目次  前ページ 

V 食品関係

1 食品に関する基準の策定

(1)食品添加物の指定及び規格基準の改正について

 平成12年4月アセスルファムカリウムについて新たに添加物として指定した。また、平成12年6月に指定添加物の削除及び整理を行ったとこ ろである。これにより、現在、厚生労働大臣が定めている添加物は現在338品目となっている。平成12年12月には電解水(強酸性電解水、弱酸性 電解生成水溶液)の新規指定及びステアロイル乳酸カルシウムの使用基準 改正について食品衛生調査会に諮問し、その指定の可否について、引き続き薬事・食品衛生審議会で審議が行われる予定である。

(2)食品添加物の一日摂取量について

 食品添加物の安全性確保対策の一環として、市販食品の分析による食品添加物一日摂取量実態調査(国民栄養調査を基礎とするマーケット・バスケット調査方式)を実施してきたところであり、食品添加物の摂取量は、安全性の観点から問題ないことが報告されている。平成11年度においては、この調査とは別に、幼児、老人等の年代差等を視野に入れた市販食品の食品添加物一日摂取量調査を実施し、年代毎の摂取量も同様に安全性の観点から問題ないことを確認したところである。
 今後とも調査の実施等についてご協力方お願いする。

(3)既存添加物規格実態調査について

 既存添加物については、安全性再評価を行ってきたところであるが、規格についても、より充実すべく検討を行うこととしており、平成11年4月に第7版食品添加物公定書を公表し、60品目・3製剤について規格を設定したところである。平成12年度予算において、規格実態調査を添加物製造業者・輸入業者を対象に行っているところであり、今後も引き続き、規格の設定を行うこととしている。

(4)食品添加物使用基準・食品分類の総点検事業について

 食品添加物の基準は、安全性を確保する観点から定められており、必要に応じて対象食品等の使用基準を定めているところであるが、食品の多様化、保健機能食品制度の新設(予定)、国際基準の作成等により、現在の食生活における食品分類が従来の食品分類と一致しない点が見られるようになってきている。
 このような変化に対応するため、平成13年度予算(案)において食品添加物基準策定費を計上したところであり、食品分類や使用基準について検討を行うこととしているので、調査の実施等についてご協力方お願いする。

(5)残留農薬基準の設定及び見直しについて

 平成12年12月現在、199農薬の農産物中に残留する許容基準が設定されている。
 平成12年9月26日、DBEDC等16農薬の農産物中に残留する許容基準を設定すること及びアセフェート等17農薬の農産物中に残留する許容基準を見直すことについて、厚生大臣より食品衛生調査会に諮問した。
 残留農薬基準の設定及び見直しについては、平成10年8月7日の食品衛生調査会から厚生大臣あて提示された「残留農薬基準設定における暴露評価の精密化に関する意見具申」に基づき行っているところである。
 この意見具申の中では、幼小児等の集団ごとの摂食パターンや作物残留試験等の結果に基づく科学的な暴露量試算方式(日本型推定一日摂取量方式)の採用、残留基準値の定期的な見直し等が提言されている。
 今後とも農薬取締法に基づき新規に登録された農薬等について、引き続き基準策定を図ることとしている。

(6)食品中の残留農薬検査結果について

 厚生労働省では地方公共団体において実施されている残留農薬検査結果について、検疫所の検査結果等と併せて毎年公表している。平成10年度の検査結果について本年度中に取りまとめて公表する予定である。
 今後とも検査結果の集計資料の提供について、より一層の御協力をお願いする。

(7)農薬の一日摂取量の調査について

 国民が日常の食事を介してどの程度の農薬を摂取しているかを把握するために、残留農薬の一日摂取量調査(国民栄養調査を基礎とするマーケットバスケット調査方式)を実施している。この調査は、実際の食生活における農薬の摂取量を把握するものであり、食品の安全性を確保する上で重要と考えており、平成13年度においても調査を行うこととしているので、関係者の御協力をお願いする。

(8)腸炎ビブリオ対策について

 食品衛生調査会乳肉水産食品部会では、平成10年に急増する腸炎ビブリオによる食中毒防止対策を検討するため、水産食品衛生対策分科会を設置し腸炎ビブリオによる食中毒の現状について調査・検討を行い、平成12年5月にその対策について報告書を取りまとめ、食品衛生調査会より厚生大臣に対し意見具申した。
 この報告書について、本年夏に厚生省及び都道府県等は夏期食品一斉取締り及び食品汚染実態調査を実施し、水産食品における腸炎ビブリオの汚染実態などの結果を取りまとめた。また、平成12年10月、厚生大臣から食品衛生調査会に対し、腸炎ビブリオ食中毒防止対策のための水産食品に係る規格及び基準の設定について諮問が行われた。
 食品衛生調査会乳肉水産食品部会では、平成12年5月に取りまとめた腸炎ビブリオ食中毒対策の報告書と本年夏に厚生省他が実施した汚染実態調査結果、水産業界からの意見聴取結果をもとに、11月28日、腸炎ビブリオ食中毒防止対策のための水産食品に対する規格基準案をとりまとめた。
 具体的には、生食用魚介類加工品や煮かに(ゆでがに)に新たに腸炎ビブリオの成分規格、加工基準、保存基準を設定するとともに、規格基準が設定されているゆでだこ、冷凍食品などに新たに腸炎ビブリオの成分規格を設けることとしており、所定の手続を経た上で、告示改正を行うこととしている。
 なお、今後も、必要な調査研究を実施することとしているので、衛生研究所も含め各自治体の協力をお願いする。

(9)残留動物用医薬品の基準設定について

 家畜や養殖魚介類の生産段階において、疾病の治療や生産効率の向上のために使用されている動物用医薬品等のうち、抗生物質及び合成抗菌剤については、食品衛生法第7条に基づき、一律に食肉、魚介類等に含有してはならないと規制してきた。
 しかしながら、近年、これらの物質が残留した食品を摂取することによる人の健康への影響について、科学的な評価が国内外で確立したものがあり、また、国際的にも動物用医薬品の最大残留基準値の設定の作業が進行中である。
 また、抗生物質や合成抗菌剤以外の動物用医薬品であるホルモン剤や内寄生虫用剤については残留基準が設定されていないため、その整備を行うことが課題となっている。
 このため、安全性評価のために必要な資料が整備された動物用医薬品等について、食品衛生調査会の審議を経て、順次残留基準の設定を行っており、これまでに、のべ18品目の動物用医薬品等について残留基準値を設定している。
 今後も、安全性評価の資料が整ったものから、順次、科学的根拠に立脚した残留基準値の設定を進めて行く予定である。

2.保健機能食品制度

 我が国では、国民の健康に対する関心が高まる中、政府の規制緩和推進計画及び市場開放問題苦情処理推進会議(OTO)報告に対応して、これまで医薬品として使用されてきたビタミン、ミネラル等について、食品としてより自由な流通ができるよう、食薬区分を見直すとともに、いわゆる栄養補助食品の類型化等その取扱いについて検討してきたところである。
 その結果、平成12年3月27日には、「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会」報告書(以下「栄養補助食品報告書」という。)において、栄養補助食品の意義・目的、定義、範囲、名称、表示、いわゆる健康食品の類型化等について取りまとめられたほか、同年4月5日には、医薬品の範囲に関する基準の一部が見直されたところである。
 また、平成12年11月20日には栄養補助食品報告書を踏まえ、いわゆる健康食品のうち、一定の条件を満たすものを保健機能食品と称する形で、新しい保健機能食品の制度化に向けた詳細な規格基準、表示基準等をまとめた「保健機能食品の表示等について」と題した報告書が食品衛生調査会の合同部会において取りまとめられたところである。
 現在、報告書についてパブリックコメント(12月22日募集終了60件)、WTO通報により内外から意見を求めており、13年度から保健機能食品制度として施行できるよう準備を進めているところである。

3 検疫業務

(1)輸入食品の監視体制について

ア 近年、国民の食生活の多様化、食品の国際流通の進展等に伴い、食品の輸入件数は平成11年に約140万件となり、この10年間で約2.1倍となっている。また、我が国の食料需給率について、食料供給熱量(カロリーベース)でみるとその約60%は海外に依存しており、輸入食品の安全性を確保することは、国民の健康を守るうえで重要な課題となっている。
 このような社会情勢の変化に対応するため、輸入される食品等について、食品衛生法違反の蓋然性が高い輸入食品等に対する検査命令を実施し、その他の食品等については年間計画に基づくモニタリング検査を実施することによりその安全性を確保している。また、輸入手続の迅速化を図る観点からコンピュータを利用した届出等を可能とするため、輸入手続の電算化システム(輸入食品監視支援システム)を稼働させるとともに、大蔵省の通関情報処理システムとのインターフェイス化を実施しており、さらに、平成10年3月23日から、オーストラリア政府との間で、食肉に関する衛生証明書の電送化を本格的に開始し、より一層の輸入手続の電算化の推進を図っている。
 現在のところ、輸入食品監視支援システムの利用率は約88%となっており、輸入届出の大部分が電送化されているところである。
 厚生労働省においては、従来から、検疫所における輸入食品の監視体制について充実強化を図ってきたところであるが、平成13年度においても、次の措置を講ずることとしている。

(ア)輸入時検査の実施にあたっては、輸出国の状況、過去の違反事例等を踏まえ、個々の食品の食品衛生法違反の蓋然性に応じた計画的かつ科学的な検査を実施することが最も重要であることから、違反の蓋然性が高い食品については検査の命令を行うとともに、その他の食品に対するモニタリング検査の充実、強化を図る。

(イ)輸入米について、引き続き残留農薬等の検査を実施し、その安全確保対策に万全を期する。

(ウ)輸入手続きに関し、輸入食品監視支援システム(FAINS)と大蔵省の通関情報処理システムとのさらなる電算化の充実を図る。

(エ)平成13年4月から施行される遺伝子組換え食品の安全性審査の法的義務化に伴い、未承認のものが輸入されていないこと等を確認するためのモニタリング検査を実施する。

イ 検疫所で発見された輸入食品の違反事例については、毎月、都道府県等に対しその情報を連絡しているところであるが、各都道府県における監視業務の実施に当たっては当該情報についても留意願いたい。
 また、都道府県等において輸入食品につき違反等が発見された場合にあっては、早急に厚生労働省及び関係都道府県等に連絡願いたい。

(2)検疫感染症患者の隔離・停留に係る委託について

 検疫所において検疫感染症の患者が発見された場合の隔離・停留については、検疫法により、原則として、一類感染症にあっては、厚生労働大臣が指定した特定感染症指定医療機関又は都道府県知事が指定した第一種感染症指定医療機関に、コレラの患者にあっては、特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関若しくは第二種感染症指定医療機関に入院を委託して行うこととなっている。
 このため、各検疫所においては、第一種感染症指定医療機関と委託契約を締結し、患者等の隔離・停留を実施することとなるが、いまだ指定されていない道府県が多数みられる状況にある。
 昨今の船舶による国際輸送の増大および国際定期便や国際チャーター便の就航など地方空港の国際化に伴い、検疫感染症の国内侵入の可能性が高まっていることから、第一種感染症指定医療機関の早期指定ならびに各検疫所と第一種感染症指定医療機関との委託契約の締結に関して、特段のご配慮、ご協力方お願いをする。
 また、第一種感染症指定医療機関が指定されていない道府県に所在する検疫所では、一類感染症患者発見時の受け入れ先の確保が困難な状況となっているため、第一種感染症指定医療機関を指定している都府県にあっては、他の都道府県に所在する検疫所から、当該感染症指定医療機関に対し、委託契約に関する協議等があった場合には、引き続き、特段のご配慮、ご協力をお願いする。

4 食品の安全性確保の推進

衛生管理対策の推進

(1)塩化ビニル製手袋の食品への使用について

 平成11年度の調査研究等において、塩化ビニルの可塑剤であるフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)が食品中から検出され、その原因として、塩化ビニル製手袋の食品への使用が考えられたことから、平成12年6月の食品衛生調査会毒性・器具容器包装合同部会において審議が行われた。その結果、当面の緊急措置として可塑剤としてフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)を含有する塩化ビニル製手袋の食品への使用を避けることが望ましいとされたところであるので、今後とも関係営業者団体等への周知の徹底をお願いする。

(2)自主的な管理体制の強化について

 食品衛生責任者の設置、食品衛生指導員の活動等を通じた営業者自らによる衛生上の管理、指導体制の推進については、今後ともご配慮をお願いする。
 なお、厚生労働省としては引き続き(社)日本食品衛生協会に対し食品衛生指導員の巡回指導や業種別自主管理指導等の食品衛生指導員活動事業等について支援していくこととしている。
 また、地域における食品衛生の向上を目的に、食品衛生指導員制度が平成7年5月から施行されているところであるが、関係団体と十分調整のうえ円滑な実施についてよろしくお願いする。
 輸入食品関係業者の自主的衛生管理の推進を図るため、(社)日本輸入食品安全推進協会が輸入食品衛生管理者養成事業を実施しており、平成13年度においては、東京、大阪において講習会を開催する予定である。
 ついては、同協会が行う本事業について、関係営業者への周知に特段の御配慮をお願いするとともに、事業の実施に当たり御協力をお願いしたい。

(3)食材の汚染実態調査について

 食中毒を予防するためには、調理施設等における衛生管理の徹底に加え、流通段階における汚染食品の発見及び改善措置が必要である。そのため、近年発生の増加傾向がみられる腸管出血性大腸菌及びサルモネラ等について、全国の市場等で採取した食材の汚染実態調査を平成9年度より定期的に実施している。本年度は全国19の自治体に御協力いただき、昨年7月から本年1月までの期間で、生食用野菜、ミンチ肉、生食用牛レバー及び生食用魚介類加工品等を対象に調査を行っているところである。調査結果については本年度中の公表を予定しており、監視指導の参考としていただきたい。
 なお、来年度も本事業の継続を予定しており、引き続き協力をお願いいたしたい。

(4)社会福祉施設等給食の一斉点検について

 社会福祉施設等(社会福祉施設及び老人保健施設。以下同じ。)には、乳幼児や老人などの食中毒の危険性の高い人々が多く利用している。このため、社会福祉施設等における給食の改善点を明らかにして、今後の衛生管理の向上に資するため、現在、一斉点検を実施中である。この結果に基づき、引き続き社会福祉施設等給食施設に対する改善指導を宜しくお願いしたい。
 なお、学校給食施設の一斉点検については本年度をもって終了とするが、改善が不十分であった施設に対しては引き続き指導をお願いしたい。

(5)食肉、食鳥肉の安全確保について

 食肉の衛生確保に関しては、平成8年の腸管出血性大腸菌による食中毒の多発を踏まえ、と畜場法施行令及びと畜場法施行規則の改正を行い、とちく場の構造設備基準及び処理の衛生管理基準の強化を行ったところである。既存の牛又は馬を処理するとちく場については、昨年3月に基準適用の経過期間が終了し、全国の全てのとちく場の適合が確認された。
 また、豚、めん羊又は山羊を処理するとちく場については、平成14年3月に経過期間が終了するため、各自治体におかれては、とちく場の設置者、管理者又はとちく業者に対して、政省令への適合に向けた適切な指導につき、引き続き御尽力をお願いする。政省令の基準に不適合かつ未だ改善計画がないとちく場を管轄する自治体におかれては、さらに指導の徹底をお願いする。
 なお、公営のとちく場においては、保健衛生施設・設備整備国庫補助事業により、施行令の改正により設置が義務づけられた洗浄・消毒等の設備費用の1/2を補助することとしている。また、民間のとちく場においては、施行令の改正により設置が義務づけられた設備について、固定資産税の軽減措置が図られていることから、これらを積極的に活用するよう関係者への周知及び指導もあわせてお願いする。
 食鳥肉の衛生確保に関しては、「食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律」に基づく食鳥処理場の施設設備及び衛生管理基準の遵守について、食鳥処理業者等に対する厳正な監視指導等に一層のご努力をお願いする。
 特に、認定小規模食鳥処理場には食鳥検査員が常駐しておらず、本年度においても処理羽数について虚偽の報告の事例があったことも踏まえ、処理羽数、食鳥処理衛生管理者の配置状況、確認の状況等について監視指導の厳正な実施をお願いする。
 一方、食鳥検査については、関係自治体のご努力により、早朝、時間外等の検査実施の弾力化に種々御配慮をいただいているところであるが、引き続き要望がなされているほか、昨年3月の総務庁の規制行政に関する調査に基づく勧告内容も踏まえ、昨年7月、食鳥検査における民間獣医師の活用をお願いしたところであり、今後とも特段の御配慮をお願いする。
 また、食品衛生調査会食中毒部会(平成12年2月25日開催)において、カンピロバクター食中毒防止対策に関し、食鳥肉の総合的な衛生対策を構築する必要があるとの提言がなされ、研究班を設置して平成12年度から鶏肉とカンピロバクターに関するリスクアセスメントを行っているところである。
 なお、本年1月6日より、食鳥検査に係る指定検査機関の指定及び指導、食鳥処理衛生管理者講習会の指定等の事務については、地方厚生局で実施することとなったので、御了知願いたい。

(6)HACCPシステムによる衛生管理の推進について

 HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)による衛生管理方法に基づく総合衛生管理製造過程による食品の製造等の承認制度については、平成8年5月より施行されているところである。
 この承認制度の対象食品には乳・乳製品、食肉製品、容器包装詰め加圧加熱殺菌食品、魚肉ねり製品及び清涼飲料水が指定されており、現在までに、乳・乳製品738件、食肉製品178件、魚肉ねり製品19件、容器包装詰加圧加熱殺菌食品16件の承認がなされている。
 HACCPの推進にあたっては、行政の役割として、営業者にとって参考となる食品ごとの一般的なHACCPモデルの作成・提示や営業者に対する統一的かつ的確な助言・指導、承認後の監視が必要不可欠である。厚生労働省においては、各都道府県等の食品衛生監視員を対象としたHACCPに関する講習会をブロック毎に開催しているところであり、今後とも、担当職員の講習会への派遣について御協力をお願いする。
 今般の雪印食中毒事件を契機として、本制度の承認審査の充実・強化を図るため、承認審査の見直しについて検討し、本制度の運用、承認審査等について助言を行う評価検討会の設置、厚生労働省担当官による全申請施設に対する現地調査の実施、申請資料の追加等の実施要領の改定を行ったところである。
 また、平成13年1月より設置された地方厚生局に担当職員を配置し、承認審査、指導及び監督の実施体制の強化を図っているところであるが、今後も各都道府県等に対し、各地方厚生局が実施する現地調査への食品衛生監視員の同行等を依頼することがあるので御協力をお願いする。
 なお、平成10年7月に施行された「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法」は、製造過程の管理の高度化を図ることが容易となる施設整備を金融・税制面で支援するものであり、これを行おうとする事業者に対しても、必要に応じて、適切な指導、助言等をお願いする。

(7)乳及び乳製品の衛生確保について

 昨年6月末に雪印乳業(株)大阪工場製造の低脂肪乳等を原因とする食中毒事件が発生、その有症者は14,780名に達し、近年例をみない大規模食中毒事件となった。低脂肪乳からは、黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンA型が検出されたことから大阪市は雪印乳業(株)大阪工場を営業停止処分とした。
 また、低脂肪乳等の原料に使用されていた同社大樹工場製造の脱脂粉乳からエンテロトキシンA型が検出され、北海道は当該脱脂粉乳の製造に関連した停電の発生、生菌数基準違反の脱脂粉乳の使用、脱脂粉乳の保存サンプルからのエンテロトキシンA型の検出等を公表し、大樹工場の営業禁止、脱脂粉乳の回収を命令した。
 原因究明ついては、厚生省・大阪市原因究明合同専門家会議を開催し検討を行い、平成12年12月20日に最終報告をとりまとめ、その概要を公表した。
 なお、その骨子は以下のとおりである。

(1)本食中毒事件の病因物質は、多くの有症者の潜伏期間が短く、嘔吐又は嘔気、下痢を主徴としていること、多くの有症者が喫食した低脂肪乳から黄色ブドウ球菌の産生するエンテロトキシンA型が検出されていることから同毒素と判断される。

(2)原因食品については、雪印乳業(株)大阪工場で製造された「低脂肪乳」に加えて、エンテロトキシンA型が検出された「のむヨーグルト毎日骨太」、「のむヨーグルトナチュレ」も疑われる。

(3)雪印乳業(株)大阪工場の調査の結果、6月に同工場で使用された脱脂粉乳のうち同社大樹工場で製造された脱脂粉乳の特定のロットからのみエンテロトキシンA型が検出され、当該ロットの脱脂粉乳が「低脂肪乳」、「のむヨーグルト毎日骨太」及び「のむヨーグルトナチュレ」に使用されたことが確認又は推定されたことから、本脱脂粉乳が本食中毒の原因であったと判断される。

(4)同社大樹工場の調査の結果、4月10日製造の脱脂粉乳製造時に再利用された4月1日製造の脱脂粉乳の製造過程において発生した停電の際に,生乳中又は製造ラインに滞留したライン乳中に由来する黄色ブドウ球菌が増殖し、エンテロトキシンA型を産生したと考えられる。

(5)黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンA型産生は、クリーム分離工程又は濃縮工程のライン乳タンクで起こったと考えられる。これらの工程における汚染要因については前者が、増殖要因については後者が合理的な説明が可能であるが、調査において確認された事実からはこれ以上の解明は困難と考える。

 さらに、最近、乳等における異味異臭等の苦情事例や成分規格違反事例が多く発生していることから、このような事例を未然に防止するため、都道府県等におかれては、乳処理施設等の衛生確保に係る自主管理の徹底について、改めて営業者に対し指導されるようお願いする。

(8)ダイオキシン対策について

 ダイオキシンは、主に廃棄物の焼却等で非意図的に発生する強い毒性を示す化学物質で、難分解物質であるとともに、環境中の生物及び人体の脂肪組織に蓄積することが知られており、健康影響を避ける上で、暴露量を最小限にする必要がある。
 ダイオキシンの人体への取り込みについては、その90%が食品由来とされている。このため、ダイオキシン汚染の食品別の汚染状況を把握するための汚染実態調査及びトータルダイエット方式による標準的な食事から摂取されるダイオキシン量の調査を実施している。
 ダイオキシン摂取量調査については、平成8年から開始し、平成9年度及び平成10年度調査では10地区、平成11年度では16カ所で実施した。これらの結果は、結果が判明した時点で公表しており、今後とも継続して実施し、摂取及び汚染の実態把握に努めることとしている。
 平成11年度のダイオキシン摂取量調査では、2.25pgTEQ/kg体重/日であった。これは、耐容一日摂取量の4pgTEQ/kg体重/日を下回っているが、偏りのないバランスの良い食生活が重要であり、これを勧めているところである。
 また、平成10年度の調査では、昭和52、57、63、平成4、7及び10年度にサンプリングされた保存試料について測定したところ、昭和52年から平成10年度までにダイオキシンの摂取量は約1/3に減少していることが明らかとなっており、食品からの摂取量は長期的には減少傾向にあることが確認されている。

(9)組換えDNA技術応用食品等の安全性確保について

(1)組換えDNA技術応用食品等の安全性審査の法的義務化

ア 組換えDNA技術応用食品・食品添加物(以下「遺伝子組換え食品」という。)については、これまで、生活衛生局通知による「安全性評価指針」に基づき、厚生省の食品衛生調査会において個別に審査して安全性確認を行ってきたところであるが、近年、遺伝子組換え食品の国際的な広がりや新たな遺伝子組換え食品の開発が予想されること等から、平成13年4月から、安全性審査の制度を食品衛生法に基づく規格基準に規定し、法律上の義務とした。

イ このため、これまで安全性評価指針に基づき安全性確認を行った又は新規に申請のあった遺伝子組換え食品について、新たな審査基準「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査基準」に基づき、薬事・食品衛生審議会の意見を聴き、個別の品種・品目ごとに安全性審査を行い、この手続きを経た旨を公表することとしている。平成13年4月からは、公表されていない遺伝子組換え食品又はこれを原材料に用いた食品は、輸入、販売等が食品衛生法上できないこととなる。

ウ 現在、29品種の食品及び5品目の添加物について、安全性審査を行い、この手続きを経た旨を公表する予定で作業中である。

(2) 食品衛生法に基づく表示について

 遺伝子組換え食品の表示については、消費者の選択に資する観点から、農林水産省が品質表示基準として、平成13年4月から表示の義務化を行うこととしている。
 一方、食品衛生法に基づく表示についても、平成13年4月からの安全性審査の法的義務化と密接に関連することから、品質表示基準と同様に平成13年4月から表示の義務化を行うこととしている。

(1) 分別生産流通管理が行われた遺伝子組換え食品の場合
→「遺伝子組換え食品」である旨(義務表示)

(2) 遺伝子組換え食品及び非遺伝子組換え食品が分別されていない場合

→「遺伝子組換え不分別」である旨(義務表示)
(参考)分別生産流通管理が行われた非遺伝子組換え食品の場合
→「非遺伝子組換え食品」である旨(任意表示)

(3)コーデックス委員会バイオテクノロジー応用食品特別部会について

 食品の国際規格を作成する国際政府間機関であるFAO/WHO合同食品規格計画食品規格委員会(CODEX委員会)として、バイオテクノロジー応用食品特別部会については、わが国が議長国として、遺伝子組換え食品の安全性評価等に関する国際指針の作成を進めているところであり、本年3月25日から29日に第2回特別部会を開催する予定である。

食中毒事故対策

(1)食品保健総合情報処理システムの運用について

 食品保健総合情報システムは、平成7年より試行的に運用されていたものであるが、本年度、自治体の利便性をさらに図り、活用度を高めるためにシステムを新たに構築したところである。本システムは、厚生労働省、国立感染症研究所、地方自治体本庁、保健所を厚生行政情報処理システム(WISH)のネットワークを使用し、オンラインにて結び、食中毒情報等(食中毒発生速報、食中毒事件票、事業結果等)の情報を相互利用するものである。本システムの活用により、現在ファックス等を利用して行っている自治体と厚生労働省間の情報交換が迅速化され、散発的集団発生事例(diffuse outbreak)の早期探知や食中毒の発生の未然防止、発生後の被害拡大防止に役立つと期待されるところである。都道府県等におかれては本システムの積極的活用及び情報処理体制の整備に特段のご努力をお願いする。

(2)食中毒処理要領等の改正について

 食中毒事故については、食中毒処理要領(昭和39年7月23日環発第214号)に基づき措置いただいているところであるが、平成13年1月6日の組織改編による食品保健部の発足及び地方厚生局における食品衛生担当課の設置並びに食中毒事故発生時の関係部局との連携強化の重要性及び被害拡大防止のための積極的な公表の必要性等により、今般、食中毒処理要領を改正したところである。本改正の内容を御了知の上、食中毒事故に迅速かつ適切に措置されるようお願いいたしたい。

5.その他

(1)「食品の安全・衛生に関する行政監察」への対応について

 平成11年8月より旧総務庁行政監察局により、食品衛生行政を対象に行政監察が実施され、平成12年10月に勧告がなされたところである。その勧告においては、(1)食中毒事件の疑いがある段階での医師の届出の励行及び病院給食施設の衛生管理に関しての学校給食施設等に準じた監視指導の実施を都道府県等に対して指導すること、並びに(2)総合衛生管理製造過程承認施設に対して厚生省は都道府県等と連携して厳正に監視指導を行うこと等が指摘されたところであるので、都道府県等におかれてもご了知の上、業務の参考とされたい。
 また、併せて、輸入食品に係る違反事例については、厚生労働省へ報告を励行されるようお願いする。


トップへ
目次  前ページ