事件名 |
ネスレ日本(第三島田工場) |
事件番号 |
東京地裁平成 9年(行ウ)第62号
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原告 |
ネスレ日本 株式会社 |
被告 |
中央労働委員会 |
被告参加人 |
ネッスル日本労働組合島田支部 |
判決年月日 |
平成12年 2月23日 |
判決区分 |
救済命令の一部取消し |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、(1)組合のビラ配布等を妨害し、組合員に警告書
を発した、(2)(1)の警告等を理由に組合員15名の一時金支給額を減額した、(3)組合が右記について申し入れた団交に
応じなかった、として救済申立があった事件である。初審静岡地労委(昭60(不)第2号及び昭62(不)第3号、平元・9・
18命令)は、(1)?(3)が不当労働行為に当たることを認めた上で、(3)については、既に別事件で団交拒否の禁止を命
じているとして申立を棄却し、(1)及び(2)について救済命令を発した。会社の再審査申立に対し中労委(平元(不再)第
98号、平9・2・5命令)は、これを棄却した。会社はこれを不服として取消訴訟を提起したが、東京地裁は、(2)につき、
組合員3名については支給額の決定に当たって勘案すべき事由が存在し、命令には金額の算定に誤りがあるとして、中労委命令の
一部を取り消した。 |
判決主文 |
1 被告が中労委平成元年(不再)第98号事件(初審静岡地労委昭
和60年(不)第2号事件及び昭和62年(不)第3号事件)について平成9年2月5日付けで発した命令主文のうち、静岡県地
方労働委員会が原告に対し被告補助参加人の組合員X1について金4万2000円及びこれに対する昭和61年4月26日から支
払済みまで年5分の割合による金員の支払いを命じた部分、同X2について金2万8000円及びこれに対する昭和61年4月
26日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを命じた部分及び同X3について金2万8000円及びこれに対する昭
和61年4月26日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを命じた部分の取消しを求める再審査の申立てを棄却した
部分を取り消す。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、原告と被告の間でこれを14分し、その11を原告の負担とし、その余を被告の負担とし、補助参加によって生
じた訴訟費用はこれを14分し、その11を原告の負担とし、その余を被告補助参加人の負担とする。 |
判決の要旨 |
0200 宣伝活動
0202 会社施設の利用
2620 反組合的言動
3020 組合活動への制約
会社が組合において就業時間前に工場正門前付近でビラ配布をすることを申請してもこれを拒否する意思をあらかじめ明確にして
いたことは、会社の施設管理権の濫用であると認められるような特段の事情がある場合に当たるものと解するのが相当であり、会
社の工場の管理職等が組合による工場正門前付近でのビラ配布に中止を迫り、警告を発したのは、その当時の組合の置かれた状況
に照らし組合活動としてやむを得ないというべきであるビラ配布を妨害し又は威嚇するものであって、それが労働組合法七条三号
にいう支配、介入に当たることは明らかであるとされた例。
0200 宣伝活動
0202 会社施設の利用
2620 反組合的言動
3020 組合活動への制約
会社が組合において工場厚生棟2階食堂で食事休憩時間を利用してビラを配布することを申請してもこれを拒否する意思をあらか
じめ明確にしていたことは、会社の施設管理権の濫用であると認められるような特段の事情がある場合に当たるものと解するのが
相当であり、会社の工場の管理職等が組合による工場厚生棟2階食堂のビラ配布に対し中止を迫り、警告を発したのは、その当時
の組合の置かれた状況に照らし組合活動としてやむを得ないというべきであるビラ配布活動を妨害し又は威嚇するものであって、
それが労働組合法七条三号にいう支配、介入に当たることは明らかであるとされた例。
0202 会社施設の利用
0211 その他の組合活動
2620 反組合的言動
3020 組合活動への制約
会社が組合において就業時間前に工場正門前付近に横断幕を掲示することを申請してもこれを拒否する意思をあらかじめ明確にし
ていたことは、会社の施設管理権の濫用であると認められるような特段の事情がある場合に当たるものと解するのが相当であり、
会社の工場の管理職等が組合による工場正門前付近での横断幕の掲示に対し中止を迫り警告を発したのは、その当時の組合のおか
れた状況に照らし組合活動としてやむを得ないというべきである横断幕の掲示を妨害し又は威嚇するものであって、それが労働組
合法七条三号にいう支配、介入にあたることは明らかであるとされた例。
2620 反組合的言動
3020 組合活動への制約
会社は、組合員14名がビラを配布したり横断幕の掲示をしたりした際に、組合員14名に対しビラの配布や横断幕を掲示したこ
とを理由に警告並びに通知書を発したが、それが労働組合法七条三号の不当労働行為に当たることは認定、説示したとおりである
から、組合員14名がビラを配布等について警告を受けたことを理由に欠勤として扱って欠勤日数に応じて計算した所定の金額の
「大入り袋」しか支給しなかったことが労働組合法七条三号の不当労働行為に当たることは明らかであるとされた例。
2803 その他
「大入り袋」の支給額について出勤日数を基準としてこれを決定していたが、欠勤日数を基準としてこれを決定することに改め、
その後「警告」等も欠勤とみなし、警告書に記載された警告件数1件につき1日の欠勤があったものとみなして計算することに改
めたというのであるが、「大入り袋」の支給基準を改めることが会社の裁量の範ちゅうに属する上、改められた支給基準自体が直
ちに組合差別的な内容のものであるということもできないことからすれば、会社が組合の弱体化を決定的動機として「大入り袋」
の支給基準を改めたものと推認することはできないといわざるを得ないとされた例。
2620 反組合的言動
3020 組合活動への制約
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
会社がX1の無断職場離脱の件、X1のY1課長代理の妻に対する脅しの件、X1のY2課長代理に対する暴言の件及びX2の業
務上のミスの件について警告書を発したことは首肯できないわけではなく、X3を無断(無許可)欠勤としてあつかったことが不
当労働行為であるということはできないから、「大入り袋」の支給額の算定上これらを理由に減額した措置が不当労働行為に当た
るということはできないとされた例。
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業種・規模 |
食料品製造業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集35集885頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 2000年11月10日 974号 43項
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