「ものづくり」と「観光」のまち長崎の再生を核とした雇用機会の増大
(1)地域 :長崎県長崎市
(2)地域の現状
長崎市は、長崎県の経済及び行政の中心都市である。第3次産業を中心とした産業構造となっており、歴史ある造船業や観光産業も特長となっている。しかし、現在、雇用情勢は厳しい状況となっており、早急に地域経済を回復させることが必要となっている。
そのため、長崎市では、交通アクセスや斜面都市としての地理的ハンデが問題とならないIT関連などを重点産業として、コールセンターの立地が増加している。また、農業、水産業では、食の安全・安心など消費者ニーズにあった農水産物・農水産加工品の高付加価値化・ブランド化、地産地消を推進している。観光では、日本ではじめてのまち歩き博覧会として「長崎さるく博」を開催した。さらに、新たな核となる先導的産業が不在であったことから、他産業に大きな影響力があり産業の裾野の広い2次産業の復権により「ものづくり」のまち長崎の再生を図ろうとしている。
(3)地域で行っている取組
[1]「ものづくり」支援
造船関連中小企業の新規採用者に対する溶接等の訓練や中小企業が実施する技術・技能職の人材育成に係る補助を行っている。
[2]新分野進出・新事業開拓の促進
産学官連携による新技術・新製品の開発の支援、先端技術に関する産学官の共同開発の支援を行っている。また、企業間、産学間、地域間の交流により、域内製造業の技術交流を促進するとともに、域内企業のビジネスチャンスの拡大を図る。
[3]新規創業の支援
ベンチャー企業支援センターを核とした起業家の支援・育成を行っている。
[4]企業誘致の推進
企業立地の対する奨励金制度を設けて、立地企業の増加を図っている。
[5]長崎ランタンフェスティバル事業
中国の旧正月に合せて、灯・中国色をキーワードに行うランタン・オブジェの装飾やイベントを展開している。
[6]長崎ブランド品の販路拡大
長崎市ブランド振興会を組織し、カステラや水産加工品といった特産品の長崎ブランド品への認定及び物産展の開催やインターネット上での販売を行っている。
[7]地産地消の推進
「地産地消」を推進するため、市内のホテル、料理店、小売店などでの食材としての活用、販売や加工品の開発に対する支援を行っている。
[8]地域創業助成金の活用
食関連分野として食料品製造業、飲食料品小売業、一般飲食店を地域重点分野に設定し、助成対象としている。
(4)課題
・新分野進出・新事業開拓を促進するため、開発製品の販売開拓を担うインターネット等による情報発信やプレゼンテーション技術を駆使することができる人材の育成が必要となっている。
・ 起業予定者への、業種に特化した専門的かつ実践的なノウハウの提供を行う必要がある。
・観光とその関連産業での相互連携を図るため、地域性を生かした店舗展開や特産品の開発、さらにサービス展開の取組が必要である。
・企業誘致により立地したコールセンターで不足が見込まれるオペレーターの確保と育成を行う必要がある。
・特産品を振興し長崎ブランド品の販路拡大を図るため、商品特性を生かした販売戦略立案のための人材育成を行う必要がある。
・地産地消を推進している「食」関連産業において、コンビニエンスストアやファミリーレストラン等との差別化を図るため、販売商品と一体となった接客サービスができる人材育成を行う必要がある。
(5)パッケージ事業での取組
[1]CAD技術者養成講座
製造業の作業の効率化・加工精度の向上を図るため、CADの技術者を育成する。
[2]情報発信・プレゼンテーション技術研修
営業サポート、ホームページメンテナンス要員といった幅広く活躍できる人材を育成する。
[3]「食」関連分野起業セミナー
食関連分野における起業家を対象とし、経営・人事労務管理に関するセミナーを開催する。
[4]オペレーター養成講座
コールセンターのオペレーターのコミュニケーションの向上とビジネスマナーの習得を目的とした養成講座を実施する。
[5]販売戦略セミナー
カステラ、びわ、水産加工品といった特産品の全国展開等の販路拡大を担う人材を育成するための研修会を開催する。
[6]接客マナー研修
飲食料小売店や一般飲食店等の従業員に求められる観光都市としての歴史・文化の知識等を踏まえた応接技術の研修を行う。
[7]インターネット等による情報発信
情報発信が遅れている地場中小企業の事業所情報やパッケージ事業の情報を発信し、求職者への情報提供や企業間の情報共有を行う。
(6)パッケージ事業実施による将来像
当取組における人材育成等によって、地場産業の競争力強化をはかり、企業誘致等による新産業の創出を図る。そして「ものづくり」と「観光」のまち長崎の再生を図る。さらに、能力開発を図り人材を育成することで、地域雇用の拡大とともに西九州の中核都市としてのさらなる発展を目指していく。