地域特性を活かした観光産業による雇用機会の創出
(１)地域 ：秋田県藤里町
(２)地域の現状
藤里町では、平成5年12月に「白神山地」が世界自然遺産に登録されて以来登山客等の入り込み客が毎年30万人余りとなっている。しかし、主要幹線が冬期間閉鎖されるなど、閉ざされた印象があり、かつシーズン中の観光の主流が山間部中心の通過型観光であるため、地域経済の活性化・雇用の創出が期待できない状態となっている。
また、農林業が主要産業であり、少子高齢化に伴う人口減少によって継ぎ手のない農家や担い手のない未利用地が増加しており、さらに製造業、卸・小売業、サービス業なども誘致企業の撤退や、小規模店舗の経営状況悪化等により、雇用の場の維持が困難になっている。
そうした状況の中、近年のゆとり・やすらぎを求める旅行者によって里山や河川の観光分野の魅力が見直されてきている。そこで、町はツーリズム（観光事業、旅行業、観光旅行）分野において地域独特の風土をいかし、自然・農林業体験や山菜・粕毛鮎・白神酵母等の食の提供等の都市農山村交流を進めることによって、滞在型観光へのシフトと滞在型観光と地域産業の連携を図り、地域経済の発展と雇用の創出を目指している。
(３)地域で行っている取組
[1]エコ・ツーリズム推進モデル事業
「白神山地」とその周辺環境の保全に基づいた体験プログラムの作成や、白神ガイド等の担い手の育成、広域エリアと連携した観光プログラム等の作成を行っている。
[2]白神山地地域活性化計画策定事業
地域住民が中心となった自然・農林業体験や食の提供等の農山村間交流を中心に、新たな農林業の展開と観光産業を結びつけた滞在型交流事業を促進している。
[3]湯の沢国施設等再配置整備作業
ツーリズム事業の拠点エリアを設定して情報などの送受信ができる施設や遊歩道を造るなどの総合的な環境整備を実施している。
[4]観光情報・産品販売業務機能強化事業
(財)藤里町観光物産協会を中心にした観光・産品販売業務の拡大を目的とした白神ブランドの開発、地域産品販路拡大推進、観光案内・観光施設等の情報提供機能の強化を図っている。
[5]地域創業助成金の活用
食料品製造業、飲食料品小売業、一般飲食店を地域重点分野に設定し、助成対象としている。
[6]地域雇用創造バックアップ事業の活用
地域雇用創造調査研究事業を活用し、パッケージ事業の事業構想の策定を行った。
(４)課題
[1]エコ・ツーリズム推進モデル事業について
体験プログラム、観光プログラムの作成を進めているものの、プログラム作成の専門知識が不足している。また地域の文化・風土に詳しい人材も必要である。
[2]湯の沢地区施設等再配置整備事業について
湯の沢地区内の宿泊施設及び産業施設の情報送受信機能や事業の推進体制や推進していく中核的人材が不足している。
[3]白神山地地域活性化計画策定事業について
体験メニューの開発・企画立案ができる人材の育成が必要である。また、ＰＲ及び情報提供を強化する必要がある。
[4]観光情報・産品販売業務機能強化事業について
地域産品の商品化及び販売ルートの確保が実現できていない。また、総合的な観光案内や情報提供のできる人材の育成が必要である。
(５)パッケージ事業での取組
[1]ツーリズム関連人材育成事業
環境保全プログラム、体験メニュー作りに必要な専門知識を習得するための立案知識研修や郷土技能の継承・習得を目的とした里山でのモノづくり体験等を行い、必要な人材の育成を図る。
[2]就職相談・起業セミナー等研修事業
経営・人事労務管理の内容を中心とする相談を実施する。又、各専門分野の講師を招いて創業前・起業セミナーを実施する。
[3]観光産業経営能力強化事業
特産品販売等観光産業に従事しようとする求職者等に対し、展示方法、接客サービス等の研修を実施し、人材育成を行う。
[4]白神ブランド創造特産化事業
地域産品を活かした町ブランド化商品の開発をすることのできる専門的な人材の育成を行う。
[5]雇用創出促進フォローアップ事業
ツーリズム関連人材育成事業実施に関して、アンケート調査により就職効果の把握などフォローアップを行う。
(６)パッケージ事業実施による将来像
町でのこれまでの取り組みに加えてパッケージ事業を進めることによって、雇用創出が期待される。ツーリズム関連の人材を育成することで新たな起業を促し、起業に対する支援を図ることで経営の安定も図られる。地域産品を活かした町ブランド化商品を開発・流通させることで観光情報の提供が促進され、白神山地と共存した環境保全型観光の町づくりが進んでいく。
