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2018年5月31日 第2回「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会 議事録

健康局健康課栄養指導室

○日時

平成30年5月31日(木)13:00~15:00


○場所

厚生労働省共用第6会議室


○出席者

構成員<五十音順・敬称略>

雨海 照祥 (武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科 教授)
伊藤 貞嘉 (東北大学大学院医学系研究科 教授)
宇都宮 一典 (東京慈恵会医科大学内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授)
勝川 史憲 (慶応義塾大学スポーツ医学研究センター 教授)
木戸 康博 (金沢学院大学人間健康学部健康栄養学科 教授)
葛谷 雅文 (名古屋大学大学院医学系研究科 教授)
斎藤 トシ子 (新潟医療福祉大学健康科学部健康栄養学科 教授)
櫻井 孝 (国立研究開発法人国立長寿医療研究センター もの忘れセンター長)
佐々木 敏 (東京大学大学院医学系研究科 教授)
佐々木 雅也 (滋賀医科大学医学部看護学科基礎看護学講座・滋賀医科大学医学部附属病院栄養治療部 教授)
柴田 克己 (甲南女子大学医療栄養学部医療栄養学科 教授)
土橋 卓也 (社会医療法人製鉄記念八幡病院 理事長・病院長)
横手 幸太郎 (千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学 教授)
横山 徹爾 (国立保健医療科学院 生涯健康研究部長)

事務局

正林 督章 (健康課長)
相原 允一 (健康課長補佐)
清野 富久江 (栄養指導室長)
塩澤 信良 (栄養指導室長補佐)

○議題

(1)食事摂取基準(2020年版)の策定方針について
(2)その他

○議事

○清野栄養指導室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第2回「日本人の食事摂取基準」策定検討会を開催いたします。

 構成員の皆様方には、御多忙のところ、御出席いただきまして、まことにありがとうございます。

 前回御欠席の構成員を御紹介させていただきます。

 千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学教授、横手幸太郎構成員でございます。

○横手構成員 千葉大学の横手と申します。前回は所用により欠席させていただき、申しわけございませんでした。

 私は、千葉大学で、内科学、老年医学を専門にしておりますが、内科の分野では、特に代謝・内分泌、生活習慣病をメインに行っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○清野栄養指導室長 本日は、柏原構成員におかれましては、御都合により御欠席です。

 それでは、以降の進行は、伊藤座長にお願いいたします。

○伊藤座長 それでは、進行させていただきます。

 前回のこの会では、大変活発な御意見をいただきまして、大変すばらしかったと思います。

 それでは、本日の議題1「食事摂取基準(2020年版)の策定方針について」を進めたいと思います。

 前回の検討会では、高齢社会がどんどん進んでいくということで、高齢者のフレイルの予防や認知症の予防等も視野に入れる必要があるという御議論がございました。そこで、高齢者分野の御担当であります葛谷構成員と櫻井構成員から、それぞれフレイルと認知症に関する最新の動向の御紹介をいただきたいと思います。

 まず、葛谷先生から「高齢者における栄養の特性と課題、フレイルと栄養の関係」について御説明をお願いいたします。

○葛谷構成員 それでは、お手元の資料の「高齢者における栄養の特性と課題、フレイルと栄養の関係」についてお話ししたいと思いますが、その前に、参考資料1「フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント」という1枚のものがありますので、まず、それからちょっとだけ御説明いたします。これは、平成26年に日本老年医学会がフレイルに関するステートメントを出したものの資料であります。上から6行目ぐらい、「Frailtyとは」と書いてありますが、フレイルとは、高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進して、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態で、筋力の低下によって動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的な問題のみならず、認知機能障害や鬱などの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念である。ただ、こういう状態をまだ世の中に余り認識されていないことが介護予防の観点から大変障壁になっているということから、フレイルの重要性を知ってほしいということでステートメントを平成26年に出させていただいた経緯がございます。これを頭に入れておいていただきまして、私の資料をごらんになっていただくとありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

 一番初め、「ライフステージと栄養の関係」は、当たり前のことでありますが、栄養状態というのは、決してその人が一生ずっと同じ状態ではないということをあらわしています。若いころ、特に女性のやせという問題は大変大きな問題になっているようですが、これが成人になると、だんだん体重が増加してくる。そのときには、メタボ・過栄養の問題がもとで糖尿病・脂質異常症・肥満症という問題につながっていって、それの管理がうまくいかないと動脈硬化性疾患というものにつながるということであります。しかし、同じ個人であっても年をとっていくと少しずつ体重が減少してくるということをあらわしています。70代後半になると逆に低栄養の問題が出てきて、それが今お話ししたフレイル・サルコペニアにつながる。さらに放置しておくと、本当の低栄養になってしまうということをあらわしています。

 1枚おめくりいただきまして、「体組成の加齢変化」と書いてございますが、これも皆さんは御存じのとおりだと思います。ただ、一つ、年をとると体重が減少して筋肉が減少し、逆に脂肪に置きかわるということは認識されていると思うのですが、脂肪自体もかなり年をとってくると減ってくるという事実がございます。

 例えば、3枚目のスライドは男性だけのデータでありますが、これは縦断調査をもとにした加齢変化と身体計測の変化を見ています。これは、残念ながら日本人のデータではありませんが、見ていただくと、Fat-free mass、筋肉量というのは、40代ぐらいをピークとして加齢とともに低下していくことがおわかりになると思いますが、Fat massを見ていただくと、加齢とともに、20代に比べてだんだん多くなるわけですが、これも70歳ぐらいをピークとして、Fat mass自体も下がってくるというデータであります。一方で、BMIの動きは必ずしもFat massとか、Fat-free massと一緒に動いているわけではない。少し右側にピークがシフトをしていることがおわかりいただけると思います。

 スライド4番は、少し前のデータでありますが、高齢者の長期縦断調査として大変有名なBaltimore Longitudinal Study of Agingからの報告で、上のほうは20歳から90歳まで、男性、女性と分けて、左図は身長がどのように変わったかということを見ています。そうすると、ごらんになってわかるとおり、30歳ぐらいから少しずつ低下をして、このデータですと、男性だと85歳までには-6センチ、女性においては-10センチぐらい身長が縮んでいることがわかります。右側はBMIの加齢変化でありますが、体重一定だとして、20歳のときにBMI22だった人たちが、左のように身長が変わるとどのようにBMIが変わってくるかということをあらわしています。ごらんになってわかるとおり、男性、女性とも、同じ体重であっても身長が縮むためにBMIが上がってくることがおわかりいただけると思います。下の表は、同じことをあらわしています。男性、女性、30歳、60歳、80歳で、体重が全部均一だとしても、身長が変わることによってBMIはこのように変わっていくのだということを示しているわけであります。

 次の図は、「BMIと生命予後」との関係を表したものでありますが、左側は65歳以上の高齢者の平均12年のフォローアップをし、BMIと生命予後との関係を見たメタ解析であります。この対象者は日本人も含まれておりますが、日本人以外もたくさん含まれています。ここの図では、BMIと生命予後の関係は、これは成人も同じだと思いますが、Uシェイプの関係にあって、高齢者にとって一番死亡リスクの低いものがBMI27.027.9kg/m2 だというデータであります。ただ、先ほど言いましたように、これは日本人だけのデータではありません。右側は、2015年の日本人の食事摂取基準から抜粋したものであります。これも、アウトカムは生命予後で、総死亡率が一番低いBMIということで年代が分かれておりますが、これから見ていただいても、若いときに比べて70歳以上の人たちの総死亡率をアウトカムとした場合、BMIは少し高めであるということです。年齢によって死亡率で見た至適のBMIは異なり、高齢者の至適BMIはかなり高いことがわかります。

 1枚めくっていただきますと、「後期高齢者の肥満と疾病発症」です。アウトカムは必ずしも生命予後だけではないので、これは疾病発症のリスクを見ています。これも残念ながら日本のデータではありませんが、75歳以上の高齢者だけをターゲットとして、9年間フォローアップをしたものでありますが、75歳以上とはいえ、BMIが高くなると、新たな糖尿病の発症とか、関節疾患、関節症の発症はかなりリスクが高くなることがおわかりいただけると思います。右側の青く囲んであるところは、骨粗鬆症です。骨粗鬆症は逆転をしておりまして、骨粗鬆症のリスクはBMIがむしろ高いほうが下がるということであります。

 次の図は先ほどお話ししたフレイルの概念が書いてございます。言葉の説明は省きますが、わかりやすく言うと、日本人において、例えば、要介護になるプロセスは大きく分けると2つあるということです。1つが、上の疾病モデルと言われているもので、元気な高齢者があるとき脳卒中になって要介護状態になってしまう。転倒・骨折をするとさらに要介護状態が悪くなるということで、割とわかりやすいモデルかと思うのですが、それだけではなくて、下のほうの図は、自立している人たちが、じわじわと加齢とともに身体機能が低下、自立度が低下して要介護になってしまう。その「自立」と「要介護」の間にあるフェーズを「フレイル」と呼ぼうと提唱されているわけです。このモデルは、必ずしも矢印が右方向だけではなくて左方向に向かっているということで、フレイルというのはまだ可逆性のある状態と想定しています。これをフレイルモデルと言っているわけです。ただ、このように日本人の健康寿命を考えたとき、さらに今後の高齢者の食事摂取基準を考えたときには、このモデルが私は一番フィットをすると思いますが、フレイルというのはいろいろな考え方があるので、気をつけてフレイルの定義を確認して論文などを読まないと、間違った解釈が起こり得るということだけ御注意いただきたいと思います。

 次のページをめくっていただきますと、フレイルの診断をどうするかということで、これはフリードたちが提唱したCHS基準の日本語バージョンです。これは、国立長寿研の先生方が日本語バージョンをおつくりになったもので、それをおかりしてきたものです。5つの項目がございまして、「1.体重減少」、「2.疲労感」、「3.活動量の低下」、「4.歩行速度の遅延」、「5.筋力低下」で、使用の例はいろいろ書いてございますが、ここの5つの項目のうち3つ当てはまればフレイルと診断をして、1つとか2つの場合はフレイル前段階と診断をしています。1番は赤で囲ってございますが、これは「1.体重減少」でありますので、まさしく栄養と関係していることがわかります。

 フレイルとは、親戚のような関係でサルコペニアという概念がございます。サルコペニアは、加齢に伴う筋肉量の低下または筋力の低下をさします。正式なものは、左下に診断基準が載ってございます。筋肉量の減少が必須項目で、2番と3番、筋力低下または身体能力の低下があれば、サルコペニアと診断されます。一般的には、先ほど男性だけの加齢変化を見ていただきましたが、40ぐらいをピークとして筋肉量が低下してまいりますし、筋力自体も低下をしてくることが疫学研究などではわかっております。筋肉量の低下はType IIa、これは速筋または白筋と言われているものです。こういうものが減少することがわかっていますし、筋肉量の減少は、筋繊維の数の減少と、もう一つは筋繊維自体の萎縮があわさって起こってくることもわかっています。右下にあるのは、25歳と75歳の方の大腿のMRIの図であります。筋肉量の減少が75歳の人に顕著だということがおわかりいただけると思います。

 次のページをめくっていただきますと、高齢者はたくさん生活習慣病を抱えております。それにフレイルが併存しているというのはまれなことでは決してありません。生活習慣病を考えたときに、例えば、糖尿病だったらエネルギーのことを考えなければいけないと思いますし、脂質異常症だったら脂質摂取に関しての制限を考えなければいけないでしょうし、心不全や高血圧の場合だったらもちろん減塩を考えなければいけないでしょうし、CKDの場合ですと、減塩だけではなくてたんぱく質に関しても考慮しなければいけないと思います。それぞれに合わせて、フレイルに対してどういう影響があるかというと、エネルギー・脂質制限などがありますと体重減少につながるであろうということと、減塩をすることによって、もともと味覚が低下をしている高齢者にとっては、味のないものを食べなければいけないということで、それ自体が食欲低下に陥る可能性があること、たんぱく質制限に関しても、骨格筋の筋肉量減少、サルコペニアに直結するというリスクもあるということで、生活習慣病を重視するのか、フレイルを重視するのかのバランスは大変重要ですし、また、難しいというのが現状だと思います。しかし、少なくとも考えていただかなければならないのは、後期高齢者を成人と同じような考えで栄養療法をしてしまうのはどうかということがあります。

 次の図は「加齢と栄養関連事項の時間経過」でありますが、これも独断と偏見で私が書いているものですが、多々御批判はあると思いますが、大体65歳を過ぎますと食欲は少しずつ低下するのが一般的だと思われます。食事摂取量も低下しますが、活動量自体も低下するために、恐らく体重減少は余り顕著ではない。ただ、75歳を超すと、実際に少しずつ体重減少が起こってくる。それがフレイルとかサルコペニアにつながってくるのだろうと思います。それを見逃して放置しておくと、本当に低栄養になってしまう。低栄養になってしまうと、なかなか回復させることも難しいですし、いろいろな合併症が引き起こされてしまって、残念ながらそれが死亡とか入院につながるというプロセスが想定できるかと思います。

 最後のスライドです。メタボとフレイルの関係は、どこでギアチェンジをしたらいいかということをよく質問されます。思い切ってざっくり時期を設定すると、メタボまたは過栄養は65歳までの大きな概念かと思います。逆に、フレイルであったり低栄養というのは、むしろ後期高齢者、75歳以上に注目する概念かと思います。また、それぞれが生活習慣予防・介護予防にとっては大変重要な概念だと思います。ただ、その中間に位置する前期高齢者に対しては、かなり個別性が強いと考えます。中には、まだまだメタボ・過栄養を予防しなければいけない高齢者、生活習慣病の重症化予防をしっかりやらなければいけない前期高齢者はおられると思いますし、逆に、既にフレイルになりかかっている高齢者もおりますので、これは医療者が個別判断をして指導していくべき対象者かと思います。もっとざっくり言うと、どうやって個別対応をするのかというと、私自体は体重の変化を重視しています。体重が減ってくるようだったら、6574歳の間、前期高齢者でもフレイルにシフトしたほうがいいかなと考えていますし、逆に体重がまだふえるとか、体重が多いのをまだ維持しているとか、そういうケースはメタボにまだフォーカスしなければいけない、そういう対象者かと思います。

 大変ざっくりした話で恐縮ですが、これで私の話を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

○伊藤座長 葛谷先生、ありがとうございました。

 続きまして、櫻井先生からお願いいたします。

○櫻井構成員 国立長寿医療研の櫻井でございます。

 本日は、「認知症と栄養」ということで、ざっくりでございますけれども、レビューをしてまいりましたので、お聞きいただきたいと思います。

 まず、最初のスライドでございますけれども、2015年度版の食事摂取基準の後ろに「認知機能低下及び認知症と栄養との関連」という1単元がございまして、そこに書いてある内容をまとめてみました。詳細を申し上げる必要はないと思いますけれども、栄養素と認知機能低下あるいは認知症との関係には十分な証拠がないという趣旨でございます。さまざまな栄養素につきましても検討されていました。「今のところ、結論に至らない」というものが2015年でございます。恐らく2013年ぐらいまでのレビューかと思います。

 次に、昨年度、認知症学会から認知症疾患診療ガイドライン2017が出ました。その中に、CQが2つ栄養に関して立っており、1つ目が「認知症と関連する食事因子はあるか」、もう一つが「過度な飲酒は認知機能の低下と関係するか」というCQでございます。最初のCQでございますが、認知症と食事、栄養に関する多くの報告があり、炭水化物を主とする高カロリー食や低たんぱく食及び低脂肪食は、MCIや認知症のリスクを高める傾向にある。個々の栄養素では確定的な結果は得られていないという結論でございまして、これもエビデンスレベル2Cでございました。アルコールに関しましては、次の本文を見ていただければと思います。

 「認知症疾患診療ガイドライン2017」は恐らく2015年ぐらいまでのレビューではないかと思いますけれども、個別の栄養素に関しましては一定の結論に至らないという結論と思います。しかし、さまざまな新しい知見も出てきておりまして、久山町研究あるいはロッテルダム研究といったところが話題にはなってきておりました。

 まず、4ページ目を見ていただきますと、認知症のリスクは何なのかということでございます。左側のくねくねとした曲線は、昨年度「The Lancet」に出た図でございますけれども、生まれ落ちてから、中年期、高齢期と続くなかで、さまざまな認知症のリスクがあるということでございます。栄養関係では中年期の肥満がリスクになっており、これは一応コンセンサスということでございます。また、別のレビュー、右側を見ていただきますと、中年期の認知症のリスクとしましては、糖尿病、高血圧、脂質異常、肥満が確定しているように思われます。しかし、高齢期、65歳以上になりますと、肥満、逆に少し太っているほうが認知症にむしろなりにくいといった報告が出てきてございます。この点に関しては、幾つか報告がございますけれども、現象としましてはほぼ一定した結論であろうと思います。Obesity paradoxといった言い方で呼ばれていることもございます。

 次、5ページ目でございますけれども、認知症のリスク、中年期の肥満でございますけれども、右のほうのパネルを見ていただきますと、BMIの区分で見ています。認知症とBMIとの関連はU字型を示すということでございます。ですから、肥満も、やせも認知症のリスクであるということが言われているわけでございます。認知症の病型としましては、アルツハイマー、血管性ともにリスクですということでございます。

 6ページ目でございますが、高齢期はどうかという研究結果でございます。高齢期の肥満はむしろ認知症を抑制するというメタ解析が幾つか出てきてございます。これはその一つでございますけれども、データで見ていただきますと、60歳以上ですと、このBMI25以上であるとリスクが約20%軽減していますということを示すデータでございます。これが2013年の報告でございました。

 それでは、どういった機序が考えられるのかということでございますが、7ページ目でございますけれども、認知症の発症は、記憶障害などの症状が出る10年ぐらい前から体重がだんだん減少しますということが、2005年のHonolulu-Asiaのスタディーで示されています。32年間観察した研究でございます。見ていただきますとおり、認知症のない方でもだんだんBMIは減っていくわけでございますけれども、認知症がある方ですと、それよりもさらにBMIの低下が強いということが示されています。恐らく、この研究が一番初めてではないかと思います。それでは、どうしてその認知症の病気で体重減少が起こるのかということになりますと、まだその原因ははっきりいたしませんが、一つの考え方としましては、体重が減って、脂肪組織が減って、レプチン等のサイトカインが減って、神経の保護的な作用が減少するといった考え方でございます。一方で、脳病変から中枢由来に食欲が減ったために、栄養素のアンバランスが起こって栄養障害が起こってくるといった、両方向性の考え方があるということでございます。

 8ページでございますけれども、これは、2014年の研究で、アルツハイマー型認知症とBMI低下との関係を見たものをまとめた研究でございました。高齢期では、Late-lifeBMIが高いことは、アルツハイマー病の発症を大体11%ぐらい抑制しているということでございます。しかし、それよりもより関連が強かったのがBMIの減少であったということが、Model 3の解析で出てきているところでございます。ですから、BMI自身というよりもBMIの低下ということが大事ではないか、体重の低下が大事ではないかということを示しているものと思われます。

 9ページ目でございますけれども、先ほどの研究と同様に、体重減少がいけないのではないかといった報告が幾つか見られるところでございますけれども、この体重減少が認知症の発症と関連しそうということでございます。ここまでは体重との関連をまとめたところでございます。

 次は、栄養素と認知症との関連につきまして調べてまいりました。10ページ目はCochrane reviewの関連するものを持ってきたものでございますけれども、一番上が葉酸とコリンエステラーゼ阻害薬のコンビネーションによる効果を見たものでございまして、これは効果があったというデータでございました。そのほかには、ビタミンB1とか、オメガ3とか、L-カルニチン、ビタミンEといったレビューがございましたけれども、いずれもNo conclusionsでございました。

 そこで、ほかにも報告があるだろうと考えまして、PubMedを自分で検索してみました。キーワードは“Nutrition”と“Dementia”としまして、“クリニカルトライアル”と“65歳以上”に限定し、20132018年だけの機関でレビューしてみました。19件が該当いたしました。詳しくは申し上げませんけれども、Interventionの中身を見ていただきますと、オメガ3であったり、葉酸であったり、ビタミンの組み合わせであったり、フラボノイドでありましたり、地中海食が出てまいりましたし、ターメリック(カレー粉)といったものもあり、アロエも14ページのところには出てきてございます。Resultsのところを見ていただきますと、これも簡単に書いてございますけれども、結構いい結果が並んでいるということが見ていただけるかと思います。結構データは出てきているのだなという印象を持ちました。

 それならば、システマティックレビュー等も出ているのではないかと考えまして、レビューをもう一度探してみましたものが15ページでございます。その結果、コホート研究を集めまたメタ解析とRCTのシステマティックレビュー論文が、雑誌にでておりました。一番左のパネルを見ていただきますと、オメガ3、不飽和脂肪酸の相対危険が0.84といったことで出ておりますし、アンチオキシダントも、ビタミンE、ビタミンC、フラボノイドと出ておりまして、全部をまとめると相対危険が0.87といった数字が実際にメタ解析でも出るということでございます。

16ページでございますが、ビタミンB群でも出ておりますけれども、これも抑制効果がありそうだということでございます。右側は、たばこでございますけれども、喫煙は認知症のリスクであるといった結果が出てきております。ほかにも地中海食でも認知症抑制効果がございましたし、ビタミンDに関しましてもデータが出てきてございました。

17ページへお進みいただきまして、RCTのシステマティックレビューが報告されていました。Nutrientsという雑誌で、2016年のものでございます。見ていただきますと、研究対象としましては、HealthyElderlyということがほとんどでございました。Interventionとしましては、フラボノイド、地中海食、フィッシュオイル、プロテインといったものがございまして、Main Resultsのところを見ていただきますと、結構Significant improvementと記載されており、効果が確認されている栄養素があるという結果でございました。こういったところを概観いたしますと、まだまだ結論という段階には至っていないわけではございますけれども、コホート研究のメタ解析が出てきていて、RCTのシステマティックレビューが出てきたというのが、この5年間ほどの大きな変化ではないかと思うわけでございます。

18ページでございますが、これはまた別の切り口の研究でございまして、Multi-domain interventionでございます。栄養だけで認知症抑制効果を見るというのはなかなか難しいところもありそうだということもございまして、これまで世界では、PreDIVAFINGERMAPTといった3つの研究が、栄養に加えて運動やら社会参画やらを加えました認知症予防効果を見た研究として出てきてございます。PreDIVAはうまくいっていませんでしたが、FINGERは、御存じのとおり、2年間で認知機能の悪化を抑制したというものでございます。

19ページに出ているような結果が2年間で得られたということでございます。遂行障害、情報処理速度などに改善が見られたということでございます。こういったことを踏まえまして、今はWorld Wide FINGERSといった取り組みも進んでいるようでございます。

 最後のMAPTでございますけれども、これは運動に加えまして、オメガ3のSupplementationをやった研究でございました。全体解析では有効ではなかったという結論でございましたけれども、アミロイドイメージングでアミロイドの蓄積がある人だけ、ハイリスクの人だけを集めると、これらの介入効果があったという結果が出ていたところでございます。ですから、こういったMulti-domainも一つの切り口かと考えております。

 最後は、食の多様性という問題でございます。私どもの国立長寿のNILS-LSAという疫学調査がございまして、それを論文にしたものでございます。NILS-LSAでは、長時間観察データをとっておられまして、食事内容については、食べたものの写真を撮って何を食べたかということをしっかり評価なさって、観察したということでございます。

21ページ目のところだけ見ていただきますと、右のグラフでございますけれども、食の多様性の四分位で、右に行くほど多様性が高いということでございますけれども、高い方ほど認知機能の低下のリスクが軽減しておりましたといったことを示したものでございます。

 以上が、私が今回ざっくりと検索した結果でございます。そういったことを踏まえまして、今回の会議におけるレビューのポイントを私なりに考えてみたところが、最後のスライドでございます。高齢者の体重減少は、一つの大きなキーワードになりそうだといったことが一つでございます。栄養素に関しましては、確定的な結果とまでは至りませんけれども、近年かなりエビデンスレベルの高い報告が出てきていることも、素直に認めるべきであろうと思っております。関連のあり得る栄養素としましては、ここに示しました内容がいろいろ検討されているところでございます。また、栄養素だけではなくて、食事パターンといいますか、食の多様性という見方も必要であろうということ、また、栄養だけではなくてほかの認知症予防との組み合わせの多因子介入といったところも一つのポイントとしてあるのではないかと考えました。

 以上でございます。

○伊藤座長 ありがとうございました。

 ディスカッション等は後で行いたいと思いますので、よろしくお願いします。

 事務局から、策定方針についてお願いいたします。

○塩澤栄養指導室長補佐 それでは、御説明させていただきます。

 お手元に資料3を御用意ください。前回の第1回の検討会では、次回版に向けて策定の方向性について御議論いただきました。今回は、前回の御議論なども踏まえまして、表題にもございますとおり、2020年版の策定方針についてということで、案としてまとめさせていただきましたので、こちらをもとに今から御説明させていただきます。

 まず、1ページ目をごらんいただけますでしょうか。これは横断的な話でございますが、策定に当たっての基本原則の案で書かせていただいております。両方ありますけれども、基本的に原則として現行版でございます2015年版の策定方針を踏襲した上で、最新のレビュー結果を踏まえていくということでいかがでしょうかというものでございます。また、現行版の今後の課題でございますけれども、こちらにつきましても最新のレビュー結果を反映して作成していってはどうかということで書かせていただいております。

 続きまして、2ページ目でございます。こちらから、個々の論点についての現行の内容、方針案ということでまとめさせていただいております。まず第1に、対象とする個人及び集団の範囲についてでございます。現行でございますけれども、食事摂取基準の対象は、原則として、健康な方々、高血圧等の生活習慣病のリスクを有していても、自立した日常生活を営んでいる方を含むということで、具体的にはこのリスクは保健指導レベルにある方までを含むものということで策定していただいております。方針でございますけれども、原則として、現行版の対象範囲を踏襲するということで書かせていただきましたが、高齢者については、高血圧等の生活習慣病に関するリスクを有する者のほか、フレイルの者も対象の範囲に含めてはどうかということで書かせていただきました。また、フレイルについては、先ほど葛谷構成員の御説明もございましたけれども、現行、世界的に統一された概念はない状況でございますが、食事摂取基準におきましては、日本老年医学会の見解を参考に、下に図示しておりますけれども、健常状態と要介護状態の中間的な段階に位置づけるという考え方を採用してはどうかと考えております。

 3ページ目には、参考といたしまして、老年医学会、国立長寿医療研究センターでまとめてくださっていますものをそのまま載せてございます。

 4ページをごらんいただけますでしょうか。次の論点といたしましては、策定の対象とする栄養素をどうするかという点でございます。表のところに赤で線を引いているところがあると思いますが、現行の対象は大きく3つありまして、まず1つ目が、1番に書いております熱量でございます。次、栄養素等でございますけれども、まず、イのところにお示ししておりますが、国民の栄養摂取の状況から見てその欠乏が国民の健康の保持増進に影響を与えているものということで、下に掲げておりますような栄養素、また、その逆、つまり、過剰な摂取が国民の健康の保持増進に影響を与えているものとして幾つか設定しているものがございます。今後につきまして、諸外国の食事摂取基準において策定されている栄養素等のうち、我が国の食事摂取基準では未検討のものがございます。こういったものについては、日本の食事摂取基準の目的も踏まえた上で策定の対象とすべきかどうかということを検討してはどうかと思っております。また、策定の対象とすると決めた栄養素のうち、結果的に摂取基準の策定に至らなかった場合については、その旨、つまり、これこれこういう理由で策定に至らなかったということを明記するとともに、今後に向けた課題として整理することにしてはどうかと考えております。

 こちらも参考でございますが、5ページ目に、諸外国の食事摂取基準で策定の対象としている栄養素等を比較した表をお載せしております。ざっとごらんいただくと、おわかりのとおり、日本、US/カナダ、イギリス、韓国とありますけれども、若干書きぶりは異なりますが、この食事摂取基準の考え方については、そう大きな違いはないのではないかと考えます。

 一方、6ページの表をごらんいただけますでしょうか。こちらは、諸外国の食事摂取基準で扱っている栄養素等の比較という表でございます。記号でございますけれども、一番下の注にありますが、○については摂取基準を策定している栄養素、△が策定の対象とはしたものの摂取基準の策定には至らなかった栄養素、-は未収載というものでございます。表をごらんいただくと、上のほうは大体そんなに大きな差はないのでございますが、ただ、表の下のほうをごらんいただくと、例えば、ミネラルの下のほう、ホウ素とかヒ素とかがございますけれども、こういったものについては日本とUS/カナダなどで状況が違っていることが見てとれるかと思います。

 7ページをごらんいただけますでしょうか。次は、策定する指標についてでございます。現行でございますけれども、エネルギーについては、エネルギーの過不足の回避を目的とする指標としてBMIを採用している。栄養素に関しては3つの目的から成る5つの指標で構成ということで、推定平均必要量・推奨量・目安量、また、上限量、目標量などを記載しております。今後の方針でございますけれども、原則として、現行版で設定されている指標は踏襲しつつも、以下について検討してはどうかということで、目標量についていろいろ書かせていただいております。まず、1つ目の・でございますけれども、現行の目標量は生活習慣病予防が目的でございます。ただ、先ほども申し上げましたとおり、高齢社会のさらなる進展への対応が必要でありますので、新たにフレイル予防を目的とした目標量を設定してはどうか、検討してはどうかと考えております。次の・でございますが、今度は生活習慣病の話に戻ります。生活習慣病予防を目的とした目標量でございますけれども、生活習慣病予防と一口に言いましても、発症予防と重症化予防の2つに大きく分かれると思いますので、この目標量については、生活習慣病の発症予防を目的としたものとして、新たに生活習慣病の重症化予防を目的とした目標量ということで、可能であれば、2つ考えていく、2つあり得るということで考えていってはどうかと思っております。3つ目の・でございます。目標量の設定に当たりましては、右下に小さく囲みを載せておりますけれども、基本原則がございます。これに該当しない場合でも、栄養政策上、目標量の設定が重要だと認められる場合には、値の設定について検討してはどうかと思っております。なお、右下にございますけれども、現行の目標量の設定の基本原則ということで主な2つを挙げておりますけれども、1つは、望ましいと考えられる量よりも、今の日本人の摂取量が少ない。つまり、上側を目指していくという意味での目標量が1つ。2番はその逆です。目指すところが今より低いというところで、下を目指していく。2方向がございますけれども、こういった原則に当てはまらない場合でも、必要と思われる場合には検討してはどうかというところでございます。

 8ページ目は、目標量についての現行の考え方でございますので、省略させていただきます。

 9ページをごらんいただけますでしょうか。次は年齢の区分をどうするかというお話でございます。下の方針案でございますけれども、現行は左の列でございまして、5069歳、70歳以上という分け方をしてございます。ただ、政策的視点ということを考えますと、50歳以上の年齢区分については、右列にございますとおり、5064歳、いわゆる前期高齢者であります6574歳、後期高齢者に該当する75歳以上といった分け方がよろしいのではないかと考えております。

 続きまして、10ページをごらんいただけますでしょうか。次は、報告書のレイアウトの話でございます。現行でございますけれども、下の図をごらんいただきたいと思います。現行、まず、総論と各論がありまして、その下に別立てという形で、参考資料として、対象特性、生活習慣病とエネルギー・栄養素の関連を載せております。ただ、構成でございますけれども、左右に脂質とナトリウムを例示しておりますけれども、項立てに関しては必ずしも統一が図られていないというのが現状でございます。

 そこで、11ページ目をごらんいただけますでしょうか。2020年版におきましては、基本的には2015年版を踏襲して、先ほども簡単に触れましたけれども、今、参考資料と位置づけている「対象特性」と「生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連」については、総論と各論と別立てとしてはどうかという点、構成については統一を図ってはどうかという点、対象者の特性、例えば、運動習慣あるいは喫煙習慣の有無等を踏まえて、活用に当たっての留意事項を、そちらに図示しておりますような感じで、新たな項目として各成分とも記載することにしてはどうかと思っております。

 続きまして、12ページをごらんいただけますでしょうか。こちらは、レビュー方法の標準化とエビデンスレベルの記載に関してでございます。現行も、系統的レビュー、すなわちシステマティックレビューの手法を用いるということで明記されております。ただ、2つ目の○にもございますとおり、標準化・透明化は必ずしも十分図られていないということで、これは今後の課題と報告書にはまとめられているところでございます。また、示された摂取基準につきましては、その信頼度が根拠によって異なるということになりまして、その旨は記述はされておりますけれども、それぞれのエビデンスレベルについては必ずしも明示されていない状況でございます。こういう状況を受けまして、下の方針案でございますけれども、レビュー方法の標準化・透明化、エビデンスレベルの記載につきましては、実行可能性の観点から、目標量を策定している摂取基準に限って行うとしてはどうかと考えております。また、レビュー方法については、系統的レビューに係る国際指針等、今、お手元に机上配付でPRISMA声明などをお出しさせていただいておりますけれども、こういったものを踏まえて標準化・透明化を図るとしてはどうかと考えております。また、エビデンスレベルにつきましては、各疾患ガイドライン等で用いられております「疫学研究のエビデンスレベル」の分類等を参考に、原則として、下の表のような形で整理してはどうかと思っております。ただ、こちらの表は観察研究でございますけれども、物によっては介入研究が想定される場合もございますので、そういった場合には介入研究も含むような分類ということで整理してはどうかと考えております。

 最後、13ページでございます。高齢者のレビューに関してであります。高齢者については、個人差が大きいということもございますので、年齢以外の指標として、例えば、体重、ADL、認知機能別等で摂取基準を示すことについても、レビュー結果いかんでございますけれども、検討してはどうかと思っております。2つ目の○は、先ほども紹介させていただきましたけれども、フレイル予防を目的とした目標量の設定を検討してはどうかという再掲の話でございます。最後になりますけれども、活用に当たって留意する事項ということで挙げておりますが、より活用しやすいものにしたいということがありますので、食事摂取基準の利用者の代表の方々などの意見を聴取して、それを適宜報告書あるいは来年度以降展開します普及・啓発などにつなげていってはどうかと考えております。こちらには記載はしていないのですけれども、海外に向けて発信が必要ということもありまして、前回も英語版などで国際発信をしてはどうかということがありましたので、そういったことも目指していきたいと思っております。先般、2015年版の英語版をホームページ上にアップしておりますので、適宜ごらんいただければと思います。

 以上でございます。

○伊藤座長 ありがとうございます。

 初めのちょっと時間、お2人の先生方の発表について、クリアにしておきたいこととか御質問があればお受けしたいのですが、いかがでしょうか。

 よろしいですか。

 体重減少ということがありましたけれども、あれはベースラインによって体重減少の単位が違うとか、そういうことはないのですか。

○櫻井構成員 もともとの体重と体重減少を一緒の共変量に入れたような解析がなかなか見つかりませんので、今回は申し上げませんでした。

○伊藤座長 ありがとうございました。

 よろしいでしょうか。

 それでは、策定方針について1つずつ御意見をいただいていきたいと思います。

 まず初めに、基本原則は、ここにありますように、2015年のものを踏襲した上で最新のレビューを反映すること、今後の課題については、2015年版であったものについて、今後の課題についてレビューをして、答えをちゃんとそこに示すということでございますが、これでよろしいですか。

 佐々木先生、どうですか。

○佐々木(敏)構成員 後で資料を準備しているのですけれども、今、意見を求められましたので、その点についてだけ意見を述べさせていただきます。

 食事摂取基準につきましては、先ほどの資料にございますように、各国ともレビューの方法を明示するということはしておりません。それは、必要量等を示す場合に、さまざまな異なる実験、観察研究を、最終的には定性的に活用せざるを得ないということが一つ。もう一つは、とはいいながら、最終的には量も示さなければならない。

 この2つが、いわゆる生活習慣病の予防のような、定量的なものをまとめつつ最終的に出すガイドラインの文章が定性的であるものとは、根本的に異なるのですね。そこを考えて、各国は、現状においてはレビューは古典的なナラティブレビューの方法をとりつつ、使う資料は系統的レビューを使うという折衷案がなされているように私には見られます。今回の我が国の食事摂取基準がどのような方法を採用するかということは、ほかの国の食事摂取基準の今後においても重要な示唆を与えるものであろうと考えております。深く、かつ、現実的な御議論をいただきたいところです。

○伊藤座長 わかりました。これは、後で先生に発表いただいてから、そういう議論をしたいと思います。

 次の方針では、ここにありますように、高齢者についてもフレイルの有無等についてあったほうがいいのではないかということですが、これはよろしいですか。

 それでは、フレイルの予防というか、フレイルに関するものについての記述も行うという形でいくということでよろしいですね。

 それから、4ページ目でございますけれども、栄養素等は各国の状況でいろいろあるということですが、前回は、後ろの表を見ていただきますと、いろいろな栄養素のバランスが書いてありますけれども、この中で、各国、外国で行われているけれども、日本では策定の対象としたけれども摂取基準の策定には至っていないという△のところまでは、何とかレビューをやりながら、可能であれば基準を策定するということでよろしいですか。下のほうのフッ素とか、塩素とか、ヒ素とか、硫黄というのは、どちらかというと毒物として、いろいろなほかのところで既に規制といいますか、基準といいますか、そういうことがかかっていますので、ここで今さら取り上げる必要はないのではないかと思うのですが、先生、どうぞ。

○佐々木(敏)構成員 この6ページの表、食事摂取基準で扱っている栄養素等の比較のところで、1つだけ注意点があるかと考えます。脂質のところのトランス脂肪酸とコレステロールのところが、日本が△、US/カナダが○で、6の注がついてございます。6の注を見ますと、「十分な栄養の食事の下、できるだけ少なく」、「As low as possible」と書いてございます。すなわち、この書き方は、アメリカ・カナダも数字は示してございませんよね。これは日本の2015年版食事摂取基準でも同等でございまして、そう見ると、これはほぼ同じ策定をしたと見てもよいのではないかと私は理解しております。アメリカ・カナダでも数字をつけることはたしか見送ったのではないかと。

○伊藤座長 事務局から何かありますか。トランス脂肪酸とか、いいですか。

 これは後で実際にレビューをやっていく過程でいろいろ御議論していただきたいと思いますので、今回はそれで行いたいと思います。

 それから、7ページの策定する指標は、体格をBMIで採用しているということですが、これは前回も議論があったのですけれども、いかがでしょうか。

 先生、どうぞ。

○佐々木(敏)構成員 簡単に説明だけ。

 エネルギーは、あくまでも推定エネルギー必要量として2015年は出してございます。これは、給食等、エネルギーを出す側、給与する側にとって不可欠な値であり、かつ、この食事摂取基準が熱量を示すということで、それに基づく基本的な値として算定しております。

 その一方で、生活習慣病の予防、重症化予防等を鑑みて、エネルギーだけではなく、むしろBMIという代替指標を使うことによって、より現実的で科学的なアセスメント、対策が立てられるのでないか。そして、十分な研究成果が累積されてきたということ、他の学会等のガイドラインとの類似性、足並みも考えて、BMIが取り入れられたと理解しております。

○伊藤座長 よろしいですね。それでは、BMIを指標としているということにいたしましょう。

 それから、栄養素の3つの目的から成る指標です。推定平均必要量・推奨量・目安量、過剰摂取による上限量、生活習慣病の予防を目的とする指標ということから前回は規定しているわけですけれども、この下にありますように、高齢者のいわゆるフレイルの予防に向けた目標量を設定してはどうかということ、生活習慣病の予防を目的とした目標量については、発症予防と重症化、発症予防と実際に生活習慣病になった人が重症化するのを予防すると、それぞれ目標量を設定したほうがいいのではないかということと、基本的に該当しないような場合でも、目標量の設定の重要性を認める場合には、値を設定するということですが、それぞれ1つずついったほうがいいですかね。

 一番初めに、目標量でフレイルを別にするか。どうでしょうか。

○葛谷構成員 別の資料であったと思うのですが、最近、フレイル診療ガイドが出されて、そこの栄養のところにもたしかあったと思うのですけれども、なかなか疫学調査でも予防をターゲットにしたものはほとんどないのですね。フレイルになっている人たちを上げるという介入はたしか幾つかあったと思うので。だから、これを挙げるのはいいのですけれども、レビューをしたときにどこまでしっかりとしたものが出てくるかというのは、やってみないとわからないというのが現状かと思います。挙げるのは全然いいと思います。こういう目標をターゲットにされるというのはよろしいと思います。

○伊藤座長 ほかにいかがですか。

 どうぞ。

○雨海構成員 私も、この会議の前段階で事務の方からインタビューがあったときに、全く同様の意見をさせていただいたのですが、見た限りでは文献ありません。さらには実際の臨床結果としての治療効果よりも、予防効果を証明するには膨大な対象数を必要とするなどの理由のため方法論として非常に難しいので、葛谷先生がおっしゃるように、項目、概念としてはいいのですが、エビデンスとして挙げるまではちょっと難しいのではないかという印象があります。

○伊藤座長 どうぞ。

○佐々木(敏)構成員 食事摂取基準をこの国としては5年ごとに近年は策定してまいっております。そうすると、次の5年、次の10年、どうなっていくべきなのかという指針を示す意図もあってよいと私は思うのです。

 例えば、2015年版では、具体的には目安量ですけれども、水の必要量の算定が必要ではないかという御意見をいただきまして、検索をし、調べた結果、数量、量の算定は難しい。けれども、文章は入れておこうと入れた例がございます。したがいまして、今後の世の中の推移を予想して、数値の算定には至らなかったもののということは、書ければ書いたほうがよいのではないかと考えます。

○伊藤座長 それでは、項目としては、これをちゃんと挙げて、エビデンスを検索していただき、なければないということだけれども、考えられることをきちんとそこに書いていただくという形にしたいと思いますが、よろしいですね。

 それから、発症と重症化予防ですが、これはどうでしょうか。これは恐らく発症化予防と重症化予防はどう違うんだということになるのですけれども、土橋先生、ないですか。

○土橋構成員 今、ちょうど高血圧学会のガイドラインで減塩のところを扱っていますけれども、いわばこの厚労省の基準の男性8、女性7というのは、みんなが到達、標準化する目標量であって、これがいわば高血圧の発症予防に通じる施策であると言えるのではないか。一方で、高血圧の患者さんは6グラム未満を目指せという我々のガイドラインは、そういった意味では、重症化予防につながるという考え方があると思います。

 また、その中で、先ほどのフレイルに関しましては、減塩することが他の栄養素・エネルギー摂取に影響するようであれば6グラムにはこだわらないという一文をつけようとしているのは、フレイルの観点を定性的に配慮してくださいという文言を入れようと、今はそういう形でつくっておりますので、無理やり言うと、そのような考え方になるのではないかと思います。

○伊藤座長 宇都宮先生、どうでしょうか。

○宇都宮構成員 この点は非常に重要で、かつ、難しいところかと思うのですね。佐々木先生がおっしゃったように、少しチャレンジングにこれを前のほうに進めていくという観点で、重症化予防と発症予防のことに触れていくことは、私は今回、少し頑張ってみてもいいのではないかと。

 ただ、エビデンスがどれぐらいあるかということで、重症化予防のために書くようなものであったとしても、結果的にどのようにイベントを見るかということで、必ずしも重症化予防に情報がないので、発症予防で代替するというケースも結構あるのですね。

 もう一点は、重症化予防とした場合に、どこまでそれを見るかによって、例えば、糖尿病でいいますと、糖尿病の発症予防、糖尿病のコントロール、そこに今度はCKDが入った場合にまたかかわってくるわけなので、先般もちょっと話題になりましたけれども、そういった多面的な問題を持ったときに、各学会のガイドラインと抵触する、それの整合性が必ずしもその現場でできていないということを考えながら、その調整を図っていくことが必要かと思います。具体的にどうしたらいいかという回答にはなっておりませんけれども。

○伊藤座長 横手先生、いかがですか。

○横手構成員 ありがとうございます。

 現実的に難しいかもしれませんが、糖尿病性腎症の重症化予防のプログラムも走っていますし、また、生活習慣病の場合は症状に乏しいという特徴があり、治療中断例や未治療例が少なくないため、その注意喚起、意識という点でも大変重要かと思います。結果的には、発症していない人と発症した人で数値が同じになることもあるかもしれませんが、トライアルとしては分けて考えてみて、結果としてどうなったかという点にとても意味があるものと思いました。

○伊藤座長 ありがとうございます。

 それでは、そのような観点で、発症予防と重症化予防、両方からレビューをして記述していただくということにしたいと思います。

 それでは、この3番目の・、基本原則に該当しない場合でも、栄養政策上、目標設定の重要性を認める場合には値を設置すると、下のほうに書いてありますけれども、例えば、望ましいと考えられる摂取量よりも日本人の摂取量が少ない場合ということでカリウムや食物繊維、多いというものは飽和脂肪酸とかナトリウムということですが、これもレビューして値を設置するということでよろしいですね。

 ありがとうございます。

 次ですけれども、年齢区分、9ページ、このような区分ということですが、これもよろしいですか。櫻井先生、この年齢区分はどうですか。

○櫻井構成員 このとおりきれいにエビデンスがあるかどうかと言われると、なかなか難しいかなというところはあります。恐らく海外のものが多いので、前期高齢者までぐらいのところがほとんどではないかと思いますけれども、妥当な区分だろうと考えます。

○伊藤座長 先生、どうぞ。

○佐々木(敏)構成員 目標量ではなく、他の指標に関して、特に実験、栄養学的に出納法などを用いてつくられるものは、事実上、研究は若年成人にほとんど限られます。対表面積等を用いて、年齢の外挿を行って、各年齢区分の値、必要量や目安量等、いろいろなものを算定いたします。年齢区分が狭くなると、数字は出せますが、その信頼度が下がるという問題がございます。したがって、その部分を丁寧に総論に書き入れて、使ってくださる方がそれを十分に理解した上で使っていただくような、活用の便をここに特に図る必要があろうかと感じました。数字はできますけれども、使うのが難しくなるかもしれないという懸念は若干ございます。

○伊藤座長 いかがでしょうか。

 日本での後期高齢者という区分が75歳以上ということで、6574歳までの間も高齢者の群に入りますが、後期高齢者と区別するということから、ここで一旦そのような区分でやってみるということが必要かと思います。

 どうぞ。

○葛谷構成員 これはいいと思うのですけれども、今まで厚生労働省が国民健康・栄養調査のデータをずっと公表しておられました。それはこれに準じてしまうのか、前の年齢区分も残していかれるのか。どんな計画でおられますか。

○清野栄養指導室長 集計については、再掲等、集計方法において幾つか出すことができますので、新たになった場合でも、今までのものも含めて出していけると思います。

○葛谷構成員 多分今までと比較したい人たちがいると思うので、前の区分も残しておいていただいたほうがいいかと。ありがとうございました。

○伊藤座長 よろしいですか。 続きまして、報告書の構成(1/2)、10ページですけれども、今までのように違いがあるので、10ページの右側のパターンに基づいた形に統一したいということでございますが、これは可能な限りこれで全部やるということですが、佐々木先生、どうぞ。

○佐々木(敏)構成員 最大限努力いたします。すなわち、この文章の原案を書いてくださる先生が、それぞれ1人ずつ、この食事摂取基準の内容の構成を十分に御理解いただくことが必要です。もう一つは、それぞれの項を書くためのエビデンスを十分に蓄積することが必要です。その2つが必要条件になるかと思います。けれども、当然ながら、1つの形式で1つのガイドラインがつくられるべきであると私は考えますので、最大限の努力を私も払いたいと思います。

○伊藤座長 わかりました。ありがとうございます。

 いかがですか。よろしいですね。

 最後に、これを私が見ていて思ったのは、2015年版も見てなのですけれども、総論、各論、参考資料とあるのですけれども、あれは参考資料ではなくてちゃんとした文章ですよね。例えば、対象特性においてどう考えるべきかとか、生活習慣病と栄養素との関連も、高血圧とか、肥満とか、それぞれについて総合的な観点から書いているという文章なので、参考資料ではないと思うのですね。そこのネーミングを、でき上がるまでに皆さんでちょっと考えていただきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。

 ありがとうございます。

 それから、エビデンスの記載は、多くのガイドラインでエビデンスと分類とか、あとはエビデンスの強さとかも書いているわけですけれども、いかがでしょうか。これは難しい部分もあると思うのですが、可能な限り、できるものはやるということで、いかがでしょうか。

 横山先生、どうぞ。

○横山構成員 確認なのですけれども、この食事摂取基準でのレビュー自体がシステマティックレビュー的な方法を使ってやっているわけですよね。そうすると、このレビュー自体もメタアナリシス的な性格を持つと思うのですが、ここに書いてあるメタアナリシスというのは、あくまでもメタアナリシスの論文が既に存在するという位置づけなのかということを確認したいのです。食事摂取基準での検討の中でたくさんコホート研究があったとして、それ自体がシステマティックに集めればメタアナリシスに相当するものなので、ここでいうメタアナリシスをどう定義するかということを確認したいと思ったのです。

○伊藤座長 佐々木先生、どうでしょうか。メタアナリシスがあっても、システマティックレビューはまたまとめてできますよね。

○佐々木(敏)構成員 メタアナリシスがあったとしても、どの目的でメタアナリシスがされたかによって、そのメタアナリシスの使い方が異なります。したがって、メタアナリシスがあるから、それを使えばできるということではなく、その中の過去論文を見て、今回は対象外であるとか、または、これには重みをつけようということを考えるべきであろう。そうすると、先ほどの私の意見にやや戻ってしまうのですが、そこは定性的な考え方を、ある程度は許さざるを得ないのではないかと考えます。

 これが最後ですが、栄養学のガイドラインにおけるシステマティックレビューの方法に関しては、薬剤等のシステマティックレビューとそのガイドラインのつくり方や治療のガイドラインに比べますと、まだ学問的にも成熟をしておりません。その意味でも、まだ未熟な分野であり、我々がトライアルの途中であると考えていただく必要があるかと思います。その点において、横山構成員の御助言等や技術等もお願いしたいと思います。

○伊藤座長 エビデンスレベルを、Ia、IbIIIIIとありまして、右側の分類をこのようにしてしまうと誤解が生じないかという御意見ですね。

○横山構成員 食事摂取基準での検討自体が、システマティックレビュー、メタアナリシスみたいなものなので、ここでいうメタアナリシスは何なのだろうかということが疑問に思って発言しました。

○伊藤座長 これは、統計の専門の先生に、特にその辺のところ、特に分類側のほうをと。

○横山構成員 分類に関しては、先ほど佐々木先生もおっしゃったのですけれども、論文を集めるのはシステマティックにやるけれども、まとめるのは定性的にとおっしゃいましたが、今回もその方針でいくということでよろしいのでしょうか。

○伊藤座長 どなたか、ほかに御意見はありますか。

 雨海先生、どうぞ。

○雨海構成員 済みません。ちょっとイメージが湧きづらいので教えていただきたいのですが、通常の臨床のガイドラインだと、クリニカルクエスチョンがあり、そのクリニカルクエスチョンに対するエビデンスレベルと推奨レベルで構成されることが多いですね。そこで今回、2015年のものをもう一回確認したのですけれども、記述は基本的にナラティブですよね。そこで教えていただきたいのですが、そのナラティブな記述の最後にエビデンスレベルを記述するということなのでしょうか。

○佐々木(敏)構成員 雨海構成員が頭に描いておられるガイドラインは、白紙からつくるのですよね。要するに、クリニカルクエスチョンからつくる。まず、クリニカルクエスチョンをつくって、それに対するアンサーを書いていくという構成です。ところが、食事摂取基準は、クラシカルには、古典的には、まだ現行としては、あらかじめ栄養素が性・年齢区分別に枠が決まっていて、そこに量を入れる。したがって、クリニカルクエスチョン型ではないのです。クリニカルクエスチョンですと、定性的なアンサーが求められることが多いです。ところが、食事摂取基準においては、この栄養素はこの性別のこの年齢の人は何グラムが1日当たり摂取するのが適切であるかという量を求められます。そのために、クリニカルクエスチョン型のガイドラインと食事摂取基準のつくり方は大きく異なります。これでよろしいでしょうか。

○雨海構成員 今、佐々木構成員のお答えでかなりわかりました。ありがとうございます。そうしますと、このエビデンスレベルの記述をされる場所は、例えば、ある栄養素の年齢区分別の量のところにエビデンスレベルが入るということですか。

○佐々木(敏)構成員 今、私の頭の中では答えをつくり得ていないのですけれども、2つ可能性はあると思うのです。1つ目は、表の中に数値を入れておいて、その数値にエビデンスレベルや推奨レベルを書く、添えるという方法。もう一つは、あらかじめその表に載せるか載せないかのところでエビデンスレベルを決めておき、クライテリアを決めておいて、これに達したから数値を載せた、これに達しなかったから数値は算定しなかったという書き方があるかと思います。ほかにもあるかと思いますが、今、思いついたのはこの2つです。

○伊藤座長 どうぞ。

○土橋構成員 佐々木先生にお尋ねしますけれども、例えば、前回のナトリウムのときなども、エビデンスにプラスの実現可能性という文言で8などと書いてあったと思います。そこの部分は、いわばコンセンサスが入ったような目標量が設定されていたと思います。そのような場合に、こういうエビデンスレベルはすごく書きにくいことはないでしょうか。

○佐々木(敏)構成員 おっしゃるとおりです。けれども、現行の摂取量分布を考えて目標量等を操作する場合も、エビデンスが必要です。すなわち、現行の摂取量分布というエビデンス、それから、何らかの介入をしたり、社会変化を起こした場合に、どの程度変化し得るかという推定のエビデンス、そのようなものを用いてつくっていく。

 それが、先ほどの7ページ、方針案の一番最後、3つ目です。目標量の設定の基本原則に該当しない場合でも、栄養政策上、目標量の設定の重要性を認める場合は値を設定する。ここに当てはまります。したがって、この栄養政策上のところにどのようなエビデンスがつけられるかということになるかと理解しております。それも含めてのエビデンスであり、最終的には、定性的または英語でTotalityというところでまとめていくべきなのだろうと考えます。

○伊藤座長 ほかにいかがでしょうか。

 宇都宮先生、どうぞ。

○宇都宮構成員 ここにどういった表記をするかということですね。策定段階でまた考えていくようなことかもしれませんが、佐々木先生がおっしゃるとおり、メタアナリシスは必ずしも定量的な根拠にはならないので、定性的なものを出すことが重要で、メタアナリシスがこうだから何グラムというところはしにくいわけですよね。エビデンスレベルがガイドラインの作成等で出される場合には、クリニカルクエスチョンに対して出された論文を、その論文に対して、この論文がどうかということになって、最終的にQSに対する推奨レベルはその論文に基づいて決めているわけですね。

 今、ちょっと雨海構成員がおっしゃったことと似ているのですけれども、最終的にどう決めるかということのステートメントを出すときに、それについては推奨レベルなので、それに基づいて論文がエビデンスレベルということになりますから、例えば、それに基づいた論文について、エビデンスレベルをいちいち出して、何グラムと出すのか。まとめてというのはこのエビデンスレベル上はしにくいので、その進め方になろうかと思います。

○伊藤座長 エビデンスをきちんとどこかで示しておくことは必要だと思うのです。これは、この推奨は、個人の憶測とか、そういうことではなくて、ちゃんとエビデンスに基づいて、これは勝手に言っているわけではないのだということは、非常に基本的なことなので、どこかに書きつけるような形で、作成しながら含めてお願いしたいと思います。

 よろしいでしょうか。

 最後のページですけれども、高齢者のレビューを行う際に考慮することとして、体重、日常生活動作、認知機能等で、それぞれに基準を示す、検討をしてみるということなのですが、かなり細目にわたってしまうかもしれません。ADLとか日常動作とかということから見ると、これはどうなのでしょうか。

○葛谷構成員 初めの話では、要支援ぐらいまでという話だったと思うのですが。それから、認知症だとMCIレベルの人たちを対象とするということだったので、そうすると、例えば、要支援レベルだと、ADLも、これは多分基本的ADLBasic ADLだと思うのですけれども、ほとんど自立の対象者だと思うのです。ADLを区分に分けてやるというのはどうかと思いました。認知症もいろいろな分類があると思うのです。例えば、FASTの分類などで重症度を分けてやるということができます。しかし、そうすると初めの考え方とちょっとずれているのかなと思ったのですが、いかがでしょうか。

○伊藤座長 ここのところではっきりさせておきたいのですけれども、これはあくまでも事務局なのですが、日常生活動作、これは、ADL、いわゆるそういう観点にするのか、例えば、運動とか、活動としたほうがむしろいいのか、スポーツ医学からはどうでしょうか。勝川先生。

○勝川構成員 私は、エネルギーの部分ことからお話ししたいと思うのですけれども、基本的には体重はエネルギー消費量を規定する非常に重要な因子ですので、エネルギー必要量を推定する際に入ってきています。それから、身体活動はPALという形で身体活動レベルが低い・普通・高いに分かれております。多くの栄養素、ビタミンB1B2、ナイアシン以外は活動レベルによって推奨量や必要量に差がないということにはなっております。

 高齢者の場合、特に認知機能が少し低下されてきたような方に関して、それぞれの身体活動レベルにどのような日常生活動作や運動が対応するかは十分なエビデンスがないかもしれませんが、今回の策定にあたって、検討する価値はあると思います。

○伊藤座長 佐々木先生、どうぞ。

○佐々木(雅)構成員 今、おっしゃったとおりなのですけれども、フレイル予防の場合は、運動とか、生活レベルはとても大事なので、3つとかに分けることが無理だったら、基本、これはどれくらいの活動量の人を想定してこの栄養量を挙げたということは明記しておく必要があって、それよりも活動量の落ちる人にそれを摂取してもらうとかえってマイナス面も出てくると思いますから、どういう方を基準とした食事の設定であるということを、特にフレイル予防の場合は記載したほうがいいと思います。

○伊藤座長 この会は、これからレビューチームをつくっていろいろやっていく中の基本方針をきちんと決めておくということなので、この辺のところを曖昧にしておくと恐らく次のワーキンググループで困るのではないかと思うのですが、佐々木先生、どうですか。例えば、これは細かく分けるのか、どういう対象にするのかというざっくりした形にするのか。

○佐々木(敏)構成員 現行の食事摂取基準は、日本人の代表的な単位を決めて、そこで策定し、そこのどんな単位かということは、総論に参照単位として書いてある。同じことが、今、佐々木雅也構成員がおっしゃったことでありまして、高齢者のところにおいても、こういう単位、プラス、こういう状態の人たちから策定した、算定したということをしっかりと記述すべきというのは最低条件だと思います。

 その一方で、機能別にというのは、推定の域を出ませんが、十分なエビデンス、論文、また、資料をそれぞれの機能別に整えることはかなり難しく、試みるということは必要だと思いますが、最終的には、信頼度の高い値、文章をお出しするためには、佐々木雅也構成員がおっしゃったことが現実的であると私は考えます。

○伊藤座長 ほかにいかがでしょうか。

 木戸先生、いかがですか。

○木戸構成員 基本的に、できるかどうかは別としまして、こういう検討はすべきだということは、随分前から常に議題にものっておりました。ただ、どのようにしてということと、そういった根拠になるエビデンスがちゃんと集まるかというところで、今までできてこなかったわけです。

 実際に、高齢者でも、80歳を超えた方でも70歳と同等な状態でいいという方もいらっしゃれば、70歳でも85歳以上のような状態、それによって栄養のとり方とか、それは大きく変わってくるものと思います。そういう意味で、年齢だけではなくて、生理機能、生体機能、あるいは指標、そういったものを基準にしながら考えないといけないというのが、高齢期の栄養の大きな課題ではないかと思っています。そういう意味で、こういうトライアルをしていくということは大賛成です。

○葛谷構成員 異存はないのですけれども、例えば、櫻井先生がさっきお話しになったのは、どちらかというと認知症予防にかかわる内容だと思うのですね。実際に認知症になってからの栄養管理の報告は結構あります。ただ、本当にそこまで入れてしまうのか、そうではなくて、いわゆるその手前までで今回はおさめておくのかというのは結構大きな問題で、あと、先ほどのADLBasic ADLが障害している人たちの範囲まで踏み込むのか、そこまではいかなくて、先ほどからのお話の活動量、活発に活動できる人と、それとも余り自立した活動できない人というレベルで分けるのかということは、はっきり決めておいたほうがよろしいかと思いますので、お願いします。

○伊藤座長 木戸先生、どうぞ。

○木戸構成員 葛谷先生が言われるように、明らかに機能が落ちているところと、今回のフレイルというのは、ある意味でちょうど中間的なところで非常に定義がしにくいのですけれども、今回の策定については、そのフレイルのところまでという理解でいいのではないかとは思いますが、そのときにどういう指標あるいは基準にするのかというのが課題になると思います。

○佐々木(敏)構成員 2015年版で4つの代表的な生活習慣病の重症化予防の章がつくられました。そこでは、重症化予防であって、重症者ではない。したがって、高齢者に対しても同じ基準を設けるべきだと私は考えます。

○伊藤座長 そういうことにしましょう。明らかな認知症とか、明らかな要介護というのはこの範疇に入らないといことで、フレイルまで、認知機能が低下程度というところまでと決定してよろしいですか。

 フレイルを目的にしたものも検討するということは、今のところに含まれていますね。それから、活用に当たって留意する事項ということで、摂取基準とするために、利用者、行政・医療・介護領域の管理栄養士等の意見を聴取する。これは後でパブリックコメントなり、そういうところでということですか。

○塩澤栄養指導室長補佐 今、考えているのは、親会は一旦今回で、その後はワーキングになりますけれども、また秋口以降のいずれかのタイミングでこういう時間を設けられたらよろしいかと考えています。

○伊藤座長 わかりました。これはぜひやりましょうということでよろしいですね。

 あと、全般に、斎藤先生も一言、今までの全てのことで結構でございますので、先生の観点から。

○斎藤構成員 前の話に戻ってしまうかと思うのですが、重症化予防というところも入れるということで、とても重要だと思います。

 そうしたときに、今、いろいろな診療ガイドライン等も出ていて、そことの整合性、万が一こちらで調べたものと診療ガイドラインの整合性がちょっととれないというときにどうするのか。特に摂取エネルギーなどですと、食事摂取基準ではBMI又は体重変化量で推定していますが、臨床現場、特に、糖尿病の予防や治療などですと、標準体重に身体活動量を掛けて出している。多分それはガイドラインで出ているので、そうするとその辺の整合性をどうやってとっていくのか。ちょっと疑問を持ちました。

○伊藤座長 そのためにガイドラインを作成しているいろいろな先生方にここに集まっていただいていますし、各ガイドラインをつくっている学会ときちんとディスカッションをしながら、それは調整することになろうかと思います。あちこちで全然違ったことを言っているのは皆さんも混乱しますので、目的と、もし違った場合にはどこが違うのかということを明確にしておくというプロセスをぜひやりたいと思います。

 よろしいでしょうか。

 櫻井先生、どうぞ。

○櫻井構成員 1つ確認させていただきたいのですが、認知症の面で考えますと、認知症発症を一つのアウトカムにするという理解でよろしいのでしょうか。予防という観点からということでございます。

 それと、その場合には、非常に長い観察が必要でございまして、最近の研究の多くは認知機能の低下ということをもっと短期的なアウトカムにすることが多いわけでございますけれども、それも含めるという理解でよろしゅうございますでしょうか。

○伊藤座長 含めるということでいいと思います。

○櫻井構成員 わかりました。

○伊藤座長 どうぞ。

○勝川構成員 前回の2015年版のときに、保健指導レベルの生活習慣病を有する方の知見を集めるに当たって、エビデンスが十分でない場合、受診勧奨レベルの生活習慣病のデータも収集し、内挿して、決めるという方針があったと思うのです。フレイル予防に関しても、データは少ないと思われますので、フレイルの方のデータも収集しながら、フレイル予防を議論するという方向があってもいいのではないかと思います。

 もう一つ、生活習慣病に関連する各学会のガイドラインは、特に個別の患者さんに対する食事指導を念頭に置いております。その場合、患者さんが食事量を過小評価するとか、遵守しやすさとか、そうした因子も含めて指示エネルギー量を決めている面があり、食事摂取基準の推定エネルギー必要量とはちょっとずれると思います。生活習慣病、特に糖尿病患者さんのエネルギー必要量のデータは、佐々木雅也委員を中心とされる滋賀医科大学のグループがもうすぐ発表されると伺っております。そういったデータも参考にしながら、生活習慣病患者でどれくらいのエネルギーが必要そうか、を見ていくことは必要ではないかと思います。

 葛谷先生が本日のプレゼンテーションで生活習慣病からフレイルへの移行についてお話しされました。BMIについては、食事摂取基準の2015年版で望ましいレンジが年齢とともにだんだん右にシフトし、それを踏まえているわけですけれども、エネルギー必要量も突然どこかで変わるわけではないのです。各年齢の望ましい体重を維持するのに必要なエネルギー量ということで言えば、メタボ予防もフレイル予防も、本来そんなにずれないはずですので、生活習慣病の食事療法のエネルギー指示量がエネルギー必要量とどれぐらい合致しているかについては、食事摂取基準で議論しておいたほうが、メタボ予防から高齢者のフレイル予防にスムーズに移行するうえで、意味があるのではないかと思います。

○伊藤座長 佐々木先生、何かコメントはございますか。

○佐々木(雅)構成員 ありがとうございます。

 今、DLWの解析はほぼ終わって、糖尿病の方と健康な方の総エネルギー消費量に関する論文化は何とか今回の摂取基準の策定に間に合うようにということで、今、まとめているところではあります。また、勝川先生もおっしゃいましたけれども、本人の申告と実際の消費エネルギーにはかなりの乖離があるというのは確かですので、こちらについても、この摂取基準を活用する場合のガイド版のようなものに織り込めれば良いと考えております。

○伊藤座長 よろしいでしょうか。

 私の不手際で、予定よりおくれています。先生方の活発な議論に感謝いたします。

 事務局から、資料4を説明していただきましょうか。

○塩澤栄養指導室長補佐 それでは、資料4を簡単に御説明させていただきます。こちらは「食事摂取基準(2020年版)の策定に向けた作業体制について(案)」でございます。まず、青く四角で囲っているところがございますけれども、こちらが、今、佐々木敏先生を中心に進めていただいている厚労科研費でのいわゆるレビューのところでございます。こちらでは、上に「エネルギー・栄養素等の基本的なレビュー」、「疾患とエネルギー・栄養素等の関係のレビュー」ということで書かせていただいておりますけれども、基本的にレビューを進めていただいて、つまり、文献検索、収集・整理とか、先ほどにもありましたけれども、エビデンスレベルの分類等をやっていただいて、最終的にレビュー結果のまとめ、そして、基準策定のための基礎資料の作成というところまでやっていただくものでございます。

 こちらの結果を踏まえて、その下でございますけれども、ワーキンググループの先生方で、摂取基準の案、つまり、具体的にこの量でいくとか、そういったことを御検討いただき、さらには報告書に記載する説明文の原案まで書いていただくということをお願いしたいと思っております。その成分ごとに、それぞれの量、記載内容があると思うのですが、それを持ち寄って、また親会で御議論いただいて、最終的に年度内に報告書を取りまとめるといった流れで進めていかせていただきたく思っております。

 以上です。

○伊藤座長 よろしいですね。これは、手続き、プロセスということでございます。

 それでは、厚労科研の研究代表者の佐々木先生から、レビューの方向性について御説明をお願いします。

○佐々木(敏)構成員 資料5をごらんください。

 相当御議論が深まっておりますので、必要でないところは割愛をしたいと思います。

 1こま目です。15年版の基本構造を簡単にお示しします。そして、先ほど御紹介いただきました厚労科研費の進捗状況、最後に、既に御議論されておりますが、Evidence-basedをどのようにこの食事摂取基準に取り入れていくかということに関して、簡単なものを準備いたしました。

 3こま目です。これは食事摂取基準の構造でございまして、既に事務局から出していただいたものでございますし、構成員の先生方は十分に御存じのところでございます。これに関しては、特段変更の必要は、少なくとも私どもは感じていないものでありまして、基本的にこのまま踏襲をさせていただきたいと考えております。特に目標量というものは日本独自のものでございます。そして、2020年版でさらにこの部分が強化されるということで、日本から世界への発信としても非常に重要な意味をさらに持つものと感じております。その一方で、不足に対する推定平均必要量や目安量、過剰に対する耐容上限量は、人が生きる上での基本でございます。したがって、目標量以上にこの必要量と上限量関係の値を正しくつくり、正しく使うということも、決しておろそかにすることなく、2020年版を策定しなければならないということでございます。

 4こま目をお願いします。これは2015年版の構造でございます。総論、各論、参考資料でございます。総論と各論は踏襲したいと私は考えております。先ほど、エネルギーの実際にとっているものと指導や現場での乖離の問題が出ておりますが、これは総論の活用のところに既に書き込んでおります。エビデンスがさらに累積されるようですので、この活用の部分もさらに深く書き込んで使いやすいものにすべきであると私は考えます。参考資料につきましては、既に出ておりますように、しかるべき名称を与えるべきだと私も賛同いたします。

 その次がBMIの範囲でございまして、これはかなりエビデンスがふえてございますので、つくり直す必要があろうかと思いますし、また、年齢区分も少々高齢者のところは変わります。しかし、この全体の構成においては踏襲をしてもよいのではないかと考えております。

 6こま目でございます。4つの生活習慣病について、その方向とその程度、栄養素と生活習慣病の関連を各専門の先生方につくっていただいて、食事摂取基準のワーキンググループの全員でまとめたものでございます。このようなものを提示しつつ、そのエビデンスを1つずつ丁寧に記述し、使いやすい文言としていくことが必要であると考えております。

 対象者でございます。何度か既にお話に上がってございます、2015年版では青い矢印の右端、受診勧奨レベルまで矢が少しだけ入ってございます。2020年版におきましても、この部分は踏襲をしたい。既に御意見が出ておりますように、各疾患の治療のガイドラインとの整合性、すり合わせ、使い分け等についても、十分な配慮が必要であると考えます。

 8こま目です。これが活用の最初の図でございまして、食事の評価からする。アセスメントから入る。アセスメントなくしてプランなし、プランなくして実施なし、実施なくして検証なし、検証なくして改善なしという順序でございます。すなわち、アセスメントがなければ何もないという図を描いてございます。この考え方は、他の分野でも広まってきております。したがって、食事摂取基準でもこれを踏襲しつつ強化すべきであると私は考えます。

 9こま目でございます。参考文献はこのように推移してきました。しかしながら、これは食事摂取基準に収載された、直接引用されたものに限っております。したがいまして、参照されたものはこれの数倍または10倍、20倍という数に及んでいるのではないかと想像されます。どの程度、今回のグループの専門家の方々が、協力を惜しまず、汗を惜しまず、働いていただけるかということにかかっているかなと。この図がどうなるかが見ものでございます。

 次は、食事摂取基準の厚労科研費の進捗をごく簡単に御報告申し上げます。報告書の提出期限でしたので、報告書を提出したところでございます。内容に関しましては、これは2カ年でございまして、1年目が昨年度でございました。昨年度は、2015年版で課題として掲げられたものを優先とし、さらに私または関係者が必要だと考えたものの課題を挙げまして、それについてできる限り系統的なレビューを行いました。しかしながら、資料を提出することを目的としておりまして、結論はできるだけ出さないようにする。その一歩で、エビデンステーブルを丁寧に付すということを行いました。もう一つは、このレビューは、次の世代のこの研究者並びにガイドライン作成者を育成するという目的も含め、意図して若手の研究者に協力をあおいで行ったという特徴もございます。その意味で、でき上がったものはやや至らないところがあると思いますけれども、そこを少し大目に見ていただいて、教育的・指導的観点も含めて活用していただければと考えております。

11こま目、12こま目に、取り上げた内容のタイトルを掲げております。

13こま目をごらんください。ここ以降は、それ以外に行いました研究成果の概要でございます。ナトリウムは大きな問題でございますので、24時間尿中ナトリウム排せつ量を用いまして、ほぼ全国レベルでの調査が完了し、論文作成も完了いたしました。

14こま目でございます。公衆衛生的には、平均値が幾らよりも、ここを満たしていない人、また、これを超えている人が国民の何割いるかということが行政上は非常に重要でございます。そうすると、分布の幅が非常に重要なのですけれども、1回のみの測定では分布幅が広がってしまいます。習慣的になりません。ここを解消するためにはどうすればよいかという、公衆栄養学的な、基礎的な、そして、食事摂取基準では非常に重要な研究も行っております。

15こま目は、その全国調査の結果ですので、割愛いたします。

16こま目は、全国12地域の小中学校の子供たち、今回は高齢者が中心になっておりますが、小児の健康も決してないがしろにしてはなりません。未来を支えてくれる方々でございます。その中で、大切な学校給食というものがございます。そこで、学校給食も含め、子供たちがどのように食事摂取基準をうまく食べているか食べていないかということの全国調査を、厚生労働省、文部科学省、本学の3者の協力で実施いたしました。これも結果がまとまって報告済みでございます。

 下が、その中の飽和脂肪酸。小児においては、飽和脂肪酸の目標量が算定されておりません。それは、どれぐらい摂取しているかがよくわからないからだという文言がございまして、そこで調査が行われ、研究論文が書かれました。

18こま目でございます。微量栄養素、ここでは微量ミネラルの一つのヨウ素でございます。日間変動、食べる量が非常によって大きく異なっておりまして、ガイドラインをつくる、また、使う上で、微量ミネラルは大きな問題を抱えております。そこで、習慣的摂取量を微量ミネラルでどのようにはかればよいのかという研究を行いました。その結果、その測定すら難しい、そして、使い方はさらに難しいのではないかという算定並びに活用の課題もさらに明らかとなりました。このようなことも間接的に食事摂取基準の算定並びに活用に生かせるのではないかと考え、論文が書かれました。食事摂取基準は、原著論文がございませんとガイドラインはつくれません。したがって、とにかく論文を書くということでございます。

 最後に、Evidence-basedの可視化と活用の向上に向けてというところです。既に議論がされたところでございますが、ポイントだけもう一度押さえさせてください。

20こま目でございます。目的、値の算定プロセスと算定された値の利用可能性を示す、すなわち、エビデンスレベルと推奨の強さを示すことによって、活用の便を図ることというのが目的とは考えますが、背景と現状を鑑みるに、諸外国の食事摂取基準は、どれもエビデンスレベルも推奨の強さも示しておりません。これは、ほかの多くの予防・治療ガイドラインとは異なり、「値」、摂取量を示すものであり、定性的な文章ではないということ、かつ、その値の算定に当たり、複数の異なる方法による研究が比較・参照され、最終的に値が決定されるためにやむを得ないと私としては考えております。しかしながら、比較的他の予防・治療ガイドラインに近いと考えられる目標量においてのみ、エビデンスレベルと推奨の強さを示すことができないかというチャレンジをすることが必要であるかと私は考えます。

 補足でございます。これが最後でございます。食事摂取基準は、現場でほぼそのままに使っていただくガイドラインでございます。エビデンスの集大成、すなわち、資料的価値としての報告書を目的とするものではございません。したがいまして、「エビデンス」と「使いやすさ」のバランスと折り合いをつけねばなりません。その両者のバランスと折り合いをどこでどのようにつけるか。ここも構成員の先生方はぜひ考えていただきたいところでございます。その一方で、事務局からも少しございましたが、策定する者、教育する者、使っていただく方への、さらなる教育という言い方はややよくないかもしれませんが、周知、御理解の強化が必要かと考えます。しっかり理解してしっかり使っていただくための周知も力を入れて行っていくべきと考えております。

 当検討会の報告書がほぼそのまま食事摂取基準になり、そのまま現場の物差しとなります。それに堪え得るものをぜひこの会でつくっていきたい、また、つくらねばならないと考えている次第でございます。

 以上でございます。

○伊藤座長 ありがとうございました。

 この基準をつくるための論文をたくさん書いていただいて、ありがとうございます。そういうことで、今回のレビュー、方法の方向性ということについて、皆さん、何かありますでしょうか。この方向性で行っていただくということでよろしいですか。

 これはワーキンググループや研究班で作業を進めていくことになります。さらにこれはいろいろと問題が出てくるものをまたディスカッションをしながら整理していくということになりますが、このような作業体制、手順で行いたいと思いますけれども、よろしいですか。

 ありがとうございます。

 この策定方針、作業体制を踏まえた上で、ワーキンググループで今後やっていただくことになりますけれども、その長につきましては、2015年版に引き続いて、佐々木先生にお願いすることにしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 先生、よろしくお願いします。

○佐々木(敏)構成員 健康に留意しつつ、先生方の御協力をお待ちしております。よろしくお願いいたします。

○伊藤座長 ありがとうございます。

 それでは、議論はここまでということにしたいと思います。

 先生、どうぞ。

○横手構成員 ありがとうございました。大変勉強になりました。

 今回から参加させていただいたものですから、1つだけ御質問をさせてください。このようにレビュー結果や数値目標が出てきた場合、これらをどのようなスタンスで示すかによって読み手の受け方は大分変わってくると思います。日本の戦後の栄養はもともと栄養不足をどう解消するかに始まり、次は過栄養、すなわちメタボや生活習慣病が問題となり、今度は、長寿社会を迎えフレイル・サルコペニアという大きな流れの中にあると考えます。一方で、数としてはさほど大きくないかもしれませんが、重要な問題として、先ほど葛谷先生のお話の中にあった若い女性の“やせ”や佐々木先生のデータでも一部御紹介された子供の貧困の問題があると思います。例えば、給食が1日の中で一番良い食べ物の子供がいるなど、そういうことはこの数値とかレビューには載らないと思いますけれど、総論や参考のような箇所で注意喚起として記述を加えたりする余地はあるものでしょうか。それとも、このプロジェクトはあくまで基準値を対象としているので、そのようなスタンスではないのか。そのあたりのところをもし教えていただければと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○伊藤座長 どうでしょうか。

○清野栄養指導室長 食事摂取基準自体は基準値として示したいと思っておりますけれども、先ほどのフレイル予防とか、大きな方向性については、当然、今回策定する中でお示ししたいと考えております。その上で、女性のやせとか、あるいは子供の関係とか、そういったところについて、普及・啓発の段階で実際の摂取量とか体格とあわせて普及・啓発をしていきたいと考えております。

○伊藤座長 大変重要な問題を御指摘いただき、これも前回のときにもそういうお話が出たのですが、この報告書の中には、そういうことについてもちゃんと述べておくということが必要だと思います。どういう形で述べるかは、総論の一番初めのところで述べるのか、目的の中で述べるのか、その辺はちょっと考えてみないといけませんけれども、きちんとそういうことはこの報告書の中で述べることにしたいと思います。そういうことについては、恐らくデータも入れたほうがいいかもしれません。私個人としては、ただ単にそういう問題があるというだけではなくて、具体性を持った形のことをきちんと入れておくということが必要だと思います。

 いかがですか。

○佐々木(敏)構成員 全く同感でございます。必要だと考えます。それが、総論で、特に活用の部分で、どのようにこの数値を活用するかというときには不可欠の情報であり、そこもしっかりとエビデンスに基づいて記述するべきであると私は考えます。

○伊藤座長 どうぞ。

○雨海構成員 佐々木敏構成員から、最後の最後に、補足のところで「『教育者への教育』が喫緊の課題か?」という疑問形なのですけれども、これは実は「である」の断定として受け止めなければならないと私は感じました。喫緊の課題である理由の一つは、将来的にこのガイドラインを実際に現場で使うのは現場で患者さんやご利用者さんのために活躍する管理栄養士さんが大多数であろうと思います。この未来の管理栄養士さんを教育する立場にある教育者がよくわかっていない可能性があるのではないか、という懸念が非常に強くあります。今回のこの委員会の構成員の中にも何人か私と同じ教育の立場におられる人がおられます。将来的なことを考えると、今後、このガイドラインができた段階で、これは事務局への私の個人的な提案ですけれども、管理栄養士になるべき学生を教育する教育者及び住民、国民の健康を司る行政管理栄養士は必ず正式なガイドラインレクチャーを受けて、それを正しく理解して使えることを確認するような作業が必要だろうと思うので、そこをぜひ検討していただければと思います。

 以上です。

○伊藤座長 どうぞ。

○宇都宮構成員 この2015年版も、その後でいろいろ啓発を出されましたよね。今、先生が管理栄養士とおっしゃいましたが、一番わかっていないのは医者なのです。ですから、ぜひそれを視野に入れて、ここには医者は十分入っていますので、お願いいたしたいと思います。

○伊藤座長 ありがとうございます。

 何でもいいですから、全体を通して御意見がございましたら。

 よろしいですか。

○雨海構成員 何回も済みません。最後に、これは私の疑念なのですけれども、今回、生活習慣病で一つの大きなパートがあって、フレイルティが今回、もうひとつ別に公正として立ち上がりますよね。そこで、患者さん、高齢者の立場からいうと、実際にはその両方が重なっている方々がいらっしゃいます。ガイドラインの文言を記述する側としては、そのガイドラインを使う側のために、これらを完全にきれいに分けるべきなのか。あるいはそのままの状態でオーバーラップをしているほうが使いやすいのか。どちらの書き方もありだとは思うのですが、私には結論が出ないので、御指示いただければというか、コメントをいただければと思います。

○伊藤座長 いかがでしょうか。オーバーラップする方、例えば、やせで高血圧とか、そういう方はいっぱいいますので、やせていても糖尿病とか、そういう方はいますので、そういうターゲットに関しての記述も恐らく必要になってくるのではないかと思うのですけれども、どうでしょうか。

 どうぞ。

○佐々木(敏)構成員 ただ、掛け算をしていきますと、膨大な数の積が出ます。それは恐らく書き切れないですね。これはやはり使う方の技量に依存するのだと思うのです。個々に書いてあっても、それを目の前の対象者さんにあわせて統合できる力が恐らく問われるであろうと。CとDを掛けた場合はこう使え、FとHを掛けた場合はこう使えというようなことを一つ一つガイドラインで書いて、それをそのまま使うということは恐らく現実的ではなかろうと。しかしながら、そういう重複した人たちがたくさんいて、個々に書いてあるものをあわせて使うことが正しいのだということを総論に書いておくことは必要かと思います。その程度ではないでしょうか。

○葛谷構成員 基本的には佐々木先生がおっしゃるとおりだと思いますし、実際に高齢者のところ、また、認知症のところでそういう内容が入ってくるかもわかりませんが、そのときに、例えば、各専門のガイドラインとかかわった方々、ここの中のメンバーにもおられると思うのですが、両方とも納得していただかないといけないと思います。ちょうどこういう会がありますので、そこはこの場などでも使わせていただいて、お互いに双方向性に、お互いに納得して最終産物にしていただければありがたいなと思います。

○伊藤座長 個々に分けると、一つ一つ分けたら、高齢者、生活、アクティビティーとか、認知症の程度とかと分け始めると、本当に膨大な数になって、書き切れないと思うのですね。読むほうもそれだけあるとなかなか読み切れないというところがあるので、できれば総論とかを使うときに、どういうところに留意してこれをこのように使うのかというセクションは、恐らく一言つくっておいたほうがいいと思うのですね。

 どうぞ。

○宇都宮構成員 そのとおりだと思うのですが、一番その中でネックになるのはエネルギーだと思うのです。中心はエネルギーだと思います。ですから、全てのバリアブルを入れるのは不可能なので、もちろんそれはおっしゃるとおりなのですが、エネルギーをどう抱えるかというところはどこかで押さえたほうがいいように思います。それが中心になって、それをどのように活用するかということなので、先ほど勝川構成員からありました、推定エネルギーをどのように考えるかといった考え方をしっかり出せば、あとはどのようにしていくかという非常に大きい議論になるので、ここでぜひまとめるといいかと思います。

○伊藤座長 ほかによろしいですか。全般を通して何でも結構です。この後、ワーキンググループで佐々木先生にやっていただくときに、先生は十分に御存じだと思いますけれども、何か。よろしいですか。

 本日も、時間ぎりぎりまで本当に活発な議論をありがとうございました。

 それでは、事務局にお渡しします。

○清野栄養指導室長 活発な御議論をありがとうございました。

 今後の日程につきまして、御案内申し上げます。本日決まりました方針をもとに、ワーキンググループにおいて作業を行っていただき、大体10月ごろをめどに第3回の検討会を開催したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 本日は、これで閉会といたします。ありがとうございます。


(了)

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