概要情報
事件名 |
誠光社 |
事件番号 |
大阪地裁平成 7年(行ウ)第19号
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原告 |
株式会社誠光社 |
被告 |
大阪府地方労働委員会 |
被告参加人 |
総評全国一般大阪地連誠光社労働組合 |
判決年月日 |
平成 9年10月29日 |
判決区分 |
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重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、<1>地裁に破産申立てを行った上、申立人組合員全員を解雇したこと、<2>組合に対し、<1>に関する団交を拒否したことが不当労働行為であるとして争われた事件である。 大阪地労委(平成6(不)33・43、平成7・2・23決定)が、<1>につき解雇がなかったものとしての取扱い、地裁の破産宣告に基づく破産管財人による解雇までのバックペイ、<1>及び<2>についての文書手交を命じた。会社がこれを不服として、大阪地裁に行政訴訟を提起したところ同地裁は会社の請求を一部認容し、命令を一部取り消した。 |
判決主文 |
1 被告が大阪府地方労働委員会平成6年(不)第33号、同第43号不当労働行為救済申立併合事件について、平成7年2月23日付けでなした命令のうち、主文第1項のうち原告を名宛人とする部分及び主文第2項のうち(1)に関する部分を取り消す。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用(補助参加により生じた訴訟費用を含む。)はこれを4分し、その1を原告の、その余を被告及び補助参加人の負担とする。 |
判決の要旨 |
1800 会社解散・事業閉鎖
会社のなした破産申立及びこれに引き続く破産宣告によって、労働組合員を含む従業員が従前の職業を失うという不利益な取扱いを受けたとしても、原則として、これをもって労組法7条所定の不当労働行為ということはできない
1800 会社解散・事業閉鎖
破産申立をするに際して、従前からの会社の労働組合に対する不当労働行為の継続、当該破産申立の背信性、破産原因の不存在ないし会社による破産原因の意図的な作出、非組合員を雇用した別企業による従前の営業の継続といった特段の事情により、右破産申立が労働組合の潰滅を唯一の目的としてなされたことが明らかである場合には、右申立は、労組法7条1号所定の不当労働行為に該当するものと解するのが相当である。
1800 会社解散・事業閉鎖
本件破産申立は、組合に対する敵対的な意図をも包含してなされたとはいいうるものの、いまだ組合の潰滅を唯一の目的としてなされたものとまではいうことができず、労組法7条所定の不当労働行為には該当せず、これを不当労働行為として陳謝を命じたことは、違法として取消しを免れない
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
本件破産申立が不当労働行為に該当しないことに加えて破産原因のある会社が破産申立をした場合、組合員を不利益に取り扱ったとする余地はなく、労組法7条所定の不当労働行為には該当せず、これを不当労働行為として陳謝を命じたことは、違法として取消しを免れない
2400 その他
破産原因を有する会社が破産申立をした場合、会社は、団体交渉を拒否し又はこれに応じないことにつき正当な理由がない限り、労働組合に対する団体交渉応諾義務を免れない
4913 破産管財人
救済命令の内容は、労委の裁量的判断の結果、使用者に対しその財産の変動を求める命令となることも、法は当然に予想しているが、救済申立後に、使用者に対して破産宣告がなされて破産管財人が選任された場合、労委は、使用者に対しその財産の管理処分権の行使を履行内容として求める救済命令に限っては、これを発することができなくなるものと解するのが相当
5008 その他
本件団交拒否等に係る陳謝命令は、会社の財産の管理処分権の行使を求めるものではなく、むしろ会社の人格に関わる措置を求めるものであるから、裁量を逸脱しておらず、適法である
4402 企業閉鎖・偽装解散と救済
4912 破産事業における使用者
破産者である会社に対しても、組合員らを破産管財人により適法に解雇されるまでの期間、会社の従業員として取り扱うという命令は、破産者に対して破産財団の管理処分権の行使を履行内容として求めることとなり、不可能を強いることとなるため、破産管財人に対して発することは格別、破産者に対して発令された限りで違法であることを免れない
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業種・規模 |
出版・印刷・同関連産業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集32集459頁 |
評釈等情報 |
労働判例 1998年2月1日 727号 18頁 
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