事件名 |
神戸港埠頭公社 |
事件番号 |
大阪高裁平成12年(行コ)第103号
|
控訴人 |
神戸港埠頭公社労働組合 |
被控訴人 |
兵庫県地方労働委員会 |
被控訴人参加人 |
財団法人神戸港埠頭公社 |
判決年月日 |
平成14年10月 2日 |
判決区分 |
控訴の棄却 |
重要度 |
|
事件概要 |
本件は、会社が(1)組合員X1に組合からの脱退勧奨を行ったこ
と、(2)組合に加入した組合員X2を差別取扱いしたこと、(3)執行委員長X3の公社の登記問題等に関するビラ配布や関係
機関の訪問に対し、同人に懲戒命令を発し、さらに懲戒免職処分に付したことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
初審兵庫地労委(平成4年(不)第2号・6号、平成9・11・18決定)が、(1)については、脱退勧奨に当たらないとし
て、(2)については、これが公社の指示等によるとの疎明はないとして、(3)については、X3の行為は正当な組合活動の範
囲を逸脱したものである等として、いずれも不当労働行為に当たらないとして救済申立てを棄却したところ、これを不服として組
合が行政訴訟を提起した。
原審の神戸地裁(平12・10・18決定)が兵庫地労委の命令を支持したため、組合が控訴したが、大阪高裁は、控訴を棄却
し、原判決を支持した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。 |
判決の要旨 |
2621 個別的示唆・説得・非難等
公社総務部長らの各行為は、当時加入していた労働組合からの脱退に伴い労金からの借入金を一括返済すべきことになるとは知ら
なかったX1に対し、その旨指摘し、借入金返済に困難を来すことのないよう忠告又は助言したにとどまるものであり、この行為
によって組合からの脱退を勧奨したものとまでは認めることはできず、また、経理部長が組合への加入について熟慮するよう述べ
たこと等も、X1に対する個人的助言の範囲にとどまっており、組合への不加入や脱退を勧奨した支配介入であるとまで認められ
ない。
1602 精神・生活上の不利益
Y1課長代理の課員に対し、「一切口をきくな」との指示や通常X2が起案すべき決裁書類をX2をとばして自ら起案して決裁に
回した等の同人らの行為は、個人的感情からなされた行為にとどまるものというべきである等として、不当労働行為としての不利
益取扱いに該当するとは認められない。
0200 宣伝活動
労働組合が、労働者の経済的地位の維持・向上という目的を達するため、使用者の経営方針や企業活動を批判し、その旨記載した
ビラを配布するなどの活動を行うことは、その方法・態様が社会通念上相当と認められる範囲を超えない限り、多少激しい表現が
含まれているとしても、なお正当な組合活動といえ、そのため使用者の業務遂行が阻害されたり、その社会的信用を低下させたり
しても、これを理由として組合員に対し懲戒処分等の不利益を課すことは許されない。
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
本件職務命令は、公社が組合員X3に対し、登記問題について職務上知り得た事項の漏洩禁止及び公社の信用失墜行為の禁止を命
じたものであり、正当な組合活動を妨げるものではなく、公社の正当な利益を保護するためのものであるから、不当労働行為に当
たらない。
0200 宣伝活動
2620 反組合的言動
組合がビラの配布をもって公社の接遇内容を公表した行為は、接遇の是正や団結強化のためというよりも、接遇を公表する旨予告
することによって、相手方に対し組合ないしX3の意向に沿った行動を採らせることを目的としたもので、正当な組合活動とは認
め難く、公社が当該ビラ配布に対して本件警告書を交付したことは不当労働行為であるとはいえない。
0700 職場規律違反
1401 労務の受領拒否
X3が登記問題について行っていたビラ配布や関係機関への訪問等の活動は、守秘義務違反であるとともに、公社に対する信用を
毀損するものであり、本件職務命令、本件警告書の交付を受けながら、公社の信用を毀損する行為を繰り返したX3に対しなされ
た本件免職処分は、不当労働行為としての不利益取扱い又は支配介入に該当するとは認められない。
|
業種・規模 |
水運業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集37集777頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 2003年4月10日 1012号 50頁
|