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重要事例情報−分析集
事例35:(日常生活動作に伴うベッド上端座位からの転落) | |
発生部署(入院部門一般) キーワード(転倒・転落) | |
■事例の概要(全般コード化情報より) |
発生月【 月】 発生曜日【 】曜日区分【 】発生時間帯【 】 発生場所【 】 | |
患者の性別【 】 患者の年齢【 】 患者の心身状態【 】 | |
発見者【 】 | |
当事者の職種【 】 当事者の職種経験年数【 年 ヶ月】 当事者の部署配属年数【 年 ヶ月】 | |
発生場面 | 【 】 |
(薬剤・製剤の種類) | 【 】 |
発生内容 | 【 】 |
発生要因-確認 | 【 】 |
発生要因-観察 | 【 】 |
発生要因-判断 | 【 】 |
発生要因-知識 | 【 】 |
発生要因-技術(手技) | 【 】 |
発生要因-報告等 | 【 】 |
発生要因-身体的状況 | 【 】 |
発生要因-心理的状況 | 【 】 |
発生要因-システムの不備 | 【 】 |
発生要因-連携不適切 | 【 】 |
発生要因-勤務状態 | 【 】 |
発生要因-医療用具 | 【 】 |
発生要因-薬剤 | 【 】 |
発生要因-諸物品 | 【 】 |
発生要因-教育・訓練 | 【 】 |
発生要因-患者・家族への説明 | 【 】 |
発生要因-その他 | 【 】 |
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【 】 | |
備考【 】 |
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
トイレからベッドに移送後、自分で端座位のまま肌着を着ると言われ、その場を離れる。10分後スタッフによりベッド脇でしりもちをついている所を発見される。聞くと、シューズの中にある靴下を取ろうとしたとのこと。 |
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
リハビリ期の患者であり、また転院を控えていたため自分でしなければという焦りの気持ちが高まっていた。また、患者の生活習慣を把握しきれていなかった。 |
■実施したもしくは考えられる改善策
ADL状況を的確に把握し、それに応じた援助を実施する。患者のニードを捉えて援助に生かす。 |
■記入方法に関するコメント
患者の情報として、年齢、疾患名、理解度や現在のADLと具体的な障害の程度、ベッドの高さやシューズの位置などの周辺環境の情報、発生時間や患者の生活パターンなどがわかると、分析の際に問題点を明確にしやすいでしょう。また、要因の中に「焦りの気持ちが高まっていた」とありますが、転倒・転落歴やこれまでの行動で転倒・転落を予測させる情報はありませんでしたか。一方、例えば移送をおこなった看護師は一時的に離れただけだったのか、援助行為が完了したと考えたのか、発見したのは同一看護師だったのかなど、その場を離れてから発見に至るまでの看護者側の情報も不足しています。 発生要因を明らかにし、今後の具体的な改善策を考えていくためには、患者側・医療者側の両面からの情報が必要でしょう。 |
■改善策に関するコメント
転倒転落アセスメントシートの活用 転倒・転落を防止のための対策を考える際に、まず重要なことは、致命的な事故の発生を防ぐということです。そのためには、個々の患者の有するリスクを明らかにする必要があります。転倒転落のためのアセスメントスコアシートを活用してリスクレベルを判定するとよいでしょう。リスクの高い患者に対しては、あらかじめ予防のための方策をとる必要があります。 リスクの判定では、次の2点を検討します。
“動かす”看護介入を考える このケースのようにリハビリ中の患者では、ADLを拡大することと、その時に患者が持っている能力を超えることがないように活動調整することが同時に必要になります。しかし能力に関して患者と看護師の認識にギャップがあったり、環境条件が患者の行動に見合っていなかったりすると、看護師の予想外のところで転倒・転落が発生するわけです。このケースではしりもちをついていたということなので、おそらくシューズを取ろうと浅く腰掛けて重心を移動した際に、ベッドから滑り落ちてしまったと考えられます。こうした転落は、致命的な影響を及ぼすことは稀ですが、発生頻度は少なくありません。 転倒・転落の多くは、患者が“動く”ことによって発生しています。しかし、多くの場合“動く”ことが問題なのではなく、“動き方”に問題があるのです。看護者側が患者のリスクを認識した上で、積極的に“動ける”状態を作る必要があります。 例えば今回のケースの場合、看護師と患者さんとの間に「肌着を着替える」とは具体的に何をすることなのかいう事柄に関する合意は成立していません。あるいは、患者さんは初めは肌着を着替えるだけのつもりだったが、途中で靴下を履くことを思いついたのかもしれません。その結果、看護師が着替えには十分であると考えていた条件では不十分な状況が出現したわけです。こうしたギャップを埋めるためには、まず患者さんが意図していることを正確に知っておくことが大切です。その上で、患者の行為に必要な環境を整える必要があります。また、環境条件を整える際に、予定外の行動をしないという同意を患者から得ることも重要でしょう。 介助基準の検討 患者に対し、どこまでどういう介助を行うかについては、看護師間でも合意が必要です。 また、介助が必要なのであれば、その場を完全に離れてしまうことは危険を伴います。アセスメントスコアシートの判定に応じて、患者の行為と看護介入の基準を明確にし、付き添いが必要かどうかなどに関する判断が看護師によって異なることがないようにしなければなりません。またアセスメントスコアシートのデータを蓄積し、安全な範囲はどこまでなのかを明らかにしていくことも転倒・転落予防の重要な対策となるでしょう。 |
事例36:(点滴スタンド使用中の転倒) | |
発生部署(入院部門一般) キーワード(転倒・転落) | |
■事例の概要(全般コード化情報より) |
発生月【 月】 発生曜日【 】曜日区分【 】発生時間帯【 】 発生場所【 】 | |
患者の性別【 】 患者の年齢【 】 患者の心身状態【 】 | |
発見者【 】 | |
当事者の職種【 】 当事者の職種経験年数【 年 ヶ月】 当事者の部署配属年数【 年 ヶ月】 | |
発生場面 | 【 】 |
(薬剤・製剤の種類) | 【 】 |
発生内容 | 【 】 |
発生要因-確認 | 【 】 |
発生要因-観察 | 【 】 |
発生要因-判断 | 【 】 |
発生要因-知識 | 【 】 |
発生要因-技術(手技) | 【 】 |
発生要因-報告等 | 【 】 |
発生要因-身体的状況 | 【 】 |
発生要因-心理的状況 | 【 】 |
発生要因-システムの不備 | 【 】 |
発生要因-連携不適切 | 【 】 |
発生要因-勤務状態 | 【 】 |
発生要因-医療用具 | 【 】 |
発生要因-薬剤 | 【 】 |
発生要因-諸物品 | 【 】 |
発生要因-教育・訓練 | 【 】 |
発生要因-患者・家族への説明 | 【 】 |
発生要因-その他 | 【 】 |
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【 】 | |
備考【 】 |
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
トイレから戻る際、ふらつき、点滴架台で支えようとしたところ、点滴架台がすべり、しりもちをついた |
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
患者の貧血。下痢。トイレ移動時看護師を呼ぶように伝えていたが、看護師を呼ばすに一人でいかれた |
■実施したもしくは考えられる改善策
トイレ移動時必ず看護師を呼ぶように再度伝えた。ポータブルの使用は拒否。患者の指南力は良好 |
■記入方法に関するコメント
事例に関連した要因を整理できるような状況や情報をできるだけ詳細に記載することをお勧めします。この事例においては、患者に関して、環境に関して、物品(点滴架台)に関して情報を整理すると転倒の要因や改善策を分析しやすいでしょう。 例えば、患者の貧血や下痢という状況は、継続していた症状であり、ふらつきの原因と考えられるのでしょうか、事例発生時に生じたため要因として考えられたのでしょうか。患者の年齢や病名、履物、事例発生時刻、入院期間や今までの転倒の有無、トイレと病室間の距離や手すりの有無、トイレの広さなど環境面での情報もあると分析しやすいでしょう。 そして、点滴架台の設置や移動方法についての情報、例えば点滴架台のキャスターの数や患者が握れるグリップの有無、点滴ボトルやポンプの設置は高さや位置などどのようになされていたのでしょうか。患者は点滴架台のどのあたりを握っていたのでしょうか。 点滴架台がすべった要因が不安定によるものか、患者の動かし方によるものか、床濡れなど環境の整備不足によるものかの情報も必要になるでしょう。 |
■改善策に関するコメント
施設内で起こる転倒・転落事故の多くが患者の自発的かつ自力の行動によるものといわれていますが、組織として防止策への取り組みも重要でしょう。 転倒アセスメント・スコアシートの活用 転倒・転落の要因はそれぞれ異なりますので、どのような患者がどういう状況で転倒・転落するのかなどを分析・アセスメントすることでリスクを把握しましょう。 この事例の改善策として記載されている状況は、ポータブルトイレ使用ではなく、「トイレ移動時」のみ看護師を呼ぶことになっていますが、十分な状況分析や患者アセスメントがなされたうえで、事故予測に反映されているのでしょうか。 また、患者側の満足度も評価の対象となります。例えば、患者の貧血は頻回に身体症状として見られていたのか、他の移動時はナースコールで知らせるが、トイレ移動時は知らせなかったのでしょうか、あるいはこの施設のトイレへの環境が転倒を誘発しやすいなどの理由があるのでしょうか。点滴架台を準備しておきつつ、トイレ時にのみ看護師への連絡を要求することは患者にとって抵抗なく受け入れられる対策でしょうか。特に排泄は「人に頼りたくない」「自分でしたい」という気持ちが強くそれによる行動を起こす可能性を理解した対応が必要です。 なお、下痢の原因も情報不足ですが、下痢は人間の行動として予断を許さない対応を起こす状況と思われますので、下痢症状緩和も患者行動を制御できる有効な改善策の1つと思われます。また、事例発生時刻や点滴治療の目的が不明ですが、患者の活動時間に合わせた治療計画(点滴時間の考慮)も必要でしょう。 アセスメントによりリスクを把握し、それに基づいたケアプランを患者と共有し、日常の実践に生かしていくことが重要です。 アセスメント・スコアシートは次の看護協会ホームページ上でも例が紹介されています。http://www.nurse.or.jp/jna/riskmanagement/005_4.html 点滴架台の安定性について 可動性のある点滴架台を使用している患者は、点滴治療中でも歩行が可能であり、治療による日常活動の制約を少なくできます。しかし、点滴架台の不安定さが、転倒を誘発する危険があります。そのため、患者の歩行が不安定な場合、特に医療者側が、使用する点適架台としての安定性や扱い易さを選定したり設置状況を確認したりして、患者の歩行の障害とならないようにすることが必要です。例えば、キャスターは3個よりも5個の点滴架台が固定時、移動時にも安定しています。また、現在は患者の歩行の邪魔にならず点滴架台を移動しやすくするためにグリップ等が工夫されたものもあり、そのグリップの有無によっても移動時の患者安定性は変わります。さらに、輸液ポンプを使用している場合など、点滴架台にかかる重心を低くし、キャスターの位置を考慮した設置が転倒防止に有効です。 また、歩行が不安定な場合、患者は点滴架台を杖や歩行器の代わりとして使用することがあります。さらに、ふらついた際に、支えの頼りにすることもあります。しかし、点滴架台が全てそのような、患者の歩行を補助する安定性を備え、転倒予防の支えを考慮されて作られているわけではありません。医療者側は、患者の周りにはそのような安定性の低い物品が多く置かれていることを認識する必要があります。患者への説明としても、ふらついた時や、転倒しそうになった際は、点滴架台を支えにせず、手すりなど固定された物に頼る行動を促しておく必要があるでしょう。 点滴架台メーカーには、上記のような使用状況があることを認識し、患者の歩行の障害とならない配慮やより安定性のある点滴架台の企画・製造をお願いしたいと思います。 環境の整備 点滴スタンドのみでなく、施設内の段差や、トイレ内のスペースの問題、病棟内の環境整備の状況なども明確にしておくことが、患者が安心して点滴スタンドを使用しながら歩行できることにつながります。例えば、廊下や洗面所、トイレ、下膳場所などは汚れや、水濡れなどが起こりやすく、点滴スタンドのキャスターが滑りやすい場所です。今回の事例の場合、点滴スタンドがなぜ滑ったのか原因を明確にする必要があります。 また、トイレでの転倒は、排泄のために衣類の着脱行為やその際の不安定な動きにより誘発されます。特に、点滴中可動域を制限されている場合や片麻痺患者、高齢者などは転倒のリスクは高くなります。十分なスペースや段差の解消、手すり設置などの改修も必要です。もちろん、トイレ内のナースコールの場所や点検は怠らないでください。 |
事例101:(予測された再転倒) | |
発生部署(入院部門一般) キーワード(転倒・転落) | |
■事例の概要(全般コード化情報より)) |
発生月【 月】 発生曜日【 】曜日区分【 】発生時間帯【 】 発生場所【 】 | |
患者の性別【 】 患者の年齢【 】 患者の心身状態【 】 | |
発見者【 】 | |
当事者の職種【 】 当事者の職種経験年数【 年 ヶ月】 当事者の部署配属年数【 年 ヶ月】 | |
発生場面 | 【 】 |
(薬剤・製剤の種類) | 【 】 |
発生内容 | 【 】 |
発生要因-確認 | 【 】 |
発生要因-観察 | 【 】 |
発生要因-判断 | 【 】 |
発生要因-知識 | 【 】 |
発生要因-技術(手技) | 【 】 |
発生要因-報告等 | 【 】 |
発生要因-身体的状況 | 【 】 |
発生要因-心理的状況 | 【 】 |
発生要因-システムの不備 | 【 】 |
発生要因-連携不適切 | 【 】 |
発生要因-勤務状態 | 【 】 |
発生要因-医療用具 | 【 】 |
発生要因-薬剤 | 【 】 |
発生要因-諸物品 | 【 】 |
発生要因-教育・訓練 | 【 】 |
発生要因-患者・家族への説明 | 【 】 |
発生要因-その他 | 【 】 |
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【 】 | |
備考【 】 |
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
車椅子用のトイレに移動介助したが排泄中は付き添わなかった。物音がしていくと患者が転倒していた |
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
前日も転倒しており、1人で移動することを予測できたにもかかわらず付き添わなかった |
■実施したもしくは考えられる改善策
トイレ移動している時も、ナースコールを頼るのではなく、確認に行く |
■記入方法に関するコメント
ヒヤリ・ハットの具体的内容について
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■改善策に関するコメント
患者援助 排泄行動による転倒は、介助者の意志に反して認識力のある人であれば誰でも人の力を借りたくないという気持ちが働きます。そのため常にこの行動を予測した援助が必要になります。排泄行動に伴う転倒予防の援助では、患者の人の力を借りたくないという気持ちに添い、患者が出来ることは出来るだけ行わせる、たとえば「トイレへの移動はできない、しかし排泄しその後の処理は一人で出来る、衣服は整えられない、車椅子への移動は出来ない」など何が出来て何が出来ないのかアセスメントし、患者の気持ちを汲んで援助していく必要があります。また病状が進行していく患者では、患者を気づかわせないように配慮しながら日々介助の手を加えるようにし、またリハビリ期にある患者であれば、自立に向けたチェックリストや介助者が手を離すゴールを示し指導訓練することが大切と思います。 環境要因の整備 病棟の日常現場では常時患者に付き添って介助が必要と解っていても、他の患者のコール等で離れなければならないやむをえない事態も時にあります。このような事態を出来るだけ起こさないようにチームで転倒防止策を話し合って計画的に行動する必要があります。転倒リスク患者のリストアップ、排泄予測時間帯の把握、全介助者、一部介助者の数、だれがどの患者を介助するのか、出来ない時はどうするのか等チームで計画し共有しておくこと、また計画を患者と話し合っておくことも大切です。 また、患者の見当識障害等で患者の了解が得られない場合は、患者の排泄時付き添うことが必要です。この事例ではなぜ看護者が患者の元を離れたのか明らかになっていませんが、このような常時観察の必要な患者をリストアップし該当する患者の排泄時は離れることのないよう連絡を取り合い転倒防止を行うことが重要です。 |
事例143:(ベッド柵の隙間からの転落) | |
発生部署(入院部門一般) キーワード(転倒・転落) | |
■事例の概要(全般コード化情報より)) |
発生月【 月】 発生曜日【 】曜日区分【 】発生時間帯【 】 発生場所【 】 | |
患者の性別【 】 患者の年齢【 】 患者の心身状態【 】 | |
発見者【 】 | |
当事者の職種【 】 当事者の職種経験年数【 年 ヶ月】 当事者の部署配属年数【 年 ヶ月】 | |
発生場面 | 【 】 |
(薬剤・製剤の種類) | 【 】 |
発生内容 | 【 】 |
発生要因-確認 | 【 】 |
発生要因-観察 | 【 】 |
発生要因-判断 | 【 】 |
発生要因-知識 | 【 】 |
発生要因-技術(手技) | 【 】 |
発生要因-報告等 | 【 】 |
発生要因-身体的状況 | 【 】 |
発生要因-心理的状況 | 【 】 |
発生要因-システムの不備 | 【 】 |
発生要因-連携不適切 | 【 】 |
発生要因-勤務状態 | 【 】 |
発生要因-医療用具 | 【 】 |
発生要因-薬剤 | 【 】 |
発生要因-諸物品 | 【 】 |
発生要因-教育・訓練 | 【 】 |
発生要因-患者・家族への説明 | 【 】 |
発生要因-その他 | 【 】 |
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【 】 | |
備考【 】 |
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
夜間から不穏状態で経過していた。右上下肢麻痺があるも体動が激しくあり、頻回に体位調整していた。ベッド柵も4本立てて対応していたが、頭側の隙間から転落しているのを発見した。 |
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
脳梗塞で理解力の低下があり、麻痺のために自己では動けず、体位変換を時間毎に実施している。自己でここまで移動できることの評価が出来ていなかった。 |
■実施したもしくは考えられる改善策
ベッド柵の隙間に転落防止用の板を設置して固定した |
■記入方法に関するコメント
具体的内容に関して 患者の年齢、性別、理解レベル、病状、不穏のレベル、発生時間、手術内容、ベッド柵の種類、ベッド柵の位置、ベッドの高さ、左右どちら側に転落したのか、転倒転落アセスメントスコアシートの得点とリスクレベル(但し使用した場合のみ)などを記述すると事故状況をイメージしやすくなります。また複雑な状況で表現しにくい場合は、絵や図を描くと視覚的に把握することができます。 発生要因に関して 内容として看護師が患者の転落に関するアセスメントが不十分だったという内容になっていますが、それだけではないように思えます。発生の要因は以下の点を踏まえたほうがよいでしょう。 ベッド柵そのものの安全性、ベッド柵の隙間の間隔、患者の理解力の程度、直前に体位変換した位置、体位変換時の患者の反応、患者の排泄パターンの状況(トイレに行こうとしたのではないかという推測)、転落した側に何があったかの把握(何かを取ろうとしたのではないかという推測)、不穏の際の看護マニュアルの有無など。 改善策に関して 転落防止用の板の固定はハード面の対策になります。それ以外にソフト面や看護師の観察の視点なども付け加えたほうがよいでしょう。 |
■改善策に関するコメント
事例の改善策に関して 事例ではベッド柵の隙間に転落防止用の板を設置して固定したとありますが、これだけでは隙間を埋めただけであり、他にも転落のリスクは存在しているので改善策としては不十分です。以下の点を踏まえて改善策を考えてください。 患者の特徴に合わせたベッド環境の整備 一般的にベッド柵というものは、布団や毛布、また入眠中の体動時に体がベッドから落ちないように設置するもので、不穏状態の患者をベッドから転落しないようにできるものではありません。それだけに転落防止を考慮したものを設置することを考えなくてはなりません。しかしながら転落防止だけに視点が行ってしまうと、人権やプライバシーを無視した物や、安全性に疑問を感じるような物までも用いることになってしまいます。単に転落防止だけでなく、様々な視点で安全性を考慮した物を用いることが必要です。事例にある転落防止用の板は、安全性に関して病院で承認が得られた物なのでしょうか。それも確認する必要があります。またベッド柵そのものの安全性も確認することが必要です。その場合は院内の基準だけでなく、国内や海外での基準の考慮して、本当にこのベッド柵で安全なのかということを確認してください。また、メーカーと連携し、新たな視点を取り入れた製品開発を行うことも良いでしょう。 患者の行動パターンの把握 何らかの転落防止策を講じたことで転落はしなくなった、しかし患者の不穏状態は変わらないということもあります。それは患者の不穏と転落に何らかの因果関係が生じていることが考えられます。その場合は患者の行動の基にあるニードや行動パターンの分析をしなければなりません。患者はなぜ転落したのでしょうか。何をしようとしたのでしょうか。何をしたかったのでしょうか。トイレに行きたかったのでしょうか、床頭台にある何かを取りたかったのでしょうか、それを明確にしないことには、たとえ転落防止用の柵を強化しても、転落のリスクは変わらないことになります。 看護師の観察の視点 患者は転落するリスクの高い状態です。ベッド柵は必須ですが、ベッド柵をしたからといって転落のリスクが消失するわけではありません。ベッド柵と合わせて看護師の観察を強化することが必要です。それには何を視点に観察をするかということに変化がないといけません。事例ではベッド上での体動には注意が行っていたものの、行動パターンから生じる患者ニードにまでは観察の視点が及んでいませんでした。今後は行動パターンから生じる患者ニードにまで予測を立てておくことが必要です。 抑制帯の使用 事例では身体拘束を行うという発想はありませんが、身体拘束は決して実施してはならないことではありません。患者は不穏状態にあったということを前提に考えてください。不穏状態では患者の行動を予測することがは不可能な場合が多いです。その患者に24時間付き添うわけにはいけません。一定に時間だけ、不穏状態の強い時間帯だけ、身体拘束を行うことも、看護ケアの範囲だと言えます。身体拘束は全身が縛られるという印象を持たれやすいですが、腹部だけに太い抑制帯を巻く方法もあります。精神科病棟や老人病棟での経験のある看護師に相談してみてください。 転落防止センサーの活用 転落防止のためのセンサー機器を活用するもの有効な手段です。患者の衣類につながれた紐が外れるとアラームが鳴るもの、起き上がると赤外線に反応して鳴るもの、ベッドマットの加重の移動によって鳴るものなど様々なものがあります。メーカーと相談してみてください。 |
事例205:(セデーション中の人工呼吸器装着患者の自己抜管) | |
発生部署(入院部門一般) キーワード(チューブ・カテーテル類) | |
■事例の概要(全般コード化情報より)) |
発生月【11月】 発生曜日【金曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【12〜13時】 発生場所【病室】 | |
患者の性別【男性】 患者の年齢【59】 患者の心身状態【薬剤の影響下、その他、人工呼吸器装着中】 | |
発見者【1】 | |
当事者の職種【看護師】 当事者の職種経験年数【3年7ヶ月】 当事者の部署配属年数【3年7ヶ月】 | |
発生場面 | 【その他のドレーン・チューブ類の使用・管理に関する場面】 |
(薬剤・製剤の種類) | 【 】 |
発生内容 | 【自己抜去】 |
発生要因-確認 | 【 】 |
発生要因-観察 | 【観察が不十分であった】 |
発生要因-判断 | 【 】 |
発生要因-知識 | 【 】 |
発生要因-技術(手技) | 【 】 |
発生要因-報告等 | 【 】 |
発生要因-身体的状況 | 【 】 |
発生要因-心理的状況 | 【 】 |
発生要因-システムの不備 | 【 】 |
発生要因-連携不適切 | 【 】 |
発生要因-勤務状態 | 【多忙であった】 |
発生要因-医療用具 | 【 】 |
発生要因-薬剤 | 【 】 |
発生要因-諸物品 | 【 】 |
発生要因-教育・訓練 | 【 】 |
発生要因-患者・家族への説明 | 【 】 |
発生要因-その他 | 【 】 |
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【仮に実施されていた場合、身体への影響は大きい(生命に影響しうる)と考えられる】 | |
備考【 】 |
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
患者さんは人工呼吸器を装着され、体動あり、浅眠状態で、鎮静剤にてコントロール中であった。上肢の動きは時折みられた。 家族の付き添いもあったが、数分間留守をした際、看護師がモニター上SaO2低下にて訪室すると自己抜管されていたのを発見した。Drコールし、再装着となった。 |
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
効果的な鎮静が保たれていなかったと考えられる。 |
■実施したもしくは考えられる改善策
訪室をできるだけ頻回にし、状態を把握する。 家族の付き添いが不在になるときは看護師に声をかけてもらうように協力をお願いする。 |
■記入方法に関するコメント
挿管チューブを自己抜管したその場の現象のみが記載されていますが、自己抜管に至った経緯がわかりません。挿管されていた期間、病名、術式、意識状態、使用されていたセデーションの薬剤名・容量などの情報が記載されていると、起きた事象の根本原因のアセスメントが可能になると考えます。根本原因に対して対策を講じない限り、有効な対策とは言えず、再発防止は困難になります。 また、患者の状況から治療過程における譫妄状態と推測されますが、安全管理上のプランがわかりません。看護上患者の身体損傷の可能性がある場合、それを予測して具体的プランをたて、チームで共有して実践することが重要です。その場合チームとは医師、看護師および家族となります。家族の付き添いもあったがと記載されていますが、家族が付き添う目的が不明確です。患者の精神的支援のための付き添いなのか、危険防止のため監視が目的で付き添っているのか位置付けがはっきりしません。後者であれば看護師と家族の連携をどのようにされていたのでしょうか。 状況から患者を一人にした時間帯に自己抜管が起きていることから、看護管理上の問題と考えます。発生要因−勤務状態が多忙であったと記載されていますが、多忙の中身とこの事例との関係性がはっきりしません。 以下のような具体的で詳細な内容が記載されていると、患者の状態や患者を取り巻く環境をふまえて、看護としてどうすべきところが実際にはどうであったかが浮彫りになり、曖昧ではない、具体的な本当の改善策を導くのに有効でしょう。
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■改善策に関するコメント
治療過程でストレスフルな状態が続くことによって、一時的にせん妄状態が発生することがあります。せん妄を引き起こす要因は、治療内容、処置などの外的要因と患者の年齢、ストレス−コーピングスタイルなどの内的要因が考えられます。従って治療前に上記の情報を収集し、チームでアセスメントを行い、治療過程でせん妄状態は起きることを前提に、予測した計画を立案しておく必要があります。また立案した計画は、事前に患者および家族と共有しておくことが重要です。 人工呼吸器装着中の患者の看護 呼吸管理が必要な患者に装着されるわけですから、自己抜管は避けなければなりません。そのためには、人工呼吸器装着中の患者の標準的な看護を組織として示す必要があります。
・「精神科医からみた術後せん妄の診断と治療」消化器外科NURSING vol.4 No6 :546-554、 1999,水野雅文、鹿島晴雄 ・「米国精神医学会治療ガイドライン:せん妄」、American Psychiartic Association、医学書院、2000 人工呼吸器装着中の看護の講習会 人工呼吸器装着中の患者の観察項目や体位変換方法、吸引方法など、看護の規準に沿って実践されるためには、教育・研修を行うことも有効的です。その場合、クリティカルケア領域の看護師の活用(救急看護認定看護師、重症集中ケア認定看護師の活用)をすることも方法の1つと考えます。 人工呼吸器装着中の患者への看護基準・手順の策定と個別の看護計画への反映 先に述べた学習の成果は、一般化された知識として個々のスタッフの認識の中に留めるのではなく、日常の業務の中に反映できるようにしたいものです。そうでなければ、せっかくの看護師の知識も患者に活かされるとは限らず、患者への看護の質は保証されないからです。看護基準・手順・マニュアルなどの中に、どのようにしてトラブルの発生を予見するのか、患者の特性や使用される鎮静剤などにより、具体的にどんな頻度で、何を観察し、どんな兆候があればどのような対処をするのかを明示して、個々の看護師の判断や行動を支援できるものにすることが必要です。そうすれば、個々の患者の看護計画の中に、その患者固有の条件を加味した具体的な行動計画、すなわち、その患者の「自己抜管」予防のために、何時、誰が、何を、どのように観察・実施するのかが提示され、個々の患者へのケアを確実なものにしていくと考えられます。また、患者自身の理解と協力が不可欠ですから、人工呼吸器装着が予定されている患者には、事前の十分なインフォーム・ド・コンセントが重要であることは言うまでもありません。標準的なケアとして、患者や家族にどんな説明をするのかについても基準を設けておくと良いでしょう。 【参考資料】 ・「治療薬マニュアル2003」、高久史麿監修、医学書院 ・「呼吸ケアマニュアル」、日野原重明総監修、学研、1996 ・「クリティカルケアを必要とする人の看護」、深谷智恵子他編集、中央法規、1996 看護業務実施環境の整備 このできごとの背景には、“常時観察が必要な患者のそばに居られなかった”看護側の事情があります。そのできごと発生前後の担当看護師の行動を時間経過にそって詳細に分析し、複数の業務を同時に進行していく際の優先順位の判断の妥当性を見ていくことも必要でしょう。また、同時に、他のチームメンバーは同時期にどのような行動をとっていたのか、メンバー間のコミュニケーションやサポートは効果的であったか、チームとしての支えあいは妥当であったのかを検証していくことが大切です。さらには、入院患者の特性や患者の重症度や看護必要度と、看護体制やメンバー構成、メンバーの看護実践応力などを総合的に捉えて、看護の質を保証していくための看護体制の妥当性を評価していくことも重要です。そこから、看護体制のあり方や、勤務体制の効果的な組み方、チーム内での有効なコミュニケーションのとり方、少人数体制での効果的なサポートの方法などが、具体的に導き出されると思います。 【参考資料】 ・「病棟から始めるリスクマネージメント」、嶋森好子他、医学書院、2002 |
事例273:(カヌラ使用時の接続不良) | |
発生部署(入院部門一般) キーワード(酸素吸入、チューブ・カテーテル類) | |
■事例の概要(全般コード化情報より)) |
発生月【10月】 発生曜日【木曜日】曜日区分【平日】発生時間帯【8時〜9時】 発生場所【病室】 | |
患者の性別【女性】 患者の年齢【37】 患者の心身状態【意識障害、上肢障害、下肢障害、歩行障害、床上安静】 | |
発見者【3】 | |
当事者の職種【看護師】 当事者の職種経験年数【1年7ヶ月】 当事者の部署配属年数【1年7ヶ月】 | |
発生場面 | 【酸素療法機器】 |
(薬剤・製剤の種類) | 【 】 |
発生内容 | 【危機の点検管理ミス】 |
発生要因-確認 | 【確認が不十分であった】 |
発生要因-観察 | 【 】 |
発生要因-判断 | 【 】 |
発生要因-知識 | 【 】 |
発生要因-技術(手技) | 【 】 |
発生要因-報告等 | 【 】 |
発生要因-身体的状況 | 【 】 |
発生要因-心理的状況 | 【 】 |
発生要因-システムの不備 | 【 】 |
発生要因-連携不適切 | 【 】 |
発生要因-勤務状態 | 【 】 |
発生要因-医療用具 | 【 】 |
発生要因-薬剤 | 【 】 |
発生要因-諸物品 | 【 】 |
発生要因-教育・訓練 | 【 】 |
発生要因-患者・家族への説明 | 【 】 |
発生要因-その他 | 【 】 |
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【間違いが実施されたが、患者に影響がなかった事例】 | |
備考【 】 |
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
カヌラで酸素を投与していたが、カヌラのチューブが短く、流量計との接続もあっていなかった。体位変換の時には接続が外れるためテープで固定していた。主治医が訪室時チューブが外れており、酸素は実際には投与されていなかった |
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
カヌラのチューブが短く、少しの体動でも外れやすい状況であった。接続が合わない物品を使用していた |
■実施したもしくは考えられる改善策
カヌラのチューブを延長した。接続が合う物品を補充する。 |
■記入方法に関するコメント
具体的な内容から現状を把握できますが、よりわかりやすくするために、患者と流量計カヌラの位置、距離をもう少し細かく書きましょう。また、カヌラについての記述だけではなく、患者の状態(与薬、精神状態、意識障害等)についての情報も事例を分析する上で役に立つ情報です、出来る限り情報を書きましょう。 |
■改善策に関するコメント
カヌラのチューブを延長したり、接続が合う物品を補充する事も大事ですが、接続方法、患者への装着方法について少し対策を考えましょう。
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事例314: | |
・ |
(術後譫妄状態の患者による胃管カテーテルの自己抜去) |
発生部署(入院部門一般) キーワード(チューブ・カテーテル類) | |
■事例の概要(全般コード化情報より) |
発生月【 月】 発生曜日【 】曜日区分【 】発生時間帯【 】 発生場所【 】 | |
患者の性別【 】 患者の年齢【 】 患者の心身状態【 】 | |
発見者【 】 | |
当事者の職種【 】 当事者の職種経験年数【 年 ヶ月】 当事者の部署配属年数【 年 ヶ月】 | |
発生場面 | 【 】 |
(薬剤・製剤の種類) | 【 】 |
発生内容 | 【 】 |
発生要因-確認 | 【 】 |
発生要因-観察 | 【 】 |
発生要因-判断 | 【 】 |
発生要因-知識 | 【 】 |
発生要因-技術(手技) | 【 】 |
発生要因-報告等 | 【 】 |
発生要因-身体的状況 | 【 】 |
発生要因-心理的状況 | 【 】 |
発生要因-システムの不備 | 【 】 |
発生要因-連携不適切 | 【 】 |
発生要因-勤務状態 | 【 】 |
発生要因-医療用具 | 【 】 |
発生要因-薬剤 | 【 】 |
発生要因-諸物品 | 【 】 |
発生要因-教育・訓練 | 【 】 |
発生要因-患者・家族への説明 | 【 】 |
発生要因-その他 | 【 】 |
間違いの実施の有無及びインシデントの影響度【 】 | |
備考【 】 |
■ヒヤリ・ハットの具体的内容
術後2日目前日も譫妄あり、本日も夜中2時頃より体動激しく起き上がったり不穏行動あり指示のセレネースをインするが効果なし、6時に点滴更新のため準備に行き訪室すると胃管カテーテルを抜去していた。 |
■ヒヤリ・ハットの発生した要因
点滴ルートやドレーンなど多くのチューブが留置され常にはずそうとする行動あり説明や抜去されないような固定はおこなっていた。術後譫妄もあり必要性が理解できない状態であった。 |
■実施したもしくは考えられる改善策
できるだけベッドサイドにいて観察していたが相手チームへも協力してもらいベッドを離れるときはついてもらうべきだった。 |
■記入方法に関するコメント
具体的内容に関して 患者の年齢、性別、理解レベル、病状、譫妄のレベル、発生時間、手術内容、胃管カテーテルの固定状況、2時から6時までの患者の反応及び看護師の行動などを記述すると、事故状況をイメージしやすくなります。また複雑な状況で表現しにくい場合は、絵や図を描くと視覚的に把握することができます。 文中のセレネースをするという表現はわかりにくいです。薬剤量及び筋注・靜注・点滴内混入・内服薬のいずれかを明記する 発生要因に関して 内容として譫妄状態にある患者に対して胃管カテーテルをはずさないように説明したり、自己抜去できないように固定をしたとありますが、詳しい内容の記載がありません。なぜ自己抜去されたかを分析する為には、どのように説明し、どのように固定されたのかを知ることが欠かせません。これらの詳しい記載をお願いします。 また看護師は、術後譫妄に関する知識と対策を周知できていたのでしょうか。患者が理解できなかっただけでは、患者要因だけの対策しか立てられません。ここで看護師も振り返りを行うと、術後譫妄に応じた対策が立てられていたかどうかを検証することができて、再発防止に大いに役に立ちます。 改善策に関して 出来るだけベッドサイドにいて観察していたとありますが、どれくらいの間隔で患者のそばにいたのかを記載してください。レポートでは曖昧な表現は禁物です。また看護体制や夜勤帯での業務状況、多忙な時間帯での観察方法なども記載してもらえると、状況を把握しやすいです。改善策に対するアドバイスとしては、可能な方法であることに尽きます。また事例では看護師の観察にだけ視点が当たっていますが、ハード面や治療内容にも改善を加える必要があります。それらの視点での対策も付け加えてください。 |
■改善策に関するコメント
術後譫妄を引き起こす要因は、手術・処置等の外的要因や、患者の年齢・生活背景などの内的要因が考えられますが、明らかな根拠をもって、特定できるものではありません。従って術前に上記の情報を収集し術後譫妄状態は起きることを前提に、予測した計画を立案しておくことが必要です。立案した計画は、患者および家族と共有しておくことが重要です。 事故の改善策に関して 事例では出来る限りベッドサイドにいて観察するとありますが、果たして可能でしょうか。ベッドサイドにいても他の患者からコールがかかれば行かなければなりません。必要なのは自己抜去しにくい状況を作ることです。夜勤は少ない人数で患者を観察しなければなりません。なぜ患者は胃管カテーテルを抜こうとしたのでしょうか。なぜ患者は譫妄状態・不穏状態になっていたのでしょうか。これらの視点を分析することで有効な改善策が考えられると思います。そのためにはこの分析を看護師だけで任せるのではなく、医師、薬剤師などを交えて検討していくことが必要です。 患者の特徴に合わせた治療環境の調整 術後譫妄を考えた場合に、不穏状態、理解不可能などが考えられます。また精神科疾患の既往のない患者の場合には、周囲から精神疾患を疑われるようなことがあり、自尊感情を傷つけることにもなり兼ねません。その場合には、術前から術後譫妄の説明を行い、それに対する治療方法も合わせて説明し承諾を得ることが必要です。治療としては十分に睡眠が得られる向精神薬の使用、抑制帯を用いた身体拘束の使用などです。 患者の行動パターンの把握 不穏だから胃管カテーテルを抜いたのではありません。胃管カテーテルを不快と感じたから抜いたのです。すべてを譫妄・不穏で処理しないことが大切です。胃管カテーテルは誰もが不快に感じ嫌がるものです。それを先回りして対策を考えます。術後どれくらいで覚醒し、どのくらいの不快感から自己抜去という行為を起こすのかを考えてください。 看護師の観察の視点 術後譫妄で不穏状態にある患者です。様々なリスクが考えられます。その一つ一つに看護師は観察の目を向けなければなりません。譫妄・不穏の状態、患者の覚醒状況、チューブ類の不快の程度、患者の体動の範囲と程度など。術後は様々なハイリスク状態にあるわけですから、その一つ一つに予測を立てておくことが必要です。対策はスタンダードとしてまとめておくことが必要です。 夜勤における対応 夜勤は少ない人数で患者を観察しなければなりません。互いのチームの協力だけでは解決しないでしょう。どのように対応するか、夜勤帯で優先される業務は何か、勤務者の多い日勤帯に移行できる業務はないかなど、業務全般を見直してみることも必要でしょう。 術後譫妄の対策 患者は術後の譫妄状態にあることを前提に考えることが必要です。この事例の場合は治療行為が主体となるために、身体拘束や向精神薬の使用も必然と考えます。またテレビモニターを設置して行動を監視することも選択できます。看護師がどれだけ観察の目を向けても、チューブ類の自己抜去のような不快感による事故は避けようがありません。ましてや患者は譫妄状態であり、意思の疎通が図れない状態です。どこかで割り切って治療を優先させることが必要だと考えます。 術後譫妄の対策は看護師だけで考えることではありません。その病態を病理学・生理学・薬理学的観点で捉えて、多くの関係者を集めて分析し対応策を考えることが必要です。臨床研究又は院内プロジェクトなどで取り上げて、効果的な対策を考えていくことが大切です。 |
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