事件名 |
朝日火災海上保険 |
事件番号 |
東京地裁平成10年(行ク)第33号
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申立人 |
中央労働委員会 |
被申立人 |
朝日火災海上保険株式会社 |
申立人参加人 |
X1 外21名 |
判決年月日 |
平成13年 8月30日 |
判決区分 |
一部認容 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、全損保朝日火災支部の組合員19名について、
(1)組合員17名を配置転換したこと、(2)組合員19名の昭和56年以降平成3年までの賃金、賞与及び職能資格格付け、
職位について差別的取扱いをしたことが争われた事件で、東京地裁は、中労委命令(8不再6・7、10・1・21決定)に基づ
く緊急命令申立てを認容し、会社に対し、(1)配置転換命令がなかったものとしての取扱い(既に退職した者を除く)、(2)
組合員Kに関する部分を除き、賃金、賞与及び職能資格格付け、職位の是正を命じた。 |
判決主文 |
1 被申立人を原告、申立人を被告とする東京地方裁判所平成10年
(行ウ)第44号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決の確定に至るまで、被申立人に対し、次のとおり命ずる。
(1) 被申立人は、次の各申立人補助参加人(以下、単に「補助参加人」という。)の配置転換について、次のとおり措置しな
ければならない。なお、同人らの原職又は原職相当職への復帰に当たっては、後記(2)ウで命じる各人の職能資格格付け及び職
位の是正を考慮するものとする。
ア 補助参加人X2に対する昭和57年10月25日付け城東営業所への配置転換命令がなかったものとして取り扱い、同人を本
店東京営業本部の原職又は原職相当職に復帰させること。
イ 補助参加人X3に対する昭和58年4月1日付け神戸支店への配置転換命令がなかったものとして取り扱い、同人を大阪支店
の原職又は原職相当職に復帰させること。
ウ 補助参加人X4に対する昭和58年8月5日付け大分営業所への配置転換命令がなかったものとして取り扱い、同人を大阪支
店の原職又は原職相当職に復帰させること。
エ 補助参加人X5の対する昭和58年4月1日付け釧路駐在所への配置転換命令がなかったものとして取り扱い、同人を千葉営
業所の原職又は原職相当職に復帰させること。
(2) 被申立人は、補助参加人ら(ただし、補助参加人X6を除く。)の賃金、賞与、職能資格格付け及び職位について、次の
とおり措置しなければならない。
ア 昭和63年4月以降平成3年度までの賃金について、人事考課査定がD査定以下のものを査定の中間評価であるCとして再査
定して昇給させ、既支給額との差額を払うこと。
イ 昭和63年6月以降平成3年度までの賞与について、基礎となる賃金はアで是正した金額を基準として、また、査定部分(平
成元年12月を除く。)については人事考課査定がD査定以下のものを査定の中間評価であるCとして再査定して金額を算定し、
既支給額との差額を支払うこと。
ウ 各人(補助参加人X7を除く。)の平成3年6月1日における職能資格格付け及び職位について、同年同期入社者に遅れない
ように取り扱うこと。
2 申立人のその余の申立てを却下する。
3 申立費用は、補助参加の費用も含め、被申立人の負担とする。 |
判決の要旨 |
7315 全部認容された例
組合員らに対する各配転について不当労働行為の成立を認め、会社に対し、退職した者を除く組合員ら4名について原職又は原職
相当職に復帰させることを命じた本件命令は正当であるとされた例。
5145 救済内容が実現不可能
本件命令発出後、会社を退職した者については、もはや原職又は原職相当職に復帰することは客観的に不可能であり、会社にこの
措置を執ることを命じた本件命令に従う義務がなくなったものであり、本件申立て中その部分は却下を免れないとされた例。
6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
使用者が具体的事情を疎明せず、労働委員会には使用者の指摘するような実体があるか否かが分からない場合には、労働委員会
は、判明しているそれ以外の事情を検討して救済の内容を決定することができるものと解するのが相当であり、本件命令が賃金と
賞与について、人事考課査定の中間評価であるとして再査定して昇給させ既支給額との差額を支払うことを命じることは、労働委
員会の裁量の範囲内であるとされた例。
6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
労働委員会の採った救済方法が使用者の人事権を著しく不当に制限するものであるときは、労働委員会に委ねられた救済方法に関
する裁量権を逸脱ないし濫用したものとして違法となると解すべきであるが、不当労働行為によって生じた状態の是正を図るべき
立場にある労働委員会が、昇格、職位について同期入社者に遅れないように取り扱うことを命じた救済方法が、会社の人事権を著
しく不当に制限し、労働委員会に委ねられた裁量権の範囲を逸脱ないし濫用したものとまでいえないとされた例。
7318 その他(一部認容された例、全部却下された例等)
組合員らの賃金、賞与、職能資格格付け、職位における差別について不当労働行為の成立を認め、会社に対し、是正を命じた本件
命令中、組合員Kに関する部分以外は正当であるとされた例。
7318 その他(一部認容された例、全部却下された例等)
本件命令は、是正されるべきであるとする職能資格格付け及び職位を考慮せず、賃金、賞与の是正をすることとしているが、賃
金、賞与について会社が不利益に取り扱い、組合の運営に介入した不当労働行為の事実が認められることから、原状回復の救済方
法としては、職能資格格付け及び職位を考慮した上で是正すべきであるから、この点の救済申立を棄却していることは失当である
とされた例。
7230 必要性の審査
会社は、本件命令送達後から現在まで、本件命令の内容を任意に履行する意思を有していないことが認められ、また、本件判決確
定に至るまで配転、賞与、職能資格格付け及び職位について是正されず、組合活動に対する侵害状態が継続すれば、組合の団結権
に対する侵害は甚大であり、かつ、組合員各人が受ける経済的不利益等も大きいという事情等に鑑みれば、主文の限りのおいて緊
急命令を発すべき必要性を肯定することがきでるとされた例。
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業種・規模 |
金融業、保険業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集36集1077頁 |
評釈等情報 |
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