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重要事例情報−分析集



  事例1:(患者搬送中のベッド床の(脱落)墜落)

 発生部署(入院部門一般) キーワード(移送・移動・体位変換、環境調整)


  ■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【5月】 発生曜日【月曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【14時〜15時台】
発生場所【廊下】
患者の性別【男性】 患者の年齢【11歳】
患者の心身状態【床上安静】
発見者【当事者本人】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【1年1ヶ月】
当事者の部署配属年数【1年1ヶ月】
発生場面【搬送・移送】
(薬剤・製剤の種類)【】
発生内容【衝突】
発生要因-確認【】
発生要因-観察【】
発生要因-判断【】
発生要因-知識【】
発生要因-技術(手技)【】
発生要因-報告等【】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【          】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【          】
発生要因-医療用具【その他】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-施設・設備【】
発生要因-教育・訓練【          】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【取り付けボルトの緩み】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

 ■ヒヤリ・ハットの具体的内容
ベッドで患者を移送中、ベッドのメインフレームとフットボード側のフレームを固定していたボルトがはずれ、ベッドの寝台部分(フレーム、マットレス)が患者を乗せたまま床に脱落した。患者に被害はなかった。

 ■ヒヤリ・ハットの発生した要因
ベッドのメインフレームとフットボード側のフレームを固定していたボルトの緩み。

 ■実施したもしくは考えられる改善策
フレームを固定していたボルトが、経年使用により緩みを生じる部分か否か調査中。院内全ベッドを対象に、固定ねじ、ボルトの締め付け点検を実施中。



専門家からのコメント


 ■記入方法に関するコメント
 ベッドは小児用でしょうか。成人用でしょうか。落下の状況では小児のベッドのように思われますが、どのように落ちたのか、ベッドの図を含めてその記載があると状況がわかりやすいと思います。
 改善策では,現在固定ネジ等の締付けを実施中とのことですが、ベッドや車椅子など従来はどのように管理をされていたのでしょうか。それによっては看護・介護機器類全体の管理方法の問題も明かになると思います。
 どういう状況で何に衝突したのでしょうか。患者をベッドに臥床させたまま移送中、「衝突」によって緩んだボルトがはずれたようですが、ボルトが緩んでいたうえに、衝撃が強かったと想像します。廊下や部屋の入口の狭隘さなどハード面での問題もあるのではないかと推測しますが、それによってはベッドそのものと環境に対する改善が必要かもしれません。
 フレームなどが緩んでいたことに気づいていたのでしょうか。
 移送していたのは何人でしょうか。一般的には2人以上で、少なくとも周囲の人や物に衝突しないように注意をしますが、その時の状況がわかると良かったと思います。

 ■改善策に関するコメント
ベッドの整備管理
定期的な点検の必要性
小児のベッドは、小児自身が柵を揺する、ベッド上で飛び跳ねる、目に見える留め金などは興味を持ってさわる、看護者等による柵の上げ下げ頻度が高いなどから、成人用のベッドよりボルトなどが緩む可能性が高いと考えます。また小児のベッドで、高床式(ベッドの脚が長い)で、寝台部分と床との空間があるデザインの製品では、寝台を留めているボルトがはずれるとマットレスごと床へ墜落することも考えられ、状況によっては患者さんに大きな傷害を与えることが推測されます。最近は院内をベッドごと移動ができるようにベッドのキャスターを大きくするなどの工夫がされていますが、当然移動頻度が高いとボルトが緩みやすくなると考えておくことです。
ベッド点検のルール化
小児ベッドに限らず、退院後のベッド掃除の際に、ボルトやフレームの緩みを点検することをルール化することが重要です。フレームなどが軋んでいることに気づいたらその場で必ずボルトなどを締め直すという習慣をつくる事です。
看護・介護機器類のメンテナンス体制つくり
医療器機類のメンテンスを行っている施設は多いと思いますが、看護・介護機器類に対するメンテナンスは看護補助者等に任されていることが多く、実際に充分な体制ができていないのが現状です。ベッドや車椅子、歩行器、ストレチャーなど、日常使用頻度の高い看護・介護機器類の整備が不備で起こる事故を防止するために、まずはこうした機器類の保守点検ができる人材を責任者として位置付け、定期的にメンテナンスを行う体制を作ることが重要です。集中管理ができればベストでしょう。

 医療機器販売業者によっては、ベッドなどの「点検サービス」を専門に担当する業者と提携して現場のニーズに対応したり、点検サービスの専門業者を施設に常駐させることも可能になっています。ただし費用はかかります。
 また、ベッド等を購入する際に業者に定期的なメンテナンスを条件付けるということも可能でしょう。そのためには契約時に、一定の保障期間、さらにそれを経過しても具体的な点検整備サービスが受けられるよう契約を交わしておくことが必要です。点検を行った場合は、その日付をシールに記載してベッドに貼付しておき、それを見ることで、次期点検時期を確認したり、シールを目にした人が点検が必要であるという認識をもつこともできます。
 なお、製品の欠陥によって、生命、身体または財産に損害を被ったことを証明した場合に、被害者は製造会社などに対して損害賠償を求めることができます(PL法)。

ベッドで患者を移送する場合の注意
 一般のベッドに患者を臥床させたまま移送するのは、物や人にも衝突の危険があります。特に、廊下に物を置く習慣を止めることです。移送中周囲に人がいた場合は必ず声をかけるようにします。狭い場所を移動する場合は、やむを得ない場合を除いてはストレッチャーを使用する方が安全と考えます。
 ベッドでの移動は必ず複数の介助者が前後につき、足を先に頭を後ろにするなどの原則をマニュアル化しそれを遵守して業務を行うことが重要です。
 ベッドを安全に使用するために、三宅 祥三監修「医療・高齢者施設におけるベッドの安全使用マニュアル」; 医療・介護ベッド安全普及協議会発行を参考にされると良いでしょう。
 次のホームぺ−ジからもアクセスできます。
 医療・介護ベッド安全普及協議会 http://www.bed-anzen.org



 事例115:(指示出し・指示受けに関するエラー)

 発生部署(入院部門一般) キーワード(与薬(点滴、注射))


  ■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【4月】 発生曜日【火曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【18時〜19時台】
発生場所【ナースステーション】
患者の性別【男性】 患者の年齢【67歳】
患者の心身状態【床上安静】
発見者【他職種者】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【15年1ヶ月】
当事者の部署配属年数【0年1ヶ月】
発生場面【文書による指示受け】
(薬剤・製剤の種類)【】
発生内容【指示出し・情報伝達のその他のエラー】
発生要因-確認【確認が不十分であった】
発生要因-観察【】
発生要因-判断【】
発生要因-知識【】
発生要因-技術(手技)【】
発生要因-報告等【】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【          】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【          】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-施設・設備【】
発生要因-教育・訓練【教育・訓練が不十分だった】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【その他】
備考【                   】

 ■ヒヤリ・ハットの具体的内容
術後患者の血圧が低値で経過していたため、医師より「カタボンLow 12ml/hr」の指示が出され、カルテで指示を受けた。同勤務者とともに指示を受け、医師に「2ml/hr」ですね、と声をかけた。医師からはなにも反応がなかった。そして同勤務者とともに注射を準備し、実施した。その後も血圧が上昇せず、当直医に報告した。医師が何γで投与しているか聞かれ、カルテを確認すると、別の欄に3γで開始と記録されていた。この時2ml/hrで投与していることを告げた。医師がγ数を確認し、カルテの指示を医師とともに見ると、指示の文字は2ml/hrではなく、12ml/hrであることを指摘された。

 ■ヒヤリ・ハットの発生した要因
指示の文字が見間違いやすい書き方だった。12の1の数時がスラッシュ(/)に見えた。同勤務者と複数確認したが、2人とも同じ認識をしてしまった。(スラッシュと思い込んだ。)実施前に医師に2ml/hrですね、と確認したが、有効な確認にはならなかった。相手の反応がなかったことで正しいと思い込んだ。薬剤の用量を十分理解していなかった。(滴数とγ数を理解していれば12mlを2mlと思わなかった。)

 ■実施したもしくは考えられる改善策
薬剤の用量や用法をきちんと理解して投与する。文字がわかりにくいときは、きちんとその場で確認をする。口頭で確認する時は、相手の反応をきちんと確認する。



専門家からのコメント


 ■記入方法に関するコメント
 医師と主治医が登場していますが、後半の文章の「医師」は当直医か医師か区別が出来ません。また、同勤務者とありますが、同じ勤務帯で働いている看護師でしょうか。
 様々な背景要因を分析するためには、登場人物に関する情報も重要です。できるだけ詳しく記載しましょう。
 「カルテで指示を受けた」とありますが、通常の指示受けの方法・確認方法はどのような手順になっていたのでしょうか。通常の手順どおりだったのか、それとも異なったのかを明記し、通常の手順でない場合はその理由も書きましょう。通常の手順に潜在的なシステムエラーがあったり、また、手順どおりにいかなかった理由がエラー誘発要因になっている場合も考えられます。

 ■改善策に関するコメント
 改善策は個人レベルで対策を立てるだけでは不十分です。川村の「注射エラー発生要因の主たる8要因と対策」によると、本事例のエラー発生要因は「情報伝達の混乱」に相当します。医師の指示と業務各プロセスにおける情報伝達のルール化と情報伝達媒体の見直しとして「指示記載」、「口頭指示出しと受け方」、「変更中止の指示出しと受け方」、「業務連携のあり方」について、ルールづくりと伝達フォームの見直し、事故防止の視点を取り入れたオーダーエントリーシステム1)も検討しましょう。
 また、この事例は、コミュニケーションの問題を示しています。その中での問題点は2つあります。
 (1)医師からカルテを媒体として情報伝達し、医師の処方が看護師に正しく伝わらなかった。
 (2)看護師が、医師に問い合わせたが医師がそれに答えなかった。
 (1)は、コミュニケーションをしたが、医師の12ml/Hが、手書きによる文字を媒体として別な意味である2ml/Hで解釈されたというミス・コミュニケーション(mis-communication)です。一方、(2)は、看護師が疑問を解決しようと医師に問い合わせましたが、医師が反応しなかったというコミュニケーションそのものが成立していないので、ディス・コミュニケーション(dis-communication)になります。コミュニケーションは、受け手と送り手が同じ意味で理解した時に「成立した」と言えます。
 (1)の場合の最大の問題は、医師の書いた文字が別の文字に解釈されたということです。このケースでは、数字の「1」が記号の「/」に解釈できたために誤解を招いたと考えられます。疑問を持った看護師が、同僚看護師に問い合わせても同僚看護師も同様に「/」と解釈しています。この状況から、「1」が「/」と解釈してもおかしくない記述方法だったと考えられます。「1」と「2」のスペースが開きすぎていたためにゲシュタルト心理学でいう近接の原理が「1」と「2」の間で働かず、位置的に前に記述してあった文字と「1」が接近して解釈され、そうであるなら「1」と解釈するよりも「/」と解釈したほうが意味が通るということになったと推察されます。
 (2)の場合は、コミュニケーションそのものが最初から成立していないということです。問題点は、第一に、声をかけたのに医師が反応せず、それで自分たちの目的が達成されたと解釈している点です。反応がなかったので自分たちの確認したい内容が承認されたと勝手に解釈していますが、反応がなかったらしなかったから、当該看護師は疑問が明確になるまで「引き下がってはいけない」のがプロとして最後まで責任を取ることが大切です。
 また、問い合わせ方法では、なぜ、自分が疑問をもつのか理由を説明するべきです。「○○なのでよく分からない」のように、なぜ、聞くのか理由を明確にしなければ誤解の生じる可能性があります。医師と看護師の間に権威勾配や日常的に十分なコミュニケーションの成立しにくい雰囲気があるのかも考えられます。
 具体的に考えられる対策は以下の通りです。
(1)この病院では手書きのカルテとなっているので、医師にカルテの文字の重要性を理解させること。個人に伝えてもなかなか難しいので、医師という職業の階層構造を考え、看護部から医師へ正式ルートでこの事例とともにカルテの書き方の改善を依頼すること、また、情報伝達の重要性を学習させる機会をつくること、さらに、具体的な数字の書き方についての講習を行うことなどが考えられる。他産業においては、たとえば、航空管制官の教育課程においては、略語の書き方、数字の書き方などの実務教育が行われている。
(2)紛らわしい文字、間違いやすい文字をリストアップし注意を促す。識別しやすい書き方のある文字についてはこれを奨励する。たとえば、ゼロは中に斜線を入れる,オーは上に横棒を付ける等。
(3)コミュニケーションについての技術を教育する。このケースでは、医師に問い合わせる時、実際にカルテを持って行き、具体的にどこがよく分からないのかを示すのがよい。そのような確認の仕方を病院の標準的手段とすることが重要である。
また、患者の状態と処置との関係を理解できるような教育システムを構築することが重要である。看護師の知識不足として処理するのではなく、教育システムが不十分であり、教育システムを充実させるという組織的取り組みを行うことである。CRM訓練等の病院版を医師・看護師・薬剤師なども含めて実施して行くことも検討してみる。
(4)ヒヤリ・ハットを有効に利用するためには、最悪の事態を想像してみる事。このケースでは、12ml/Hを入れるべきところ、2ml/Hとなり薬剤は少なく投与されたために被害は少なかったと考えられるが、逆を想像してみるとよい。2ml/H投与すべきところを「/」を「1」と間違え、12ml/H投与したとすると、6倍の薬剤が投与されることになる。このシュミレーションにより手書き文字の潜在的な危険性が理解されると考える
(5)何気ないコミュニケーションのなかで確認するのではなく、エラー防止のための注意義務を果たす行為として「確認行為」を実施するためには、「確認会話」が必要であり、確教育・訓練を実施すること。「確認会話」は、自分と相手の言動を互いに会話で確認し、正確を期するコミュニケーションの手法2)であり、施設内で適切な確認会話の具体例を示し、教育・訓練・評価する。
(6)注射薬の用量に用いられる単位の表現方法についても標準化し、教育・訓練し、周知・徹底する。

  <単位>
1g=1000mg
1000μg=1mg
μg/kg/min
U(ユニット)=単位
  IU(アイユー):国際単位


【参考資料】
1)「ヒヤリ・ハット11,000事例によるエラーマップ完全本」、川村 治子、医学書院、2003
2)横浜市立大学医学部附属病院「医療安全管理指針(共通編)」、2003,3



 事例117:(薬剤ラベルの誤記入による患者間違え)

 発生部署(入院部門一般) キーワード(与薬(注射・点滴))


  ■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【5月】 発生曜日【月曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【10時〜11時台】
発生場所【ナースステーション】
患者の性別【男性】 患者の年齢【70歳】
患者の心身状態【障害なし】
発見者【当事者本人】
当事者の職種【准看護師】
当事者の職種経験年数【28年1ヶ月】
当事者の部署配属年数【4年2ヶ月】
発生場面【皮下・筋肉注射】
(薬剤・製剤の種類)【抗腫瘍剤】
発生内容【患者間違い】
発生要因-確認【確認が不十分であった】
発生要因-観察【】
発生要因-判断【】
発生要因-知識【】
発生要因-技術(手技)【】
発生要因-報告等【】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【          】
発生要因-システムの不備【連絡・報告システムの不備】
発生要因-連携不適切【医師と看護婦の連携不適切】
発生要因-勤務状態【          】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-施設・設備【】
発生要因-教育・訓練【          】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

 ■ヒヤリ・ハットの具体的内容
通常は、14時頃から夕方の点滴準備を行なうが、月曜日は毎週、業務が忙しくなるため、それを予測し、朝10時に夕方の皮下注射の準備をする。注射指示箋を確認し、キロサイド16mgであることを確認しながら、注射ラベルを記入し、薬剤とともに、トレイに置く。注射指示箋は「M ○△」であったが、間違って「M田 ▲◎、キロサイド16mg」と記入した。点滴台の端に朝の分と区別して準備していたが、10時40分頃、2人で確認しようとしたところ、準備したはずのキロサイドと注射ラベルがないことに気付いた。点滴係の医師に確認すると、M田 ▲◎さんに皮下注射したことが分かった。

 ■ヒヤリ・ハットの発生した要因
夕方の点滴の準備を早くしすぎたため、医師が朝の注射が残っていると思われた。医師とダブルチェックできていなかった。患者の名前を誤って記入してしまった。

 ■実施したもしくは考えられる改善策
医師と看護師でダブルチェックを行なう。夕方の点滴の準備は午後から行なう。



専門家からのコメント


 ■記入方法に関するコメント
 ヒヤリ・ハットの具体的内容に「点滴台の端に朝の分と区別して準備していたが、10時40分頃、2人で確認しようとしたところ、準備したはずのキロサイドと注射ラベルがないことに気付いた。」とありますが、「2人で確認」とは誰とどのようにする確認かを記入するとよいでしょう。準備段階からのダブルチェックの手順があるかなどが明確になります。

 ■改善策に関するコメント
準備段階
1.「月曜日は毎週、業務が忙しくなるため、それを予測し、朝10時に夕方の皮下注射の準備をする。」とありますが、多忙さの改善策として夕方の点滴を朝から準備する必要があるのでしょうか。点滴準備に集中できない状況があり、薬剤ラベル誤記入が生じています。また今回のキロサイドは、光・温度に対する薬剤の安定性は高いですが、薬剤によっては、安定性が低く、保存できない薬剤もあります。看護師だけで、多忙さの改善策を検討するのではなく、他職種の協力を検討してもよいでしょう。すべての点滴のミキシングを薬剤師に依頼できないのであれば、業務が多忙になる特定日の点滴のミキシング依頼を検討してもよいでしょう。
2.準備した点滴内容の確認は、注射指示箋・準備した点滴を合わせて確認する必要があります。点滴を準備・確認方法の手順はマニュアル化するとよいでしょう。
3.ヒヤリ・ハットの具体的内容に「2人で確認」とありますが、抗がん剤などの危険薬を準備するときのダブルチェックの手順があるのでしょうか。危険薬の取扱いについても手順をマニュアル化する必要があります。

実施段階
1.注射指示箋・準備した点滴を合わせて確認し、患者のベッドサイドに行く必要があります。患者のベッドサイドでは、患者・注射指示箋・点滴内容の再確認を実施します。意識清明な患者であれば、患者との確認も可能です。
2.準備段階3.の「危険薬の取扱い」については実施段階での手順もマニュアル化するとよいでしょう。



 事例154:(処置用局所注入薬剤の点滴内混入)

 発生部署(外来部門一般・放射線部門) キーワード(与薬(注射・点滴))


  ■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【6月】 発生曜日【火曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【14時〜15時台】
発生場所【IVR治療室】
患者の性別【女性】 患者の年齢【66歳】
患者の心身状態【障害なし】
発見者【当事者本人】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【0年3ヶ月】
当事者の部署配属年数【0年3ヶ月】
発生場面【注射薬調剤・管理】
(薬剤・製剤の種類)【その他の薬剤、カルボカイン】
発生内容【その他の調剤・製剤間違い、局所注入薬を点滴内に混入した】
発生要因-確認【確認が不十分であった】
発生要因-観察【】
発生要因-判断【】
発生要因-知識【知識が不足していた】
発生要因-技術(手技)【】
発生要因-報告等【】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【          】
発生要因-システムの不備【作業マニュアルの不備】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【          】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-施設・設備【】
発生要因-教育・訓練【教育・訓練が不十分だった】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

 ■ヒヤリ・ハットの具体的内容
神経根ブロック予定の患者に血管確保をする為、点滴準備をしていた。同一処方箋に、注入とかかれたカルボカインとデカドロンを血管確保用のソルデムに混入し開始してしまった。

 ■ヒヤリ・ハットの発生した要因
処方箋の読み取り不十分通常は、点滴内混入する薬剤は基液と共に一くくりに片括弧で閉じるように決められていた。今回は、注入てカルボカインとデカドロンがくくられており、ソルデム3Aに括弧はかかっていなかった。

 ■実施したもしくは考えられる改善策
処方箋の見方、初めての処置につく時の、新人オリエンテーションの方法について再度確認。



専門家からのコメント


 ■記入方法に関するコメント
 院内での処方箋記載のルールはどのように決まっており、どのように新人に教育されているのでしょうか。また、点滴開始後に実施者本人がミスに気づいていますが、なぜ気づいたのでしょうか。具体的に書いてあるとどこまで理解していたのかがわかり、改善策もより具体的になると思われます。

 ■改善策に関するコメント
医師の指示のあり方と院内システムの検討
 この事例では、医師の指示が血管確保のための処方と処置のための指示が同一処方箋に記載されており、誰が見てもわかる内容ではなく、間違えを生じやすいものであったことが伺えます。
 カッコでくくられることは医療現場では多く見られる光景ですが、慣れた看護師であれば間違えることは少ないかもしれません。しかし、慣れれば間違えないといった、いわゆるローカルルールは慣れていなければ間違える可能性が高いものです。どんな人にも分かりやすく伝達する行為に配慮することは事故防止の基本です。
 血管確保のための指示なのか、処置のための指示なのかが薬剤名の上に記載されているだけでも防げる可能性が高いと考えられます。
 指示は いつ、どこで、誰に、何を、どれだけ、どのように(5W1H)が必ず記載されなければなりません。指示を受ける側も必ずこの点が記載されているか確認し、記載漏れがある場合は指示した医師に正しい書き方に訂正を依頼するよう徹底することが必要です。

 与薬は医療事故の中でも最も多く、特に注射は即効性があるため重大な事故につながりやすいものです。処方箋記載ルールを院内で決め、その教育方法と周知徹底、又、ルールを守らなかったときの厳重注意の仕方についても取り決める必要があります。
 また、検査・処置などは診療の補助として危険な薬剤を扱うことが多いため、改善策にもあるような作業マニュアル、クリニカルパスや処置手順書等の作成をお勧めします。
 処置に必要な物品、処置の流れ、介助の手順、血管確保と処置に使う薬剤等、はっきりと分けて明記することで、誰が見てもわかりやすく、実施手順が確認でき、最低限の安全の保障が確保されます。

新人教育の再検討
 当事者は3ヶ月の経験しかない新人です。注射エラー発生要因の中で、病態と薬剤の一元的理解の不足新卒者の臨床知識と技術の不足は非常に危険です。
 この事例では、発生場所が特殊治療室のため、他の看護師へ援助を求めにくい環境であった可能性もありまが、新人を初めての処置に付けたその部署の指導体制の問題も大きいでしょう。また、新人自身が「何のために、何を行うか」がわかって処置介助にあたる基本が不足しており、知識不足にも関わらず行動した点も問題です。
 新人に対し、初めて行うことをどのように指導者し確認して行くか、あいまいなまま行動しないなど、指導体制の見直しと新人の知識不足を補う院内教育の見直しは院内全体として早急に必要です。危険薬剤の種類や特徴も早々に教育し、リストアップし注意を喚起するのも一つの方法です。
【参考資料】
「ヒヤリ・ハット11,000事例によるエラーマップ完全本」、川村 治子、医学書院、2003



 事例308:(薬包紙への誤印字に気づかずに与薬継続)

 発生部署(薬剤部門、入院部門一般) キーワード(調剤、与薬(内服・外用))


  ■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【  】 発生曜日【   】曜日区分【  】発生時間帯【    】
発生場所【    】
患者の性別【  】 患者の年齢【  】
患者の心身状態【    】
発見者【    】
当事者の職種【   】
当事者の職種経験年数【   】
当事者の部署配属年数【   】
発生場面【          】
(薬剤・製剤の種類)【          】
発生内容【          】
発生要因-確認【       】
発生要因-観察【       】
発生要因-判断【       】
発生要因-知識【       】
発生要因-技術(手技)【       】
発生要因-報告等【       】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【          】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【          】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-施設・設備【       】
発生要因-教育・訓練【          】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【               】
備考【                   】

 ■ヒヤリ・ハットの具体的内容
内服準備中、処方箋にはRp5:リオサールとあるが、「5フェノバ」と薬包に印字されていた。薬局に確認すると中身はあっていたが、一応作り替えてもらう。3日間気付かず内服していた。

 ■ヒヤリ・ハットの発生した要因
薬セット時の確認不足。調剤時の印字ミス。印字は別にパソコンで稼働しているので、前のデーターの消し忘れなどで印字された。

 ■実施したもしくは考えられる改善策
薬のセット時処方箋と照らし合わせて確認する。薬局の検薬時に、指差呼称確認する。



専門家からのコメント


 ■記入方法に関するコメント
 「リオサール」はおそらく中枢性筋弛緩薬である「リオレサール」と推測できますが、似た薬品名で「オリザール」など全く成分の異なる薬品もあり、正しく記載する必要があります。
 また、この処方は錠剤の粉砕調剤またはワンドーズ調剤だったのでしょうか?なぜ薬品名の記載があるシート包装から薬を取りだし、薬包紙に印字する必要性があったかの説明が必要です。さらに処方オーダーから調剤、鑑査、予薬に至るまでの薬剤供給システムの情報があると業務システムの何処にどのような問題があるかが浮き彫りになり、具体的な業務改善に繋げることができます。

 ■改善策に関するコメント
 ワンドーズ調剤や散薬調剤においてリスク軽減のため薬包紙への印字はしばしば行なわれます。薬包紙への薬品名誤印字は「リスクを少なくしようとして、逆にリスクを増やしてしまった」典型的な事例です。そして本事例には2つの問題があると考えられます。一つは薬包紙への誤印字に関する問題、そしてもう一つが違う薬品が配薬され3日間気付かれずに患者に投与され続けていた問題です。幸い処方通りの薬が調剤されていたため大事には至りませんでしたが、現在の薬剤供給システムと運用方法に関して不具合がないかを点検しましょう。そして“ダブルチェック”が機能しているか確認してください。患者への薬剤情報の提供もチェック機能の一つとなるでしょう。
 改善策のなかで「薬のセット時処方箋と照らし合わせて確認する」とありますが、何をどのように照合確認するかを明確にし手順を決める必要があります。処方せんは配薬準備にあたり必ずしも見やすい書式とは言えません。配薬確認のとれるワークシートの採用を検討してはどうでしょう。また、与薬という看護行為の結果を観察し、その反応をアセスメントするという看護専門職としての視点や責任の教育も必要です。
 また「薬局の検薬時に示唆呼称確認する」とありますが、処方鑑査の業務手順を作成しマニュアル化することも効果的です。鑑査項目に「処方と薬袋、ラベルの表示の一致を確認する」を入れると良いでしょう。調剤も周辺機器の進歩に伴い変化しています。予想もつかないエラーが発生する可能性があります。随時、調剤及び鑑査手順の見直しを計りマニュアルを整備していくことが必要でしょう。具体的な確認方法としてシートから薬品を取り出した場合シートの一部を処方せんに貼り付ける事や、バーコードを利用した確認方法があります。十分な現状分析などを介してリスク回避を行う必要があります。
 ワンドーズ調剤はコンプライアンスの悪い患者や理解度の低い患者には有効な手段ですが、薬品をシートから取り出した場合の鑑査は難しく、白色、丸型が多い錠剤において製剤識別コードだけが判別の手がかりになります。調剤時のリスクが高まる事を念頭に慎重な鑑査が望まれます。



 事例321:(輸液ポンプにおける予定量と流量の入力間違い)

 発生部署(入院部門一般) キーワード(機器一般)


  ■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【5月】 発生曜日【火曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【0時〜1時台】
発生場所【病室】
患者の性別【女性】 患者の年齢【42歳】
患者の心身状態【床上安静】
発見者【同職種者】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【1年1ヶ月】
当事者の部署配属年数【1年1ヶ月】
発生場面【末梢静脈点滴】
(薬剤・製剤の種類)【その他の薬剤、ポタコールR、アドナ、トランサミンS】
発生内容【投与速度速すぎ】
発生要因-確認【確認が不十分であった】
発生要因-観察【】
発生要因-判断【】
発生要因-知識【】
発生要因-技術(手技)【】
発生要因-報告等【】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【          】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【          】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-施設・設備【】
発生要因-教育・訓練【          】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】
備考【                   】

 ■ヒヤリ・ハットの具体的内容
術後患者の持続点滴更新時、積載量をリセットし流量100ml、予定量を480mlと再設定し点滴開始した。その約1時間後、患者よりナースコールあり深夜勤務の看護師が訪室すると100/Hで施行予定のポタコールR500mlの点滴が1時間で終了していた。その看護師の指摘により、予定量と流量を誤って逆に設定していたことに気付いた。

 ■ヒヤリ・ハットの発生した要因
輸液ポンプの予定量と流量の表示ランプを十分確認せずに急いで操作した。申し送りの再中で、あせる気持ちが自分の中にあった。

 ■実施したもしくは考えられる改善策
忙しい時でも、焦らず確認を怠らずに行動する。



専門家からのコメント



 ■改善策に関するコメント
 医薬発第0318003号(平成15年3月18日)「輸液ポンプ等に関する医療事故防止対策について」により輸液ポンプ等の流量及び予定量の入力に関する安全対策として以下のように示されています。
 (1)輸液ポンプ等への流量及び予定量の入力間違いによる事故が多数報告されていることから、これらを防止するための以下の機能を搭載すること。
(1)流量及び予定量双方の入力が可能な場合には、双方を入力しないと作動しないようにすること。ただし、予定量の設定がない場合は、「設定なし」等の入力を可能として差し支えないこと。
(2)設定した予定量よりも流量が大きい場合には、一時停止し、再度確認しないと作動しないようにすること。
(3)電源再投入時の流量表示は0(ml/h)、予定量の表示が可能な場合には予定量表示は0(ml)とすること。
 (2)輸液ポンプ等への流量や予定量の入力間違いを容易に発見できるようにするために画面表示の視認性を改善すること。
(1)流量及び予定量双方の入力が可能な場合には、流量及び予定量は別画面で表示すること。
 (入力が別画面で行えること)
 (表示、画面まわり等の色別、入力時の点滅等を検討すること)
(2)数値の整数部分の表示の大きさと小数部分の表示の大きさを変えること。
 (例:「40.0」と「400」)
(3)注入精度に基づいた適切な数値を表示すること。
(4)小数点表示は、浮動小数点表示方式ではなく、固定小数点表示方式とすること。
 新しい機器はこの規格に準じています。このため新規格に準じた機種に更新することがもっとも有効な対策と言えます。しかし医療現場では未だ本事例のように同一に表示される機器が現存しています。
 この様なエラーが発生する状況としては、設定をするために設定切り替えスイッチを押し確認のためにカルテや指示用紙を確認している間に自動的に切り替わり(機種により異なるがT社では約10秒)、これに気づかずに入力をしてしまい予定量と流量が逆になるケースや、機器に不慣れなスタッフに指導をしながら設定をする際、説明等のため目を離した時に切り替わり逆入力するケースがあります。これは、言い換えると慎重に行ったために発生する事があることであり注意が必要です。このため、自動的に設定が切り替わってしまう事を取り扱うスタッフが十分に認識する必要があります。この方法として実際に切り替わる状況を設定した学習会を行うことも効果的です。
 輸液ポンプに確認シート等を取り付け輸液開始前に必ず確認する習慣をつけることも対策としては有効です。輸液ポンプを用いると滴下状況を見ることが無くなりがちですが確認項目に滴下状況を入れておくと異常に早い遅いとの事から気がつくケースがあります。
 医療機関内にいろいろな種類(メーカ)の輸液ポンプを混在させずに統一することは、操作性を均一化するばかりではなく専用回路等の付帯消耗品を減らすことにもつながり取り扱いミスを少なくするために有効な手段です。



 事例323:(保育器内の酸素投与ミス)

 発生部署(入院部門一般) キーワード(酸素吸入、機器一般)


  ■事例の概要(全般コード化情報より)
発生月【6月】 発生曜日【金曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【10時〜11時台】
発生場所【病室】
患者の性別【男性】 患者の年齢【0歳】
患者の心身状態【床上安静睡眠中】
発見者【同職種者】
当事者の職種【看護師】
当事者の職種経験年数【0年2ヶ月】
当事者の部署配属年数【0年2ヶ月】
発生場面【その他の医療機器等の使用・管理に関する場面】
(薬剤・製剤の種類)【保育器】
発生内容【設定忘れ・電源入れ忘れ】
発生要因-確認【確認が不十分であった】
発生要因-観察【】
発生要因-判断【】
発生要因-知識【】
発生要因-技術(手技)【】
発生要因-報告等【】
発生要因-身体的状況【          】
発生要因-心理的状況【          】
発生要因-システムの不備【          】
発生要因-連携不適切【          】
発生要因-勤務状態【          】
発生要因-医療用具【          】
発生要因-薬剤【          】
発生要因-諸物品【          】
発生要因-施設・設備【】
発生要因-教育・訓練【          】
発生要因-患者・家族への説明【          】
発生要因-その他【          】
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【仮に実施されていた場合、患者への影響は中等度(処置が必要)と考えられる】
備考【                   】

 ■ヒヤリ・ハットの具体的内容
児は器内酸素28%で経過中であった。酸素校正をし、酸素を開始したつもりであった。同職種者から酸素開始できていないと指摘あり酸素開始し忘れていることにきがつく。約40分間酸素中止したままであった。すぐに酸素開始した。

 ■ヒヤリ・ハットの発生した要因
酸素校正後の確認不足。酸素校正後、モニター画面を見て酸素が開始になっているか確認できていなかった。確認のポイントを充分に理解できていなかった。酸素濃度測定器械の校正後、酸素開始のボタンを押したと思いこんでしまった。

 ■実施したもしくは考えられる改善策
きちんと酸素が開始できているか確認する。確認ポイントを充分に理解するモニター画面で酸素濃度を再度確認する声だし・指差し確認をおこなう。思いこみで行動せず、正確な確認を行い行動をする。



専門家からのコメント



 ■記入方法に関するコメント
 具体的な内容の記入では、新人看護師が病院の手順、マニュアルに沿って酸素校正を行ったのか、マニュアル等がなく先輩の指導に従って行ったのか、それとも器械の取り扱い説明にしたがって行ったのかを記入しましょう。それによって何を修正すべきか、どんな指導の必要が出てくるかがわかり、事例分析方法も変わってきます。
 また、酸素濃度計のタイプも保育器に付いているのか、携帯式なのかを記入しておくほうがよいでしょう。

 ■改善策に関するコメント
声だし・指差し確認
 非常に重要で簡単に改善できる方法だと思います。一つずつ確実に声だし確認を行い確実に設定できているかを見ることは重要な動作であり、事故を防止することができます。機種にもよりますが、もっと確実な方法として簡単なチェックシートを作成したらどうでしょうか。項目は多くせずにカラーリングした台紙に1:酸素校正の値 2:酸素の接続 3:酸素供給ランプ 4:指示酸素濃度 5:モニター上の濃度(実測値は) 6:内部濃度の安定などを記入して「声だし・指差確認」に活用するのも手段だと思います。
 内部濃度の安定時間については機器ごとに違いますのでメーカの取扱説明書を参照してください。

酸素濃度計の校正方法改善
 一般的には保育器内に酸素を投与している時に酸素を止めることはしません。施設の関係でボンベを使用している場合は、交換時には止める必要が出てきますが、事例では「酸素校正し、酸素を開始した」と記入されていますので、ここで酸素濃度計の校正方法には間違いはなかったのでしょうか?保育器に備え付けのない携帯式酸素濃度計の場合、濃度計の校正は簡単に大気でできますから保育器内で校正はせず外に出し校正をします。定期的に外に出し校正することでセンサーの電池容量ずれによる指示値の値変化も補正できます。その上、最近の機器はアラーム機能を有するので保育器内に入れてアラームをセットすれば酸素濃度低下の防止ができます
 最近の機種ではモニターを組み込んだ機種もあります(アトムメディカルV-2100GBCタイプ、トーイツC2000)**。 これらの機種の場合、校正方法と正しい使い方は酸素の接続ははずさず通常21%校正を毎日することを奨励しています、校正方法はセンサーモジュール等を引き出して大気中で21%校正を行います。その際には保育器に酸素の供給は停止せず、引き出したモジュール部分からもガスが漏れない仕組みになっています。しかし校正をかけるときのスイッチ類の点け忘れ、戻し忘れなどのヒューマンエラーが起きる可能性があります、声だし・指差し確認で改善しましょう。
 また、校正手順についてのメーカにも協力をお願いして点け忘れ、戻し忘れのない簡単な手順に改良してもらうのも改善策といえます。
 その上で事故防止には据付用に併用して携帯式を使用するのもよいと思われます。

酸素濃度が安定してから声だし・指差し確認
 酸素濃度コントローラ付き機器では酸素を開始しても、すぐには設定濃度にはなりません
少なくても30分以上かかりますから、濃度が安定してからもう一度点検をしましょうそれにより安全性もたかまります。

経皮的酸素飽和計、生体モニターの活用
 酸素投与が行われている入る場合、必ず経皮的酸素飽和計の使用を義務づけましょう、それにより動脈血酸素濃度の低下が視覚的にも聴覚的にもわかります、同時に心電図モニターによっても現れます。また、サイドストリームタイプの呼気ガス分析装置を使用すれば児のガスの状態を測定できます、定期的に測定することで事故防止の有効な手段と思います。


アラーム付き酸素濃度計としてはテレダイン酸素濃度計(TED-200T)アトム酸素モニター(OX-21)などがあります。

**内蔵式酸素コントローラの注意事項(メーカ取り扱い説明書抜粋)
酸素コントローラを使用中に、停電や電源プラグの外れなどで、電源供給が中断した場合、電源供給が再開されても酸素供給は開始しません。酸素コントローラのON/OFFスイッチを約1秒間押して、酸素コントローラをONにしてください。
電源供給が中断する前の酸素濃度設定値が表示され、酸素供給が開始されます。
酵素供給の決定は、必ず医師の指示に従ってください。
酸素供給時には器内の酸素濃度に充分注意してください。
器内酸素濃度の指標として酸素流量計を使用することはできません酸素濃度は校正された酸素モニターまたは酸素コントローラによって、担当医の指示に従って確認してください。
器内酸素濃度はフィルターの汚れ、使用状況、酸素流量計の精度等により変動します。器内酸素濃度を正確に維持するため、精度のよい酸素モニターで器内酸素濃度を繰り返し測定してください。
使用する酸素モニターは、大気中の酸素(濃度20.9%)および純酸素(濃度100%)を使用して、定期的に校正してください。
酸素濃度はいつでも別個に測定して、処方された通りの濃度の酸素が供給されていることを確認してください。


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