平成23年7月　月例労働経済報告

景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、このところ上向きの動きがみられる。

・生産は、東日本大震災の影響により減少していたが、上向きの動きがみられる。輸出は、上向きの動きがみられる。

・企業収益は、増勢が鈍化している。設備投資は、下げ止まりつつある。

・企業の業況判断は、東日本大震災の影響による厳しさが残るなど、慎重さがみられる。

・雇用情勢は、東日本大震災の影響により、このところ持ち直しの動きに足踏みがみられ、依然として厳しい。

・個人消費は、下げ止まっている。

・物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。

先行きについては、サプライチェーンの立て直しが進み、生産活動が回復していくのに伴い、海外経済の緩やかな回復や各種の政策効果などを背景に、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、電力供給の制約や原子力災害及び原油高の影響に加え、海外経済の回復がさらに緩やかになること等により、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

労働経済面をみると、雇用情勢は、東日本大震災の影響により、このところ持ち直しの動きに足踏みがみられ、依然として厳しい（第１図）。

・完全失業率（※）は、平成23年５月は前月比0.2％ポイント低下し、4.5％となった。

・15〜24歳層の完全失業率（※）は、前月比1.2％ポイント低下し、8.0％となった。

・新規求人数は増加しているものの、有効求職者が増加したことなどから有効求人倍率は横ばい圏内にある。

・雇用者数は、卸売業、小売業の雇用者が減少していることなどから、このところ減少傾向にある。

・製造業の残業時間は、生産が停滞していることなどを反映し、弱い動きが続いている。

・総労働時間の減少などから定期給与を中心に現金給与総額はこのところ弱い動きとなっている。
（※：全国（岩手県、宮城県及び福島県を除く）の値）

2011年５月の鉱工業生産（季節調整済前月比、速報、以下同じ）は、5.7％の上昇であった（第２図）。

業種別にみると、輸送機械工業、一般機械工業、化学工業（除.医薬品）等が上昇し、鉄鋼業、電子部品・デバイス工業、窯業・土石製品工業等が低下した。

出荷は前月比5.3％の上昇であった。在庫は前月比5.1％の上昇であった。

今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は平成23年６月に前月比5.3％の上昇、７月は同0.5％の上昇となっている。

先行きについては、サプライチェーンの回復とともに生産が持ち直していくことが期待される。ただし、電力供給の制約や海外経済の回復がさらに緩やかになること等に留意する必要がある。

[1] 個人消費は、下げ止まっている。

[2] 設備投資は、下げ止まりつつある。

[3] 住宅建設は、東日本大震災の影響もあり、弱い動きがみられる。

[4] 公共投資は、総じて低調に推移している。

[5] 輸出は、上向きの動きがみられる。

６月の国内企業物価（速報）は、前月比0.1％下落（前年同月比2.5％上昇）となり、輸出物価は同0.7％下落（同2.2％下落）、輸入物価は同1.8％下落（同10.5％上昇）となった。

５月の消費者物価は、総合が前年同月比0.3％上昇（前月比0.1％上昇）となり、生鮮食品を除く総合は同0.6%上昇（同0.1％上昇）となった（第７図）。ただし、生鮮食品、石油製品及びその他特殊要因を除く総合（コアコア）では前年同月比0.2％下落となった。

先行きについては、消費者物価（コアコア）は、当面、横ばい圏内で推移すると見込まれる。ただし、国際商品市況や東日本大震災後の供給制約等が今後の物価動向に与える影響について注視していく必要がある。

なお、消費者物価は前年比で下落基調が続いているなど、物価の動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレ状況にある。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、四半期別前年同期比で、2010年10〜12月期27.3％増の後、2011年１〜３月期16.2％増（製造業5.3％減、非製造業30.1％増）、季節調整値で2010年10〜12月期9.8％増の後、2011年１〜３月期は1.6％増（製造業3.3％増、非製造業0.7％増）となった。

また、日本銀行「全国企業短観経済観測調査」（６月調査）によれば、企業の全規模の2011年度の経常利益計画（前年度比）は、2011年度（計画）通期では全産業2.5％の減益、製造業0.3％の増益、非製造業4.4％の減益となっている（第８表）。なお、2011年度上期（計画）では、全産業15.1％の減益、製造業17.8％の減益、非製造業13.2％の減益の後、下期（計画）では全産業10.0％の増益、製造業20.3％の増益、非製造業3.8％の増益が見込まれている。

企業の業況判断D.I.（「良い」−「悪い」）について日本銀行「全国企業短期経済観測調査」（６月調査）をみると、規模計で、全産業▲１８ポイント（９ポイント低下）、製造業▲15ポイント（11ポイント低下）、非製造業▲20ポイント（９ポイント低下）となっており、全産業、製造業、非製造業で悪化している（負の数には▲を付した。）（第９表）。

倒産件数（東京商工リサーチ調べ）は、2011年６月は1,165件で、前年同月比1.4％増となった。

就業者数（季節調整値）は、４月に前月差14万人減となった後、５月は同10万人減と減少し、5,959万人（原数値は6,019万人、前年同月差９万人増）となった。男女別には、男性が3,454万人（前月差３万人減）、女性が2,504万人（同８万人減）となった（第11表）。

５月の雇用者数（季節調整値）は、３か月ぶりに前月差で増加した。

雇用者数（季節調整値）は４月に前月差９万人減となった後、５月は同19万人増と増加し、5,250万人（原数値は5,276万人、前年同月差55万人増）となった（第13図）。男女別には、男性が3,020万人（前月差11万人増）、女性が2,231万人（同10万人増）となった。雇用形態別（原数値）にみると、常雇が4,575万人（前年同月差75万人増）、臨時雇・日雇が701万人（同21万人減）となった。

５月の常用雇用指数（事業所規模５人以上、季節調整済指数、速報）は、前月比0.1％減となった。また、一般とパートの別にみると、一般労働者は前月比0.4％増、パートタイム労働者は同1.6％減となった。

完全失業率（季節調整値）は、４月が前月差0.1％ポイント上昇となった後、５月は同0.2％ポイント低下の4.5％（原数値は4.6％、前年同月差0.6％ポイント低下）となった。男女別には、男性が4.8％（前月差0.2％ポイント低下）、女性が4.3％（同0.1％ポイント上昇）となった。

５月の完全失業者数（季節調整値）は、３か月ぶりに前月差で減少した。

完全失業者数（季節調整値）は、４月に前月差２万人増となった後、５月は同９万人減の283万人（原数値は293万人、前年同月差38万人減）となった。男女別には、男性が172万人（前月差10万人減）、女性が111万人（同１万人増）となった。

なお、求職理由別（原数値）にみると、５月は非自発的理由による離職失業者は108万人（前年同月差24万人減）、自発的理由による離職失業者は97万人（同１万人減）、学卒未就職者は17万人（同１万人増）、その他の理由による失業者は65万人（同13万人減）となった（第11表）。

労働力人口（季節調整値）は、４月に前月差13万人減となった後、５月は同19万人減の6,242万人（原数値は6,312万人、前年同月差29万人減）となった。

５月の非労働力人口（季節調整値）は、３か月連続で前月差で増加した。

非労働力人口（季節調整値）は、４月に前月差15万人増となった後、５月は同22万人増の4,315万人（原数値は4,242万人、前年同月差34万人増）となった。男女別には、男性が1,474万人（前月差14万人増）、女性が2,842万人（同９万人増）となった。

労働力人口比率（原数値）は、５月は59.8％（前年同月差0.3％ポイント低下）となった。男女別には、男性が71.7％（前年同月差0.3％ポイント低下）、女性が48.6％（同0.4％ポイント低下）となった（第11表）。

就業率（15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値）は、５月は57.0％（前年と同水準）となった。

月間有効求職者数（季節調整値）は、前月比0.5％増と２か月連続で増加した。

５月の有効求人倍率(季節調整値)は、0.61倍と前月と同水準となった。

新規求人数（季節調整値）は、前月比1.1％増と２か月連続で増加した。

新規求職者数（季節調整値）は、前月比2.3％減と２か月ぶりに減少した。

５月の新規求人倍率(季節調整値)は、0.98倍と前月より0.03ポイント上昇した（第12表）。

正社員の有効求人倍率は、0.34倍（前年同月差0.08ポイント上昇）となった。

新規求人数（季節調整値）を一般（除パート）とパートの別でみると、５月は一般は前月比1.4％減と２か月ぶりに減少し、パートについては同5.6％増と２か月ぶりに増加した。新規求職者数（季節調整値）は、一般は前月比2.1％減と２か月ぶりに減少し、パートについては同3.0％減と２か月ぶりに減少した。

また、５月の新規求人（原数値）は、情報通信業は前年同月比36.1％増、建設業は同35.9％増、学術研究,専門・技術サービス業は同23.9％増、医療,福祉は同20.1％増、その他サービス業は同15.9％増、卸売業,小売業は同13.2％増、運輸業,郵便業は同12.2％増、宿泊業,飲食サービス業は同12.1％増、教育,学習支援業は同10.7％増、生活関連サービス業,娯楽業は同10.4％増、製造業は同9.4％増と３か月ぶりに全ての主要産業で増加となった。

日本銀行「全国企業短期経済観測調査」（６月調査）によると、雇用人員判断D.I.（「過剰」-「不足」）は、全産業では８％ポイント（３月調査より４％ポイント上昇）となり、11四半期連続で過剰超過となった（第14図）。

厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2011年１〜３月期に雇用調整を実施した事業所割合は37％となり2010年10〜12月期から３％ポイント上昇した（第15図）。また、2011年４〜６月期に実施予定の事業所割合は38％、７〜９月期に実施予定の事業所割合は31％となっている。

内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.4％減（一般労働者同0.4％減、パートタイム労働者同0.1％減）となったほか、所定外給与は同3.3％減、特別給与は同67.7％増となった（第16図）。

また、きまって支給する給与は前年同月比0.6％減（一般労働者同0.6％減、パートタイム労働者同0.4％減）となった。

内訳をみると、所定内労働時間は129.8時間で前年同月比0.2％減（一般労働者同0.1％減、パートタイム労働者同0.6％減）、所定外労働時間は9.3時間で同3.2％減（一般労働者同3.2％減、パートタイム労働者同7.8％減）となった。なお、月間出勤日数は18.2日で前年同月差横ばいとなった。

５月の製造業の所定外労働時間は12.0時間で、前年同月比6.9％減となった。

規模別にみると、500人以上規模で前年同月比12.5％減、100〜499人規模で同4.8％減、30〜99人規模で同4.8％減、５〜29人規模で同1.4％減となった（第17図）。