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平成23年9月 月例労働経済報告

1 概況

  1. (1)一般経済の概況

     景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるものの、持ち直している。

    • 生産は、サプライチェーンの立て直しにより、持ち直している。輸出は、持ち直しの動きがみられる。
    • 企業収益は、減少している。設備投資は、下げ止まりつつある。
    • 企業の業況判断は、東日本大震災の影響による厳しさが残るなど、慎重さがみられる。
    • 雇用情勢は、東日本大震災の影響により、このところ持ち直しの動きに足踏みがみられ、依然として厳しい。
    • 個人消費は、持ち直しの動きがみられる。
    • 物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。

     先行きについては、サプライチェーンの立て直しや各種の政策効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待される。ただし、電力供給の制約や原子力災害の影響に加え、回復力の弱まっている海外景気が下振れた場合や為替レート・株価の変動等によっては、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

  2. (2)労働経済の概況

     労働経済面をみると、雇用情勢は、東日本大震災の影響により、このところ持ち直しの動きに足踏みがみられ、依然として厳しい第1図)。

    • 完全失業率(※)は、高水準で推移しており7月は前月比0.1%ポイント上昇し、4.7%となった。
    • 15〜24歳層の完全失業率(※)は、前月比0.1%ポイント上昇し、7.8%となった。
    • 新規求人数が増加していることなどから有効求人倍率は6月から緩やかに上昇している。
    • 雇用者数は、このところ横ばいで推移している。
    • 製造業の残業時間は、生産の持ち直しを反映し、持ち直しの動きがみられる。
    • 定期給与はこのところ横ばい圏内で推移しているものの、ボーナスを含む特別給与の減少などから、現金給与総額は弱い動きとなっている。
      (※:全国(岩手県、宮城県及び福島県を除く)の値)

2 一般経済

  1. (1) 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、サプライチェーンの立て直しにより、持ち直している。

     2011年7月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、0.4%増であった(第2図)。

     業種別にみると、輸送機械工業、情報通信機械工業、食料品・たばこ工業等が上昇し、化学工業、電子部品・デバイス工業、金属製品工業等が低下した。

     出荷は前月比0.1%増であった。在庫は前月比0.1%減であった。

     今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は平成23年8月は前月比2.8%増、9月は同2.4%減であった。

     先行きについては、サプライチェーンの立て直しに伴い、持ち直し傾向が続くものと期待されるが、海外景気の下振れリスクや電力供給制約等に留意する必要がある。

  2. (2)最終需要の動向をみると、
    • [1]個人消費は、持ち直しの動きがみられる。
       二人以上の世帯の実質消費支出(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、6月0.8%増の後、7月0.7%増となった。うち勤労者世帯では、6月0.3%増から、7月0.5%増となった。勤労者世帯の平均消費性向(季節調整値)は6月73.6%の後、7月71.9%となった(第3図)。
       消費者態度指数の推移をみると、2011年4〜6月期(季節調整済前期差)は3.3ポイント下落し、35.3となった。なお、7月(原数値前年同月差)は1.5ポイント上昇し、37.7となった。
       7月の小売業販売額(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、0.3%減、大型小売店販売額は0.3%増となった。また、乗用車(軽を含む)の新車登録台数(原数値前年同月比)は、7月25.6%減の後、8月26.0%減となった。
       先行きについては、緩やかに持ち直していくことが期待される。ただし、雇用・所得環境や電力供給の制約には留意が必要である。
    • [2]設備投資は、下げ止まりつつある。
       財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2011年1〜3月期季節調整済前期比1.9%減の後、2012年4〜6月期同6.6%減(うち製造業同10.9%減、非製造業同4.1%減)となっており、全産業、製造業、非製造業のいずれも低下している(第4表)。
       今後の動向については、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)では、全規模の2011年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業では0.0%の横ばい、製造業では9.4%増、非製造業は4.9%減となっている。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で2011年6月は7.7%増の後、7月は8.2%減となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、2011年6月は季節調整済前月比0.9%増の後、7月は同0.4%増となっている。
       先行きについては、東日本大震災からの復旧需要が見込まれることから、持ち直しに復することが期待される。
    • [3]住宅建設は、持ち直しの動きがみられる。
       新設住宅着工戸数をみると、2011年6月は季節調整済前月比0.3%増、7月は同16.9%増の年率95.5万戸となった(第5図)。
       新設住宅着工床面積は、2011年6月は季節調整済前月比1.0%増、7月は同17.8%増となった。
       先行きについては、緩やかに持ち直していくことが期待される。ただし、雇用・所得環境等に注視が必要である。
    • [4]公共投資は、総じて低調に推移している。
       公共機関からの建設工事受注額は、2011年6月は前年同月比16.4%減、7月は同3.1%減となった。また、公共工事請負金額(「公共工事前払金保証統計」)をみると、6月は3.4%減の後、7月は15.9%減となった。
       先行きについては、補正予算による押し上げ効果が見込まれる。
    • [5]輸出は、持ち直しの動きがみられる。
       通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で2011年6月は7.4%増となった後、2011年7月は0.2%増となっており、四半期別では、2011年1〜3月期0.3%増の後、2011年4〜6月期7.3%減となった(第6図)。
       地域別にみると、アジア向けの輸出は、横ばいとなっている。アメリカ向け、EU向けの輸出は、ともに持ち直している。先行きについては、海外景気の下振れリスクや円高の影響に留意する必要がある。
       輸入は、横ばいとなっている。
       通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で2011年6月は0.9%減の後、2011年7月は0.1%増となっており、四半期別では、2011年1〜3月期0.9%増の後、2011年4〜6月期1.1%減となった(第6図)。
       地域別にみると、アジアからの輸入は、横ばいとなっている。アメリカからの輸入は、弱含んでいる。EUからの輸入は、緩やかに増加している。先行きについては、当面、横ばいで推移することが見込まれる。
  3. (3) 国内企業物価は、横ばいとなっている。消費者物価は、前月比では横ばいとなっているが、前年比では下落が続いている。
     7月の国内企業物価(確報)は、前月比0.3%上昇(前年同月比2.9%上昇)となり、輸出物価は同1.3%下落(同1.1%下落)、輸入物価は同0.5%下落(同13.0%上昇)となった。
     7月の消費者物価は、生鮮食品、石油製品及びその他特殊要因を除く総合(コアコア)では前年同月比0.6%下落(季節調整済前月比0.1%上昇)となった。総合が同0.2%上昇(同0.3%上昇)となり、生鮮食品を除く総合は同0.1%上昇(同0.1%上昇)となった(第7図)。
     先行きについては、消費者物価(コアコア)は、当面、横ばい圏内で推移すると見込まれる。ただし、国際商品市況等が今後の物価動向に与える影響について注視していく必要がある。
     なお、消費者物価は前年比で下落基調が続いているなど、物価の動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレ状況にある。
  4. (4) 企業収益は、減少している。企業の業況判断は、東日本大震災の影響による厳しさが残るなど、慎重さがみられる。倒産件数は、おおむね横ばいとなっている。
     財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、四半期別前年同期比で、2011年1〜3月期11.4%増の後、2011年4〜6月期14.6%減(製造業15.3%減、非製造業14.2%減)、季節調整値で2011年1〜3月期7.1%減の後、2011年4〜6月期は11.9%減(製造業13.0%減、非製造業11.4%減)となった(第8表)。
     また、日本銀行「全国企業短観経済観測調査」(6月調査)によれば、企業の全規模の2011年度の経常利益計画(前年度比)は、2011年度(計画)通期では全産業2.5%の減益、製造業0.3%の増益、非製造業4.4%の減益となっている。なお、2011年度上期(計画)では、全産業15.1%の減益、製造業17.8%の減益、非製造業13.2%の減益の後、下期(計画)では全産業10.0%の増益、製造業20.3%の増益、非製造業3.8%の増益が見込まれている。
     企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)をみると、規模計で、全産業▲18ポイント(9ポイント低下)、製造業▲15ポイント(11ポイント低下)、非製造業▲20ポイント(9ポイント低下)となっており、全産業、製造業、非製造業で悪化している(負の数には▲を付した。)(第9表)。
     倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、2011年8月は1,026件で、前年同月比3.5%減となった。
  5. (5) 2011年4〜6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.5%減(年率2.1%減)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.2%増、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.8%減となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比1.5%減となった(第10図)。

3 雇用・失業

※労働力調査に関する数値については、岩手県、宮城県及び福島県を除く全国値による。

  1. (1)[1] 7月の就業者数(季節調整値)は、2か月ぶりに前月差で減少した。

     就業者数(季節調整値)は、6月に前月差4万人増となった後、7月は同4万人減と減少し、5,959万人(原数値は5,973万人、前年同月差20万人減)となった。男女別には、男性が3,457万人(前月差4万人減)、女性が2,503万人(同1万人増)となった(第11表)。
     7月の雇用者数(季節調整値)は、3か月ぶりに前月差で減少した。
     雇用者数(季節調整値)は6月に前月差7万人増となった後、7月は同44万人減と減少し、5,213万人(原数値は5,206万人、前年同月差11万人減)となった(第12図)。男女別には、男性が3,000万人(前月差26万人減)、女性が2,213万人(19万人減)となった。雇用形態別(原数値)にみると、常雇が4,499万人(前年同月差1万人減)、臨時雇・日雇が707万人(同10万人減)となった。
     7月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数、速報)は、前月同となった。また、一般とパートの別にみると、一般労働者は前月比0.4%増、パートタイム労働者は同0.6%減となった。

  2. [2] 7月の完全失業率(季節調整値)は、2ヶ月連続で前月差で上昇となった。
     完全失業率(季節調整値)は、6月に前月差0.1%ポイント上昇の4.6%となった後、7月は同0.1ポイント上昇の4.7%(原数値は4.7%、前年同月差0.3%ポイント上昇)となった。男女別には、男性が4.9%(前月差0.2%ポイント上昇)、女性が4.5%(前月と同水準)となった。
     7月の完全失業者数(季節調整値)は、2か月連続で前月差で増加した。
     完全失業者数(季節調整値)は、6月に前月差6万人増となった後、7月は同5万人増の294万人(原数値は292万人、前年同月差23万人減)となった。男女別には、男性が178万人(前月差8万人増)、女性が117万人(同2万人減)となった。
     なお、求職理由別(原数値)にみると、7月は非自発的理由による離職失業者は109万人(前年同月差23万人減)、自発的理由による離職失業者は109万人(同6万人増)、学卒未就職者は16万人(前年と同水準)、その他の理由による失業者は54万人(同5万人減)となった(第11表)。
  3. [3] 7月の労働力人口(季節調整値)は、2か月連続で前月差で増加した。
     労働力人口(季節調整値)は、6月に前月差10万人増となった後、7月は同1万人増の6,253万人(原数値は6,266万人、前年同月差41万人減)となった。
     7月の非労働力人口(季節調整値)は、前月と同水準であった。
     非労働力人口(季節調整値)は、6月に前月差13万人減となった後、7月は前月同の4,302万人(原数値は4,289万人、前年同月差47万人増)となった。男女別には、男性が1,465万人(前月差3万人減)、女性が2,837万人(同3万人増)となった。
     労働力人口比率(原数値)は、7月は59.4%(前年同月差0.3%ポイント低下)となった。男女別には、男性が71.3%(前年同月差0.5%ポイント低下)、女性が48.2%(同0.3%ポイント低下)となった(第11表)。
     就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値)は、7月は56.6%(前年同月差0.2%ポイント低下)となった。
  4. (2) 月間有効求人数(季節調整値)は、前月比1.6%増と3か月連続で増加した。
     月間有効求職者数(季節調整値)は、前月比1.2%減と4か月ぶりに減少した。
     7月の有効求人倍率(季節調整値)は、0.64倍と前月より0.01ポイント上昇した。
     新規求人数(季節調整値)は、前月比4.0%増と2か月ぶりに増加した。
     新規求職者数(季節調整値)は、前月比2.4%減と3か月連続で減少した。
     7月の新規求人倍率(季節調整値)は、1.07倍と前月より0.07ポイント上昇した第13表)。
     正社員の有効求人倍率は、0.37倍(前年同月差0.08ポイント上昇)となった。
     新規求人数(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、7月は一般は前月比5.7%増と3か月ぶりに上昇し、パートについては同1.4%増と3か月連続で上昇した。新規求職者数(季節調整値)は、一般は前月比2.5%減と3か月連続で減少し、パートについては同1.8%減と3か月連続で減少した。
  5. (3) 産業別にみると、7月の就業者数(原数値)は、医療,福祉は前年同月差30万人増、製造業は同10万人増、卸売業,小売業は同5万人増、生活関連サービス業,娯楽業は同2万人増と増加したのに対し、その他サービス業は同14万人減、宿泊業,飲食サービス業は同8万人減、教育,学習支援業は同8万人減、運輸業,郵便業は同3万人減、学術研究,専門・技術サービス業は同3万人減、建設業は同2万人減、情報通信業は同2万人減と減少した。
     また、7月の新規求人(原数値)は、建設業は前年同月比27.5%増、学術研究,専門・技術サービス業は同17.9%増、生活関連サービス業,娯楽業は同16.7%増、情報通信業は同14.8%増、その他サービス業は同14.5%増、医療,福祉は同13.7%増、卸売業,小売業は同11.3%増、製造業は同10.8%増、運輸業,郵便業は同3.8%増、教育,学習支援業は同3.6%増、宿泊業,飲食サービス業は同2.4%増と3ヶ月連続で全ての主要産業で増加となった。
  6. (4) 雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数、確報)は、製造業では6月に前月比6.7%増となった後、7月は同0.9%増、調査産業計では6月に前月比2.2%増となった後、7月は同0.1%減となった。
     日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では8%ポイント(3月調査より4%ポイント上昇)となり、11四半期連続で過剰超過となった(第14図)。
     厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2011年4〜6月期に雇用調整を実施した事業所割合は39%となり1〜3月期から2%ポイント上昇した(第15図)。また、7〜9月期に実施予定の事業所割合は36%、10〜12月期に実施予定の事業所割合は27%となっている。

4 賃金・労働時間

  1. (1) 7月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は367,362円で、前年同月比0.2%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比横ばい、パートタイム労働者は同0.2%減となった。
     内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.4%減(一般労働者同0.1%減、パートタイム労働者同0.3%減)となったほか、所定外給与は同0.3%増、特別給与は同0.1%増となった(第16図)。
     また、きまって支給する給与は前年同月比0.3%減(一般労働者同0.1%減、パートタイム労働者同0.3%減)となった。
  2. (2) 7月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は148.9時間で、前年同月比1.3%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.2%減、パートタイム労働者は同0.9%減となった。
     内訳をみると、所定内労働時間は138.9時間で前年同月比1.3%減(一般労働者同1.3%減、パートタイム労働者同0.9%減)、所定外労働時間は10.0時間で同1.0%減(一般労働者同0.8%減、パートタイム労働者同横ばい)となった。なお、月間出勤日数は19.4日で前年同月差0.3日減となった。
     7月の製造業の所定外労働時間は14.3時間で、前年同月比0.7%増となった。
     規模別にみると、500人以上規模で前年同月比2.7%減、100〜499人規模で同0.7%減、30〜99人規模で同1.3%減、5〜29人規模で同10.5%増となった( 第17図)。

<問合わせ先>
政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係
電話 03(5253)1111 内線7732


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