海草おしばの里づくりによる雇用機会の増大
(1)地域 :北海道利尻町
(2)地域の現状
利尻町は水産業と観光産業が基幹産業であるが、漁業においては不安定な水揚げ量、島嶼であるがゆえにかかる輸送コスト、国外からの輸入などにより市場での価格競争が厳しく恒常的な後継者不足にも悩んでいる。観光産業においてはツアーの低料金化が進む一方で観光ニーズの多様化により観光入込み数は減少しており、さらに公共事業の減少のため建設土木業の事業所では人員削減があり、利尻町の雇用情勢は深刻なものになっている。
このような状況の中、海岸に打ち寄せられる雑海藻の有効活用であり「押し花」「押し葉」と同じような作品づくりを楽しむことができる「海藻おしばの里づくり事業」を推進させ、漁業・文化・環境の連携による利尻島独自の新産業を活性化させようと取り組んでいる。
(3)地域で行っている取組
[1]海藻おしばの里づくりに向けた取組
処理に苦慮している利用されない資源である海藻を用いて「海藻おしば」の素材をつくり、生涯学習等の文化活動・観光体験に組み入れ、「漁業・文化・環境」の連携に取り組んでいる。
[2]クルーズ船寄港による観光振興の取組
年間4〜5回程度ある大型クルーズの寄港において、船内での寄港地紹介や上陸に際しての歓迎イベントの実施、地域との交流を深めるオプションツアー等を提供している。
[3]冬期観光誘致に向けた取組
冬の利尻山の景観を中心に海岸や漁家風景を楽しみ、冬の体験メニュー、利尻独自の文化を提供するモニターツアーを実施し、冬期観光の誘致を進めている。
[4]新観光メニュー提供事業「利尻島の暮らし体験ツアー」の取組
観光入込み数の少ない春や秋の魅力をPRし、観光客の誘致活動を行う。
[5]地域創業助成金の活用
漁業、食料品製造業、その他の製造業を地域重点分野に設定し、助成対象としている。
(4)課題
・海藻おしば起業家は、全国的にも前例がない新しい取組であり、利用者の意識調査・新たな販路の開拓・独自の技術開発・地域内でのインストラクター育成が急務である。また、起業家のために事業経営や運営体制に関しての専門家のアドバイスが必要となる。
・クルーズ船寄港の歓迎イベント等がマンネリ化しており、新イベントを企画できる人材が必要である。
・冬季観光のメニューが少なく、独自性に欠けており、観光プログラムを企画できる人材が必要である。
・利尻の冬を代表する食の提供について、独自性のあるサービスを提供できる人材が不足している。
・漁業、自然、観光業の連携による「暮らし体験」ツアー導入において、総合的に演出できる知識・技術を持った人材がいない。
・エコツーリズム・ブルーツーリズムの理解が不十分であり、漁業施設等の見学と連携したプログラムを提供できる人材が不足している。
(5)パッケージ事業での取組
[1]海藻おしば起業化支援のため、インストラクター育成や販路拡大、ネットワークビジネス構築、特産品開発などのための研修を行う。
[2]クルーズ船寄港の歓迎イベント開発や、寄港地紹介プログラムづくりのための研修会を行う。
[3]利尻タウンガイド養成講座及び「エコツーリズム・ブルーツーリズム」セミナーを開催する。
[4]食材の安定供給、食の見直しのため、「利尻の食文化に関するセミナー」を開催する。
(6)パッケージ事業実施による将来像
当地域は「利尻昆布」とその生産地である「利尻島」で高い知名度を誇っており、産業振興に利用できる素材を数多く有しているにもかかわらず、それを活かしきれず、雇用情勢悪化や定住人口減少などを引き起こしてきた。しかし、上述した事業の実施により人材育成や観光地としての環境改善などが行われ、海藻おしばを中心とした利尻独自の新産業の活性化・雇用拡大へとつながることを目指す。
<雇用創出目標>
平成17年度:5人
平成18年度:5人
平成19年度:5人
合計 :15人