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平成23年6月 月例労働経済報告

1 概況

(1) 一般経済の概況

景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、このところ上向きの動きがみられる。

・生産は、東日本大震災の影響により減少していたが、上向きの動きがみられる。輸出は、減少していたが、上向きの動きがみられる。

・企業収益は、増勢が鈍化している。設備投資は、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きがみられる。

・企業の業況判断は、慎重さがみられる。

・雇用情勢は、東日本大震災の影響により、このところ持ち直しの動きに足踏みがみられ、依然として厳しい。

・個人消費は、引き続き弱さがみられるものの、下げ止まりつつある。

・物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。

先行きについては、サプライチェーンの立て直しが進み、生産活動が回復していくのに伴い、海外経済の緩やかな回復や各種の政策効果などを背景に、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、電力供給の制約や原子力災害及び原油高の影響に加え、海外経済の回復がさらに緩やかになること等により、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

(2) 労働経済の概況

労働経済面をみると、雇用情勢は、東日本大震災の影響により、このところ持ち直しの動きに足踏みがみられ、依然として厳しい(第1図)。

・完全失業率(※)は、平成23年4月は前月比0.1%ポイント上昇し、4.7%となった。

・15〜24歳層の完全失業率(※)は、前月比0.4%ポイント上昇し、9.2%となった。

・新規求人数は、東日本を中心に4月は増加したものの、新規求職者が増加したことなどから、有効求人倍率は横ばい圏内にある。

・雇用者数は、卸売業、小売業の雇用者が減少したことなどから、このところ減少している。

・製造業の残業時間は、生産が停滞していることなどを反映し、このところ減少している。

・総労働時間の減少などから定期給与を中心に現金給与総額はこのところ弱い動きとなっている。
(※:全国(岩手県、宮城県及び福島県を除く)の値)

2 一般経済

(1) 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、東日本大震災の影響により減少していたが、上向きの動きがみられる。

2011年4月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、1.6%の上昇であった(第2図)。

業種別にみると、一般機械工業、食料品・たばこ工業、その他工業等が上昇し、電子部品

・デバイス工業、情報通信機械工業、輸送機械工業等が低下した。出荷は前月比2.6%の低下であった。在庫は前月比0.5%の上昇であった。

今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は平成23年5月に前月比8.0%の上昇、6月は同7.7%の上昇となっている。

先行きについては、サプライチェーンの回復とともに生産が持ち直していくことが期待される。ただし、電力供給の制約等に留意する必要がある。

(2) 最終需要の動向をみると、

[1] 個人消費は、引き続き弱さがみられるものの、下げ止まりつつある。

二人以上の世帯の実質消費支出(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、3月2.3%減の後、4月0.2%増となった。うち勤労者世帯では、3月4.2%減から、4月2.4%増となった。勤労者世帯の平均消費性向(季節調整値)は3月72.3%の後、4月72.9%となった(第3図)。

消費者態度指数の推移をみると、2011年1〜3月期(季節調整済前期差)は2.6ポイント下落し、38.6となった。なお、4月(原数値前年同月差)は4.9ポイント下落し、33.4となった。

4月の小売業販売額(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、4.1%増、大型小売店販売額は5.9%増となった。また、乗用車(軽を含む)の新車登録台数(原数値前年同月比)は、4月48.5%減の後、5月33.3%減となった。

先行きについては、供給制約が緩和するのに伴い、緩やかに持ち直していくことが期待される。ただし、生産活動の低下が雇用・所得環境に悪影響を及ぼす可能性や、夏期の電力供給の制約には留意が必要である。

[2] 設備投資は、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きがみられる。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2010年10〜12月期季節調整済前期比0.1%増の後、2011年1〜3月期同0.2%減(うち製造業同5.5%増、非製造業同3.4%減)となっており、全産業で減少し、製造業で増加している(第4表)。

今後の動向については、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)では、全規模の2011年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で3.7%減、製造業は4.9%増、非製造業は8.2%減となっている。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で2011年3月は1.0%増の後、4月は3.3%減となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、2011年3月は季節調整済前月比25.1%増の後、4月は同19.5%増となっている。

先行きについては、東日本大震災からの復旧需要が見込まれることから、持ち直しに復することが期待される。

[3] 住宅建設は、東日本大震災の影響もあり、弱い動きがみられる。

新設住宅着工戸数をみると、2011年3月は季節調整済前月比7.5%減、4月は同1.1%減の6.7万戸(年率79.8万戸)となった(第5図)。

新設住宅着工床面積は、2011年3月は季節調整済前月比7.7%減の後、4月は同0.4%減となった。

先行きについては、雇用・所得環境等に注視が必要である。

[4] 公共投資は、総じて低調に推移している。

公共機関からの建設工事受注額は、2011年3月は前年同月比9.5%減の後、4月は同7.4%減となった。また、公共工事請負金額(「公共工事前払金保証統計」)をみると、3月は3.5%減となった後、4月は11.2%減となっている。

先行きについては、補正予算による押し上げ効果が見込まれる。

[5] 輸出は、減少していたが、上向きの動きがみられる。

通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で2011年3月は10.3%減となった後、2011年4月は5.8減となっており、四半期別では、2010年10〜12月期1.1%減の後、2011年1〜3月期0.3%増となった(第6図)。

地域別にみると、アジア向け、アメリカ向け、EU向けの輸出は、ともに上向いているものとみられる。

先行きについては、生産活動の回復や海外経済の緩やかな回復を背景に持ち直していくことが期待される。ただし、海外経済の回復がさらに緩やかになるリスクがあることに留意する必要がある。

輸入は、持ち直しの動きがみられる。

通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で2011年3月は0.3%減の後、2011年4月は0.1%増となっており、四半期別では、2010年10〜12月期0.1%増の後、2011年1〜3月期0.9%増となった(第6図)。

地域別にみると、アジアからの輸入は、弱含んでいる。アメリカ、EUからの輸入は、ともに横ばいとなっている。

先行きについては、鉱物性燃料の輸入の増加や生産活動の回復等により、持ち直し傾向で推移することが見込まれる。

(3)国内企業物価は、このところ上昇テンポが鈍化している。消費者物価は、前月比ではこのところ横ばいとなっている。

5月の国内企業物価(速報)は、前月比0.1%下落(前年同月比2.2%上昇)となり、輸出物価は同2.2%下落(同2.9%下落)、輸入物価は同0.2%上昇(同9.5%上昇)となった。

4月の消費者物価は、総合が前年同月比0.3%上昇(前月比0.3%上昇)となり、生鮮食品を除く総合は同0.6%上昇(同0.4%上昇)となった(第7図)。ただし、生鮮食品、石油製品及びその他特殊要因を除く総合(コアコア)では前年同月比0.3%下落となった。

先行きについては、消費者物価(コアコア)は、当面、横ばい圏内で推移すると見込まれる。ただし、国際商品市況や東日本大震災後の供給制約等が今後の物価動向に与える影響について注視していく必要がある。

なお、消費者物価は前年比で下落基調が続いているなど、物価の動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレ状況にある。

(4) 企業収益は、増勢が鈍化している。企業の業況判断は、慎重さがみられる。倒産件数は、緩やかな増加傾向にある。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、四半期別前年同期比で、2010年10〜12月期27.3%増の後、2011年1〜3月期16.2%増(製造業5.3%減、非製造業30.1%増)、季節調整値で2010年10〜12月期9.8%増の後、2011年1〜3月期は1.6%増(製造業3.3%増、非製造業0.7%増)となった(第8表)。

また、日本銀行「全国企業短観経済観測調査」(3月調査)によれば、企業の全規模の2011年度の経常利益計画(前年度比)は、2011年度(計画)通期では全産業1.8%の増益、製造業1.6%の増益、非製造業1.9%の増益となっている。なお、2011年度上期(計画)では、全産業3.9%の減益、製造業6.8%の減益、非製造業1.9%の減益の後、下期(計画)では全産業8.0%の増益、製造業11.5%の増益、非製造業5.8%の増益が見込まれている。

企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)をみると、規模計で、全産業▲9ポイント(2ポイント上昇)、製造業▲4ポイント(横ばい)、非製造業▲11ポイント(4ポイント上昇)となっており、全産業、非製造業で改善している(負の数には▲を付した。)(第9表)。

倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、2011年5月は1,071件で、前年同月比4.8%増となった。

(5) 2011年1〜3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.9%減(年率3.7%減)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.7%減、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.2%減となった(第10図)。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比1.3%減となった。

3 雇用・失業

※労働力調査に関する数値については、岩手県、宮城県及び福島県を除く全国値による。

(1)[1] 4月の就業者数(季節調整値)は、2か月連続で前月差で減少した。

就業者数(季節調整値)は、3月に前月差46万人減となった後、4月は同14万人減と減少し、5,969万人(原数値は5,994万人、前年同月差7万人増)となった。男女別には、男性が3,457万人(前月差2万人増)、女性が2,512万人(同15万人減)となった(第11表)。

4月の雇用者数(季節調整値)は、2か月連続で前月差で減少した。

雇用者数(季節調整値)は3月に前月差58万人減となった後、4月は同9万人減と減少し、5,231万人(原数値は5,236万人、前年同月差21万人増)となった(第13図)。男女別には、男性が3,009万人(前月差2万人増)、女性が2,221万人(13万人減)となった。雇用形態別(原数値)にみると、常雇が4,548万人(前年同月差43万人増)、臨時雇・日雇が689万人(同21万人減)となった。

4月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数、確報)は、前月比0.2%減となった。また、一般とパートの別にみると、一般労働者は前月比0.2%減、パートタイム労働者は同0.4%減となった。

[2] 4月の完全失業率(季節調整値)は、6か月ぶりに前月差で上昇した。

完全失業率(季節調整値)は、3月に前月と同水準となった後、4月は前月差0.1%ポイント上昇の4.7%(原数値は4.9%、前年同月差0.5%ポイント低下)となった。男女別には、男性が5.0%(前月と同水準)、女性が4.2%(同0.1%ポイント上昇)となった。

4月の完全失業者数(季節調整値)は、2か月連続で前月差で増加した。

完全失業者数(季節調整値)は、3月に前月差1万人増となった後、4月は同2万人増の292万人(原数値は309万人、前年同月差30万人減)となった。男女別には、男性が182万人(前月と同水準)、女性が110万人(前月差1万人増)となった。

なお、求職理由別(原数値)にみると、4月は非自発的理由による離職失業者は120万人(前年同月差22万人減)、自発的理由による離職失業者は97万人(同1万人減)、学卒未就職者は23万人(同3万人増)、その他の理由による失業者は64万人(同10万人減)となった(第11表)。

[3] 4月の労働力人口(季節調整値)は、2か月連続で前月差で減少した。

労働力人口(季節調整値)は、3月に前月差47万人減となった後、4月は同13万人減の6,261万人(原数値は6,302万人、前年同月差24万人減)となった。

4月の非労働力人口(季節調整値)は、2か月連続で前月差で増加した。

非労働力人口(季節調整値)は、3月に前月差45万人増となった後、4月は同15万人増の4,293万人(原数値は4,247万人、前年同月差31万人増)となった。男女別には、男性が1,460万人(前月差1万人増)、女性が2,833万人(同14万人増)となった。

労働力人口比率(原数値)は、4月は59.7%(前年同月差0.3%ポイント低下)となった。男女別には、男性が71.7%(前年同月差0.3%ポイント低下)、女性が48.5%(同0.2%ポイント低下)となった(第11表)。

就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値)は、4月は56.8%(前年同月差0.1%ポイント上昇)となった。

(2) 月間有効求人数(季節調整値)は、前月比1.7%減と12か月ぶりに減少した。
月間有効求職者数(季節調整値)は、前月比1.8%増と17か月ぶりに増加した。
4月の有効求人倍率(季節調整値)は、0.61倍と前月より0.02ポイント低下した。
新規求人数(季節調整値)は、前月比5.8%増と2か月ぶりに増加した。
新規求職者数(季節調整値)は、前月比9.7%増と2か月ぶりに増加した。
4月の新規求人倍率(季節調整値)は、0.95倍と前月より0.03ポイント低下した(第12表)。
正社員の有効求人倍率は、0.34倍(前年同月差0.08ポイント上昇)となった。
新規求人数(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、4月は一般は前月比12.7%増と2か月ぶりに増加し、パートについては同5.5%減と2か月連続で減少した。新規求職者数(季節調整値)は、一般は前月比8.2%増と2か月ぶりに増加し、パートについては同13.2%増と2か月ぶりに増加した。
(3) 産業別にみると、4月の就業者数(原数値)は、医療,福祉は前年同月差26万人増、教育,学習支援業は同12万人増、製造業は同5万人増、その他サービス業は同4万人増、生活関連サービス業,娯楽業は同3万人増と増加したのに対し、卸売業,小売業は同39万人減、情報通信業は同14万人減、建設業は同9万人減、運輸業,郵便業は同4万人減、宿泊業,飲食サービス業は同3万人減、学術研究,専門・技術サービス業は同2万人減と減少した。
 また、4月の新規求人(原数値)は、建設業は前年同月比34.5%増、情報通信業は同29.9%増、医療,福祉は同18.6%増、学術研究,専門・技術サービス業は同16.1%増、その他サービス業は同15.4%増、生活関連サービス業,娯楽業は同14.0%増、製造業は同9.0%増、運輸業,郵便業は同8.3%増、教育,学習支援業は同5.2%増、卸売業,小売業は同4.9%増と増加したのに対し、宿泊業,飲食サービス業は同8.4%減と減少した。
(4) 雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数、確報)は、製造業では3月に前月比6.8%減となった後、4月は同6.7%減、調査産業計では3月に前月比3.4%減となった後、4月は同1.8%減となった。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では4%ポイント(12月調査より2%ポイント低下)となり、10四半期連続で過剰超過となった(第14図)。
厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2011年1〜3月期に雇用調整を実施した事業所割合は37%となり2010年10〜12月期から3%ポイント上昇した(第15図)。また、2011年4〜6月期に実施予定の事業所割合は38%、7〜9月期に実施予定の事業所割合は31%となっている。

4 賃金・労働時間

(1) 4月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は272,231円で、前年同月比1.4%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.1%減、パートタイム労働者は同1.1%減となった。
 内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.7%減(一般労働者同0.2%減、パートタイム労働者同1.1%減)となったほか、所定外給与は同1.9%減、特別給与は同19.7%減となった(第16図)。
 また、きまって支給する給与は前年同月比0.8%減(一般労働者同0.2%減、パートタイム労働者同1.2%減)となった。
(2) 4月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は149.3時間で、前年同月比1.9%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.6%減、パートタイム労働者は同2.1%減となった。
 内訳をみると、所定内労働時間は139.3時間で前年同月比1.7%減(一般労働者同1.4%減、パートタイム労働者同1.9%減)、所定外労働時間は10.0時間で同3.9%減(一般労働者同3.7%減、パートタイム労働者同7.8%減)となった。なお、月間出勤日数は19.5日で前年同月差0.2日減となった。
 4月の製造業の所定外労働時間は12.7時間で、前年同月比7.9%減となった。
規模別にみると、500人以上規模で前年同月比14.9%減、100〜499人規模で同8.9%減、30〜99人規模で同6.6%減、5〜29人規模で同3.4%増となった(第17図)。

6月の主要変更点

月例労働経済報告のポイントPDF版 [170KB]

月例労働経済報告PDF版 [1,289KB]

月例労働経済報告参考表

データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表 [182KB])

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表 [5,555KB])

<問合わせ先>
政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係
電話 03(5253)1111 内線7732


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