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2018年4月20日 第1回「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会 議事録

健康局健康課栄養指導室

○日時

平成30年4月20日(金)14:00~16:00


○場所

航空会館501+502号室


○出席者

構成員<五十音順・敬称略>

雨海 照祥 (武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科 教授)
伊藤 貞嘉 (東北大学大学院医学系研究科 教授)
宇都宮 一典 (東京慈恵会医科大学内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授)
柏原 直樹 (川崎医科大学腎臓・高血圧内科 主任教授)
勝川 史憲 (慶応義塾大学スポーツ医学研究センター 教授)
木戸 康博 (金沢学院大学人間健康学部健康栄養学科 教授)
葛谷 雅文 (名古屋大学大学院医学系研究科 教授)
斎藤 トシ子 (新潟医療福祉大学健康科学部健康栄養学科 教授)
櫻井 孝 (国立研究開発法人国立長寿医療研究センター もの忘れセンター長)
佐々木 敏 (東京大学大学院医学系研究科 教授)
佐々木 雅也 (滋賀医科大学医学部看護学科基礎看護学講座・滋賀医科大学医学部附属病院栄養治療部 教授)
柴田 克己 (甲南女子大学医療栄養学部医療栄養学科 教授)
土橋 卓也 (社会医療法人製鉄記念八幡病院 理事長・病院長)
横山 徹爾 (国立保健医療科学院 生涯健康研究部長)

事務局

福田 祐典 (健康局長)
正林 督章 (健康課長)
相原 允一 (健康課長補佐)
清野 富久江 (栄養指導室長)
塩澤 信良 (栄養指導室長補佐)

○議題

(1)食事摂取基準(2020年版)の策定の方向性について
(2)その他

○議事

○正林健康課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第1回「日本人の食事摂取基準」策定検討会を開催したいと思います。

 委員の皆様方には、御多忙のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。

 検討会の開催に当たり、健康局長の福田から御挨拶をいたします。

○福田健康局長 健康局長の福田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 構成員の先生方におかれましては、年度当初の大変お忙しい中、本検討会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。

 先生方もよく御承知のとおり、厚生労働省では平成25年度から第二次健康日本21を開始いたしております。その基本的な方向の一つといたしまして、生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底を盛り込んでいるところでございます。高齢化が一層進行していく中で、医療費をどのように抑制していくかは非常に重要な課題でありまして、健康日本21の推進は、健やかに心豊かに生活できる活力ある社会を実現し、その結果、持続可能な社会保障制度を目指すものでもございます。今後高齢社会はさらに進展し、団塊の世代が75歳以上となります2025年も間近に控えてございます。一方では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせて、政府では「栄養サミット」を開催することが決定しているなど、健康・栄養に関する国際イベントも複数予定をされているという状況にございます。

 こうした大きな動きの中で、今般食事摂取基準の見直しを行うこととなりましたので、これまでの生活習慣病の発症予防と重症化予防に加えまして、高齢者のフレイル予防にも寄与できる食事の基準となるよう、栄養分野に精通をしている先生方とともに、疾病ガイドラインの策定にかかわられた先生方など、さまざまな領域の先生方にも今回御参画いただき、これまで以上に質の高い基準づくりに取り組んでいただきたいと考えてございます。

 構成員の先生方におかれましては、最新の科学的根拠に基づき、かつ広く活用できる食事摂取基準2020年版の策定に向けまして活発な御議論を進めてくださいますよう、改めてお願いを申し上げまして、会議開催に当たりましての御挨拶とさせていただきます。

 どうぞよろしくお願いいたします。

○正林健康課長 それでは、本日お集まりいただきました先生方を御紹介させていただきます。

 資料1の開催要綱の別紙にございます構成員名簿の順に御紹介いたします。

 まず、武庫川女子大学教授、雨海照祥構成員です。

○雨海構成員 雨海です。よろしくお願いいたします。

○正林健康課長 東北大学大学院教授、伊藤貞嘉構成員です。

○伊藤構成員 伊藤です。よろしくお願いいたします。

○正林健康課長 東京慈恵会医科大学主任教授、宇都宮一典構成員です。

○宇都宮構成員 宇都宮でございます。よろしくお願いいたします。

○正林健康課長 川崎医科大学主任教授、柏原直樹構成員です。

○柏原構成員 柏原です。よろしくお願いします。

○正林健康課長 慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授、勝川史憲構成員です。

○勝川構成員 勝川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○正林健康課長 金沢学院大学教授、木戸康博構成員です。

○木戸構成員 木戸です。どうぞよろしくお願いします。

○正林健康課長 名古屋大学大学院教授、葛谷雅文構成員です。

○葛谷構成員 葛谷です。よろしくお願いします。

○正林健康課長 新潟医療福祉大学教授、斎藤トシ子構成員です。

○斎藤構成員 斎藤でございます。よろしくお願いいたします。

○正林健康課長 国立長寿医療研究センターもの忘れセンター長、櫻井孝構成員です。

○櫻井構成員 櫻井でございます。よろしくお願いいたします。

○正林健康課長 東京大学大学院教授、佐々木敏構成員です。

○佐々木(敏)構成員 佐々木敏でございます。どうぞ1年間よろしくお願い申し上げます。

○正林健康課長 滋賀医科大学教授、佐々木雅也構成員です。

○佐々木(雅)構成員 佐々木雅也です。よろしくお願いいたします。

○正林健康課長 甲南女子大学教授、柴田克己構成員です。

○柴田構成員 柴田です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○正林健康課長 社会医療法人製鉄記念八幡病院理事長、土橋卓也構成員です。

○土橋構成員 土橋でございます。よろしくお願いいたします。

○正林健康課長 国立保健医療科学院生涯健康研究部長、横山徹爾構成員です。

○横山構成員 横山です。よろしくお願いいたします。

○正林健康課長 なお、本日、横手構成員におかれましては、御都合により御欠席とのことです。

 引き続き、事務局を紹介させていただきます。

 私は健康課長の正林でございます。よろしくお願いします。

 課長補佐の相原です。

○相原健康課長補佐 (一礼)

○正林健康課長 栄養指導室長補佐の塩澤でございます。

○塩澤栄養指導室長補佐 塩澤でございます。よろしくお願いします。

○正林健康課長 ちょっとおくれていますけれども、清野という栄養指導室長がおります。

 なお、資料1の開催要綱5「その他」のとおり、検討会、議事録、資料を原則として公開とさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 また、本検討会の座長につきましては、本来でありましたら委員の先生から御推薦いただくところですが、事務局としては伊藤構成員にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

(拍  手)

○正林健康課長 ありがとうございます。

 では、伊藤先生に一言御挨拶をお願いいたします。

○伊藤座長 どうもありがとうございます。東北大学の伊藤でございます。

 私の専門は腎臓と高血圧でございまして、高血圧学会では現在理事長をしておりまして、減塩とか生活習慣病は我々にとっても非常に大きな問題でございます。栄養基準というのは、恐らく全てのことに影響してくると思うのです。教育であり、産業であり、医療であり、保健福祉の活動等にも影響してくると思います。私、今回初めてでございますが、多くの先生方の力添えを得まして、ぜひよいものをつくりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

○正林健康課長 副座長には2015年版の検討会委員でもいらっしゃった葛谷構成員にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

(拍  手)

○正林健康課長 ありがとうございます。

 では、葛谷先生、よろしくお願いします。

 カメラの撮影はここまでとさせていただきます。報道関係者の方の御協力、お願いいたします。

(報道関係者退室)

○正林健康課長 また、福田局長につきましては、業務の関係でここで退席をさせていただきます。

(福田局長退室)

○正林健康課長 きょうは大変暑いですので、皆さん、上着をとっていただいたほうがよろしいかと思いますので、どうぞ御気楽にしていただけたらと思います。

 それでは、これ以降の進行につきましては伊藤座長にお願いいたします。

○伊藤座長 それでは、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、本会の趣旨と全体の流れについて御説明いただきたいと思います。事務局より説明をお願いいたします。

○塩澤栄養指導室長補佐 それでは、御説明差し上げます。お手元に資料1を御用意いただけますでしょうか。資料1は「日本人の食事摂取基準」策定検討会の開催要綱でございます。簡単に御紹介いたします。

 まず、「目的」でございますが、日本人の食事摂取基準、現行のこの基準は使用期限が2019年度でございますので、2020年度以降の新たな基準を策定する必要があるといった状況でございます。新たな基準では、さらなる高齢化の進展や糖尿病有病者数の増加等を踏まえまして、生活習慣病の発症予防、重症化予防に加えまして、高齢者の低栄養予防やフレイル予防も視野に入れる必要がある状況でございます。

 こうした状況を踏まえまして、この検討会では新たな摂取基準の策定に向けまして、厚生労働省健康局長が開催する会であるといったことを書かせていただいております。

 2つ目に「組織」のことがございます。

 3番目「検討内容」といたしまして、国内外における栄養学等の最新の知見や食事摂取基準に関する国際的な動向を踏まえ、1つ目といたしまして「日本人の食事摂取基準」の策定方針の検討。2つ目、科学的根拠に基づいた策定を行うためのレビュー方法の検討。3番目「日本人の食事摂取基準」の数値の策定と科学的根拠の整理等を行うこととしております。

 「事務局」「その他」と書かせていただいております。

 裏面は、先ほど御紹介がありましたけれども、構成員の先生方の一覧となっております。

 続きまして、資料2は2020年版の策定スケジュール(案)でございます。まず、第1回検討会は、本日でございますが、今回と2回目、5月31日を予定しておりますが、この2回で策定方針の決定をしていただくというものでございます。本日は、後ほど御議論いただきますけれども、策定の大まかな方向性について御議論いただきまして、そこでいただいたいろいろな具体的な御意見を踏まえて、第2回の検討会でより詳細な議論をしていただくといった形になります。

 それを踏まえて、ワーキンググループでの策定内容の検討を4~5回程度やっていただくこととなりまして、それを踏まえて、実際の基準の内容とか、あとは記載ぶりなどについて第3回、第4回、第5回という形で策定根拠の検証を行っていただき、そして今年度の末までに報告書を取りまとめいただくといった流れでございます。

 来年度は厚生労働省の告示という形で、いわゆる基準の数値の部分を告示という形で公表させていただいて、2020年度から2024年度の5年間使用していくといった流れになります。

 以上でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。

 では、続けて「食事摂取基準の策定の方向性について」進めたいと思います。事務局からお願いいたします。

○塩澤栄養指導室長補佐 それでは、続きまして、資料3の説明をさせていただきます。こちらは2015年版の主な改定内容と課題を簡単に整理させていただいた紙でございます。まず、1こま目の資料でございます。以降、ポイントという形で書かせていただいております。ポイント1、生活習慣病の発症予防とともに、重症化予防も視野に入れた策定したというのが2015年版の大きな特徴の一つでございます。イメージ図は、その下に書かせていただいているとおりでございます。

 続きまして、2こま目はポイントの2点目でございます。2015年版では対象者の範囲を拡張したということをしております。そこに具体的に書かせていただいておりますが、従前も対象者はいわゆる健常者が対象でございましたけれども、2015年版では、下線を引いておりますが、「高血圧、脂質異常、高血糖、腎機能低下に関するリスクを有していても自立した日常生活を営んでいる者を含む」ということで、こういった方も想定して基準を設定したということでございます。

 そのイメージでございますが、3こま目に図を載せてございます。2015年版ではいわゆる基準範囲内の方に加えて保健指導レベルの方も含めた設定を検討してきたということでございます。

 続きまして、4こま目は、参考として年齢区分の御紹介をしてございます。2015年版も2010年版と同様の年齢区分を用いております。ただ、表のところの一番下をごらんいただきたいのですけれども、いわゆる高齢者のところは70歳以上ということで一まとまりになっております。これに関しては、上のポツの2個目にも書かせていただいておりますが、高齢者は、詳細な年齢区分の設定が必要と考えられたものの、現時点版ではそのための十分な知見が得られなかったということで、今後の課題というふうに書き残してございます。

 続きまして、5こま目以降は、策定の対象としたエネルギー及び栄養素ということで、下に詳細について書かせていただいております。

 大きく分けると2つありますが、1つ目が、国民がその健康の保持増進を図る上で摂取することが望ましい熱量に関する事項ということ。2つ目は、国民がその健康の保持増進を図る上で摂取することが望ましいものということで、こちらはイとロとなっておりますが、その欠乏が国民の健康の保持増進に影響を与えているという栄養素と、あとは、逆に過剰な摂取が国民の健康の保持増進に影響を与えているものということで、列記してございます。

 6こま目は、ポイントの3つ目といたしまして、2015年版ではエネルギーの指標の見直しというものを行っております。具体的には1ポツ目に書かせていただいておりますけれども、エネルギー収支バランスの維持を示す指標といたしましてBMIを採用というのが大きい変更点の一つでございました。

 その他、栄養素の指標につきましては、それまでどおり3つの目的となる以下の指標で構成したといったことをまとめさせていただいております。

 ページが飛びますが、9こま目をごらんください。次に基本構造の話でございます。ポイントの4でございます。2015年版では総論を充実させて、参考資料というものをさらにつけたということを構造の変更点として行っております。

10こま目は策定の基本的事項ということで、ポイント5でございますが、見出しを「レビュー方法を記述」とさせていただいておりますけれども、下の記載にもありますとおり、系統的レビューの方法などについて、このようにいろいろ詳細に書いたというものでございます。ただ、一番下の下線のところをご覧いただきたいのですが、こうしたレビューの方法については、今後その標準化を図っていく必要があるといったことを課題的な記載として残しているものでございます。

 続きまして、11こま目は、ポイントの6つ目といたしまして、基準改定の採択方針を記述したというものでございます。指標に関しては2010年版までと変わらないのですが、どういうときに何を設定するという記載を丁寧に記載したというのが2015年版でございます。これに関しては、12こま目、13こま目にも紹介してございます。

14こま目は参考の情報でございますが、食事摂取基準については、文献を基本に基準を策定していただくわけでございますけれども、その文献数の推移ということで、1990年の第4次の栄養所要量のところからずっと右肩上がりに来ているというのがおわかりいただけるかと思います。

 続きまして、15こま目、ポイントの7点目といたしまして、2015年版では活用の基本的な考えというものを整理したということを挙げさせていただいております。活用の考え方というのは、2010年版まで従前のものにももちろんございましたけれども、2015年版ではこのような図ももちろんですが、きちっと評価とPDCAを回していくということを明記しているというのが特徴でございます。

16こま目は、ポイントの8点目といたしまして、食事摂取基準の活用と食事摂取状況アセスメントの概要整理ということで、こちらもアセスメントに至るまでにどういう考えでこのアセスメントをやっていくのかということをきちっとした整理したというのが特徴でございます。

17こま目は、ポイントの9点目といたしまして、2015年版では生活習慣病の予防を目的とした目標量を充実しております。具体的には下に2つ紹介しておりますが、ナトリウムは食塩相当量でございますけれども、こちらは高血圧予防の観点から男女とも値を変更した。結果、低めになっているということでございます。

 また、小児に関しては、小児期からの生活習慣病予防のため、食物繊維、カリウムにつきまして、新たに6~17歳における目標量を設定したといったことも特徴でございました。

18こま目はポイントの10でございます。先ほど参考資料を構造上つけたというお話を差し上げましたけれども、参考資料といたしまして、「対象特性」「生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連」を記述ということで、下に「対象特性」並びに「生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連」ということで幾つか御紹介しておりますが、こういったことを記載しているといったことも2015年版の特徴でございます。

 以降、「生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連」という図を19こま目から御紹介しております。こちらを御参照いただければと思います。

23こま目は最後のポイント、11点目といたしまして、2015年版の食事摂取基準の策定をして、今後の課題ということを整理いただいて、実際に報告書の中に記載いただいているというものでございまして、エネルギー、飽和脂肪酸などいろいろございますが、こういった課題が報告書の中に記載されているといったことでございます。

 私からの説明は以上でございます。

○伊藤座長 ありがとうございます。

 策定の方向性ということでございますが、これについて御意見を伺いたいと思います。まず、2015年の策定会議に御参画いただいた先生方から御意見をいただきたいと思います。あいうえお順で申しわけございませんが、雨海先生からお願いできますか。

○雨海構成員 御指名ですので、お答えいたします。2015年版では初めて配付資料の1ページ目のポイント1の図が明らかになりました。すなわち新たに生活習慣病を持っている方でも重症化予防を対象とするということがポイントの一つであることです。さらに主に東京大学の佐々木敏先生が中心になって精力的に文献を集めていただいた配付資料の15枚目の図が一つのポイントではないかと個人的に感じております。したがいまして、従来より汎用されておりますPDCAサイクルでは本来のアセスメントがなされていないために、すべての対象に対して予め事前にすでに用意されたプランを充てはめてしまう。そのため栄養プランそのものが机上の空論になる危険性が高い。その意味で食事の評価は非常に重要であるということを強調していただいたと感じております。

 以上です。

○伊藤座長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。

 それでは、勝川先生にもお願いいたしたいと思います。

○勝川構成員 2015年版の改定のポイントの一つとして、BMIをエネルギー収支の維持を示す指標としたというのは非常に大きいのではないか。2015年版では、低栄養で体重が少ない方、それから生活習慣病を有するBMI30まで肥満者も対象に含むことになったので、現在の体重を維持するエネルギー必要量とは別に、望ましいBMIを維持するためのエネルギー消費量と摂取量のバランスを考えるという視点が入りました。これは新しい前進ではないかと考えております。

○伊藤座長 この点等、いかがでしょうか。よろしいですか。先生、どうぞ。

○佐々木(雅)構成員 滋賀医大の佐々木です。

 そのとおりで、BMIが一つの指標として取り入れられたのですけれども、その中で目標とするBMIを定めるときに、実際のエビデンスとして推奨すべき数値と日本人の、特に高齢者のBMIの分布に少し乖離があったので、そこを取りまとめたような指標になったと思います。そこについては前回いろんな意見が出ましたので、ここは今回も少し評価が要るかなと考えます。

○伊藤座長 ありがとうございます。

 前回からの今後の課題の中の1番目のところにBMIと、それに対する望ましいエネルギーということで、先生方は文献等を通してある一定の指標を出していただくということが非常に重要ではないかなと思います。

 木戸先生。

○木戸構成員 御指摘のとおり、16枚目のスライドにありますように、アセスメントをきちっと行って、それからプランを立てるという活用の方針が出されたというのは一つ大きなポイントだったと思います。

 たんぱく質に関して申し上げますと、22枚目のところにCKDとたんぱく質との関係が記載されましたが、では、具体的にどこまで大丈夫なのか。ステージにもよりますが、そこのあたりが課題として残っていたと感じております。

 以上です。

○伊藤座長 ありがとうございます。

 これも恐らく腎臓学会とか、なかなか難しい。たんぱくは問題だと思うのですけれども、その辺のところもエビデンスを持ってくるような形でいろいろと検討していくような方向性にしていただきたいなと。柏原先生、その辺について何か。

○柏原構成員 私は今回から初めて参加させていただくのですが、腎臓学会が今年「CKD診療ガイドライン2018」を刊行準備しております。もう間もなく刊行できるのですけれども、ここでも栄養摂取量が1チャプター与えられているのですが、過去の文献のシステマティックレビューのもとで一部はメタ解析も行って執筆はしましたが、非常に課題の多い部分です。

 特にCKDについては、CKDと一括りにすると、むしろ科学的でなくなる部分もありますので、進行リスクであったり、ステージに合わせた指針づくりが大事になってくるのではないかなと考えております。

 以上です。

○伊藤座長 ありがとうございます。

 これも皆様といろいろと文献を含めて、それぞれの立場のほうから検討を進めていきたいと思います。

 葛谷先生、お願いします。

○葛谷構成員 2015年版から高齢者のところを追加いただいたということで、フレイルであったり、認知症に関して記載ができたということは大きいことだったかなと思います。

 前回から健常という定義自体が少し変わってきたということと、あと、今後高齢者のことを考えたときに、高齢者の健康というのは、病気を持っていないということではなくて、病気を抱えても自立しているということが高齢者にとっての健康、健常ということですので、そうしたときに一つ問題なのは、一つの病気ではなくて、マルチモビリティーの高齢者の栄養管理をどうするかという問題は、やはり積み残しがある問題だと思いますし、実はそれほど大きなエビデンスもないということだと思いますが、ただ、今回少しそこに追加するようなことができたらいいかなと思っています。

 以上です。

○伊藤座長 ありがとうございます。

 櫻井先生、この辺について何か。

○櫻井構成員 このたび葛谷先生と一緒に高齢者のことをということだと思うのですけれども、認知機能が低下されている高齢者におけますエビデンスというのは非常に限られたものでございます。そういったところをどのように出していくかというところがレビューしてみないとわからないかなと思っております。

○伊藤座長 これは先生方と議論していきたいと思いますが、認知症とか、栄養指導をどういうふうに考えるかというのはなかなか難しい問題ではないかと思いますが、これについては多くの皆様と関連するワーキンググループのほうでもしっかりと議論していただきたいなと思っています。

 それでは、佐々木敏先生、お願いできますか。

○佐々木(敏)構成員 前回もワーキンググループのヘッドをさせていただいて、いろいろな先生方にお手伝いをいただいて、かなりの御協力をいただいて大量な文献、ここに出ている千幾つではなくて、その10倍ぐらいの文献を見ていただいて取りまとめて、2015年版ができております。そういう意味で、今回も先生方にお互いにレビューのための汗をみんなで流そうではありませんかということをお願いしたい。できてくるのをここで待っている会ではございません。そういう意味で、他の検討会と大きく違うのではないかなということを最初に心しておかないと、危ないことになるかなと。要するに、先生方の御協力のもとであったということで、2020年版もほぼ間違いなく先生方の肩にかかっているということであると私は思っております。

2015年版の特徴を先生方から幾つか出していただきましたが、一つの特徴として、これは政府から出ているものではございますが、2015年版の課題、きょうも資料の最後のほうに挙げていただきました課題を出しております。すなわち、課題を出すことで次の改定への指針、またはリサーチの方向性を示そうということです。今回もその課題ということを頭に置きながら進められればよいなと考えております。

 あと2つほどです。数字をつくって、文章をつくって終わりというものではなくて、これはあくまでも現場活用を目途としているものでございます。したがいまして、活用の部分のエビデンスをきちんと洗い直して、それをどのように伝えていくか、使えるようにするかという、この食事摂取基準が出た後のことも見据えておかねばならないと考えております。

 もう一つ、高齢者人口の急増に伴いまして、高齢者のところ、エビデンスは相対的に少ない、実際にその危惧は大きいのですけれども、もう一つ、2015年版で課題として出されたのは小児のところのエビデンス。なぜかと申しますと、食事摂取基準は小児のところ、ほかもそうですが、年齢の区分が非常に狭いわけです。区分内エビデンス数が少ないのは当然でございます。したがって、リライアブルな、信頼できるものをつくろうとすると、エビデンス不足に当然陥るわけです。そのために、小児のところはかなりたくさんの課題が残っております。そういうことも踏まえて、高齢者のみならず、小児のところに関してもさらにてこ入れが必要かなと考えております。

 最後に少しだけ。世界中の国がその国民に適す食事摂取基準を出して使っております。厚労省のほうからも栄養の大きな事業が2020年にオリンピックと同時にあるということを伺いました。日本の食事摂取基準は、近隣アジア諸国も含めて、かなり参考にされているような個人的な情報も得ております。したがいまして、これをきちんとしたものとして世界に発信していく義務も私たちは持っていると考えております。そういう意味で、今回は世界まで見据えて、その評価にも耐え、現実に私たち国民の中で具体的に有用に活用ができるものにつくり上げていきたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○伊藤座長 ありがとうございます。力強いお言葉をいただきまして、励ましていただいたような感じでございます。心せよということでございまして、皆さん、本当に心してしっかりやっていきたいと思います。

 先ほどの現場活用は大変大きな問題だと思うのです。いろんな基準があって、それがどれぐらい活用されているかということの状況の把握と、その結果、何がどういうふうに起こっているのか、何の課題が残されているのかということをちゃんと検証するというのはなかなか難しいのですが、その方向性、どういうことをやっていたらいいのかも含めて先生方と議論したり、ワーキンググループの先生方にもいろいろ議論していただきたいなと思います。できるだけ具体的なものを何かつくるということは恐らく非常に重要なことではないかなと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、佐々木雅也先生。

○佐々木(雅)構成員 ひとつは、先ほども申し上げましたBMIのところで、実際の日本の高齢者のBMIと少し乖離があるということと、目標とするBMIも死亡率で見るのか、糖尿病の発症予防で見るのかによってもかなり数字が変わりますから、どういうふうに目標値を持っていくかということについては、いろいろな形でのディスカッションが要るのではないかと思います。

 もう一つは、高齢者のところで70歳以上とひとまとめにされていますが、そこをもう少し区分けができるのかどうかです。区分けができれば、今後の高齢化社会に向けては大事なメッセージになるのではないかと思います。

○伊藤座長 ありがとうございました。

 よろしいでしょうか。

 それでは、柴田先生、お願いします。

○柴田構成員 柴田です。

 私は主にビタミンを担当してきて、それと同じく、微量栄養素に興味を持って担当をしてきました。年数から言うと、2000年版からですので、20年になります。この間、佐々木先生と一緒にやらせていただき、指標を整理することができました。欠乏症を予防するに足る最低摂取量を必要量とする、この定義はきちんと確立されてきたと思います。

 次は、生活習慣病をはじめ、いろんな食事による疾病を予防するには、微量栄養素をどれぐらいとると予防できるか、そういうエビデンスを基にすべての微量栄養素に目標量を策定したいと思っています。僕らはいつも健康な者を対象にしてやってきたので、そうでない人たちの論文があれば、こんなのがあるよということを、構成員の方々に教えていただきたいです。そして、繰り返しですが、全てのビタミン、ミネラルにおいて目標量が策定できればいいかなという方向性を持っています。例えば2015年版では、ビタミンCは、欠乏症である壊血病を予防する最低摂取量を必要量としているのではなく、もっと積極的な抗酸化力を十分に発揮できるための最低摂取量を必要量としています。ある意味で目標量的な数値です。2020年版では、ビタミンCの推定平均必要量は10mg/日、目標量は100mg/日というようになればいいなと考えています。全てのビタミン、ミネラルをこのような策定方針で、いきたいと思います。

 ビタミン、ミネラルというのは触媒ですので、体の中で代謝がおかしくなったときに、蓄積した代謝産物を素早く処理して、ホメオスタシス、早く正常な平衡状態に持っていくというのが役割です。何か代謝異常があったときには、ビタミン、ミネラルの必要量は瞬間的に高くなると思います。そのような状況をうまいこと見つけて、素早く代謝を正常に戻してやることが、発症予防だと思います。ですので、その時に適正な補充量、言い換えれば目標量を見つけられれば疾病も減ってくるのではないかなと思っています。そういう方向に行けたらいいなと思っております。

○伊藤座長 どうもありがとうございます。

 この点について、どなたか。勝川先生、どうぞ。

○勝川構成員 ビタミンに関しては、最近はサプリメントが非常に普及しております。サプリメントによる過剰摂取のリスクについては、食事摂取基準の中で扱うべきか難しいところかもしれませんけれども、可能であれば記述していくとよろしいのではないかと考えます。

○柴田構成員 そのとおりですね。過剰摂取しているときには尿に出てきますので、尿中への排泄量を測定することによって判断できます。そして、ここまで大量にとらなくてもいいのではないですかという指導はできると思います。いわゆるサプリメントと称されている商品というのは非常に扱いが難しくて、言い方が難しいのですが、かなり強力に固めてあります。ひょっとしたら、固形物が消化管内で破壊されずに、そのまま通過していることがあるかもしれません。とにかく尿中に排泄されたビタミン量を測れば、判断できます。ビタミンはいろんな食品にも添加されていますので、知らず知らずにとり過ぎている方もいます。

 ですので、大切なことは摂取した量に加えて、人側の情報を加味して栄養評価をすることが大切だと思います。尿は非侵襲性ですから、その中にどれだけ出ているかということで評価して、これだけたくさんとらなくてもいいよという指導はできます。そのような、尿中に排泄される栄養素、栄養素代謝産物を手軽に測定できる体制ができたらいいなと思います。

○伊藤座長 ありがとうございます。

 先生がおっしゃるように、ビタミンというのは触媒といいましたけれども、最近はいろんな病気のところで微小炎症、マイクロインフラメーションというのが言われていて、そういうときには、それぞれビタミンとかコファクターの欠乏、ちょっとした欠乏が病態を悪くするなどということが言われていて、それは病気でなくても起こるのかということが、もしも何かで拾えたら、そういうところに反映できるかもしれませんし、今、先生がおっしゃるように、尿で調べるというのはどういうふうにするのか。もちろん、ワーキンググループの方に文献等でいろいろ調べてもらって、それを今度実際に我々がいろんなところで活用していただくときに、指標となるような、ある程度の具体性を持てるようなことができれば最高かなと思って今、話を伺っていました。

 それでは、宇都宮先生。

○宇都宮構成員 今まで先生方のお話を伺っていて、そのとおりなのでございますけれども、私は2015年版に検討会ワーキンググループとして参加させていただいて、2015年版で非常に大きな進歩だったというのは、今お話があったとおり、慢性疾患の重症化予防に足を入れたということだと思うのです。これは非常に大きなインパクトを生みました。今回もそれをさらにチャレンジングにやってみようといった試みかなと感じています。

 ただ、これは疾患のどこまで行くかということについてある程度の認識を考えておく必要があろうかと思っています。といいますのは、今、各学会がいろんなガイドラインを出しています。今、食事療法に非常に関心を持っているようで、各学会のガイドラインはページを割いて食事療法を記載しているのですが、関心を持つ疾患によって内容が異なっています。これは当然のことなのですね。ですから、どのようなステージからこちらのほうに、その前はこちらといったことで若干数字が異なっている。このすり合わせができているわけです。

 先ほど葛谷先生のお話にありましたとおり、1人の個人が健康と言われながら、実はCKDを持っていたり、糖尿病などは代表ですが、複数の疾患をあわせ持っているといったときにどうするかといったことが学会レベルでは大きな問題になっています。そこへもってきて、日本人の食事を進めていくバイブルとなるべきこの基準がどこまで足を踏み入れるかということは、よく考えていきませんと、各学会が持つ大きな問題提起について火をつけることにもなりかねない。

 その中で一番大きな問題は目標体重だと思っています。目標体重に資するだけのエネルギー所要が一番大きな問題だと思っています。高齢者の問題にしても、糖尿病にしても、腎臓にしても、目標体重を幾つにするかということから全部始まっているのに、目標体重の客観的な、科学的な設定の仕方が十分に解明されていない。これが違っているわけです。

 もう一点、この会議が明らかにすべきだと思うのは、「標準体重」という言葉があります。これは言葉だけを発しているように見えます。標準体重、BMI22ということが暗黙の了解のように走っているのです。これに基づいてエネルギー設定をしているというのが、多くの学会の総エネルギー設定方法になっているのですが、標準体重22と決めた根拠というのはどこにもないのです。

 今回、2015年版では「目標とすべきBMI」というふうに非常に明確に規定されているのです。ですから、今、こういった目標とすべきBMIと標準体重22といった概念が非常に無批判にある意味で流れている。こういったことについての整理を今回の改定でぜひ御議論いただきたいなと考えています。

○伊藤座長 大変ありがとうございます。難しい問題ですね。いわゆる目標とすべきBMIをどういう観点からそういうふうにするのか。これは本当に大きな問題だと思います。でも、非常に重要な問題なので、ぜひワーキンググループを含め、多くの文献もいろんな状況も含めて検討していただきながら議論を進めていきたいなと思います。

 あと、先生がおっしゃったのは、3枚目のところでこのバイブルが基準内保健指導レベル、受診勧奨レベルのどこまで取り扱うか、そういうところをある程度明確にしておくということは非常に重要なことだと思うのです。

 ありがとうございました。その辺は今回も少しずつ受診勧奨レベルに入っていっている部分もあるのですね。また、入っていっていいものといってはいけないものも病態的にはありますので、その辺も含めて先生方と議論していきたいと思います。

 斎藤先生、何か。皆さん、自由に御意見をいただきたいと思うのですけれども。

○斎藤構成員 斎藤でございます。

 今回初めて参加させていただきまして、私は管理栄養士という立場でこれをどういうふうに活用に落とし込んでいくかというところを考えなければいけないのかとお話を聞きながら考えておりました。常日ごろ迷っておりますのは、食事摂取基準の数値について、栄養素(例えばリン、カリウムなど)の調理による損失をどのように考えればよいかということです。生の食材を食事摂取基準の数値に合わせると制限(食べる量が少ない)されてしまうのですが、当研究科の大学院生の研究などによると、実際調理をした後のリンとかカリウムの量を調べると、大分少なくなっているので、調理による損失をどのように活用に落とし込むか。ただ、このようなことを、この食事摂取基準に入れ込むのはなかなか難しいとは思っているのですが、食事摂取基準の数字を現実の食事に落とし込んでいくときの留意点も少し考えていく必要があるのかと考えております。

○伊藤座長 確かに料理によって変わってくるところがあるわけですから、それをどういうふうに勘案するかというのはなかなか難しい問題だと思いますね。

 土橋先生は何か。どうぞ。

○土橋構成員 土橋でございます。

 私は、日本高血圧学会で伊藤理事長のもと、減塩委員会の委員長を拝命しております。高血圧学会は今、ガイドラインを改訂中でございまして、前回の2014年では減塩目標6グラムを提唱しています。したがいまして、来年、2019年になると思いますけれども、改訂版の減塩目標も6グラムとするどうかに関しまして、クリニカルクエスチョンが設けられています。6グラム未満は妥当か。7でもなく、5でもなく、6なのか。厳しいクリニカルクエスチョンに今、システマティックレビューをもとに奮闘しているところです。

 6グラムが妥当ではないかという結論で進めているところですけれども、結局、この摂取基準が男性8グラム、女性7グラムというのがあって、高血圧になると6になる。そういう3段階、男女で2段階になっていることから、現場の栄養士さんにとっては、まず8があって、次に6とか、6はちょっと難しいけれども、8はクリアしているねとか、そのようなイメージで栄養指導をされているのではないかと思います。6グラム未満の遵守率というのは非常に低いのもわかっておりますので、そこまでできないのだったら、せめて厚労省の基準である7または8を目指しましょうというのが、現場でやられていることではないかという気がします。

 もう一つの問題は、先ほどの保健指導レベルというところで言うと、140/90未満であったら、まだ男性8グラム、女性7グラムでよいということになるのですけれども、昨年のAHA/ACCのガイドラインでは130/80を高血圧とすると基準を決めましたので、そういう考え方からすると、130/80を超えていたら、高血圧に準ずるという基準値でやるべきではないかという議論もあると思っております。そこを踏まえて、どこまでの方を適用としてどういった数字を挙げるのかというのをぜひ佐々木先生などにも御教示いただいて、説明できればいいと思います。

 もう一つ、このガイドラインを書くに当たって、高齢者のフレイル、あるいは透析患者さんのように頑張って6グラム未満にすることがネガティブな影響を及ぼす病態があるのではないかと言われています。したがって、一律に6グラム未満ではないということをガイドラインでも反映させてほしいという意見を常々いただいていますが、エビデンスとして明確でない部分ですので、病態によっては、ナトリウム制限を一生懸命することが、ほかの栄養素の適切な摂取に影響するとことがないように、あまり6グラムにこだわらずにやるべき人もいるというニュアンスを出すことを考えていければと思っています。

○伊藤座長 横山先生、どうぞ。

○横山構成員 横山でございます。

 何人かの先生もおっしゃっていらしたとおり、どのように活用するかというところが非常に重要かと思っております。活用のエビデンスを集めて、それをどのように使うか。最終的に現場で使えるようにしたいわけですが、食事摂取基準というのは、確立論が理論的な背景として入ってきているので、それを上手に使いこなすというのは、多くの方には難解なところがあるのかなと思っております。その部分が、活用がいまいち十分に進めにくいハードルなのかなと思います。

 私の専門は、食事摂取基準の背景にある確率論とか統計とかそのあたりですので、そういう立場で今回入らせていただいているのだと思います。活用と言いますか、PDCAを回すというのは非常に重要だというお話が最初にありましたが、その中の、計画を立てて実施するだけでなくて、どのように評価するか、評価する際には先ほどから言っているような確率論とかいうものが必要になってくるので、それに基づいてどう改善するか、という総論的な理論の整理がまずは必要だと思います。それに加えて手順書的なもの、誰でもその手順で進めていけば評価に使える、見直しができる、という手順書のところまで目指すことができたらいいのではないかと考えております。

○伊藤座長 大変貴重な御意見ですね。手順書というか、手引書とかそういうタイプのものができると。実際我々がいろんなものをつくっても、現場で十分に活用してもらえないとよくないので、その辺をぜひ考慮して先生方と議論しながらいいものをつくっていきたいなと思います。

 これまでの基準とか、前回までの課題等、方向性についてでもよろしいですので、御意見がございましたらお伺いしたいと思いますが、どなたかございますか。勝川先生、どうぞ。

○勝川構成員 先ほどの宇都宮先生の御指摘のとおり、標準体重のBMI22という数字は、もともと職域の健診データで、適用年齢も3059歳と明記されている論文に由来しています。前回の食事摂取基準で、目標とするBMIのレンジを年齢で区分けし、しかも幅で提示したというのは非常に重要だろうと思います。

 一方で、目標とするBMIは、観察研究による最低死亡率のエビデンスがもとになっております。生活習慣病に関しては介入研究のデータが比較的数多くありますので、若い年齢層では、介入研究から目標とするBMIのレンジが検討できるのではないかと考えております。

 高齢者に関してもフレイル予防などの観点から、縦断的な検討のデータも加味して検討していってはいかがかと思います。

○伊藤座長 どうぞ。

○葛谷構成員 勝川先生のお話に全く同感なのですけれども、日本の肥満の基準がBMI25という数値は結構大きいインパクトがあるのです。高齢者、例えば85歳のおばあさんが25幾つ、私は肥満だからやせなければいけないという形で行動をとられるし、栄養指導でもそういう指導がされるということは現場ではあるのです。

 ただ、考えてみていただくとわかるとおり、高齢者の場合、身長が10cmぐらい簡単に縮まるのです。そうすると、成人のときと体重が同じでも、BMIはすごく上がってしまうという現状があって、そこのBMIのひとり歩き、あとは指導者側も年齢を考慮しなくて画一的な指導に走るということを何とか是正できるようなものが少しあるといいなといつも思っています。

○伊藤座長 宇都宮先生、いかがですか。さらに追加。

○宇都宮構成員 この議論は、2015年版をつくったときにも佐々木先生を中心に随分やったと思うのです。本当にBMIで体格を評価していいのかということなのですが、高齢者についてどうかといったところは、その段階ではペンディングとして、今後ということになりました。

 例えば糖尿病で見ますと、糖尿病は非常に大きな問題で、私は糖尿病の食事療法のガイドラインを今、策定しておりますけれども、BMIで糖尿病の発症率を評価していいかどうか。これは人種間でも大きな問題があって、違っています。これは日常的には無理なので、日常には持ってこられませんが、やはり体脂肪率が相当きいているなということで、BMIではかれない組成。特に日本人の場合には、同じBMIでも糖尿病の発症率は白人に比べて高いのです。そういったところで問題点を残しながら、しかし、使い方といったことについて今、先生から非常に的確な御指摘があったと思いますけれども、あまり使いにくいような状態で話していませんし、そういったところを適切な意味での妥協を図っていかざるを得ないかという気がいたします。

○伊藤座長 佐々木先生、どうぞ。

佐々木(敏)構成員 2点です。先ほど来先生方から御意見いただきましたように、2015年版で目標とするBMIの範囲を導入することは、大きなインパクトと進歩があったと私も感じているところであります。その一方で、お話しいただきましたように、24.9というところで全ての年齢、上限を切っております。たくさんの議論がございましたが、高齢者のところ、別の数字を当てるまでの十分なエビデンスと、それから社会をそのように導いていくだけの根拠、さまざまなシステムというものがまだ十分に確立していないという状況下であったと考えております。したがいまして、5年たちまして、このところをもう一度丁寧にエビデンスを探り、そしてどうしていくのかというところの責務を負っているのだろうと考えます。

 もう一つでございます。食事摂取基準は、エネルギーはあくまでもエネルギーのキロカロリーとして算定し、それを公表していくという義務がございます。したがって、あくまでもBMIはその代理指標という形にならざるを得ません。したがって、今回も推定エネルギー必要量は出さねばならないというところがございます。そうすると、問題になってくるのが、エネルギーの摂取量、推定エネルギー必要量とBMIというよりも、体重が変わらないところのためのエネルギー摂取量を何キロカロリーとするのかというところを出さねばなりません。その研究並びにそのエビデンスの収集、評価というのがこの食事摂取基準において非常に大きい仕事でございます。それはエネルギーのみならず、他の栄養素をどれぐらいとったらいいのかというところ、エネルギー当たりのとか、この年齢階級はこのエネルギーを摂取すべしという仮定のもとにおいてという形で食品の基準がつくられたりします。

 したがいまして、何キロカロリー摂取すべしという推定エネルギー必要量は、例えば給食現場における食事の基礎になると同時に、食品の中で許される栄養素や各種物質のための基準のもとにもなるということでございまして、非常に重要なところでございますので、BMIとエネルギーを常に両方置きながら、この議論とエビデンスの収集、解釈に努めるべきだと考えております。

 以上です。

○伊藤座長 大変ありがとうございます。

 ほかにはどなたか。雨海先生、どうぞ。

○雨海構成員 これは話題提供です。実際に可能かどうか御議論いただきたいのですが、エネルギーあるいは栄養素が単独で人の中にあるのではありませんので、その人が実際に生活をしており、動いている。これは前回2015年版もペンディングになった課題ですが、活動度の測定方法やその妥当性だけでも検討の土俵に上げていただければ、考える一つのスタートラインがつくれるのではないか、もし可能であれば検討していただきたいと思います。

 もう一点、多分同じレベルで検討の可否自体が問題になると思いますが、エネルギーと同等に、栄養素ではないのですが、水が非常に重要だと思います。水の研究もやはりエビデンスが少ないため充分な推奨事項をあげるのは無理かとは思います。以上、活動度と水は、今まで手をつけにくかったのですが、これは少しずつ研究の重要性の確認から手をつけるべきなのだと思います。2020年版で文言として表現できるか、も含めてもう一回考えていただいて、特に前者、すなわち活動度の測定法の整理をし、その妥当性を検討していただければ、という気がいたします。

 以上です。

○伊藤座長 ありがとうございました。

 時間もあれですので、次の議題に進みたいと思います。続きまして、「我が国の栄養政策を取り巻く社会情勢について」、またそれを踏まえた「食事摂取基準の策定の方向性について」、御説明をお願いします。

○塩澤栄養指導室長補佐 それでは、まず資料4「我が国の栄養政策を取り巻く社会情勢について」の説明をさせていただきます。簡単にまとめているのが1こま目でございます。我々といたしまして、この3点が重要かと思っております。

 まず、1つ目が高齢社会の更なる進展ということで、いわゆる2025年問題と、さらにその先を見据えていく必要があるであろうということ。2点目は、根拠に基づく政策立案(EBPM)の推進という流れにどう対応していくかということ。そして、先ほども話が出ましたけれども、3点目は、健康・栄養に関する国際的な取組ということもいろいろございますので、これにもどう対応していくか。この3点があろうかと思っております。

 以降、順に御説明をさせていただきます。

 2こま目に「高齢化の推移と将来推計」というグラフを載せております。1ポツ目にもございますが、総人口は減少傾向にございますが、一方、65歳以上の高齢者の割合というのは上昇しているということでございます。このグラフの上のほうに吹き出しのような形でつけておりますけれども、我が国が直面する大きな問題の一つが2025年問題。これは団塊の世代の方々が75歳以上になる年でございます。さらに、その先の社会の例として2042年。こちらは高齢者人口のピークを迎える年ということもございます。ですので、直近は2025年問題がございますが、その先に2042年問題のようなものも出てくるということを念頭に置いていろいろ検討していく必要があるのではないかというものでございます。

 3こま目については、日本の高齢化が世界の状況に照らしてどうかというグラフをお示ししておりますが、左側が欧米と日本の比較、右側がアジア諸国との比較でございますが、いずれにしても日本は赤い線で図示しておりますけれども、我が国の高齢化は世界に例を見ない速度で進行しているといった状況でございます。

 4こま目は、栄養政策に関連したトピックスということで、年度ごとに国際イベント、そして厚生労働省の関連トピックスを対照させている表を載せております。下のほうに赤い線で囲っているところ、これから先生方に御議論いただきます食事摂取基準2020年版が使用期間ということでございますが、こちらをごらんいただいても、まず国際イベントで、先ほどから出ております「栄養サミット」が東京で開催される予定であるということ。その次の年には国際栄養学会議、その次の年には横浜でアジア栄養士会議など、こういったものがめじろ押しに開催される予定であるということでございます。

 また、厚生労働省の関連トピックスということで、いろいろ報酬改定が続きますけれども、2022年度には健康日本21の第二次の最終評価が予定されており、2023年には第5次の国民健康づくり対策が開始予定である。2025年を前に、本当の意味で最後の診療報酬、介護報酬同時改定なども行われて、そして2025年に2025年時代が突入ということで、まさにそこに向けて2020年版の食事摂取基準が使われていくということでございますので、非常に重要な基準になるというものでございます。

 先ほど2025年時代突入というお話を差し上げましたけれども、5こま目は地域包括ケアシステムの構築ということで、国としてよく使っている資料でございます。1ポツ目にもございますが、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に地域包括ケアシステムの構築を実現していくのだということで、国のみならず、自治体、地域包括ケアシステムに向けていろいろ動いているというところでございます。

 この地域包括ケアシステムとも関連しますけれども、6こま目は、在宅医療・在宅介護を受ける方の増加ということでございますが、ちょっと古いのですけれども、左側が2012(平成24)年度の在宅医療・在宅介護の方の人数、右側に2025年の推計でございますが、平成24年の値と比較いたしますと、在宅医療における方は約1.7倍、在宅介護を受ける方は約1.4倍増加することが見込まれているということでございまして、こういった方々の栄養とか健康をどうするというのも非常に重要になってくるかと思います。

 7こま目は、先ほどから「フレイル」という言葉が何度か登場しておりますが、高齢者のフレイル対策の推進ということで、厚生労働省の保険局が中心となってフレイル対策の推進というのは具体的に動き始めているというものでございます。

 具体的には、後期高齢者医療広域連合が保健事業を今後年度から全国展開していくということでございまして、下に経済・財政再生計画の改革工程表というものがあります。非常に字が小さくて申しわけないのですけれども、ごらんいただくと、「栄養」という言葉も幾つか登場してまいりまして、例えば右から2番目のKPIというところをごらんいただくと、低栄養の防止、重症化予防の推進など、高齢者のフレイル予防に資する事業を行うとか、こういった感じで低栄養の防止、重症化予防ということもコアの目標となって掲げられているというところでございます。

 8こま目は、冒頭に挙げました2点目の課題、根拠に基づく政策立案の推進に関して、栄養に関してもそうですというスライドでございます。EBPMというものは、厚生労働省のみならず、政府全体としてこの政策立案に当たっては、きちんと根拠に基づいて展開していきましょうということが広く推進されております。当然ながら栄養に関してもそうでございます。食事摂取基準については、かねてより科学的根拠に基づいて策定はいただいているところではございますが、さらに科学的根拠に基づくという視点を一層深めていくことが重要ではないかということを記させていただいてございます。

 9こま目は、初めに挙げました3つ目で、「健康・栄養に関する国際的取組」ということで、2020年に「栄養サミット」等が開催されるということで、これは安倍総理も正式に表明されているというものでございます。国際的な取り組みがどのように進行しているかというのを図にまとめさせていただいておりますが、現在も幾つか進行している。そして、この食事摂取基準が適用になる20202025の間にもこういったものが進行しているという状況でございます。

10こま目にはそれぞれの取り組みの目標を記させていただいておりますので、御参照いただければと思います。

 以上、資料4の内容を踏まえまして、今度の2020年版の策定の方向性についてという案を資料5にお示ししておりますので、御用意いただけますでしょうか。2020年版の策定に当たっては、原則として2015年版の策定方法を踏襲した上で、以下の点について検討してはどうかということで、幾つか論点を挙げさせていただいております。以降、3つ柱がありますが、これは先ほどの資料4と対照になっているような構成になってございます。

 1つ目は「高齢社会の更なる進展への対応」ということでございます。1点目は、さらなる高齢化の進展を踏まえて、高齢者の低栄養予防及びフレイル予防のための目標量も設定していくこととしてはどうか。目標量というのはいわゆる生活習慣病のようなものとして設定されておりますが、高齢社会の進展ということを考えますと、高齢者の低栄養予防、フレイル予防のための目標量ということについてもチャレンジできないかなと考えてございます。

 2点目は、高齢者は個人差が大きいというのが特徴でございますので、年齢だけではなくて、例えば体重当たりの摂取基準等、新たな指標というものを考えていくことはできないかというものでございます。

 3点目は、高齢者の年齢区分、先ほど70歳以上が一まとまりという話がありましたけれども、エビデンスがある栄養素については、政策的な視点からもより細かく年齢区分を設定して、摂取基準についても考えていけないだろうかという点でございます。

 また、各栄養素の記載内容に関してでございますが、現行版では18歳以上の全ての年齢区分をまとめた形で記載しております。物によっては高齢者を特出ししているものもございますが、ただ、高齢社会のさらなる進展ということもございますので、高齢者に係る事項というのを全栄養素を特掲するような形で構成してはどうでしょうかというものでございます。

 最後、初めにも小児の話があったかと思いますが、今後の社会を支える重要な担い手となる若年層、特に小児についても、一部未設定となっている摂取基準がございますので、こういったものを新しいエビデンスをもとに設定する方向で検討していけないだろうかというものでございます。

 大きい2点目「EBPMへの推進への対応」でございますが、根拠に基づく栄養政策の立案を一層推進するという観点からも、特に目標量を設定している摂取基準につきましては、系統的レビューに係る国際指針等、いろいろございますので、こういったものも踏まえつつ、レビュー方法、記載の標準化、透明化を図るとともに、診療ガイドラインではよくありますけれども、エビデンスレベルのようなものも記載する方向で検討できないだろうかという点でございます。

 大きい3番目「健康・栄養に関する国際的取組への対応」ということでございます。何度も申し上げておりますが、「栄養サミット」等、大きい国際的なイベントなどがございますが、こういったものに合わせて今回の策定内容を海外、諸外国に積極的に発信していくことも視野に入れた上で策定することとしてはどうか。そこにも書いておりますが、海外に発信ということもありますので、当然ながら英語版の公表等も考えていくということでございます。

 なお、こうした検討に当たりましては、先ほどもいかに活用してもらうかという話がございましたけれども、食事摂取基準の利用者、例えば行政、医療、介護領域の管理栄養士等の意見も適宜聴取しつつ、活用しやすい食事摂取基準というもので検討していただければと思っております。

 以上でございます。

○伊藤座長 ありがとうございます。

 この3つの大きな観点について、それぞれ御意見をいただきたいと思います。既に議論もされている部分もありますが、改めてこの方向性について御質問、御意見等ございましたら。まず、第1番目の高齢社会の更なる進展のところにつきまして御意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

○葛谷構成員 考え方としては、高齢者の場合は全く病気がない人はほとんどおられないということで、病気をある程度お持ちであっても、フレイルレベル、いわゆる要支援ぐらいのレベルの人たちまでを対象にするという考えでいいかなと思いました。

 フレイルに関しては大事だと思いますので、今、日本で理解されているフレイルの定義は、まさしく介護予防事業と一体化できるようなフレイルです。フレイルにも様々な定義がありまして、要介護の人たちも含める定義もあるのですが、今回に関しては介護予防の視点のフレイルという形で、レベル的には要支援ぐらいの人たちを対象という形で捉えるということで理解させていただきました。

○伊藤座長 いかがでしょうか。柏原先生、どうぞ。

○柏原構成員 少し漠然とした問題提起になるのですけれども、先ほど小児のことも話題にあがりましたし、現在直面している問題として高齢者に対してどうするか。フレイルであったり、栄養摂取量についての議論は非常に大事だと思うのですが、健康日本21の中には「次世代の健康づくり」というチャプターがあって、その中で低出世体重児のことも問題視されているのですけれども、我々腎臓の分野であれば、出生児体重と腎臓病の発症率の間に明らかな関係がある。そのことは妊産婦の体重とも関係があるということが指摘されていて、それはどこの部分でどう議論したらいいかわかりませんが、次世代の健康づくりという視点もあってもいいのではないかなと感じました。

○伊藤座長 どうぞ。

○宇都宮構成員 次世代の健康づくりに関係することでもう一つ問題提起といいますか、今回扱えればと思うのですが、シフトワーカーの問題がこれから非常に大きな問題になってくると思います。厚労省も今、働き方の問題で非常に関心が高いところだと思いますけれども、シフトワーカーの健康被害は非常に大きな問題で、糖尿病の発症リスクが非常に高いのです。今後シフトワーカーの栄養管理の問題というのは、恐らく行政的にも大きな問題になるのではないかと考えます。ですから、今後厚労省として栄養政策の中でシフトワーカーの問題をどのように取り組んでいくかということとともに、今回の摂取基準の中で食べ方、とり方といったことについての実際的なチャプターなり、あるいは研究ができれば、少し使いやすさという面では進歩できるのではないかという気がいたします。

○伊藤座長 いかがでしょうか。大変重要なポイントだと思います。一つ、妊婦さんがちゃんとした食事をしないために出生児の体重が低くなって、高血圧か腎臓病になるということは非常に大きな問題ですね。

 あとはシフトワーカー。これはどんどん多くなってくるので、できればこの2つは何かの形で取り上げていきたいなと思いますが、いかがでしょうか。佐々木先生、どうぞ。

○佐々木(敏)構成員 妊産婦のところで、妊婦さんに対しては、エネルギー、各栄養素、妊娠中にさらにどれぐらい必要なのか、妊娠中の必要量に関する数値は算定しております。ところが、おっしゃっていただきましたように、低出生体重児の問題は非常に大きく、どれぐらいが至適な体重増加であるのかに関して、2015年版でもレビューを行いました。また、参加の学会の先生方からコメントもいただいております。それらを踏まえましてつくりましたが、これは社会的にも非常に大きな問題でありまして、もう一度レビューをやり直して信頼できる値、そしてその文章を出すべきだと考えております。

 一方、シフトワーカーのほうは今までに手をつけられたことが私の中では記憶がございません。新たな課題かと思います。

○伊藤座長 基準をつくると同時に、何かしらの情報伝達等、それをちゃんとやっていただくような仕組み、手順書でもつくってもらうのがあるといいと思いますね。

 先ほどの高齢者に関して介護予防という観点までということと、それから疾患をいっぱい持っているので、そういう観点からでいいのかなということですが、この辺についていかがでしょうか。先生、どうぞ。

○柴田構成員 私は基礎栄養学者です。従来は食品と言えば、すべての栄養素や非栄養素を含んだ生物を食べていたわけですが、いろんな科学の進歩によって、成分栄養素をうまいこと利用するようなことも可能となりました。したがって、特に高齢者においては、成分栄養素を適切に補充することによって、僕らは便宜的に介護栄養学などと呼んでいるのですけれども、ある成分栄養素をある年齢以上、将来にわたって適切に補充していけば、かなり高い生活の質が保たれるので、今後の方針として成分栄養素を積極的に利用していくような方針もそろそろ入れていく時期かなという気がしているのですけれども。

○伊藤座長 その点についてはいかがでしょうか。

 確かに成分がとれるようになった時代なので、それを適切に利用するための指針、またはある一定のエビデンスをその中で見つけて、そういう新たな面を入れておくというのも、少なくとも取りかかることは重要ではないかなと思うのですけれども、いかがですか。よろしいですか。佐々木先生、どうぞ。

○佐々木(敏)構成員 2つ。先ほどの成分栄養のところは、確かにとても重要な時代になってきていると思います。しかしながら、一つ押さえておかなければならないことがあるだろう。まず、食事でとっている量がわかるというのが前提。わからないときにこれだけ入っていますから、どうぞと言っても、それは活用できない。すなわち、食習慣からの各栄養素の摂取量のアセスメントができるというのが大前提となります。その技術、そのシステムができないうちに進めるのは科学としてはあるかもしれませんが、この食事摂取基準として、行政からそれを使うようにと言うことは難しいだろうと考えます。

 もう一つ、資料3の3こま目、2010年版、2015年版でどこまで使うかというところなのですが、先ほど来高齢者のところで御議論がなされていましたどこまで踏み込むかというところです。2015年版の青い矢印を見ていただきますと、保健指導レベルを全部カバーし、受診勧奨レベルに若干踏み込んでおります。しかし、これは受診勧奨レベルで踏み込んだところまで食事摂取基準だけを使ってくださいという意味では毛頭ございません。そうではなくて、むしろ2010年版、その前の2005年版が受診勧奨レベル以降のいわゆる病院内で行われておりました栄養業務と食事摂取基準をカバーする白い矢印、2005年版はもっと短い矢印の間に何も矢印が存在しないギャップが存在していたと。これが問題でございまして、それで食事摂取基準と受診勧奨レベル以降のいわゆる病院内における栄養業務との間にギャップが存在しないようにしなければならない。

 したがって、右側の矢印を伸ばしてここまで持ってきたことによって各学会等が出されております治療ガイドラインとくっつくようになりまして、そこで若干のギャップは当然ございます。右から伸びてきた矢印か、左から伸びてきた矢印かということでギャップがございます。そこで各現場はどちらがその人、集団に適切かということを見ていただいて、適切なものをお使いくださいと。少なくとも間にガイドラインが存在しないというのは好ましいことではないだろうと考えまして、2010年版の白い矢印の右端から2015年版の青い矢印の右端に矢印を伸ばしたという経緯がございます。2020年版ではこの矢印の右端の伸ばす、伸ばさないということ以上に、どのようにこれを使っていくのかということを、各種治療のほうのガイドラインの御専門の先生方と十分な意見交換をしながら、この部分を理論的、実践的な文言や使い方ということを提唱できればと考えております。

○伊藤座長 ありがとうございます。

 先生、どうぞ。

○櫻井構成員 高齢者のことでございますけれども、年齢区分ということで70歳以上ということでございますが、高齢者を年齢で区切るということ自身が正しいのかという考え方もあろうかと思います。私は、昨年まで高齢者、糖尿病のガイドラインということでかかわらせていただいたのですけれども、高齢者は非常に多様であるという視点から、ADLと認知機能で機能的に分けて物を考えて管理基準をつくろうという考え方がございまして、栄養もまさしくそうではないかなと思っております。

 ですから、先ほど葛谷先生のほうから、ADL的な物の考え方までするとフレイルでという御提案がありましたが、私もそれに賛同いたしますけれども、また、認知機能という軸で考えますと、いわゆるMCIから早期認知症といったレベルまでを一応対象として考えていくということにしたほうが、例えば70歳、80歳以上と分けてやってもエビデンスはそれほどないと思いますので、より使いやすいものになるのではないかなと思います。

 以上でございます。

○伊藤座長 ありがとうございます。

 資料5の2ポツ、年齢だけではなくてというところで、これは体重だけでなくて、先ほど活動度の話とかが出てきましたけれども、ADLとかそういうのをうまくその中に盛り込めると。難しい問題ですが、いろいろと考えてもらうことにしましょう。ここでは結果がすぐ出ないでしょうけれども、いずれ何かの形で少しは踏み込んでいくようなことでもしたほうが。やはり多様性がありますからね。

 よろしいでしょうか。

 それでは、エビデンスに基づいた政策立案という観点からはいかがでしょうか。佐々木先生、どうぞ。

○佐々木(敏)構成員 食事摂取基準、Dietary Reference Intakesに関しましては、他の治療ガイドラインやそれ以外の公衆衛生分野のガイドラインの策定方法とやや異なりまして、どの国もエビデンスレベルの記載はしてございません。これは、そのような策定方法や提示方法が極めて難しいという背景がございます。

 しかしながら、目標量に関しては、他のガイドライン等に比較的近いつくられ方をしている。アメリカやそのほかの西欧諸国は、目標量に関しては設定をしていないか、または類似の設定にとどまっておりまして、日本の食事摂取基準のように生活習慣病、数は限られているものの、目標量という独自の指標を挙げ、数値を策定しているところというのは、比較的世界でも少のうございます。だから、「特に」とつけていただいたのだと理解しているのですけれども、目標量に関してエビデンスレベルの記載ができないかを模索し、できるだけそのようなことができる方向に持っていければ、我が国の食事摂取基準が世界の他の国の食事摂取基準に先駆けてEBPMの推進をしているということも言えると思います。そのためにも、どこまでできるか、私自身の頭の中でわかりませんが、このあたりも議論していただいて、いろんな資料を出して進められればと考えております。

○伊藤座長 そうですね。私もこれを見たときに、んー、難しいなと。ガイドラインのように、たくさんの介入研究とかそういうのがしっかりあるのであれば、それは出せるような。しかもエンドポイントがはっきりとしているようなあれですが、難しいなと思いながら、今言われたような観点でワーキンググループでよく検討していただいて、検索していただいて、もし可能であれば、ある一定の条件つきでエビデンスレベルなり、それに関連するような形の表現ができれば最高かなと思っていましたが、いかがですか。勝川先生、どうぞ。

○勝川構成員 非常に重要だと思います。生活習慣病関連に関しては、学術的にまとめられたものでなく、エビデンスもしっかりとしない栄養の情報が世の中に氾濫しております。食事摂取基準の中で栄養情報に関してエビデンスレベルがあるということを広く伝えることは非常に重要だと思うのです。

 すでに2015年版では、資料3の19ページ以降にあるように、栄養素摂取と各疾患の関連を示した図に実際にそれに近いようなものが示されています。線の太さや点線、プラスが1個だったり、2個だったりという形でエビデンスの強さが示されているので、カテゴリーレベルを分けた考え方は、目標量に関してはなじむのではないかと思います。ぜひ進めたいなと思います。

○伊藤座長 大変貴重な御意見ありがとうございました。

 栄養とかいろんなことに関する情報が氾濫しているということは、皆さんが何を信じたらいいかわからないということになってしまいますので、正しい情報を国の中できちんと示すということと、それに対してのこういう考え方のちゃんとした文献、科学的根拠に基づいたということでこれを示すというのはとても大切なことですね。

 ほかには何か。先生、どうぞ。

○葛谷構成員 先ほど櫻井先生が、年齢ですぱっと分けるのはなかなか難しいので、今の議論だと、フレイルかMCIの有無で層別化するということは一案でいいと思います。ただ、実際の現場で年齢というのは重要な要素になってくるかなと思うのです。前のときも問題になった70歳で切るということが、一般的に高齢者は65歳で一応切られているので、70歳というのは言い得て妙な年齢であることは事実なのですけれども、前期と後期の間、そこが実際の医療の現場とか色々な制度で分けられている高齢者の層とはちょっと違うところで分けられているということで、可能ならばそれに即した形での層別化ができるとより良いかなと思います。ただ、櫻井先生が言っておられることは根本的には大賛成なのですが、年齢区分というのも考慮に入れたほうがいいかなと思いました。

○伊藤座長 先生方も御存じの方が多いと思いますけれども、リハビリテーションとか老年学会とかは、歩くスピード、時間で大体いろんな評価をしているケースが多いのです。前のこれをまだ十分読んでいませんが、比較的簡単に評価ができて、そして有用な指標を参考にしながら栄養とかそういうものを考えていくというのは、もしかするといいのかな。ミニメンタルテストとかそういうことをやるとなると、現場の中で保健師さんのレベルとかいろんなところではなかなか使いにくいのでしょうけれども、歩く速度ぐらいでしたらすぐにはかれるので、そういう指標をうまく入れながら、このような栄養の基準とか考え方を取り入れてもいいかなと思うのですけれども。

 ほかにエビデンス、EBPMについて、どなたか。よろしいですか。できるだけエビデンスをきちんと。もちろん文献レビューの方々には御苦労をかけますし、我々も苦労しなければいけないという佐々木先生の御発言ですけれども、いずれにいたしましても、できるだけ科学的根拠に基づいたこれをつくって政策に反映していただくという方向では、間違いなくそういうふうに進めたいと思います。

 最後に国際的取組。これは佐々木先生が一番初めに言われたことでございまして、少なくとも英訳をして、それをどれぐらい発行するかは別として、せめてホームページとかそういうところできちんと見られるような形にするということは必要だと思います。

 「栄養サミット」とかそういうことに関連して、我々が取り組むべきだと思われるようなことがありますでしょうか。時間はまだありますので、初めの部分、それから何についてでもいいですので、ぜひ御意見をいただきたいと思います。きょうは大変活発な御意見をいただいて本当にありがとうございます。どなたか。何でもいいです。どうぞ。

○土橋構成員 国際ということでは、高血圧学会が2022年に国際高血圧学会を京都で開催するにあたって、減塩委員会もそのときまでに子どもの食塩に対するメッセージを出したいと思っています。何をするかというところは佐々木先生から御指導いただいてというお話を減塩委員会でもしていたのですが、まずは調査をし、例えば給食に介入するなど何らかの方法をもって子どもの食塩をどうやって減らすかということについて、情報発信をするということは決めているのです。ちょうどこの作業と並行していくところでもありますので、食事摂取基準も合わせてぜひ予防医学の観点でやりたいと思っています。

 もう一つは、国際基準の観点から、システマティックレビューをしましても、欧米との比較というのは日本に持ち込みにくいところがあると思っています。高血圧学会でも5月のフォーラムでアジアの枠組みでの取り組みについて、日中韓を中心としたシンポジウムを行うのですけれども、比較的体格、疾病構造も似ていて、食塩の過剰摂取など共通課題がたくさんある。そういったところと協調し、日本がリードしている部分については、啓発的役割が演じられないかなというのは、伊藤理事長が言われるべきことかもしれませんけれども、話しているところです。

○伊藤座長 いかがでしょうか。確かに体格が違い、生活習慣が違うというものと一緒にやるということは恐らくできないと思うのですが、ただ、我々がやっていることを、こういう形でこのようにして国民の栄養のことを評価し、そしてエビデンスに基づいてこういうことをやっているということを国際的にアピールし、例えば今、土橋先生が言われたようなアジアとの協力、連携の中で、同じような人たちのところに発信しながら一緒にエビデンスをつくっていくという活動はとても重要だと思うのです。

 先生、どうぞ。

○勝川構成員 「栄養サミット」だけではなくて、2020年にはオリンピックに同期してその開催費でおこなわれる、スポーツの関連の大きい国際学術会議も開催されます。運動やスポーツに関連する分野でも、うまく機会を捉えて広報していくといいのではないかなと思います。

○伊藤座長 佐々木先生、どうぞ。

○佐々木(敏)構成員 私は文科省の食品標準成分表の委員もさせていただいていて、この10年来、食事摂取基準が定める栄養素は、摂取量がわからないと現実に使えませんので、食品標準成分表の委員会のほうでもこちらの算定した栄養素を見ていただいて、その食品成分をちゃんとはかっていただいて、摂取量がアセスメントできるように連携をとって十年来やっていただけるようになりました。

 そうしていきますと、国際化の流れで、日本の食品標準成分表は食品数が非常に多く、また栄養素も食事摂取基準をほぼ網羅していて、さらにそれ以外もある。非常に充実しております。そしてこの食事摂取基準がございます。そうすると、今、土橋先生からお話しいただいた近隣アジア諸国の方々がその成分表と食事摂取基準、両方をもっと参考にしたいというお声を幾つかの国からいただきます。

 そういう意味でも、この2つをきちんと日本政府から出して、それを各国と連携・協調しながら使えるような仕組みをつくっていくということはとても重要なことであると考えます。

○伊藤座長 ありがとうございます。文科省とのコミュニケーションもぜひ先生のほうのチャンネルも通してお願いしたいと思います。

 木戸先生、よろしくお願いします。

○木戸構成員 ただいまの佐々木先生の御発言に関連して、日本食品標準成分表というのは、実は食品という視点でつくられている成分表であって、人が食べるという視点でつくられていないところに大きな問題があります。先ほど斎藤先生からもありましたが、調理・加工することによって失われる栄養素も食べたことになっておりますし、あるいは変化した後の成分についても変化がないということで摂取していることになっているわけです。

 日本の成分表、食品の数としては約2,000あります。すごくいい成分表であるのですが、食べるという行動を評価しようとすると、そこに大きな問題がある。アメリカの場合は7,000ぐらいある。それは加工したものが含まれているために、そういう食品の数ということになっていると理解しております。

○伊藤座長 確かに摂取量と成分表はね。斎藤先生、何か。どうぞ。

○斎藤構成員 今の話とはちょっと違うのですが、先ほどの策定の方向性のところで、今、実際に現場で使っていらっしゃる方々に、食事摂取基準をどんなふうに利用しているのかということと、利用するに当たっての課題等を聞き取っていきたいとは思うのですが、それ以外に、例えばこういうことは絶対聞いていただきたいという御意見が先生方からあればいただきたいと思っています。

○柴田構成員 特に水溶性ビタミンに関しては、食品中、食べ物中にはどんな形態で存在しているのか不明です。ですので、我々がどの程度利用できるのか、ものすごく難しいのです。また、栄養素の中でビタミンは特に不安定です。例えば朝弁当を作って、昼に食べる。それだけの期間でも大分壊れているかもしれないし、ひょっとしたら、熟成が起きて、逆に生体への利用率がアップしているかもしれません。それで2010年版から水溶性ビタミンに関しては、相対生体利用率という考え方を用いました。2015年版もその考えを踏襲しました。大ざっぱに言ったら、食事中のビタミンの相対生体利用率は遊離型ビタミンの60%ぐらいです。遊離型のビタミンは食事型のビタミンの約2倍の効力があります。食事摂取基準で示されている数字は、食事性ビタミンの値です。

○斎藤構成員 そうですね。調理すると大分違ってくるというのもデータとしてはいろいろ出ておりますね。

○柴田構成員 それで、我田引水かもしれませんが、我々は尿を集めて、尿中に排泄されるビタミン量で栄養状態で評価しています。健康を維持するためには、ここからここの間の量が出ていれば、まあいいではないですかというような値をつくったので、それを活用すれば、ビタミンの栄養状態の指標となります。一番大切なのは食べることですから、評価によって得られる食べた量の評価と、さらに尿を用いたビタミン評価を加えたら、栄養アセスメントの精度はより高くなると思います。

○斎藤構成員 確かに。 となると、例えば現場では、栄養素摂取の状況をどうやってアセスメントしているかということも聞き取ってみたいと思います。単なる食事記録の計算だけではなく、尿や体重も見て、ちゃんと活用しているということが出てくればいいかと。

○柴田構成員 ただ、尿の方は、いつも佐々木(敏)先生が言われるのですけれども、お金がかかるから、すぐに普及せんよと言われています。

○斎藤構成員 そうですね。確かに、現場は尿酸値まではなかなかできていないと思います。

○柴田構成員 でも、方向性としてはいいのではないかなといつも思っているのですけれども。

斎藤構成員 本来であればそこまで見るべきだろうとは思っております。

○伊藤座長 どうぞ。

○佐々木(敏)構成員 少し補足をさせてください。食事摂取基準はあくまでも摂取基準ですので、摂取する瞬間の量です。それに対して、給食等を出したり、食事の指導をする場合は供給量、サプライのほうの数字をつくらねばなりません。その間に存在するのが調理損耗率というものです。調理損耗率の研究論文を私たちも何回も探しているのですけれども、非常に乏しい。きょうの資料5に「EBPMの推進への対応」と書かれてしまいました。ここはあえて「しまいました」と言います。なので、研究論文になっていない資料を用いるわけにはいかないというところがございます。そうでないと、一度この基準を出してしまいますと、この資料は間違っていました、ごめんなさいと言えませんので。したがって、リクエストとして必要だということと、それができるということの間にはパブリケーションというものがございますので、やはりそこをしっかりとしながら研究を推進し、そして信頼できるものを用いることによってEBPMを推進していく。そういう観点から見ると、サプライとインテーク、供給と摂取というものの間に非常に大きな科学の解決すべき課題が残っているように感じます。しかしながら、この5年後、再レビューが必要な分野だと私は思います。

○伊藤座長 どうぞ。

○佐々木(雅)構成員 1つ追加です。私は静脈経腸栄養学会の副理事長という立場なので、その立場からすると、流動食、経腸栄養剤も全部この基準で5年ごとに組成が変わります。現在はフレーバーの違いを入れると、400種類ぐらいの流動食が市販されているのですけれども、そういう組成もこの基準に伴って変わっていくということになりますが、実際の食事と流動食(経腸栄養剤)というのは全然違うものだと思うのです。しかし、他に基準にするものがないので、これに準じて全部変わるのですが、そういうものについても少し興味を持っています。例えば、食物繊維一つとっても、食事でとる食物繊維とああいうのに入っている食物繊維は全く違うもので、流動食には1種類か2種類しか入っていないのです。でも、数字としては同じように表示されるわけです。そういうのを一つとっても、これからまだまだ未開拓な分野だと考えています。

○伊藤座長 ありがとうございます。

 先生、どうぞ。

○雨海構成員 前回2015年の時点で最高のものをつくられていると思います。しかし、それから3年以上たって、実際にこれが社会貢献されているか、EBPMがどれぐらい社会に影響しているかというのは、もう一回科学的に分析する必要性があると思います。実際に2020年が出版、公表された時点から5年間、社会がどれだけEBPMで変わっているかという指標が何かないと、策定、公表はしたけれども、時間はそれだけ投入したけれども、社会がそれだけ追いついていなければ、策定する政府の側と使用する国民との間に大きな乖離があるような気がいたします。これらの乖離それ自体を実際にEBPMの観点からも社会的な影響の指標の設定とそれの妥当性、実際に測定可能性などの検討も一つ別の課題ではないかなと思い、この視点を検討していただければなと思います。

○伊藤座長 先ほど手順書みたいなものができたり、評価する方法ができたりということで、でも、実際15年のやつがそれまでと比べてどれぐらいインパクトを与えたかというのをどこかで評価しないといけないと思います。

 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

○宇都宮構成員 EBPMに関しまして、佐々木先生がよくおっしゃることですけれども、栄養疫学の使い方をどのように、例えば薬であるEBMEBNをどう変えるか、どう違うのかとよくお話しになる。私はそのとおりだと思うのですが、実際に欲しい研究、本当にこのようなガイドラインをつくりたい、それに合った研究というのは非常に少ないわけです。したがって、介入研究がなければ観察研究によるということもあり得るわけです。介入研究というものがないので観察研究によるということもあり得る。あるいは当たり前のように信じていたものに関しては調べられていないことすらあるわけです。

 例えばエネルギー産生栄養素、炭水化物、脂質、それぞれのパーセント、エネルギー比率はエビデンスがないわけです。しかし、これはある意味で食文化に由来しておりますので、逆にエビデンスがないのは当たり前かもしれない。私たち日本人がこれだけ長寿社会をエンジョイしていることが大きなエビデンスであるということかもしれない。そして、文化の問題、あるいは非常にナラティブな問題をどのように盛り込んでいくかということは、国民に対する説得性といいますか、政治責任の上で大きな問題になろうかと思いますので、そこら辺の認識は各段階ですべきかなと考えています。もちろん、ここに答えがないので、そのたびにということになろうと思います。

 1点、繰り返しであれなのですけれども、非常に大きな問題は、目標体重を今後どうしていくかということだと思うのです。標準体重22というのが非常に強く信じられている。これは1970年代から1980年代のデータなのです。そのときは1論文だけなのです。なので、それが現段階でひとり歩きしていて、厚生労働省のホームページにもBMI22が一番長生きしますよと書いてあるのです。エビデンスに基づけば、これはどんどん外れていきます。しかし、標準体重22でいろんなものが設定されているので、標準体重22を外すか、あるいは標準体重の定義を変えるかということは、非常に大きな社会的なインパクトがあるのです。しかし、できるところはここしかないかなという気もいたしますので、今回できるかどうかわかりませんけれども、十分ここで論議をすべきかなということを考えています。

○伊藤座長 勝川先生、どうぞ。

○勝川構成員 今、佐々木先生がサプライとインテークの関係、損耗率という話をされ、柴田先生がビタミンについてお話をされたのですけれども、インテークしたものが体内に入ってどれだけ吸収されるかという部分もブラックボックスとして残っています。特に高齢者では、本当に100%吸収されているかどうか、健常成人でもデータが非常に少ないところへもってきて、高齢者のデータはほとんどないかもしれません。吸収率は時代おくれのテーマのように感じられますが、ほかのメソッドが発達しデータが押さえられるようになったときに、吸収率の問題が今後、特に高齢者で重要になってくるのではないかと思います。2020年版に間に合うかどうかはわからないですが、課題としてスタートの段階で認識しておいたほうがいいのではないかなと思いました。

○伊藤座長 柴田先生、どうぞ。

○柴田構成員 吸収率も含めたもっと大きな概念が相対生体利用率ということになってきます。

○伊藤座長 どうぞ。

○土橋構成員 塩分についても同じ議論があります。例えば8グラムと7グラムというのは、国民健康・栄養調査のようなもの、私は入り口調査と呼んでいますが、食事記録、内容の調査などで8グラムというのと、24時間蓄尿による測定で8グラムというのは意味が違います。ですから、6グラムと言っても、栄養士さんが計算した食事で6グラムと尿で測定して6グラムというのは違いますね、どちらで評価するのかと言われる問題があります。論文をレビューしても、両手法が混在した評価は問題ではないかという議論はずっとあります。

 入り口調査で8グラムが男性の摂取基準だとすると、尿ではかったときに8グラムだととり過ぎているということになります。食事調査の結果と尿中食塩排泄量の測定の解釈については今後、解決すべき課題だと思っています。

○伊藤座長 先生、どうぞ。

○木戸構成員 勝川先生の消化吸収率のことですが、それから柴田先生が言われた全体としての生体内利用効率、その概念というのはすごく大事だと思います。たんぱく質についても、自立した高齢者においても、窒素出納試験で試験する限りにおいて、多めに食べないといけない。その理由は何かというと、生体利用効率が落ちているという結論になるわけですが、そういった研究が2000年以降、健常人でほとんどされていない。ビタミンとかは柴田先生がされていますが、文献上は出てこないという大きな問題が実はございますが、生体利用効率は非常に重要な課題だと思います。

○伊藤座長 確かに今、挙げていただいたようなことはとても大切で、それを検証するような研究を推進するようなことも本来必要だと思うのです。

 あともう一つ、科学的にももっともっと進歩しなければいけない。例えば食後何時間後におしっこをぽっと何かに流すと、その中で塩分、窒素、ビタミン等がぱっとパネルみたいに出てくるようなことになってくると、自分たちの食べているものがわかる。そういう科学的な進歩も出てくるといいなと思いながら聞いていたのですけれども、こういうことをみんなでどこかで働きかけましょう。

 本当に活発な御意見ありがとうございました。もう時間になってしまいましたので、これでこの会は終了させていただきたいと思います。

 それでは、事務局にマイクをお返しします。

○清野栄養指導室長 栄養指導室長の清野です。本日はおくれまして失礼いたしました。

 きょうは活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。

 今後の日程でございますが、第2回検討会につきましては、5月31日(木)の13時から15時を予定しております。開催案内につきましては、後日お送りさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

○伊藤座長 では、本日は大変ありがとうございました。

 また次回もよろしくお願いいたします。

 


(了)

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