島の地域資源、特性を生かしたオンリーワンの産業づくりによる雇用機会の創出
(1)地域 :鹿児島県大島郡与論町
(2)地域の現状
与論町は鹿児島県の最南端に位置する離島であり、美しい自然と独特の生活文化を有する一島一町の町である。町では観光が最も重要な産業の一つとなっている。また、平坦地が多く耕地条件に恵まれているため、さとうきび栽培や畜産が盛んである。
しかし、現在、観光では観光ニーズの多様化等により集客力が減少し、農業では零細農家が多いこと、高齢化に伴う後継者の不足等により農業従事者が減少している。これら地域経済の低迷に加え、近年の消費低迷や公共事業減少の影響などの理由により建設業をはじめとする町の中心企業は厳しい経営環境にあり、経済・雇用情勢は極めて深刻である。これらの問題を解決し、地域経済の活性化させることが必要になっている。
(3)地域で行っている取組
[1]観光関連の取組
与論町独自の自然・産業・伝統文化・生活文化などの地元資産を生かした体験型観光メニューを開発し、町独自の観光づくりを進め、修学旅行・スポーツ合宿の誘致を行っている。また、ヨロンマラソン・パナウルウォークの開催等を実施している。
[2]特産品開発の取り組み
花卉・サトイモ・インゲン・熱帯果樹等の生産者や団体への補助を行っているほか、とびうお・ソデイカ・シイラ・モズクの加工施設整備、製氷・貯氷施設の整備を行い、農林水産物そのものや加工品の特産品化を図っている。
[3]SOHO企業等の誘致及び起業化の取り組み
島内全域にADSLサービスが提供されたことにより、SOHO事業の起業が可能となった。また、NPOによる情報サイトの発信等により、新しい産業としての情報産業の開花を目指す。
[4]行政サービスのアウトソーシング
アウトソーシングにより、行政業務を効率化するとともに、新たな雇用の創出を推進している。
[5]タラソ健康作り産業への取組
タラソテラピー(海洋療法)メニューを開発し、町の温暖な気候や海に囲まれた自然環境を生かし、新たな健康産業の創造や体験型観光地の形成を目指している。
[6]UIターンの受け入れ
近年、若い頃町を離れ再び故郷に帰りたいと考える人や、「団塊の世代」で定年後豊かな自然の中で暮らすことを望んでいる人向けに、UIターンの窓口をに設け、空き家や雇用情報の提供を行っている。
(4)課題
・地域産物を活用した特産品生産・販売にかかる人材、SOHO起業のための専門的技術を有する人材、タラソテラピーを観光関連産業として活用できる人材の育成が遅れている。
・離島であるという特性から、専門的知識・技術を有する技術者から直接指導を受ける機会が不足している。
・UIターン受け入れ体制に関して、新たに島で暮らしたいと考える人に対し、雇用面での十分な情報を提供できていない。
(5)パッケージ事業での取組
[1]観光産業事業に伴う人材育成支援事業
先進地の講師を招聘し地元観光資源の活用方法等を内容とする研修を実施する。併せて先進地へのリーダー派遣を行う。これにより、地域資源を活用し、農業・水産業等と連携した観光サービスを企画・提案できる専門的な人材を育成する。
[2]ツアーガイド育成事業
与論町の自然・伝統文化及び各フィールド展示施設の案内を行う専門性の高いガイドを養成するため、町外から講師を招聘し講習会を実施するとともに、併せて島内の各分野の専門家を講師に講習会を開催する。
[3]タラソテラピーインストラクター人材育成事業
タラソテラピー(海洋療法)の先進地の関係者や専門講師を招いて研修会を開催し、中核となる人材の育成を図る。併せて先進地へのリーダー派遣を行う。これにより、現在推進中の奄美ミュージアム構想策定事業や奄美タラソ健康づくり事業の成果も取り入れ、町の観光再生を図る。
[4]特産品開発人材育成事業
農業・水産業・伝統工芸品等の町に数多くあるオンリーワン素材に、付加価値をつけるため、人材を養成する為の講座を開設する。さらに、首都圏・沖縄にあるアンテナショップにて実践研修を実施する。
[5]SOHO起業家人材育成事業
ADSLサービスを活用した特産品等の販売や情報発信、SOHO等の情報産業を起業化できる人材の育成を行う。併せてインターネットに関する講座を開設し、情報教育を進め、SOHO開設希望者を支援する。
[6]UIターン活性化事業
NPOの関係団体や各方面の郷友会等と連携を図りながらUIターン就職希望者の受け入れについて関東・福岡方面で相談会を実施する。
(6)パッケージ事業実施による将来像
当該事業を実施することにより、与論町の豊かな自然及び独自の伝統を活かし、かつ、旅行者の嗜好変化に対応した観光産業の構築やUIターン希望者の受け入れ体制の整備が促進され、新たな雇用の創出が図られるとともに、地域の活性化が期待される。