「e-まちづくり」に向けた人材育成と
さとうきびを活かした庵美農業環(わ)の活性化による雇用創出
(1)地域:鹿児島県奄美市(旧名瀬市)
(2)地域の現状
名瀬市は、自然豊かな奄美大島の中心に位置する。伝統ある「大島紬」やさとうきびを原料にした「黒糖焼酎」が市の特産品である。しかし、昭和55年をピークに人口・産業就業者数ともに減少傾向にあり、市内の高齢化・過疎化が進行している。その要因として、基幹事業である大島紬の生産高の長期低迷や、公共事業等の減少に伴う建設業の落ち込みによって地域経済が大きな打撃を受けたことが挙げられる。また、高齢化に伴い、さとうきび生産の担い手が不足し、遊休農地が増加している点も改善しなければならない。
(3)地域で行っている取組
本市では、若年者を中心とした労働力の流出による高齢化・過疎化の進行をくい止めるとともに、雇用機会の減少に対応するために、ITを活用した人材育成とさとうきび生産を新規に行う農家の育成に重点を置き、以下のような取組により雇用創出を図っているところである。
[1]新分野進出支援
SOHO(データエントリー)事業の支援:データエントリー事業は、インターネットに接続できる環境があれば在宅しながら作業が行え、比較的困難な技術力も要しない。そのため、外海離島にある本市にとっては雇用創出を図る有効な手段であることから、データエントリー事業を行う企業に対し費用を助成して支援する。
[2]企業誘致
コールセンター企業の誘致推進:雇用効果の大きいコールセンター企業を誘致して、若年者を中心に域外へ流出している労働力の確保と新たな雇用の場の創出を図る。
[3]IT産業振興の取組
市内IT企業と連携して「名瀬市IT推進プロジェクトチーム」を設立し、市民生活の向上、地域社会の活性化、産業振興を目指し、市民一人一人がITの恩恵を享受できるような「e-まちづくり」の実現を目指す。さらに、「名瀬市・沖縄地域IT推進研究会」を設置し、市内の情報通信産業の振興、産業の情報化を推進する目的で、情報通信分野で先行する沖縄地域と連携を図り、情報交換等を行っている。
[4]観光特産品の販路拡大
伝統ある奄美大島紬と奄美限定の「黒糖焼酎」を中心とした特産品の販路拡大と観光客誘致のために、全国各地で物産展開催や各種イベントの出展を行っている。
[5]さとうきび生産振興事業
遊休農地の増加をくい止めるため、土壌改良、植栽、耕転等に対する補助を行っている。
[6]堆肥生産販売事業
オガクズ等を活用した堆肥を販売して環境保全型農業を推進し、農家のニーズに対応している。
(4)課題
(3)の取組を推進する中で、地域においては以下のような人材面での課題を抱えている。
・誘致企業(コールセンター)が求める専門的知識を持つ人材の不足
・高度なIT技術を持つ人材の不足
・特産品や観光への大幅な需要拡大を目指したオンラインショッピングに関する技術力とノウハウを持った人材の不足
・農業技術指導を行う高度な専門知識を持った人材の不足
・さとうきび栽培等の技術・ノウハウを持った人材の不足
・黒糖加工技術に関する知識・ノウハウを持った人材の不足
・堆肥化技術に関する知識・ノウハウを持った人材の不足
(5)パッケージ事業での取組
[1]SOHO起業家創出支援事業
SOHO起業家を目指す者が自立できるように、ノウハウや技術力及び起業後の採用や人事管理に必要な知識の習得のための講演会を実施し、雇用創出を図る。
[2]コールセンター就職支援事業
・コールセンター就職支援セミナーの開催
・コールセンター人材育成講座の開催
業務に必要な基礎的研修からスキルアップ研修、業務管理などの研修を行い、人材育成を図る。
[3]ITスペシャリスト養成講座の開催
基礎的なIT技術を持つ者を対象に、WEBクリエイターやプログラミングなどより高度で専門的な研修を行い、IT技術者育成による雇用の促進を図る。
[4]特産品販売促進・観光ビジネス展開支援事業
奄美大島の特産品や観光を、インターネット等を活用して島外へ広くPRすることで販路拡大や観光客増加を図るために、必要な技術・ノウハウに関するセミナー・企業塾を行う。
[5]企業の新分野進出支援事業
栽培分野や畜産分野への事業拡大や、新規に起業する企業を支援するため、専門知識を持つアドバイザーを派遣して企業の従業員に対し研修を行うことにより、地域産業の振興と活性化を図る。
[6]さとうきび栽培及び黒糖加工に対する技術取得等の支援事業
さとうきび生産への新規参入者に対し、さとうきび栽培及び黒糖加工の技術取得支援を行う。また、これに併せて、堆肥化技術の向上も図り、堆肥生産分野での雇用創出を図る。
(6)パッケージ事業実施による将来像
「e−まちづくり」に向けた人材育成:IT技術を持つ人材・誘致企業が求める人材の育成に力を入れることで、安定した雇用の場を創出することが可能になる。また、IT技術と農業の融合も期待される。すなわち、インターネット等を活用して名瀬市のPRを広く行うことで、特産品の販路拡大や、農業体験・農家民泊を促進して観光振興を図る。
「さとうきびを活かした奄美農業環」:さとうきび栽培及び黒糖焼酎の製造を支援し、その副産物を堆肥として再利用して、環境にやさしい循環型農業を目指す。
<雇用創出目標>
- 平成17年度:152人
- 平成18年度:75人
- 平成19年度:75人
- 合計 :302人