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平成23年5月 月例労働経済報告

1 概況

(1) 一般経済の概況

景気は、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きとなっている。また、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある。

・生産は、東日本大震災の影響により、このところ生産活動が低下している。輸出は、東日本大震災の影響により、このところ減少している。

・企業収益は、東日本大震災の影響により、下押しされている。設備投資は、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きがみられる。

・企業の業況判断は、慎重さがみられる。

・雇用情勢は、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。ただし、東日本大震災の影響により、一部に弱い動きもみられる。

・個人消費は、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きがみられる。

・物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。

先行きについては、当面は東日本大震災の影響から弱い動きが続くと見込まれる。その後、生産活動が回復していくのに伴い、海外経済の改善や各種の政策効果などを背景に、景気が持ち直していくことが期待されるが、電力供給の制約やサプライチェーン立て直しの遅れ、原子力災害及び原油価格上昇の影響等により、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。

(2) 労働経済の概況

労働経済面をみると、雇用情勢は、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。ただし、東日本大震災の影響により、一部に弱い動きもみられる(第1図)。

・完全失業率(※)は、平成23年3月は前月同水準の4.6%となり、高水準で推移している。

・15〜24歳層の完全失業率(※)は、前月比1.3%ポイント上昇し、8.8%となった。

・新規求人数は、東日本大震災の影響から3月は大幅に減少したものの、2月から繰り越された求人数も多いことなどから有効求人倍率は上昇した。

・雇用者数は、宿泊業、飲食サービス業の雇用者が減少したことなどから、3月は減少した。

・製造業の残業時間は、生産が大幅に減少していることを反映し、3月は大幅に減少した。

・総労働時間の減少などから定期給与はこのところ弱い動きとなっているものの、ボーナスを含む特別給与の下支えなどにより、現金給与総額は横ばい圏内で推移している。
(※:全国(岩手県、宮城県及び福島県を除く)の値)

2 一般経済

(1) 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、東日本大震災の影響により、このところ生産活動が低下している。

2011年3月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、15.5%の低下であった(第2図)。

業種別にみると、2011年3月は輸送機械工業、一般機械工業、電子部品・デバイス工業等すべての業種が低下した。

出荷は前月比14.6%の低下であった。在庫は前月比4.2%の低下であった。

今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は平成23年4月に前月比3.9%の上昇、5月は同2.7%の上昇となっている。

先行きについては、サプライチェーンの立て直しとともに生産が持ち直していくことが期待される。ただし、電力供給の制約等に留意する必要がある。

(2) 最終需要の動向をみると、

[1] 個人消費は、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きがみられる。

二人以上の世帯の実質消費支出(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、2月0.2%減の後、3月2.3%減となった。うち勤労者世帯では、2月0.9%増から、3月4.2%減となった。勤労者世帯の平均消費性向(季節調整値)は2月71.5%の後、3月72.3%となった(第3図)。

消費者態度指数の推移をみると、2011年1〜3月期(季節調整済前期差)は4.1ポイント下落し、38.6となった。なお、3月(原数値前年同月差)は2.6ポイント下落し、38.3となった。

3月の小売業販売額(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、7.6%減、大型小売店販売額は8.1%減となった。また、乗用車(軽を含む)の新車登録台数(原数値前年同月比)は、3月37.4%減の後、4月48.5%減となった。

先行きについては、供給制約が緩和するのに伴い、緩やかに持ち直していくことが期待される。ただし、生産活動の低下が雇用・所得環境に悪影響を及ぼす可能性や、夏期の電力供給の制約には留意が必要である。

[2] 設備投資は、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きがみられる。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2010年7〜9月期季節調整済前期比1.3%増の後、2010年10〜12月期同0.7%増(うち製造業同4.1%増、非製造業同1.1%減)となっており、全産業、製造業で増加している。

今後の動向については、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)をみると、全規模の2011年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で3.7%減、製造業は4.9%増、非製造業は8.2%減となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で2011年2月は1.9%減の後、3月は2.9%増となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、2011年2月は季節調整済前月比16.8%減の後、3月は同25.1%増となっている。

先行きについては、東日本大震災からの復旧需要が見込まれることから、持ち直しに復することが期待される。

[3] 住宅建設は、東日本大震災の影響もあり、弱い動きがみられる。

新設住宅着工戸数をみると、2011年2月は季節調整済前月比3.0%増、3月は同7.5%減の6.7万戸(年率80.7万戸)となった(第5図)。

新設住宅着工床面積は、2011年2月は季節調整済前月比0.3%減の後、3月は同7.7%減となった。

先行きについては、雇用・所得環境や建設資材の需給状況等に注視が必要である。

[4] 公共投資は、総じて低調に推移している。

公共機関からの建設工事受注額は、2011年2月は前年同月比9.5%増の後、3月は同9.5%減となった。また、公共工事請負金額(「公共工事前払金保証統計」)をみると、2月は4.2%増となった後、3月は3.5%減となっている。

先行きについては、補正予算による押し上げ効果が見込まれる。

[5] 輸出は、東日本大震災の影響により、このところ減少している。

通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で2011年2月は2.7%増となった後、2011年3月は10.3%減となっており、四半期別では、2010年10〜12月期1.1%減の後、2011年1〜3月期0.3%増となった(第6図)。

地域別にみると、アジア向け、アメリカ向け、EU向けの輸出は、ともに減少している。

先行きについては、当面は東日本大震災による生産活動の低下等を通じた減少が続くと見込まれるが、生産活動や世界景気の回復を背景に、再び持ち直していくことが期待される。

輸入は、持ち直しの動きがみられる。

通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で2011年2月は2.3%減の後、2011年3月は0.3%減となっており、四半期別では、2010年10〜12月期0.2%増の後、2011年1〜3月期0.9%増となった(第6図)。

地域別にみると、アジアからの輸入は、持ち直しの動きがみられる。アメリカ、EUからの輸入は、ともに横ばいとなっている。

(3) 国内企業物価は、上昇している。消費者物価は、下落テンポが緩やかになっている。

4月の国内企業物価(速報)は、前月比0.9%上昇(前年同月比2.5%上昇)となり、輸出物価は同2.2%上昇(同3.0%下落)、輸入物価は同5.5%上昇(同9.1%上昇)となった。

3月の消費者物価は、総合が前年同月比横ばい(前月比0.3%上昇)となり、生鮮食品を除く総合は同0.1%下落(同0.5%上昇)となった(第7図)。

先行きについては、消費者物価(コアコア)は、引き続き緩やかな下落傾向で推移すると見込まれる。ただし、国際商品市況や東日本大震災後の供給制約等が今後の物価動向に与える影響について注視していく必要がある。

こうした動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレ状況にある。

(4) 企業収益は、東日本大震災の影響により、下押しされている。企業の業況判断は、慎重さがみられる。倒産件数は、おおむね横ばいとなっている。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、四半期別前年同期比で、2010年7〜9月期54.1%増の後、2010年10〜12月期27.3%増(製造業20.0%増、非製造業31.6%増)、季節調整値で2010年7〜9月期1.6%増の後、2010年10〜12月期は10.7%増(製造業3.9%増、非製造業14.3%増)となった。

また、日本銀行「全国企業短観経済観測調査」(3月調査)によれば、企業の全規模の2011年度の経常利益計画(前年度比)は、2011年度(計画)通期では全産業1.8%の増益、製造業1.6%の増益、非製造業1.9%の増益となっている。なお、2011年度上期(計画)では、全産業3.9%の減益、製造業6.8%の減益、非製造業1.9%の減益の後、下期(計画)では全産業8.0%の増益、製造業11.5%の増益、非製造業5.8%の増益が見込まれている(第8表)。

企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)をみると、規模計で、全産業▲9ポイント(2ポイント上昇)、製造業▲4ポイント(横ばい)、非製造業▲11ポイント(4ポイント上昇)となっており、全産業、非製造業で改善している(負の数には▲を付した。)(第9表)。

倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、2011年4月は1,076件で、前年同月比6.7%減となった。

(5) 2011年1〜3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.9%減(年率3.7%減)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.8%減、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.2%減となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比1.3%減となった(第10図)。

3 雇用・失業

※労働力調査に関する数値については、岩手県、宮城県及び福島県を除く全国値による。

(1)[1] 3月の就業者数(季節調整値)は、4か月ぶりに前月差で減少した。

就業者数(季節調整値)は、2月に前月差26万人増となった後、3月は同46万人減と減少し、5,983万人(原数値は5,928万人、前年同月差13万人減)となった。男女別には、男性が3,455万人(前月差21万人減)、女性が2,527万人(同27万人減)となった(第11表)。

3月の雇用者数(季節調整値)は、4か月ぶりに前月差で減少した。

雇用者数(季節調整値)は2月に前月差28万人増となった後、3月は同58万人減と減少し、5,240万人(原数値は5,206万人、前年同月差10万人減)となった(第13図)。男女別には、男性が3,007万人(前月差24万人減)、女性が2,234万人(33万人減)となった。雇用形態別(原数値)にみると、常雇が4,502万人(前年同月差9万人増)、臨時雇・日雇が704万人(同18万人減)となった。

3月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数、確報)は、前月比0.1%増となった。また、一般とパートの別にみると、一般労働者は前月比0.1%増、パートタイム労働者は同0.3%増となった。

[2] 3月の完全失業率(季節調整値)は、前月と同水準となった。

完全失業率(季節調整値)は、2月に前月差0.3%ポイント低下の4.6%となった後、3月は前月と同水準の4.6%(原数値は4.9%、前年同月差0.4%ポイント低下)となった。男女別には、男性が5.0%(前月差0.2%ポイント上昇)、女性が4.1%(同0.2%ポイント低下)となった。

3月の完全失業者数(季節調整値)は、5か月ぶりに前月差で増加した。

完全失業者数(季節調整値)は、2月に前月差18万人減となった後、3月は同1万人増の290万人(原数値は304万人、前年同月差26万人減)となった。男女別には、男性が182万人(前月差6万人増)、女性が109万人(同5万人減)となった。

なお、求職理由別(原数値)にみると、3月は非自発的理由による離職失業者は114万人(前年同月差25万人減)、自発的理由による離職失業者は99万人(同3万人増)、学卒未就職者は20万人(前年と同水準)、その他の理由による失業者は66万人(同6万人減)となった(第11表)。

[3] 3月の労働力人口(季節調整値)は、4か月ぶりに前月差で減少した。

労働力人口(季節調整値)は、2月に前月差10万人増となった後、3月は同47万人減の6,274万人(原数値は6,232万人、前年同月差40万人減)となった。

3月の非労働力人口(季節調整値)は、4か月ぶりに前月差で増加した。

非労働力人口(季節調整値)は、2月に前月差7万人減となった後、3月は同45万人増の4,278万人(原数値は4,317万人、前年同月差44万人増)となった。男女別には、男性が1,459万人(前月差15万人増)、女性が2,819万人(同31万人増)となった。

労働力人口比率(原数値)は、3月は59.0%(前年同月差0.4%ポイント低下)となった。男女別には、男性が71.1%(前年同月差0.6%ポイント低下)、女性が47.8%(同0.2%ポイント低下)となった(第11表)。

就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値)は、3月は56.2%(前年同月差0.1%ポイント低下)となった。

(2) 月間有効求人数(季節調整値)は、前月比1.0%増と11か月連続で増加した。
月間有効求職者数(季節調整値)は、前月比0.5%減と16か月連続で減少した。
3月の有効求人倍率(季節調整値)は、0.63倍と前月より0.01ポイント上昇した。
新規求人数(季節調整値)は、前月比7.1%減と3か月ぶりに減少した。
新規求職者数(季節調整値)は、前月比6.6%減と2か月ぶりに減少した。
3月の新規求人倍率(季節調整値)は、0.98倍と前月より0.01ポイント低下した第12表)。
正社員の有効求人倍率は、0.38倍(前年同月差0.10ポイント上昇)となった。
新規求人数(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、3月は一般は前月比9.5%減と17か月ぶりに減少し、パートについては同1.5%減と3か月ぶりに減少した。新規求職者数(季節調整値)は、一般は前月比6.8%減と2か月ぶりに減少し、パートについては同6.6%減と2か月ぶりに減少した。
(3) 産業別にみると、3月の就業者数(原数値)は、医療,福祉は前年同月差7万人増、その他サービス業は同5万人増、卸売業,小売業は同3万人増と増加したのに対し、製造業は同18万人減、宿泊業,飲食サービス業は同7万人減、情報通信業は同6万人減、建設業は同3万人減、運輸業,郵便業は同2万人減、学術研究,専門・技術サービス業は同1万人減、生活関連サービス業,娯楽業は同1万人減と減少した。教育,学習支援業は前年と同水準であった。
また、3月の新規求人(原数値)は、情報通信業は前年同月比20.3%増、学術研究,専門・技術サービス業は同18.0%増、建設業は同17.6%増、製造業は同16.4%増、教育,学習支援業は同15.6%増、医療,福祉は同12.8%増、生活関連サービス業,娯楽業は同12.5%増、運輸業,郵便業は同11.0%増、その他サービス業は同9.5%増、卸売業,小売業は同7.8%増と増加したのに対し、宿泊業,飲食サービス業は同1.3%減と減少した。
(4) 雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数、確報)は、製造業では2月に前月比2.5%増となった後、3月は同6.8%減、調査産業計では2月に前月比0.6%増となった後、3月は同3.4%減となった。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では4%ポイント(12月調査より2%ポイント低下)となり、10四半期連続で過剰超過となった(第14図)。
厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2010年10〜12月期に雇用調整を実施した事業所割合は34%となり7〜9月期から2%ポイント減少した(第15図)。また、2011年1〜3月期に実施予定の事業所割合は34%、4〜6月期に実施予定の事業所割合は30%となっている。

4 賃金・労働時間

(1) 3月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は275,442円で、前年同月比0.1%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.5%増、パートタイム労働者は同0.8%減となった。
内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.8%減(一般労働者同0.1%減、パートタイム労働者同1.2%減)となったほか、所定外給与は同1.7%増、特別給与は同9.3%増となった(第16図)。
また、きまって支給する給与は前年同月比0.6%減(一般労働者同0.1%増、パートタイム労働者同1.4%減)となった。
(2) 3月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は145.8時間で、前年同月比1.3%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.8%減、パートタイム労働者は同1.6%減となった。
内訳をみると、所定内労働時間は135.6時間で前年同月比1.3%減(一般労働者同0.9%減、パートタイム労働者同1.6%減)、所定外労働時間は10.2時間で同1.0%減(一般労働者同横ばい、パートタイム労働者同4.0%減)となった。なお、月間出勤日数は18.9日で前年同月差0.2日減となった。
3月の製造業の所定外労働時間は13.9時間で、前年同月比0.8%減となった。
規模別にみると、500人以上規模で前年同月比3.5%減、100〜499人規模で同1.9%減、30〜99人規模で同1.5%減、5〜29人規模で同7.6%増となった(第17図)。

5月の主要変更点

月例労働経済報告のポイントPDF版 [142KB]

月例労働経済報告PDF版 [1130KB]

月例労働経済報告参考表

データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表 [212KB])

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表 [5,495KB])

<問合わせ先>
政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係
電話 03(5253)1111 内線7732

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