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2021年10月14日 第123回先進医療技術審査部会 議事録

 
 


(1)日時:令和3年10月14日(木)16:00~

(2)場所:TKP新橋カンファレンスセンター「ホール14D」(オンライン)

(3)出席者
山口座長、一色座長代理、天野構成員、伊藤(澄)構成員、伊藤(陽)構成員、上村(夕)構成員、掛江構成員、神村構成員、坂井構成員、佐藤構成員、真田構成員、柴田構成員、飛田構成員、藤原構成員

(事務局)
医政局研究開発振興課長
医政局研究開発振興課 課長補佐
医政局研究開発振興課 先進医療係長
保険局医療課 医療技術評価推進室長
保険局医療課 課長補佐
保険局医療課 先進・再生医療開発戦略専門官
医薬・生活衛生局医薬品審査管理課 審査調整官


【議題】

1.総括報告書の評価について
2.協力医療機関の追加について
3.先進医療の取下げについて
4.先進医療会議における科学的評価の迅速化の対象となる認定臨床研究審査委員会(CRB)の見直しについて
5.申請医療機関からの報告について
6.その他
 

【議事録】

○山口座長
 それでは定刻となりましたので、ただいまから第123回先進医療技術審査部会を始めさせていただきます。御多忙の折、お集まりいただきましてありがとうございます。本日は、オンラインでの開催となります。
 本日の構成員の出欠状況ですが、本日は上村尚人構成員、田島優子構成員より御欠席の御連絡を頂いております。現在のところ18名の構成員のうち14名の構成員の方にお集まりいただいていることから、本会議が成立しているということを申し添えます。
 それでは事務局に異動があったということで、御説明お願いいたします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 よろしくお願いします。10月1日付けで事務局に異動がありましたので、御紹介いたします。医薬・生活衛生局医薬品審査管理課の岩崎審査調整官です。以上です。
 
○山口座長
 ありがとうございました。それでは配布資料と、本日の審査案件の確認を事務局からお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 よろしくお願いいたします。傍聴者の方の撮影はここまでとさせていただきます。御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。配布資料につきまして確認させていただきます。議事次第から、座席表、開催要綱及び運営細則、構成員及び技術専門委員名簿と続きます。
 続きまして、総括報告書の評価について、資料1-1~1-3。協力医療機関の追加について、資料2-1及び2-2。先進医療Bの取下げについて、資料3。先進医療会議における科学的評価の迅速化の対象となる認定臨床研究審査委員会(CRB)の見直しについて、資料4。申請医療機関からの報告、資料5及び資料6。会議資料の最終ページは50ページとなります。お手元の資料に乱丁、落丁等がございましたら事務局までお知らせください。
 続きまして、利益相反の確認です。申請医療機関との関係、対象となる企業又は競合企業について、事務局から事前に確認させていただいております。今回資料1の技術について上村夕香理構成員、飛田構成員より御報告がありましたが、いずれも50万円以下でしたので、当該技術の議事取りまとめ及び事前評価に加わることができます。また、真田構成員におかれましては御所属の医療機関ということですので、審議の際に一時御退席いただければと思います。また資料6の案件について、真田構成員におかれましては、非常勤職員として御所属の医療機関、飛田構成員におかれましては御所属の医療機関ということですので、これまでと同様ではありますが、一時御退席いただければと思います。事前の届出以外に、もし何らかの利益相反がございましたら、この場で御報告をお願いいたします。それでは、該当なしということで承知いたしました。また、今回は資料を事前にメールでお送りしております。会議資料と区別して構成員・事務局限りの届出書類等を「タブレット資料」と御案内します。なお、会議資料とタブレット資料の内容は異なっておりますので、発言者は会議資料の何ページ又はタブレット資料の何ページと、あらかじめ御発言を頂けますと議事の進行上助かります。
 本日はオンラインでの開催となり、構成員の先生方には大変御不便をお掛けいたします。御発言いただく際には、初めにお名前をおっしゃっていただくようにお願いいたします。その他、途中で接続トラブル等がございましたらお知らせいただきますようお願いいたします。また、WEB会議ソフトには手挙げ機能が付いておりますので、こちらも適宜御活用いただければと存じます。以上でございます。
 
○山口座長
 ありがとうございました。では、議事に入りたいと思います。総括報告書の評価結果について、事務局より説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 御説明いたします。資料1-1の15ページを御覧ください。先進医療Bの総括報告書に関する御評価を頂きますのは、告示番号旧16「リツキシマブ点滴注射後におけるミコフェノール酸モフェチル経口投与による寛解維持療法」です。申請医療機関は、神戸大学医学部附属病院です。審査担当構成員は、主担当が伊藤澄信構成員、副担当が柴田構成員となっております。なお、真田構成員におかれましては、御所属の医療機関との関係で、本議題の審議に際し御退席いただきたく存じます。御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
 
(真田構成員退室)
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 それでは、資料に沿って御説明させていただきます。試験の概要につきましては資料1-1のほか、資料1-3の25ページの概要図も併せて御覧ください。本試験の目的ですが、小児期発症難治性頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群患者を対象にしたランダム化比較試験により、リツキシマブ治療後の寛解維持療法としてのミコフェノール酸モフェチル(MMF)の有効性と安全性を評価する。主要評価項目は、treatment failure発生までの期間。副次評価項目は、無再発期間等、お示しのとおりでございます。安全性評価項目は、観察期間中の有害事象でございます。目標症例数は80例で、登録症例数は86例となっております。以上でございます。
 
○山口座長
 ありがとうございます。それでは、本技術の評価につきましては主担当の伊藤澄信構成員から御説明をお願いいたします。
 
○伊藤(澄)構成員
 ありがとうございます。小児期発症の難治性頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群についての試験です。この病気については、タブレット資料58ページの図7-1「小児特発性ネフローゼ症候群の臨床経過」を御覧いただくと分かりやすいと思います。ステロイドですっきり治ってしまう子供さんはいいのですが、再発を繰り返したり、ステロイド抵抗性の子供も一定程度いるので、それに対するリツキシマブの有効性を示した試験は研究代表者の飯島先生の成果として2014年にランセットに記載されています。大変素晴らしい結果をお出しになられて、それに引き続いてMMFの投与が再発予防に有効であるかどうかを、17か月間のMMFあるいはプラセボの投与による有効性と安全性が検討された試験です。
 デザインについては部会資料の25ページに示されていますが、今回この試験は時系列が評価に大変重要なので、タブレット資料79ページの図9-5「割付コードの緊急開示条件」というのがあるのですが、それを御覧いただくのがよいかと思います。この図を御覧いただいて分かりますように、リツキシマブ投与前にシクロスポリンやタクロリムスが入っていますので、リツキシマブが4回投与されて、ほぼB細胞が枯渇された後にMMFが開始されるのですが、その後もある一定期間免疫抑制剤が漸減状態で入っています。最終的には半年弱ぐらいは併用されているということが分かります。したがいまして、MMFかプラセボの単独投与はDay170からDay505の1年弱が真の意味での評価期間になるということを御理解いただけるかと思います。その上で、タブレット資料112ページの図11-1の累積無treatment failureのKaplan-Meier曲線を御覧いただきますと試験前に入っていた免疫抑制剤がなくなる頃から、プラセボ群の再発が始まっておりますが、一方でMMF群も400日、前の免疫抑制剤が切れて8か月過ぎるぐらいから再発が見られてくるというKaplan-Meier曲線になっています。もう一つはプラセボ群でも4割程度は再発をしていない。すなわちリツキシマブを4回投与で治癒している人が4割いるという結果も判ります。結果として、投与期間中は3割を越える群間差がありましたが、投与期間を終了すると再発あるいは免疫抑制剤の追加投与が必要だったということが判ります。一方MMFも免疫抑制剤ですので、感染症又は免疫に関連した有害事象が発現していることも判ります。本試験前にシクロスポリンを内服していた被験者は、treatment failureになる傾向が見られていることや、MMF投与期間前にtreatment failureだったり、投与終了期間前にtreatment failureになっている被験者も2人いることから、リツキシマブ投与前の患者の疾患活動性の多寡に依存して、MMF投与によって再発抑制できるか否かに違いがありそうなことが伺えます。一方で、プラセボ投与でも再発がない患者が4割いるということは、留意して見ていかなければいけない。また、この試験全体として見たときは、17か月の試験期間を超えて投与を続けた場合にMMFが再発予防に寄与し続けるかどうかというのについては、まだ判らないと思います。
 こういったことが、申請医療機関といろいろとやり取りをする過程で判ってきています。試験の全体の統計的な評価については柴田先生にお願いしたいと思います。本試験からは、難治性の頻回再発型のステロイド依存性ネフローゼ症候群に対して、リツキシマブ投与後の再発予防として疾患活動性が一定の患者、多分、疾患活動性が高い患者にはMMFだけでは十分でない可能性があるけれども、逆に疾患活動性が低い人には予防投与が不要な可能性があるというようなところまでは判ってきたという認識をしています。
 最終的な評価ですが、有効性に関しては残念ながら主要評価項目で統計学的有意差が見られていませんが、疾患活動性が一定レベルの患者の再発予防に対しては、有効である可能性があると思います。安全性に関しては、免疫抑制剤として感染症など免疫抑制に関連する有害事象が発現しておりますが、本試験ではCとするほど重篤な有害事象は見られているわけではないが、免疫抑制剤の取扱いをしていかなければいけないということも勘案して、Cという評価にしており、ちょっと厳しいかなとは思っております。
 技術的な成熟度に関しては、もちろんMMFですので使い慣れている方がお使いになる分には、特にそれほど大きな問題はないのではないかと思います。評価としては以上で、柴田先生の御評価を頂いた上で、薬事承認の話をさせていただきたいと思います。以上です。
 
○山口座長
 ありがとうございました。続いて、副担当の柴田構成員より、試験実施計画書等の評価について御評価をお願いします。
 
○柴田構成員
 お手元の資料の19ページ、20ページになります。今、映していただいているところです。有効性についてはB。従来の医療技術を用いるよりも有効であるといたしました。こちらは冒頭の結果の概略のところに主たる解析結果が記してありますが、厳密に言うと統計学的な有意差は事前に定められた基準は満たしておらず、平たく言うと、ちょっと惜しいというような結果ではあったのですが、主たる解析において統計学的有意差が得られなかったもののMMF投与による効果を示唆する結果は得られているので、一定の有効性が期待できるとまでは言えるとは思います。ただし、これはちょっと解釈には注意が必要です。単にぎりぎり有意差の基準を満たしていなかったというのが、単に検出力が僅かに不足してそういうことが起こったと解釈すべきではなく、MMF投与終了後に想定以上に再発、あるいは再発が危惧されたために、主治医により併用禁止薬(免疫抑制薬)が導入されたことで、試験の解析上treatment failureと扱われたという患者が想定より多く出ていたということでして、それが原因で群間差が薄まっていると解釈すべき状況です。ですので、想定していたよりも効きめが高くなかったというか、投与終了後に比較的早い段階で免疫抑制剤の導入が必要になるような状況になっていたということは事実としてあり、そういうところに関する注意は必要かと思います。ただし、これについてはこの資料の23ページにあらかじめ質問が出されていますが、こちらで単純に統計学的な側面以外のところについても質問に対して回答していただいており、ここは限界があったというのは、申請医療機関の先生方あるいは試験に参加された先生方も認識しておられるので、科学的に評価がされているというふうに解釈していいのではないかと思っております。
 また、次の24ページに事前の想定に反して併用禁止薬の使用が必要になった患者が多かったとの結果を踏まえ、今後の対策等が必要なのではないかということについても、一定の検討の余地があるというふうに御回答いただいていますので、この辺を今後情報収集していく必要があるということは、注意しておくべき点かなと考えます。
 評価表にお戻りください。中段になりますが、申請医療機関側も考察しておられますように、MMFを中止しても、再発抑制効果が期待できるとの報告が事前にあったために、本試験の追跡期間中にもある程度の再発抑制効果を期待していたところ、実際にはMMFの効果は想定とは異なっていたという結果でもあり、現時点で治療効果を過大に評価することは避けるべきと考えます。以上が、有効性に関する評価です。
 なお、誤解があるといけませんので念のために申し添えておきたいのですが、併用禁止薬の導入をしているということは、ちょっと表現が誤解されるかもしれませんが、これは規定に違反する行為ではなく、このあらかじめ決められたタイプの薬を投与するための条件であると、そういうものが投与されたときには解析上、このように扱うということが定められた上での対応ですので、これは試験の遂行上、科学的にも、倫理的にも問題ありませんし、主治医の先生の御判断が適切になされたということであろうと解釈しております。
 進みまして安全性です。これも形式上問題ありとしておりますが、1つはMMFの薬の特性として感染症が増加しているというのは事実ですので、それは注意が必要であるということと、感染を生じた患者の数が増えているだけでなく、投与患者毎の感染回数も増えていますので、こちらに記しておりますが、一定のリスクはあるというのは、これは常識の範囲の話であろうかと思います。ですので、Cとはしておりますが、薬剤の特性から想定されるリスクもあるので、得られるベネフィットとの比較考量がなされた上で用いられるのであれば、本技術の臨床的意義を否定するような問題とは考えておりません。
 技術的成熟度ですが、Bといたしました。MMF投与終了後、比較的早い段階で再発が生じる、あるいは再発が危惧されるために免疫抑制剤等の投与が必要になるケースがあったということで、多くの患者で実際に免疫抑制剤の導入がなされた状況を踏まえますと、ベネフィットを最適化するためには適正な使用方法に関する情報収集が必要とも考えられます。伊藤先生からも御説明いただいたような、いろいろな背景、投与開始時点でのリスクの見立てなどが今後なされる必要がある部分もあるかと思いますので、そういうことも踏まえて、現時点ではBといたしました。私からは以上です。
 
○山口座長
 ありがとうございました。それでは、伊藤澄信構成員から、追加のコメントをお願いいたします。
 
○伊藤(澄)構成員
 ありがとうございます。薬事承認に資するかどうかという所に書かせていただきましたが、小児期発症の難治性頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群患者のリツキシマブ投与後の再発予防に関わる主要評価項目で、統計学的有意差が残念ながら見られていなかったこと、それからベネフィットが期待できる患者の疾患活動性について明確になっていない点というのは多少憂慮いたしますが、この試験結果は本適応の薬事承認申請については資する資料であるというふうに判断をしております。評価内容についての、御報告は以上です。
 
○山口座長
 ありがとうございました。ただいまの御説明について、何か御質問はありませんか。最初の結果を見るとすごくいいと思ったのですが、しばらくすると免疫抑制剤を使わざるを得ない状況になる例もあるということだと思うのですが、何かありませんか。今後の展開ですが、対象を軽症例に絞る、あるいは投与期間をもう少し長くしてみるとか、何かそのような方策は考えられるのでしょうか。これは審査担当の先生に聞くべきことではないかもしれませんが。そういう意味では、非常に役に立ったという研究として理解してよろしいですか。
 
○伊藤(澄)構成員
 この試験に関しては、当初予定されていた結果と少しずれがあったのだろうなと思っておりますが、免疫抑制剤として十分に安全に使えるような気もします。特に小児のこうした疾患に対する使い方で、一般的にそんなに広く使われる代物でもないということも鑑みますと、この資料に基づいて通常の承認申請は難しいとは思いますが、薬事承認への道は考えられるのではないかとは個人的には思いました。以上です。
 
○山口座長
 ありがとうございました。ほかに何か御質問やコメントはございませんか。それではないようですので、告示番号旧16については、ただいま御審議いただいた結果を取りまとめて、先進医療会議に御報告いたします。では、真田構成員にお戻りいただくこととします。
 
(真田構成員入室)
 
○山口座長
 では続きまして、先進医療Bの協力医療機関の追加について事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 資料2-1、27ページを御覧ください。告示番号36について、1件の協力医療機関の追加申請がありました。資料2-2、29ページを御覧ください。事務局において、先進医療実施可能とする保険医療機関の要件、様式第9号を満たしていることを確認いたしました。協力医療機関の追加として御了承いただきたく存じます。特に御意見がなければ、手続を進めさせていただきます。以上です。
 
○山口座長
 よろしいでしょうか。それでは、事務局は手続を進めてください。続いて、先進医療Bの取下げについて、事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 御説明いたします。資料3、31ページを御覧ください。告示番号36について、協力医療機関の取下げが1件ありました。取下げ理由の所に記載がありますが、実施責任医師の施設異動に伴い、本先進医療を実施する人員配置ができないため。なお、当該医療機関においては本先進医療症例の登録がなかったとあります。以上について、特に御意見がなければ手続を進めさせていただきます。以上です。
 
○山口座長
 よろしいでしょうか。それでは、事務局は手続を進めてください。続いて、先進医療会議における科学的評価の迅速化の対象となる認定臨床研究審査委員会の見直しについて、事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 御説明いたします。資料4、33ページを御覧ください。1.経緯です。平成30年4月に臨床研究法が施行されたことを受け、先進医療Bとして申請される技術の多くが認定臨床研究審査委員会(CRB)で審査されることとなったが、CRBと先進医療技術審査部会の審査項目が重複していることを踏まえ、両制度の整合性を図りつつ、先進医療Bに係る審査を迅速化・効率化する取組が進められている。具体的には、令和元年10月31日より、通知において以下のとおり定められているところです。
 こちらは下方に下線を引いておりますが、(マル2)対象となる認定臨床研究審査委員会として、先進医療会議における科学的評価の迅速化の対象となる認定臨床研究審査委員会は、以下のア又はイのうち、先進医療会議が認めたものとする。ア 臨床研究中核病院に設置された認定臨床研究審査委員会。イ 審査を行った臨床研究が先進医療Bとして「適」となり、かつ、審査を行った当該臨床研究の主要評価項目報告書又は総括報告書及びその概要が部会及び先進医療会議で評価された実績を有する認定臨床研究審査委員会。ただし、これを満たさない場合であっても、審査を行った臨床研究が先進医療Bとして「適」となった実績を有する認定臨床研究審査委員会については、先進医療会議が認めた場合は本対象とすることとする。
 令和3年度を目処に、その実績等に基づき、当該審査等の見直しについて検討するとしていたことから、先進医療会議における科学的評価の迅速化の対象となるCRBにおける先進医療Bの審査実績を報告するとともに、今後の運用について提案したいと存じます。
 2.審査実績の報告です。現状、迅速化対象CRBの一覧と、迅速化対象CRBで審査を行った臨床研究が先進医療Bとして「適」となった実績は、次のページ、別紙を御覧ください。
 対象CRBは21あり、右端に迅速化対象CRBとなって以降の審議結果がありますが、「適」が計3件、条件付き「適」が計3件、「継続審議」が計1件です。
 34ページにお戻りください。3.今後の運用(案)です。本運用の開始以降、迅速化対象CRBの審査を経た臨床研究(先進医療B)の申請件数がまだ蓄積していないことを踏まえ、原則として、従前の取扱いを継続してはどうか。なお、上記の例外として、現在迅速化対象CRBとなっているCRBであっても、審査を経た臨床研究(先進医療B)が、先進医療技術審査部会にて「不適」又は「継続審議」と評価された実績があるCRBについては、当該CRBで新たに審査を行った臨床研究が先進医療Bとして「適」又は「条件付き適」と評価された実績が認められるまで、迅速化対象CRBから除外してはどうか。なお、別紙でお示しのとおり、今回は東京医科大学のCRBが該当いたします。また、補注ですが「条件付き適」と評価されたものであっても、条件等に対して適切な対応がされず、再審議が必要となったものは除くとしております。また、今後、迅速化対象CRBの実績が蓄積された段階で、先進医療会議及び先進医療技術審査部会に改めて報告することとし、必要に応じて、迅速化案の見直しを行うこととしてはどうかとしております。
 こちらについて御意見を頂き、先進医療会議にお送りしたく存じます。以上です。
 
○山口座長
 ありがとうございました。ただいまの御説明について、何か御意見、御質問などはありませんか。いかがでしょうか。まだ件数が少ないので、もう少し蓄積してからということかと思います。暫定的に今のままで続けるということですが、よろしいでしょうか。特に御意見はないようですので、提案のとおりに先進医療会議にお送りしたいと思います。
 続いて、申請医療機関からの報告について、事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 御説明いたします。資料5、37ページを御覧ください。九州国際重粒子線がん治療センターから、告示番号B28「重粒子線治療」に関する御報告です。資料に添って御説明させていただきます。
 逸脱及び重篤な有害事象に関する原因分析・再発防止策の報告。申請医療機関は九州国際重粒子線がん治療センターで、告示番号B28「重粒子線治療」、適応症は非小細胞肺がん(ステージがI期であって、肺の末梢に位置するものであり、かつ肺切除術が困難なものに限る。)です。
 「手術不能肺野型I期非小細胞肺癌に対する重粒子線治療の多施設共同臨床試験」において、協力医療機関である量子科学技術研究開発機構 QST病院にて「非適格症例の登録および当該症例における重篤な有害事象」が発生したこと受け、QST病院及び九州国際重粒子線がん治療センター倫理委員会、効果安全性評価委員会等での審議を重ねた。その後、QST病院で外部委員を含めた拡大医療安全検討委員会にて審議された。研究グループとして原因分析と再発防止策等について以下にまとめるとあります。
 事象概要です。医療機関はQST病院、被験者72歳男性、左下葉肺 肺野型IB期肺癌(扁平上皮癌)。逸脱は、除外基準に抵触する症例の登録。重篤な有害事象、細菌性肺炎により死亡とあります。
 逸脱及び重篤な有害事象(死亡)に至る経緯です。QST病院にて重粒子線治療を施行された肺癌症例にて、2020年4月7日、定期受診の際に有害事象(肺炎)を認めた。肺炎を認めた部位は、重粒子線治療部位(左肺)の放射線肺炎だけでなく、右側の肺にも出現していた。4月10日、QST病院で有害事象報告を作成する際に、右側の肺炎について、「過去に実施された右肺への放射線治療の影響にて、今回のプロトコール治療以前から繰り返していた細菌性肺炎である」ことから、除外基準「4)胸部への放射線治療の既往がある患者」に抵触していることが判明した。4月7日、紹介元医療機関(千葉医療センター)に入院。細菌性肺炎と診断され、抗生物質等の投与を開始されるとともに、NPPVが用いられたが、4月16日、死亡に至ったとあります。
 治療経過です。病歴としまして、2019年9月3日、重粒子線治療についてQST病院が紹介された。腫瘍は左肺下葉に3.4cm大の扁平上皮癌(T2aN0M0 IB期)だった。胸部への放射線治療歴があることは認識していたが、本試験の除外基準を「同一病変に対する放射線治療歴」と誤認識していたため、除外基準の「胸部への放射線治療の既往がある患者」に該当しないと担当医が判断した。9月27日、担当医が文書を用いたインフォームドコンセントを行い同意取得した。その際、重粒子線治療の適応はあるが、肺炎を併発すると致死的になる可能性があること、在宅酸素導入は必須であることを再度説明した。9月30日、QST病院でキャンサーボード肺癌部会(呼吸器内科専門医、呼吸器外科専門医、放射線治療専門医を含む)を開催した。10月3日、QST病院症例検討会で本試験に登録可能と判断した。10月7日、EDCに登録した。
 2020年4月10日、細菌性肺炎の治療入院時、除外基準「4)胸部への放射線治療の既往がある患者」に該当することがQST病院で判明したため、同院より九州国際重粒子がん治療センター及び厚生労働省に報告した。4月16日、千葉医療センターにて2時30分に死亡されたとあります。
 患者及び家族への説明です。2020年4月10日に逸脱登録が発覚した際、入院中であり患者本人には逸脱について説明は出来ていないまま、4月16日に死亡された。2020年6月15日にQST病院担当医より御家族(患者の妻)に対して重粒子線治療後約半年で亡くなるという残念な結果であったことを謝罪するとともに、以下について説明した。
 QST病院で除外基準を誤認したことにより先進医療Bとして逸脱だったこと。効果安全性評価委員会より、死亡の直接的原因は細菌性肺炎と考えられるが、重粒子線治療との因果関係が完全には否定できないと指摘されたこと。適応を決める場合には片方の肺の機能が著しく低下している症例などではより慎重に判定するよう指摘されたこと。
 御家族は治療をできたことが精神的な支えになったので感謝されており、重粒子線治療を受けたことに関して後悔している様子はなかったとのことだった。また、名前を隠した状態でカルテや画像を外部委員に確認いただくことを了解いただいたとあります。
逸脱判明後の申請医療機関の対応です。2020年4月10日、逸脱に関するSAE第一報を厚生労働省に報告するとともに、協力医療機関へ周知した。逸脱に関する倫理委員会での検討が必要と考え、QST病院へ対応を依頼した。2020年4月24日、当該患者死亡が判明し、QST病院の当試験新規登録を中止とした。これを受け、逸脱に関する第二報および当該患者死亡に対する第一報を4月28日に厚生労働省へ提出し、協力医療機関へ周知した。同日、EDCにおける不備欠陥がないかを九州大学ARO、データセンターへ調査依頼し、4月30日にシステム上問題はないことを確認した。さらに、同様の誤登録を防止するため、EDC登録画面に注意書きを追記する変更を依頼し、8月5日に修正が完了した。
 2020年4月29日、QST病院で逸脱に関する倫理委員会が4月22日に開催され、担当医師による誤認識が主因であり、2人の医師が別個に適応判定し記録することと、第三者とともに研究計画書を読み合わせる形で選択基準と除外基準を確認されることを再発防止策とする審議結果であった旨報告を受けた。
 また、効果安全性評価委員会を4月30日~5月8日の期間で開催し、プロトコール治療との因果関係、研究代表者・事務局対応の必要性、研究継続等に関して審議いただいた。5月11日に審議結果の報告があり、今回の有害事象の発生に関して、プロトコール治療との因果関係を完全には否定できないが、治療前に細菌性肺炎の合併を予見することは困難であり、プロトコールの改定は不要で研究継続および症例登録は可能と判断された。ただし、肺機能検査値などが適格基準を満たしていても、片肺全体が摘出されている症例あるいは片肺全体が虚脱している症例など肺機能が著しく低下している症例の登録には慎重を期すべきと指摘いただいた。
 2020年6月1日、死亡に至ったことに対するQST病院の倫理委員会審査が5月27日に行われ、適格基準、除外基準の確認を徹底し、また肺機能が基準を満たしていても症例の登録には慎重を期することとで試験の継続自体は承認された旨、報告を受けた。これらの資料を含め、九州国際重粒子線がん治療センター倫理委員会を2020年6月18日~26日に開催した。2020年6月30日に審議結果が判明し、同様の逸脱が今後も起こらないよう努めることと、QST病院の症例登録再開は充分な再発防止策を講じることにより許容されるという内容であった。
 2020年7月~8月に、除外基準「胸部への放射線治療の既往がある患者」に関して同様の逸脱が他にみられないか、全登録例を調査することとした。これに併せて、間質性肺炎、活動性重複癌、妊娠など他の全除外基準に加え、選択基準の全項目についても逸脱がないかを再調査することとし、各施設モニタリング担当者へ原資料による再確認を依頼した。その結果、これまでの全登録例で他に選択基準、除外基準ともに逸脱した症例がないことを確認した。
 更に、肺癌に対する重粒子線治療の安全性を確認するため、JCROS(重粒子線治療多施設共同臨床研究組織)にて前向き登録した症例データを用いて、重粒子線治療による有害事象の発生状況を調査した。限局期肺癌は470例が登録され、少なくとも23例が乳癌、食道癌、肺癌などで胸部領域のX線治療を受けていた。Grade2の有害事象が9例(1.9%)、Grade3の有害事象が5例(1.1%)認められたが、その頻度は非常に低く、Grade4以上の重篤な有害事象は認められていない。本例と同様に、医学的に根治切除不能例と考えられる症例はそのうちの190例(40%)であったが、Grade2/3の放射性肺臓炎は2例(1.1%)/4例(2.1%)と低頻度で高い安全性があることを確認した。
 また、より広範囲を照射する必要性がある局所進行肺癌に関しても安全性を確認した。54例が登録され、肺に対しより広範な照射が行われているにも関わらず、Grade3の有害事象は1例(1.9%)のみ、Grade4以上の有害事象は生じておらず、肺癌に対する重粒子線治療は基本的には高い安全性を有していると考えられた。
 2020年11月11日、厚生労働省に報告したが、先進医療技術審査部会座長への相談の結果として、医療事故に該当しないという判断の妥当性及び治療実施の適応判断の妥当性について第三者による検証が必要と12月14日に指摘があり、QST病院で検討することとなったとあります。
 QST病院における第三者を含めた対応ですが、2020年12月22日、第一回臨時医療安全管理委員会が開催され、本事象が除外基準を誤認したために生じた誤登録であり、予測しなかった事象に起因した死亡ではないと判断されたが、外部有識者を交えた検証の必要性について協議され、12月25日に第二回臨時医療安全管理委員会で、外部委員を交えた検証が必要と判断され、拡大医療安全検討委員会を開催する方針となった。
 2021年1月20日、外部委員を含めた、第一回拡大医療安全検討委員会が開催された。2月26日に第二回会議で審議され、その後4回にわたり開催された報告書作成検討ワーキンググループ会合を経て、8月23日に第三回会議で報告書内容について最終審議され、9月6日に報告書が提出された。
 拡大医療安全検討委員会から、複数の外部呼吸器専門医、内部の放射線診断専門医に調査を依頼され、間質性肺炎がないことを確認された。また、肺癌学会理事を含む3名の放射線治療専門医により、有害事象のリスクが高いことを説明の上で患者自身が希望した場合には、X線による高精度放射線治療ならびに荷電粒子線(陽子線・重粒子線)による治療の適応はあると判断された。
 線量制約を遵守していることを再評価されるとともに、肺炎を併発すると致死的になる可能性や在宅酸素導入が必至であることを説明されており、担当医が行った病状および治療についての患者への説明は適切であり、治療実施における適応判断は適切と判断された。併せて実施された重粒子線治療および治療後の経過観察、紹介元病院での治療に関しても、有害事象発生への対応は遅延なく行われており適切と判断された。
 一方、適切でないと判断された事象として、除外基準の誤認がある。担当医がQST病院肺グループの最上位職にある医師で、適応判断、適格性確認票の作成、キャンサーボードおよび院内症例検討会の説明を行う立場であり、共同研究者が適格性確認作業に参加していなかった。また、共同研究者が適格性確認作業に参加しなければならないことが診療グループ内で認識されていなかった。研究責任者が当該治療に直接かかわっていない病院長であったため、臨床試験の適格性判定にかかわる二重チェック機能が働いていなかった。また、CRCは配置されていたが、ヒューマンエラーのリスクを想定した具体的な防御策は検討されていなかった。
 試験登録患者が死亡し、効果安全評価委員会で重粒子線治療と死亡との因果関係が完全には否定できないと判定された場合、治療適応の妥当性ならびに医療事故該当性について医療安全管理委員会へ報告し検討する必要があったが、その認識が研究責任者および担当医に不足しており8か月を要したことは改善の余地があるとされた。
 QST病院における再発防止策として、以下の5項目、改善提案として1項目が示された。
 再発防止策としまして、1.臨床試験の登録を行う医師は、これらのリスクを十分認識し、登録の際の各項目・基準の内容確認を慎重に行う。本試験の登録用EDCシステムについては、全ての胸部照射が除外項目に該当することが更に明確に認識できるように、2020年8月5日の段階で申請医療機関によって既に修正されている。
 2.担当医が行った初期判断について、上記のリスクを勘案した上で、診療グループ内でチェックリストを用いて確認する。チェックリストには検討に参加した医師全員の記名を行い、このリストを院内症例検討会に提出する。
 3.キャンサーボードおよび院内症例検討会においては、チェックリストによって登録の可否について複数の医師による判断がなされていることを改めて確認した上で、適格・除外基準の最終確認を疾患担当医以外の医師を含む委員会全体で行い、適格性確認票を作成する。
 4.組織的な取組みとして、各種臨床試験における適格基準、除外基準について誤認しやすい項目をリスト化し、上記1.~3.いずれかの段階で、十分に確認できる体制を構築することが望ましい。特に臓器への過去の放射線治療歴が、健常臓器も含め、どの範囲の照射野を指しているかを確認すること等について、リスト化しておくことを推奨する。
 5.本試験登録再開後の症例登録時には、上記の再発防止策が遵守されていることを本委員会のQST病院所属委員全員で確認する。また、再発防止策の定着に向け、本試験以外の臨床試験についても本再発防止策を参考として、学習会の実施、チェックリストや適格性確認票の運用を実施する。
 改善提案として、治療との因果関係が否定できない死亡事例が発生した場合の医療安全上の検討を遅滞なく行うべく、速やかに院内医療安全管理委員会に報告することについてQST病院内に周知を行う。特に臨床試験や先進医療の対象例で量子科学技術研究開発機構のIRBや厚労省への報告対象となった事例は、死亡例に限らず、遺漏なく速やかに院内医療安全管理委員会に諮る運用を促進するとあります。
 申請医療機関としての検討・考察として、倫理委員会、効果安全評価委員会、QST病院拡大医療安全検討委員会からの調査結果が報告され、申請医療機関として、今回の事象が生じた原因、重粒子線治療とSAEの因果関係および再発防止策を以下にまとめて記載するとあります。
 逸脱に関する原因として、除外基準に対する担当医の誤認識が主たる原因であった。「除外基準4)胸部への放射線治療の既往がある患者」と規定されているが、本事象が発生したQST病院担当医にて「当該腫瘍への照射歴」の意として誤認識されており、放射線治療既往の反対側の肺癌に対する重粒子線治療については除外基準4に抵触しないと判断されていた。またQST病院において、登録前の充分な確認が実施できておらず、チェック体制も不十分であった。
 重粒子線治療とSAEの因果関係についてです。重粒子線治療後4ヶ月までの経過は良好で、この照射による放射線肺炎は照射領域に限局していたが、治療後6ヶ月に相当する4月7日のCTでは右細菌性肺炎の所見に加え、左肺の照射領域よりも頭側に炎症所見が認められた。低酸素状態に陥った主たる要因は以前から繰り返していた右肺の細菌性肺炎と考えられたため、重粒子線照射との直接的な因果関係はないと判断され、その旨第1報として報告された。低酸素状態の悪化については、重粒子線照射による放射線肺炎の影響は否定できないものの、低酸素状態発生の直接的な原因ではないため明らかな因果関係があるとはいえないと判断されたものである。
 しかし、効果安全性評価委員会での審議の結果、因果関係を完全には否定できないとの判定となった。また、登録時の呼吸機能は適格条件を満たしていたが、効果安全性評価委員会では、肺機能検査値が適格基準を満たしていても、片肺全体が摘出されている症例あるいは片肺全体が虚脱している症例など、肺機能が著しく低下している症例の臨床試験への登録には慎重を期すべきとの指摘があった。
 QST病院の肺グループでは、1995年ごろより、肺癌の重粒子線治療の除外条件を「当該病変への放射線治療歴」と規定していた。一方、本試験では対側肺を含めて「胸部への放射線治療歴」を除外条件としている。これは、QST病院の拡大医療安全検討委員会の審議結果にあるように、既知のリスクからの観点というよりも、むしろ比較対象とするⅩ線治療の論文の規定によるものであった。
 本臨床試験の効果安全性評価委員会ならびにQST病院の拡大医療安全検討委員会の審議結果をふまえて、肺癌に対する重粒子線治療の基本的な安全性を再確認するとともに、対側肺への照射歴に対するリスクについて可及的な検討を行った。まず、JCROSにて前向き登録された2016年5月~2019年12月までの肺癌全治療例を評価した。X線での胸部照射歴のある23例及び医学的根治切除不能と判断された190例を含む限局癌470例、より照射範囲が広範な局所進行肺癌54例いずれにおいてもGrade3の有害事象は2%以下であり、Grade4以上の有害事象は確認できなかった。これらの結果により、肺癌に対する重粒子線治療自体は基本的に高い安全性を有していると考えられる。しかし、先進医療Aレジストリデータでは過去の照射歴に関する詳細なデータ(左右、照射範囲、線量)は収集できておらず、本症例と同様な対側の胸部放射線治療歴のある限局性肺癌に対する重粒子線治療症例の抽出が困難であった。
 このため、開院した2013年以降に九州国際重粒子線がん治療センターで重粒子線治療を行った限局性肺癌全症例(248例)について調査した。その内、他院で対側の肺癌に対する放射線治療歴がある症例は3例あり、過去に60~66Gyの胸部照射が行われていたが、重粒子線治療に伴う放射性肺臓炎はGrade1で、2~6年の観察期間で重篤な肺毒性は認めず、2例は5年以上無再発生存している。その他、他疾患で対側肺に50Gy以上の放射線治療歴があった症例が2例あったが、重粒子線治療に伴う放射性肺臓炎はGrade1であり、経過良好だった。
 よって、対側肺への放射線治療歴がある限局性肺癌に対して重粒子線治療を行うこと自体は一概に禁忌とするまでの高いリスクとは言えず、他治療困難例などにおいて重粒子線治療で根治を望める可能性がある場合は、キャンサーボードでの慎重な審議の上で、本臨床試験以外で重粒子線治療を行うことは許容できると思われた。ただし、少数例の検討であるため、今後、先進医療Aレジストリにおいて、照射部位、範囲、線量などの情報を収集項目に加えた上で、前向きにデータ収集と評価を行っていく必要もあると考えられた。
 QST病院拡大医療安全検討委員会の調査結果報告書に対する見解として、本試験への誤登録・死亡例について、臨床経過の把握と原因や背景要因が詳細に検討され、同種事例の再発防止策として、担当医が行った初期判断について、診療グループ内でチェックリストを用いて他医師による記名確認を行い、キャンサーボードおよび院内症例検討会においては、適格・除外基準の最終確認を疾患担当医以外の医師を含む委員会全体で行い、適格性確認票を作成する運用に変更される等、二重三重の確認体制を構築され、最大限の再発防止策が講じられたと考えられる。これら再発防止策を適切に運用した上で適格基準ならびに除外基準が遵守されることによって、今回のような誤登録は防止できると考えられる。九州国際重粒子線がん治療センターの倫理委員会の審議でも、同様の逸脱が起こらないよう努めるとともに、十分な再発防止策をとることが確認できればQST病院の登録再開は許容できると判断されており、同病院の登録再開について検討できる状況と考えられる。
 当該症例の治療適応判断、患者管理、患者および家族への説明の妥当性等についても検討を行った。肺癌診療ガイドライン2020では、「医学的な理由で手術ができないⅠ-Ⅱ期非小細胞肺癌には,根治的放射線治療の適応があり,行うよう推奨される」。また、「適切な照射法として体幹部定位放射線治療(SBRT)や粒子線治療のような,線量の集中性を高める高精度放射線照射技術を用いることが勧められる」とされている。以上のことから、本症例の場合、有害事象のリスクが高いことを十分に説明の上で患者自身が納得の上で選択しており、重粒子線治療を行ったこと自体は医療行為としては十分に許容されるものと考えられる。
 また、除外基準「胸部への放射線治療の既往がある患者」に抵触することが判明後、厚生労働省への報告やQST病院での倫理審査委員会などは行っていたが、2020年6月12日申請医療機関がQST病院に確認した時点で、除外基準に抵触していたことを患者本人や御家族へ対して説明していなかった。既に患者は死亡していたため、6月15日御家族に対してQST病院担当医が説明し、結果的に御家族の御了解は得られているものの、即時に説明されなかった点に関しては、最も優先すべき患者および御家族へ配慮が欠けていたと言わざるを得ない。被験者の福利に対する配慮が他の如何なるものよりも優先されなければならないという臨床試験の大前提を、改めて当該医療機関のみならず、他の協力医療機関とともに共有することが必要と考えられたとあります。
 実施事項として、2020年4月29日、本試験に対するQST病院の新規症例登録を中止するとともに、速やかに各協力医療機関に周知を図り、適格基準・除外基準の順守について研究代表者より改めて注意喚起した。本研究に登録された全症例の適格基準、除外基準を原資料に基づいて再確認したが、他に逸脱と認識できる例はなかった。
 EDCシステム上、除外基準が「はい」のまま登録すると、警告及びその理由を記載するようになっており、そのシステム自体には問題ないことを4月30日に再確認した。しかし、不適格症例の登録をより確実に防止することが必要と思われた。EDCの登録画面には次の通り注意書きとして「※対側肺や縦隔領域への放射線治療も含む」を追加し、除外基準「胸部への放射線治療の既往がある患者」の誤認が起こらないようシステムを修正し、既に2020年8月5日より運用を開始した。
 JCROSにて前向き登録した症例データにより、肺癌に対する重粒子線治療が基本的に高い安全性を有していることは確認できた。対側肺への放射線治療歴がある症例に対しても、申請医療機関で重粒子線治療を行った限局性肺癌全症例を遡及的に調査した結果、症例数は限られているものの安全に治療できていることは確認できている。ただし、対側肺に対するX線治療後の低肺機能例を含めて、胸部への放射線治療歴を有する症例への安全性についてはさらに評価を継続していく必要があり、多施設前向き観察研究(レジストリ研究)にて、胸部照射歴の有無、部位などの情報を収集項目として追加し前向きに慎重なデータ集積を行っていくようJCROS研究事務局及び研究代表者へ依頼する。QST病院の試験登録を再開する際には、協力医療機関も含めて適格・除外基準の確認体制をより強固とすることに加え、被験者保護に対する倫理的配慮の重要性を改めて周知するとあります。
 まとめとしまして、先進医療B「重粒子線治療」において、除外基準「4)胸部への放射線治療の既往がある患者」に抵触しているにもかかわらず、試験登録を行い、死亡に至った症例がみられた。厚生労働省へ報告するとともに、QST病院の試験登録を中止した。QST病院の倫理委員会に加え、効果安全性評価委員会、申請医療機関での倫理委員会を行い、当該例の審議に加え治療自体の臨床的妥当性を再検討した。
 また、適格基準、除外基準に抵触する例が他にないことを、原資料を基に再確認した。多施設レジストリデータから肺癌に対する重粒子線治療が基本的に安全であることを確認したことに加え、申請医療機関で同様な対側胸部放射線治療歴をもつ症例に対する重粒子線治療において、重篤な有害事象が生じてないことも確認した。逸脱登録を引き起こした原因が担当医の誤認識にあると考えられるため、他の当試験参加協力施設で同様の事象を生じることがないよう、EDC登録画面上も注意書きを追記することにより誤認が起こらないよう改善した。
 QST病院においては、担当医、グループ内医師、疾患担当以外の医師が別々の機会に確認することで、逸脱が起こりえないように三重の確認体制を構築された。当該医療機関においては、臨床試験や先進医療の対象例でIRBや厚労省への報告対象となった事例は、今後死亡事例に限らず遺漏なく速やかに院内医療安全管理委員会に諮るなど改善に向けた取り組みが行われている。また、患者家族への説明が即時行われておらず、患者保護に関する倫理的配慮を最優先で行うよう改めて周知する。
 臨床試験自体の妥当性は、効果安全性評価委員会、倫理委員会ともに確認されており、同様の事象が起こらないよう最大限の再発防止を講じる対応をとっており、QST病院の登録再開について御検討いただければ幸いに存じます。以上です。
 
○山口座長
 本件について御意見ありませんでしょうか。
 
○天野構成員
 天野です。意見というよりは感想をお許しいただきたいのですが、あえてコメントいたします。資料の40ページにおいて、「ご家族は治療をできたことが精神的な支えになったので感謝されており、重粒子線治療を受けたことに関して後悔している様子はなかったとのことだった」との記載があります。また、41ページでは、「有害事象のリスクが高いことを説明の上で患者自身が希望した場合にはX線による高精度放射線治療ならびに荷電粒子線(陽子線・重粒子線)による治療の適応はあると判断された」との記載があります。以上を踏まえて、45ページには、「本症例の場合、有害事象のリスクが高いことを十分に説明の上で患者自身が納得の上で選択しており、重粒子線治療を行ったこと自体は医療行為としては十分に許容されるものと考えられる」との記載があります。実は私自身も肺の腫瘍に放射線治療を受けて、間質性肺炎を発症して急性増悪となりまして、呼吸困難となって、救急搬送されて緊急入院となった経験がございます。私自身も当時放射線治療前に既に大量化学療法を併用した造血幹細胞移植など、濃厚な治療歴があったので、放射線治療は間質性肺炎のリスクが高いと説明されて、ほかに治療選択肢もないので、説明に納得した上で治療を受けてはいましたが、間質性肺炎で長期入院を余儀無くされましたし、幸い私はステロイドパルスは奏功しましたが、死の一歩手前まで症状は悪化しました。
 私自身も当時はそうだったのですが、がんの患者さんはがんとの戦い、がんを何とかして抑えたいというところに意識が行っておりますので、ときに副作用のリスクとか副作用の恐ろしさを過小に見積もる場合があるのではないかと思っております。しかし、がんを抑えなければいずれがんが進行して亡くなる可能性が高いとは言っても、重篤な副作用による健康被害は、元の病気よりも死期を早めることがあり得ますし、そのことを踏まえて、少なくとも治療を行う医師は十分な自制心を持って治療を行ってほしいと願います。以上です。
 
○山口座長
 貴重なコメントありがとうございました。ほかにございませんか。藤原先生どうぞ。
 
○藤原構成員
 本症例は先進医療Bの運用上は適切にいろいろな検討がされていると思うのですけれども、この病院の医療安全の体制自体のほうがもっと大きな問題を抱えているのではないかなと思います。これは私ども先進医療技術審査部会の範疇を越えるかもしれませんけれども、43ページですか、改善提案の所に、「速やかに院内医療安全管理委員会に報告することについてQST病院内で周知を行う」と、さらっと書いてありますけれども、特定機能病院であれば、このような割と元気だった人だと思うのですね、72歳で若いですし、肺機能は少し悪いですけれども、定期受診に来るぐらいの方なので、そういう外来通院が可能な患者さんが来ていきなり肺炎がCTで分かって、で10日後には亡くなるというのは、明らかに経過として予期しない死亡で、これはもう迅速に医療安全管理委員会、医療事故調査委員会が、特定機能病院であれば開催されて、第三者も入れて議論されるというのが通常のパターンなのに、先進医療技術審査部会の山口座長が指摘するまで、第三者を含めた医療安全委員会を開くことにもアイディアが至らなかったというのは、極めておかしいと私は思います。したがって、この医療安全の体制が特定機能病院並みにきちんとするというような改正案が提案されないと、今後も同じようなことがこの病院で起きる可能性があるなと考えます。以上でございます。
 
○山口座長
 ありがとうございました。ほかにございませんか。藤原先生の意見に私も賛成で、例えば39ページの2020年4月の外来に来たときの所見を見ると、両側の肺炎の所見があるとはっきりCT検査結果に書いてあります。つまり元々悪かった、放射線を掛けた所はもちろん肺炎を起こしていますが、治療側のほうも肺炎を起こしているのです。この方が本来きちんとチェックされて、対象から除外されていたらこういうことにはならないわけで、やはり事故に相当するのではないかと私は思ったので、きちんと調べてくださいということを申し上げたわけですが、これは事故として医療安全管理委員会は開かれているのでしょうか。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 拡大医療安全委員会になりますけれども、第三者を入れて開かれてございます。
 
○山口座長
 そうではなくて、藤原先生が言ったように、特定機能病院に必ずある医療安全管理委員会で事故として認識して、やはり調べるべきだと思います。その臨床試験をやる側が調査すると肯定的な意見が出てしまいがちなので、その手続がよくないなと思いました。
 それから状態が悪化してからの患者への説明はされていないのですけれども、家族への説明も6月15日ですからかなり遅れています。亡くなったときに本来説明すべきことが、そこまで先送りされるのはなぜかということも書かれていません。それから入院後10日で亡くなっている間に、千葉医療センターに移っているようですけれども、その間どういう治療が行われていて、いつ頃千葉医療センターに移ったかとか、そういう経緯もきちんと報告されていません。医療安全管理委員会のほうに掛かれば、恐らくその辺りのプロセスは詳細に検討されて、適切な対応がされて、適切な結論が出ると思うのです。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 失礼します、事務局です。41ページに「QST病院における第三者を含めた対応」とありまして、こちらは一応、2020年12月22日に、臨時医療安全管理委員会という形で、これを2回行って、その後、先ほどお話がありました外部委員を交えた、拡大医療安全検討委員会という手順は踏んでおります。
 
○山口座長
 臨時医療安全管理委員会が通常ある医療安全管理委員会なのか、全く別のものか確認する必要があると思うのです。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 はい、承知いたしました。申請医療機関に申し伝えます。
 
○山口座長
 そういう意味では、もう少し問い合わせてきちんと確認しないと、やはりいろいろ問題があると思うので、私個人的には、このまま直ちに登録再開でいいですよというわけにはいかないように思うのですけれども、その辺り何か御意見ございませんか。つまり、もう少し問い合わせて体制を確認してから、経緯を確認してから許可したほうがいいのではないかと思うのですがいかがでしょうか。
 
○神村構成員
 神村でございます。今の御意見の流れと同じように考えておりますけれども、たまたま家族の方が説明に納得された、大分時間がたってからですけれども、納得されたということで、何か少し安易と言っては失礼ですけれども、簡単なほうに流れてしまったような気がします。もう少し厳しく、きちんと対応されるべきだと思っております。
 
○山口座長
 ありがとうございます。ほかにございませんか。あるいはこの辺で再開だけはさせてもいいのではないかという御意見もあるかもしれませんが、どうでしょうか。よろしいですか。
 こういう調査の結果を分かりやすい言葉で、文書で患者の家族にお示しするべきだと思います。説明したら了解しましたとかそういう言葉だけではわかりませんので、その辺りも含めて報告することを要望するとともに、結果をきちんと文書でお示しすることも含めてやってくださいということも問い合わせて、それが戻ってきた時点で判断したいと思いますけれども、いかがでしょうか。よろしいですか。
 
(異議なし)
 
○山口座長
 それでは皆さまも同意していただきましたので、QST病院での再開登録については今回認めないで、幾つか問合せをすることにしたいと思います。ありがとうございました。
 続きまして、次の申請医療機関からの報告について事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 資料6、47ページを御覧ください。大阪大学医学部附属病院から、告示番号旧17「周術期カルペリチド静脈内投与による再発抑制療法」に関する御報告です。なお、真田構成員、飛田構成員におかれましては御所属の医療機関との関係で本議題の審議に際し御退席いただきたく存じます。御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 
  (真田構成員、飛田構成員退室)
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 それでは資料に沿って御説明させていただきます。次のページ、1.JANP study中止後の被験者保護のための観察研究実施についてです。適応外に使用された薬剤の安全性については、注意深く検証する必要があり、特に術後に生じた有害事象と被験薬(ハンプ)投与との関連については再検証する必要があると考え、観察研究にてJANP study参加者の健康観察を継続的に行うことを目的に新たな研究「JANP study中止後における肺がん周術期ハンプ投与の安全性に関する臨床研究」を立案し、令和3年4月19日付けで当院観察研究倫理審査委員会にて承認された。他の参加施設に対して同観察研究の倫理審査を依頼し、10月1日現在、他の全9施設の倫理審査委員会で承認され、JANP study参加者に対して対面での説明を開始し、また、オプトアウト文書を各施設のホームページに掲載した。
 当院では、JANP study参加者57名のうち、オプトアウト対象12名(死亡例9例、術後5年以上経過し通院のない3名)を除く45名中42名に対して、観察研究への参加を依頼し、39名から承諾を得た(3名は次回外来受診時に書面を持参予定)。残り3名のうち2名はいずれも手術単独群で今後も当院へ通院予定であり、次回受診時に説明を行う。残り1名(ハンプ投与群)は他院(研究参加施設)へ通院中であり、当該施設で説明を行い、観察研究への参加を依頼する。オプトアウト対象症例及び同意を得た51名の30日以降の重篤な有害事象の発生状況を確認したところ、術後入院歴なし29例、原疾患に関連する入院13例、第2肺がんに対する治療目的の入院2例、その他の疾患による入院7名であった。
 一方、当院未来医療開発部データセンターで観察研究用の症例報告システムを7月より稼動し、参加施設も含めて30日以降の重篤な有害事象の発生状況について症例報告システムに入力されたデータは、臨床研究事務局(大阪大学呼吸器外科)で確認を行い、入力状況や報告内容を研究代表者に順次報告している。研究代表者は、被験薬との因果関係が疑われる場合には、観察研究倫理審査委員会、病院長へ報告する。当院では、観察研究開始後に26例分の経過が症例報告システムに入力され、22例分について臨床研究センター・モニタリンググループによるモニタリングが実施された。うち30日以降の重篤な有害事象8例17件について、観察研究独立安全性モニタリング委員会を10月5日に開催し、いずれも被験薬との因果関係はないと判断された。今後、当院及び参加施設で入院を必要とした事象について、症例報告システムを介して情報を収集し、観察研究の実施計画書に則り、モニタリングによる確認、観察研究独立安全性モニタリング委員会での審議を行っていく。
 2.再発防止策の進捗状況。1)特定不正行為再発防止策。(マル1)医学系研究科・医学部附属病院の対応改善策。今回の事案では、大阪大学、医学系研究科及び医学部附属病院の三者間での情報伝達において問題があったため、大阪大学、医学系研究科・医学部附属病院の情報共有体制を新たに構築した。研究不正等告発窓口から研究公正委員会等への情報の流れの中で、秘密保持を確保しつつ、臨床研究や臨床試験に関連する生命科学分野の論文不正疑い案件について、迅速に医学系研究科長及び病院長へ報告される。令和3年9月30日開催の臨床研究総括委員会にて論文不正を疑う事案が発生していないことを確認した。
 (マル2)臨床研究データの信頼性確保について。大阪大学大学院医学系研究科及び医学部附属病院においては、平成28年8月より、「原著論文の確認に関する申合せ」により、論文が学術誌等に採択されたときは、確認者が自筆署名した確認報告書を当該論文とともに確認者の所属する教室等において保管すること、確認報告書の写しとともに論文に用いたデータを医学系研究科総務課企画係に提出することとが義務付けられている。一方で、元医員が筆頭著者と責任著者を兼ねていたことから、責任著者に代わり、共著者が確認し署名するよう「医学部附属病院における原著論文の確認に関する申合せ」を改訂し、令和3年6月10日開催の医学系研究科教授会、令和3年6月14日開催の病院運営会議にて付議し承認を得た。令和3年7月1日以降に投稿される論文より、本改訂に則り運用を開始した。さらに、研究データの信頼性を担保するために、研究データの信頼性を担保するために研究データのトレーサビリティーが重要であるため、大阪大学大学院医学系研究科及び医学部附属病院において実施される医師主導治験及び臨床研究を対象として、論文に使用されたデータから原データ(原資料に記載されているデータ)が再構築できるように体制整備を行った。データのトレーサビリティーを確保するための方法について、原データの変更・修正の記録方法を取り決め、令和3年9月9日開催の医学系研究科教授会、令和3年9月17日開催の病院運営会議にて付議し承認を得た。
 (マル3)呼吸器外科教室の適正な臨床研究実施支援体制の構築。前項マル1の対象は全研究者であり、その実施状況を確認する手段も講じているが、その実効性をさらに担保し、かつ適正な臨床研究を指導するため、呼吸器外科学教室の研究者が実施する臨床研究に対して、研究監視指導員2名を配置し、令和3年4月1日より監視している。7月より実施した呼吸器外科教室の指導状況について以下に示す。(1)教室における研究データ保管体制。令和3年7月には、呼吸器外科学教室で平成28年8月以降に投稿された学術論文データの確認報告書及び論文に用いたデータの保存状況を確認した。令和3年7月16日開催の当院臨床研究総括委員会で報告し、当院呼吸器科より異動した一部の教室員が責任著者として論文に使用した試料を自宅に保管していることは不適切と判断し、診療科長に是正を求めた。
 (2)教室における研究指導及びデータ確認体制。胸部外科・小児成育外科合同研究カンファレンスは、感染防止のために、1か月に1度の開催としているが、研究監視指導員が参加し、研究指導・学会発表・論文投稿に関する指導体制が適切に行われていることを確認した。呼吸器外科教室への指導状況については、2か月ごとに開催される臨床研究総括委員会で継続して報告され、必要に応じ是正勧告を行う。また、審議結果を呼吸器外科教室へフィードバックし、当該教室の全研究者へ周知を行う。
 (マル4)論文の撤回状況。特定不正行為と認定された臨床系論文2編については、令和2年11月に、主著者より学術雑誌編集社へ論文撤回の申し出を行い、1編については日本外科学会で調査後に撤回作業が開始予定であり、他の1編については撤回作業が終了した。また特定不正行為と認定されたJANP studyの根拠論文については、令和3年5月に国立循環器病研究センター理事長名で雑誌編集社へ論文撤回の意向を報告し、共著者より論文撤回についての同意を取得し、撤回に向けた手続を開始した。
 3.今後の報告のスケジュールについて。1)被験者保護のための観察研究結果についての報告。新たに計画中の観察研究は、JANP studyに則り、観察期間は承認後から令和4年7月31日(各症例術後5年間)を予定しており、令和4年内に結果をまとめて最終報告書を病院長、当院臨床研究総括委員会、観察研究倫理審査委員会、認定臨床研究審査委員会、先進医療技術審査部会へ報告する予定である。また、被験者保護に関する観察研究の進捗状況については3か月をめどに認定臨床研究審査委員会に報告し、何か問題等が発生した場合には、先進医療技術審査部会へ報告する。
 2)JANP studyに関する報告。JANP study総括報告書を令和3年10月6日の認定臨床研究審査委員会へ報告し、その後、先進医療技術審査部会へ報告する予定であるとございます。以上です。
 
○山口座長
 本件について御意見ありませんでしょうか。きちんと見てくれているようですが、何か御質問ありませんか。それでは御報告のとおり進めていただくということでよろしいでしょうか。
 
(異議なし)
 
○山口座長
 ありがとうございます。申請医療機関からの報告については以上といたします。真田構成員、飛田構成員にお戻りいただきます。
 
(真田構成員、飛田構成員入室)
 
○山口座長
 本日の議題は以上ですが、構成員の皆様、全体を通して何か御意見、御質問ございませんか。よろしいでしょうか。ないようでしたら、次回の日程を事務局からお願いいたします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 次回は、令和3年11月12日金曜日の開催とさせていただきます。時間は16時から18時までの予定で、詳細につきましては別途御連絡させていただきます。また、本日の議事録については作成次第、先生方に御確認をお願いし、その後、公開させていただきますのでよろしくお願いいたします。
 
○山口座長
 それでは、第123回先進医療技術審査部会を終了いたします。皆様ありがとうございました。
 
 

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