中小企業及び観光と農漁業の共生対流を通した起業創造と雇用機会の増大
(1)地域 :熊本県荒尾市
(2)地域の現状
かつて荒尾市は三井三池炭坑を中心とする日本有数の産炭地域であった。しかし,近年の閉山に伴って産業は停滞し,今なお雇用や消費の県外依存の体質には変化がない。つまり,高齢化とともに,稼いだ所得が県外へ消費されて,“利益”が循環・蓄積しない地域構造となってしまった。それに加えて,域内に若者就職の受け皿がないこと,退職を迎える団塊の世代を受け入れる地域づくりが求められていることなど,差し迫った問題がある。
(3)地域で行っている取組
[1]地域再生事業(「食」の地域起業の芽を育てる)
一次産業がまちづくりへ参加できる機会を作り,特産物を活かした加工品づくり(ワイン、ハーブ食品、酢、醤油等)を中心とした二次産業を振興し,レストランや観光業などの三次産業の起業につなげる。このように荒尾市では,第一次,第二次,第三次産業それぞれの雇用の受け皿が連動して共生対流できるような循環型地域づくりに励み,この地域再生計画が平成16年に認定を受けた。
[2]地域再生マネージャー事業(雇用の受け皿の創出)
自律した産業循環の受け皿を作るため,「食」を中心としたものづくりの起業化を,地域再生計画に基づき推進する。商店街の空き店舗を活用するなど,地域と企業が一体となった雇用機会の創出を目指す。
・特産物を生かした加工品開発のためのまちなか研究室を開設し産学住連携を図る ・住民参加により商店街ワイナリー(ワイン醸造所)を設立する ・「創発」を呼び起こす…コミュニティ活動への市民の参加を広く求め,地域住民による創業を促進する。 |
[3]その他事業
補助金制度,融資制度等を設けて域内の企業や起業家を支援する。
・企業誘致の推進 工業団地・産業団地への企業誘致・企業経営強化への支援 資金融資,補助制度
・起業家支援 商店街空き店舗の利用 等
(4)課題
[1]創業を担う人材の不足
新規居住者や農業者,漁業者,商業者等が連携してまちづくりに参加し、具体的な事業を起こすといった活動が住民の一部にとどまっている。
[2]地域住民による法人設立の促進
将来的な地域の自律のために,まちなか研究室の協議を踏まえた地域住民による会社設立のために、ノウハウを有する人材が不足している。
[3]ものづくり生産技術を担う人材の不足
食を中心としたものづくりを進めるにあたって、ワイン、ハーブ食品等の生産技術を担う人材が不足している。
(5)パッケージ事業での取組
[1]起業促進事業(起業ワークショップ,市民起業塾,シニア起業勉強会の開催)
創業意識を喚起し、具体的なノウハウを付与することにより、チャレンジ精神溢れた若者やシニアを育成・輩出する。
[2]業務別研究会事業
地域再生マネージャー事業でこれまで発掘してきた地域資源を軸とし,ワイン、ハーブ製品、酢、醤油等の製造・販売に係る法人設立を図るために,加工技術、商品開発についての研修を行う。
[3]中核的人材育成事業
[2]における法人設立に向け,中核的役割を担う人材育成のために,国内派遣研修を行う。
[4]フォローアップ事業(経営戦略セミナー,労務管理セミナーの実施)
[5]合同求人説明会事業
求職者への求人企業の紹介と求人情報の提供の場を設ける。
[6]求人・情報相談事業
インターネットを活用して,求人情報や市の活動情報を積極的に発信する。
(6)パッケージ事業実施による将来像
まちなか研究室等を活用して,住民参加の地域再生を推進することで,住民の起業に関する意識改善から行う。そして,企業や専門家と連携し,また国内研修等を実施することで専門的技術の習得も積極的に図る。さらに,循環型の産業システムの構築を目指して,地域全体の経済活性化を図る。これら取組によって地元地域に根ざした会社づくりをし,雇用の場の拡大とともに,荒尾市の成長と息の長いまちづくりの実現を目指す。
<雇用創出目標>
- 平成17年度:23人
- 平成18年度:50人
- 平成19年度:73人
- 合計 :146人