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自然毒のリスクプロファイル:高等植物:ベニバナインゲン

ベニバナインゲン

一般名 ベニバナインゲン
(別名: ハナササゲ、ハナマメ、白花豆、スカーレット・ルナービーン(英国)、多花菜豆、荷包豆、龍爪豆(以上中国)など)
分類 マメ目Fabales、マメ科Fabaceae、インゲンマメ属Phaseolus
学名 Phaseolus coccineus L.
英名 scarlet runner bean
生育地 中南米高地原産で、中央アメリカ、アフリカ、南アメリカ等多くの地域で栽培されている。日本には観賞用として江戸末期に渡来し、後に豆を食用とした。暑さに弱いため、北海道、東北から長野の涼しい地域で栽培される。
形態

長さ3〜5 mのつる性の多年生植物であるが、日本では1年草として栽培する。葉は大きな3枚複葉、長い葉柄で互生。夏に葉腋に赤色(まれに白色)のマメ科独特の蝶形花をつけ、のちに長さ10 cm位の莢をつける。種子は大型で1.5 cm×2.5 cmぐらいの腎臓形で、「白花豆」と呼ばれ食用にされる。

ベニバナインゲン
ベニバナインゲン
種子(白花豆)
種子(白花豆)
(写真提供:左 磯田進、右 矢原正治)
毒性成分 レクチン(タンパク質)
食中毒の型 完熟した乾燥豆は昔から加熱調理を行わず生のままで食べると嘔吐、下痢等の消化器症状を起こすことが知られている。原因物質の一つのレクチンは、糖結合タンパク質の総称で、動物や植物に広く分布しており、植物の中でインゲン豆の仲間は特にレクチンを多く含むことが知られている。インゲン豆のレクチンは赤血球に結合して凝集させる性質があることから、赤血球凝集素とも呼ばれる。
中毒症状 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛等の消化器症状
発病時期 10分〜23時間(大多数が2〜4時間)
発生事例 平成18年5月6日にテレビ番組で「白インゲン豆」の摂取によるダイエット法の特集があり、その後、番組で紹介された「2〜3分煎り、粉末状にして食べる」という調理法により調理・摂取した多数の人が、嘔吐、下痢、腹痛等の消化器症状を発症したもの。喫食量は大さじ2杯と回答した人が多数。「白インゲン豆」は白花豆(ベニバナインゲン Phaseolus coccineus L.)、手亡(てぼう)豆、白金時豆、大福豆(いずれも種としてはインゲンマメ Phaseolus vulgaris L.)の総称であり、番組内で使用されたのは大福豆であったが、健康被害を起こした事例で確認された白インゲン豆のほとんどは白花豆であった。
患者数
年度 発生件数 患者総数
2006年(5月7日〜22日) 38自治体 158人(入院者数30人)

(内135名が5/8までに喫食・発症)

中毒対策 通常の調理法(水に十分浸してから、沸騰状態で柔らかくなるまで十分に煮る)を行えば全く問題なく、煮豆、あん、甘納豆などに食されるが、炒る(煎る)などによる調理法では、種子の中心まで熱が行きわたらないため、加熱不足によりタンパク質のレクチンが変性しないで残っていて中毒する。種子を食用として用いるときは、きちんと熱を通してから食する。
毒性成分の分析法 赤血球凝集試験
その他の参考になる情報

1) 白インゲン豆の摂取による健康被害事例について(平成18年 厚生労働省報道発表資料)
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/05/h0522-4.html

2)白インゲン豆による食中毒に伴うレクチン活性の分析事例(平成18年度 福岡市保健環境研究所報PDF)
http://www.fch.chuo.fukuoka.jp/h18shoho/32-p101.pdf#search='白インゲン 中毒'

作成:矢原正治(熊本大学薬学部附属薬用資源エコフロンティアセンター)

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