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第9回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合 結果概要

平成24年1月31日

大臣官房国際課国際協力室
工藤(内7302)、五十嵐(内7304)
電話番号 03-5253-1111
(夜間直通 03-3595-2404)

第9回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合 結果概要

厚生労働省は10月25日から10月28日まで、ASEAN10カ国の行政担当官の参加を得て、第9回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合を開催しました。会合では福祉及び保険分野の人材育成をテーマに、活発な議論を行い、今後の取組の方向性について提言をまとめました。会合の概要や提言を以下の通り、お知らせします。

結果概要・英語版はこちらをご参照ください。

1. 開催概要

日時: 2011年10月25日(火)〜10月28日(金)
場所: 京王プラザホテル新宿
主催: 厚生労働省
協力機関: ASEAN事務局、世界保健関西太平洋地域事務局(WHO/WPRO)、国際労働機関(ILO)駐日事務所、独立行政法人国際協力機構(JICA)
参加国
ASEAN10ヶ国 (計46名)

ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム
(原則として、社会福祉政策担当行政官各国2名、保健政策担当行政官各国2名及び雇用政策担当行政官各国1名)

中国、韓国
テーマ
「福祉及び保健分野における人材育成

-サービス提供者の能力向上と社会的弱者の就業能力育成に焦点をあてて-」

Human Resource Development in the sectors of Welfare and Health

- with a focus on capacity building of service providers and employability promotion of vulnerable people –

2. 議論の概要(プログラムは別添を参照)

 有識者からの講演では、植村英晴教授(日本社会事業大学)から日本のソーシャルワーク分野における人材育成の取組の変遷について、田代順子教授(聖路加看護大学)から日本の地域保健の変遷及び地域ケアにおける専門職の能力や育成の課題について、谷口雄治准教授(職業能力開発大学校)から障害者及び高齢者の就業能力育成に関する日本の取組と課題について紹介がありました。

 また、協力機関からの講演として、ASEAN事務局から「Strategic Action Plan(2011-2015)」に基づく保健・福祉・労働分野の人材育成に関する行動計画について、WHO/WPROから地域ケアを推進するための「人中心のケア(People-Centered care)」の概念について紹介がありました。続いて、JICAからアジア地域を中心とした福祉分野における人材育成に対する取組について、ILO駐日事務所からILO政策に基づく地域レベルでの高齢者や障害者に対する雇用創出の取組について紹介がありました。

 各国のカントリープレゼンテーションでは、各国の福祉及び保健分野の人材育成や障害者・高齢者の雇用に関する状況、成功事例、直面している問題等が紹介され、ASEAN各国及び日本の間で情報、経験及び知識の共有がなされました。

 紹介された情報に基づいて、保健福祉サービス提供者の能力向上や社会的弱者の就業能力向上のための取組や共通課題、及び、分野間連携や官民連携の取組について活発な議論が行われた後、以下の提言が全員参加により合意されました。

3. 合意された提言

前文

2011年10月25日から28日まで東京で開催された第9回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合に参加した、保険社会福祉及び労働分野からの参加者は以下の項目について認識する。

  1. ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合を2003年から開催している日本政府のイニシアティブに感謝するとともに、第9回会合は保健・福祉・労働分野の人材育成に関する情報共有と意見交換のための有効な場である。
  2. 保健・福祉・労働分野の人材育成の推進に際して、ASEAN加盟国は多様であり、各国の開発段階に差異があり、中央政府と地域での課題も異なる。
  3. 社会的弱者の抱えている問題は多様であるとの認識に基づき、国及び地方レベルの関連省庁間の緊密な連携の下に、官、民及び市民社会がパートナーシップを強化する必要がある。
  4. 本会合の提案に対する国及び地方レベルでのフォローアップ・アクションが必要である。

合意事項:

  1. 第9回ハイレベル会合の議事内容及び結果を各国の担当大臣や幹部に報告する。
  2. 日本はASEAN事務局の協力を得て、本会合の結果をASEAN+3保健大臣会合/高級事務レベル会合 (AHMM+3/SOMHD+3)、ASEAN+3社会福祉開発大臣会合/高級事務レベル会合(AMMSWD+3/SOMSWD+3)、ASEAN+3労働大臣会合/高級事務レベル会合(ALMM+3, SLOM+3)に報告する。。
  3. 保健・福祉・労働分野の人材育成に関し、SOMHD+3, SOMSWD+3 及びSLOM+3 を通じた既存の協力関係を強化する。

提言:

  1. ASEAN加盟各国で、社会的弱者が利用しやすく手頃な価格で、質の高い保健及び福祉サービスを提供するに当たり、行政官、サービス提供者、保健福祉従事者、ボランティアを対象とした人材育成プログラムを強化し、社会的弱者が抱える課題とニーズを確認する。さらに、人材を適所に配置し、都市部と農村部の格差を軽減する。
  2. 国・地方レベルの行政職員や関連市民団体及び人々が、政策策定、施行、モニタリング及び評価に積極的に関与するなど、全体的なアプローチを推進する。これらのアプローチは保健・福祉・労働等の関連分野の政策との一貫性を持ち、社会的弱者の生活の質向上のために相互補完的であるべきである。
  3. 分野横断的な政策策定を任務とする国家委員会の強化や設置を含め、社会的弱者のための保健、福祉及び労働分野の連携を促進する。
  4. 社会的弱者の能力を最大限に活用するための支援環境の提供に際して、官民及び市民パートナーシップ(Public Private People Partnership:PPPP)を促進する。
  5. 人々のニーズに基づく人道的かつ包括的なシステムに、個人・家族・地域社会が常に参加できるよう、保健・福祉・労働のすべての分野において"人中心のアプローチ(People-Centered approach)"を採用する。
  6. 高齢者、障害者その他社会的弱者の人間としての尊厳を守り、やりがいのある生産的な仕事への就労を促進する。また、社会に参加する機会への公平なアクセスを推進する。
  7. 地域社会に根ざした福祉サービスの成功事例の文書化と効果的アプローチを支援することによって、社会的弱者、とりわけ高齢者と障害者が、地域社会で役割を担うことを推進する。
  8. ASEAN加盟国が作成した既存の宣言及び枠組におけるコミットメントを想起し、再確認する。
  9. 分野横断的な政策対話を行い、ASEANレベル(「ASEAN Conference on Civil Services Matters」を含む)での保健・福祉・労働分野の共通言語を見出す。
  10. 人材育成における保健、福祉及び労働(雇用)問題を、有効なコミュニケーション、メディアキャンペーン、学校教育を通じて提唱する。

別添

第9回ASEAN日本社会保障ハイレベル会合 プログラム

10月25日(火)

10月26日(水)

施設訪問(埼玉県和光市等)

  • 和光市総合福祉会館ゆめあい和光
  • 株式会社東日本福祉経営サービス リーシェガーデン和光(高齢者専用賃貸住宅)
  • 株式会社日本生化学研究所 日生オアシス和光(サービス付き高齢者向け住宅)
  • 公益財団法人ヤマト福祉財団 ヤマト自立センター・スワン工舎(就労移行支援事業所)
  • 株式会社マルイキットセンター(株式会社丸井グループの特例子会社)

10月27日(木)

  • 講演4 "ASEAN's Efforts in Human Resource Development (HRD) in the Health and Social Welfare Sectors and Promotion of the Employability of Vulnerable Individuals" (PDF:2,339KB)
    (Ms. Jintana Sriwongsa, ASEAN事務局 健康・感染症 シニアオフィサー)
    (Ms. Kay Khaing Soe, ASEAN事務局 社会福祉・女性・労働 シニアオフィサー)
  • 講演5 "Meeting the Social and Health Needs of Vulnerable People: A Systems Approach"(PDF:373KB)
     (Ms. Kathleen Fritsch, WHO西太平洋事務局 健康開発課 保健人材チームリーダー代理/看護人材アドバイザー)
  • 講演6 "Enhancing the Capacity of Human Resources in Social Welfare Sector"(PDF:688KB)
      (中村信太郎  JICA国際協力専門員)
  • 講演7 "Employment Creation for Older Persons and Disabled Persons at Community Level"(PDF:239KB)
      (長谷川真一 ILO駐日事務所代表)
  • 分科会

    グループ 1: 地域社会での社会的弱者ケアにおける需要と供給のギャップ
         〜サービス提供者の人材育成の観点から
    (ファシリテーター:植村英晴 日本社会事業大学教授
              Ms. Kathleen Fritsch, WHO西太平洋事務局健康開発課 保健人材チームリーダー代理/看護人材アドバイザー )

    グループ 2: 地域社会での社会的弱者ケアにおける需要と供給のギャップ
         〜サービス提供者の人材育成の観点から
    (ファシリテーター:田代順子 聖路加看護大学教授
              Ms. Kay Khaing Soe, ASEAN事務局社会福祉・女性・労働 シニアオフィサー)

    グループ3:社会的弱者の自立を促すための取組みにおける官民のギャップ
    (ファシリテーター:上野悦子 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会国際部長
              Ms. Jintana Sriwongsa, ASEAN事務局 健康・感染症 シニアオフィサー)

    グループ4:社会的弱者の自立を促すための取組みにおける官民のギャップ
    (ファシリテーター:中村信太郎 JICA国際協力専門員)

10月28日(金)

  • 分科会報告
  • 提言採択
  • 会議総括(武井貞治 厚生労働省大臣官房国際課国際協力室長)
  • 閉会挨拶(藤井康弘 厚生労働省大臣官房国際課長) 挨拶文(日本語) (英語)

【参考】ASEAN日本社会保障ハイレベル会合の経緯

 厚生労働省では、1996年のリヨンサミットにて日本が提唱した世界福祉構想を受け、東アジアを中心とする地域協力を推進すべく、1997年より2002年まで東アジア社会保障行政高級実務者会合を開催し、社会保障分野における協力関係の強化を図ってきました。その実績を踏まえ、ASEAN地域の社会福祉及び保健医療の各分野の人材育成を強化し、日本とASEAN諸国の連携を発展させるため、2003年からASEAN・日本社会保障ハイレベル会合(以下「ハイレベル会合」という。)を開催してきました。

 ハイレベル会合の開催は、ASEAN+3保健大臣会合及びASEAN+3社会福祉大臣会合を支える事業として、関係国間で位置付けられています。第8回会合までの会合の結果は、上記ASEA+3保健及び社会福祉大臣会合及びASEAN+3社会福祉大臣会合に報告され、ASEAN諸国より高い評価を得ると同時に、今後の会合への期待も表明されています。また、ハイレベル会合への参加を契機として、ASEAN諸国で保健セクターと福祉セクターの間の協調強化に向けた取組が活発になってきています。

 第8回会合において、社会的弱者に対する施策を実施するに当たり保健及び福祉分野の連携に加え雇用分野などの他分野との連携の必要性が指摘されました。これを受けて、第9回会合では、雇用分野との連携の可能性を議論するため、社会的弱者の雇用政策を担当する行政官も招聘しました。

● 第1回〜第8回会合のテーマ

第1ステージ 第1回2003年11月 社会福祉・保健サービスにおける人づくり
第2回2004年8月高齢化社会と福祉・医療の人づくり
第3回2005年8月社会福祉・保健におけるパートナーシップと人作り
〜母子保健福祉と障害者福祉を中心として〜
第4回2006年8月社会福祉・保健医療サービスの連携と人材育成
〜社会的弱者(児童・女性)支援と福祉・医療サービス〜
第2ステージ 第5回2007年11月 社会福祉・保健サービスの連携と人材育成・地域開発
-地域における高齢者サービス-
第6回2008年9月次世代健全育成(健やかな次世代の育成を目指して)
-保健と福祉の緊密な連携の下で-
第7回2009年8月「共生社会」の構築(障害者の自立、自己実現と社会参加)
〜福祉と保健、医療システムの連携を通じて〜
第8回2010年8月社会的弱者の貧困軽減
〜保健と福祉の連携強化を通じて〜

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