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旧ソ連邦抑留者個人別登録文書(учётное дело)について

1 個人資料の構成

 旧ソ連邦抑留者個人別登録文書は主として、抑留者の氏名や出身地などを聞き取ったアンケート、カルテ、死亡証書、埋葬証書、その他事務関係書類等によって構成されています。
 アンケート部分では一般的に、以下の項目に答える形で情報が記載されています。(※各項目はロシア語の直訳です。)

  • 氏名
  • 父称(父親の名前)
  • 出生年
  • 出身地
  • 召集前の住所
  • 民族
  • 母国語
  • 他の習得言語
  • 国籍
  • 党籍
  • 信仰(宗教)
  • 教育
  • 軍隊勤務以前の職業及び専門
  • 専門分野での勤続年数
  • どの敵軍に所属していたか
  • 入隊は召集によるものか志願か
  • いつ召集されたか
  • 兵種
  • 所属していた部隊はどこか
  • 名簿番号
  • 階級または称号
  • 部隊における役職
  • 褒章歴
  • 捕えられて捕虜となったか,自発的投降か
  • いつ捕虜となった(投降した)か
  • どこで捕虜となったか
  • 家族状況(独身か,既婚か)
  • 妻子の姓名,父称,年齢,職種,正確な住所
  • 父母の姓名,父称,年齢,職種,正確な住所
  • 兄弟姉妹の姓名,父称,年齢,職種,正確な住所
  • 父親の階層的身分
  • 父親の社会的身分
  • 父親の資産状況
  • 軍事捕虜の社会的身分と資産的状況
  • ソ連邦に居住していたことがあるか(どこで,いつ,何に従事していたか)
  • 親族・知人でソ連邦に居住している者があるか(その姓名,父称,年齢,勤務先,職種,住所)
  • 裁判または取調べを受けたことがあるか,いつ,どこで,誰に,いかなる咎で有罪判決を受けたか,どこで服役したか
  • 他の国に滞在したことがあるか,どの国に,いつからいつまで滞在し,何に従事していたか
  • 軍隊召集以前のすべての実務活動について詳しく列挙せよ
  • 軍事捕虜の署名および調査票記入日
  • 人物描写・特徴(身長、髪の色、鼻、体格、目、顔)
  • 移送記録

2 記載状況

(1)情報の欠落

 アンケート部分は、上記のとおり多くの項目がありますが、必ずしもこれら全ての項目の回答があるわけではありません。出身地が欠落していることもありますし、氏名が欠落している場合もあります。また、中には「聞き取り調査の前に抑留者が死亡したことにより作成できず」として、アンケート部分全体が空欄の資料もあります。
 氏名や出身地などの重要な情報が欠落している場合は付属するカルテ、死亡証書などの中でそれらの情報を探し、照合調査・特定作業を進めています。

(2)聞き取り時の誤記

 これらアンケートはソ連軍の担当官が日本人から聞き取って記入したものと考えられます。
 当時の日本人は、現代の日本人よりも、はるかに訛りが強かったと考えることができます。資料の中には訛りの強い日本人の発音を、それまで日本語に接したことのないソ連兵が聞き取り、アンケートに記入したことによると思われる誤記が散見されます。
 また、アンケートは必ずしも抑留者本人から聞き取ったものではないようです。
一般的に自分の名前や出身地を言い間違えるとは考えられません。しかし、旧ソ連邦抑留者個人別登録文書には漢字を読み間違えたかのように思われる誤記がままあります。このことから、通訳等が日本語によって書かれた何らかの書類を読み上げ、ソ連兵に伝えた可能性があります。

 以下にそれらの一部をご紹介します。

記載例 正しいと考えられる名称
トシマ郡 都島区(みやこじまく)
ハチマン村 八幡村(やわたむら)
ハレン町 刃連町(ゆきいまち)
フキタ市 吹田市(すいたし)
トグスモ県 徳島県(とくしまけん)
フクシマ県タガワ郡 福岡県田川郡(ふくおかけん)
アマシロ村 天白村(てんぱくむら)
タルバヤシ 槫林(くればやし)
コダ 袴田(はかまだ)
ゲンジ/モトジ 元治(もとじ)

 また、アンケート部分には、抑留者本人の署名欄がありますが、これも本人が書いた場合と通訳等の代理人が書いた場合とがあるようです。このため、署名欄の漢字氏名が本来の漢字氏名と違う例(例えば「浩平」とあるべきところ「幸平」と記載されているなど)も多く見られます。

(3)生年の相違

 抑留者の生年のほとんどについて、1年から2年の誤差が見られます。また、10年程度の誤差がある資料も散見されます。
 これはソ連兵からの質問に対し、抑留者が「数え年」で年齢を答えたことによって生じた誤差であると考えられます。

(4)第三者情報の混在

 また、当該資料の対象ではない第三者の情報が混在している場合があります。資料の中には氏名が似ている人の情報を間違えて記載してしまった(例えば、○○一郎氏のカルテに、○○二郎氏の情報を書き込んでしまったなど)と推定されるものがあります。
 これ以外に、死亡された方の情報の上から第三者の情報を上書きした資料も多数見つかっています。当時ソ連は紙不足だったため、このようなことがしばしば行われていたと考えられます。

(5)偽名の使用

 抑留経験者の証言によれば、ソ連兵による聞き取り調査に際し、偽名を使った方も沢山いたとのことです。カルテとアンケート部分の氏名が異なる資料もままありますが、本名と偽名である可能性があります。資料全体が偽名で記載されていた場合、特定は、ほぼ不可能となります。

(6)転記の際に生じた誤記

 ロシア語の筆記体は「ロシア語アルファベット(筆記体)(Excel:1,934KB)」でご紹介しましたとおり、様々なバリエーションがあります。
 ロシア語筆記体はロシア人でも判読が困難な場合がままあります。このため、カルテ等から抑留者氏名を転記する際、誤記入したと考えられる例が多数見られます。誤記入は「КとХ(KとH)」、「ЧとГ(CHとG)」、「ТとМ(TとM)」など、様々な文字間で生じ得ます。
 例えば「КとХ」の場合、「К」は「カ行」を、「Х」は「ハ行」を表しますので、これが逆転した場合、本来「神田(カンダ)」とあるべき記載が、「ハンダ」という全く別人の資料であるかのような表記がなされる場合が多く見られます。
 以下、そのいくつかを例示します。

正 タカハシ(Такахаси) 誤 タノハミ(Танохами)
正 タカハシ(Такахаси) 誤 タノハミ(Танохами)
正 ショオジ(Шоодзи) 誤 イモゼ(Имодзе)
正 ショオジ(Шоодзи) 誤 イモゼ(Имодзе)
正 ミミタ(Мимита) 誤 レゲスミタ(Легесмита)
正 ミミタ(Мимита) 誤 レゲスミタ(Легесмита)

3 照合調査

 以上のとおり、旧ソ連邦抑留者個人別登録文書には情報の欠落や、聞き取りもしくは転記の際の誤記等があります。このため厚生労働省では、例えば「レゲスミタ」という日本人とは考えにくい姓が書かれている場合でも、資料中の記述を丹念に調べ、より正しいと思われる情報を探し、日本側資料との照合調査を行った上で、皆様に資料をお届けしています。

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