ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 先進医療技術審査部会> 第84回先進医療技術審査部会(議事録)

 
 

2019年4月17日 第84回先進医療技術審査部会

 
(了)


(1)日時:平成31年4月17日(水)16:00~18:00

(2)場所:厚生労働省 省議室

(3)出席者
山口座長、一色座長代理、天野構成員、石川構成員、伊藤(澄)構成員、伊藤(陽)構成員、上村構成員、掛江構成員、後藤構成員、真田構成員、柴田構成員、田島構成員、藤原構成員、松山構成員、山中構成員、山本構成員

(事務局)
医政局研究開発振興課 課長
医政局研究開発振興課 治験推進室長
医政局研究開発振興課 先進医療専門官
医政局研究開発振興課 先進医療係長
保険局医療課 企画官
保険局医療課 医療技術評価室長
保険局医療課 課長補佐
保険局医療課 先進・再生医療迅速評価専門官
保険局医療課 先進・再生医療迅速評価専門官
医薬・生活衛生局医薬品審査管理課 課長補佐

議題

1.継続審議の評価を受けた技術の再評価結果について
2.申請医療機関からの各種報告について
2.試験実施計画の変更について
3.協力医療機関の追加について
4.先進医療の取下げについて
5.その他

議事録

○山口座長
 それでは、定刻となりましたので、第84回先進医療技術審査部会を始めさせていただきます。皆様には御多忙の折、お集まりいただき誠にありがとうございました。本日の構成員の出欠状況ですが、佐藤構成員、飛田構成員より御欠席の御連絡を頂いております。また、真田構成員は、やや遅刻するということです。現在、後藤構成員もまだ見えていないようですが、出席の予定です。18人の構成員のうち、現在既に14名出席ということで、本会議が成立していることを申し添えます。

 それでは、本日の配布資料と、審査案件の確認を事務局からお願いします。


○医政局研究開発振興課長補佐
 よろしくお願いいたします。傍聴者の方の撮影は、ここまでとさせていただきます。御協力のほど、よろしくお願いします。 

 配布資料について確認させていただきます。議事次第、座席表、開催要綱及び運営細則、構成員並びに技術専門委員名簿と続きます。次に、議題1.先進医療合同会議にて継続審議の評価を受けた技術の再評価については、資料1-1から資料1-5になります。また、こちらに関連しまして、本年117日の合同会議の際に配布しました類似試験をまとめた資料を、別資料としてまとめております。申請医療機関からの報告について(国立がん研究センター中央病院)の資料は、資料2、試験実施計画の変更については、資料3、協力医療機関の追加取下げについては、資料4-1と資料4-2、先進医療Bの取下げについては、資料5となっております。会議資料の最終ページは186ページとなります。なお、先生方のお手元には、先進医療実施届出書様式10号別冊資料、資料2関係別冊資料という資料もございます。これらは、構成員及び事務局限りとさせていただいております。

 「机上配布資料(構成員・事務局及び傍聴用)」以外の資料につきましては、会議終了後、厚生労働省ホームページにて閲覧可能となることを申し添えます。本日の資料は以上です。乱丁、落丁等ございましたら事務局までお知らせください。

 続いて、利益相反の御確認です。申請医療機関との関係や対象となる医薬品・医療機器及び再生医療等製品の企業等について、資料1-114ページに記載しております、申請医療機関、医薬品・医療機器・再生医療等製品情報を御覧ください。申請医療機関との関係、対象となる企業又は競合企業につきましては、事務局から事前確認させていただいております。

 今回、整理番号91の技術(東京大学医学部附属病院)につきましては、天野構成員、藤原構成員、山中構成員、山口座長より御報告がございましたが、いずれも50万円以下でしたので、当該技術の議事の取りまとめ及び事前評価に加わることができます。また、一色座長代理より50万円以上500万円以下の御報告がありましたので、議事の取りまとめのみ加わることができません。事前の届出以外にもし何らかの利益相反がありましたら、この場で御報告をお願いします。該当なしということで承知しました。

 また、今回もタブレットを使用します。届出書類等については、タブレットより閲覧をお願いします。なお、会議資料とタブレットの内容が異なっておりますので、発言者は会議資料の何ページ、又はタブレット資料何番の何ページとあらかじめ御発言を頂きますと、議事の進行上助かりますので、よろしくお願いします。以上です。


○山口座長
 ありがとうございました。はじめに、今回、構成員の追加及び事務局の交代がありました。事務局から説明をお願いします。


○医政局研究開発振興課長補佐
 今回より、伊藤陽一先生に構成員に加わっていただいております。


○伊藤()構成員
 統計数理研究所医療健康データ科学研究センターの伊藤です。よろしくお願いします。


○医政局研究開発振興課長補佐
 あと、医政局研究開発振興課課長補佐の枝園和彦です。どうぞよろしくお願い申し上げます。


○山口座長
 では議事に入りたいと思います。継続審議の評価を受けた技術の再評価ということで、事務局から説明をお願いします。


○医政局研究開発振興課長補佐
 御説明いたします。資料1-114ページを御覧ください。再度御評価いただく技術は、整理番号91番、パクリタキセル腹腔内投与併用・周術期化学療法です。申請医療機関としましては、東京大学医学部附属病院です。審査の担当構成員としては、主担当が藤原構成員、副担当は田島構成員、柴田構成員、以上となっております。

 資料1-5138ページを御覧ください。審議に先立ち、先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件及びお手元の別冊の様式第10号について、事務局より御説明します。まず、様式第9号です。実施医療責任者の要件は、診療科の要件が外科系または内科系の診療科()。資格は、外科専門医、内科認定医又はがん薬物療法専門医が必要です。当該診療科の経験年数は10年以上が必要です。当該技術の経験年数の要件はありません。また、当該技術の経験症例数の要件もありません。その他の要件としまして、胃がんに対する化学療法及び手術の経験ということです。 

 続いて、医療機関の要件です。診療科は外科系又は内科系の診療科()です。実施診療科の医師数は、経験年数10年以上の医師が2名以上必要です。他診療科の医師数の要件はありません。その他、医療従事者の配置は、薬剤師が必要となっております。病床数は100床以上、看護配置は101看護以上、当直体制は、外科系又は内科系の診療科()の医師1名以上。救急手術の実施体制及び院内検査の24時間実施体制が必要です。他の医療機関との連携体制、医療機器の保守管理体制は不要です。医療安全管理委員会の設置は必要です。医療機関としての当該技術の実施症例数の要件はありません。その他の要件として、頻回な実施報告なども不要で、ほかに要件はありません。以上です。
 

○山口座長
 これらの要件につきまして、何か御異議ありますでしょうか。今までも何回かやっているので問題ないと思いますが。では、特に問題ないようですので、様式第9号、様式第10号については、お認めすることといたします。主担当の藤原構成員より、概要の説明と実施体制の評価について御説明をお願いします。

 

○藤原構成員
 お手元の15ページ、資料1-2に今回の評価表の部分がありますので、それを御覧ください。技術については、既に何度も同じような技術が先進医療技術審査部会にもかかっております。実際に、今回申請されている技術の概要は、118ページ、あるいは117ページの概要図、あるいは過去のロードマップを御覧いただければいいのですが、各委員からいろいろな御指摘があります。今回は、再評価という感じで挙がってきた申請ですが、総評に行く前に、まず実施体制の評価の所を述べたいと思います。

 パクリタキセルの腹腔内投与は、平成21年の最初の先進医療への申請以来、複数のものが申請されてきました。過去に申請されたものは、委員のお手元にカラーでA4の紙で配布されていますが、一覧表です。過去7つです。平成21年から平成31年までのこの10年間に、7つの先進医療が様々な形で繰り返されてきたものです。にもかかわらず、平成31年に至っても、薬事承認、あるいは保険償還が実現できていないというところは、私はこれは大きな問題だと思っております。通常の治験であれば、観察期間も含めて5年も掛ければしっかり結果が出て、承認申請から審査を経て保険償還まで至ると思うのですが、これが10年間実現できなかったというのは、大きな問題と考えております。これはひとえに、この実施グループがロードマップを適切に作っているのかということに対する疑念にもつながることでして、実施体制の評価としては、実施責任医師等の体制は、私はこれは不適であると。10年間、承認・保険償還に至らなかったのはグループの問題であると考えて不適としました。

 医療機関自体は何も問題ありませんし、臨床試験をやることに関しては、このグループはしっかりとしていると思います。例えば、既に評価を終了しております、腹腔内パクリタキセル投与を使った先進医療Bでも、『Journal of Clinical Oncology』という、世界で一番、二番を争うようながん薬物療法の専門雑誌に成果は学術論文として公表されていますから、臨床試験をやる体制としては問題ないと思いますが、先進医療というのは、あくまでも薬事承認・保険償還という出口を目指してのスキームなので、それを実現できていないというところに問題があると思っております。

 それから、医療技術の有用性についても適としておりますが、腹腔内投与という、ここの先進医療に掛かっているだけでも10個の試験が過去行われていまして、慣れたグループであればそれほど難しい手技ではありませんし、婦人科領域を始め、広く診療でも行われている行為なので問題はないと思いますが、本当にこれが静脈投与に比べて有用性があるか、優れているかどうかというのは、比較試験の結果を見てみないと分かりませんので、適であるものの、最終判断は試験が終わってみないと分からないということにしております。

 引き続きまして、倫理的観点からの評価は田島先生、それから試験実施計画書の評価については柴田先生から御紹介があると思いますので、よろしくお願いします。
 

○山口座長
 ありがとうございました。それでは続いて、副担当の田島構成員より、倫理的観点からの御評価について御説明をお願いします。


○田島構成員
 倫理的観点からの評価につきましては、前回の評価時と同様、同意にかかる手続、同意文書、補償内容、双方につきまして適と評価し、また、患者相談等の対応も整備されております。前回評価後の変更点として、研究費に予定していましたAMEDの資金が得られず、現在、確保されている資金がない状況になっております。今後、学内とAMEDの資金の公募が掛かり次第応募して獲得したいということですので、説明文書等の記載もそれに合わせて予定という形に変更されております。ただ、この点につきましては、本研究において研究費が獲得できておらず、公募が掛かり次第応募して獲得する予定で、その獲得の確度が高いと判断することも困難ですので、これを現段階で承認することの可否については部会での審議が必要ではないかと考えております。以上です。


○山口座長
 ありがとうございました。続いて、副担当の柴田構成員より、試験実施計画書等の御評価について御説明をお願いします。


○柴田構成員
 お手元の資料の16ページを御覧ください。試験実施計画書そのものにつきましては、6番から16番までに記したように適と判断しております。これらの有効性・安全性の評価方法に関しては、試験デザインの妥当性についてPMDAとの間でコンセンサスが得られていないことが懸念材料ではあります。そのため、これまでの類似の申請と同様に、薬事承認までの道程が厳しいと予想されるという点については前回の評価時と変わりません。ただし、コンセンサスが得られていないことについて、これまで資料を拝見したところ、コンセンサスが得られていないとは言っても、申請医療機関の先生方の考え方が、科学的あるいは倫理的に不適切だと断ずるほど著しく乖離しているというわけではないので、プロトコル自体は適と判断してもよかろうと考えました。ただし、この計画の妥当性であるとか、先進医療として実施することの妥当性に関して言いますと、これまで、先ほど藤原構成員からも御発言がありましたように、一連の研究の流れですとか開発戦略等を加味して検討されるべき側面もあると考えますので、先進医療として実施されている関連する医療技術の動向も踏まえて評価する必要があると考えております。私からは以上となります。


○山口座長
 ありがとうございました。それでは、主担当の藤原構成員より、事前のまとめと総合評価について御説明をお願いします。


○藤原構成員
 では資料1-2、総合評価の17ページを御覧ください。総合評価は不適としております。コメント欄をまず読み上げまして、それを聞いていただいて大雑把な概念を掴んでいただきたいのです。読み上げます。腹腔内パクリタキセルあるいはドセタキセルの投与は、平成21年以降、延々と高度医療、先進医療、患者申出療養で検討されてきたものです。これらの計画で示された出口というのは、いわゆる「公知申請・公知承認」というものでありました。これは、お手元の配布資料にもありますし、今回の添付資料だと62ページの「薬事承認申請までのロードマップ」という所を御覧いただければいいのです。横紙の右下の所に、「検証的Phase3」と書いてあります。これが今回の申請の試験です。この第3相試験が終わった後に、1つは公知申請を検討するというスキーム、もう1つは、治験をもう一度、無作為ランダム化比較試験で第3相試験を組んで、更に、その後に薬事承認申請に行くという、これが平成21年以来、ここの申請者の方々の大きな方向性、これはぶれておりません。

 ただ、この次に書いてありますが、201874日開催の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、パクリタキセルの腹腔内投与は医学薬学上の公知の申請に当たらないという判断がなされております。つまり、62ページのスキームの公知申請検討という所は、もう道を閉ざされたということです。この未承認薬・適応外薬検討会議においては、過去のいろいろな申請資料、先進医療の結果等も踏まえてこの公知申請は駄目ですと言われていますので、今回のこの検証的試験、62ページの右下にありますようなPhase3を終えた後には、申請者らがやる道は、もう治験をどこかの製薬企業にやってもらう、あるいは、御自身の医師主導治験をやって、製薬企業さんにこの薬事承認申請をやってもらうというスキームしか残っていないというところです。

 これは、前回のこの先進医療技術審査部会でも申請者と何度かやり取りをしましたし、今回も、これを受けて、どのように薬事承認に持って行くのですかということをお聞きしたのですが、明確な回答は得られておりません。それから、申請してくれるという企業が出てきているわけでもありません。2019110日開催の先進医療合同会議以降の申請者からの回答では、公知申請ができない状況で、パクリタキセルの腹腔内投与の薬事承認・保険償還への出口戦略は全く不明で、先進医療制度下で、これ以上漫然と臨床試験を繰り返すことは許容できないと私は考えました。

 したがって、医師主導治験を組む、企業さんが見つからなければ医師主導治験を自己資金でちゃんと完結していただいて、それを企業さんと交渉して薬事承認申請に使う、つなげるというような、抜本的な方向転換が必要だと思います。臨床試験としてデザイン等に関しては、対面助言で幾つかのクレームは付いていますが、それで駄目出しというか、完全に駄目ですというのは難しいですし、臨床試験としてはきちっとやれば、ある程度の臨床的な成果、意義の検証はできると思います。先進医療の中では、薬事承認・保険償還というのが最終目標で、そこに至らないものをわざわざ先進医療の制度の中でやるのは不適切ではないかと考えて、総合評価は不適としました。以上です。


○山口座長
 それでは、御討議をお願いします。


○天野構成員
 御説明ありがとうございました。今「不適」という総合評価が示されたわけですが、私からは患者説明文書について質問させていただきます。タブレット資料の110/515の患者説明文書の2ページ目の下の部分に、「腹膜播種がある胃がん患者を対象としてS1+パクリタキセル経静脈腹腔内併用投与療法とS1シスプラチン併用療法を比較した臨床研究では、生存期間中央値がそれぞれ17.7か月、15.2か月でしたが、統計学的にはその差は証明されませんでした。しかし、各治療を受けた患者の腹膜播種の進み具合に偏りがあったため、この偏りを考慮に入れて検討したところ、全身腹腔内併用化学療法がより有効であることが示唆されました。この結果からは、腹膜播種の予防効果にも期待ができますので」と記された上で、「今回の臨床研究を計画した」との記載があります。この記載について、3点質問申し上げます。

 まず1点目ですが、腹膜播種の進み具合に偏りがあったためということで、今回のこの試験というのは、その偏りがあったことを考慮して、その有効性や安全性等を証明するための試験デザインになっているのでしょうか。

 2点目の質問は、「この結果からは腹膜播種の予防効果にも期待ができます」との記載がありますが、予防効果が期待できるような結果が出ているのでしょうか。

 3点目は先ほどの総合評価にも関連しますが、今まで先進医療において同様の試験が7つ、腹腔内投与に関してはおおよそ10個の試験が行われてきた中で、明確に有効性その他を示すデータがない中で、これ以上漫然と行うことが許容されないというのはそのとおりだと思います。そして、もし行うのであればという仮定で申し上げますが、この説明文書においては、そういった平成21年から延々と行われてきた先進医療の経緯が全く記載されておらず、これを読んだ患者はこの試験がより期待が持てるものであると誤って認識する可能性があるのではないかと考えますので、この説明文書をもし用いることがあるのであれば、従来の先進医療における経緯並びにそれぞれの評価等を併せて説明文書に記載をしない限りは、患者にとってアンフェアな結果をもたらす可能性があると考えますので、その修正をお願いしたいと考えています。私からは以上です。


○山口座長
 どうぞ、柴田先生。


○柴田構成員
 1点目の御指摘については、お手元の資料の136ページを御覧ください。こちらに試験デザインが記載されていまして、今回の試験は前回御指摘のあった臨床試験とは少々対象が違っていますので、完全に同じデザインではありませんし、またその問題に対処する方法が完全に同一のやり方になるというわけではありません。

 こちらのシェーマを見ていただきますと、審査腹腔鏡をしたときに、腹膜播種がプラスになる方は対象外となり、マイナスの方を対象とすることになります。さらに、その中で腹腔細胞診陰性の方と陽性の方に分けて、それぞれの中でランダム化がなされます。さらに、そのランダム化に当たっては施設とリンパ節転移の状況、予後に影響を与える要因を調整して、ランダム化をするというデザインになっておりますので、デザイン上は、考えられる偏りの要因になるものについては、重要な要因になるものについては考慮されているということになるかと思います。

 ただし、通常の、例えば最近行われる分子標的薬のプラセボ対照試験のように、二重盲検で行えるわけではありませんので、そこのところで最終的に患者の偏りなどが出るかもしれませんが、事前に検討できる要因については、検討された上で計画されていると評価してもいいのではないかと考えています。


○山口座長
 ちょっと対象が違うので、ばらつきについてはこちらのほうが恐らくないだろうということかと思います。今までの幾つか行われた結果を、全く希望がないものであれば、もう最初からいいのですが、ある程度の可能性はあるという具合に見てよろしいのでしょうか。この辺りについて藤原先生。


○藤原構成員
 前回の第3相試験が一番大事で、静注のパクリタキセルに比べて、この腹腔内パクリタキセルが優れているかどうかを検証しようというのが、前回の先進医療のデザインなのです。結果は、プライマリーエンドポイントという一番主要な評価項目では、ちゃんとした有意差が付かなかったので、試験として一番大事なところはメットできていない。ただ、サブグループ解析とか、解析方法を少し変更すると有意差は出ますし、手元の資料の38ページの医療上の必要性の高い未承認薬検討会議の評価グループの検討結果の所に、特記事項としてその辺が書いてあるのです。特記事項の2行目の辺りから、「主要評価項目である全生存期間のFAS対象の主解析では、中央値で2.5か月の差、つまり腹腔内投与のほうが17.7か月で、通常の点滴静注のほうが15.2か月で、2.5か月腹腔内投与のほうが上回っているのです。上回っているけれども、生物統計学的に言うと、そこは有意差には至っていないという、非常に惜しいデータなのです。

 ですから、このときにきちんとした差が出るところまでいっておけば、もう何も問題なく次のステップに進めたのですが、きちんとした有意差が出ていなかったので優越性が示せなかったことから、今は足踏み状態になっていると。

 これを承認してしまうと、過去にもこういう事例は、いろいろな抗がん剤あるいはほかの品目でもたくさんあって、デザインは最初はいいだろうと思って組んだにもかかわらず、結果を開けてみたら生物統計学的に有意差が出ず、もう一本臨床試験を組んできたという人たちはたくさんいるわけです。そういう過去の事例なども踏まえて、確かに有用性は示唆されるけれども、それを薬事として承認まで持っていくというのは難しいだろうというのが、この未承認薬検討会議の判断だと思うのです。

 ですから、今、山口座長がおっしゃったように、恐らくは腹腔内パクリタキセルは点滴静脈内投与よりはいいのだろうなというのは誰もが感じているかもしれない。ただ、それを薬事という土俵の中で判断するというのは苦しいところがあって、やるならきちんとしたもう一本の試験をやって結果を出してくれれば、恐らくきちんとした結果が出るだろうと。それが一番いいチャンスだったのは、患者申出の際の試験だと思うのです。そこで、きちんとデザインを組んで、優越性が出るようなサブ・ポピュレーションがある程度彼らには分かっているはずなので、そこを対象にした試験を組んでおけば、患者のニーズは非常に大きいわけだから、症例登録には困ることもなく、試験がシャッと終わって、結果は今頃は出ているはずなのです。それにもかかわらず、患者申出医療は何となくボヤッとやって、その後に、今回、変えたデザインで更にこれを組んできているというところが私はおかしいと思っていまして、やるなら腹を括って、医師主導試験なり何なりで、きちんと薬事承認申請につながることをやってほしいなと。

 だから、臨床試験デザインに関しては余り文句はないのです。漫然と、いいのではないかなという雰囲気だけで繰り返しているというのは先進医療という枠組みの中では不適切だと思いますし、AMEDの研究事業などを見ても、それが落ちているということは、何かのデザインに不備があるから問題点をAMEDのほうが考えた。あれも評価委員というのは10何人の人たちがいて、その人たちの平均点であって、依怙贔屓でやっているわけではないので、その中で落ちているというのは何らかの問題をこのデザインは抱えている可能性はあると推測されます。

 ですから、もう一遍仕切り直して、グループとしてはしっかりしたグループなのですから、仕切り直しをして、先進医療以外の枠組みでやっていただくのがいいのではないかと思っております。


○天野構成員
 もちろん臨床試験として有効性及び安全性を確かめるものですが、「先進医療」という名称からして、患者は一定の期待を持って入ってくるものだと思いますので、そこは患者に過剰な期待を抱かせないような慎重な記載も是非お願いしたいと考えます。以上です。

 

○山口座長
 もともと腹膜播種は極めて予後の悪い疾患で、なかなか今までいい方法がなくて10%以下の生存率とか、そういう予後なのです。比較試験ではありませんが、最初の頃に奏功率が結構高かったので、皆さんがすごく期待感を持ったのです。そこで比較試験をやったのですが、結局対照群に入った方が途中でやめて、試験群に入りたいということで、IPをやってしまったというのがあって、それがしかも長生きして、その結果試験群と対照群の間に差がなくなってしまったという経緯があります。これは臨床試験に対する患者の意識とか担当医のスタンスの問題もあります。外科医というのは患者を目の前にすると、申出があれば仕方がないからそちらにしようかという意識になってしまったのかもしれません。しかし、やはり臨床試験としてきちんとやらなければいけないところをやれないために、そういう結果になってしまったということです。したがって今のところ、まだ科学的に有効性は証明できていないという結論になると思うのです。

 ただ、可能性がないと言っているわけではなくて、非常に期待されるということは、恐らく構成員の皆さんも感じてはいるのですが、今の時点でこのまま進めてよいということにはならないというご意見かと思います。

 もう1つ、臨床試験のスタイルとしてはプロトコルなどはしっかりしているということなのですが、問題は財源がはっきりしなくて、これは途中で終わってしまうのではないかという懸念があります。それから今までの失敗を反省して、本当に先進医療から保険収載につながる道筋をもう少し明確にしてもらいたいというご意見があります。それをやらないと、このグループはせっかく胃がん学会もサポートしているようですし、力のあるグループなのですが、このままいくとまた前者の轍を踏まないとも限らないという藤原先生の御判断かと思います。この辺りについて、御意見はございますでしょうか。

 先進医療を通っていると、確かにいろいろな資金を獲得しやすい、だから通して欲しいという意見もありますし、採用するほうとしては、先進医療を通っていないと駄目だという意見もありますし、その辺りについてはどちらが先なのかという話もあります。ほかの試験もそうですが、財源が100%カッチリしていなければ駄目かというと、必ずしもそうではなかったものもあったと思うので、その辺りについて、この試験についてはどうかということの御意見を頂ければと思います。出口と財源という問題ですが、いかがでしょうか。


○山本構成員
 財源については、例えばAMEDで先進医療に通っているものに付けるという研究費があるぐらいなので、事後に取るということもあり得るとは思いますので。それと、個別の判断ですけれども、例えば非常にレアディジーズに対する医療機器で比較的安価なものであったり、自主財源でも何とかできるようなものであったりということも、個別にはあると思いますので、一律に財源が確固たるファンドがないからということで駄目ということは言わなくていいと思いますが、やはり出口は求めたいと思います。

 というのは、これだけ人手を掛けて、しかもかなり厳しい。今は臨床研究法ができましたけれども、臨床研究法がないときから、かなりハードルを上げて厳しくモニタリングをしてやっている、そういう制度の中でやってもらっているのは、うまく結果が出たときに薬事のほうの申請資料には使えないものの、やはり何らかの資料として、参考資料にでも使って、承認なり公知申請なりをできるためにデータを集めていただくという枠組みを使って、だから臨床研究をするのに保険と併用でいいとしていたわけですので、そこに出口がはっきりしないと言うか、現状では全く出るところがない形で、ただこの治療を続けたいという理由だけでこの制度を使っていただくというのは、ちょっと私はそれは違うのではないかなと思います。


○山口座長
 ほかに御意見はございませんか。


○石川構成員
 先ほど山口座長がおっしゃった最初の研究のとき、非常にびっくりしたわけです。成績がいいのではないかと。ところが、途中で患者が移動してしまって残念な結果になったというのは、非常に痛恨だと思うのです。

 ただ、ずっと見ていますと、皆さんが漠然とした印象で「いいのではないか」ということをおっしゃっているのと、思いはやはり同じだと思うのです。そうすると、これをこのままいきますと、届出のほうに患者はかなり動くのではないかと思うのですが、それだったら私はこれをもう少し事務局などにいい知恵を出していただいて、今回これは通らないのかもしれないのだけれども、次の手で、公知申請とか医師主導というのはなかなか難しいと思うのです。私たちも別の組織を持っていて、医師主導でやるということも考えたりしているのですが、なかなか難しいと思います。そうすると、これは何かほかに手がないかどうかということを事務局のほうで提案があると思うのです。それは考えておいてくれと言ってあるのですが、何かございますでしょうか。


○藤原構成員
 ここは薬事などの話ではないですが、一番いいのは、以前の先進医療Bでは『Journal of Clinical Oncology』という成果が出ていますので、それを基に胃がん学会のガイドラインでアカデミアのコンセンサスとしてこの治療法は推奨できるというような記載が入ると、今は社会保険診療報酬支払基金で、診療ガイドラインにこういうものの使い方ができるという記載が入ると、それを基金として、それは健康保険法とか、保険の査定のほうの話ですが、このパクリタキセル自体は承認されている薬で、投与経路が異なるだけなので、再審査も過ぎていますから、薬事承認を追及するよりも、保険の観点から査定をしないで、ちゃんと診療の中で使っていくということはできるスキームがあるのです。

 ですから、余り薬事と言うのではなくて、きちんとしたデータをこれまで積み重ねてきて、有効性が示唆されるというのであれば、そちらの仕組みを申請者の方々は模索していただければ、やっている人たちはきちんとした人がやっていますので、これを診療ガイドライン上にちゃんと記載して、こういう使い方をきちんとしてくださいということをすれば、保険のほうで査定をせずに使えるようなスキームの中で皆が使えるというようになると思います。それが一番誰にも負担もかかりませんし、それで例えば保険収載が可能になれば、その中で例えば特定臨床研究でなくてもいいのですが、臨床試験としてもう一度こういうことをやっていただいて、それでポジティブな結果が出たら申請企業を探して、申請企業に今度は保険ではなくて本当の薬事承認を取ってもらう。ただし、やはり探すのは大変なのです。もう再審査期間が過ぎているようなものというのは、売れば売るほど企業が儲かるようなものではないですから、それはなかなか大変かと思いますが、保険収載ができるようになってから、こういうものをもう一度臨床試験で更に検証するという手はあるのではないかと思います。


○山本構成員
 やはり先進医療B自体は、きちんとしたプロトコルを求めていますし、症例数も決めていますし、結局救済にはならない枠組みなのです。私も関わった胎児治療でやったものでも、一定の人数を決めていますので、数年間はできますが、その後、その人数が終わってしまった後にどうするかというところ、そこが出口なのですが、その出口を考えておかなければ、一定の数の患者には使えるけれども、その後はもう使えなくなってしまうと。だから、先に出口を考えておかないといけないのであって、出口がないままに、今取りあえず目の前の患者に使いたいから先進医療Bでいくというのは、結局後延ばしにしているだけということになるので、それであったら、患者申出療養にいくとか、もうちょっと救済的な役割のある制度を使うべきだと思います。それともっと大事なことは、制限なく使えるようにするということをそろそろ、10年以上やっていらっしゃるのであれば、どういう形で制限を外すかということを考えなければいけない。

 ちまたの全ての医師がそれを考える必要はないと思いますが、やはり東大とか、こういう研究がきちんとできるグループでは、もう研究をするというだけではなくて、その次に、研究の後にどうやってその資料を一般化するかということを医師が考えなければならない時代が、ここ何年もきていると思いますので、やはり10年たって、まだここで先進医療Bでというのは、さすがに、その先がないというのが分かっている状況で入っていただくのは、どうかなという気はいたします。


○山口座長
 ほかに何か御意見はございませんか。


○天野構成員
 末席から恐縮ですが、先ほど来、薬事承認という出口戦略ということで、先進医療Bの中でどうするのかという議論がされていますが、私として是非お願いしたいのが、もしこれが万が一さらにやることになるとしたら、ここに入ってくる患者がいるわけです。患者は、先ほど来おっしゃっているように、非常に予後の厳しい患者であり、選択肢が1つでも増えたほうがいいと考えている患者ではありますが、だからといってその患者に対して、過剰な期待を持たせてしまったりとか、有効性及び安全性が今までに明確に示されていないものを公的な補償の下に行うというのは、非常に患者に対して失礼な話であり、倫理的に許容するのも困難ではないかと考えますので、何らかの形で、患者にとって先進医療を期待して入ってくる患者が、自分自身にとって何らかの利益があるのではないかということを感じていただけるような試験にしていただかない限りは、これは難しいと考えます。

 実際に試験に入る患者のことをよく考えていただきたいと願います。


○山口座長
 ほかにございませんか。真田構成員から何かございますか。


○真田構成員
 私も、出口戦略がないというところを議論されている先生方の御意見はもっともだと思います。ただ、そこは先ほど来お話にあるように、患者の御希望、科学性、制度設計が、今一つかみ合っていないというところも、いろいろな医療の中では現実としてあるところですので、そういうものがこのような議論の場で見い出されたときには、解決に向けて各方面で努力していただくことは期待したいと思います。


○山口座長
 ほかに御意見はありませんか。


○伊藤()構成員
 薬事承認をきちんと取れる話に最短で持っていくのが一番いいという意味では、どうにか努力をして、医師主導治験でされるのが一番いいのではないでしょうか。そうでないと、きちんとした評価がされないままに多くの患者が期待してこの治療法をされるのではないか。ですから、早く評価して、早く薬事承認の下で保険で使えるような話に進めるためにはどうしたらいいのかという意味では、藤原構成員の評価は妥当なものではないかと感じました。


○山口座長
 一色先生から御意見はありますか。


○一色座長代理
 議論の方向性が異なるかもしれませんが、藤原構成員がおっしゃった支払基金での対応があり得るという点については、これは都道府県によって運用ルールが変わり得ますので、必ずしも平等にはならないことと、もしそれが平等に運用されるとしても、浸透するにはかなり時間がかかるのではないかと危惧します。


○藤原構成員
 私が申し上げたのは、その都道府県格差をなくすための社会保険診療報酬支払基金本部での作業ワーキングというのがあるのですが、そちらであれば先生が御懸念の都道府県格差は是正されるので、そちらのワーキングに係るように、今は平成24年に、日本医学会経由で保険局医療課にそういう要望を出す仕組みというのがきちんと存在していますので、医学会関連の学会であればそういうものを出せますので、胃がん学会はそういうのをきちんと出せば粛々と進むと思います。


○山口座長
 ほかにございませんか。ただ、支払基金が認めたからといって、全国的にいくのはなかなか難しいと私は思います。というのは、やはりそういうものが増えてくると、必ず支払基金のほうも、薬事を通っていないものは駄目ではないのかとか、そういう議論は必ず出てきて、そうなるとやはり同じことになってしまうと思います。現実的には解決策にはなりにくい気がします。

 いずれにしても、今、皆さんの御意見を伺っていますと、やはり先進医療としてチャンスは十分にあったはずですし、その中で出口が見えないままというのはここでやるべきではないのではないかという御意見が多いように思います。


○山本構成員
 タイミングを逸している試験だと思うのです。何のタイミングかと言うと、天野構成員もおっしゃっていましたが、明らかにこちらのほうがよさそうなのに割付けを無理矢理します。割り付けないとエビデンスが出ない状況でずっとやっているからそうなっているのですが、感触としては使ったほうがいいのではないかと思ってしまっているという段階で、ランダム化比較試験をするための倫理的なベースが崩れてしまっているのです。なので、割付試験をするタイミングを逸してしまっているので、それを無理矢理割付試験にすることについても、説明文書が明らかにこちらを使ったほうがよさそうに見えるのに、どうして割り付けるのだという話になってきますし、やはりエビデンスは大事なのですが、もう一方で無作為化ができるタイミングというのは、ある一定のときしかないということも考えながら、臨床研究のデザインを組まないといけないので、割り付けられない状況になってしまっていたら、違う方法でやらざるを得ないと思うのです。だから、今だと、このデザインだと、患者側の支援も得られなくなってきている、だから試験として成立し難くなってきているのではないかと私は思いました。


○山口座長
 なかなか難しい問題ですが。


○伊藤()構成員
 逆にそういう状況なので、先進医療という医療の枠組みではなくて、純粋に試験として御協力いただきたいと説明文書の中で説明し、患者の負担を取りながら医師主導治験なり企業主導の治験でやらざるを得ない状況になっていると思うので、そういう意味でこの先進医療の枠組みというのは不適切という話でいいのではないかと思います。


○山口座長
 ほかに御意見はございませんか。それでは、一応全体としては出口が見えないということで、なかなか難しいのではないかという御意見が多いかと思うのですが、今回そういうことを指摘したわけですが、回答もないということでよろしいでしょうか。もう一回チャンスを与える必要はないと。つまり、可能性もあるしプロトコルもしっかりしているけれども、財源と出口が見えないのでそこを明確にしてくださいと問い掛けたけれどもお答えもないので、このままでは駄目ですということだと思います。一方で今一度チャンスを与えるということで明快な道筋も付いて、財源もある程度皆さんが納得できるような手立てがあるのであれば、検討しますという条件付きの返し方もあると思うのですが。


○藤原構成員
 座長がおっしゃるとおりで、そういうことをきちんと回答してくれるようなことがあれば、再審査というのは何も問題はないと思うのです。ただ、このまま継続審査で引っ張っていくというのは、申請者にとっても不幸ですし、私もずっとこれを見続けていますので、1度立ち止まって考え直してほしいというところですね。


○山口座長
 ここで不適とするか、もう一回問い掛けて練ってもらえという2つの選択肢ですが、いかがでしょうか。前回も不適が出たので、不適があってもいいのですが、いかがでしょうか。


○伊藤()構成員
 前回、不適を出したのですが、やはり先進医療という枠組みではなくて、医師主導治験なり企業主導の治験という枠組みで、割付けをすることを前提にして、医療ではない形で試験を実施しない限り難しい。先ほど山本先生もおっしゃられていますので、そうだとすると、この枠組みからは外れていただくほうがいいのではないかと思います。


○山口座長
 複数回チャンスは出ているわけですから、それに応えられていないということもありますので、不適にしてもやむを得ないのではないかと個人的には思います。皆様の大勢はそういう意見ということでよろしいでしょうか。何かございますでしょうか。


○石川構成員
 私は、これは不適というここで終わったとしても、今、医師主導とありましたが、これを医師主導でやるというのはなかなか大変だとは思っています。そういう道を本当にお勧めしないと、これは臨床の医師としては、こちらのほうがいいとか何とかということは言えないとは思うのですが、手応えは確かにあるのではないかと思っているので、これは患者には言って、主治医になったときに、こういうルートもあるというような形で、申出医療のほうにきたりということが非常に考えられると思うのです。そちらのほうで症例を重ねるということも、またあるのかもしれないのですが、いずれにしても、これはきちんと指し示してあげないといけない治療なのではないかと、私も最初の総括のところから聞いていまして、そのような思いがあるわけです。だから、これはここで不適にしても、そのようにしたほうが、たった2か月の効果と言っても、これは患者にとっては黄金の2か月だと思うので、そのような方向を示してあげてもらいたいと思います。


○山口座長
 不適はできれば満場一致に近い形でやりたいと思いますので、次回のこの部会までに、繰り返しになりますが、出口戦略と財源の問題について、このままでは不適になるということをお伝えして、回答を頂くということでいかがでしょうか。1月程度の猶予を与えるということになります。よろしいでしょうか。それでは、継続審議ということで、今のような問掛けをするということにしたいと思います。皆さん、ありがとうございました。続きまして、申請医療機関からの報告について、事務局から説明をお願いします。


○医政局研究開発振興課長補佐
 資料2139ページからになりますが、こちらは国立がん研究センター中央病院より、告知番号B63、マルチプレックス遺伝子パネル検査において、協力医療機関の不適切事案について御報告がありましたので、御説明いたします。

 まず、おさらいになりますが、協力医療機関である島根大学医学部附属病院において、同意書取得手順及び個人情報の取扱いについて不適切事案が認められ、第82回及び第83回の本部会において報告されました。概要としましては、登録枠を確保するという考えから、同意書を入手する前である試験開始日の深夜にEDC登録を実施していた。また検体とともに、本来送付することになっていなかった個人情報が記載された病理報告書が、遺伝子検査実施施設(理研ジェネシス)に送付されていたというものです。

 また、第83回の本部会において、国立がん研究センター中央病院で行った登録症例数の多い、若しくは申請書類確認時の研究倫理審査委員会審査内容に疑義があった協力医療機関に対して行った監査によって、千葉大学附属病院において、本人の家族が同意書を代筆しているという症例が認められたとの第一報がありました。

 本件について、本年327日に千葉大学倫理審査委員会で審議予定であり、その結果を踏まえて再度報告を頂く予定となっておりましたので、前回第83回のこちらの部会での審議後、それぞれの施設に対して説明を求めたところです。

 島根大学医学部附属病院に対しては、6症例の適格基準の該当性について調査し、詳細な報告を行うこと。また、1研究開始時にスタートアップミーティングを行わずに、責任者がいつ、どのような範囲や人に、どのような方法で何を指導したのか。2侵襲の有無を判断する基準なしに、どのようにスタートアップミーティングの開催の要否を判断していたのか。320184月以降に開始された人を対象とする医学研究のうち、スタートアップミーティングが行われなかった研究の件数と研究課題について、報告を行うこと。また、研究開始時にスタートアップミーティングを行うことについて、従来、ルールが明確化されていなかったため、文書作成の他、抜本的な対策を行うこと。この他、報告書の内容確認のため、病理報告書、同意文書、臨床研究における患者登録のダブルチェック手順書及び平成31312日に開催された「研究として行う先進医療実施の適正化委員会」の議事概要の提出を行うことを、事務局より依頼しておりました。

 一方、千葉大学医学部附属病院に対しては、今回の事案の経緯等が指針違反に当たるのか、また、再発防止策等の倫理審査委員会の審議結果の報告を行うこと、及び倫理審査委員会の審査内容についての事実関係の報告を行うこと。(どのようなスケジュール、審査内容、審査資料だったのか等)を依頼しておりました。それぞれ4月に報告書及び回答書が提出されております。

 次に2番、これらの報告及び回答の概要です。まず、島根大学医学部附属病院については、6症例中1症例について、組入れ基準がもともとPS01ということだったのですが、PS3であり、逸脱していたとのことでした。こちらの詳細は、机上配布資料の1ページ目及び7ページ目、10ページ目以降を御参照ください。

 また、スタートアップミーティングについては、試験開始前の10月下旬に2回、実施責任医師より実施医師2名に対し、実施計画書の内容に沿って、試験計画の概要、検体採取及び送付方法等を、実施計画を見ながら口頭で確認・指示。ICに関しては文書での同意取得の必要性について指導。登録開始日となる平成30111日に実施する内容についての指導は行っていませんでした。

 また、個人情報保護に関する指導は、実施医師2名には行っていたものの、クラークには実施していなかったと御回答いただいております。こちらの詳細は会議資料2の143ページ目以降を御参照ください。研究責任者の判断として、スタートアップミーティングの開催の要否を決定しており、その判断の基準は侵襲の有無であったとのことです。こちらの詳細は会議資料2144ページを御参照ください。

 20184月以降に開始された、人を対象とする医学研究に該当する研究は160件あり、スタートアップミーティングが行われた研究が63件、行われなかった研究が97(今後実施予定の研究は11件、診療カンファレンスやメール会議等で代用した研究は51件を含む)であったとのことです。こちらの詳細については、机上配布資料の18ページ以降を御覧ください。

 スタートアップミーティングのルール化については、文書化を求めておりましたが、今後、業務手順書の改訂を行う予定とのことです。こちらの詳細は、机上配布資料の2ページ目を御参照ください。

 また、平成31222日に島根大学より提出された報告書には、「医師クラークが・・・検査申込書への記入に必要な腫瘍細胞率は当院の病理報告書に記載されている・・・」と記載されていました。実際には、病理報告書には腫瘍割合の記載がなかったということを確認しております。こちらの詳細は、机上配布資料の2ページ目及び34ページ目以降を御参照ください。

 本件を契機として設置された「先進医療実施の適正化委員会」については、「今後も継続して開催し、対応策等を取りまとめる予定」と回答されております。今回、資料としてお付けしてはおりませんが、「本日417日より先進医療の実施状況を調査し、管理・監査を行うことにより、先進医療の信頼性、倫理的妥当性及び安全性を確保することを目的に、先進医療管理センターというものを、病院長判断でガバナンス強化のために設置した」と御報告いただいております。

 続いて、千葉大学附属病院に関しては、本年327日の生命倫理審査委員会において、本事案について「同意書の記載に不備があった代筆事案であり、同意が取得できていないまま研究を開始した事案ではないため、重大性はないと認められる」と判断されました。

 また、本事案の概要、これまで以上に遵守を徹底すべきルール、改善に向けた工夫等を附属病院及び医学研究院内でメーリングリストや研修等で周知を行うことを、再発防止策とすることで了承されたとのことです。こちらの詳細については、会議資料2の153ページを御参照ください。

 倫理審査委員会への申請・承認状況については、資料2146ページ及び147ページを御参照ください。平成305月に他試験の共同研究先として、国立がん研究センター中央病院を追加する変更申請・承認を経て同年8月上旬に国立がん研究センター中央病院に申請書類を提出しましたが、「個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査研究(先進医療B)」として、倫理審査を実施するよう、国立がん研究センター中央病院に指摘され、再度審査・8月中旬に承認後、先進医療技術審査部会に申請されたと報告されております。

 平成305月の他試験の変更申請で処理された原因としては、研究担当者は、次世代シークエンサーを用いたパネル検査を行う研究であった他試験の変更申請で問題ないと誤認、また、附属病院医療サービス課及び医学研究院生命倫理審査委員会事務局においても、当該申請が先進医療の研究としての申請であることを正しく理解できておらず、当該既存研究の変更申請として審査・承認したとあります。こちらは会議資料2の150ページ目を御参照ください。

 最後に3番目の今後の対応方針案です。島根大学医学部附属病院に対しては、不適切な対応の原因が担当医師等の問題として報告されていますが、先進医療は医療機関からの申請であり、適切に実施されるよう医療機関として対応いただく必要があります。医療機関としての根本的な原因分析・対応を求めではどうか。また、スタートアップミーティングのルール化、「先進医療実施の適正化委員会」の対応策等、今後に対応を予定しているものについては、完了次第、報告を求めてはどうか、と御提案させていただきます。

 千葉大学附属病院に対しては、倫理審査委員会の審査内容について、他試験の変更申請で問題ないと研究担当者が誤認してしまったと報告されていますが、研究者個人の問題ではなく、医療機関として適切に処理できなかったことも問題であり、同様の事例がないか確認し、報告を求めることとしてはどうか。また、他の先進医療試験における計画変更の先進医療技術審査部会への報告漏れの再発防止を契機として、平成2910月及び平成304月に、管理機能強化のための部署が設置されているにもかかわらず、今回の事案が発生していることから、当該部門の役割の強化・見直しを認めてはどうか、と御提案させていただきます。

 本事案について、全体を通して追加で対応すべき点等について、御審議いただきたいと存じます。事務局からは以上です。


○山口座長
 前回、十分にこれを議論できませんでしたので、まず島根の件につきまして、何か御質問はありますか。臨床試験をやるときに、担当医だけにちょっと説明したとか、そんな記載もありますが、やはり新しい試験が走るときには、基本は看護師さんや薬剤師さんも含めて説明会をやるのが普通だと思うのです。そんなものがあったのも知らないとか、担当医のミスであるというようなところに落ち着いていますけれども、病院として、やはり新しい臨床試験をやるときにきちんと管理できなかったのは、一番の問題かと思いました。その辺り、いろいろ解析されていますけれども、何か御質問はありますか。


○天野構成員
 御説明ありがとうございます。1点確認ですが、島根大の報告書の中で繰り返し強調されているのは、その判断基準として個別の医師の判断ということではありますが、侵襲の有無で判断しているということが繰り返し記されています。それについて島根大では検証がなされ、そういったことは今後ないようにしているということが示されているとは思うのですが、ほかの先進医療を行っている施設で、例えばがんゲノム医療が、主に検査等を主体として行うものであると判断して、侵襲がないからという形で軽く判断している事例があるのではないかと危惧するのですが、その辺りの対策はどのようになさっているのか、もし分かれば教えていただけますでしょうか。


○医政局研究開発振興課長補佐
 すみません、今すぐ答えられる答えをお持ちしておりませんので、お調べして、また御報告するようにいたします。


○山口座長
 確かにおっしゃるとおりで、侵襲という言葉で簡単に括っていますけれども、これは非常に主観的な言葉になっています。遺伝子のパネルに関しましては、侵襲の問題ではなくて、非常に重要な情報の管理などに新しい危険があるので、それを侵襲とは言えないわけですから、やはり原則としてあらゆる臨床試験は、当該部署の人が集まって、やはりキックオフミーティングをやるのが、原則ではないかと思います。そういう決まりがなかったので、担当者たちがちゃんとやっていなかったという、そういう回答になってしまっているので、その辺りはきちんとするように指導はしたいと思います。何かありますか。


○山本構成員
 2つ、島根大学のことですけれども、そもそも島根大の病院は、臨床研究をやるために基本的な研修とかを全職員に対してやっているのか、非常によく分からないというか、臨床研究法と言いましたけれども、その前から先進医療は施設としてやるということになっていて、最終的には施設長がやはり責任を負っているのですけれども、何かドクターの話も、それぞれの医者がちょっと駄目だったということなのですが、それを教育しないと、教育してその先進医療ができるような施設にするというのが、一応、責任者に課された責務なのですね。医療機関の長が自分に課されている責務を理解していらっしゃるのか、ちょっと心配になるような感じが、報告書からほんわかと出てくるということです。

 あともう1つは、個人名の入った病理の報告書を出してしまっているというところも、やはり職員の研修がちゃんとできていないように思うのです。なので、病院長というか、その管理体制、そこ自体、施設長が責任者であるということを御理解いただいているのかなというのが、ちょっと気になるところが1つです。

 もう1つは、がんセンター中央病院が申請して調整機関にはなっているのですけれども、この参加施設一覧を見ると、100施設近くが入っているのですね。100近くの施設を、実際このがんセンター中央病院が取りまとめられるのか、すごく頑張っていらっしゃると思うのですが、これだけで症例が300と言ったら、それは過当競争になるのが見えていると思うのです。ここまで施設を増やす理由が何であったのかというのが、私にはちょっと理解できないところがもう1つあります。その2つについて、お聞きしたいなと。


○山口座長
 ありがとうございました。おっしゃるとおりで、やはり施設の長がもう少し自覚しなければ駄目ですし、そもそも特定機能病院ですから、そういう体制はあって当然なわけですからその辺り、一応確認はしたいと思います。

 それから、ちょっと参加施設が多過ぎるかというのは、こことは関係ないかもしれませんが、何かコメントはありますか。


○藤原構成員
 関与ですが、その辺は前回の技術審査部会のときに詳細な資料をお出ししているのです。この枠組みは、何もがんセンター中央病院だけがコントロールしているわけではなくて、臨床研究中核病院は全国で11施設ありますけれども、そのうちの慶應と岡山と、それから幾つかの施設、そういう中核病院が、更にその下の自分たちが持っている連携病院をコントロールするという、ちょっと重層的なコントロールの仕方になっています。

 中央病院はあくまでも申請医療機関で、先進医療への申請はしていますけれども、ぶら下がっている連携医療機関は110あり、大体それが各臨床研究中核病院に、20とか15の連携病院がぶら下がっているので、それぞれを中核病院がコントロールされているという状態なのです。山本先生が御懸念の、110を全部一医療機関がコントロールしているわけではなかったという実態もあります。

 それについては前回の資料を、また皆さん、おうちに帰られて見られたらいいのですけれども、それぞれの臨床研究中核病院は、やはりキックオフミーティングをきちんとやっていたり、連携病院もそこに参加していたり、それから理研ジェネシスさんという、このパネル遺伝子検査をやっている機関の人たちもロジに関して施設に行って説明したり、中核病院の説明会でしっかりプレゼンしたり、通常考えられる措置というのは、きちんとされているのです。振り返ってみると、なぜか島根大学はちょっとそこは甘かったという実態がありますので、前回資料はその辺をしっかり書いていると思いますが。


○山本構成員
 多施設共同試験で施設数が多いことは別に構わないと思いますし、今回確かに中央病院が監査もされ、例えば島根大については、エントリーしてきている時間でおかしいと、非常に感度よく見付けていただき、そういう意味でモニタリング監査がちゃんとしていたから、こういうものが出たのだと思いますので、中央病院が機能不全だとは思わないのですけれども、症例数とこの症例の普遍性というか、そんなに少ない患者さんではないのに、これだけの施設が要るかというと、普通の臨床試験でバランスを考えると、こんなに要らないのですね。

 なのに、これだけたくさんの施設を入れてしまっているから過当競争が起きて、このような、何としてでもうちの患者さんを入れなければならない、みたいな妙なコンペティションが起こってしまっているという感じがすごく強いのです。

 ですので、これが1,500人だったら、この施設数は分かりますし、例えば1年に1人か2人しか出ないようなレアディジーズで、それで300人集めるのだったら、この施設数は分かりますけれども、ほんの300人で、しかも侵襲が余りない、血液検査で分かるような、これでこれだけの施設数を入れる理由がないと思いました。


○山口座長
 これはちょっと分かりませんけれども、これより新しい技術を広めるときに、特に遺伝子のパネルとかは、新しい体制などが必要です。しかもやはり全国一律に、なるべくあまねく早急に整備を整えたいということで、希望してきた所を断わるわけには、なかなかいかないのではないかと思うのです。


○山本構成員
 いや、分かりますが、一応、臨床試験の中でやっていることなので、先にある程度の数の施設で体制を組んで、それから診療になるときに広げればいいので、これは政策が先に前倒しになってしまって、こうなっているのかもしれません。中央病院さんだけの問題ではないと思いますけれども、やはり先進医療でこれだけのルールを掛けてやるのであれば、やはりコントロールできて、ある程度レベルが分かる所に施設数は限っていただくべきではなかったかと思います。これは次のときの反省にすればいいと思います。


○山口座長
 コメントありますか。


○藤原構成員
 その申請資料、各中核病院が連携病院を選ぶときに、やはりある程度の一定の基準は設けて、それを判断して中核病院は、それぞれの傘下の連携病院、それも連携病院も別に有象無象が入っているわけではなくて、皆さんが御存じのような名前の病院で、なおかつ臨床研究もある程度きちんとやっている病院が傘下に入っているので、私のほうから見ると、中核病院の下にぶら下がっている15から20の病院が、何かすごく殺到してというわけではなくて、それぞれの中核病院がきちんとコントロールされている環境下で試験が進んでいたとは考えています。それは前回資料などを御覧いただければ、その辺はきちんとなっていますので、それでも多いと言われると、ちょっとつらいところはあるのですけれども。

 各中核病院さんは、先ほども申し上げましたけれども、キックオフもやり、その前から何度も説明し、しかも説明会のいろいろな録音なども中核病院の先生方には確認してもらいましたけれども、別にあともう少しで患者さんが登録できなくなりますから、早く入れたほうがいいですよ、なんていうことは絶対言わずに、きちんとした臨床試験デザインの中で、このように進んでいます。それからエリジビリティー・クライテリアも、きちんと設定されていますし、煽るようなことは多分、誰も言っていないので、その辺は臨床試験の枠組みとしては、きちんとされているのではないかと思います。これはあくまで研究に関与しています私の参考的な発言ですけれども。


○山口座長
 今回のものは、やはり同意書の問題とか、別に先進医療ではなくてベーシックなところでエラーが出ているので、そのほかの施設でもうまくいっているかどうか危惧されます。例えばこういう施設はペナルティーで半年も登録させないとか、何かやらないと、恐らくほかの病院は他人事みたいに思ってしまうのではないかと心配されます。その辺りの問題はここで話すべきことではないかもしれませんけれども、今回はよくがんセンターで見付けていただきましたので、これを適正に治すという方向でいきたいと思います。個人の責任とかということではなくて、やはりそこの施設長がきちんと責任を感じていただくという形で対応したいと思います。


○石川構成員
 これ、スタートアップミーティングとありますけれども、今、おっしゃいましたように、同意の問題と個人情報の問題とは、これは本当に基礎中の基礎で、例えばスタートアップミーティングがやられた、やられていないの問題ではないと思うのです。それから今までの先進医療のところで見ても、幾つかの過誤で見たときに、やはり大学というのは人がしょっちゅう代わりますので、1回やったからどうかという問題ではないと思うのです。

 それで、山本先生がおっしゃいますように、基本的な、これは臨床研究だとかそういう問題ではなくて、医者の医師になる上での育ち方のところで、同意原則の問題だとか個人情報の問題、きちんとやっておかないといけないというか、これは組織的な問題だと思います。

 特にゲノムの問題は、これからどんどん出てきて、これと個人情報がくっ付くということが、再三この問題のときにもやって、NCCのほうではかなり一生懸命やっているということも、この間ちょっと見せていただいたのですけれども、にもかかわらず、やはり医療だとか医学のところで、相当宣伝していかないと、教育していかないと絶対駄目だと。我々、自分たちも含めて、そういう思いがしますので、これは一つ大きく、ここのところで舵をまた切り直したほうがいいと思います。是非お願いしたいと思います。


○山口座長
 ありがとうございました。それでは、2つ目の千葉大のほうについて、何か御質問はありませんか。


○山本構成員
 先進医療ではないのですが、前に国際共同治験でちょっとやったときに、国内の施設を全部、アメリカの施設の要請で、施設モニタリングに入ったことがあって、やはりアメリカの施設の要請で全部見ていかないといけなくて、同意文書はもう全部確認していたのです。そうすると、同意は取っているのですが、書く欄を間違えていたりというのは、結構散見されました。良い機会なので、間違っていた所には全部、そこをきちんと、こう書いてくださいというのを言いました。

 あとは間違いも、できるだけ少ないような様式に変えたりということはしたのですけれども、やはり、みんな概念的に説明をして、文書同意を取るのだということは分かっているのだけれども、現実的に出てきた同意文書が、どういうものが正しいかというところまで、ちょっと分かっていないというところは、多分この千葉大だけではなくて、結構、日本全国あちこちにはあるので、そこはもうちょっと、難しいのですけれども、例えばCRCが入っていると、彼らはそういうことを実務的に教えられているので分かるのですが、逆にセミナーとかで聞いて、ちゃんと同意を取って、文書同意を取って、ちゃんと書いてもらって、してくださいと言われているのだけれど、具体的に実務的にどうするかというところを、お医者さんは逆に余り知らなかったりするのですよね。

 なので、本当にかわいそうなというか、見付かってしまってかわいそうだなとは思うのですけれども、ですから、重大な事案とは思わないのですが、今後そういうところも含めて、本人が書くということがすごく重要なのですということを、さらに教育の中で強調していかないといけないのだろうなとは、ちょっと思いました。


○山口座長
 ありがとうございました。確かに先進的な施設では、ちゃんと医師をサポートする人もいるのですけれども、そういう人が全くいない所のドクターがやると、相当抜けが出てきたりすることがあるので、そういう体制の問題も確かにあると思います。やはり病院がそういう体制を作る努力をしないと、医師への負担がますます掛かって、不祥事が起きるというようなことになるのではないかなと思います。

 ほかにありませんか。これは何か私もよく理解できないのだけれど、ほかの研究を転用したというか、その変更の申請だけでいいと思ってしまったということは、その申請を受けた所も誤解していたということですかね。つまり担当者だけではなくて、病院のほうとしても誤解していたと。


○医政局研究開発振興課長補佐
 そうです。倫理審査委員会のほうが誤解して、それを迅速審査で承認したというプロセスがあって、後で新規に申請されて、最終的には正しく審査されているのですが、始めのところで間違いがあったということです。


○藤原構成員
 この150ページ、先ほど事務局の方が説明した所に、その詳細が書いてあるのですけれども、私もこの先進医療の申請機関として、この千葉大病院を監査の対象に選んだ背景には、別に同意申請文書とかをチェックしにいくだけではなくて、7.に書いてある所、ここが非常に問題なので、何かほかに大きなことが隠れているのではないかなと思って監査に入ってもらったという実情があります。

 何がここに書いてあるかというと、先進医療で承認したプロトコルとIC文書を、本来は研究倫理審査委員会に別でちゃんと独立して掛けて、先進医療として実施することに関しての承認を得て、各医療機関はスタートをするのですけれども、この千葉大病院が最初にやっていたのは、ほかの観察研究の変更承認のスタイルをとっていたのです。既に承認されている観察研究に、この先進医療が新たに入りますからというので、変更申請で倫理審査委員会に掛けて、それで承認されましたというので、先進医療を始めていいですかと、私ども中央病院のほうに連絡が来たので、それはちょっとおかしいのではないですかと。先進医療は別の仕組みなので、ちゃんと独立した審査をしてくださいと投げ返したというのがあります。

 それから、私がこの先進医療の会議のメンバーだったので、そのときに一番おかしいなと思ったのが、当時同じ時期に、この千葉大学病院の頭頚部外科、耳鼻科で先進医療の変更申請の、この先進医療技術審査部会の報告が遅れているという事案が、その前の年から審査されていて、千葉大病院は病院長名で、これをちゃんと解決しますと。この151ページのフロー図にあります、研究推進課というのを新たに平成304月に設置して、ここはちゃんとそういう先進医療を巡る様々な事務作業を効率的に監視し、推進していきますという回答をもらって、先進医療技術審査部会、さらには先進医療会議は、そのトラブルを改善計画も出されたし、了承しますと言っていた同じ時期に、この案件が起きているのです。そうすると、我々が審査した改善案は一体何だったのだろうとも思ったのが背景にあります。


○山口座長
 ありがとうございました。何か御質問はありませんか。それでは142ページを見ていただきたいのですけれども、今後の対応策は島根と千葉について書いてありますが、原則としてこのような対応でよろしいでしょうか。何か追加があれば。今まで出た意見では、個人の責任にしないで、やはりこれは施設としての事業ですから、施設長がもう少し責任を感じて、管理できる体制を作っているかどうかということを確認しなさいという御意見が出ましたので、そこは両方ともそうだろうと思います。そのほかに何か特に御意見がありましたら、問い合わせますけれども、よろしいでしょうか。

 それでは、島根大学には原因究明と再発防止に向けた医療機関としての抜本的な対応を求めると。千葉大に関しては臨床研究に対応する部分の強化。それから、今まで作った改善策がちゃんと生きていないのではないかということなどについて、引き続き対応を求めたいと思います。報告いただいた対策をしっかり実施して再発を起こさず、適切に試験を行っていただきたいと思います。

 では次に、試験実施計画の変更について、事務局から説明をお願いします。


○医政局研究開発振興課長補佐
 先進医療Bの試験実施計画の変更について、1件の申請がございました。こちらは先月の当部会において一旦、承認いただき、目標症例数については、部会構成員の御意見を踏まえて、再度検討いただいていたものです。

 資料としましては、会議資料3165ページを御覧ください。杏林大学医学部附属病院からの申請で、告示番号34、テモゾロミド用量強化療法です。適応症は、膠芽腫(初発時の初期治療後に再発又は増悪したものに限る)です。部会構成員の先生方の御意見及びその回答につきましては会議資料の169178ページにございます。またタブレットにあるプロトコルの25ページ目、こちらはタブレットの353ページになりますが、こちらの症例数設定根拠も、併せて御覧ください。

 今回御審議いただく主な変更内容としましては、症例数の変更です。予定症例数が210例ということですが、今回の申請時点で、登録は33例となっております。昨年11月の部会において適格基準の変更(前治療の許容範囲の拡大と対象となる初発時の組織型の変更)が承認されて、登録条件の改善が期待されていましたが、なお、予定登録期間中に登録を完了できない可能性が高いと考えられております。したがって、本試験が検証的試験であることから検出力は変更せず、本試験の対象が希少な集団であることから、有意水準αを5%から10%へ変更することで予定登録数を210例から146例へ変更することとした、とのことです。

 こちらの内容については、前回の第83回部会でも一旦、御議論いただき、症例数についてはこのままでという条件での承認、御意見があれば根拠を示してもう一度申請を、ということになっていました。

 また、今回御欠席の飛田先生より御意見を頂いておりますので、事務局で代読させていただきます。「実施中の試験は、計画時に有意水準は片側5%として症例数等を設定しておりましたが、目標症例数の集積が困難ということで、これまでに適格基準の緩和などの変更を行い対応を図っていました。しかし、それでも当初の目標症例数210の修正の見込みが難しいとの考えで、今回の変更において、有意水準を片側10%に変更し、目標症例数を146例と変更したいとのことです。有意水準を5%から10%に変更するという今回の変更は、検証的試験の有意水準の変更を事前に計画していないにもかかわらず、試験途中に認めることになります。この変更を認めるということは、今後も先進医療で実施している試験において、希少疾患で症例登録が難しいケースが発生した際等には、試験途中であっても有意水準の変更が認められるという事態に繋がることに留意しつつ、この変更の可否を検討する必要があると考えます。

 取り得る選択肢としては、最初に決めた目標症例数210に可能な限り近づける努力を行い、予定登録期間終了時点で結果として目標症例数に達しない(解析結果の検出力が低下する)ことを許容する。または、目標症例数の達成が困難と分かった時点で、有意水準は変えないで検出力を変更し、それに伴い症例数も変更することを許容する。あるいは、目標症例数の達成が困難と分かった時点で、有意水準を変更し、それに伴い症例数も変更することを許容する、について、部会の場で御議論いただければと思います」。以上です。


○山口座長
 ありがとうございました。何か御意見はございませんか。

 これ、非常に登録が難しいのだけれども、努力が足りないのではないかと思っていろいろ問い合わせてみました。その結果、いろいろやむを得ない事情もあって、ほかの有望な臨床試験が走り始めて、そちらに登録がいってしまったとか、なかなか予測できなかったこともあります。もともと対象が少ないので、彼らも非常に努力しているのですけれども、予定通りの登録が困難ということで。ここでどういう認め方をするかということかと思います。今、飛田先生から、変えないで検出力が低いままで検証するべきだということか、あるいは、有意水準を変えないで検出力を変更して症例数を変更する、あるいは、有意水準を変更して症例数も変更する、その3つの選択肢ではないでしょうかという御意見を今頂いたのですけれども。私もよく理解できないのですけれども、専門家の先生から何か御意見がありましたら。


○山中構成員
 一義的な回答はないかなとは思います。資料の178ページの2段落目に、標準治療の確立に寄与し得る意思決定が可能な試験デザインを選択した、それでαを緩めたというのが一番の理由だ、というように書いてあります。さらに、一番下のほうに、社会のコンセンサスは得られるだろうと。だから、ここを飲めるかどうかだと思うのですね。今は先進医療の話ですけれども、薬事のほうを考えてみても、例えば日本で承認された希少疾患に対する医薬品の中にはRCTをやらずに、つまり単群試験で、シングルアームで承認されたものもあるわけです。なので、希少疾患に対する医薬品について、検証試験であっても検証の度合いが小さいデータに基づいて判断するということが必要になる場合はあるのだと思うのです。総論的には、社会のコンセンサスが得られるような試験デザインの緩め方をして、早期の臨床使用を可能にするというのはこれまでも、例えば薬事のような厳しい状況であっても一定の範囲内で実践されてきたと考えられると思うのです。

 有意水準は5%というのが一般的なのですけれども、肺がんとか大腸がんとか、そういった罹患数の多いメジャーキャンサーであれば、有意水準5%でないと社会としても受け入れ難いと思うのですけれども、その5%というのはあくまでも慣習的に選択されてきた値であって絶対的な数値ではないということを考えると、今回、5%から10%に少し緩くすることによってエビデンスの度合いは当然下がりますが、予後がかなり不良で、お薬、治療法のアベイラビリティも極めて限られている、そういったところに対して有意水準を緩めた形で試験をやるというのは、私はあり得る話だと思うのです。だから最終的には、患者さん、専門医のコミュニティ、そういったところが納得されると判断してαを緩められたのだと思うのです。

 なのでαが10%ということは、例えばP値が8%であってもこの治療法は統計的に有意である、統計的に差があると主張するということだと思うのです。普通は、有意水準5%でP値が3%だったら有意ですよ、統計的に差がありますよという基準になりますけれども、今回、5%を10%に緩めるということですので、P値が8%とか9%であっても統計的に差があると主張することになるのです。それは、この重篤な疾患領域で薬のアベイラビリティを考えて、更に希少性まで考えたら許される範囲内ではないかと私自身は思います。以上です。


○山口座長
 ありがとうございました。一応、申出のとおりでいいのではないかという御意見です。


○山中構成員
 結論的にはそうですね。


○山口座長
 ありがとうございました。ほかにございませんか、それはいかがなものかという御意見があれば。


○伊藤()構成員
 一番最初の評価をさせていただいたのですが、αをいじり始めると、統計的に有意なというのはどういう意味なのかというコンセンサスが崩れるのではないかと。だから、有意水準を無視して統計的に有意差が出たという話が、独り歩きしてしまう可能性は、今後あるのではないかという気がするので、それであれば検出力を。症例数が少なければ、当然、検出力が落ちるわけで、そうすると、有効性の証明が難しいという話なのだと思うのですが、検証試験として名を打った以上、その検出力が落ちるということを容認しても、αをいじらないほうがいいのではないかと個人的に思いました。


○山口座長
 ありがとうございました。


○山中構成員
 αをいろいろ変えると何だか分からなくなるという点ですが、データが出てから事後的にαをころころ変えるというのであれば、確かに、何を見ているのか分からなくなると思うのです。ただ、これは試験が始まった後の変更ではありますけれども、あくまでプレプランドの解析計画は保たれていますので、意味が分からなくなるということはないのではないかなと思います。


○山口座長
 ほかに御意見はございませんか。


○山本構成員
 試験は始めたけれども症例数を満了できない事件はあちこちで起こっております。あとは、やり始めて途中でそれが分かったときにどう対処するかというのが一番重要で、分からないまま最後までいって、「ああ、終わりませんでした」と言って途中でやめるのが一番まずいわけですね。ここには漠然と「社会的コンセンサス」と書いておられますけれども、臨床試験をやったときの社会的コンセンサスは具体的には何かと言うと、論文がちゃんと発表できるかということだと思うのです。確かに領域ごとに、それから、疾病のレア度ごとに許容できる範囲は違うと思いますし、頑張って無作為化試験や比較試験をやって、たとえその10%であっても、差が出たことでこちらのほうが良さそうだとみんなが認識するということは、個々の疾病領域の中であり得る話だと思いますので、そこについて我々は、これは絶対駄目だとか、これは絶対いいと言うわけにはいかないと思うのですが、重要なのは、今の段階で何らかの形で変えて、その症例数をこのぐらいにし直して、途中でちゃんと見直して試験を終了することができるということが一番重要だと思うのです。

 例えば1年前ぐらいに我々の脳卒中の領域ではかなりエポックメイキングな無作為化比較試験の結果が出て『The New England Journal』に載ったのです、それは脳卒中の急性期の治療の比較試験なのですけれども。ドイツのグループが800例入れると言って、実際には500例しか入らなくて、でも、幸いポジティブな結果だったので『The New England Journal』に出たのです。そのジャーナルの中で彼らが書いているのは、症例数が何で800から500になったかと言うと、ファンドが切られたからだとはっきり書いているのです。ファンドが切られてこれ以上できないから500でやめたと。それで、開けたらポジティブだったと言って書いて。ただ、チャレンジングな内容でみんなが求めていた結果だったので『The New England Journal』に載りました。ですから、その領域ごとに求められていることはあるので、これ、10%で社会的コンセンサスが得られるというのであれば信頼してもいいのかなとちょっと思いました。


○山口座長
 ほかにございませんか。私はその辺りは余り詳しくないのですけれども、何か、最初の210例に可能な限り近づける努力を行い、目標症例数に達しなくても、その結果、当然、検出力が低下することで仕方がないのではないかと最初は思いました。これ、例えば今回の提案のとおり変更した場合でも、ペーパーを書いてアクセプトされるものでしょうか。


○山中構成員
 試験デザインは、メソッドの所、方法の所には経緯は詳しく書く必要があるだろうと思います。ただ、今回の試験を行うグループであれば、こういうイレギュラーな経緯をたどらない試験であっても、いつも相当詳しく書いているグループですので、より詳しく正確な経緯を書かれるのではないかと思います。


○山口座長
 あと、これ、3年で33例で、そもそも、1年延期しただけでこの146例もいくのですかね、そこのところがちょっと心配なのです。これ、到底いかないかもしれないということも考えておかないといけないのではないでしょうか。あれこれ数字をいじった挙げ句にそこにも達しなかったということになると、一体これは何だということになって、今やめたほうがいいのではないかという議論にもなるかと思うので。


○山中構成員
 多分、施設登録が遅れたのが症例登録が進まなかった要因の1つかなと思うのですけれども、施設登録も完了して徐々に増え始めてきているということです。どこかで、予定どおりに集まっているかどうかというのを、先進医療の事務局に確認してもらうことは必要だと思うのですが、そういったことをする条件の下で、予定登録数に向かって突き進んでもらったほうがいいのではないかとは思います。


○山口座長
 松山先生、いかがですか。


○松山構成員
 膵島のときも結構、議論があったと思うのです、確かに集積性がかなり低いというところがあって。この1年でというところもあります。可能性があるのであれば認めるというのは、今回あると思うのです。ただ一方で、その後1年で本当にあと100例集まるのかというところは、やはりかなり考えないといけないのかなと思っています。もともと、αに関しても、片側検定されているというところがあるので両側でやっているわけでもないというところもあるので、これ以上緩めるのだろうかというもやもや感はちょっと、私、個人的には持っています。


○山口座長
 1年延ばすと、結局、期間は2年ぐらいあるのですよね。


○医政局研究開発振興課長補佐
 試験期間の延長と、あと、昨年には適格基準を変更して対象を広げるということもされています。そういう意味で、申請者側としては、今回の変更申請が承認されれば予想の数には達するという計算はしております。


○山口座長
 柴田先生、何か御意見はありますか。


○柴田構成員
 所属している組織が支援をしているので、関与になるのでコメントを差し控えます。


○山口座長
 あと、詳しい方、どなたか、専門家の御意見を頂ければと。真田先生ですか。


○真田構成員
 私は専門家ではないのですけれども、素朴に疑問に思うことが幾つかありました。例えば今、研究期間を1年増やしただけで、症例数を減らしたとしても達成できるのかという議論がありましたが、もし最後まで達成できなかった場合、当初の計画のままいって達成できなかったことと、途中で1回変更を加えているにもかかわらず達成できなかったということでこの試験のクオリティがどれだけ変わるのかということを、まず素朴に知りたいという思いがあります。

 あとは、達成できなかったところで解析方法をこう変えるとポジティブだったという結果を出すのか、それとも、オン・ザ・ウェイで症例が集積できなさそうな時点で、ここから先の将来性は分からないけれどもこの時点で変えておくことのほうがメリットがあるのかというところも、私は専門でなく分からないところなので、そこは知りたい。最後にこの試験がもし症例集積できなかったときに、どのぐらいのパワーでこの事実を示せるのかということに対して、多少なりとも影響するのではないかと思っています。

 一方で、ここの178ページには、製品を供給する企業が変わって、その供給する企業と交渉を継続するためには、何としても症例数を減らす必要があったというような記載もありますので、そういうバックグラウンドをどのぐらい勘案するかというところかなと思いました。以上です。


○山口座長
 ありがとうございました。専門家の意見が一致しないと、なかなか難しいですね。


○山中構成員
 よろしいでしょうか。症例登録の見込みに関しては、これまでは確かに悪かったわけなのですが、今現在は体制が整ってきたということなので、状況が違う可能性があるので、1年後に本当に集まるのかどうかというのは読めないと思うのです。ただ、研究者が集められるということであれば、その主張を認めるというのはこれまでも先進医療の中でもやっていたことですし、ただし、不安があるのであれば、事務局やこの部会等でも確認をしていって、そこで試験の継続とか、中止とかに関して早めに判断する機会を持てばいいのではないかなと思います。症例登録の環境というのがこれまでと違うので、読めないことを議論しても、ちょっとなあというのがあります。

 あと、真田先生がおっしゃった、当初のプラン通りで症例足らずに終わってしまった場合と、一旦試験デザインを緩めて計画変更して、でも症例が集まらなかった場合で、結果のクォリティーが違うのかということに関してなのですが、両方ともに有意差が付かなければ、それはいずれのケースでも検出力不足ということは言われるのだと思うのですが、その試験のデータに関して、データの質に関して差があるわけではありませんので、クォリティーの差というのは、信頼性保証の観点からはないだろうと思います。デザイン、結果の解釈の観点からしても、特にクォリティーに差はないのではないかとは思います。


○山口座長
 ありがとうございました。ほかにございませんか。どうぞ。


○真田構成員
 クォリティーに変わりがないとお伺いして、ちょっと安心したのですが、例えば当初の予定でいきますと、210例に近付くまで、限界まで努力を続けるわけですので、新しく今回この変更を受けて、症例数が変わった段階以上の集積があっても、試験が終了しないというような状況はあり得るわけですね。だから、そういう意味ではクォリティーが同じであれば、最初は減らしてあげて、達成すべき目標数を少しでも減らすということが、この試験のアンローディングになるのであれば、変更はある程度致し方なしということかなと思います。

 一方で、この試験に特異的な話ではないのですが、やはり先進医療の試験で、全体的に気になるのが、当初計画は割と完璧な形で作ってこられて通るのですが、そこから走り始めると、やはり完遂できないので、条件を緩めましょうという段になると、その当初の審査よりもやはり走っている審査が、研究に対する審査のほうが、勢い甘くなってしまわないかなという懸念を抱かざるを得ない局面がないことはないというようなことは、常々感じておりました。以上です。


○山口座長
 ありがとうございました。まず、第一に言えるのはちょっと210例は到底無理ではないかという認識を皆さん持たれたと思いますし、努力が足りなかったわけでもないということは、よく理解できました。やはりこの有意水準を10%に上げることは必ずしも禁忌でない。今回はそれをやってもよいのかどうかというところに尽きると思うのですが、伊藤先生どうですか。絶対駄目という御意見。


○伊藤()構成員
 反対しているのが飛田先生と僕だけなので、どうしたものかというふうに思ったりもしますが、ただ、αとβが両方あって、両方の変数を同時にいじって、症例数を設定するとやると、統計というのは何でもありなのだというように思われるのがいやだなというふうに思っています。

 昔からα=5と教育を受けているので、そこをいじるのというのは、正に抵抗があって、それが5をいじって10にするのか、20にするのも、今後はオーファンに関しては20とか30でもいいのだよという話になったりするのが、大変抵抗があります。α=5が未だにあるので余り賛成は致し兼ねるということだと思っております。


○山口座長
 ありがとうございます。この飛田先生の2番目の提案はどうなのでしょうか。症例数を変更するけれども、有意水準は変えないで、検出力は変更するという手はあるのでしょうか。


○医政局研究開発振興課長補佐
 事務局から少し追加させてください。こちらについては172ページの一番上の所に、申請者のほうから検出力が変化した場合の症例数の設定の想定というものもなされております。その前の171ページから、なぜ有意水準を5%から10%にしたかということに関する考察として、検出力を下げるということも1つの選択肢としては挙げられているのですが、先ほど山中先生も言われましたように、希少がんであり、有意水準を下げるということは許容されるのではないかというような結論に達した、ということが書かれてあります。以上です。


○山口座長
 ありがとうございました。それはもう検討した上で、こういう結論に研究者としてはなっているということかと思います。いかがでしょうか。どうぞ。


○伊藤()構成員
 プロトコルのほうを見ますと、もともと片側5%ということなのですが、中間解析についても記述があって、α消費関数というので、最初に設定した5%のうちの一部を使って中間解析を行って、検証をちゃんとしますと書いてあるにもかかわらず、最初の5%を増やしてしまうと、そもそもの中間解析の部分の所の設計もやり直さなければいけないのではないかなというように思うのですが、そこら辺については何か回答はあったのですか。


○山中構成員
 専門的すぎる答えになってしまいますが。まだ中間解析はやっていないので、10%に対して中間解析の計画を、αの消費をやり直せばいいだけなのではないですか。特に統計的に壊れることはないと思いますけれど。


○山口座長
 ほかにございませんか。難しいです、なかなか。


○伊藤()構成員
 飛田先生と話をしている限りにおいてですが、αをいじるよりも、βの検出力を落として症例数の設計を変えてもらったほうが、まだ何となくすっきりするのではないかというのが、このプロトコルを事前に評価したチームの印象でした。


○山口座長
 有意水準を変えないで、検出力を変えるという選択肢はやはりこれはまずいのでしょうか。


○山中構成員
 先ほどの申請書の計算を見ますと、検出力をかなり落とさないと、統計的にそれこそいいのかというレベルまで落とさないと、症例数が十分に減らないという事情もあるようです。なのでαとβのバランスとそれによって実現される症例数を総合的に勘案して、あとはそれが社会的に許されるかどうかを勘案して、決めればいいのではないかなとは思います。検出力を下げるということも選択肢の1つではもちろんありますが、だけど今の試験の総合的な背景、希少がんとか、薬のアベイラビリティーとか、患者さんが重篤とか、そういったことを鑑みて、βではなくαをいじって、総合的にその試験に整合性をもたせるということは、繰り返しにはなりますが私自身はあり得ると思います。


○山口座長
 私は素人ですけれども、何かちょっと聞いていると症例数が減ったら検出力は落ちるのは当然だと思うのです。それはやむを得ないのではないかと思うので、むしろそっちを下げるべきであって、何が有意かということを変えることのほうが、何かちょっと不思議に思うのですがいかがでしょうか。


○山本構成員
 統計の先生からは最近、特にアメリカの統計学会とかが、有意差は5%が有意というのは慣習にすぎないということは言われていて、それこそ希少疾病であれば、5%にこだわる必要はないというようなことは、昔からは言われていますし、今も言われているので、有意差というのは5%であるというのは、別にそれは慣習ですので、希少疾病のときにそれを検証的試験なので、できたら5%で出してくれるといいなとは思いますが、希少疾病のときにそれにこだわる必要はないという。だから、コミュニティーというか、その領域の中でこのぐらいの差が付けば、ある程度有望であるというふうに考えられるのであれば、10%にすることについては構わないのではないかなと思います。ただ、途中で変えているというので、みんなは引っかかっているのだと思うのですが。


○山口座長
 これは症例数が足りないので、有意差を出すためには、有意の水準が変わったほうがいいというように見えてしまうので。


○山本構成員
 だから検出力を10%にすることと、検出力を例えば55%に下げて、αのほうを5%にすることと、大した違いはないのですよ。つまり、5%を切ったとしても、ジャンケンぐらいの確率ですよねという話になってしまうので、それって、くじ引きを引いて、たまたま5%を切りましたという程度と同じことなですので、だったら検出力があって、10%にしても、そっちのほうがいい、どっちがいいかということは、それは全くはきり言ってイーブンだと思うので、検出力を下げたほうがいいという意見は特にないと思います。


○山中構成員
 先ほど来、本当に実施可能なのかと言われている症例数を、ある程度実現可能なものにするという観点からすると、検出力をものすごく下げざるを得ないと思うのです。しかし、検出力がものすごく下がる試験とは、要は結論が出ない確率が高い試験なので、かえって非倫理的です。それに対してαが許容されるレベルまで落とせるということであれば、そのαに対して高い検出力を維持することのほうが、すなわち、きちんとポジティブなものはポジティブと出せるように設計することのほうが、デザイン的な観点から申し上げると倫理的かと思います。


○山口座長
 なかなか結論が出ないのですが、どうぞ。


○上村構成員
 途中で5%だと、多分有意差は出ないので、10%に変えましょうというそういう話ですよね。それはやはり反則ではあるというふうに、多分認識はされていると思うのですが、結局、検出力を落としてしまうと、今、山中先生がおっしゃった通りで、それはそれでやはりとても問題だと思うのです。結局、結論が出ないということを分かっていてやっているというのは、患者さんにとっても、失礼かなと思うのです。なので、致し方ないかなと。これもそこの部分って、患者さんがもう結局こういう希少がんの試験でいないという、逆立ちしてももともと設定していた症例数が達しないということがもう分かっているのであれば、そこはもう目をつぶらざるを得ないのかなという気はします。

 ただし、そこについては、もともとあった仮説というのが5%でしかも片側でやろうということはあった上で、途中で変えましたということは、これはきちんとドキュメントに残していただかないと、そこを言わなかったら分からないので、それで更にそれをやってしまうと、5%で切っていないので、かなり検証しているレベルが下がってしまいますから、これを本当に検証試験として位置付けていいのかというのは、これはちょっと問題が残るのでしょうね。ですから、一応もともと検証しようということで始められているのですよね。

 なので、最後のコンクルージョンで、要するにピーバリューとしては10%以下で有意差はありましたと言いたいわけですよね。言っているのですが、なので、検証ができましたとまで言っていいのですかというのは、これはコントラバーシャルかなと思います。結局希少がんという臨床的には非常にアンメットなニーズがある中で、5%を絶対に達成しないと、臨床的な意味はないのですかとい話だと思うので、そこの議論というのをこの部会で、もし仮に10%を認めたとしても、それがイコールこれを検証試験として10%認めましたよということでは、多分ないということは確認しておく必要はあるのかなと思います。


○山口座長
 ありがとうございます。一色先生何か御意見はありますか。最後の御意見が一番妥当な感じだと思うのですが、いかがでしょうか。そういう注釈付きで申請者の通り、症例数を減らし、有意水準を上げるということでよろしいでしょうか。どうぞ。


○真田構成員
 私は結論に異論は全くないのですが、やはり完全に賛成していたわけではなかったという立場から、一言議事録に残しておいてほしいことがあります。今回のこの特異的な試験については、症例数は希少だからという理由や、薬剤の提供に対して症例数をなるだけ減らす必要があったという背景や、諸々の社会的なラインから認められたということだとは理解はしますが、やはりそもそもの設計された症例数と、今回の実情の症例数がかなり乖離しているというところは、プランとして問題があったというふうには言わざるを得ないと思います。そこはプロバビリティーを上げるために、そういう判断になったと思うのですが、今後、途中でやはりプロバビリティーを上げるために、こういうことを変更してよいというのが、先進医療の制度として普遍的に適用されるべきでは決してないということは、まずここで確認しておかないといけないのではないかと思います。

 あと、そういう試験を最初に審査する際に、統計的な堅牢性を、今まで非常に追求して議論がされてきたと思うのですが、これはいわゆるオーファンの疾患に対する試験デザインを立てるときにもよく議論になることですが、やはり症例数が少ないという事実を理解した上で、どういうふうなデザインやどういうふうな工夫をすれば、それを完遂できるのかというフレキシブルな臨床試験のデザインについても、やはりこのような場で議論をしていくというのは、今後は必要なのではないかというふうには思います。意見は以上です。


○山口座長
 はい、それでは今のは議事録として残すということでありがとうございました。では、続きまして協力医療機関の追加について、事務局から説明をお願いします。


○医政局研究開発振興課長補佐
 資料の4-1179ページを御覧ください。告示番号5965及び69の技術について、協力医療機関の追加申請がありました。資料4-2180ページから184ページを御覧ください。事務局において先進医療の実施可能とする保健医療機関の要件(様式第9号を満たしていること)を確認いたしました。協力医療機関の追加として御承認いただきたく存じます。特に御意見がなければ、手続きを進めさせていただきます。以上です。


○山口座長
 はい、ありがとうございました。では、次に先進医療B及び協力医療機関の取下げについて、事務局から説明をお願いします。


○医政局研究開発振興課長補佐
 資料5185ページを御覧ください。先進医療告示の取下げ申請が告示番号315及び323件、協力医療機関の取下げ申請が告示番号41件ございました。

 告示番号3の技術の取下げ理由は、予定症例数の主要・副次評価項目の解析を終了したためです。現在、総括報告書を作成中です。

 告示番号15の技術の取下げ理由は、予定症例数全てを満了し試験期間が終了したためです。こちらも現在、総括報告書の提出に向け準備中です。

 告示番号32の技術の取下げ理由を説明させていただきます。こちらは2018610日に独立モニタリング委員会が開催され、症例56に対する審議が行われ「当該先進医療で6例中4例が再手術(うち2例は人工弁に置換)になっており、死亡例は発生していないにしても、このままの継続は認められない。Normo弁の開発自体の中止が必要とまでは判断しないが、対象患者の見直しは必須であり、研究実施計画書の改訂が必要」との指摘を受け、特に「高齢再手術例」で重篤な有害事象発生が高率である(手術時間延長や心膜の質の不良が原因と考えられる)ため対象を高度変成例として初回手術例を含むようにし、年齢も60歳未満に下げることを核とした先進医療変更申請案を検討しましたが、高齢者を除外し初回手術例を対象に入れることで成績の改善が期待されることは、独立モニタリング委員会のコメントにもありますが、症例登録が3年間で6例、初回手術例は感染性心内膜炎の1例しかなかったことを勘案すると、このようなプロトコル変更による先進医療臨床試験の継続は困難・先進医療を取り下げる、との結論に至ったとのことです。

 なお、副次評価項目である術後60か月以内におけるイベント及び有害事象の発生の有無については、別途観察研究として継続し、その結果は先進医療技術審査部会に報告予定となっています。

 告示番号4の技術については、先進医療B試験の協力医療機関の取下げ申請がございました。こちらの取下げ理由は、実施者の退職により、先進医療実施可能とする保健医療機関の要件を満たさなくなったためです。特に御意見がなければ手続きを進めさせていただきます。以上です。


○山口座長
 よろしいでしょうか。では、本日の議題は以上です。構成員の皆さんは何か御意見はございませんでしょうか。ちょっと時間が過ぎて大変申し訳なかったのですが、次回の日程を事務局からお願いします。


○医政局研究開発振興課長補佐
 次回の日程ですが、516日木曜日、時間は16時から18時までの予定です。場所については別途御連絡をさせていただきます。また、本日の議事録については、作成次第、先生方に御確認をお願いし、その後、公開させていただきますので、併せてよろしくお願いいたします。以上です。


○山口座長
 本日は大変活発な御議論をありがとうございました。ちょっと遅れましたが、大変申し訳ございませんでした。それでは、第84回先進医療技術審査部会を終了いたします。ありがとうございました。

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 先進医療技術審査部会> 第84回先進医療技術審査部会(議事録)

ページの先頭へ戻る