概要情報
事件名 |
毎日放送 |
事件番号 |
東京地裁昭和44年(行ウ)第173号
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原告 |
株式会社 毎日放送 |
被告 |
中央労働委員会 |
被告参加人 |
毎日放送労働組合 |
判決年月日 |
昭和50年 3月25日 |
判決区分 |
請求の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が春闘における組合の放送中継車等に対するピケ、ビラ配布及び貼付、その他業務妨害等を違法争議行為として組合三役らを解雇した事件で、中労委は初審大阪地労委の命令を支持し、再審査申立てを棄却したところ、会社は棄却命令を不服として東京地裁に行政訴訟を提起していたが、東京地裁は3月25日、会社の請求を棄却するとの判決を言渡したものである。 |
判決主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
0414 ピケッティング
ピケの手段方法は、争議の状況・使用者側や説得の相手方の態度等諸般の事情を考慮して、暴力の行使に至らないある程度の物理的な力の行使による説得行為についても容認されることがある。
0420 その他の争議行為
放送に騒音を混入させる抗議行動は正当な争議行為といえないが、会社の損失は軽微であり、他方、本件行動が争議行為の派生的一環であり、直接の目的がスト効果の減殺防止にあったことからすれば違法性の程度はそれほど高くない。
0414 ピケッティング
スタジオ調整室におけるピケは、ストの実効性確保を目的とする正当なものであり、その態様も暴力の行使や威迫行為がなく、ピケの正当性の範囲を逸脱したものといえない。
0420 その他の争議行為
休憩時間中に委員長らが総務局内に立ち入った行為は、会社が争議行為に警察官を介入させたことに抗議する目的でなされ、職場占拠にもあたらないから、争議行為の範囲を逸脱したものといえない。
0410 目的・手続き
ストの主目的は、労使間の責任不問協定不成立に伴う組合幹部の処分を阻止すること等にあり、組合がストの目的・根拠を明示しなかったことをもって違法ということはできず、本件ストは目的手続において正当である。
0420 その他の争議行為
スポンサー招待ゴルフ大会におけるビラ配付は、争議の早期解決を図るべく社長に直接抗議し、スポンサーに争議の実情を訴え、組合の立場を理解してもらうためになされたもので、目的・配付方法において相当な組合活動である。
0421 幹部責任
違法な組合活動の幹部責任を理由とする組合三役4名に対する懲戒解雇・諭旨解雇の処分は、活発な活動や指導を嫌悪する余り、一部行き過ぎの行為に藉口して組合を弱体化させるために、同人らを企業外に排除したものと認められる。
0421 幹部責任
違法性のそれほど高くない春闘中の組合員活動の責任を追求して、組合三役4名を懲戒解雇・諭旨解雇にしたことは、過重な処分である。
0414 ピケッティング
本件マラソン中継車に対するピケは、ピケの持つ説得的要素に欠け、正当性の範囲を逸脱しているが、職制らの頑なな態度と組合員らに暴行・脅迫行為がないことを総合すると、ストの実効性を確保するために無理からぬところもあった。
0208 暴力・不穏当な言動を伴った組合活動
廊下の錠前取付工事に対するピケは、不穏当との非難を免れないが、錠前取付工事の目的が組合の争議行為を阻止する対策の一環としてなされ、組合員らにピケの態様等を考慮すれば、正当な組合活動の範囲を逸脱したといえない。
0417 法令・協約・信義則違反
争議行為の事前通告の慣行は争議権の行使自体を制限するものでないから、慣行に違反する争議行為も信義に反し争議権の濫用にわたらない限り、直ちに違法となるものでなく、正当な組合活動の範囲を逸脱したといえない。
0417 法令・協約・信義則違反
ストの事前通告に関する労働協約等が存しない場合、事前通告をしないストが直ちに違法になるものではなく、このことは、会社が放送事業という公共性を有する特殊の業務を行う場合でも同様である。
0300 争議行為の範囲
集会を禁止されている玄関ロビーにおける鉄扉乱打は、会社の業務を妨害し、穏当を欠く面もあるが、他面、会社の対応に憤慨した組合員の行為には無理からぬ点もあり、全体とすれば正当な争議行為の範囲を逸脱したものといえない。
0420 その他の争議行為
本件ビラ等の貼付は、枚数、貼付場所・貼付方法からみて、建物の体裁・美観を毀損したもので、争議行為の正当性の範囲を逸脱した違法な行為である。
0420 その他の争議行為
貼付されたビラの一部には職制を中傷するものもあるが、大部分は春闘の早期解決を求める内容であり、本件ビラ貼付をもって組合の一貫した加害意図のもとに企画・実効された行為ということはできない。
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業種・規模 |
放送業 |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集14集130頁 |
評釈等情報 |
労働経済判例速報 885号 18頁 
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