日本一のパイル織物・紀州へら竿産業の再生による地域産業創出と
雇用機会の増大
(1)地域 :和歌山県橋本市
(2)地域の現状
平成18年3月に橋本市、高野口町が合併し、新生「橋本市」がスタートした。パイル織物と紀州へら竿という全国シェア90%を誇る産業を2つも有している全国的にも珍しい地域であり、その技術力は非常に高度なものである。しかし近年では地域経済の低迷を受け、消費者ニーズの多様化による市場の変化や後継者不足に悩まされ、厳しい状況に置かれている。また、ニュータウンを中心に若年者の流出が深刻化しており、地域活力の低下が懸念されている。
(3)地域で行っている取組
[1]地場産業であるパイル織物と紀州へら竿の振興
・橋本市ヘラブナ釣り大学の開講、全国ヘラブナ釣り選手権大会の開催によりヘラブナ釣りのすばらしさ、竹竿の魅力をPRしている。また、紀州製竿組合に対して補助金を交付している。
・伝統工芸士、製造事業者等を活用した体験交流等の事業を行う伝統工芸品製造事業者、伝統工芸品関係組合等に対し助成を行っている。
[2]新産業創出と地元企業の雇用拡大
・SOHO支援事業施設を整備・運営し、起業の育成支援、大阪市等に近い立地条件を活用した企業誘致の実施、設備投資、販路拡大など新たな経営資金を必要としている中小企業を支援する施策を実施している。
[3]観光振興
・やどり青少年旅行村の整備、森林体験交流施設の整備、観光物産拠点施設の設置に向けた事業調査に取り組んでいる。また、地域資源の調査とデータベース化及び地域資源を活用したビジネスの実現化について検討している。さらに、地域の特産である柿や古代米などを使用した新しい「地域ブランド」づくりに取り組んでいる。
(4)課題
・ パイル織物産業で必要な人材は専門的な技術を有する人材であり、一般的な対策ではマッチングしないため、雇用に結びついていない。
・ 紀州へら竿産業では竿師への師事を希望する者が増加する等情報発信が一定の成果を見せているものの、受け入れ体制として教育システムの整備が急務となっている。
・ 新たな産業の創出に向けた取組を実施しているものの地元に技術を有する人材が不足している。また、企業誘致を行ったものの、企業が希望する人材が地域にいないため雇用に結びついていない。
・ 世界遺産、特産品、ヘラブナ釣りなどの地域資源を連携させた企画を立案できるマネージャーが存在しないため、観光をビジネスとして確立できていない。また、再織体験インストラクターが不足している。
(5)パッケージ事業での取組
[1]地場産業の雇用確保に向けた人材育成
製竿技術者を育成するため、製竿に係る基礎技術を修得する人材育成を行う。また、織物技術者を育成するため、引退技術者を講師とした現場研修を行う。さらに、地域内企業から要望の高い技術を学ぶ職場内研修を含めた教育プログラムを実施する。
[2]新しい地域産業による雇用創出に向けた人材育成
地域資源を生かした回遊プラン・体験プログラムを企画・立案し、情報発信を行うこと のできる中核的人材の育成を行う。また、織物と竹加工技術を活用した新商品の開発を行うことのできる人材や、再織技術の体験事業に向けた人材の育成を行う。
[3]地元食材を活用した健康で環境にやさしい料理づくり研究セミナーの開催
専門家を招いて地元飲食店と共に地元食材を活用した観光客向け新料理メニューを研究するセミナーを開催する。
[4]情報・相談支援事業
U・Iターン者の誘致の情報発信を始め、本事業での各種セミナーの開催案内などの情報提供を実施する。
(6)パッケージ事業実施による将来像
全国シェア90%を誇る伝統的地場産業であるパイル織物・紀州へら竿産業の担い手が確保され、また、企業誘致や創業による新たな産業での雇用も確保される。それにより伝統産業の再生が図られ、産業連携による新しい地域産業と既存産業の相互の活性化が期待される。