地域産業の観光産業化による雇用機会の増大
(1)地域 :秋田県男鹿市
(2)地域の現状
本市の,第一次産業・製造業・卸小売業・サービス業は,単体では経営基盤が弱く,衰退傾向にあり,今後も経営面の向上や雇用の増加は見込みにくく,働く場の確保に苦慮している。
一方で,市として国定公園の指定を受ける等,県内有数の観光地として,年間約200万人の入り込み客数がある。また,豊富な資源と「なまはげ」に代表される地域固有の伝統文化や歴史,独特の風土にはぐくまれた農林漁村の生活文化は新しい観光志向を引きつける魅力であり,このような観光資源を産業化し,産業振興と雇用開発に結びつけることが地域再生の課題である。
観光は,地域資源を活用した地場産業であり,業種横断的な経済効果を期待できる有望産業であることから,余暇志向の高まりによる需要拡大や脱公共事業化の流れの中で,経済投資の対象としても可能性が高く,観光産業の振興を戦略的に進めることによって,新しい雇用の創出を図ろうとしている。
(3)地域で行っている取組
[1]地産地消事業(拠点施設の新設)
市民だけでなく,観光客も対象として,地域で生産される農産水産物の地産地消キャンペーンを展開し,地元食材の提供と加工商品化による地元消費を促進する。また,テナント入居に対する定額貸与等によって,創業を促進する。
[2]男鹿温泉郷環境整備事業
男鹿温泉郷において,伝統ある「なまはげ太鼓」,「なまはげ踊り」,三味線等の郷土芸能の演奏や,正当な「なまはげ」を伝えるための講習会・体験教室を実施している。また,歴史・文化的資料の展示,軽食喫茶,土産品の販売等多目的に使用できる屋内イベント施設や,展望公園,足湯等の新たな観光資源の宣伝を国内外に展開し,滞留型観光産業を推進している。
[3]男鹿市地域特産品開発推進事業
食品加工研究の専門機関とタイアップして,地元の農水産物を活用した特産品を開発している。また,地元から募ったアイディアを元に,地元飲食店でメニュー化を図っている。これらを県内外の観光客に提供するとともに,全国各地の物産展等に参加し,販売・PRを図る。さらに,特産品の販売に関する全国先進地での成功例を把握するための視察を行うとともに,誘客宣伝プロモーションによる販売ルート拡大を図っている。
(4)課題
[1]地産地消事業
経営・管理を含めた販売戦略の展開,企画立案,販売を効果的に担う人材が不足している。また,創業を目指す者に対する情報提供・相談窓口が必要である。
[2]男鹿温泉郷環境整備事業
観光産業の新商品の国内外への事業拡大のための,観光プログラムの企画立案ができる中核的人材が不足している。
[3]男鹿市地域特産品開発推進事業
食品加工研究機関と連携して新商品を開発できる専門性を有する人材,コンクール等のイベントをプロデュースし地域らしさをアピールできる人材が必要である。また,商品化及び販売促進のノウハウを有する人材の発掘と育成を行い,県外までの広域的販売ルートを確保することが必要である。
(5)パッケージ事業での取組
[1]地産地消事業
i地域産品販売・観光案内スキルアップ事業
地域産品に携わっている者及び販売職種への希望者を対象に,具体的な販売ノウハウや宣伝・陳列の方法,接客マナー等の研修を行い,販売戦略の向上を図る。また,観光面においても,男鹿半島全域の観光案内ができるように,道案内,観光スポット等の説明を付加した研修を実施する。
ii経営・企画立案人材育成事業
商品開発,販売戦略,経営・労務管理,キャンペーン等の企画立案等の知識・ノウハウを付与するための研修会,検討会を実施する。
iii創業相談・セミナー事業
専門の講師により,地産地消の拠点施設のテナント入居者に対して創業前研修を実施する。さらに,創業相談窓口を設置し,事業開始前の各種助成措置の紹介や低額貸与の申請等の創業相談を実施して,創業を推進する。創業後も,事業継続のための経営戦略,ノウハウについてのセミナーや相談業務を行い,ノウハウ不足による早期廃業の防止に努め,これにより雇用の場の創出・確保を図る。
[2]男鹿温泉郷環境整備事業
i男鹿半島観光人材育成事業
新たな観光商品の国内外への発信,講習会・体験教室等の周知広報,観光プログラムの企画立案ができる観光カリスマ育成のためのセミナーを,専門講師を招いて実施する。また,韓国語,中国語圏からの観光客を念頭に置き,観光関連施設での接客を行う者等を対象とした語学・慣習に関するセミナーや,宿泊施設従業員等を対象とした集中的な語学研修等を実施する。
[3]男鹿市地域特産品開発推進事業
i新規商品開発・特産化事業
新商品を開発し,イメージアップとブランド化を図り,確かな加工技術と商品開発の知識を持った人材を育成する。
ii特産品販売促進事業
食に関する新商品の販売促進のための,各種イベントの企画,未実施地域へ販路を拡大するための講習会を開催し,中核的人材を育成する。
(6)パッケージ事業実施による将来像
商品開発,販売戦略,経営・労務管理,企画立案等の専門知識を持った人材の育成と創業支援によって,地元の食材「はたはた」等の地域資源を活用した地場産業の振興を目指す。さらに,このような地場産業を活用した特産品等を目玉とし,グリーンツーリズム等の観光の新潮流に対応した滞留型観光産業を推進する。
<雇用創出目標>
平成17年度:70人
平成18年度:110人
平成19年度:200人
合計 :380人