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児童相談所運営指針の改正について:第5章 一時保護

第5章 一時保護

第1節 一時保護の目的と性格

法第33条の規定に基づき児童相談所長又は都道府県知事等が必要と認める場合には、子どもを一時保護所に一時保護し、又は警察署、福祉事務所、児童福祉施設、里親その他児童福祉に深い理解と経験を有する適当な者(機関、法人、私人)に一時保護を委託する(以下「委託一時保護」という。)ことができる。一時保護は行政処分であり、保護者等に対する教示については、第4章第1節に示すところによる。

なお、虐待等を受けた子どもの一時保護については、本指針に定めるほか、平成9年6月20日児発第434号「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」及び「子ども虐待対応の手引き」による。

1.一時保護の必要性

一時保護を行う必要がある場合はおおむね次のとおりである。

  • (1) 緊急保護
    • ア 棄児、迷子、家出した子ども等現に適当な保護者又は宿所がないために緊急にその子どもを保護する必要がある場合
    • イ 虐待、放任等の理由によりその子どもを家庭から一時引き離す必要がある場合(虐待を受けた子どもについて法第27条第1項第3号の措置(法第28条の規定によるものを除く)が採られた場合において、当該虐待を行った保護者が子どもの引渡し又は子どもとの面会若しくは通信を求め、かつこれを認めた場合には再び虐待が行われ、又は虐待を受けた子どもの保護に支障をきたすと認める場合を含む。)
    • ウ 子どもの行動が自己又は他人の生命、身体、財産に危害を及ぼし若しくはそのおそれがある場合
  • (2) 行動観察

    適切かつ具体的な援助指針を定めるために、一時保護による十分な行動観察、生活指導等を行う必要がある場合

  • (3) 短期入所指導

    短期間の心理療法、カウンセリング、生活指導等が有効であると判断される場合であって、地理的に遠隔又は子どもの性格、環境等の条件により、他の方法による援助が困難又は不適当であると判断される場合

2.一時保護の期間、援助の基本

  • (1) 一時保護は子どもの行動を制限するので、その期間は一時保護の目的を達成するために要する必要最小限の期間とする。
  • (2) 一時保護の期間は2ヶ月を超えてはならない。ただし、児童相談所長又は都道府県知事等は、必要があると認めるときは、引き続き一時保護を行うことができる。
  • (3) 子どもは危機的状況の中で一時保護されるので、その目的にかかわらず子どもの精神状態を十分に把握し、子どもの心身の安定化を図るよう留意する。
  • (4) 援助に当たっては常に子どもの権利擁護に留意し、いやしくも身体的苦痛や人格を辱める等の精神的苦痛を与える行為は許されない。
  • (5) 一時保護における子どもの援助等については、最低基準第13条に準じて、具体的な要領を都道府県等で定めることが適当である。
  • (6) 一時保護が必要な子どもについては、その年齢も乳幼児から思春期まで、また一時保護を要する背景も非行、虐待あるいは発達障害など様々であり、一時保護に際しては、こうした一人ひとりの子どもの状況に応じた適切な援助を確保することが必要である。

    しかしながら、近年、地域によっては一時的に定員を超過して一時保護所に子どもを入所させる事態が見られ、またこうした様々な背景等を有する子どもを同一の空間で援助することが一時保護所の課題として指摘されている。

    このため、一時保護については、

    • ア 管轄する一時保護所における適切な援助の確保が困難な場合には、他の都道府県等の管轄する一時保護所を一時的に活用するといった広域的な対応や、
    • イ 児童福祉施設、医療機関等に対する委託一時保護の活用

    等により、適切な援助の確保に努めることが重要である。

  • (7) 児童相談所は、一時保護所に虐待を受けた子どもと非行児童を共同で生活させないことを理由に、非行児童の身柄の引継ぎを拒否することはできない。

    児童相談所においては、児童福祉施設等への一時保護委託の活用、広域的な対応等により、こうした混合での援助等を回避し、すべての子どもに適切な援助を行うことが必要である。

    なお、警察のもとにある子どもについて通告が行われた場合、こうした一時保護委託や広域的な対応等には一定の時間を要することや、児童相談所が遠隔地にある場合などやむを得ない事情により、児童相談所が直ちに引き取ることができないときは、警察に一時保護を委託することも考えられる。

    こうした警察が行う一時保護の取扱いについては、警察庁生活安全局少年課より平成13年3月8日付で各都道府県警察本部等宛に通知されているので留意願いたい。

3.一時保護の強行性

  • (1) 一時保護は原則として子どもや保護者の同意を得て行う必要があるが、子どもをそのまま放置することが子どもの福祉を害すると認められる場合には、この限りでない。
  • (2) 現に一時保護を加えている子どもが無断外出した場合において児童福祉上必要と認められる場合には、その子どもの同意を得なくても再び保護することができる。なお、この場合においても、子どもや保護者の同意を得るよう十分な調整を図る。
  • (3) 一時保護は、子どもの親権を行う者又は未成年後見人の同意が得られない場合にも行うことができる。これは、一時保護が終局的な援助を行うまでの短期間のものであること等から例外的に認められているものである。なお、この場合においても親権を行う者又は未成年後見人の同意を得るよう十分な調整を図る必要がある。

4.行動自由の制限

  • (1) 行動自由の制限

    一時保護中は、入所した子どもを自由な環境の中で落ち着かせるため、環境、処遇方法等について十分留意する。無断外出が頻繁である等の理由により例外的に行動自由の制限を行う場合においても、できるだけ短期間の制限とする。

  • (2) 制限の決定

    行動自由の制限の決定は、判定会議等において慎重に検討した上で児童相談所長が行う。なお、このことについては必ず記録に留めておく。

  • (3) 制限の程度

    子どもに対して行い得る行動自由の制限の程度は、自由に出入りのできない建物内に子どもを置くという程度までであり、子どもの身体の自由を直接的に拘束すること、子どもを一人ずつ鍵をかけた個室におくことはできない。

  • (4) その他

    行動自由の制限については本指針に定めるほか、昭和25年7月31日児発第505号「児童福祉法において児童に対し強制的措置をとる場合について」及び昭和24年6月15日発児第72号「児童福祉法と少年法の関係について」による。

第2節 一時保護所入所の手続き

1.一時保護の開始

  • (1) 入所前の手続き
    • ア 一時保護の決定は受理会議等において検討し、児童相談所長が行う。緊急の場合においても臨時の受理会議等を開いて検討する。
    • イ 一時保護の開始については、一時保護部門と密接に連絡をとって相談・指導部門が行う。また、措置部門、判定・指導部門とも連絡をとり、健康診断等の必要な事項が円滑に行われるように配慮する。
    • ウ 一時保護の決定に当たっては、原則として子どもや保護者に一時保護の理由、目的、期間、入所中の生活等について説明し同意を得て行う必要があるが、緊急保護の場合等子どもを放置することがその福祉を害すると認められる場合にはこの限りではない。
    • エ 一時保護中必要な日用品、着替え等を準備するよう保護者等に連絡する。
    • オ 原則として入所前に健康診断を受けさせ、集団生活をさせても差し支えないことを確認しておく。特に感染性疾患等に留意する。
    • カ 一時保護の必要を認めた子どもについては、次の事項を記載した一時保護児童票を作成し、一時保護中に実施する検査等の予定を一時保護所での生活のプログラムの中に折り込めるようにしておく。
      • (ア) 子どもの住所、氏名、年齢
      • (イ) 事例担当者、事例の概要
      • (ウ) 一時保護する理由、目的、予定、保護中に実施する事項
      • (エ) 子どもの性格、行動傾向、日常生活あるいは健康管理上注意しなければならない事項
      • (オ) 子どもの所持物
    • キ 他部門との連携を図り、相談援助活動の一貫性を保つために、一時保護部門においても個々の子どもの担当者を決めておくことが適当である。
    • ク 一時保護の開始を決定したときは、速やかに一時保護の開始の期日及び場所を文書で保護者に通知する。

2.入所時の手続き

  • (1) 担当者は必ず子どもや保護者等に面接し、入所中の生活、注意事項等を説明し、十分に理解させ気持ちを安定させる。
  • (2) 子どもの所持品を点検し、子どもの持ち物に記名させるとともに記録する。また、持たせる必要のないもの及び持たせることが不適当なものは一括して記録し、前者は一時保護部門で保管し、後者は総務部門で保管する。
  • (3) 日用品、着替え等を持っていない子どもに対しては、必要なものを支給又は貸与する。
  • (4) 緊急保護した場合は、速やかに健康診断を行うほか、必要があれば専門の医師の診察を受けさせる。入所前に健康診断を受けてきた子どもについても、更に詳しい検査が必要な場合又は健康診断後かなり時間が経過している場合等においては、入所後必要に応じ医師の診察を受けさせる。
  • (5) 身体的外傷がある子どもについては、入所時に傷の状況を正確に把握し、記録する。

第3節 一時保護所の運営

1.運営の基本的考え方

  • (1) 子どもを安定させるためには、家庭的環境等快適な環境の中で束縛感を与えず、子どもができるだけ自由に活動できるような体制を保つよう留意する。このため、子どもが楽しく落ち着いて生活できるための設備及び活動内容を工夫する。
  • (2) 一時保護所に入所する子どもについては、その年齢も乳幼児から思春期まで、また一時保護を要する背景も非行、虐待あるいは発達障害など様々であることから、子ども同士の暴力やいじめなど、子どもの健全な発達を阻害する事態の防止にも留意しつつ、こうした一人ひとりの子どもの状況に応じた適切な援助の確保に配慮し、子どもが安心感や安全感を持てる生活の保障に努めなければならない。
  • (3) 一時保護所は児童相談所に付設もしくは児童相談所と密 接な連携が保てる範囲内に設置し、その設備及び運営については児童養護施設について定める最低基準を準用する(則第35条)。最低基準第9条の2において、懲戒に係る権限の濫用が禁止されていること及び、第14条の2において苦情への対応について必要な措置を講じなければならないことに留意し、適切に運営する。
  • (4) 一時保護所における一時保護業務は児童相談所の一時保護部門が担当するが、入退所時の調査、指導、入所中の調査、診断、指導等については、他の各部門との十分な連携のもとに行う。
  • (5) 一時保護部門の職員は夜間を含め子どもと生活をともにすることとなるが、その数については子どもの数のほか子どもの状況も考慮し定める。場合によっては、他の部門の職員の協力を求める。

2.子どもの観察

担当者は、援助指針を定めるため、一時保護した子どもの全生活場面について行動観察を行う。その場合種々の生活場面の行動を観察し、定期的に他の職員と観察結果の比較検討をする等して、総合的な行動観察を行う。

3.保護の内容

  • (1) 一時保護所の運営は、入所期間が短期間であること、子どもに年齢差や問題の違い等があること、子どもの入退所が頻繁であること等により計画的な運営には困難が多いが、必要に応じ性別、年齢別に数グル−プに分けて、起床から就寝に至る間の基本的な日課を立て、その上で子どもの状況により具体的運営を行うようにする。
  • (2) 午前中は学齢児に対しては学習指導、未就学児童に対しては保育を行い、午後は自由遊び、スポ−ツ等レクリエ−ションのプログラムを組むことが適当である。夜間は、読書、音楽鑑賞等により楽しませることにも配慮する。また、夜尿等特別な指導や治療的関わりを必要とする子どもに対する指導等にも配慮する。特に、入所時には子どもは精神的に不安定な状態になっている場合が多く、心理的ケアを行うなどにより、安定した生活を送れるよう配慮する。
  • (3) 生活指導
    • ア 生活指導は掃除、洗面、排せつ、食事、作業、洗濯、学習、遊び等毎日の生活全体の場面で行う。したがって、具体的な生活指導方針を定め、すべての職員がその方針に即した生活指導を行う。
    • イ 幼児に対する保育は、情緒の安定、基本的生活習慣の習得等に十分配慮して行う。
    • ウ 無断外出等の問題を有する子どもに対しては、慎重な生活指導を行う。
  • (4) レクリエ−ション

    入所している子どもの年齢を考慮の上、卓球、野球、バトミントン、バスケットボ−ル等のスポ−ツ活動及びゲ−ム、創作活動、読書、トランプ、将棋、テレビ、ビデオ等の室内遊戯等を計画し、参加させるよう配慮する。また、必要に応じ、事故防止に留意しつつ野外活動等を実施することも子どもの安定化等に有効である。したがって、これらのための道具、設備等の整備にも十分配慮する。

  • (5) 食事(間食を含む。)
    • ア 一時保護所は他の施設と異なり、子どもの移動がかなり激しいので、食事について特に配慮する。また、食事は衛生が確保され、栄養のバランスはもちろん子どもの嗜好にも十分配慮し、あらかじめ一定期間の予定献立を作成し、楽しい雰囲気の中で提供する。
    • イ 入所前の生活や入所時の不安等から偏食、少食、過食、拒食等の問題も生じやすいので、個々の子どもの状態に即した食事指導を行う。
    • ウ 栄養士、調理員等食事に携わる職員については、日常の健康管理に十分配慮するとともに毎月定期的に検便を実施する。
  • (6) 健康管理
    • ア 子どもにとっては新しく慣れない環境に入るため、心身の変調をきたしやすいので、医師、保健師、看護師との十分な連携を図り、健康管理について配慮する。
    • イ 毎朝、子どもの健康状態を観察するほか、必要に応じ健康診査を受けさせる。また、応急の医薬品等を備え付けておく。
  • (7) 教育・学習指導

    一時保護している子どもの中には、学習をするだけの精神状況にない、あるいは学業を十分に受けていないために基礎的な学力が身についていない子どもなどがいる。このため、子どもの状況や特性、学力に配慮した指導を行うことが必要であり、在籍校と緊密な連携を図り、どのような学習を展開することが有効か協議するとともに、取り組むべき学習内容や教材などを送付してもらうなど、創意工夫した学習を展開する必要がある。

    また、特にやむを得ず一時保護期間が長期化する子どもについては、特段の配慮が必要であり、都道府県又は市町村の教育委員会等と連携協力を図り、具体的な対策について多角的に検討し、就学機会の確保に努めること。

4.安全対策

  • (1) 火災等の非常災害に備え具体的な避難計画を作成する。実際の訓練は、特に子どもの入退所が頻繁であるため、毎月1回以上実施する。
  • (2) 避難計画の作成に当たっては、少人数勤務となる夜間について他の職員の協力を求める体制を整える等の配慮を行う。
  • (3) 日頃から消防署、警察署、病院等関係機関との連携、調整に努め、緊急事態発生の場合に迅速、適切な協力が得られるようにしておく。
  • (4) その他、子どもの安全の確保については、不審者への対応なども含め、平成13年6月5日雇児総発第402号「児童福祉施設等における児童の安全の確保について」による。

5.子どもの権利擁護

  • (1) 身体的苦痛や人格を辱める等の精神的苦痛を与える行為の禁止

    子どもの援助に当たっては、身体的苦痛や人格を辱める等の精神的苦痛を与える行為を行ってはならない。身体的苦痛や人格を辱める等の精神的苦痛を与える行為の具体的な例としては、殴る、蹴る等直接子どもの身体に侵害を与える行為のほか、合理的な範囲を超えて長時間一定の姿勢をとるよう求めること、食事を与えないこと、子どもの年齢及び健康状態からみて必要と考えられる睡眠時間を与えないこと、適切な休息時間を与えずに長時間作業等を継続させること、性的な嫌がらせをすること、子どもを無視すること、子ども本人の意に反した事項について執拗に聴取を行うこと等の行為があげられる。

    ただし、強度の自傷行為や他の子どもや職員等への加害行為を制止するなど、急迫した危険に対し子ども又は他の者の身体又は精神を保護するために子どもに対し強制力を加える場合はこの限りでない。

  • (2) 子ども同士の暴力等の防止

    一時保護所に入所する子どもについては、その年齢も乳幼児から思春期まで、また一時保護を要する背景も非行、虐待あるいは発達障害など様々であることから、子ども同士の暴力やいじめなど、子どもの健全な発達を阻害する事態の防止に留意しなければならない。

  • (3) 苦情解決等の仕組みの導入

    一時保護所においては、最低基準第14条の2に準じて、意見箱の設置といった子どもからの苦情を受け付けるための窓口の設置や第三者委員の設置など、子どもの権利擁護に努める。

    万が一職員による身体的苦痛や人格を辱める等の精神的苦痛を与える行為、あるいは子ども同士の暴力など子どもの権利が侵害される事態が生じたときは、被害を受けた子どもの心のケア等を行うとともに、児童相談所全体で、また必要に応じて都道府県等の児童相談所所管部局とも協議し、加害行為を行った子どもに対する指導等の徹底や援助体制の見直しなど、再発防止に万全を期すことが必要である。

6.無断外出への対応

  • (1) 一時保護所からの無断外出は子どもの最善の利益を損なうことにもつながりかねないものであり、児童相談所としても、できる限りこれらの防止に努める。具体的な対応は、子どもの状態や当該児童相談所の体制に基づき工夫していくこととなるが、例えば、一時保護所からの自由な出入りを制限する、その子どもを他の子どもとは別の部屋で生活させ常時職員の目が届くようにしておく、その子どもに特別な日課を用意する、といった対応もケースによっては採りうるようにしておくことが考えられる。
  • (2) 一時保護中の子どもが無断外出したときは、児童相談所職員が自らその子どもの発見、保護に努めるとともに、保護者その他の関係者に連絡し可能な限り捜索する。また、必要に応じ警察署に連絡して発見、保護を依頼する。一時保護を解除する場合においても原則として保護者等の了解を得てから行い、一方的な一時保護の解除は避ける。
  • (3) 一時保護中の子どもが無断外出し、他の都道府県等の児童相談所等に一時保護された場合には、子どもの福祉を十分勘案し、いずれが移送あるいは引取りをするかを決定する。原則として、もとの児童相談所が現に子どもの身柄を保護している児童相談所に引取りに行くことが望ましい。
  • (4) 一時保護中の子どもが無断外出した場合は、その原因を検証し、対応策を講じるなど、再発防止に努めるものとする。

7.子どもに関する面会、電話、文書等への対応

  • (1) 入所中の子どもに関する面会、電話、手紙等の文書等への対応については、その子どもの人権に十分配慮しつつ、その福祉向上の観点から行う必要がある。
  • (2) 保護者等による虐待等のために保護者等の同意が得られずに一時保護した子どもについて、保護者等が面会や引取りを求めてきた場合には、児童相談所長又は都道府県知事等が必要と認める場合には、子どもの親権を行う者又は未成年後見人の同意が得られない場合でも、また、家庭裁判所の決定によらない場合でも一時保護を行うことができるとされていることから(昭和36年6月30日児発第158号)、これを拒む等、子どもの福祉を最優先した毅然とした対応を行う。

    また、一時保護している子どもについて、家庭裁判所に対し法第28条第1項の規定に基づく承認に関する審判を申し立てた場合は、家庭裁判所は、審判前の保全処分として、承認に関する審判が効力を生ずるまでの間、保護者について子どもとの面会又は通信を制限することができるので、保護者に対し説得を重ねたり毅然とした対応をとってもなお子どもの保護に支障をきたすと認められる場合などには、本保全処分の申立てを検討する。

    なお、保護者等の強引な面会や引取りに対しては、必要に応じ、子ども又は担当者に対する保護者等の加害行為等に対して迅速な援助が得られるよう、警察に対し、児童虐待防止法第10条に準じた対応を依頼するのが適当である。

  • (3) 一時保護中の子どもに対して警察等による聴取がある場合には、児童福祉の観点から、本人及び他の一時保護中の子どもに与える影響に特に注意し、本人、保護者等の同意、保護者、職員の立ち会い、聴取の場所、時間等について十分留意する。

8.観察会議等

  • (1) 業務の引継ぎについて十分配慮するとともに、各担当者はその担当する子どもの状況について十分把握する。
  • (2) 原則として、週1回は一時保護部門の長が主宰する観察会議を実施し、個々の子どもの観察結果、一時保護所内における援助方針について確認するとともに行動診断を行い、判定会議に提出する。なお、観察会議には、原則として担当の児童福祉司や児童心理司等も参加する。

9.他の部門との連携

一時保護中に児童福祉司、児童心理司、医師等による子どもとの面接、検査等が行われる場合も多いので、日時等について十分打ち合わせをしておく。また、子どもの行動観察、生活指導事項等についても十分な連携を行う。

10.退所

  • (1) 一時保護の目的を達成したときは子どもを退所させる。
  • (2) 家出した子ども等を一時保護し、保護者が判明した場合は、保護者等から事情を聴取する等、必要な調査・判定を実施し、保護者への引取りが適当と判断したときは、その子どもとの関係を確認の上引き渡す。

    なお、保護者の居住地が他の児童相談所の管内であることが判明した場合の対応については、第3章第2節のとおりである。

  • (3) 移送に当たって旅客鉄道株式会社(JR)、バス等を利用する場合は「被救護者旅客運賃割引証」等を発行する。これについては関連の通知を参照すること。
  • (4) 一時保護の解除を決定したときは、速やかにその旨を保護者に通知するとともに、関係機関等にも連絡するよう努めること。

第4節 一時保護した子どもの所持物の保管、返還等

1.子どもの所持物

  • (1) 一時保護した子どもの所持する物は、その性格によって、一時保護中本人に所持させることが子どもの福祉を損なうおそれがある物と、その他の物の2つに分けられる。
  • (2) 児童相談所長が警察署長に子どもの一時保護委託をした場合に、警察署から通告書に添えて送付してくるその子どもに関わる保管物も所持物に含まれる。
  • (3) 盗品、刃物類、子どもの性的興味を著しく誘発するような文書類等、一時保護中本人に所持させることが子どもの福祉を損なうおそれがある物については、法第33条の2第1項の規定に基づき、児童相談所長は「子どもの所持物」として保管することができる。これらの物については子どもの意思にかかわらず保管できるが、子どもの所有物である場合には、できる限り子どもの同意を得て保管する。
  • (4) 衣類、雨具、玩具等一時保護中子どもに持たせておいてよい物については、記名させる等子どもの退所時に紛失していないよう配慮する。また、子どもに持たせておく必要のない物については、入所時に保護者に返還することが望ましい。しかし、返還できない場合は、子どもの同意を得て、児童相談所長が保管する。
  • (5) 所持物の中に覚せい剤等がある場合には、直ちに警察署に連絡する。

2.所持物の保管

  • (1) 子どもの所持物は、紛失、盗難、破損等が生じないような設備に保管し、「子どもの所持物及び遺留物の保管台帳」に記載しておく。
  • (2) 法第33条の2第1項の規定により保管を決定した子どもの所持金は、普通地方公共団体の占有には属するが、その所有に属しない現金として管理する。(地方自治法第235条の4第2項)
  • (3) 所持物の保管業務については総務部門がこれを行う。ただし、子どもの同意を得て預かるその子どもの所持物(身のまわり品等)については一時保護部門で保管することが適当である。
  • (4) 腐敗し、若しくは滅失するおそれのある物又は保管に著しく不便な物は、これを売却してその代価を保管することができる。(法第33条の2第2項)

3.所持物の返還

  • (1) 子ども等に対する返還
    • ア 保管物が子どもの所有物であるときは、一時保護を解除する際にその子どもに返還する。
    • イ 子どもに所持させることが子どもの福祉を損なうおそれのある物については、子どもの保護者等に返還することが適当である。
    • ウ 返還の際には受領書を徴する。
  • (2) 返還請求権者に対する返還
    • ア 保管物中、その子ども以外の者が返還請求権を有することが明らかな物については、これをその権利者に返還しなければならない。(法第33条の2第3項)
    • イ 返還請求権を有する者であるか否かの決定は、返還請求人の申立て、被害事実に関する警察等の公証力のある資料等に基づいて慎重に行う。
    • ウ 正当な権利者と認められる場合は、当該請求者から返還請求書を求め、当該保管物を返還する。返還の際は返還請求人から受領書を徴する。
  • (3) 返還請求権者不明等の場合の手続き
    • ア 請求権者の有無の調査によっても返還請求権者を知ることができないとき、又はその者の所在を知ることができないときは、必要な事項を記して公告しなければならない。(法第33条の2第4項)
    • イ 公告を行った後、公告の申出期間内に返還請求権者から申出のない保管物は、都道府県等に帰属する。(法第33条の2第5項)

4.所持物の移管

一時保護した子どもが他の都道府県等の児童相談所で一時保護中の子どもであることが判明して身柄を移送する場合、その子どもに係る保管物がある場合には、原則として次により対応する。

  • ア 子どもの所有物は、子どもの身柄とともに移管する。
  • イ 公告した物は移管しない。
  • ウ 子どもの所有に属しない物で未だ公告していないものは、原則として移管しない。ただし、移管した方が返還請求権を有する者の利益にかなうと判断される場合には、関係都道府県等において十分に協議し移管する。

5.子どもの遺留物の処分

  • (1) 子どもの遺留物

    一時保護中の子どもの死亡等の場合において遺留物がある場合は、これを保護者、親族又は相続人(以下「遺留物受領人」という。)に交付しなければならない。(法第33条の3)

  • (2) 処分の方法
    • ア 遺留物は、盗品等他に返還請求権を有する者があると認められる物を除き、すべてこれを遺留物受領人に交付する。
    • イ 遺留物受領人が不明の場合は公告を行い、公告の申出期間内に申出がなければ、遺留物は都道府県等に帰属する。
    • ウ 腐敗し若しくは滅失するおそれのある物又は保管に著しく不便な物は、売却してその代価を遺留物受領人に交付することも可能である。交付した際には受領書を徴する。

6.取扱い要領の作成

一時保護した子どもの所持物の保管、返還等については、本指針のほか関連法規、通知を十分参照の上、具体的な取扱要領を都道府県等で定めることが適当である。

第5節 委託一時保護

  • (1) 子どもを一時保護する必要がある場合は、一時保護所を利用することを原則とするが、次に掲げる理由で委託一時保護を行うことが適当と判断される場合には、その子どもを警察署、医療機関、児童福祉施設、里親その他適当な者(児童委員、その子どもが通っている保育所の保育士、学校(幼稚園、小学校等)の教員など)に一時保護を委託することができる。この場合においては、受理会議等で慎重に検討し決定する。
    • [1] 夜間発生した事例等で、直ちに一時保護所に連れてくることが著しく困難な場合
    • [2] 乳児、基本的な生活習慣が自立していないため一時保護所において行うことが適当でないと判断される幼児の場合
    • [3] 自傷、他害のおそれがある等行動上監護することが極めて困難な場合
    • [4] 非行、情緒障害あるいは心的外傷などの子どもの抱えている問題の状況を踏まえれば、一時保護後に、児童自立支援施設、情緒障害児短期治療施設あるいは医療機関などのより専門的な機関において対応することが見込まれる場合
    • [5] これまで育んできた人間関係や育ってきた環境などの連続性を保障することが必要な場合(例えば、その子どもが住んでいる地域の里親・児童委員、その子どもが通っている保育所の保育士、学校(幼稚園、小学校等)の教員などに委託することが適当な場合)
    • [6] 現に児童福祉施設への入所措置や里親への委託が行われている子どもであって、他の種類の児童福祉施設や里親あるいは専門機関において一時的に援助を行うことにより、その子どもが抱える問題について短期間で治療効果が得られることが期待される場合
    • [7] その他特に必要があると認められる場合

      また、現に児童相談所において一時保護している子どもで、法第28条第1項の申立て等により一時保護期間が相当長期化すると推測される場合においても、児童養護施設等への委託一時保護を検討する。

      なお、現に児童福祉施設への入所措置や里親への委託が行われている子どもを他の種類の児童福祉施設や里親あるいは専門機関に委託一時保護する際には、措置を解除又は停止した上で委託すること。

  • (2) 委託一時保護については、相談・指導部門が措置部門等の協力を得て行う。
  • (3) 具体的委託先の選定に当たっては、環境、設備又は子どもや保護者の状況等を十分勘案し、その子どもに最も適した者を選ぶことが必要である。
  • (4) 委託期間については、医療機関に委託する場合等特に子どもの福祉を図る上で必要と思われる場合等を除き必要最小限度の期間とし、速やかに他の援助等を行う。
  • (5) 委託一時保護を行うに当たっては、委託の期間等について保護者、委託先に通知する。委託一時保護を解除した場合も同様である。また、一時保護委託決裁簿を備えつけ、子どもの氏名、生年月日、住所、委託理由等を記載しておく。
  • (6) 委託一時保護に関する事項については本指針に定めるほか、昭和25年7月31日児発第505号「児童福祉法において児童に対し強制的措置をとる場合について」による。

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