事件名 |
忠恕福祉会 |
事件番号 |
大阪高裁平成10年(行コ)第52号
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控訴人 |
大阪府地方労働委員
会 |
控訴人参加人 |
ユニオン・おおさか |
被控訴人 |
社会福祉法人忠恕福祉会 |
判決年月日 |
平成11年 8月26日 |
判決区分 |
控訴の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、団交における不誠実な態度、支部宛郵便物の開封、返送、支
部役員に対する誹謗中傷、特別休暇の廃止、昇給差別等が争われた事件で、大阪地労委の救済命令(8・4・5決定)を大阪地裁
が一部取消した(10・8・26判決)ため、これを不服として大阪地労委は控訴したが、大阪高裁は控訴を棄却し
た。 |
判決主文 |
1 本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人(附帯被控訴人)の、附帯控訴費用は被控訴人(附帯控訴人)の、補助参加によって生じた費用は控訴人
(附帯被控訴人)補助参加人の各負担とする。 |
判決の要旨 |
1202 考課査定による差別
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
組合員X1の基本給引上額を他の寮母より低額の3000円に抑制したことについて、老人ホーム寮母である同人の行事等への非
協力、禁止紙おむつ使用、深夜おむつ交換省略、夕食時配膳の怠惰行為等は、給与規則の勤務成績・能力の極めて悪い者に該当す
るので合理的理由があり、非組合員X2も同額に抑えられたこと等を併せて考慮すれば、組合嫌悪の不利益取扱いとは認められ
ず、これを労組法七条一号の不利益取扱いに該当するとした地労委命令主文第1項〔賃金是正、バックペイ(年5分加算)〕及び
第2項(文書手交)の第1項に関する部分は違法として取消した原判決が維持された例。
1202 考課査定による差別
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
組合員X1の勤務態度を総合すれば、会が給与規則の勤務成績又は勤務能力の極めて悪い者に該当するとして基本給引上額を
3000円に止めた措置が合理的根拠を欠くとは認められず、組合活動と無関係な個人的な勤務態度や言動を評価したもので、労
組法七条一号の不当労働行為意思をもってしたとは認め難く、会が不当労働行為に及んでいる事実も右認定を左右せず、条理に反
するともいえないとされた例。
2243 対案不提出
2248 実質的権限のない交渉担当者
団交に回答能力・権限ある者の出席を拒否し、回答メモを読み上げ、質問にも回答しなかった一連の会の対応について、これは資
料提示・説明による実質的団交を避けた不誠実な交渉態度であり、その後の、要求拒否の電話回答や6か月後の団交応諾も不当労
働行為成否の判断を左右せず、団交拒否に当たるとした地労委判断は正当で、被救済利益も消滅していないので、命令主文第2項
(文書手交)の不誠実団交に関する部分は適法であるとした原判決が維持された例。
2249 その他使用者の態度
平成5年3月30日の団交における会の一連の態度に照らせば、将来同様の不当労働行為を繰り返すおそれが高かったと認められ
るから、同年11月以降の団交により被救済利益が消滅したとまではいえないとされた例。
2621 個別的示唆・説得・非難等
会が、組合員X1らの行動を氏名を公表して批判した「騒動記」及び解雇後地位保全等仮処分決定で復職した組合員X3の寮母適
性を疑問とした「復職について」の二つの文書を作成、公開したことについて、組合宛郵便物開封・返送の不当労働行為と同時期
であることを総合考慮し、個人批判の域を著しく超え、組合員を誹謗、攻撃して隔離し、従業員の組合加入を阻止する意図をもっ
ていたもので、支配介入に当たるとした地労委判断は正当であり、命令主文第2項(文書手交)の組合支部役員に対する誹謗、中
傷に関する部分は適法であるとした原判決が維持された例。
6230 主張・立証の制限
会が、特別休暇を一方的に廃止したことについて、同休暇が労働契約の内容か恩恵であるかにかかわらず、組合の制度化要求を受
けた会が、紛争発生の畏れありとし、恩恵付与確認文書に組合が署名しないので廃止する旨の書面を貼付等して一方的廃止とした
経緯を考慮すれば、組合要求を逆手に取り、従業員の反感をあおって組合支部役員が職場で孤立化することを意図したもので、支
配介入に当たるとした地労委判断は正当であり、命令主文第2項(文書手交)の特別休暇の一方的廃止に関する部分は適法である
とした原判決が維持された例。
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業種・規模 |
社会保険、社会福祉 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集34集508頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 1999年11月10日 959号 52頁
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