八女地域農業を活かした地産地消による雇用創出
(1)地域 :福岡県八女市(平成18年10月旧上陽町を編入。)
(2)地域の現状
平成18年10月に上陽町を編入し新「八女市」が誕生した。八女市・上陽町共に八女茶の主要産地であり、電照菊が高品質の全国ブランドとして知られてきた地域である。しかし、両地域の基幹産業である農業においては、担い手・後継者不足、遊休地の増加、農業の活力の減退といった課題を抱えている。そこで、これらの課題を克服し、産業の活性化による雇用の拡大を図るため、両地域においては「地産地消の拡大」、「及び交流によるまちづくり」を目標に掲げ、地域の活性化を図る体制づくりを実施しており、その中核的、専門的な人材の育成等が急務となっている。
(3)地域で行っている取組
[1]土づくり推進
酪農農家でつくる生産組合が「八女有機」と呼ばれる牛糞の堆肥を生産しており、最近では有機肥料の需要増によりストックが不足するほど需要が伸びてきている。
[2]遊休地活用、直販事業
遊休地の増加を防ぐため、JAふくおか八女が希望者に対して農地の仲介を行っている。また、最近、道の駅や直売所、スーパーでの直売等農産物の様々な販売ルートが開発されていることから、苺を中心に直販事業を実施している。
[3]農村女性チャレンジ支援事業
八女地域農業改良普及センター(福岡県)が地域でセミナーや研修を開催している。その結果、地域でも農家女性で組織する研究会が発足しており、自主的に地域農産物の加工・販売活動、消費者との連携等を行っている。
[4]IT活用
JAふくおか八女がインターネットを活用し、農家や経営に関連する様々な情報を提供している。また、第3セクターが八女茶と地ビールのネットショップを展開している。
[5]食育の推進
地産地消の一環として、八女市内の小中学校で給食での地場産利用を進めており、中学校では毎月1回、地元の農産物を利用しており、学校給食という教育を通じての地産地消を推進している。
[6]地場産品消費の拡大
農業振興と地域活性化のために「食と健康」をテーマとした健康増進施設「べんがら村」を設立し、農産物販売や体験型農園、地場産品によるレストランなど農業振興や地域雇用促進に取り組んでいる。また、都市農村交流を核とした地域産業拠点施設も運営されており、地場農産物販売や特産品開発、飲食提供などの農業振興や地域雇用促進に取り組んでいる。
[7]地域雇用創造バックアップ事業の実施
地域雇用創造調査研究事業を活用し、地産地消の推進と人材育成の方策等の調査研究を実施した上で、パッケージ事業の事業構想を構築した。
(4)課題
[1]生産の課題
良質の堆肥づくりの生産拡大をめざしているが、新たに土づくりの生産・販売を行う人材を育成・強化するシステムがなく、新たな人材の取り込みと育成が課題となっている。また、遊休地を希望者へ斡旋しているが、情報不足等により新規就農希望者の掘り起こしが不十分であり、より専門的・組織的な取り組みを進める中核的人材が不足している。
[2]販売の課題
地場産品を利用した特産品の加工・販売について技術を専門的に学ぶ機会が不足している。また、組織経営に携わる専門的知識を持った人材も不足している。さらに、インターネットを活用した農産物や特産加工品の販売について、組織的な販売ルートの開発・開拓という点では取組が遅れており、インターネットを活用した情報発信・販売システムの導入による具体的な事業展開が必要である。
[3]消費の課題
小中学校での食育の取組、デイサービス等での取組はあるものの、組織的・地域一体となった地消の取組が遅れている。また、地場農産物のPRが課題である。
(5)パッケージ事業での取組
[1]雇用創出メニュー
経営相談や新規創業希望者へ経営・人事労務管理等の相談を行う。
[2]能力開発メニュー
食育アドバイザーの養成、地場産食品の加工、直売システム経営、ネット販売運営、IT活用等の地域で不足している人材を育成する講座を行う。
[3]情報提供・相談メニュー
ホームページを開設しU・Iターン希望者への情報提供を行う。また、相談窓口を設置する。
(6)パッケージ事業実施による将来像
地産地消の推進という共通の目標をもった地域において、市町村合併前から地域一体となった取組を実施することで、農産物の生産・販売・拡大による雇用創出と地産地消の推進による雇用創出が図られる。それにより、農産物の生産拡大、地場産品・特産品の販売促進、地場産品の消費拡大がさらに促進され、地域の活性化が図られることが期待される。