旭山動物園を起爆剤とした滞在型観光振興による雇用機会の増大
(1)地域 :北海道旭川市
(2)地域の現状
旭川市では,バブル経済崩壊後,設備投資や企業立地の低迷,消費の落ち込み,公共事業の縮小等により,ピーク時に比べ,製造品出荷額は約3割減少,年間商品販売額は約2割減少した。また雇用状況も全国と比較して,依然として厳しい状況が続いている。その一方で,観光産業は,旭山動物園を中心として高い伸びを示しており,官民が連携して,旭山動物園の集客効果を滞在型観光や他産業への経済波及につなげる取組を行うこととしている。
しかしながら,これまでは観光客のうちの多くが通過型・ビジネス客が中心であったために,ホスピタリティ・サービス及びホスピタリティ・ビジネスが十分でない状況にある。
そこでパッケージ事業を活用しながら,急増する旭山動物園への入園者を起爆剤に位置づけ,滞在型観光振興を図るため,「1.質の高い観光サービスの提供」「2.地域産業の特性を活かした観光商品の開発と販売」「3.観光情報サービスの充実」を担う人材の育成や確保に関する事業を一体的に実施し,官民協働のもと地域産業全体における雇用機会の増大を目指す。
(3)地域で行っている取組
[1]観光客誘致と滞在型観光振興
東アジアへのプロモーション活動や旅行関係者の招聘事業をはじめ,国内向けには,旭山動物園と科学館等をコースとした修学旅行の誘致や,冬季観光の振興,夏・冬祭り等のイベントの開催,旭山動物園における展示施設整備や開園時間拡大,観光スポットを巡回する「ファンファンバス」の運行等,観光イベントや観光施設の拡充と併せて受け入れ体制の充実にも取り組んでいる。
[2]地場製品の開発・販売促進
地場製品の高付加価値化や販路拡大のため,旭川市工芸センターでの家具等の木工製品の開発・研究・指導をはじめ,地場製品の開発や見本市・展示会への出展に対する助成を行っている。また全国百貨店での物産展の開催を支援するとともに,地場産品の旭山動物園での実験販売を予定する等,地域の資源や技術を活用した新たな製品開発や新規の販路開拓,地場産品のPR等に取り組んでいる。
[3]観光情報の発信と提供
ホームページでの観光情報の発信や,外国語版パンフレットの作成を行っている。また,観光情報センターを設置し,観光客への案内に取り組んでいる。
(4)課題
[1]外国人観光客の増加,団体ツアーから個人・グループ等への旅行形態の変化,見る観光から体験する観光への旅行内容の変化等の多様化する観光ニーズに対応していくことが重要である。
[2]地場産品の知名度が低いので,積極的にPRしていく必要がある。また,オリジナル観光商品の開発や地域ならではの食の提供等の必要性が高まっている。
[3]国内外の観光客ニーズに対応した多言語かつ多様な情報を提供することが不可欠となっていることから,インターネットや携帯端末の普及を視野に入れた観光情報の発信と観光サービスの充実を図る必要がある。
[4]現状では,[1]〜[3]のような観光インフラの充実を図るために必要なノウハウや人材が不足している。
(5)パッケージ事業での取組
[1]観光産業担い手育成事業
観光サービス業への就職を希望する若年者等を対象に,職種やそれに必要な知識・能力等についての説明と指導・助言を行うガイダンスを開催する。
[2]旭川観光フォーラム開催事業
旭川市内の企業の従業員や求職者等に対し、旭川の観光に関する,通過型・ビジネス客中心であることの弱みと、旭山動物園や,スキー場等の観光資源を有することの強みを再認識させ,取り組むべき課題を学び,新規サービスや事業化を促進できる人材を育成することを目的として、有識者等によるフォーラムを開催する。
[3]観光ベンチャービジネススクール事業
SOHOやNPO等で観光分野での新規創業・事業化を目指す事業者を対象に,多様な観光客のニーズに対応できる人材を育成するための研修を実施する。
[4]旭川オリジナル観光商品等開発支援事業
動物園グッズ等の記念品や外国人観光客向けの土産品の数が少ないことから,製造業の製品開発担当者等を対象に,オリジナル観光商品の開発ノウハウを学ぶ研修会を開催する。
[5]旭川地場製品販売能力スキルアップ事業
地域産品の販売力を向上させるために,製造業や卸・小売業において観光関連商品の販売展示の方法や顧客確保,販路拡大,情報発信等のノウハウに関するセミナーと相談会を開催する。
[6]ものづくり技能・技術者育成事業
地域の工場や工房等を対象に,受け入れ可能な企業の募集・登録を行い,ものづくりを担う技能・技術者を志す学生や求職者を募り,生産現場で体験できるインターン事業を実施する。また,業界や企業内での技術課題克服のための研修会等への講師や専門家の派遣を行う。
[7]観光情報発信ノウハウ講座開催事業
観光関連情報をインターネットを通じて観光客に提供していくため、情報提供サービスの担い手を育成する研修を実施し,雇用の増加を図る。
[8]情報技術者育成事業
市内情報関連技術者を先進企業に派遣し,技術・ノウハウを習得させるとともに,専門家を招聘して情報技術者育成セミナーを開催し,市内IT企業の技術力向上を図る。
(6)パッケージ事業実施による将来像
旭川観光のサービスの充実とホスピタリティの向上により,観光産業の強化・創出を図る。また,旭川観光をPRし,快適で安心な旅行をサポートするための観光情報サービスの充実を図るため,関連技術を有する人材を育成・確保する。
さらに,旭川産業の魅力を観光客にアピールし,域内での消費拡大を図るため,地域特性を活かした観光商品等の開発や販売を支える人材を育成・確保する。
<雇用創出目標>
平成17年度:183人
平成18年度:212人
平成19年度:262人
合計 :657人