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子ども虐待対応の手引き(改定概要)目次
子ども虐待対応の手引き(改定概要)目次
子ども虐待対応の手引き 改定概要
○ |
「同居人の虐待を保護者が放置すること」や「子どもの面前で配偶者やその他の家族などに対し暴力をふるうこと」、「意図的に子どもを病気にさせること」などを子ども虐待の例示として追加 |
○ |
保護者以外の者からの虐待を受けている子どもについても、児童福祉法にいう「要保護児童」に該当し、同法に基づく通告および保護の対象になるものである。 |
○ |
子ども虐待防止対策の基本的考え方として、
(1) |
発生予防から虐待を受けた子どもの自立に至までの切れ目のない支援 |
(2) |
親子の再統合の促進への配慮その他の虐待を受けた子どもが良好な家庭的環境で生活するために必要な配慮をした、子どものみならず親を含めた家庭への支援 |
(3) |
虐待の発生予防・早期発見からその後の見守りやケア、親子の再統合の支援に至る関係機関の連携による支援 |
を記載 |
○ |
援助に際しては、全体的な虐待の状況、危険性、家族や保護者の特性などを総合的に勘案・評価し、受容的アプローチと介入型アプローチ、行政権限・司法的介入の手法選択を、極力早期に決断すべきである。 |
○ |
関係機関が個人情報保護に関する懸念を抱くことなく、情報の共有ができるよう、要保護児童等に関する情報の交換等を行う要保護児童対策地域協議会の構成員に守秘義務をかけることとした。 |
○ |
協議会による、資料又は情報の提供等の協力要請は、構成員以外の関係機関等に対して行うことも可能であるが、当該関係機関等と協議会の構成員の間で双方向の情報の交換等を行うことが見込まれる場合には、協議会の構成員なることについても要請することが適当である。 |
【 |
子ども虐待問題を発生予防の観点で捉えることの重要性(子ども虐待はなぜ起こるのか)】 |
○ |
最近は、児童虐待は、特別な家族の問題という認識で取り組むのではなく、どの家庭にも起こりうるものとして捉えられるようになっている。保健・医療・福祉等の関係者は、このような認識に立ち、子ども虐待の発生を予防することに努める必要がある。 |
○ |
子ども虐待は、子どもの生命に関わる問題であると同時に、情緒面や行動面の問題や、世代を越えて、その影響が引き継がれる可能性がある。このため、子どもの生命や人権を傷つけずに守り抜く意識をもち、心身ともに健全に成長・発達できるように支援していく体制を充実させていく発生予防の取組が大切なのである。 |
【 |
発生を予防するためには、どのような支援が必要か】 |
○ |
リスクアセスメント指標を用いることで、支援者のアセスメントが個々の支援者の判断に左右されず、客観的に行われることになるが、機械的に虐待が発生する家庭と決めつけてしまう危険性があり、専門的な知識・技術をもった人間が慎重に扱わなければならない。 |
○ |
乳幼児健康診査の際には、問診や保健指導の場面において、親子の状況を虐待予防の視点を持って観察し、保護者から相談がしやすい環境(時間や場所)を整え、保護者自ら相談してくる数少ないチャンスを大事にして、信頼関係を築くきっかけを作っておくことが大切である。 |
○ |
リスク要因を持つ家庭は、自ら周囲に支援を求めたり、各種の子育て支援サービスの利用に対して消極的になりやすい傾向にあるので、支援者側から積極的に子育て支援サービスの紹介や提供を行っていくことが必要である。 |
【 |
発生を予防するために、関係機関による連携はなぜ必要か】 |
○ |
子ども虐待は、様々な要素が絡み合って起こるものであり、単独の機関だけで対応できるものではない。支援者一人一人が危機意識を持って子どもの安全を確保し、人権を尊重した支援を行うことは重要なことである。 |
○ |
しかし、情報を個人や一つの機関で抱え込むことなく、情報を共有して各機関が果たすべき役割を認識してより早期に適切な支援を行い、虐待の防止に努めることが重要である。 |
○ |
平成16年児童虐待防止法改正法により、通告の対象が「児童虐待を受けた児童」から「児童虐待を受けたと思われる児童」に拡大された。法の趣旨に基づく通告であれば、それが結果として誤りであったとしても、そのことによって刑事上、民事上の責任を問われることは基本的には想定されないものと考えられる。 |
○ |
市町村においては、例えば、当直体制の整備など、自らが通告を受けて適切な対応が取れるような体制の確保に努めるほか、夜間、休日等の執務時間外における電話等による通告の受理について、
(1) |
複数の市町村、都道府県の設置する福祉事務所が広域で連携し、輪番制等により担当する。 |
(2) |
児童家庭支援センターなどの民間の相談機関に対応を委託する。 |
(3) |
児童相談所の担当区域内の市町村、都道府県の設置する福祉事務所への通告については、児童相談所に自動転送し、児童相談所において対応する。 |
といった手法により対応することとし、通告受理後の対応は事例の緊急度等に応じて行うといった体制を整備することが考えられる。 |
○ |
児童相談所においては、当直体制の整備など自らが通告を受けて適切な対応が取れるような体制の確保に努めるほか、夜間、休日等の執務時間外の市町村等からの送致や相談に適切に対応することが必要である。 |
○ |
緊急保護の要否を判断する上で子どもの心身の状況を直接観察することが極めて有効であるため、子どもの安全確認を行う際には、子どもに直接会って確認することを基本とする。 |
○ |
子どもや保護者の状況は刻一刻と変化するものであり、一度調査を行い、子どもの安全や身体・心理・生活環境を把握した後も、定期的に訪問等を行い、これらの状況の変化を確認し、当該ケースが行政権限の発動を伴う対応が必要な状況になっているか否かを確認することが必要である。 |
○ |
虐待を受けている子どもの早期発見や適切な保護を図るためには、関係機関がその子ども等に関する情報や考え方を共有し、適切な連携の下で対応していくことが重要である。このため、要保護児童対策地域協議会を活用し、各機関の連携を深めていくことが適当である。 |
○ |
保護者には、どのような状況になれば施設からの引き取りが可能であるか、そのためには保護者として何をしなければならないのか、児童相談所としては何をしたいのかを明確に伝えることが重要である。保護者が子どもの一時保護や施設入所等に強い拒否感を示す背景には、これら先の見通しが持てないことにより、このままずっと子どもを帰してもらえないのではないかとの不安があることに留意する必要がある。 |
○ |
子どもとその保護者を引き離すという強制力を伴う措置を行う際に人権に配慮する必要があることから原則として2月という期間が設けられたものであり、この期間を延長する際には、原則として、その理由を子どもや保護者に説明するものとする。 |
○ |
一時保護が必要な子どもについては、その年齢も乳幼児から思春期まで、また一時保護を要する背景も非行、虐待あるいは発達障害など様々であり、一時保護に際しては、こうした一人ひとりの子どもの状況に応じた適切な援助を確保することが必要である。このため、一時保護については、
(1) |
管轄する一時保護所における適切な援助の確保が困難な場合には、他の都道府県等の管轄する一時保護所を一時的に活用するといった広域的な対応や、 |
(2) |
児童福祉施設、医療機関等に対する委託一時保護の活用 |
等により、適切な援助の確保に努めることが重要である。 |
○ |
子どもの状況や特性、学力に配慮した指導を行うことが必要であり、在籍校と緊密な連携を図り、どのような学習を展開することが有効か協議するとともに、取り組むべき学習内容や教材などを送付してもらうなど、創意工夫した学習を展開する必要がある。 |
【 |
一時保護について子ども、保護者にどう説明するか】 |
○ |
子どもが一時保護を拒否している場合は、子どもに対し、児童相談所の考え方を分かりやすく説明し、家を離れて生活することの必要性を理解してもらうよう努める。 |
○ |
子どもや保護者の心身の状態を見極め、必要であれば、速やかに一時保護を行う。保護者の言いなりになって、簡単に預かっていいのだろうかと躊躇して判断のタイミングを逸すると、実際に虐待につながってしまったり、その後の援助の展開が難しくなることもあるので、迅速に対応することが重要である。 |
【 |
保護者が一時保護中に面会を希望する場合の対応について】 |
○ |
家庭裁判所に対し児童福祉法第28条の規定による承認に関する審判を申し立てた後、承認の審判が出るまでの間一時保護している子どもについては、家庭裁判所は、審判前の保全処分として、保護者について子どもとの面会又は通信を制限することができる。このため、保護者に対し説得を重ねたり毅然とした対応をとってもなお子どもの保護に支障をきたすと認められる場合などには、本保全処分の申立てを検討するのが適当である。 |
○ |
医学診断に係る留意事項について、最新の知見に基づき改定、「母子手帳から把握しておくこと」、「問診・観察」、「身体的診察」等について記述 |
○ |
高度に専門的な判断が必要な場合には、児童相談所外部の専門家の意見を積極的に求め、これを十分に踏まえて判定を行うこと。 |
【 |
家庭裁判所による子どもの里親委託または児童福祉施設等への入所の承認-いわゆる法第28条手続】 |
○ |
産まれたばかりの子どもであっても、保護者がその子どものきょうだいに虐待を行っていたような場合には、きょうだいが虐待を受けた要因が継続しているか否か(養育環境の変化や子ども側の要因の有無等)、保護者の態度(児童相談所の指導に従っているか、妊産婦健康診査の受診状況等)、先の事例の状況(0歳段階で深刻な虐待に至っていたのか否か、きょうだいが児童福祉法第28条により施設に入所しているのか否か等)等を総合的に勘案し、この要件を満たすと考えられる場合には、家庭裁判所に児童福祉法第28条の規定に基づく申立てを行うことも考えられる。 |
○ |
申立ては、申立ての趣旨及び事件の実情、児童福祉法第27条第1項第3号の措置が適切である理由やその子どもに係る援助指針、施設入所後の自立支援計画などの書類(措置期間の更新の場合は保護者指導の効果(これまでの保護者指導措置の経過や保護者の現状等)などを明らかにする書類を含む。)とともに、証拠書類がある場合には証拠書類も添えて行う。 |
○ |
措置の期間の更新に際して行う申立てについては、保護者に十分な説明を行った上で行うことが望ましい。また、事案ごとに、措置開始(又は更新措置開始)から2年が経過する日から審理及び審判の確定に要する期間(2~3か月程度)を見込んだ上で前もって、所要の資料を準備し、申立てを行う。 |
○ |
家庭裁判所が都道府県(児童相談所長)に対して保護者指導に係る勧告を行うか否かは、家庭裁判所の判断によるが、児童相談所としてこうした勧告が効果的であると判断する場合には、審判の申立時にその旨の意見を述べることが適当である。この場合、予定している保護者指導措置の内容とこれにより期待される効果などについても、併せて提出することが必要である。 |
○ |
児童福祉法第28条の規定に基づく措置の解除については、保護者に対する指導措置の効果や子どもの心身の状態、地域のサポート体制などについての総合的な評価に基づき検討し、判断する必要がある。このため、措置解除の客観性と専門性の向上の観点から、できる限り児童福祉審議会の意見聴取を行うよう努めること。 |
【 |
児童福祉審議会運営の実際と活用はどのように行うか】 |
○ |
本制度を形式的なものとしてしまうのではなく、援助決定の客観性の確保と専門性の向上の観点から児童福祉審議会への意見聴取の制度が導入されたという趣旨を十分に踏まえ、この制度を積極的に活用することが望まれる。 |
○ |
虐待をする保護者は、感情のコントロールが苦手であることが多く、その犠牲となりやすいのが乳幼児であることを考えれば、在宅援助の危険性の判断は、慎重に行われるべきである。 |
○ |
関係機関等により構成され、保護を必要とする子ども等に関する情報の交換や支援内容の協議を行う要保護児童対策地域協議会を活用し、定期的な訪問等を行い子どもを見守るとともに、家族等に対しても精神的な支援等を行うことが重要である。 |
○ |
虐待の告知は、事例のことを一番分かっており信頼関係ができている援助者(医師、保健師、児童福祉司、弁護士等)が時期を見て「あなたのやっていることは虐待である。」という告知をする。なぜそういうことに至ったのか共感しながら、さらりと、しかしはっきりと伝えるというのがポイントである。 |
○ |
家族や親戚あるいは一般社会の根強い母性神話や家族神話、三歳児神話は、現代の母親にとっては、大きな心の負担となっていることも少なくない。母親に対する過剰な期待や役割の押しつけは、母親を追い込むだけで、メリットは期待できない。完璧な母親像を抱かずに、背伸びしない育児を肯定していることをメッセージとして伝えることが重要である。 |
○ |
その手法や理論について、未だ確立されたものではなく、今後さらに実践の積み重ねも必要であるものの、保護者との厳しい対立の局面に立たされる場面が増加しているなかで一定の成果も報告されている介入的アプローチによる援助活動について、その概要を紹介する。 |
○ |
深刻な虐待事例の中には、子どもが再び保護者と生活をともにすることが、子どもの福祉にとって必ずしも望ましいとは考えられない事例もあり、このような場合まで親子の再統合を促進するものではないことはいうまでもないが、児童相談所においては、この2年の措置期間の間に、親子の再統合その他の子どもが良好な家庭的環境で生活することができるようにすることに向けて、保護者に対する援助や施設や里親に措置(委託)された子どもの訪問面接等に努めるとともに、親子の再統合が可能であるかを検討するものとする。 |
○ |
子どもが家庭復帰した直後の数カ月は、虐待が再発するハイリスクな時期とされており、保護者の強い希望で家庭に帰った数週間後に、子どもが保護者の暴行によって死亡するという事例も報告されている。家庭に復帰した直後は、児童相談所、学校など地域関係機関との連携を十分行いながら、頻繁な観察・接触を行う必要がある。 |
○ |
子どもが抱えている個別の問題や課題は、子ども自身の要因、家庭(保護者・家族)の要因、地域社会の要因が複雑に影響し合っている。これらの要因に係る十分な情報を基に、個々の子どものニーズにあった自立支援計画を策定しなければならない。 |
○ |
例え同じように見える子どもでも一人ひとり異なる。以前支援した子どもと同じような状況にある子どもに対しても、オーダーメイドの計画の策定が必要である。 |
○ |
児童福祉法第28条によらない場合の入所についても、子どもが面会や通信を拒否したり、精神的に動揺したりあるいは保護者が児童を威圧、脅迫したりする恐れがある場合には、施設長は、監護に関して入所している子どもの福祉のために必要な措置をとることができることとされている趣旨にもかんがみ、子どもの最善の利益を図る観点から、面会、通信を制限することについて、保護者の理解を得るよう努め、時には毅然とした態度で対応することが求められている。 |
○ |
保護者に対し説得を重ねたり毅然とした対応をとってもなお子どもの保護に支障をきたすと認められる場合などには、児童虐待防止法に基づき、子どもを一時保護した上で、児童福祉法第28条に基づく措置の承認に関する審判を家庭裁判所に申し立て、措置を承認する審判がされた後に、再度入所の措置をとることとする。 |
○ |
一時保護をしている子どもについて、児童福祉法第28条第1項の規定に基づく承認に関する審判を申し立てた場合は、家庭裁判所は、審判前の保全処分として、承認に関する審判が効力が生ずるまでの間、保護者について子どもとの面会又は通信を制限することができる。このため、保護者に対し説得を重ねたり毅然とした対応をとってもなお子どもの保護に支障をきたすと認められる場合などには、本保全処分の申立てを検討するのが適当である。 |
○ |
平成16年児童福祉法改正法により、乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設及び児童自立支援施設について、施設の業務として、退所した者について相談その他の援助を行うこと(アフターケア)が明確化された。 |
○ |
平成16年度からは、家庭支援専門相談員(ファミリー・ソーシャル・ワーカー)を全児童福祉施設に配置したところであり、施設においては、このような職員も活用しながら、入所している子どもに対するケアに支障が生じない範囲でできる限り、退所した子どもに対するアフターケアを行うことが必要である。 |
○ |
施設を退所した子どもに対し、相談や定期的な訪問等を行い子どもを見守るとともに、家族等に対しても精神的な支援等を行うとともに、虐待が再発した場合の早期発見、早期対応を実現するためには、要保護児童対策地域協議会を活用することも有効と考えられるので、協議会との連携を確保しつつ、施設を退所した子どもが新しい生活環境の下で安定した生活を継続できるように必要な調整を行う。 |
○ |
児童福祉施設の長が有する懲戒に関する権限は、あくまでも子どもの健全な育成のために認められているものであり、決して濫用されるようなことがあってはならない。 |
○ |
もとより、児童福祉施設の職員は、入所してる子どもに対して、児童虐待防止法に規定する児童虐待その他子どもの心身に有害な影響を与える行為をしてはならない。特に、体罰や言葉による暴力は、大人に対する不信感を受け付け、子どもの生涯に残る心の傷になりかねないものであるだけでなく、子ども自身による暴力を正当化・肯定することにもつながるものである。 |
○ |
入所している子どもやその保護者から、懲戒に係る権限の濫用や虐待等の訴え等があったときや児童福祉法に基づく通告を受けたときには、あくまで客観的事実の把握に努め、事実に基づく対応をしなければならない。 |
○ |
その際、その子どもの最善の利益に配慮して適切なケアを行うこととし、必要に応じてその子どもの一時保護、措置変更を行うとともに、援助上の問題について施設に対し技術的助言、指導を行う。また、再発防止の観点から、必要に応じて児童福祉施設に対する指導権限を有する本庁と連携を図りつつ対応することが必要である。 |
○ |
里親制度の認知に努めることが重要である。里親制度については、残念ながら広く一般に認知されるまで普及されていないのが現状である。このため、近隣に対して子どもの人権に配慮しつつ説明することがよい。
子どもが引き起こす行動上の問題などに対しても、その原因などについて学校側に理解してもらい、里親に過度な負担がかからないよう関係諸機関が連携して対応できるような体制を整えておくことが重要である。 |
○ |
里親が有する懲戒に関する権限は、あくまでも子どもの健全な育成のために認められているものであり、決して濫用されるようなことがあってはならない。 |
○ |
もとより、里親は、委託されている子どもに対して、児童虐待防止法に規定する児童虐待その他子どもの心身に有害な影響を与える行為をしてはならない。 |
○ |
委託されている子どもやその保護者から、懲戒に関する権限の濫用や虐待等の訴え等があったときや児童虐待防止法に基づく通告を受けたときには、客観的事実の把握に努め、事実に基づく対応をしなければならない。 |
○ |
その際、その子どもの最善の利益に配慮して適切なケアを行うこととし、必要に応じてその子どもの一時保護、措置変更を行うとともに、養育上の問題について里親に対し技術的助言、指導を行う。また、再発防止の観点から、必要に応じて里親に対する指導権限を有する本庁と連携を図りつつ対応することが必要である。 |
○ |
近年子どもに対する虐待が増加しているが、虐待は家庭内で行われることが多いため、早期発見が困難な場合が多く、また、同時に多くの問題を抱えている場合が多い。このため、関係機関が一堂に会し、情報交換を行うとともに、共通の認識に立ってそれぞれの役割分担を協議する等、各関係機関が連携しながら早期発見並びに効果的対応を図ることが極めて重要である。 |
○ |
関係機関における子ども虐待に対する理解の促進を図る観点からも連携は重要である。特に「試しの行動」など虐待を受けた子どもの行動特性に対する理解や、暴力的行為や粗暴な言動などの問題行動の背景に子ども虐待が潜んでいる場合も少なくないとの認識は重要であり、児童福祉施設職員や学校職員を始め、その子どもとかかわりのある全ての関係者が十分に理解した上で対応していくことが求められる。 |
○ |
地域協議会を構成する関係機関等に守秘義務が課せられたことにより、民間団体をはじめ、法律上の守秘義務が課せられていなかった関係機関等の積極的な参加と、積極的な情報交換や連携が期待されるところである。 |
○ |
地域協議会については、個別の要保護児童等に関する情報交換や支援内容の協議を行うことを念頭に、要保護児童対策調整機関や地域協議会の構成員に対する守秘義務が設けられており、個別の事例について担当者レベルで適時検討する会議(個別ケース検討会議)を積極的に開催することはもとより、構成員の代表者による会議(代表者会議)や実務担当者による会議(実務者会議)を開催することが期待される。 |
○ |
地域協議会は、施設から一時的に帰宅した子どもや、施設を退所した子ども等に対する支援に積極的に取り組むことも期待されているところであり、児童相談所や児童福祉施設等と連携を図り、施設に入所している子どもの養育状況を適宜把握するなど、一時的に帰宅した際や退所後の支援の円滑な実施に向けた取り組みを実施することが期待される。 |
○ |
児童家庭相談に関して「軽微」あるいは「専門的」と判断する具体的な基準については、市町村や都道府県の児童家庭相談体制にもよる。このため、当面、自ら対応することが困難であると市町村が判断したケースについては、都道府県(児童相談所)が中心となって対応することを基本に、都道府県(児童相談所)と市町村の役割分担・連携の具体的なあり方について十分調整を図り、児童家庭相談への対応に万全を期すことが必要である。 |
○ |
特に、子ども虐待は、子どもの生命に関わる問題であることから、ケースの緊急度や困難度等については、迅速かつ的確な判断が要求される。各市町村においては、このような要請に応えられるような体制を整えるとともに、悩ましいケースについては、早期に児童相談所に相談するなどの対応が求められる。 |
○ |
保健所や市町村保健センターは、様々な地域保健活動や医療機関との連携を通じて、養育支援が必要な家庭に対して、家族全体を視野に入れた在宅支援を行っている。これらの機能を十分に活用するため、日頃から保健所や市町村保健センターと密に連携を図っておくことが必要である。 |
○ |
育児不安が増大しがちな産後1ヶ月間を重視して、その時期の親の心の状態を見極める手段としてEPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)を用い、産後うつ病の早期発見が行われている自治体も増えている。EPDS(エジンバラ産後うつ質問票)の活用は、母親とともに心の状態に向き合うことであり、母親に効果的にメンタルケアを行うことができる。 |
○ |
主任児童委員は、区域を担当する児童委員の職務も行い得るものであり、主任児童委員をはじめ、十分に連携を図ることが適当である。 |
○ |
在宅指導を行う場合、頻繁な家庭訪問等による濃密な指導と観察が必要となるが、児童相談所だけでこれを行うには限界がある場合が多いことから、児童委員指導と児童福祉司指導を併せて行うなど、両者の密接な連携に留意する。 |
○ |
市町村が児童委員との協力を図る場合には、主任児童委員をはじめ、問題解決に最適と考えられるものの活用を図る。このため、定期的に(主任)児童委員との連絡会議を開く等の方法により常に連携を図り、地域の児童・家庭の実情の把握に努めることが重要である。 |
○ |
児童福祉施設に対する措置が行われてから児童福祉施設が子ども等の実態把握・評価に基づき自立支援計画を策定するまでの数ヶ月間は、児童相談所の策定した援助指針を自立支援計画として活用し支援することも差し支えない。 |
○ |
児童相談所は子どもを施設入所させた後も、施設から報告を聴取したり、定期的に訪問して子どもと面接する、施設と合同で事例検討会を開催するなど、施設と協働して子どもの自立を支援していく必要がある。また、児童相談所は、施設から得た子どもに関する情報を要保護児童対策地域協議会等を通じて関係機関等で共有するよう努めるものとする。 |
○ |
よりきめ細かい個別的な養育環境が必要な子どもや、施設における集団養護になじみにくい子どもが増えている中で、子どもを家庭において養育する里親制度は重要な役割を担っている。特に専門里親制度は、家庭での親密な援助関係を必要とする虐待を受けた子ども等に対し、施設では提供できない家庭的な援助を提供することにより、家庭復帰を前提として問題性の改善や治療を図り、自立を支援することを目的とするものであり、虐待を受けた子どもが増加している中で、重要な役割を担っている。 |
【 |
保育所、幼稚園・小学校・中学校等の学校等との連携】 |
○ |
施設入所に伴い転校が必要となる子どもの手続きが速やかに行えるよう、教育委員会と十分に連携を図ることが必要である。 |
○ |
市町村は、保育所に入所する子どもを選考する場合には、児童虐待の防止に寄与するため、特別の支援を要する家庭の福祉に配慮をしなければならないこととされている。保育所にこの規定の趣旨を十分に説明するなど、保育所の理解も得ながら適切に対応することが必要である。 |
○ |
地域の医療機関に対し、虐待を受けたと思われる子どもを発見した場合の通告窓口を周知するなどにより、虐待の問題を医療機関が発見した場合には、速やかに市町村や児童相談所に通告されるよう体制を整えておくとともに、子どもの身体的・精神的外傷に対する治療や、精神医学的治療を必要とする保護者の治療が適切に行なわれるよう体制整備に努める。また、地域協議会による援助が適切かつ円滑に行われるためには、地域の医師会や医療機関との連携は必要不可欠であり、虐待について対応してもらえる医療機関の確保に努めることが必要である。 |
○ |
平成16年児童虐待防止法改正法において、児童相談所長等による警察署長に対する援助要請は、子どもの安全の確認及び安全の確保に万全を期する観点から、必要に応じて適切に、求めなければならない義務である旨が明確にされた。 |
○ |
警察官の援助の下で児童相談所長等が適切に子どもの安全確認等の職務を行うことを促すため、児童相談所長等から援助要請を受けた警察署長は、子どもの生命又は身体の安全を確認し、又は確保するため必要と認めるときは、速やかに、所属の警察官に、こうした職務の執行を援助するために必要な警察官職務執行法その他の法令の定めるところによる措置を講じさせるよう努めなければならないこととされた。 |
○ |
具体的な連携としては、児童福祉法第28条申立ての代理人を依頼したり、申立てを支援してもらったりすることもあるし、親族による親権喪失宣告や親権者変更の申立ての代理人という形で実質的に児童相談所と連携する場合もある。 |
○ |
弁護士が個々の児童相談所の虐待事例を恒常的に分担して相談に預かるようになっている自治体も少なくなく、香川県においては、立入調査や一時保護の際に、児童相談所の求めに応じて弁護士を派遣する協定を県の弁護士会と締結している。 |
○ |
被害者が配偶者暴力相談支援センターに保護を求めた場合であって、その被害者に子どもがいる場合、当該配偶者暴力相談支援センターとよく連携し、子どもが年長の男児であり、婦人相談所一時保護所で一時保護することがふさわしくない場合に一時保護を引き受けることはもちろん、その子どもにとって最善の援助がなされるよう積極的に関与する。 |
○ |
子ども又はその保護者に対応する場合、その対応によって配偶者からの暴力の被害者が配偶者からの更なる暴力によりその生命又は身体に重大な危害を受けるなど、配偶者からの暴力の被害者及びその子どもの安全が損なわれることのないよう、事前に必ず配偶者暴力相談支援センターと十分な協議を行うことが必要である。 |
○ |
民間虐待防止団体には法上の守秘義務がないことに鑑み、連携に当たってはプライバシーの保護等が確保されるよう十分留意する必要がある。ただし、そのことのみを理由として、連携に消極的となるべきではない。情報共有と守秘に関する協定を締結したり、要保護児童対策地域協議会を活用するなど、個人情報の保護に配慮した具体的な連携方策を検討すべきである。 |
○ |
特に、平成16年児童虐待防止法改正法により、民間団体との連携強化や民間団体への支援が国及び地方公共団体の責務として明記されたところであり、各地方公共団体においては、この改正の趣旨を踏まえ、適切な連携と支援が求められる。 |
○ |
自分自身のことをあたかも友人のことのように装って相談することもある。その時は追求することなく、受容の姿勢を崩さず、語りかけるように対応することが大切である。 |
○ |
指導的に一方的に話をしても、責められたと思い、電話を切ってしまったり、二度と電話をかけてこないことにもなる。相談者が勇気を出して相談の受話器を握ったことを受け止め、その行為を肯定するような言葉かけをする。その上で、相談者のペースで話を聴き、今後の継続につなげていく。 |
○ |
対応者があわてて、相談者がパニックに陥ることのないよう、相手の話をじっくりと受け止め、相手のペースで話を聞く姿勢を持つ。相談者が落ち着くまで、詮索や特定するための質問をできるだけ控え、本人が語り始めるのを待つことも大切である。 |
○ |
介入判断は、アルコール依存症本人以外の家族が、虐待行為や環境から子どもを守り、その場を離れる(家を出る等)ことができるか、あるいは必要時に警察介入をためらわずに行えるかが鍵となる。多くは、家族が巻き込まれており、適切な判断力が奪われている状態で、危機的状況であることが多い。 |
○ |
第一に重視されるべきことは、虐待行為の有無と虐待環境か否かであり、子どもの保護である。暴力や暴言、家の中で暴れる等の状況がある場合は、緊急介入を行う。依存症治療は、本人の「自分は病気であり、医療が必要。何とか回復したい」という気持ちが重視されるもので、周囲の強制で治療に結びつけることはできず、その気持ちを引き出すことを優先した場合、手遅れになることも想定されるからである。 |
○ |
薬物使用を止めても、睡眠不足や過労、ストレス、飲酒等をきっかけに、幻覚、妄想等の精神症状が突然現れることがある(フラッシュバック)。そのことは、弱者であり無力な子どもにとっては、大変危険な、しかも人権を侵害する場になる可能性が高いことを認識し、薬物依存症への対応の際に、子どもの存在が確認できれば、常に虐待対応を念頭に入れた介入が必要となる。 |
○ |
薬物依存症に限らず、依存症への対応では、病気の本人より、その周囲の相談者あるいは困っている人を受け入れることから始まり、家族に学習を進めることで、家族が病気の本人に巻き込まれない力をつけていくプロセスを支援するものである。
しかしながら、その対応は、困難を極めることも多い。保健、医療、福祉、司法、警察、教育機関との密な連携が不可欠であり、そこでの適切な判断が、子どもを救う重要な鍵になるのである。 |
○ |
法的に強制的な措置入院が適用できるのは自傷他害の場合だけである。病気である患者の人権も配慮したかかわりや対応をしていかなければ、患者との信頼関係も構築できないし、さらに不信感を強めるだけである。したがって、子どもの危険性が高いと判断される場合には、保護者を入院させる以外の方法で子どもを保護する措置を講ずる必要があるのである。 |
○ |
毅然と、決して拒否ではなく、「地域であなたが暮らしていきやすいように支援していきたい。そのためには、あなたを中心としたいくつかの関係機関が手を結んでいきたい」旨を伝え、周囲を揺るがす行動に、関係者間が揺れないことを意思表示することが重要である。 |
○ |
児童福祉法には、施設の長の権限として、親権者がいる場合にも監護について必要な措置をとることができる(同法第47条2項)と定めており、これは施設の長に対し、子の監護に関して親権者と同様の権能と責務を与えたものであって、これには、治療を受けさせることを含むものと解釈できる。 |
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治療機関としては、施設にいる子どもの治療について、施設の長の依頼または承諾があれば治療を実施しているという実状もある。 |
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仮に親権喪失宣告がされればその後選任された未成年後見人が、親権者の職務執行停止及び職務代行者選任の保全処分がなされれば職務代行者が、それぞれ親権者と類似の立場に立つことになると考えられる。 |
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代理人によるほら吹き男爵症候群(Munchausen Syndrome by Proxy,以下MSBP)への対応】 |
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MSBPとは「両親または養育者によって、子どもに病的な状態が持続的に作られ、医師がその子どもにはさまざまな検査や治療が必要であると誤診するような、巧妙な虚偽や症状の捏造によって作られる子ども虐待の特異な形」である。 |
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MSBPは不自然な検査所見や不自然な保護者の態度などから疑われることが多いが、確定はなかなか困難である。多くは一時保護などによって親子分離をすることで症状が消失することを確かめることで証明となることが多い。MSBPの危険性を考えると、一時保護の重要性を認識すべきである。念のため、他の医療機関への一時保護委託が必要になることもある。 |
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子どもとの面接に際しては、「性的虐待について話すことの子どもの心理的苦痛や恐怖,不安に共感すること」、「話を聞くことが子どもにとって『二次的被害』にならないよう注意すること」、「児童福祉法第28条による措置や加害者に対する告訴(告発)の可能性が考えられる場合には、司法的な手続きに耐え得るような方法で子どもからの聴取を行うこと」等に留意することが必要である。 |
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性器に異常な所見が見られなかったり、性感染症が確認されなかったことが性的虐待を否定する材料にはならないことも知っておくべきである。性的虐待の被害を受けた子どもに身体的な所見が見られたのは全体の20%程度であったとう研究もあり、身体的な所見がない場合のほうがむしろ多いのである。 |
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子どもに対するケアとしてもっとも重要なのは、子どもが安心できる環境を整えることであり、そのためには加害者と子どもを分離し、さらに加害者ではない保護者が子どもを守るようにその後の生活を組み立てることである。「トラウマ性の問題としての治療・ケア」、「自己イメージの低下への対処」、「性的行動の再現性への対応」、「正常な性的発達を促進すること」に留意した対応が必要である。 |
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加害者のケアにとってもっとも大切なのは、性的虐待という事実への直面化である。こうした直面化は、性的虐待があったという事実を認めるだけではなく、それが子どもにどのような影響をもたらしたのか(結果への直面)や、どうしてそうした行為に及んだのか(原因への直面)が含まれることになる。 |
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刑事事件として取り扱われることで保護者が間違ったことをしたのだという子どもの理解を促進したり子どものエンパワメントにつながると考えられる場合には、「子どもの最善の利益のために」という子ども福祉の原則からも、警察官や検察官を説得して立件に踏み切ってもらう必要が生じる場合もある。 |
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配偶者からの暴力のある家庭に援助を行う場合には,配偶者暴力相談支援センターとの連携は必須である。しかし、妻へのケースワークと子どもへのケースワークが常に同一の方向性を持っているとは限らない。 |
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例えば、配偶者からの暴力の被害を受けている妻への支援は、妻が暴力によって奪われてしまった自身の力をとりもどす「エンパワメント」が重要であるとされている。暴力を受けていながらもその関係にとどまろうとする妻を、外部からの半ば強制的な力で夫のもとから引き離そうとすることは無効であるばかりか有害となる場合もある。一方で、子どもへのケースワークの基本は子どもの安全の確保であり、そのためには一刻の猶予もなく子どもを家庭から分離・保護しなくてはならない場合も存在する。 |
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このように、表面的に見れば、ケースワークの方向性が食い違うような場合も存在するが、双方がお互いのケースワークの原則を理解しつつ、それぞれの原則を踏まえたケースワークを行っていく必要がある。 |
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18歳又は19歳の子どもに関する相談があった場合には、これまで相談できずに悩んでいた結果、どうすることもできずに相談に来たなど深刻な状態になっていることも考えられるため、年齢要件を満たさないことを理由に直ちにこれを拒否するのではなく、配慮ある対応をとることが必要である。 |
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平成16年児童福祉法改正法により、児童相談所長も18歳又は19歳の子どもに係る親権喪失宣告を請求することができることとされたことも踏まえ、本人の意向を確認しつつ、親権喪失請求について十分に検討することが重要である。 |
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厚生労働省では、児童虐待防止法施行から平成15年6月末日までに新聞報道や都道府県・指定都市の報告により把握した125件(127人死亡)の虐待死亡事例について、養育支援が必要となりやすい要素や各自治体による検証結果、それを踏まえた対策をまとめている。 |
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また、平成16年10月には、社会保障審議会児童部会の下に児童部会の下に「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」を設置し、虐待による死亡事例の総体的な分析を行い、その結果を年2回のペースで公表することとしている。 |
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平成16年児童虐待防止法改正法により、地方公共団体は、子ども虐待の防止等のために必要な事項についての調査研究及び検証を行うこととされた。このような状況も踏まえ、各地方公共団体においても、管内で発生した虐待による死亡事例を検証することが求められている。 |
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子どもの福祉に職務上関係のある者は、過去の事例を十分に学び、虐待による死亡という最悪の事態を二度と起こさぬよう万全を期すことが必要である。 |
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