ものづくりの復権による雇用機会の創出
(1)地域 :大阪府堺市
(2)地域の現状
堺市は,戦後の高度成長期に重化学工業を中心とした臨海工業地帯が造成され,また,機械金属工業等を中心とした集積が形成されていることもあり、工業都市として日本の経済成長に大いに貢献した。しかし,長く続いた不況の影響を受け,市内の工場数,製造品出荷額等が減少して空洞化が進んでいる。さらに,国勢調査(平成12年)によると,戦後初めて市内の労働力人口が減少しており,団塊の世代の高度な技術力やノウハウの伝承を含めて,厳しい経済・雇用環境の改善が今後の課題となっている。
(3)地域で行っている取組
[1]創業・ベンチャー支援施策
・さかい新事業創業センター事業
ベンチャー・中小企業等に多様な賃貸型事業拠点を提供するとともに,研究開発から事業化までを総合的に支援する。
・堺市ビジネスインキュベーション入居者支援補助事業
・堺試作開発型事業促進施設(テクノフロンティア堺)入居者支援補助事業
入居者の費用負担を軽減するために施設賃料の一部を補助する。
[2]中小企業支援
・産学連携促進事業
市内企業と大学等との連携の場と機会を提供し,技術開発等による新たな事業分野への進出を支援するため、共同研究に必要な経費の一部を助成する。
・ゑびすエンジンさかい21
企業の販路開拓・ビジネスチャンス取得支援のために開発した,インターネット上での取引機会の創出システムの運営を行う。
・産業フェアの実施
機械金属工業等を中心とした中小製造業等の販路開拓や製品・技術PR・企業マッチングを図るべく産業フェアを実施する。
・堺ものづくりマイスター制度
全国に誇れる技術・技能を有している者を「堺ものづくりマイスター」として認定。学校現場や地域などに派遣し,若年者のものづくりに対する関心を高め,その優れた技術や技能を継承できる人材育成を図る。
[3]誘致施策
・誘致条例の制定等
・企業立地に向けた優遇策を実施し,誘致体制の整備や誘致条例の制定など企業誘致活動を展開する。
[4]雇用施策
・ヤングJOBステーション事業(平成17年度新規事業)
若年者の仕事探しを支援するため,若年者に適切な職業選択や職業意識の醸成を図り,就職に向けた支援を実施する。
・新卒学生合同企業説明会「就職フォーラム」
地元企業と地元に就職希望する新卒者とのマッチングを図り,雇用の創出を目指す。
(4)課題
・団塊世代が持つ高度な技術力等を伝承する必要があるが,ものづくりに関心を寄せる若者が少なくなっているため,若年者のものづくりの関心を喚起し、熟練した技術・技能の受け皿となるものづくり人材の育成を図ることが必要となっている。
・有効求人倍率が改善傾向にある中で,完全失業率が高水準にあり,雇用のミスマッチが生じている。
・求人のある中小・ベンチャー企業について、知名度不足が原因で就職希望者がいない状況となっており、知名度の低い企業をPRすることで,地域の人材と地域の企業のミスマッチを解消する必要がある。
・現在、創業支援事業を行っているものの、いまだ十分な効果が得られていない。
(5)パッケージ事業での取組
[1]「堺ものづくり大学」の開催及び運営
若年失業者を中心に,企業が必要としているものづくり技能に直結する技能講座を開催する。
[2]就職面接会の開催
ものづくり企業の就職面接会を行い,就職機会の増大を図るとともに,[1]の参加者に対してもマッチング機会を広く提供する。
[3]人材マーケティング事業
推進員が市内企業を訪問し,中小企業の求める人材や卓越した技能を有している企業OB情報等を収集し、様々な機会を通じて情報発信する。
[4]就職フェア(合同面接会)
市内企業と「堺ものづくり大学」の受講者等の求職者との合同面接会(求人説明会)を行う。
[5]創業者支援事業
雇用の受け皿作り促進のため,創業者等に対し,労務管理や経営支援等ができる人材の情報提供等を行う。
[6]ベンチャービジネスインターンシップの推進
オールマイティーな経験ができる新規創業者のもとでのインターンシップを実施する。
(6)パッケージ事業実施による将来像
堺市のパッケージ事業では,まず、若年者を中心にものづくりの能力開発を行う。そして,企業側の採用や求める人材の把握に関して支援する。また,合同面接会等を行うことで,雇用のミスマッチを解消し,マッチングを促進する。これら一連の活動の実施によって,ものづくり振興気運の醸成を図り,地域が一丸となってものづくり人材の育成を進めることにより,地域再生と雇用機会の増大を目指す。
<雇用創出目標>
平成17年度:99人
平成18年度:152人
平成19年度:172人
合計 :423人