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2019年12月12日 第92回先進医療技術審査部会

 
(了)


(1)日時:令和元年12月12日(木)16:00~17:20

(2)場所:厚生労働省 共用第8会議室

(3)出席者
山口座長、一色座長代理、天野構成員、石川構成員、伊藤(澄)構成員、上村構成員、掛江構成員、真田構成員、飛田構成員、松山構成員、山中構成員、山本構成員

(事務局)
医政局研究開発振興課 治験推進室長
医政局研究開発振興課 課長補佐
医政局研究開発振興課 先進医療係長
保険局医療課 室長補佐
保険局医療課 先進・再生医療迅速評価専門官
保険局医療課 先進・再生医療迅速評価専門官
医薬・生活衛生局医薬品審査管理課 課長補佐

議題

1.新規申請技術の評価結果について
2.総括報告書の評価結果について
3.協力医療機関の追加について
4.先進医療の取下げについて
5.その他

議事録

○山口座長
 それでは定刻になりましたので、第92回先進医療技術審査部会を始めさせていただきたいと思います。年末の御多忙の折、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
本日の構成員の出欠状況ですが、伊藤陽一構成員、後藤弘子構成員、佐藤雄一郎構成員、柴田大朗構成員、田島優子構成員、藤原康弘構成員より御欠席の連絡を頂いております。掛江先生がちょっと遅れておられるようですが、現時点で18名の構成員のうち、11名が出席されているということで、本会議は成立していることを申し添えます。
それでは、配布資料と本日の審査案件の確認を事務局からお願いいたします。

○医政局研究開発振興課長補佐
 事務局です。よろしくお願いいたします。傍聴者の方の撮影は、ここまでとさせていただきます。御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。配布資料について確認させていただきます。お手元の資料は、議事次第から座席表、開催要綱及び運営細則、構成員及び技術専門員名簿と続きます。続いて、新規申請技術の評価結果について資料1-1~1-9、総括報告書の評価について資料2-1~2-3及び3-1~3-3、協力医療機関の追加について資料4-1及び4-2、先進医療B試験の取下げについて資料5、令和元年度先進医療技術の実績報告書について資料6、先進医療B総括報告書提出状況一覧、資料7、会議資料の最終ページは105ページとなっております。
なお、先生方のお手元には、先進医療実施届出書様式10号別冊資料というA3版の資料をお配りしております。こちらは構成員及び事務局限りとさせていただいております。お手元の資料に乱丁、落丁等がございましたら事務局までお知らせください。よろしいでしょうか。
続いて、利益相反の確認です。申請医療機関との関係、対象となる企業又は競合企業について、事務局から事前に確認をさせていただいております。今回、整理番号95の技術、信州大学医学部附属病院からの申請について、天野構成員、山口座長より御報告がありましたが、50万円以下でしたので、当該技術の議事取りまとめ及び事前評価に加わることができます。また、山中構成員におかれましては、50万円以上500万円未満でしたので、議事の取りまとめのみ加わることができません。
続いて、告示番号旧3の技術、国立循環器病研究センターからの申請について、天野構成員、一色座長代理、掛江構成員、飛田構成員より御報告がありましたが、いずれも50万円以下でしたので、当該技術の議事取りまとめ及び事前評価に加わることができます。また、山中構成員におかれましては、こちらも50万円以上500万円未満でしたので、議事の取りまとめのみ加わることができません。告示番号旧3及び旧16の技術、こちらは国立循環器病研究センターからの申請ですが、山本構成員については所属の医療機関ですので、一時御退席いただくことになります。告示番号旧3の技術も国立循環器病研究センターですが、山口座長におかれましては総括報告書の御評価を頂いておりますので、本技術の審議については一色座長代理に進行をお願いいたします。
事前の届出以外に、もし何らかの利益相反がございましたら、この場で御報告をお願い申し上げます。よろしいでしょうか。それでは該当なしということで、承知いたしました。また、今回もタブレットを使用いたします。届出書類等についてはタブレットより閲覧をお願いいたします。事務局からは以上です。

○山口座長
 では、議事に入ります。新規申請技術の評価結果について、事務局より説明をお願いいたします。

○医政局研究開発振興課長補佐
 御説明いたします。資料1-1の15ページを御覧ください。先進医療Bとして新規に御評価いただく技術は、整理番号95、切除後の膵臓癌に対するS-1併用WT1ペプチドパルス樹状細胞ワクチン療法とS-1単独療法のランダム化第2相臨床研究です。申請医療機関は、信州大学医学部附属病院となっています。御審査いただいた担当の構成員の先生は、主担当が松山構成員、副担当が掛江構成員、柴田構成員となっています。
資料1-5の37ページを御覧ください。審議に先立ち、先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件について御説明いたします。まず様式第9号ですが、実施責任者の要件は、診療科の要件が輸血部、細胞治療部、再生医療科若しくはそれに準ずるもの、又は消化器内科・消化器外科・がん診療部となっております。資格は、細胞治療認定管理師又は再生医療認定医となっております。当該診療科の経験年数は3年以上、当該技術の経験年数は1年以上となっております。また、当該技術の経験症例数の要件は、助手又は術者として1例以上、その他(上記以外の要件)として、膵臓癌に限定した経験は不要であるが、樹状細胞療法に関わる実施経験症例数が3例以上を有することとなっております。
続いて、医療機関の要件です。診療科は輸血部、細胞治療部、再生医療科若しくはそれに準ずるもの及び消化器外科、消化器内科又はがん診療部門で、実施診療科の医師数は、細胞治療認定管理師又は再生医療認定医1名以上となっております。その他医療従事者の配置は、臨床検査技師が1名以上必要です。病床数は200床以上、看護配置は10対1看護以上、当直体制は必要で、緊急手術の実施体制は不要、院内検査の24時間実施体制が必要となっております。他の医療機関との連携体制は不要で、医療機関の保守管理体制、医療安全管理委員会の設置は必要となっております。医療機関としての当該技術の実施症例数は、樹状細胞ワクチン療法3例以上が必要です。その他、再生医療等安全性確保法に対応できる構造設備を有することとなっております。その他の要件として、頻回の実績報告等は不要となっております。
なお、利益相反についての書類、様式10号については、A3版の別冊資料も併せて御参照ください。以上です。

○山口座長
 これらの要件について、御意見はございますか。まず様式第9号はいかがでしょうか。何かありませんか。様式10号についても何か御意見はございませんか。様式第9号、10号について、どちらでも結構ですので、何かコメントはございますか。ないようですので、様式第9号についてはお認めすることといたします。様式10号についても特段の意見はなしということにいたします。
次に、技術の概要と実施体制の評価について、主担当の松山構成員より御説明をお願いいたします。

○松山構成員
 それでは、技術の概要を御説明いたします。実質的には、資料1-1に記載の内容を読み上げさせていただきます。樹状細胞に関しては抗原提示細胞でして、癌抗原を提示して生体内で特異的免疫反応を誘導するということが予想されています。この樹状細胞に、癌特異的抗原のアミノ酸配列を基に合成した人工抗原ペプチド、今回の場合はWT1という杉山先生らが見つけられたタンパク質ですが、これをパルスして抗原提示させることにより作製された樹状細胞癌ワクチン、癌ワクチンというか活性化した細胞です、これの投与によって、癌細胞患者さんの生体内で特異的免疫反応を誘導し、抗腫瘍効果を発揮するということです。
 今回の先進医療の申請では、腫瘍抗原ペプチドであるWT1ペプチド抗原を、体外で分化誘導した樹状細胞へ取り込ませた細胞ワクチンを用いて、治癒切除後の膵臓癌に対するS-1存在下での樹状細胞ワクチン療法の有効性・安全性を検討するということになっています。対象群は、樹状細胞ワクチン非投与群となっております。主要評価項目は無再発生存期間、副次評価項目に関してはこちらに記載のとおりとなっています。以上です。

○山口座長
 それでは、続いて副担当の掛江構成員より、倫理的観点からの評価について御評価をお願いいたします。

○掛江構成員
 掛江でございます。よろしくお願いいたします。同意書に関してですが、まだプロトコール自体が最終的に「適」となっていないというところで、同意書は研究計画書を御説明するための文書になりますので、現段階では同意文書自体の評価は控えさせていただいております。ただ、1点明らかに問題かと思っているのは、先進医療で実施されるということが一切記載されていないという点です。再生医療については記載があるのですが、先進医療のことを全く書いていないという点は問題です。そのほかにも幾つか不備等が認められるのですが、こちらについては全体の計画がきちんと固まってから、また見せていただいたほうがいいかと思っております。
 補償の内容については、一応記載はありましたので、適、不適は非常に迷いました。ただ、内容が乏しく、希望すれば説明が受けられる、申出てくれれば資料を渡すというような書きぶりになっていまして、非常に不親切に感じましたので、そこは是非直していただいたほうがいいのかなと思います。ただ、そこまで厳しくする必要はないという御意見がもしあれば、少し考え直したいと思っています。以上です。

○山口座長
 続いて、試験実施計画書等の評価について、副担当の柴田構成員が欠席ですので、事務局から代読をお願いいたします。

○医政局研究開発振興課長補佐
 事務局です。18ページの下段にあります試験実施計画書等の評価に、御評価及びコメントを頂いておりますので、事務局で代読いたします。6.期待される適応症、効能及び効果から9.治療計画の内容については、適の御評価を頂いております。10.有効性及び安全性の評価方法が不適ということでした。以下11.モニタリング体制及び実施方法から16.個人情報保護の方法については、適の評価を頂いております。
19ページの上段にコメントを頂いておりますが、代読いたします。単独の臨床試験の計画としては、おおむね問題ないように見受けられるが、本試験の後に医師主導治験を実施すると説明されている開発ロードマップを踏まえると、その妥当性について検討すべき点がある。これまで先進医療Aとして実施してきた、かつ治療としてもある程度の実績があると説明されている本治療法を、医師主導治験を実施する予定ありとしながら現時点で医師主導治験に着手しない理由・数年間を掛けて先進医療下でRCTを行わなければならない必然性について明らかにするべきと考える。言い換えると、現時点で医師主導治験が実施できないのは、いかなる情報が欠如しているためか、その情報が今般提案されている先進医療Bによって得られるのかを明確にする必要がある、とのことでした。以上です。

○山口座長
 続いて、1~16の総評について、主担当の松山構成員よりお願いいたします。

○松山構成員
 よろしくお願いいたします。柴田先生のコメントが終わってから実施体制等の評価についてコメントさせていただこうと思い、先回しにさせていただきました。実施責任医師の体制に関しては、全く問題なく御経験があります。医療機関の体制に関しても、しっかりした大学でされているというのは理解しています。しかしながら、医療技術の有用性ですが、実は先行試験として行われていたものでは、ペプチドを3種類混ぜているのです。今回の試験に関しては同等の試験であるという形で、ペプチドを2種類で混ぜてきていると。これに関しては、同じものを作っているのかどうかということが私では判断できかねるというところです。ですから、例えばPMDA等で先行研究のWT1のペプチドパルスのDCと、3種類のペプチドのものと、今回のペプチドに関して、同等のものであると、議事録が付く形のRS戦略相談の対面助言等で、これは同等であるという形をアプルーブしていただけるのであれば、この部分の有用性に関しては一定程度譲歩できるのではないかと考えていますが、現状、提出していただいた資料の中で同等性に関するリファレンスは全くなかったので、一旦整理していただくべきであろうと考えています。
 加えて、柴田先生のところで、やはり有効性及び安全性の評価で問題があるのは、two-armに分けているのですが、実際に投与されなかった患者さんで癌が再発したなどという場合には、このWT1-DC細胞を投与するという形になっていて、正直に言うと評価療養になっていません。要するに、どう評価するのかというところがあって、これはやはり研究として上がってきているのですから、しっかりプロトコールをもみ直してくださいということです。
 1~16の総評となりますが、今回は不適とさせていただきます。このプロトコールのサイエンスレベルに関してうんぬんしているわけではなくて、もうちょっと丁寧に説明していただく必要性があるだろうということと、プロトコールに関しても、しっかりと評価療養としての枠組みを理解した上で提出していただきたいということです。中途半端にやり取りすると、提出者の方々が中途半端な対応で終わってしまうので、ここは早くお戻ししてあげるほうがいいという判断です。
 加えて、今回いろいろ文献を読ませていただきましたが、引用されている論文のほとんどがWT1-DCと関連性の低いワクチン療法についての議論で、一般的に癌免疫療法はこうあって非常に有効だから、WT1もいいのではないかというような議論ばかり述べられていて、再生医療をやっている人間からしたら、ちょっと作り方を変えても細胞はかなりキャラクターが変わるので、同じだと言うにはさすがに厳しかろうというところがあります。やはり多くの申請者の先生方には、ボリュームが多いほうがしっかりとした申請書になるような雰囲気があって、そういう形でボリュームを付けてくるのですが、そうでなくて本質のところだけ申請してくだされば、それが光っているのであれば我々は理解できますので、そうしてくださいということです。
 それから、WT1-DCが有効であるのかどうかというのは、先行論文を見ると非常にプロミッシングであると私は評価しているので、ですから、ここはエンカレッジしたいと思っているのです。しかし、なぜ有効なのかということが、やはり癌免疫療法はいまだにエビデンスが十分ではないというところがあって、せっかく大学でされているのですから、なぜ効果があるのかということを明確にして、本当に効果があるのかどうかと言われている癌免疫療法との差違というものを、是非アカデミアから、これはすばらしいのだという形で出していただきたいと。そういう思いを持って、今回は早めに対応していただくということで、不適とさせていただこうと思っております。以上です。

○山口座長
 それでは、御討議をお願いいたします。

○天野構成員
 今、不適という評価を頂いたので、これに加えてコメントをすることが妥当かどうかは議論があるかと思いますが、説明文書について2か所コメントさせていただきます。タブレットの資料になりますが、169ページの説明文書の中で、今回のプロトコールについて説明があります。「毎回ワクチンと一緒に、補助薬としてピシバニールという薬を接種します。なお、ピシバニールは、一般的に癌患者において化学療法を実施する際に一緒に使用される治療薬の1つで、樹状細胞ワクチンの癌に対する抗腫瘍効果を高めるために使用します」との記載があります。ピシバニールは確かに保険承認されているお薬ではありますが、国内のガイドライン等においては、標準的な治療薬として位置付けられているお薬ではないと理解しておりますので、「一般的に癌患者において化学療法を実施する際に一緒に使用される治療薬の1つ」という言い方は、誤解を招く可能性があるかと思うので、不適かと考えます。
 もう一か所は171ページで、これは先ほどの御指摘とも関連しますが、研究に参加することの利益の部分で、「これまでの経験から、標準的な治療に加えて樹状細胞ワクチン療法を行うことで、生存期間の延長や手術後の再発を予防し得ることが得られ得ることが利益として考えられます」と書いてあります。確かに「得られ得る」という記載、可能性という記載にはなっているのですが、「これまでの経験」という部分がどういった経験を指しているのかがよく分からず、患者さんも判断に迷うかと思うので、この部分についても記載の修正が必要かと考えます。私からは以上です。

○山口座長
 ありがとうございました。

○松山構成員
 ピシバニールに関してです。今回は適応外という形になっているのですが、将来的にもし先進医療でいくのであれば、この部分が適応になっていないと厳しいというところがあるので、ここは中外製薬様としっかり議論していただいて、ピシバニールも治験なりをして適応拡大していただいたという前提で先進医療にいくのか。結局、やった後で医技評でのっかってこないと保険診療にいかないので、何のために先進医療をやったのだという話になりますから、ここは中外製薬さんと議論していただければ有り難いなと思います。

○山口座長
 ほかに何か御指摘はございますか。

○山本構成員
 先ほど掛江構成員が言及された説明文書の補償の部分の記載なのですが、確かに詳細が全然書いていないというところがちょっと。普通は対象になる、例えば死亡の際の見舞金とか、ある程度概略はここの本文に書くものだと思います。確かに、最後の「御希望のある場合には、保険内容について資料をお渡しすることもできます」という文は、補償保険の詳しい内容については確かにそのときは渡さないで、起こったときに詳細なものをお渡しするというのは、割と慣習としてそうなっているので、最後の文についてはそうかもしれないと思うのですけれども、「健康被害に関する医療手当が補償の対象となる場合があります」というのは非常に簡単すぎるので、もうちょっとコンディションを書いていただく必要があるかなと思います。

○山口座長
 ほかにございませんか。一色先生、何かございますか。今皆さんから頂いたコメント、それから評価していただいた皆さんの意見を見ますと、やはり不適の部分が結構多い。エンカレッジする御意見もありまして、決してこの研究が全て駄目というわけではないのですが、簡単に言えばやや雑すぎて、もう少しきちんとやってほしいという、激励するような意味での不適だと思います。やり取りを続けているうちにどんどん時間がたつよりも、そのほうがむしろ物事が早く進むという御判断だと思います。御意見はいかがでしょうか。

○伊藤(澄)構成員
 WT1の膵癌を対象とした試験は、対象者が違うのですが、医師主導治験が動いていますよね。動いている状況の中で、こちらが先進医療でやるというと、先ほどから懸念されるように、先進医療と医師主導治験と最終的な承認への道筋というのは、随分ずれが生じるような気がするのですが、そこら辺の切り分けはどうされるのでしょうか。

○松山構成員
 恐らく今回のWT1に関しては、信州大学がベーシックリサーチからきっちり積み上げていたもので、先行しているWT1と違うのです。だから、WT1のターゲットのペプチドが違うことによって、実は別物なのです。もし医師主導治験で走っているもので有効性が出れば、プロミッシングだなと思うのだけれども、同じものではないので、多分もう一回、そこはきっちりとデータを取らないといけないと思います。これは信州大学がオリジナリティーを持ってやっているWT1だと思います。

○伊藤(澄)構成員
 ありがとうございました。

○山口座長
 ほかにございませんか。よろしいでしょうか。それでは、整理番号95については「不適」ということにいたします。
 続いて、次の新規申請技術の評価結果について、事務局より御説明をお願いいたします。

○医政局研究開発振興課長補佐
 御説明します。資料1-1の15ページを御覧ください。先進医療Bとして新規に御評価いただく技術は、整理番号98、再発性Clostridioides difficile関連下痢症・腸炎に対する糞便微生物叢移植です。申請医療機関は滋賀医科大学附属病院となっています。今回、審査を御担当いただきました構成員の先生は、主担当が伊藤澄信構成員、副担当が田島構成員、伊藤陽一構成員となっております。
 資料1-9の55ページを御覧ください。審議に先立ちまして、先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件について御説明します。まず様式第9号です。実施責任医師の要件は、診療科の要件が消化器内科、資格は不要となっております。当該診療科の経験年数は5年以上が必要で、当該技術の経験年数は、要件はありません。当該技術の経験症例数は実施者(術者又は助手)として1例以上は必要で、その他、「潰瘍性大腸炎もしくはクローン病に対する糞便微生物叢移植」に対する経験症例数は、上記「当該技術の経験症例数」とみなすことができるとなっております。
 続いて、医療機関の要件です。診療科は消化器内科、実施診療科の医師数は、大腸内視鏡経験年数5年以上の医師1名と、当該技術の経験症例数5年以上の医師1名となっております。他診療科やその他医療従事者の配置は不要となっております。病床数は500床以上、看護配置は7対1看護以上、当直体制は内科医師1名以上、緊急手術の実施体制及び院内検査(24時間実施体制)が必要となっております。他の医療機関との連携体制は不要で、医療機器の保守管理体制は必要となっております。医療安全管理委員会の設置は必要です。医療機関としての当該技術の実施症例数は、要件はありません。その他の要件として、1Infection control team(ICT)、あるいはInfection control doctor(ICD)が常駐していること、2院内で糞便中の寄生虫除外目的の検鏡検査が細菌検査室などで実施できること、3滋賀医科大学附属病院が主導する当該の医師主導臨床試験に参加し、全症例を登録、臨床情報を提供できることとなっております。
 その他の要件はございません。なお、利益相反についての書類については、お手元のA3の様式10号、別冊についても併せて御参照ください。以上です。

○山口座長
 ありがとうございました。これらの要件につきまして、何か御意見ありますでしょうか。

○真田構成員
 事務局にお伺いしたいのですが、今のその他の要件の中の3、滋賀医科大学附属病院が主導する当該の医師主導臨床試験云々の下りについて、この試験であれば、先進医療Bに参画することイコールその中に入るということを意味すると思うのですが、そこは、全症例を登録して臨床情報を提供できることが条件だという理解でよろしいのですか。これは共同研究であれば基本そうなると理解しているのですが、何か特出しでこのように書かれている理由はあるのでしょうか。

○医政局研究開発振興課長補佐
 事務局です。御指摘ありがとうございます。ふだん、このような記載はありませんが、今回、申請者からこのような記載で提出されました。もちろん3に書かれている内容は、御指摘のとおり臨床試験では当然のことで、特出しして記載する意味はそれほどないと思われますが、このように記載されておりましたので、そのままの形で出させていただいております。

○山口座長
 これは削除したほうがよろしいという意見でしょうか。

○真田構成員
 何か特別な意味があるのであれば、これを残していてもいいのですが、余りないような気がしたので、ちょっとお伺いした次第です。

○山本構成員
 今は、これは別にあってもなくてもいいのですが、もしこれが将来終わって、有効で、保険の中医協とかに勧めるときにこれが残っていると、ちょっと余りよろしくはないのかとは思うので、特段書く必要がなければ、今のうちにもう削っておいてもいいのではないかと思うのです。それとも、何か将来的にも患者レジストリーみたいなのを滋賀医科大が作られることを前提において書いておられるのであれば、残してもいいかと思うのですが、いかがですか。

○山口座長
 どうでしょうか。

○医政局研究開発振興課長補佐
 特に事務局ではそのような予定があるために書いているとはお聞きしておりませんので、どのような意図で書かれたかということについては確認させていただいて、もし必要ないようであれば削除させていただくようにいたします。

○山口座長
 それでは、いかがでしょうか、確認した上でそのようなことがなければ、やはり削除したほうがいいということでよろしいでしょうか。無駄なことを書く必要はないわけですので。どうも貴重な御指摘ありがとうございました。では、それを確認の上で削除するということでよろしくお願いします。ほかにございませんか。

○真田構成員
 すみません、もう一点、相当些末なことで申し訳ないのですが、病床数500と言いますと、ちょっと中途半端感がするのです。多分、私の記憶が確かであれば、特定機能病院の要件が400床でしたよね、確か。その400でなく敢えて500であるというところは、何か意味があるのかと思って。仮に申請医療機関がもう500でいきますと言うならばそれはそれでいいのですが、特定機能病院の要件より更に厳しいところを突いてきているので、何か意味があるのかと思って。そこは事務局さん、何かお聞きになられていますか。

○医政局研究開発振興課長補佐
 御指摘いただきましてありがとうございます。こちらも同様に、特に我々のほうでは500床である理由についてはお聞きしておりませんので、併せて確認するようにいたします。

○山口座長
 ありがとうございました。500である必要は全然ないと思うので、その辺りも別に緩和しても構わないと思います。御意見を聞いた上で緩和して、ということでよろしいでしょうか。ほかにございませんか。それでは今、御指摘いただきました2点を確認した上で承認ということで、様式第9号についてはお認めすることといたします。また、様式10号についても特段の意見はなしといたします。
 次に、技術の概要と実施体制の評価について、主担当の伊藤澄信構成員より御説明をお願いします。

○伊藤(澄)構成員
 昔はClostridium difficileと言っていた代物が、最近はClostridioides difficileに名前が変わっております。抗生物質の投与に伴って、菌交代現象で腸炎を発症する、発症する人は繰り返し発症する。死亡率を高めることもあって、いろいろな治療、抗菌薬バンコマイシンなどが使われたり、ワクチンも開発されたりしている領域です。ところが、2013年に『The New England Journal of Medicine』に再発性のCDIに対して糞便微生物、要するに糞便移植をする、それをすると劇的に再発が減るという、かなり衝撃的なデータが出てきました。それ以降、炎症性腸疾患とかほかの領域にも糞便移植が行われてきています。一方で、経口カプセル剤ができたり、投与方法も、一番最初の『The New England Journal of Medicine』のオリジナルのときは、十二指腸まで管を入れて、それから投与するという話だったのですが、大腸内視鏡で投与する方法がでてきています。技術的にはそれほど難しくないようですので、随分、巷で行われているかと思います。
 一方で、免疫不全患者さんに対するこの糞便移植療法で、多剤耐性菌による死亡例が今年発生しておりまして、2019年、今年の6月にFDAから注意喚起がされて、この11月に公聴会が開かれて、今後どうするのだという話がされるような状況で、大変ホットな話題の最中に、この申請が出てきております。このように糞便移植を受けるような状況の患者さんなので、特にレシピエントのコントロール、受ける人が免疫不全だったりすると危ないねという話が当然ある。それと同時に、ドナーが病気を持っている、Clostridioides difficileというのは、15%ぐらいの人が保菌していたりもするので、どなたが提供者になるのかが問題になる、ドナーのコントロールをどうするのかというのが議論としてあり得るのだろうと思われましたので、申請者に随分、確認しています。
 それ以外のことに関しては、それほど大きな問題はなく、実際にFDAの記事を見ましても、余りコントロールされないままに実臨床で行われているところがあるのだろうと思っています。一方で、技術的には何て言うか、一番適切なドナーの糞便を作ってカプセルにして投与したほうがいいのではないかというような開発が進んでいる状況の中で、ドナーのコントロールをしないままに投与するという意味では、多少プリミティブ、周回遅れのような技術かもしれないと思います。その反面、これをきちんと評価して、有効性を日本の中で評価するのは大切ではないかということで、評価させていただいています。全体として見ると、ドナーのコントロールさえつけば、それほど問題はないのではないかと思っています。田島先生、伊藤陽一先生の評価に関して、事務局からお伝えを頂いて、最後にまとめさせていただければと思います。

○山口座長
 ありがとうございました。それでは続いて、倫理的観点からの評価について、副担当の田島先生は御欠席ですので、事務局、代読お願いします。

○医政局研究開発振興課長補佐
 事務局です。資料1-6の40ページ中ほどにあります倫理的観点からの評価を御覧ください。4.同意に係る手続、同意文書と5.補償内容、いずれも適の御評価を頂いております。ドナー及びレシピエント用の説明文書・同意文書の全てについて、事前の指摘に従い所要の修正がなされたため、適と評価した。補償については、保険加入の上適切に対応することとなっているので適としたとのコメントを頂いております。以上です。

○山口座長
 続いて、試験実施計画書等の評価について、伊藤陽一構成員が御欠席ですので、事務局より代読をお願いします。

○医政局研究開発振興課長補佐
 事務局です。こちらも資料1-6の40ページの下段にあります試験実施計画書等の評価を御覧ください。6.期待される適応症、効能及び効果から、41ページ上段になりますが、16.個人情報保護の方法まで御評価いただいて、いずれも適の御評価を頂いております。伊藤陽一構成員から頂いた照会事項及びそれについての回答は、50ページ及び51ページに付けております。以上です。

○山口座長
 ありがとうございました。では、1~16の総評について、伊藤構成員からお願いします。

○伊藤(澄)構成員
 本試験は、とにかく糞便を提供するドナーをレシピエントが自分で探してこなければいけないという点はありますが、ドナーの病原微生物管理に関しては、かなりしつこく検査されています。実際、サイトメガロとかEBとかに感染していないドナーは本当にいるのかと思ったりもするのですが、それは、レシピエントが既に抗体を持っていればセーフにするという話になっています。そうは言っても調べていると、過去に実施された試験を見る限りでは、誰でも連れてきた人がドナーとして適切であったという話ではなさそうだと思っております。ドナーの糞便の品質管理が大変困難だろうとは思います。しかし、それを適切に実施することを前提に話が進んでいると思いましたので、技術的には正直ベースで言うと周回遅れかなという気もしないでもないのですが、先進医療として実施することについて特段の問題はないのではないかと評価させていただきました。以上です。

○山口座長
 ありがとうございました。では、御討議をお願いします。何かございませんか。

○天野構成員
 御説明ありがとうございました。説明文書等を拝見しても、先ほど御説明いただいたように、米国FDAでの免疫不全患者をレシピエントとした場合の多剤耐性菌の死亡例についても記載がされて、注意喚起されているという点もありまして、この部分については十分御理解いただいた上で参加いただく必要があるかと思うのですが、1点、先ほどから御指摘いただいているドナーさんの件です。説明文書の中で記載がありまして、先ほど御説明いただいたように、ドナー候補者は患者さん御自身で探していただく必要があり、御家族の中からドナー候補を選定いただく場合が多いと思われます。ということで、御家族の中から探されることがある意味で前提となっている記載があります。実際そのようになるものと思うのですが、1点注意が必要だと思われるのは、これは造血幹細胞移植における血縁ドナーにおいても同様の問題がありますが、血縁者間移植であるとか、そういった御家族がドナーとなる場合に、家族だからドナーとなるべきという無言の圧力というか、そういったものが掛かってしまって、ときにプレッシャーとなってしまって、ドナーとして参加する場合の自由意思を阻害し得るという可能性が指摘されているところかと思います。本件においても、家族の方であっても十分にそういった自由意思が尊重されるといった記載が、ドナー側の説明文書にも更に追記があると、より適切かと感じました。以上です。

○山口座長
 ありがとうございました、この点、何か。

○伊藤(澄)構成員
 ありがとうございます。その点に関しては、申請者への質問の所を読んでいただくと、再三聞いてはいるのですが、どうもドナーを自分で見付けてこなければいけないとか、しかもドナーがちゃんと排便した日にそのまま投与ができなければいけないとか、日程の調整が大変そうとか、幾つかの問題があるとは思っておりました。ただ、これは排泄物ですので、そういう意味ではそれほど危険はないと思います。申請者の考えで、排泄物だからどうでもいいのではないかというニュアンスが伝わってくるのが気にはなりましたが、そうは言っても、時間の拘束は別にして、本人にとってはそれほど大きな問題はないのかと思いました。
 もう一点は、適格でなかったという理由が伝わらない点については、いまだに多少気にはなっております。そこのところをギリギリやってもしょうがないと思ったので、多少甘くしております。ただ、ドナーの方に不適格になった理由を適切に伝えてほしいとは個人的には思っています。ですから、天野委員がお気になされることに関して、私も多少気にはなっておりますが、それを不適にするほどの理由にはならないということで、こういった形の評価をさせていただきました。

○山口座長
 天野委員、いかがでしょうか。

○天野構成員
 今の御説明で納得しております。例えば説明文書等で、家族であっても自由意思は尊重されるのだという趣旨の文章を書いていただくだけでも十分なのかと。説明文書の中で、家族の中から選ばれることが多いと思われますと書くと、もう家族だと受けないといけないのかと誤読されるのを懸念したということです。

○山口座長
 その「自由は尊重されます」ということを付け加えることを条件にしていただくということでよろしいでしょうか。ほかにございませんか。

○山本構成員
 この技術については、私も2013年の『The New England Journal of Medicine』から面白そうだとはずっと思っていたので、ようやく本邦できちっと科学的にデータを取られるということなので、伊藤構成員がおっしゃるように、技術的には割と何ていうか素朴な技術ではありますが、やはり国内で行われることの意義は大きいかと思います。一種の生物製剤なので、伊藤委員が先ほどおっしゃっていたように、むしろ安全管理をどうしていったらいいかというデータがやはりここで積み上げられていくことは非常に重要かと。将来的に、院内で行われる技術でとどまるのか、あるいは、今の献血みたいな制度に乗っかると、本当に一種の生物製剤として動く可能性はあるかとは思うのですが。それにしてもやはり、保険収載されるときは、恐らく安全管理がきちんとできないと載らないということになると思いますので、この中できちんとそこを取っていただきたいと思います。

○山口座長
 ありがとうございました。ほかにございませんか。よろしいでしょうか。ちょっと最初に読んだとき、投与するものがばらばらでいいのかと思いましたが、今、御説明がありましたように、『The New England Journal of Medicine』に載った、非常に治療の難しい病気に対してすばらしい効果が出ていたという事実、それをいかに迅速に日本で行うかという観点からしたら、余り細かいことを突き詰めていくと、いつまでもできないということになりますので、ということが私もよく理解できました。特に御意見がなければ、適ということでよろしいでしょうか。ただ、患者説明文書の中で、ドナーに対して「自由な意思の表明ができます」ということを付け加えるという条件の下で適としたいと思います。

○掛江構成員
 ドナー用の説明文書にちゃんと任意であるということは書いてはあるのです。ですので、御指摘された「御家族だからといって強要されるわけではない」というところは、恐らくその箇所とはまた別に、家族から選定されることが多いことを記載している箇所に付け足していただくほうがよろしいのかと思ったのですが。

○山口座長
 天野委員、いかがでしょうか。

○天野構成員
 そのようにお願いできればと思います。

○山口座長
 どうも貴重な御意見ありがとうございました。

○上村構成員
 ちょっと気になったのですが、計画書の中で、細かい点なのですが、FMTの実施の手順というのですか、それがちょっと薄いかという感じです。いろいろな施設で多分されるわけでしょうから、手順書については、プロトコール本体でなくてもいいと思うのですが、もう少し分かりやすく、誰がやっても確実にできて、品質が保証される。それから、出てきたものに、最終的に製造したものに対して、管理であるとか、そういったことも含めて手順書は設けられたほうがいいのかと思います。

○山口座長
 何か御意見ございますか。

○伊藤(澄)構成員
 中身を見ると、糞便を50g以上、150gと書いてありますが、50g以上であれば大丈夫そうなのですが、それを濾してそのままピュッと入れるという、技術的にはそれ以上でもそれ以下でもなさそうなところがあって、どうしたものかとは思いました。ですから、クックブックに近い記載しかないというのは、もうそのとおりかと思うのですが、それ以上詳細にできるのかなというのは、よく分からないとは思っていました。

○上村構成員
 例えば、どういう濾紙を使うとか、そういう話です。それとか、どこか何かコンテナに入れるのでしょうが、そういった所の滅菌がきちんとされているかとか、多分ちゃんとされるのでしょうが、そういうものが保証できるのですかということです。手順に書いてないと、やはりその辺は。最終的にこれを技術として使うからには、多少その辺は考慮されたほうがいいのかと、そういう意味です。

○山口座長
 いかがでしょうか。それでよろしいですか。

○伊藤(澄)構成員
 はい、それは事務局から伝えていただいて、今現在やられていることに関して、手順として筋道立てていただいて、ほかの人が同じ形でできるようにお願いしたいと思います。

○山口座長
 それでは、やはり手順書を作るように。その内容というのは、例えば濾す濾紙をどうするかとか、容器の滅菌の問題だとか、その辺りもきちっと明確に、同じようなことが行われるようにということを伝えていただけますか。それでよろしいですか。ありがとうございました。ほかにございませんか。それでは、整理番号98につきましては、今、述べましたような条件の下に「適」といたします。
 続いて、総括報告書の評価結果について、事務局より御説明をお願いします。

○医政局研究開発振興課長補佐
 資料2-1の57ページを御覧ください。こちらの技術につきましては、山本構成員が御所属の医療機関ですので、本技術の審議に際し、一時御退席頂きます。ご協力ありがとうございます。先進医療Bの総括報告書に関する御評価を頂きますのは告示番号旧3、経胎盤的抗不整脈薬投与療法です。申請医療機関は国立循環器病研究センターです。審査いただいた主担当の先生は山口座長、副担当が飛田構成員となっています。
 試験の概要を御説明いたします。57ページ及びお手元の資料の68ページの概要図も併せて御覧ください。本試験の目的ですが、胎児頻脈性不整脈に対する経胎盤的胎児治療の有効性及び安全性の評価です。概要ですが、対象疾患は胎児頻脈性不整脈で、胎児心拍数180bpm以上が持続するもので、洞性頻脈を除いたものと定義しています。具体的には、上室性頻拍及び心房粗動です。「頻脈性不整脈胎児治療(臨床試験プロトコール)」の胎児治療に定められた薬剤を母胎に投与し、プロトコール治療の有効性及び安全性を評価する多施設共同単群介入試験となっております。
 主要評価項目は、胎児頻脈性不整脈の消失、副次評価項目は子宮内胎児死亡、早産率・出生週数、帝王切開率、胎児治療前後の心拍数・水腫の改善、新生児不整脈の出現率、新生児中枢神経系合併症、1か月時の児の生存率、1か月時の頻脈性不整脈の再発率及び母体、胎児、新生児に関する安全性の評価となっています。
 参考項目として、1か月時又は退院時の中枢神経系画像所見となっており、修正1歳6か月、修正3歳児の発育・発達評価は、観察研究として別途実施し、本部会へ別途、御報告予定となっています。
 なお、本技術の審査については、山口座長に総括報告書の御評価を頂いておりますので、一色座長代理に進行をお願いいたします。以上です。

○一色座長代理
 それでは、本技術の評価について、主担当の山口座長から説明をお願いいたします。

○山口構成員(座長)
 資料の60ページを御覧ください。まず有効性に関しては、従来の医療技術とほぼ同等の効果が得られたということで、Cといたしました。安全性に関しては、問題ありのCとしました。その理由ですが、胎児のほうの副作用は結構重篤なものがあって、慎重な対応が必要ということは報告者も書いておられますので、やはり問題はありとしました。技術的成熟度については、Bの当該分野を専門として数多くの経験を積んだ医師だったらできるとしました。
 あと、コメントとして、60ページの下のほうに書きましたが、まず、90%で胎児性頻脈が消失して、本邦における全国調査などとほぼ同じような有効性が得られたということは間違いないと思います。これは大いに有意義だったと考えます。しかし、その下の所で、いずれの薬剤も胎児性頻脈に対して国内、海外での承認は得られていないのですが、本試験の結果、ガイドラインへの掲載を通して、薬事承認申請の効率化に資する可能性はあったという具合に考えます。ただ何回も申しますが、副作用については決して軽いものではなくて、胎児については重篤なものが出ているので、これをどのように取り扱うかについては、この結果を受けて各学会などが考慮して行うべきものかと思います。以上です。

○一色座長代理
 続いて、飛田構成員から御評価のほうをお願いいたします。

○飛田構成員
 私のコメントは61ページから書かせていただいています。まず、有効性に関してです。本試験は、先ほどの資料2-3の68ページに記載されているのですが、実際の胎児の状態とか水腫のありなしで投与される薬剤が変わりますが、single-arm試験として有効性及び安全性の評価が行われています。ですので、有効性に関しては、直接比較するコントロール群がない試験デザインであるため、本試験結果だけで有効性が適切に証明されたとまでは結論づけられませんが、この試験を実施する前に行われていた全国的なレトロスペクティブな研究のアンケート調査の結果で報告されている有効性と、同程度の試験結果が得られていて、タイプ別や使用されている薬剤間でも、顕著に違いがあるとは認められていないため、有効性を示唆するエビデンスは、この試験の中からある程度の精度で得られているのではないかと考えています。
 次に安全性に関しては、先ほど山口座長が説明されたとおりなのですが、子宮内胎児死亡や重篤な有害事象がかなりの高頻度で起きていますし、治療中止例も認められています。それから、これはお母さんを通じて投与するということなので、母体、胎児、さらには出生後の新生児、それぞれに対する安全性のモニタリング等も必要であるということが、総括報告書の中で報告されていますので、問題ありとまではいかないのですが、十分な注意を要する技術ではないかとは考えています。
 技術的成熟度に関しては、先ほど申しましたとおり、胎児のみではなくて母体、出生後の新生児に対しても慎重なモニタリングが必要で、かつ迅速な対応が必要だということなので、そういうサポート体制が整備されている必要があるというように考えて、評価させていただきました。以上です。

○一色座長代理
 ありがとうございます。それでは、山口座長から何か追加のコメントがございましたらお願いいたします。

○山口構成員(座長)
 特にございませんが、結果が同等の有効性があったということで、どんどんやれという態度ではなくて、研究者のほうも副作用に関しては重要な認識を持っていて、慎重な態度で臨まれていますので。この研究は有意義だったということは間違いないことかと思います。以上です。

○一色座長代理
 ありがとうございます。この報告書に関して、どなたか御意見はございますでしょうか。私も少し報告書を見せていただいたのですが、使われているお薬が3種類、ジギタリス、ソタロール、フレカイニドで、これは不整脈に臨床的によく使われるお薬ですが、全く作用機序が違う3種類なのです。質問表の中にも報告が63ページあるいは64ページ等にありますが、この薬剤間で合併症に差がなかったかという点について、更にお返事を頂いております。合併症の割合が比較的多いと言っても、母集団と合併症の絶対数がそれほど多くないので、なかなか細かい薬剤間の差は出し得なかったというところかとは思いますが、特定の傾向は見られなかったという報告があります。
 通常の臨床では、妊婦ということを除けば、非常によく使われているお薬ではありますので、そういう中で、非常に予後が悪い胎児の頻脈性不整脈に対する1つの治療法としては、それなりの意義はあるのかなと感じたのが私の意見です。先ほど来、御意見を頂いておりますが、専門医がしっかりと観察できる体制の下で慎重に投与できる施設でやっていただくということが、一番重要なのかと私は感じました。
 そのほかにいかがでしょうか、何か御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、告示番号旧3については、御審議いただいた結果を取りまとめまして、先進医療会議に御報告いたします。以降の審議については、山口座長に進行をお戻しいたします。どうもありがとうございました。

○山口座長
 一色先生、どうもありがとうございました。続きまして、次の総括報告書の評価について、事務局から説明をお願いいたします。

○医政局研究開発振興課長補佐
 資料3-1の69ページを御覧ください。先進医療Bの総括報告書に関する御評価を頂きますのは、告示番号旧16のアルテプラーゼ静脈内投与による血栓溶解療法です。申請医療機関は国立循環器病研究センターです。御審査いただいた担当の構成員は、主担当が伊藤澄信構成員、副担当が山中構成員となっています。
 試験の概要を御説明いたします。69ページ以降及び79ページの概要図も併せて御覧ください。本試験の目的は、睡眠中発症及び発症時刻不明の急性期脳梗塞患者を対象とし、アルテプラーゼ(t-PA)0.6mg/kgを用いた静注血栓溶解療法の安全性と有効性を、標準内科治療群との多施設共同非盲検群間比較法を用いて評価することとなっております。主要評価項目は、試験開始90日後のmodified Rankin Scale(mRS) 0-1、副次評価項目は、1試験開始24時間後、7日後におけるNIH Stroke Scale値のベースライン値からの変化、2試験開始90日後のmRS 0-2、3試験開始90日後のmRSのシフト解析での評価となっています。また、安全性の評価項目として、1試験開始後24時間以内の症候性頭蓋内出血の発現率、2試験期間中の大出血の発現率、3試験期間中の全死亡となっています。この試験については、当初の目標症例数が300例ということでしたが、69ページの下段にも記載がありますが、欧州のWAKE-UP試験結果を受けて131例で登録が終了しています。そちらの実施計画の変更については、以前の第74回の先進医療技術審査部会にてお認めいただいているところです。事務局からは以上です。

○山口座長
 続いて、本技術の評価について、主担当の伊藤構成員から説明をお願いします。

○伊藤(澄)構成員
 御説明させていただきます。欧州のWAKE-UP試験というのが元の試験で、こちらは当初の計画数よりも少ない症例数のとき、もうお金が足りなくなって中止をしています。71ページのコメント欄に書いてあるとおりなのですが、そちらが254例と249例の試験で、一応差が出ています。ただ、このWAKE-UP試験というのは0.9mg/kgと投与量が違います。こちらの試験の結果が131例で終わっていますが、残念ながらt-PAの治療群が47.1%で、標準治療群が48.3%です。これは具体的には、modified Rankin Scaleが0というのが全く症候がない、mRSの1というのが症候はあっても明らかな障害がなくて、日常の勤めや活動が行えるレベルということで、ほとんど生活に支障がないし、仕事もできるような状況の人が半分ぐらいなのですが、t-PAを投与された人と投与されていない人が、この試験では全く差がなかったということで、残念ながらWAKE-UP試験の結果をそのまま再現しているわけではありません。
 一方で、安全性に関しては、逆に投与量が少ないので、両方にほとんど違いがなくて、t-PAの投与群のほうが、数だけから見ると有害事象が多そうに見えたので問い合わせると、t-PAを投与した人はより慎重に見たので数が増えているだけだという回答が返ってきました。もともとt-PAというのは、3時間までは大変効果が高いのですが、ただ、脳梗塞の発症からMRIを撮って3時間以内に投与するというのは絶望的に大変で、そういうところもあって、欧米の結果も踏まえて4.5時間に延びたというところだと思います。ただ、脳梗塞というのは朝起きたときに手が動かないという人がある程度たくさんいて、その人たちは発症時間が分からないから投与できないというより、MRIで虚血病変が認められるけれども、FLAIRでは明らかな高信号域が認められないから、発症早期の人に対して投与したらどうかというところが、この課題だったと思うのです。正直ベースで言うと、欧米に比べて、見る限り投与量が少ない分だけ安全性も変わらないのだけれども、有効性もないように見えると思いました。そういう点で、評価としては従来の医療技術と変わらないから、余り問題はなさそうです。
 ただ、一番気になったのですが、76ページを御覧ください。これがmodified Rankin Scaleで見たときの割合なのですが、コントロール群、t-PAを投与しない人のほうが、全く症状がない人の割合が高いのです。そうなると、本当にt-PAをやるほうがいいのかと言われると、このデータだけから考えると、t-PAをやらないほうが無症状で残る人が多いのではないかという懸念があるのかなと思っております。そういうことを縷々書いております。
 それから、脳卒中学会のほうが、血栓溶解療法に関しては、しかるべき安全性が担保できる人たちがいる所でやるべきと強く推奨していますので、技術的な成熟度についても、誰でもできるというAではなくてBという書き方をさせていただいております。薬事承認申請に資するかどうかの所は、今説明させていただいたとおりで、t-PAは高いですから、有効性が出ないのに、高い薬を本当に投与するところまで広げられるかどうかは、微妙かなと思って、そのような記載にさせていただいています。私からは以上です。

○山口座長
 ありがとうございました。続きまして、山中構成員から評価をお願いいたします。

○山中構成員
 この試験は、先ほど御説明があったように、発症時刻が特定できない患者にt-PAの有効性を示す上で、大変重要な試験だと思うのですが、予定登録数300例のうちの約半分に近いところで止まりました。止めたのはしょうがないと思うのですが、130~140例での結果を見ると、微妙な結果になっています。その考察については伊藤先生がおっしゃったように、投与量なのか、ほかの要因なのかは分からないのですが、途中で止まった試験ではありますが、約半分近くの症例数のそれまでの有効性の差を見ますと、恐らくそのまま300例まで続けていったとしても差は出なかったと思います。それまでの登録数での結果から、そのまま予定登録数まで登録続行して完了した場合に、有意になる可能性がどれぐらいあるかという確率も計算できるのですが、そういった確率を計算しても、恐らく有意になる見込みは少なかったと思います。
半分の症例数とか、あるいは300例ぐらいまで続行したとしても有意になっていないので、どうするかという話で、それに対してほかの国も含めて、4つか5つぐらいの臨床試験があるのですかね、それの統合解析をするというコメントになっています。統合解析をして、その結果に期待したいということなのですが、ほかの国の試験の症例数は多くて、そちらがポジティブになっていれば、その結果に引っ張られてしまうので、そこで統合してポジティブになったとしても、日本での今のこの試験の投与量でいいのかどうかというのは分からないと思うのです。なので、メタアナリシスをやるのはいいことだと思うのですが、日本での有効性というのが曖昧なままで残ってしまったのは、ちょっと残念かなと思いました。そういう意味で、有効性は従来の医療技術を用いるのと同程度であるということで、Cといたしました。
安全性に関しては、標準治療と比べてリスクが非常に上がるわけではないという意味で、Bのあまり問題なしとしています。ただ、70例のデータで数パーセントの発現率の評価なので、不確実性は高かろうと思います。あとは、プローブ試験といって、医師にもオープンラベルな試験になっているので、このt-PA治療をしたほうが有害事象が少し多い感じはするのですが、特段リスクが上がるわけではないという意味で、あまり問題なしのBといたしました。懸案の頭蓋骨内出血率は1%程度であったというのはいい情報だと思います。
技術的な成熟度に関しては、t-PA投与なので、技術的な問題はある程度クリアできるだろうと考えまして、当該分野を専門として経験を積んだ医師又は医師の指導の下であれば実施できるのAといたしました。以上です。

○山口座長
 ありがとうございました。伊藤構成員から何か追加のコメントがございましたらお願いします。

○伊藤(澄)構成員
 特にございません。

○山口座長
 それでは、ただいまの御説明について、何か御質問はございませんか。

○一色座長代理
 t-PAを使った血栓溶解療法は、いわゆる日本人の出血性合併症というのが、どうしても海外用量を使うと多くなるということで、あらゆる抗血小板薬を含めて、あらゆる抗血栓薬の用量調節をする傾向にあって、そういう中で、ある程度、出血性梗塞のリスクを考慮して減量したのだろうと、用量調節をした試験にされたのだろうと思います。そういうバックグラウンドの中での結果で、こういうことになったと。冷静にそういうことかなと思っております。
 このt-PAを使う血栓溶解療法自体が、例えば心臓で言うと、心筋梗塞に対する血栓溶解療法は、我が国ではもうほとんど行われなくなってしまって、PCIに移行しましたし、脳外科領域でも最近は、太い所に限られますが、脳梗塞に対しては血栓を回収するほうの治療にシフトしているということは、やはりこの血栓溶解療法に対する限界は専門医の中でも感じておられるのだろうと思っておりまして、この結果でそういうことが証明されたというか、不十分かもしれませんけれども、そういう結果ではないかと私は考えております。

○山口座長
 貴重なコメントをどうもありがとうございました。ほかにございませんか。一色先生、昔、日本人の血管というのは弱かったのではないかというのが、だんだん変わってきて強くなってきているという可能性はないのでしょうか。食生活とかいろいろなものが変わってきていると思うのですが。

○一色座長代理
 今、生活習慣病から、動脈硬化の頻度はむしろ高まってきているという理解だと思うのです。
それと、これはそんなにエビデンスに基づいて言っているわけではありませんが、やはり全体的に高齢化していますので、以前のデータと比べると言うと、平均年齢が大分変わってきているということもあって、なかなかその辺の評価は難しいのではないかと思います。すみません。

○山口座長
 ほかに何かございませんか。この疾患は、評価のやり方に難しい点が多々あるのだなということはよく分かりました。結果は残念でしたが、全く無意味だったわけではなくて、次のステップを考える上では大きな材料にはなったかと思います。何か御意見はございませんか。では、ないようですので、告示番号旧16については、ただいま御審議いただいた結果を取りまとめて、先進医療会議に御報告いたします。では、山本構成員にお戻りいただいてください。

 それでは続きまして、協力医療機関の追加について、事務局から説明をお願いします。

○医政局研究開発振興課長補佐
 資料4-1、81ページを御覧ください。告示番号54の技術について、協力医療機関の1件の追加申請がございました。資料4-2、83ページを御覧ください。事務局において、先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件、様式第9号を満たしていることを確認しております。協力医療機関の追加として御了承いただきたく存じます。特に御意見がなければ、手続を進めさせていただきます。以上です。

○山口座長
 続いて、先進医療Bの取下げについて、説明をお願いします。

○医政局研究開発振興課長補佐
 資料5の85ページを御覧ください。今回、協力医療機関の取下申請が告示番号7の1件、ございました。取下理由ですが、実施責任医師の退職により、先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件を満たせなくなったためとなっています。以上につきまして、御意見がなければ手続を進めさせていただきたいと思います。以上です。

○山口座長
 では次に、令和元年度先進医療技術の実績報告等について、事務局から御説明をお願いします。

○医政局研究開発振興課長補佐
 資料6、87ページを御覧ください。先日、令和元年12月5日開催の第81回先進医療会議において、令和元年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告がなされましたので、部会でも御報告いたします。
 87ページの資料にあるとおり、先進医療Bの技術数は59種類、実施医療機関が244施設、費用は保険外併用療養費が約6.9億円、先進医療費用の総額が約7億円となっております。また、88ページにお進みいただいて、過去1年間の先進医療A及びBの技術数の増減を示した表があります。89ページの表については、過去5年間の実施医療機関数や金額等の実績をお示ししています。また、90ページからは、各先進医療B技術ごとの費用等をお示ししております。
 続いて94ページからは、各先進医療Bの登録症例数及び年間実施件数をお示ししています。また、98ページからは、1年間の実施件数が0件であった先進医療B技術のリストと、また0件であった理由及び今後の対応方針を申請医療機関に報告していただいた結果をまとめた資料となっています。これら0件であった試験については適宜事務局で進捗管理を行い、申請者とやり取りさせていただいているところです。以上です。

○山口座長
 本件について、何か御意見、御質問はございませんか。0件の所も、大体妥当な理由がある所が多いということでよろしいでしょうか。

○医政局研究開発振興課長補佐
 はい。

○山口座長
 では、次に移ります。先進医療Bの総括報告書提出状況一覧について、事務局から御説明をお願いします。

○医政局研究開発振興課長補佐
 資料7の101ページを御覧ください。こちらの表については、平成24年度以降に告示されており、第91回先進医療技術審査部会までに取下げが行われた先進医療B技術について、令和元年12月4日現在の総括報告書の提出状況の一覧表です。こちらの表の一番左側の数字が、平成24年の告示番号です。102ページにお進みいただき、43番以降の技術については、総括報告書の提出が義務付けられた試験となっています。総括報告書の提出状況については、表の右から2番目に項目がありまして、提出済みのものについては「済」と記載していますので、御参照ください。お示ししたとおり、多くの試験で告示取下後に総括報告書を御提出いただけていることを確認しております。また、未提出の試験については、事務局より提出に関して適宜リマインドを行わせていただいております。また、105ページにお進みいただきますと、告示削除に当たって、副次評価項目などの長期観察が必要な事項について観察研究を実施し、その結果を部会に御報告いただくこととなっている試験のリストをお示ししております。これらの報告書につきましては、今後も毎年更新し、御報告させていただく予定としております。以上です。

○山口座長
 本件につきまして、御意見、御質問はございませんか。しっかり見ていただいているということかと思いますが、特に御意見がなければ。よろしいでしょうか。それでは、本日の議題は以上です。構成員の皆様、何か御意見、御質問はございませんでしょうか。それでは、ないようですので次回の日程を事務局からお願いいたします。

○医政局研究開発振興課長補佐
 次回は令和2年1月16日(木)の開催とさせていただきます。時間は16時から18時までの予定で、場所につきましては別途御連絡させていただきます。本日の議事録については、作成次第、先生方に御確認をお願いし、その後公開させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。以上です。

○山口座長
 本会で令和元年は最終になります。今年は大変ありがとうございました。特に伊藤先生には大活躍していただいて、ご負担をおかけしてしまい申し訳なかったと思います。それでは、皆様、よいお年をお迎えください。これで第92回先進医療技術審査部会を終わります。ありがとうございました。

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