同労働組合 |
判決年月日 |
平成16年 3月 4日 |
判決区分 |
請求の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、労災事故を契機に組合に加入した従業員X1の治療
及び復職の問題を議題とする組合からの団体交渉申入れに対して、申立外労組との間に唯一交渉団体条項及びユニオン・ショップ
条項を含む基本労働協約を締結しており、X1もその組合員であることを理由に応じなかったこと、また、会社内での組合の結
成・存在を認めず、組合の団結権を否定したことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。
初審兵庫地労委は申立てを棄却し、中労委は初審命令の一部を変更し、文書手交を命じたところ、会社は、これを不服として行
政訴訟を提起したが、東京地裁は、会社の請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じたものを含め、原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
2252 署名・調印拒否
会社側を代表して組合との交渉に臨んだ常務は、組合との協議が「話合い」であり、「団体交渉」ではないとの態度を示し、議事
録の確認も、本件合意事項について労働協約を締結することも拒否する態度をとっていたことが認められ、組合との団体交渉を行
うことを拒否するものといわざるを得ず、また、労使間で合意に達した事項は労働協約として書面化することにより、はじめて法
律上の保護を受け得るものであることを考慮すれば、交渉権限を有する常務が出席して協議を行い、合意に達していたものは実行
に移すなどして、会社が実質的に交渉に応じていたとしても、会社がこれを団体交渉と認めず、労働協約の締結を拒否していた以
上は、団体交渉に応じたと評価することはできないとされた例。
2111 唯一交渉団体条項
労働者が2つの労働組合に所属するという二重在籍状態にある場合、使用者は同一事項についてそれぞれの労働組合との間で二重
に交渉に応じる義務はないというべきであるから、二重交渉を生じるおそれがある場合、使用者が組合間において交渉権限が調
整・統一されれるまで団体交渉を拒否することは正当な理由があると解されるが、二重交渉のおそれがないのに、単に労働者が二
重在籍にあるという理由のみで団体交渉の申入れに応じないのは、正当な理由によるものということができないというべきとこ
ろ、本件では会社が二重交渉を強いられ、そのおそれがあったという事実は認められず、組合員X1の二重在籍は、組合からの団
体交渉申入れを拒む正当な理由とはいえないとされた例。
2111 唯一交渉団体条項
労働組合の団結権及び団体交渉権は等しく保証されるべきであるから、唯一交渉団体約款が他の組合の団結権及び団体交渉権を侵
害するような場合は、民法90条により、その法的効力を認めることができないというべきであり、別組合との間で唯一交渉団体
約款を締結していることは、組合との団体交渉を拒否する正当な理由といえないとされた例。
2111 唯一交渉団体条項
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
別組合との間でユニオンショップ条項及び唯一交渉団体条項を締結し、X1もその組合員であることを理由として、組合との間で
団交を拒否するとともに、合意事項についても労働協約を締結することを拒否した会社の行為は、組合の結成・存在を否定するも
のであり、組合運営に支配介入するものといえるとされた例。
3700 使用者の認識・嫌悪
労組法7条3号の支配介入に該当する不当労働行為が成立するためには、支配介入に直接向けられた使用者の意思までを必要とせ
ず、使用者において行為の結果を認識し、これを容認する意思があれば足りると解されるべきところ、会社は、別組合との間のユ
ニオンショップ条項及び唯一交渉団体条項を理由に団体交渉を拒否するとともに、本件合意事項について労働協約の締結を拒否し
ていることから、不当労働行為意思を認めることができるとされた例。
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業種・規模 |
道路貨物運送業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
中央労働時報 2004年10月10日 1033号 38頁
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