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市町村児童家庭相談援助指針について:第2章 児童家庭相談援助の展開における市町村の具体的な役割

第2章 児童家庭相談援助の展開における市町村の具体的な役割

第1節 予防・早期発見に視点をおいた市町村活動の推進

市町村で受理する児童家庭相談は、一般子育てに関する相談だけでなく、児童虐待、障害等継続した支援が必要な相談など多岐にわたる。

特に、児童虐待は家庭内で生じ、被害を受ける子ども自らは声をあげにくいという特性があり、発見される時点では既に重篤な状況に至っていることがある。その場合、改善は容易ではなく、また、その後の子どもの発育障害や発達遅滞、情緒面や行動面の問題や、さらには世代間連鎖等を起こすことがあり、相当手厚い支援が必要となる。そこで、早期発見・早期対応のみならず、発生予防に向けた取り組みを行うことが重要である。

具体的には、乳幼児健康診査、新生児訪問等の母子保健事業や育児支援家庭訪問事業等の子育て支援事業において、児童虐待防止の視点を強化し、虐待のハイリスク家庭等養育支援を必要とする家庭を早期に発見して適切な支援活動を行うことが必要である。市町村で受理した相談から、育児負担の軽減や養育者の孤立化を防ぐ目的で、地域の一般子育て支援サービスを紹介する等、地域の育児支援機関につなげることも必要である。

また、地域の実情に応じて広く関係機関等とネットワーク体制を構築した上で、保健、医療及び福祉等がそれぞれの役割を明確化し、連携を図りながら児童虐待の発生を未然に防止することが重要である。

その他、地域住民に対して、子どもの人権尊重や児童虐待防止のための取組の必要性等について啓発していくことも併せて推進していくことが必要である。

第2節 相談・通告への対応

1.相談・通告の受付

  • (1) 相談の受付

    市町村は児童及び妊産婦の福祉に関する問題について、家庭その他からの相談に応じることとされており(児福法第11条第1項第2号二)、直接来所又は電話による家庭及び関係機関からの相談に応じる。

    具体的な相談の種類は別添3に示すとおりであり、狭義の要保護児童問題のみでなく、子どもに関する各種の相談を幅広く受け付ける。

  • (2) 通告の受付

    虐待相談においては特に受付段階(初期段階)の対応が重要であり、その後の対応に決定的な影響を与えることもあることを十分注意し、積極的に通告として対応するよう努めなければならない。

    要保護児童の通告については、身柄付であるか否かを問わず、その受理を拒否することはできない。

    なお、深刻な虐待が疑われる場合など緊急性、専門性が高いと警察が判断した場合には、一般的には、市町村や福祉事務所ではなく、児童相談所に直接通告することとなるが、市町村又は福祉事務所は、警察からの通告を受けた場合において、その子どもについて一時保護が必要であると判断するときは、通告を受理した上で児童相談所に送致することとなる。また、児童相談所が市町村等が対応することが適当と判断する場合は、通告を受理した上で、市町村等と連携を図りつつ対応することとする。

    【通告であるか明らかでない場合の対応】
    • 平成16年児童福祉法改正法により、児福法第25条の規定による要保護児童の通告先として、従来の児童相談所及び福祉事務所に加え、新たに市町村が規定された。
    • また、平成16年4月に成立した「児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律」(以下「平成16年児童虐待防止法改正法」という。)においても、児童虐待に係る通告先として市町村が新たに規定されたところである(児童虐待の防止等に関する法律(以下「児童虐待防止法」という。)第6条)。
    • このように市町村は、要保護児童や虐待を受けたと思われる子どもを発見した際の通告先とされているところであり、また、児童家庭相談援助は、初期対応が重要であることも踏まえ、通告であるのかが必ずしも明らかでない場合であっても、積極的に通告として対応するよう努めなければならない。

2.年齢要件

市町村が対象とする児童は18歳未満の者であるが、罪を犯した14歳以上の児童の通告については、家庭裁判所が通告の受理機関となる。

3.管轄

児童家庭相談に係る個々のケースの具体的管轄の決定については、以下のことに留意するとともに、子どもの福祉を図るという観点から個々のケースに即した適切な判断を行う。

  • (1) 相談援助活動は、子どもの保護者(親権を行う者、未成年後見人その他子どもを現に監護する者)の居住地を管轄する市町村が原則として行う(居住地主義)。なお、居住地とは、人の客観的な居住事実の継続性又はその期待性が備わっている場所をいい、住民票記載の「住所」や民法の「住所」又は「居所」と必ずしも一致しない。
  • (2) 保護者の居住地が不明な棄児、迷子等は、子どもの現在地を管轄する市町村が受け付ける。両親等保護者が明らかになった場合には、前記居住地主義に則して管轄を決定する。
  • (3) 警察からの通告等は、子どもの保護者の居住地にかかわらず子どもの現在地を管轄する市町村に行われるので、これを受け付けた市町村にあっては受け付け後、子どもの状況や家庭環境等について調査を行い、関係市町村等への移管の適否や移管の方法等について決定する。特に、保護者からの虐待により家出した場合等にあっては、身柄付きで移管を行うなど、子どもの福祉を最優先した判断を行う。
  • (4) 子どもの居住地と保護者の居住地とが異なる場合は、子どもの福祉及び児童家庭相談窓口の利用の利便等の事情を考慮し、関係市町村等と協議の上、ケースを管轄する市町村等を決定する。
  • (5) 電話による相談は、原則として子ども・保護者等の居住地を問わず、当該相談を受け付けた市町村において行い、必要に応じ管轄市町村等に紹介する。
  • (6) 支援を行っている家庭が他の自治体に転出する際には、連携を図りつつ対応してきた関係機関等に連絡するとともに、児福法第25条等に基づき、転出先の自治体を管轄する市町村等に通告し、ケースを移管するととともに、当該家庭の転出先やこれまでの対応状況など必要な情報を提供するなど、転出先の市町村等と十分に連携を図ることが必要である。
    【子どもの転居時における自治体相互間の連携】
    • 平成16年児童虐待防止法改正法により、国及び地方公共団体の責務 として、「関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間の連携の強化」が法律上明記されたが、その具体的な内容としては、
      • [1] 厚生労働省、内閣府、文部科学省、警察庁、法務省などの関係省庁 間の連携や
      • [2] 児童相談所、市町村、福祉事務所、NPO法人等の関係機関相互間の連携による横断的な施策の推進はもちろんのこと、
      • [3] 児童の転居時における自治体相互間の連携も含まれるものである。
    • 各市町村においては、平成16年児童虐待防止法改正法の趣旨を踏まえた積極的な取り組みが求められている。

4.相談・通告時における対応

  • (1) 相談・通告時において把握すべき事項

    相談・通告時に把握すべき事項は次のとおりであるが、相談・通告については、受容的対応に努め、引き続き相談等が継続できる信頼関係を構築することを重視し、かならずしも最初から全ての事項を聞き出す必要はない。

    把握できなかった事項については、以後の調査において把握するものとする。

    なお、相談・通告を受け付けるに際しては、相談・通告受付票(別添4参照)を作成する。

    • [1] 子どもの現在の状況(子どもの命に影響があると思われるような状況にあるのか等)
    • [2] 児童記録票に記載する事項(子どもの氏名・生年月日・住所、保護者の氏名・職業・住所、学校等、家族状況、主訴、過去の相談歴等)
    • [3] 子どもの家庭環境
    • [4] 子どもの生活歴、生育歴
    • [5] 子どもの居住環境及び学校、地域社会等の所属集団の状況
    • [6] 援助等に関する子ども、保護者等の意向
    • [7] その他必要と思われる事項
  • (2) 相談・通告時において留意すべき事項
    • [1] 相談者の不安・緊張をほぐすような姿勢や態度で面接をはじめること。(不安緊張の除去、安心感の形成)
    • [2] 相談者ができるだけ多く話ができるよう、途中で口をさしはさまないなどの配慮を行い、相談者の言葉に共感しながら耳を傾けること。
      (上手な受け手としての役割)
    • [3] 相談者の立場に立ち、「この人には何でも安心して話ができる」「問題解決に向けて真摯に考えてくれる」という相談者からの信頼感を得ること。(信頼感の獲得)
    • [4] 事情聴取的な調査はせず、子どもや保護者等の自然な話の流れの中から必要な情報を把握すること。その際、推察で判断せず、できるだけ具体的な事実を聞くよう心がけること。(相談者の話の調子・流れを尊重した面接の実施)
    • [5] 不登校・不登園相談の背景に虐待などが隠されている場合があるので、聴取すべき情報や気になる情報については省くことなく収集し、総合的に判断すること。(総合的判断)
    • [6] 一時保護など緊急対応が必要な場合は、即時に児童相談所に送致すること。(即時送致の実施)
    • [7] 他機関への紹介が必要と認められた場合には、子ども、保護者等の意向を確認した上で、利用者の状況や利便性などを考慮した上で対応機関につなげること。(相談者の意向や利便性を尊重した紹介)
    • [8] 虐待通告等の場合、通告者と虐待等を行っている者との関係等を踏まえ、守秘義務の遵守を含め情報源の秘匿等に十分配慮して対応すること。
      (秘密の保持の徹底)
  • (3) 通告の場合における留意事項
    • [1] 電話による通告の場合

      電話による通告については、緊急対応の必要性が高い場合が多いので、その際には緊急の受理会議を開催して当面の援助方針を決定する。なお、学校や保育所、医療機関など関係機関からの電話通告の場合には、後日通告書を送付してもらうこと。また、学校の教職員、保育所の職員、医師、保健師、弁護士その他子どもの福祉に職務上関係のある者からの電話通告の場合には、これに準じた対応をとることが望ましい。

    • [2] 通告書による場合
      • ア 警察からの児福法第25条による通告は、原則として文書によって行われる。この通告は子どもの保護者の居住地にかかわらず、子どもの現在地を管轄する市町村に対してなされるので、前記3(管轄)を参照すること。
      • イ 通告書は受理会議において検討する。
    • [3] 身柄を伴う通告・送致の場合
      • ア 一般的原則

        身柄を伴う通告・送致の場合においても、原則的には直接来所の場合と同様であるが、この場合は、子どもの一時保護等緊急対応の必要性が高い場合が多いので、通告者等からの必要事項の聴取、子どもの面接等を行い、緊急の受理会議を開催し、当面の支援を決定する。その際保護者にも連絡する。

      • イ 棄児、迷子の受理

        棄児については戸籍法上の手続きが行われているか否かを確認し、行われていない時は必ず手続きを行う。

        戸籍法(昭和22年法律第224号)
        • 第57条 棄児を発見した者又は棄児発見の申告を受けた警察官は、24時間以内にその旨を市町村長に申し出なければならない。
        • 2 前項の申出があつたときは、市町村長は、氏名をつけ、本籍を定め、且つ、附属品、発見の場所、年月日時その他の状況並びに氏名、男女の別、出生の推定年月日及び本籍を調書に記載しなければならない。この調書は、これを届書とみなす。

        また、警察官に保護された迷子については、警察官職務執行法上の手配が済んでいるか否かを確認する。

        警察官職務執行法(昭和23年法律第136号)
        • 第3条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して左の各号の一に該当することが明らかであり、且つ、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当な理由のある者を発見したときは、とりあえず警察署、病院、精神病者収容施設、救護施設等の適当な場所において、これを保護しなければならない。
          • 一 (略)
          • 二 迷い子、病人、負傷者等で適当な保護者を伴わず、応急の救護を要すると認められる者(本人がこれを拒んだ場合を除く。)
        • 2 前項の措置をとつた場合においては、警察官は、できるだけすみやかに、その者の家族、知人その他の関係者にこれを通知し、その者の引取方について必要な手配をしなければならない。責任ある家族、知人等が見つからないときは、すみやかにその事件を適当な公衆保健若しくは公共福祉のための機関又はこの種の者の処置について法令により責任を負う他の公の機関に、その事件を引き継がなければならない。
        • 3〜5 (略)
      • ウ 警察からの身柄を伴う通告への対応

        警察においては、子どもの最善の利益を確保する観点から、ケースの態様等に応じて子どもにとって最適な対応に努めることとしている。特に身柄付きの通告の多くについては、専門的な指導が必要であることから、これを踏まえた対応が行われることとなる。

        しかしながら、市町村又は福祉事務所が、警察のもとにある子どもに関する通告を受けたときは、夜間、休日等の執務時間外であっても、なお警察に赴いてその子どもの身柄の引継ぎを受けることが原則である。

        ただし、身柄付きの通告の多くについては専門的な指導が必要であることから、市町村又は福祉事務所は、こうした警察から通告を受けた子どもについて児童相談所の関与・協力が必要であると判断するときは、児童相談所とともに対応することが必要である。

        更に、児童相談所において、直ちに一時保護をすることが著しく困難である場合には、児童相談所から警察に対して一時保護委託を行うよう依頼するといった対応が必要となることも考えられる。

        市町村においては、こうした点も踏まえ、警察との日常的な協力関係を築くよう努めること。

  • (4) 受付面接
    • [1] 受付面接の目的

      受付面接は、子ども、保護者等の相談の内容を理解し、市町村に何を期待し、また、市町村は何ができるかを判断するために行われるものである。

      子ども、保護者等が相談に来所した場合、相談への対応がすなわち受付面接となるものである。

    • [2] 受付面接の内容

      4(1)相談・通告時において把握すべき事項と同様。

    • [3] 受付面接時の留意事項

      相談の受付時は子ども、保護者等にとって危機的な状況である場合もあり、この間の相談受付の方法がその後の展開に大きな影響を与えることになる。特に虐待相談については、受付段階(初期段階)の対応が重要であり、その後の対応に決定的な影響を与えることもあることを十分注意しなければならない。

      したがって、プライバシーを確保できる個室で対応することを基本とする。また、子どもや保護者等の気持ちを和らげ、秘密は守る旨話す等受容的かつ慎重に対応し、相互信頼関係の樹立をめざすこととし、事情聴取的な調査は避け、子ども、保護者等の自然な話の流れの中から必要な情報を把握する。

  • (5) 相談・通告時における指導等

    必要に応じ、相談・通告時において把握した事項を踏まえ、指導等を行う。

    継続的に市町村において相談援助活動を行う必要がある場合には、今後の相談援助方法についての説明を行う。

    また、他機関への紹介が必要と認められる場合には、子ども、保護者等の意向を確認の上、電話で紹介先に連絡をとる等利用者の利便を十分図ること。

  • (6) その他

    守秘義務にかかわること(児童虐待防止法第6条第2項、同法第7条)や調査項目、速やかな安全確認(児童虐待防止法第8条、児福法第25条の6)等について所内で意思統一を図っておく必要がある。

5.相談・通告後の対応

  • (1) 緊急の対応が必要な場合

    相談・通告を受けた者は、当該ケースについて、児童虐待相談等、緊急に一時保護が必要など児童相談所に送致することが必要と判断した場合は、緊急受理会議を開いて当面の方針を検討すること。なお、一時保護の必要性の判断基準については、平成11年3月29日児企発第11号「子ども虐待対応の手引き」に示されている緊急保護の要否判断に関するアセスメントフローチャート(別添5参照)を、児童相談所への送致書については、別添6を参照のこと。

  • (2) その他の場合

    緊急の対応まで必要としない場合については、相談・通告を受けた者は、児童記録票に聴取した事項のほか、面接所見やその際行った助言等の内容を記入し受理会議に提出すること。

  • (3) 通告を受けた子どもに必要な支援が行われたときは、その結果を通告者に連絡することが望ましい。

6.児童記録票の作成

  • (1) 市町村が行う相談援助業務は、相談員が個人として行うものではなく、行政機関として行う業務である。相談援助の方針や見直し、あるいは相談員の不在時の対応や異動の場合など、そのケースに関する記録がないと適切な対応ができない。そのため、ケースの概要や相談援助過程が理解できる児童記録票(別添7参照)を作成し、管理・保管することが必要である。
  • (2) 相談員は、受付面接など相談援助を終了後、時間を置かず、児童記録票に面接過程で聴取した必要事項のほか、相談者の態度や表情、相談員のとった助言、それに対する反応などについて、援助経過がよい悪いに関係なく、ありのままに事実を正確かつ簡潔に記載する。
  • (3) 児童記録票の保存期間

    児童記録票の保存期間については、その取扱いを終了した日から原則として5年間とするが、児福法第25条の7により、児童相談所に送致した場合など、将来的に児童記録票の活用が予想される場合は長期保存とする等、個々のケースや性質に応じて、柔軟かつ弾力的に保存期間を設定する。

7.受理会議(緊急受理会議)

  • (1) 受理会議(緊急受理会議)の目的

    受理会議の目的は、受け付けたケースについて協議し、主たる担当者、調査及び診断の方法、安全確認(児童虐待防止法第8条、児福法第25条の6)の時期や方法、一時保護の要否等を検討するものである。

    なお、来談者の相談内容(主訴)と援助の対象とすべきと考える問題が異なる場合もあるので、受理会議ではこれらについても十分検討を行う。

  • (2) 受理会議(緊急受理会議)の方法

    受理会議は、会議のケースに応じ、参加者を考え、適時に開催する。このほか虐待通告への対応など緊急に受理会議を開催する必要がある場合には随時、緊急受理会議を開催する。

    会議は、必ずしも関係者が集合して打ち合わせをする必要はなく、電話で協議を行うなど、柔軟に対応する。また、特に緊急を要する場合は、受理会議を経ることなく調査を開始するなど、子どもの安全の確保を最優先した対応をとる必要がある。

    会議の参加者はケースに応じて判断することとなるが、地域協議会の構成員の参加を求めるなど、多角的な見地からの検討が可能な体制を整えることが重要である。

    ケースの中には比較的軽易な検討で済むものから十分な協議を必要とするものまで含まれているので、柔軟な会議運営に心がける。

    会議の経過及び結果は受理会議録に記載し、保存する。

    会議の結果に基づき、当面の方針や主たる担当者、調査及び診断の方針、一時保護の要否等を決定する。

第3節 調査

1.調査の意義

調査は子ども、保護者等の状況等を知り、それによってその子ども、保護者等にどのような援助が必要であるかを判断するために行われるものであり、相互信頼関係の中で成立するものである。

通告者の情報だけでは事実関係が不明確な場合、学校や保育所、児童委員、近隣等、その子ども及び家庭の事情等に詳しいと考えられる関係者、関係機関と密接な連絡をとる等、迅速かつ的確な情報収集に努めることにより早期対応を図る。

したがって、事情聴取的な形ではなく、子どもや保護者等の気持ちに配慮しながら情報の収集を行う。

調査のための面接がそのまま指導のための面接の場となることも多いので、社会福祉援助技術の基本的原理の一つである「非審判的態度」に心がけ、信頼関係の樹立に努める。

2.子どもの安全の確認

虐待相談の場合、緊急保護の要否を判断する上で子どもの心身の状況を直接観察することが極めて重要である。

平成16年児童虐待防止法改正法により、児童虐待に係る通告を受けたときは、「市町村又は福祉事務所の長は、必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、当該児童との面会その他の手段により当該児童の安全の確認を行うよう努める」こととされたところである。

このため、子どもの安全確認を行う際には、子どもに会って確認することを基本とする。保護者の協力が得られない等の理由により、安全確認ができない場合は、児童相談所による立入調査の実施も視野に入れつつ、児童相談所に連絡し、連携を図りつつ対応する。また、当該ケースが行政権限の発動を伴う対応が必要な状況になっているか否かを定期的な訪問等を通じて確認するものとする。なお、観察に当たっては、観察の客観性、精度の向上を図るため、複数の職員が立ち会うことが望ましい。

3.調査担当者

虐待相談の場合、調査に対する客観性の確保が特に強く求められること、保護者等の加害の危険性があること等から、調査に当たっては複数の職員が対応する等、柔軟な対応に努める。

4.調査の開始

調査の開始及び担当者は原則として受理会議を経て決定する。ただし、緊急の場合、巡回相談中の受付の場合等においてはこの限りでない。

5.調査事項

調査事項は相談の内容によって異なるが、標準的には、第1節3(1)相談・通告時において把握すべき事項と同じである。

6.調査の方法

調査の方法には面接(所内面接、訪問面接)、電話、照会、委嘱等による方法があるが、いずれの場合においても子どもや保護者等の意向を尊重するよう努め、子どもや保護者以外の者から情報を得るときは、原則として子どもと保護者の了解を得てから行うよう配慮する等、プライバシ−の保護に留意する。

ただし、虐待通告等で、対応に緊急を要し、かつ調査等に関し保護者等の協力が得難い場合は、この限りでない。

なお、児福法第29条及び児童虐待防止法第9条に規定する立入調査については、都道府県知事(児童相談所長に権限が委任されている場合は児童相談所長)の権限により行うものであり、立入調査が必要なケースについては児童相談所に送致すること。

7.調査における留意事項

  • (1) 子どもや保護者等との面接等による情報の収集については、できる限り子どもや保護者等の気持ちに配慮しながら行う。
  • (2) 子どもの家庭、居住環境、地域社会の状況、所属集団における子どもの状況等の理解については、訪問による現地調査により事実を確認する。
  • (3) 聞き取りなど情報提供の協力を求めた者に対しては、個人情報の保護の徹底を求めること。特に近隣住民に協力を求める際にはこの点について十分な配慮が必要である。
  • (4) 関係機関の職員等との面接も重要である。特に、虐待相談等の場合、子どもや保護者等との面接だけでは正確な事実関係の把握が困難な場合も多いので、幅広い情報収集に努める。地域協議会の活用も有効である。
  • (5) 直接調査することが困難な場合又は確認を要する場合等には、文書等により照会する。

8.調査内容及び調査所見の記録

調査内容は正確、簡潔、客観的に児童記録票に記載し、資料の出所、日時等を明らかにする。

子どもや保護者等の言動のほか、調査担当者が指導した事項についても記載する。

調査担当者は必ず調査に基づく調査所見を児童記録票に記載する。なお、この調査所見は援助方針作成のための資料となることに留意しつつ記載することが必要である。

第4節 援助方針の決定、援助の実施、再評価

1.援助方針

援助方針は、相談のあったケースについて、具体的にどのような支援をするのかを示すものであり、調査の結果をもとに、ケース検討会議において決定されるものである。

2.ケース検討会議

  • (1) ケース検討会議は、調査の結果に基づき、子どもと保護者に対する最も効果的な相談援助方針を作成、確認するために行う。また、現に援助を行っているケースの終結、変更等についても検討を行う。

    なお、ケース検討会議は地域協議会(個別ケース検討会議)と一体のものとして開催することができる。

  • (2) ケース検討会議は、検討すべき内容に基づき、その参加者を考え、適時に開催すること。

    なお、ケースの中には比較的軽易な検討で済むものから十分な協議を必要とするものまで含まれているので、柔軟な会議運営を心がける。

  • (3) 援助内容の決定に当たっては、子どもや保護者等に対して十分説明を行い、その意向等を踏まえて策定すること。
  • (4) 援助方針は、ケース検討会議の結果に基づきケースの主担当者が作成する。
  • (5) 会議の経過及び結果はケース検討会議録に記入し、保存する。
  • (6) 会議の結果を踏まえ、必要なケースについては、地域協議会(実務者会議)で取り上げ、複数の機関が情報を共有し、適切な連携の下で対応していくこととする。

第5節 相談援助活動

1.相談援助活動の内容

市町村の子どもに関する相談・通告への対応としては、(1)市町村自らが中心となって対応するものと(2)他機関にケースを送致するものの2つに大きく分かれる。

  • (1) 市町村自らが中心となって対応するもの
    【助言指導】
    • [1] 助言指導とは、1ないし数回の助言、指示、説得、承認、情報提供等の適切な方法により、問題が解決すると考えられる子どもや保護者等に対する支援をいう。
    • [1] 助言指導は、子どもや保護者等の相談内容を十分理解し、必要な資料の収集等を行い、予測し得る経過について十分見通しを立てて行う。
    • [2] 助言指導は、対象、目的、効果等を考慮し、電話、文書、面接等適切な方法を工夫し行う。
    • [3] 助言指導は保健師を含め、児童家庭相談担当機関の相談員等の職員によって行われるが、必要に応じ、他の職員や医師等の専門家と十分協力する。
    • [4] 助言指導を行う際は、子どもや保護者等の精神的、身体的状態等を十分考慮し、現実的かつ具体的な指導を行う。
    • [5] 電話により助言指導を行う際は、その長所及び限界に十分留意し、場合によっては、面接等の方法をとる。
    • [6] 助言指導を行った場合は、その内容を児童記録票に記載し、ケース検討会議等において確認を受けるとともに、その効果について、検証する。
    【継続指導】
    • [1] 継続指導とは、継続的な支援が必要な子どもや保護者等を通所させ、あるいは必要に応じて訪問する等の方法により、継続的にソーシャルワークやカウンセリング等を行うものをいう。この中には指導キャンプ等も含まれる。
    • [2] 継続指導を行う場合には、ケース検討会議においてその必要性、方法及び担当者等について慎重に検討する。
    • [3] カウンセリング等を行う場合には、医師、保健師、臨床心理士等との連携に留意し、それぞれの原理や留意事項にのっとり行う。
    • [4] 担当者の決定は指導の目的、経過等により適切に行う。
    • [5] 継続指導の経過は児童記録票に記載し、指導終結の際はその効果について関係者で協議するとともに、ケース検討会議で十分な検討を行う。
    【他機関の紹介】
    • [1] 他の専門機関において、治療、指導、訓練等を受けること等関連する制度の適用が適当と認められるケースについては、子どもや保護者等の意向を確認の上、速やかに当該機関を紹介する。なお、この場合紹介先の機関の状況を子どもや保護者等に十分説明する。
    • [2] 他機関の紹介を行う場合には、電話で紹介先に連絡をとる等利用者の利便を十分図り、援助に万全を期する。また、紹介後においても紹介先と十分な連携を図る。
  • (2) 他機関にケースを送致するもの
    【児童相談所への送致】
    • [1] 以下の子どもは児童相談所に送致する(児福法第25条の7第1項第1号、同条第2項第1号)。児福法第27条の措置については別添8を、医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定については別添9を参照。
      • ア 児福法第27条の措置を要すると認める者
      • イ 医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を要すると認める者
    • [2] このほか、一時保護、強制立入調査が必要と判断されるケースについても児童相談所に権限があることから、児童相談所へ送致する。
    【知的障害者福祉司又は社会福祉主事による指導】
    • [1] 福祉事務所を設置している市町村において、必要があると認めるときは、当該市町村の設置する福祉事務所の知的障害者福祉司又は社会福祉主事に指導させなければならない(児福法第25条第1項第2号)
    • [2] 福祉事務所を設置していない町村において、子ども又はその保護者を知的障害者福祉司又は社会福祉主事に指導させることが必要があると認めるときは、当該町村の属する都道府県の設置する福祉事務所に送致しなければならない(児福法第25条の7第2項第2号)。
    【助産又は母子保護の実施に係る都道府県知事への報告】

    福祉事務所を設置していない町村において、助産の実施又は母子保護の実施が適当であると認める者は、それぞれその実施に係る都道府県知事に報告しなければならない(児福法第25条の7第2項第3号)。

第6節 施設退所後の相談・支援(アフターケア)

1.アフターケアの概要

子どもが施設や里親から家庭等に戻った場合でも、全ての問題が解決されているわけではない。施設を退所した子どもが、その後安定した生活を継続していくためには、家族や関係者の支援が必要となる。

例えば、乳幼児の場合は、保育所の優先入所の配慮や、育児支援家庭訪問事業等の保護者に対する継続的な子育て支援により、家庭の養育力の向上を図ることが必要である。また、年長の子どもが新しい生活環境の下で就学や就職をする際には、新たな人間関係を構築することなどに対し不安感を抱えており、相談や見守り等の支援が必要となる。

また、就学や就職に子ども本人が意欲的であっても、家庭等に問題がある場合には、息切れ現象が起きるおそれがある。

社会生活の場面での些細なつまずきが、その後の安定した生活を妨げることも多いので、アフターケアの体制を整備することが重要である。

2.市町村が行うアフターケア

市町村は、児童相談所からの連絡を受け、施設を退所した子どもが新しい生活環境の下で安定した生活を継続できるよう、必要に応じて、地域協議会の活用などにより、子どもに対し相談や定期的な訪問等を行い子どもを支え見守るとともに、家族等に対しても精神的な支援や経済的支援を行い家族が抱えている問題の軽減化を図ることにより、子どもの生活環境の改善に努める。

施設を退所した子どもが退所後直ちに社会的に自立することは容易ではなく、関係機関と連携を図りつつ、居住の場所の確保、進学又は就業の支援その他の支援を行っていくことが必要である。関係機関との連携については第5章参照のこと。

3.児童相談所が行うアフターケアへの協力

児童相談所は、子どもが施設を退所した後、必要に応じて児童福祉司指導等の措置(児福法第27条第1項第2号)をとることができる。この措置は、子ども又はその保護者を対象としたものであり、ケースの内容に応じて適当な児童福祉司が担当となり、家庭環境の調整や人間関係の調整等を行うものである。

このような場合、市町村は、児童相談所と十分な連携を図り、児童相談所によるアフターケアをサポートするとともに、児童相談所によるアフターケア終了後の継続的な支援体制についても検討する必要がある。

4.施設が行うアフターケアへの協力

平成16年児童福祉法改正法により、施設の業務として退所した子どもに対するアフターケアも明記された。施設が独自に退所した子どものアフターケアを行う場合は、ケース内容も十分把握できているので、問題等への対応も的確に行うことができる。

実際には施設が自ら直接ケースに対応する場合が多いと思われるが、事前に施設から市町村に対し照会等が寄せられることがある。このような場合には施設と十分な連携を図り、適切に対応することが求められる。


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