労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  JR東海 
事件番号  東京地裁平成 9年(行ウ)第247号 
原告  東海旅客鉄道株式会社 
被告  東京都地方労働委員会 
被告参加人  ジェイアール東海労働組合 
判決年月日  平成12年 8月 2日 
判決区分  救済命令の全部取消し 
重要度   
事件概要  本件は、会社が(1)組合から新幹線の減速闘争を指令された組合員の乗務を拒否し、その間の賃金・乗務に伴う手当を支払わなかったこと、(2)乗務拒否による東京・新大阪間の移動費用を自己負担させたことが不当労働行為であると争われた事件である。
 初審東京地労委(平9・4・15決定)は、(1)について、組合員に支払わなかった賃金及び乗務手当の支払い、(2)について、組合員が負担した移動費用の支払いを命じたところ、会社はこれを不服として、行政訴訟を提起した。東京地裁は、減速闘争は、正当な争議行為とは言えないとして、東京地労委命令を取り消した。 
判決主文  1 被告が都労委平成5年(不)第25号事件について平成9年4月15日付けで発した命令を取り消す。
2 訴訟費用は、原告と被告の間では被告の負担とし、補助参加によって生じた訴訟費用は被告補助参加人の負担とする。 
判決の要旨  0411 怠業
1401 労務の受領拒否
組合員運転士が本件減速闘争に参加し、本件減速闘争を行う旨予告して行った「のぞみ」号への乗務の申入れは、新幹線の運転士としての労働契約上の義務に違反するとともに、会社が有する余裕時分についての管理権を排除し、組合員ないし組合の管理下に置こうとするものであるから、会社の労務指揮権を侵害するものといえ、その運行について要求される定時性を満たそうとしている会社にとって、提供された労務の瑕疵の程度は大きく、職務の遂行に及ぼす影響も看過できないものといわざるを得ないから、賃金の支払いを拒否するに足りる程度に不十分な労務提供であり、債務の本旨に従った労務の提供とはいえないから、会社がした本件受領拒否は、正当であるとされた例。

0411 怠業
本件減速闘争は、組合員運転士が職場から離脱せず、通常の業務を行いながら減速走行をするという態様の争議行為であるから、使用者の指揮命令から完全に離脱することなく、これを部分的に排除しつつ不完全な労働力を提供する怠業であり、怠業は、必然的に企業の業務の正常な運営を阻害するものではあるが、その本質は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不完全履行であり、その手段方法は労働者が団結してその持つ労働力を使用者に完全には利用させないことにあるのであって、それを超えて、不法に使用者の自由意思を抑圧しあるいはその財産に対する支配を阻止するような行為は許されず、正当な争議行為と解することはできないとされた例。

0411 怠業
本件減速闘争は、新幹線の運行に関し、余裕時分に対する会社の管理権を一時的に排除し、これを組合員運転士ないし組合の管理下に置くことを意味するものというべきであるから、たとえその目的が安全走行であったとしても、到底正当な争議行為と認めることができないとされた例。

0411 怠業
0419 ロックアウトとの関連
1401 労務の受領拒否
使用者は、労働者が争議行為として怠業を行う場合でも、操業を継続するために必要とする対抗措置をとることができると解するのが相当であり、必ずしもロックアウトによらなければ労務の提供を拒否することができないとはいえないとされた例。

1204 スト・カット
1401 労務の受領拒否
組合員運転士のした就労申し入れが債務の本旨に従った労務の提供とはいえず、会社のした本件受領拒否が正当であり、また、本件減速闘争が正当な争議行為であると認めることができないことから、会社と組合との間の紛争の存在、本件減速闘争に至る経緯を考慮しても、会社が本件受領拒否に伴い本件賃金カットしたことが、労働組合法第七条一号又は三号に当たるとすることはできないとされた例。

1401 労務の受領拒否
新幹線運転士は、仕業票により、その次に予定された乗務に就くため当該乗務に係る乗務開始場所に赴き、乗務開始時刻に労務の提供を行う債務を負担しているというべきであり、債務の弁済に関する費用は、別段の意思表示のない限り、債務者が負担すべきものであり、本件について、別段の意思表示を認めるに足りる証拠はないことから、会社のした本件受領拒否に伴い生じた本件移動費用は、債務者である組合員運転士が負担すべきことになり、会社の行った措置は労働組合法七条一号に又は三号に当たるとすることはできないとされた例。

業種・規模  鉄道業 
掲載文献  労働委員会関係裁判例集35集491頁 
評釈等情報   

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京地労委平成 5年(不)第25号 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  平成 9年 4月15日 決定 
東京高裁平成12年(行コ)第258号 控訴の棄却  平成13年 4月19日 決定