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2018年10月19日 第4回生活保護受給者に対する就労支援のあり方に関する研究会 議事要旨

社会・援護局保護課

 

○議題

 当事者、支援団体等からのヒアリング

○議事

当事者や事業者、自治体等から、生活保護受給者に対する就労支援の実情について、ヒアリングを実施した後、出席者による意見交換を行った。主な意見は以下のとおり。

◆生活保護を受給する前や生活保護受給中、特に辛かったことや困ったことはどのようなことか。また、それを相談できる相手はいたか。
 ・ ケースワーカーは「障害者だから」という理由で働けないと決めつけ、意思を聞かれることもなかった。
 ・ 働きたくても方法が分からず困った。困ったことを相談できる相手はいなかった。
 ・ ケースワーカーからは差別的と感じる発言もあった。
 
◆生活保護受給中「働くこと」について、どのように考えていたか。
 ・ 稼動能力の有無を周囲が決めるのではなく、働きたいかどうかをきちんと聞いてほしい。
 ・ 一方、まわりが無理強いしても、働くことに気持ちが向かないような課題を抱えていることがある、ということも考えてほしい。
 ・ 働くことは社会にコミットする手段あり、仕事とはお金を得るだけでなく、社会や人と関わりを取り戻すものだと思う。
 ・ やりがいや生きがいのようなもの、それが働くことだと思う。
 
◆ケースワーカーや就労支援員からは、どのような支援・サポートがあったか。また受けたかった支援はあるか。
 ・ 支援というような支援は無く、働いていいのかすら分からなかった。
 ・ ハローワークの使い方も分からなかった。
 ・ 課題を抱え、生活保護を受給している人達を支援したいと思っている人、福祉の勉強をしてきている人にケースワーカーになってほしい。
 ・ どのような仕事ができるか、一緒に考えてほしい。
 
◆仕事を探している時にどのような仕事(勤務条件など)を希望していたか。また、実際に就労を決めた際に就労先を選んだ理由、決め手はあったか。
 ・ 現在の職場を選んだ理由は、精神障害者に理解があると思ったから。
 ・ 自分で電話をかけて、初めはボランティアとして採用されたが、職員はとても優しく、穏やかな職場でとても働きやすかった。
 
◆就労した後、ご自身の心境や生活状況で大きく変わった点はあったか。
 ・ 生活保護を脱却したことで自信がついた。自分の収入で食べていける喜びを感じた。
 ・ 金銭的に少し余裕ができ、友人と会ったり、映画を見たり、行動範囲が広がった。
 ・ 家族との関係が良好になった。
 ・ 保護受給中は市内の病院に限定されていたので、相性の悪い精神科に通い続けていたが保護を脱却したので自分で行きたい病院に行けるようになった。
 
◆就労を続けるためには何が重要だと思うか。就労を続けるために何か支援を行う場合、どのような支援等があったらいいと思うか。
 ・ 少し休憩したり、ちょっと手を抜いたりすることが大事だと思う。他にも有給を積極的に使って、体や頭をリフレッシュすることも大事。
 ・ 困った時に相談に乗ってくれたり、トラブルが起きたら支援員の人が職場の上司や職員と話してくれたりして、橋渡しをしてくれると良い。
 ・ 仕事の内容やペースに配慮をしてくれて、徐々にステップアップできるようにしてもらえたことで、週5回に仕事を増やし、今も続けられている。

◆支援対象者の中には就労意欲が低い方もいると思うが、その要因としてどのようなことが考えられるか。また、就労意欲が低い方に対して、どのような支援を行っているか。
 ・ 複数の就労阻害要因を持ち、就労や社会生活がうまくいかず、自信を喪失。過去の失敗から社会への復帰が怖くなってしまい、離職・保護が長期化してしまうためと考える。
 ・ 自分の話をよく聞いて理解・応援してくれる人がいると感じていただけるカウンセリングを行い、参加しやすく、楽しく、参加することで少し前に進んだと感じられるグループプログラムを提供、自分でもなんとかやっていけそうと思える具体的な出口(就職)の開拓・紹介を数多く行い、定着するまで支援を行う。
 
◆就職希望先に高い条件を求めたり限定的な職種のみ希望する場合など、本人の希望と、本人の状態や求人内容にミスマッチが生じている場合、どのような支援を行っているか。
 ・ まず本人の希望を優先したオーダーメイドの開拓を行い、プロセスを共有する。このプロセスを経ないと、本人に雇用状況を説明しても受け入れられる状態にない。
 ・ 並行してキャリアカウンセリングにより視野を拡大していく支援を行う。
 
◆就職が決まった場合、本人が就労を継続できるように何か支援を行っているか。就労を継続するために必要な要素としてどのようなことが重要か。
 ・ 定着支援
 ・ 就労後はご本人が一人で悩んで辞めないよう定期的にフォローを行う。
 ・ 就労前のマッチング時の就労阻害要因等の開示、対象者の状況に合わせた条件交渉、職場見学、企業に対するフォローも重要(環境・教育の配慮を提案など)。
 
◆福祉事務所との間で、支援方針の情報共有や連携した支援の実施など、連携は行われているか。現状や課題、今後の改善方策は。
 ・ ケースワーカーと打ち合わせの上、支援対象者との初回面談はケースワーカーを含めた三者面談とし、その後も週1回の面談後等、随時支援状況を共有。
 ・ 支援記録を毎月ケースワーカーへ提出。特に就労以外の問題は協力をお願いする。
 
◆就労支援事業を実施する上で、改善すべき点や要望等。
 ・ 就労準備支援・就労支援(さらに定着)の一体・ワンストップでの実施促進。準備と就労のシームレスな支援体制を創ることが重要と考える。
 ・ 生活保護受給者の就労支援インフラ(特に地域の求人)は、高齢者・障害者・ひきこもり・ひとり親等、あらゆる就労阻害要因を持つ方に有効。生活保護受給者のように自治体が工夫して活用可能な予算を創り、一体的に実施することが効果的と考える。
 
◆支援対象者の支援要請・受け入れ等に際して、福祉事務所との間でどのように連携しているか。また、支援対象者の選定等に際して課題と思っている点や、福祉事務所に対する要望等。

 ◇連携状況
 ・ 支援対象者の選定においては、自治体のケースワーカー及び就労支援員等とハローワークの就職支援ナビゲーターによる協議を実施し、支援候補者の就職準備性・就労意欲・就労に向けた阻害要因の有無等を踏まえて支援対象者の選定を実施している。
 ・ 支援候補者の選定については、個別に事前の相談等により、自治体の相談状況や「生活困窮者の就労準備状況チェックシート」を活用し相互の情報共有を図っている。
 
 ◇課題・要望
 ・ ハローワークによる支援事業についてよく理解されていない者もおり、都度説明をしているが、理解が乏しいケースがある。
 ・ ケースワーカーや就労支援員によっては、ハローワークに送り出すことを躊躇されている場合もある。
 
◆支援対象者への就労支援を行う段階において、面談への同席や、支援方針や求職活動状況の共有など、福祉事務所とどのように連携しているか。就労支援段階での連携等について、福祉事務所に対する要望等はあるか。
 
 ◇連携状況
 ・ 支援プランは、個別ケースに応じて策定している。具体的には、支援対象者の生活面の状況や就労の希望条件、サポート体制等を情報共有している。また、支援プランの進捗状況も都度相互に確認・共有(電話等により)している。
 
◆生活保護受給者等を受け入れる企業開拓など、企業に対して取り組まれていることはあるか。そのような求人開拓等において、福祉事務所と連携した取組等は考えられるか。
 
 ◇取組状況
 ・ 支援対象者の個別ニーズにより、応募が可能と思われる求人に対し勤務日数や勤務時間を支援対象者のニーズに合わせることが可能か、求人要件の緩和等を交渉している。
 ・ 求人開拓については、社宅や寮、住宅補助がある求人、過去に採用実績のある事業所や生活保護受給者等の採用が見込まれる事業所に対し、個別に実施している。
 
◆支援対象者が就職した後の職場定着支援について、取組状況は。また、福祉事務所との役割分担など、どのように連携しているか。

 ◇取組状況
 ・ 就職後の職場定着支援について、支援対象者であることを開示した企業であれば、職場定着状況の確認や課題の聞き取りを行い、課題解決に向けた助言を実施している。
 ・ 支援対象者であることを開示しないケースについては、本人に電話連絡するなど、適宜確認し必要な助言を実施。本人から愚痴や報告に来てくれることも少なくない。

 ◇役割分担
 ・ 職場定着支援において、抱える課題が生活面の事項か、就労面の事項かによって、職場定着支援の役割を分担している。また、対象者自ら連絡してくるケースもあり、自治体とハローワークが相互に情報共有して支援を実施している。
 
◆生活保護受給者に対する就労支援や企業開拓、定着支援等を実施するうえで、特に気をつけている点や配慮していることはあるか。また、何か具体的に取り組んでいることはあるか。

 ◇特に配慮している点
 ・ 本人が開示を希望しない場合が多く、求人紹介時に受給者であることが判明しないように配慮している。特に応募書類の作成支援や面接対策では、職歴等の空白期間のアドバイス、また企業に対して条件の緩和交渉をする際にも受給者であることが判明しないよう気を付けている。
 ・ 定着支援の際は、休憩時間に合わせて連絡するなどの配慮をしている。また、事業所訪問による職場定着支援については、他の社員等にわからない様に配慮している。
 
◆その他、生活保護受給者等就労自立促進事業の実施にあたって課題と思っていること、改善すべき点などはあるか。

 ◇課題・改善すべき点
 ・ 事業の実施にあたって、支援対象者数、就職率の目標値が設定されており、事業継続のため実績が重要であるが、ハローワークに送り出すことを躊躇されているケースワーカーも見受けられる。また、就労意欲が乏しい者、就労に向けた阻害要因(精神疾患等による安定的な就労活動が困難な者等)のある者の送り出しをされるケースもある。
 ・ 生活保護受給者について、ハローワークへの送り出しが低調な自治体もあり、送り出しを促進していただきたい。
 ・ 新任ケースワーカーに対して、ハローワークの取組についての研修会を実施する等、更なる連携強化をお願いしたい。労働局・ハローワークから講師派遣による協力が可能。
 
◆生活保護受給者を受け入れる前に特に不安に思っていた点はあったか。また、実際に受け入れた後、懸念等していた点についてどのように感じたか。
 ・ 初めに3日間の実習をしてもらっており、職種の得手不得手や体力を確認している。その方の体力によって休憩の取り方を工夫したり、その方に合わせて仕事を切り出したりして、長く働いていただけるように配慮している。
 ・ 実習を踏まえて採用面接を実施。
 ・ 介護業界は労働力不足の状況であるため、就労意欲がある方は配慮を行って雇用に結びつけたいと考えている。まずは本人の意欲が重要。
 
◆受け入れを検討する際に、例えば必要な情報提供や初回面接への同行など、福祉事務所や就労支援機関の対応として必要だと思うことはあるか。
 ・ 本人がまだ就労準備段階に至っていない者(就労意欲が低い、依存症を克服できていないと思われる、など)に、支援機関が就労を強いるとうまくいかない。
 ・ 実習から面接まで必ず支援機関の方に同行してもらっている。
 ・ 本人が当方に聞きづらいことも、就労支援機関を通して聞いてもらう。
 
◆仕事の内容や指示の方法、職場での人間関係などに関して、特に気をつけている点や配慮していることはあるか。また、具体的に取り組んでいることはあるか。
 ・ 現場での指導係は一人に固定して、不安や混乱を防いでいる。
 ・ 課題を持つ同僚に対する理解を深めるための、既存の職員に対する教育を実施。
 ・ できないことよりできることに着目して仕事をしてもらう。
 ・ 指摘すべきことを、支援機関を通して、うまく話をしてもらう。
 ・ 仕事以外の場面、生活環境や健康管理は支援機関の力を借りて整える。
 ・ 一つの職種でうまくいかないとき、他の職種も試してもらっている。
 ・ 本人の体力に合わせて休憩を設定し、本人のペースに合わせて適宜対応している。
 
◆受け入れた受給者を見てきて、福祉事務所や就労支援機関において、就労に向けた準備段階においてどのような支援をしておいたらよいか。また、就労した後に、福祉事務所等がしてほしい支援などはあるか。
 ・ 就職後も支援機関に関わってもらって手助けをしていただきたい。
 ・ 上記のようなことができる、ということをもっと発信してもらえたら、受け入れ企業をもっと開拓できるのではないか。
 ・ 課題の要因が複数あるとき(生活保護、生活困窮、精神障害など)は、状況に応じて複数の機関に関わっていただく。
 
◆その他
 ・ 課題を抱えた方達と一緒に働くことで、多様な働き方に対する理解が深まり、工夫が生まれ、一般の就職者にもうまく活用され、離職率が下がった。
 ・ 当事者、支援団体、受け入れ企業、ハローワークの話を聞いて、就労意欲が低いであるとか、自信の喪失であるとか、障害を抱えているとか、そういうことが就労に対する課題の要素で、被保護者か否かのフレームを外して支援する必要があるのではないか。
 

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