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2018年4月6日 第3回循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループ

健康局がん・疾病対策課

○日時

平成30年4月6日(金)13:00から15:00


○場所

厚生労働省20階 共用第8会議室


○議事

○権がん・疾病対策課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより、第3回「循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループ」を開催いたします。構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます厚生労働省健康局がん・疾病対策課の権と申します。どうぞよろしくお願いいたします。なお、丹藤は公務により遅れて参加をさせていただく予定でございます。本日の出席状況ですが、全ての構成員の方に出席を頂いております。今回、参考人として、脳卒中分野の専門家で京都大学脳神経外科学講座教授の宮本享先生、呼吸器分野の専門家で霧ヶ丘つだ病院の津田徹先生に御出席いただいております。

 続きまして、資料の御確認をお願いいたします。議事次第、座席表、循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループ構成員名簿、資料1「循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方について()」、参考資料1「人生の最終段階における医療・ケアの普及・啓発の在り方に関する報告書(平成303月人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会)」、参考資料2「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)(抜粋)(日本循環器学会・日本心不全学会)」、参考資料3「第XV次生命倫理懇談会答申 超高齢社会と終末期医療(羽鳥構成員提出資料)」、参考資料4「パンフレット『終末期医療 アドバンス・ケアプランニング(ACP)から考える』(羽鳥構成員提出資料)」。また、構成員のお手元には、第1回、第2回ワーキンググループの資料を配布させていただいております。こちらは会議終了後、机の上に置いたまま、お持ち帰りになりませぬよう、よろしくお願いいたします。以上です。資料に不足、落丁等がございましたら事務局までお申し出ください。以上をもちましてカメラを収めていただきますよう、御協力のほど、よろしくお願いいたします。これからの進行は木原座長にお願いいたします。

○木原座長 それでは、議事に入らせていただきます。本ワーキンググループでは、昨年の11月の第1回ワーキンググループ以降、循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方について議論を行ってきたところです。本日は、これまでの議論を踏まえて、循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方について、とりまとめを行いたいと思います。また本日は、宮本先生、津田先生に参考人として御参画いただきまして本当にありがとうございます。御礼申し上げます。では、議題(1)「ワーキンググループとりまとめ案について」、資料1の説明を事務局からよろしくお願いいたします。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 事務局でございます。資料1を御覧ください。こちらは、第2回ワーキンググループにおきまして提示いたしましたとりまとめ骨子案をもとに、「循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方について」として、循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制の基本的な考え方を示す形で、ワーキンググループにおける議論を整理した資料です。とりまとめ案であり、説明が逐次的な説明となりますことを御了承ください。

 ページをおめくりいただき、内容の部分を御覧ください。全体の構成といたしまして、第1「はじめに」、第2「循環器疾患における緩和ケアについて」、第3「循環器疾患における緩和ケアのチーム体制について」、第4「緩和ケアにおける循環器疾患とがんとの共通点・相違点について」、第5「おわりに」としており、ワーキンググループの日程、議題を記載した議論の経過、開催要綱、構成員名簿を追記する形にしています。

 まず、1ページの第1「はじめに」です。こちらでは、主にワーキンググループ設置の背景と本とりまとめが、誰を対象にしたものなのかを記載する形としました。1段落目では、「がん対策基本法」における緩和ケアの定義の中で、緩和ケアが、がんに限られたものではないとされていることを記載しています。2段落目では、「がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会」において、循環器疾患等のがん以外の疾患に対する緩和ケアについてワーキンググループ等を設置し、検討すべきであるとされたことを記載しています。3段落目では、このような経緯から、検討会の下に本ワーキンググループが設置され、議論が開始されたことを記載しています。4段落目では、循環器疾患における緩和ケアのニーズの認識と正確な概念について、関係者間で十分に共有されていない現状の指摘があったことを記載しています。5段落目では、このような指摘も踏まえ、本とりまとめが患者やその家族、医療従事者、行政機関、関連団体等の循環器疾患の緩和ケアに関連する全ての関係者に向けたものであることを記載しています。

 次に、2ページの第2「循環器疾患における緩和ケアについて」です。まず、第21「緩和ケアの対象となる循環器疾患について(現状と課題)」ですが、1つ目と2つ目の○では、WHOからの定義や報告上、緩和ケアの対象疾患はがんに限定されるものではないことと、成人において緩和ケアを必要とする者の、疾患別割合の第1位は循環器疾患であり、循環器疾患の患者も緩和ケアを必要とされていることを記載しています。3つ目の○では、我が国における循環器疾患の現状として、心疾患は死因の第2位、脳血管疾患は第4位と循環器疾患は死因の上位を占めるものとなっていること、第2位の心疾患の中で、死因の第1位を占める心不全による死亡者数が増加傾向にあることを記載しています。4つ目の○では、この心不全とは何かの説明として、平成2910月に学会が国民に向けて発表した心不全の定義、「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」を記載しています。また、この中で心不全が様々な心血管疾患を原因としていることや、増悪と寛解を繰り返しながら進行していくことが示されていることも記載しています。5つ目の○では、我が国における心不全患者の現状として多くが75歳以上の高齢者であることや、このような高齢心不全患者の大半は心疾患以外の併存症を有すると言われていることを記載しています。

 また、心不全の主な治療目標は、3ページの図1に示されるような心不全の臨床経過を踏まえつつ、適切に設定される必要があり、状況によっては、心不全に対する治療と連携した緩和ケアも必要とされていることを記載しています。このような現状と課題を踏まえ、今後の取組に向けた考え方として、緩和ケアの対象となる主な循環器疾患として心不全を想定し、今後の取組を考える必要があると整理しています。

 次に、4ページの第22「循環器疾患患者の全人的な苦痛について」です。総論的な現状と課題として、がん患者と同様に、心不全患者の多くが身体的、精神心理的な苦痛や社会生活上の不安を抱えており、これらの苦痛や不安は、患者やその家族の社会的・文化的・時代的背景や死生観も含めた価値観等の観点も関連した、多面的・複合的な苦痛として存在していることを記載しています。

 今後の取組に向けた考え方として、このような心不全患者の多面的・複合的な苦痛を緩和するためには、患者の苦痛を多面的な観点を有する全人的な苦痛として捉え、患者やその家族の背景や価値観等の観点も踏まえた、全人的なケアとしての対応が必要であると整理しています。

 次に、ワーキンググループにおいて議論いただいた身体的、精神心理的、社会的な観点からの苦痛について記載しています。(1)身体的苦痛についてですが、現状と課題の1つ目と2つ目の○では、主要な身体的苦痛として呼吸困難、全身倦怠感、疼痛等があり、心不全に伴う変化そのものがこれらの苦痛の原因ともなり得ること。そのために、心不全患者の身体的苦痛を緩和するケアには、がん患者に対する緩和ケアで行われている薬物療法に加えて、心不全に対する治療として行われている薬物療法や非薬物療法が含まれることを記載しています。3つ目の○ですが、患者やその家族も高齢者であることが多い心不全患者では、外来診療や訪問診療において提供するケアは、可能な限り管理が簡便であることが望ましいが、身体的苦痛を緩和するケアには、侵襲性の程度や必要とされる専門的知識等により、外来診療や訪問診療では実施が困難で、入院による実施が必要となる場合が多いものも含まれることを記載しています。

 今後の取組に向けた考え方として、1つ目の○には、心不全患者の身体的苦痛を緩和するためには心不全そのものが身体的苦痛の原因ともなり得るため、心不全に対する治療を継続しつつ、緩和ケアを提供する必要があることを記載しています。2つ目の○で、患者に応じた適切な身体的苦痛を緩和するためのケアの提供には、心不全の重症度、併存症の状態、患者の価値観、必要とされる医療資源等を踏まえる必要があるとしています。5ページの3つ目の○には、留意事項として、がん患者に対する緩和ケアにおいて使用される薬物療法を心不全患者に対して使用する際には、がん患者との相違点に留意する必要があることを記載しており、具体的な例として医療用麻薬の投与量や、ステロイドに伴う副作用の心不全への悪影響等を記載しています。

 次に、(2)精神心理的苦痛についてですが、現状と課題として、1つ目の○では、心不全患者における精神心理的苦痛が、うつやせん妄、認知症に加えて、睡眠障害や植込み型除細動器や補助人工心臓等に関連した不安など、多岐にわたることを記載しています。また、認知機能障害を持つ患者については評価や対応が難しく、身体的苦痛等の軽減も困難な場合が多いことを記載しています。2つ目の○ですが、精神心理的な苦痛は、患者による心不全の自己管理を困難とし、心不全の増悪等ももたらすため、身体管理と連携したケアが必要であるが、このような統合的なケアを提供する体制や医療従事者等を教育・支援する体制は不足していることを記載しています。

 今後の取組に向けた考え方として、1つ目の○では、支持的なコミュニケーションを基本としながら良好な医師・患者関係を構築するなど、疾患の初期の段階から取り組むことや、日常診療の中で精神心理的苦痛の評価や対応が可能となるよう、知識や技術を確立し、教育や普及啓発を行うことの必要性を記載しています。2つ目の○では、身体管理と連携した精神心理的なケアには緩和ケアチーム、心不全多職種チーム、循環器疾患・緩和ケア・老人看護等に係る認定・専門看護師等が、精神心理面に関する知識を得た上で連携する重要性と、精神科専門医療を提供する医療従事者が、心不全に関わる医療従事者を教育・支援する体制の必要性を記載しています。

6ページの(3)社会的苦痛についてですが、現状と課題として、1つ目の○では、心不全患者は社会生活上の不安を有することもあるが、社会生活上の不安等について相談できる場所が少ないことと、患者やその家族が高齢であることも多く、情報を得る手段が少ないことを記載しています。2つ目から4つ目の○では、心不全患者の療養場所に関して記載しています。2つ目の○では、療養期間が長期にわたることが多く、適切な療養環境の設定が社会的苦痛の緩和にもつながり得るが、療養場所の選定における課題も存在することを記載しています。3つ目の○では、自宅等における療養の視点での訪問看護の活用について記載しており、介護度が比較的軽度の場合には訪問看護の導入がしにくいことや、日常生活における疾病管理の重要性が医療介護従事者に理解されていない等の課題もあり、訪問看護が有効に活用されていない場合もあることを記載しています。4つ目の○では、在宅療養が難しくなる者が一定数存在するが、このような方の中長期的な療養先の選定が困難な場合があることを記載しています。5つ目の○では、療養する場所が変わることや認知症等のため意思決定が困難となることがあり、患者やその家族の療養に対する考え方が共有されずに、意向を尊重した医療やケアの提供が難しくなることがあることを記載しています。

7ページの今後の取組に向けた考え方として、1つ目の○には、患者やその家族がアクセスしやすい相談の場を提供する必要があることを記載しており、地域包括支援センターや訪問看護等の在宅医療で支援に関わる専門職を活用して、身近な場所で相談できる体制の重要性を記載しています。併せて、患者やその家族等の当事者同士のコミュニケーションの場の重要性も記載しています。2つ目の○では、療養生活を長期に継続するためには地域全体で支えることが求められ、医療・介護・福祉で支える地域のネットワークづくりが必要であることを記載しています。また、この際には既存の制度の有効活用を図るとともに、制度の隙間に落ちてしまうことがないよう、連携して取り組んでいく必要性を記載しています。3つ目の○では、病気に関する情報の共有だけではなく、患者やその家族の療養に関する考え方といった情報も共有することが必要であることを記載しています。

 次は8ページ、第23「循環器疾患の臨床経過を踏まえた緩和ケアについて」の(1)心不全患者における緩和ケアのニーズの認識と概念の共有についてです。現状と課題として、緩和ケアのニーズの認識と正確な概念及び心不全の正確な理解は、関係者間で十分に共有されていないことを記載しています。今後の取組に向けた考え方ですが、1つ目の○には、緩和ケアのニーズの認識と正確な概念の共有に当たって重要な点を記載しており、がん以外も対象となり得ること、疾患の治療法がなくなった段階で切り替わって提供されるものではないこと、専門的な緩和ケアを提供する医療従事者のみが関与するものではないこと等を記載しています。2つ目の○には、心不全の正確な理解に当たって重要な点を記載しており、増悪と寛解を繰り返しながら徐々に悪化していくことや、必要とされる緩和ケアの内容等を記載しています。3つ目の○には、医療従事者等が、共通の認識を持つための観点で記載しており、緩和ケアや循環器疾患に関する研修や教育の機会、専門的な相談が可能な連携体制の必要性について記載しています。4つ目の○では、患者やその家族の観点で記載しており、医療従事者等からの正確な情報提供や、同じような立場の人とのコミュニケーションの場についての検討の必要性を記載しています。併せて、このような機会は継続的に提供される必要があることも記載しています。

 次に、(2)心不全患者の臨床経過に伴う課題についてです。現状と課題として、1つ目の○ですが、心不全は、増悪と寛解を繰り返しながら徐々に悪化していくことが特徴であり、苦痛が長期に及ぶことが多いことを記載しています。9ページの2つ目の○では、増悪時には症状改善のために侵襲性の高い治療を含む専門的な治療が必要とされ、そのため、心不全では、その終末期でも侵襲性の高い治療が選択されることもあることを記載しています。3つ目の○では、重症度が進行した心不全患者や高齢心不全患者では、複数の併存症を有していることが多く、また、これらの併存症が心不全の悪化の誘引となり得ることを記載しています。また、このような高齢心不全患者等に対して、侵襲性の高い治療をどこまで提供するべきかについては、明確な基準がなく、認知症等のため患者の意向を反映することが難しい場合もあることを記載しています。4つ目の○ですが、心不全症状の寛解後は、日常生活における管理が重要であるが、症状が寛解しているため、患者は日常生活における管理が不要と誤解してしまうこともあることを記載しています。

 今後の取組に向けた考え方として、1つ目と2つ目の○では、心不全の管理と緩和ケアについて記載しており、疾患特性を踏まえれば、心不全の管理全体の流れの中で緩和ケアがどうあるべきかを検討する必要性と、併存症を有する場合には心不全の管理、緩和ケア、併存症を含めた全身管理をバランスよく行っていく必要性を記載しています。3つ目の○ですが、個別性が高い高齢心不全患者等については、疾患の属性や状態、患者の意向や価値観等を十分に共有し理解する重要性を記載しています。また、高齢心不全患者等に対する、状態に応じた適切な治療の範囲について、専門家の意見をまとめた提言等の作成の検討についても記載しています。4つ目の○では、患者の自己管理をサポートすることの重要性や、自己管理のサポートが患者の苦痛の除去にもつながり得ることを記載しています。

10ページ、第2の最後、(3)多職種連携及び地域連携による心不全患者管理の一環としての緩和ケアについてです。現状と課題として、1つ目の○では、緩和ケアの提供においては、専門的な医療から総合的な医療まで含めた多職種が連携しながら、医療従事者同士が互いに相談できるチーム体制が必要であるが、循環器疾患の専門的知識を有する看護師等の人材については、十分整備されているとは言えない現状を記載しています。2つ目の○には、心不全は増悪と寛解を繰り返すため、緩和ケアを提供する医療機関においては、循環器疾患の急性期診療を提供している地域の病院との連携が求められることを記載しています。3つ目の○には、心不全患者は高齢化が進んでおり、様々な合併症を有することから、専門性の高い看護師等の訪問診療への同行や、各疾病に対する専門的な医療を提供している医療機関との連携等を通じた、多職種による対応が求められることを記載しています。

 今後の取組に向けた考え方として、1つ目の○では、多職種連携において、包括的かつ継続的な管理・指導のため、地域のかかりつけ医、看護師等が中心的な役割を担う必要があることと、人材育成について、学会等の関連団体が連携して取り組む必要があることを記載しています。2つ目の○ですが、循環器疾患では、中小病院や診療所等の地域が主体となって診療を行っていることから、緩和ケアの提供においても地域が中心的な役割を担う可能性があることと、地域の基幹病院が、かかりつけ医等と連携することの重要性を記載しています。3つ目の○では、高齢者が多いという視点から、外来診療や訪問診療を核とした、地域におけるケアの提供が重要であることを記載しています。また、そのために、ケアに関連する職種への教育、在宅医療における特定行為研修修了者の活用、専門的な判断が必要な際のコンサルト体制、地域特性に応じた地域包括ケアシステムの構築など、地域におけるケアを充実させていくための施策について、行政機関と関連団体等が連携して検討していく必要性を記載しています。

11ページ、第24「心不全患者の臨床経過及び提供されるケアのイメージについて」です。こちらでは、第2「循環器疾患における緩和ケアについて」の部分でこれまで記載してきた内容を受けて、1つ目の○に記載のように、心不全の治療と並行した緩和ケア、専門的な緩和ケアを提供する医療従事者以外も関与した緩和ケア、疾患の状態や患者の価値観等の共有、多職種連携及び地域連携の観点を踏まえた、心不全患者の臨床経過及び提供されるケアのイメージを図2として示し、2つ目の○に記載のように、心不全患者には個々の患者の全体像を踏まえた上で、支持的なコミュニケーションによる意思決定支援を通じた、適切なケアが提供される必要があり、心不全患者に対する緩和ケアは、地域において多職種が連携して行う心不全患者の管理全体の流れの中で、提供される必要があると整理しています。

 この図2のイメージですが、最上段に緑で記載しているように、心不全は増悪と寛解を繰り返しながら徐々に身体機能が低下し、ガイドラインで示されているような心不全の重症度が進行していく経過をたどります。この経過に伴い、中段に赤で記載しているように、苦痛の程度も増大していきます。しかしながら、この苦痛の程度は緑で記載している身体機能の低下のミラーイメージではなく、様々な側面を有した全人的な苦痛として、身体機能の低下の程度から想定されるよりも、程度の大きい苦痛として存在しているイメージで記載しています。このような苦痛を除去するためには、下段に青色で記載している原疾患の治療を目的とした従来のケアとともに、オレンジ色で記載している苦痛の緩和により、療養生活の質の維持・向上を図ることを目的としている緩和ケアが、ともに必要とされるイメージで記載しています。併せて、これらの必要とされるケアの強度は、心不全の重症度が進行するにつれ、ともに大きくなるイメージを記載しています。また、ステージDとして記載している治療抵抗性心不全に移行した場合には、緩和ケアを中心としたプランを考慮する状況も生じてきますが、このような場合でも疾患特性から、青色で記載している原疾患の治療を目的とした従来のケアも継続する必要があることも、イメージとして提示しています。

○権がん・疾病対策課長補佐 第3以降については、事務局の権から説明させていただきます。12ページ、第3です。「循環器疾患における緩和ケアのチーム体制について」の1基本的な方向性について、(現状と課題)です。1つ目の○として、緩和ケアは、全人的なケアが必要であることから、多職種が互いの役割や専門性を理解した上で、協働することが可能な体制を整備する必要があると記載しています。2つ目の○として、がんにおける緩和ケアチームでは、患者の全人的な苦痛を包括的に評価し、身体症状や精神症状の緩和に関する専門家と協力する体制が必要と記載しています。3つ目の○として、循環器疾患の再発予防・再入院予防には、日常生活一般、運動、危険因子の管理など、多岐にわたることから、疾病管理には医師、看護師、薬剤師、理学療法士、栄養士、医療ソーシャルワーカー、保健師等の多職種の連携が必要であることを記載しています。4つ目の○ですが、こちらはページをおめくりいただいて図3と併せて御覧ください。図3は、平成26年医療施設調査の調査票情報、平成26年患者調査、日本循環器学会ホームページを基に、がん疾病対策課で作成した図です。図では、緩和ケアチームを有する992施設のうち、循環器研修施設である施設は729施設(73.5)であることを示しています。また、図3の下段に示すように、緩和ケアチームを有する施設のうち、循環器内科又は心臓血管外科を標ぼうしている施設数は、300床以上の病院では95.5%、300床未満の病院では74.8%です。また、緩和ケアチームを有する施設のうち、循環器研修施設である施設数は300床以上の病院では87.7%、300床未満の病院では37.1%と、大病院に多く中小病院において少ない傾向がございます。

 このような背景を踏まえまして、今後の取組に向けた考え方ですが、1つ目の○として、心不全患者への緩和ケアの提供においては、まずは既存の緩和ケアチームと心不全多職種チームが連携し、心不全多職種緩和ケアチームとして協働することが考えられると記載しています。2つ目の○では、循環器疾患の緩和ケアは心不全多職種緩和ケアチームとして行うことと、多職種カンファレンス等を持って問題点を討議し、解決を図る必要性を記載しています。3つ目の○として、このような連携体制においては、同一医療機関内に緩和ケアチームと心不全多職種チームがある場合と、ない場合に大別されると記載しています。また、医療資源の実情は地域によって異なることから、心不全多職種緩和ケアチームについては、地域の実情に応じて、柔軟に設定される必要があるとしています。4つ目の○としては、そのようなチームが日常管理を行っているかかりつけ医等の医療機関においても、患者の苦痛を適切に軽減できるよう、サポートできる体制の整備も必要であるとしています。

 ページをおめくりいただき、2「循環器疾患における緩和ケアのチーム体制のイメージについて」です。こちらは同ページ内にある図4と併せて御覧ください。図4の左側に示されるように、同一医療機関内に緩和ケアチームと心不全多職種チームがあるケースでは、それらのチームの院内連携に加えて、かかりつけ医等の地域の医療機関と連携することで心不全患者とその家族に緩和ケアを提供することが想定されます。また、右側に示されますように、同一医療機関内に緩和ケアチームと心不全多職種チームがないケースでは、これらのチームが病院間で連携し、そこに地域の医療機関が更に連携して心不全患者とその家族に緩和ケアを提供することが想定されます。このような連携を踏まえ、情報の共有に基づいて管理方針を決定し、患者やその家族の状況に応じた多職種介入が求められると記載しています。このような緩和ケアチームの体制について、地域における具体的な取組例を図5から図8に記載しています。

 ページをおめくりいただき、図5は国立循環器病研究センターにおける取組です。こちらは、国内で先駆的に進められてきた取組例が実情を交えて記載されているところです。図6は兵庫県立姫路循環器病研究センターにおける取組です。こちらは主治医団を多職種で支援する体制を構築し、緩和ケアを提供している例です。図5、図6はいずれも循環器病の専門病院の例です。

 ページをおめくりいただき、図7は久留米大学における取組です。こちらは心不全支援チームによる心不全治療と緩和ケアのシームレスな提供について、入院中だけでなく、外来、地域連携等の内容も交じえて紹介している例です。図8は飯塚病院の取組です。飯塚病院では、循環器内科、緩和ケア科、総合診療科からなるハートサポートチームが地域にも医師を派遣することで、飯塚病院退院後も継続した心不全緩和ケアを提供する体制を構築している例です。

 ページをおめくりいただき、第4「緩和ケアにおける循環器疾患とがんとの共通点・相違点について」です。1つ目の○として、循環器疾患とがんは、ともに生命を脅かす疾患であり、病気の進行とともに全人的な苦痛が増悪することから、疾患の初期の段階から継続した緩和ケアが必要であることを記載しています。また、全人的なケアを行うためには、地域で多職種が連携して支援を行う必要があり、そのような支援を行うに当たっては、表1に示す循環器疾患(心不全)と、がんとの主な共通点・相違点を理解することが必要であると記載しています。表1では、これまで議論されてきた内容を中心にまとめています。

 ページをおめくりいただき、2つ目の○です。こちらはページ内の図9とともに御覧ください。図9に示しますように、がんでは比較的長い間、身体機能は保たれ、最後の2か月ぐらいで急速に身体機能が低下するとされています。一方、循環器疾患や慢性閉塞性肺疾患(COPD)等の臓器不全では、増悪と寛解を繰り返しながら、徐々に身体機能が悪化するとされています。その中には、右側の図、下の線で示されますように、急速に身体機能の悪化を伴う場合もあります。ここでは、例として重度の神経症状が残存した脳卒中等を記載しているところです。このように心不全は、がんとは異なる疾病経過をたどる臓器不全の代表的な疾患です。このような疾患特性を踏まえた緩和ケアにおける循環器疾患(心不全)と、がんとの主な共通点・相違点は、慢性閉塞性肺疾患や心不全以外の循環器疾患、つまり脳卒中等の非がん疾患患者に対して、疾患特性に応じた緩和ケアを提供する上でも参考にできると考えられると記載しています。

 ページをおめくりいただき、第5「おわりに」です。これまで心不全を中心に循環器疾患患者の緩和ケアの提供体制について議論を進めてまいりました。この議論の内容が循環器疾患を含む非がん疾患患者に対し、今後、緩和ケアを提供する上で活用されることへの期待として記載しているところです。

 以降のページですが、おめくりいただき、これまでの議論の経過、ページをおめくりいただき、本ワーキンググループ開催要綱、ページをおめくりいただき、構成員名簿を掲載しています。事務局からは以上です。

○木原座長 どうもありがとうございました。少し長い説明でありましたので、同じような内容も繰り返して出てきているところもあり、整理が必要かと思います。今の事務局の説明を踏まえ、資料1の内容について項目ごとにディスカッションしてまいりたいと思います。それぞれの項目に関して議論をすべき点があればして、最後に循環器疾患の緩和ケア全体に対して追加するべき点があれば、それについても検討をしたいと思っております。では項目立てでは、第2の「循環器疾患における緩和ケアについて」の1「緩和ケアの対象となる循環器疾患について」という記載です。ここに関して追加するべき議論がありましたらお願いします。こちらについては、議論の背景となる内容ですので大きな異論はないかと思いますが、聞いてみます。いかがですか。

 緩和ケアという立場から見て、循環器疾患、とりわけ心不全がどういう位置付けであるかに関して、5つの定義をしていただいたということです。がんだけではない、非がんという領域があると。それから、循環器疾患は、国民にとって大きな脅威であるということです。死因という意味でも非常に大きく、高齢化という状況の中で、更に大きな位置を占めつつある疾患群であるということです。心不全が分かりやすい言葉で定義されて、その中で主な対象が、75歳以上の後期高齢者で、様々な併存症を持つ患者さんたちであるということです。そういうことから、心不全を代表として取り上げ議論することが適当ではないかということが、「今後の取組」でまとめてあるという経緯です。

 特に御意見がなければ、続いて第22「循環器疾患の全人的な苦痛について」で、ディスカッションをお願いします。4ページからですが、追加すべき議論がありましたら、お願いします。

○羽鳥構成員 5ページ目の○ですが、がん患者の身体的苦痛に関する緩和ケアについて、薬物療法の麻薬の適切な投与量のガイドライン作成を含めて、がんでの使用量と循環器における使用量の差について各学会からこういう量の薬が必要である、例えばオピオイドにしても麻薬にしても、常用量の半量、4分の1量などが適用として認められないことにつきまして今後どうしていけばよいのか御示唆を頂ければということで、学会の方と厚生労働省の方にお伺いします。

 というのは、参考資料2114ページの4.2に出ております末期心不全の疼痛に関する治療ということで、「非麻薬性鎮痛薬はアセトアミノフェンが推奨され、疼痛のコントロールが困難な場合にはオピオイドの追加投与が考慮される」と、この1行だけですので、もし麻薬を使うことも考慮していかなければいけないとするならば、何らかの対応は必要だと思います。

○木原座長 安斉構成員、お願いします。

○安斉構成員 この学会のガイドラインですが、緩和ケアは実は私が記載したのですが、オピオイド、麻薬が保険適用には心不全ではなっていないので、どうしても踏み込んだ記載ができなかったのです。用量に関しても、保険適用でないからには細かくは書けないということです。ただ、NSAIDsがいけないことは十分知っていただきたいということで、その記載一文は加えたのです。今、海外でもここまで各症状に対して対処法を書いているガイドラインはないのですが、日本は割と先駆的に、先に進んでいる状況ではないかと思うのです。これ以上我々の立場からなかなか難しいので、まず保険適用等を通していただければと思います。

○木原座長 オピオイドが例外的に必要ということではないという理解でよろしいですか。

○安斉構成員 もちろん使うべきだということでいいと思うのです。

○木原座長 だから、緩和という考えの中で非がん領域、とりわけ心不全では、オピオイドの使用がより広範に行われる可能性がある。ただし、薬物の投与量等に関しては慎重な議論が今後必要であるということでよろしいですか。

○安斉構成員 はい、おっしゃるとおりです。

○木原座長 羽鳥構成員、それを文言として追加をしたほうがよろしいですか。

○羽鳥構成員 まず1つは、適用がないと現場の先生方は診療報酬請求が出来ないので、無理やり病名を付けざるを得ないというのもあります。量についても御検討いただけたらと思うのです。そこまで踏み込んで書いていただけると有り難いと思います。

○木原座長 ありがとうございます。貴重な御意見だと思います。津田参考人、お願いします。

○津田参考人 参考人として参りました。よろしくお願いします。モルヒネは呼吸困難で使われることが多いと思われます。例えば、COPDで言えば、1日当たり20mg以下の量であれば、どちらかというとベンゾジアゼピン系よりも安全であるというデータも出ていますので、もしこれから先いろいろなほかの病気、非がん性の疾患について検討いただけるのでしたら、是非この辺のところは強く入れていただければ有り難いと思います。神経難病のほうでは通達でモルヒネが使えるようになっております。今使われるのは、COPDでは鎮咳剤としての使い方しかできませんので、かなり使用範囲が狭まれてまいります。よろしくお願いいたします。

○木原座長 ありがとうございます。では、そういうことの違いや保険適用に関しても盛り込むということですか、少し言い過ぎかもしれません。

○佐々木がん・疾患対策課長 今の羽鳥構成員、また安斉構成員、津田参考人の御意見を伺いながら思ったのですが、ニーズがあるから、そのための薬事承認、保険適用、だけれども、今のからすると保険適用がないから、本当はニーズがあるのだけれども使えていない。ということからすると、薬事承認にしても保険適用にしても、ちゃんとその症例の積み重ねの上で本来されるべきところなので、どちらが先か論で言うと、書くこともまた必要なのかもしれませんが、それに向けたデータの蓄積も並行して行う必要があると思いますので、そういったことも踏まえて、どういう書き方をするかは、また後で座長と相談しようと思います。

○木原座長 ありがとうございます。今の問題はよろしいですか。

○津田参考人 はい。

○安斉構成員 資料115ページの図6ですが、兵庫県の姫路循環器病センターの大石先生がかなり積極的にオピオイドを使っていらっしゃいまして、オピオイド使用の頻度に関しても、緩和ケアチームを立ち上げてからは、立ち上げ前が40%未満だったのが、今は71%使用されていて、実際にそれが有効に作用しているというデータは蓄積されつつあります。こういったことは学会等でもかなり発表されていますので、学会からは提言という形で、治療抵抗性の呼吸困難に対してオピオイドを勧めたいところです。

○木原座長 佐々木課長の御意見は、臨床試験に準じたデータが必要だということですか。

○佐々木がん・疾患対策課長 どの場合にどのぐらいのエビデンスが必要かはすぐに、このケースだったらこうしてというのは手元にはないのですが、いずれにせよ、それの有効性があるから初めて通るものなので、私の発言はもう少し定性的な意味での発言だったわけです。

○木原座長 ありがとうございます。今の問題はよろしいですか。そういう形で書きようの工夫を少しできればと思います。ほかに御意見は。

○平原構成員 今のオピオイドの件も、私もモルヒネやオキシコドンなしには心不全の緩和ケアは、実際やっている者としては不可能だと思っているので、是非それはお願いしたいと思います。

 加えまして、4ページの身体的苦痛についての3つ目の○で、「心不全患者は高齢者が多く、可能な限り管理が簡便であることが望ましいが」、文章が続いて、「入院による実施が必要となる場合が多いものも含まれる」と。文章的に「入院による実施が必要となる場合も少なくない」とか何か、そのほうがよろしいのではないかと思いました。

 それで、ここで肝となるのは、がんによるホスピストライアングルのような、専門医と緩和ケア医と地域の一般医の連携がすごく大事だということをこの文章から導き出さなければいけないわけですので、その文章がどこに書けばいいのかはありますが、「身体的苦痛」の後の「今後に向けての取組」の所なのか、身体・精神のこと、社会的な問題が終わった最後の「今後に向けての取組」の所なのか、それが肝であることの一文がないと、後ろのいろいろな提言につながっていかないのではないかと思いました。それが1点です。後はまた別の項目なので、後で述べさせていただきます。

○木原座長 ありがとうございます。今の平原構成員の御意見についていかがですか。これは要点の1つだと思います。心不全における苦痛を除くためには、緩和だけではなくて、原疾患に対する治療が極めて大事だと。原疾患に対しての治療の継続を、どうやって終末期に形づくるかと言えば、在宅とか、そういう所での構成を考えれば、地域における多職種の協働がないと、身体的な苦痛に対する継続的な管理ができない。そこを明確に書いてほしい、そういう御意見です。井上構成員におかれましては、患者代表の立場として、今、私どもがやろうとしているチームや在宅とか、治療の継続に対しての考え方として、それは御納得いただける内容でしょうか。

○井上構成員 2ページでしょうか、少し前後しますが、2002年にWHOは緩和ケアについて、その定義を示しています。しかし、当事者になってみないと、きちんと受け止めることがなかなかできないで現在に至っておりました。具体的に様々な状況が議論の中で示され、それぞれ、なるほどと思いながら先生方のご議論をお伺いしておりました。

○木原座長 ありがとうございます。これは何か感覚として違うということは、取りあえずはないと理解してよろしいですか。

○井上構成員 はい、これまでの資料では、ご議論のプロセスを大変丁寧にまとめていただいていると思います。ありがとうございます。

○木原座長 ありがとうございます。

○川本構成員 前回お願いしておりましたスピリチュアルなことを表現させていただきたいということで、全人的な苦痛の所で発言させていただいたのですが、今回、そのことを踏まえて非常に柔らかく、また端的に表現していただき、まずお礼を申し上げます。そして、今後の取組に向けたところですが、本日の参考資料にも医師会からも提出されておりますように、ACPのことがやはり重要な意味を持ってくるかと思いますので、今後の取組の中で表現すべきことは重要かと思います。以上です。

○木原座長 ありがとうございます。確かにACPに言及した部分は、これ自体にはないのですね。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 事務局です。ACPについては、各個別の全人的苦痛を全て踏まえた第2の最後の部分で、11ページを御覧ください。第2のとりまとめ的な部分の2つ目の○に示しておりますような「支持的なコミュニケーションによる意思決定支援を通じた」という形で示させていただいたところで、この議論に関しては、注釈8で記載しておりますように、前回のワーキングでも来ていただきました医政局において議論が行われた形を記載することで、こちらの循環器疾患としての視点と、いわゆる全体的な医政局の議論を共に合わせて考えていくようなイメージで構成しているところです。

○川本構成員 ありがとうございました。

○木原座長 ここでのACPの捉え方というのは、意思決定支援としての書きぶりですが、いろいろな意味でスピリチュアルペインだけではなくてトータルペインという言い方ですが、様々な患者さんに苦痛があって、様々な苦痛の総体としては、疾患の始まりから大なり小なりあるという考え方です。図2の一番下の黄色い所が緩和ケアを必要とする部分ですが、一番左端の病気のスタートの所から、少なからずこの緩和部分が入ってくるということです。そうすると、患者のトータルペインは、病気の初めからあるという考えの下に、患者の意思決定支援をしていくと。その中にスピリチュアルペインとか、社会的に置かれているところから発生するペインとか、いろいろなものが入るという考え方を我々は取っていると思いますが、その辺りの書きぶりでいかがですか。よろしいですか。ありがとうございます。

○佐々木がん・疾患対策課長 多少補足的に、釈迦に説法的に申し上げますと、参考資料112ページを御覧ください。参考資料112ページに、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改訂ということで、2)改訂概要の➁を御覧ください。先ほど川本構成員から御指摘いただいたACPの記載がここにありますが、木原座長からも、診断は早期からというのと、もう1つ大事なものとして➁に記載しております。つまり、早期から緩和ケアに取り組むのだけれども、意思決定をすることについては、状態の変化に応じて、本人の意思の変化もし得るものなのだ、ですので、それに応じてACPについて、繰り返し話し合うことが大事なのだということもありますので、このことも併せて御紹介をさせていただきたいと思います。

○木原座長 ありがとうございます。予測がつかない経過をたどっていくことが、心不全の「徐々に悪くなる方向に向かう」という言葉で表現されているところですが、その中で患者さんのお気持ちとかいろいろなことも刻々変わっていくことを容認しながらのACPであり、ここであなたはこう言ったから、もうこれよねということではないと。繰り返して変化を許容していくというようなスタンスが必要だということを今、追加していただいたのだと思っております。ほかにお気付きのポイントはありませんか。山田構成員、よろしいですか。

○山田構成員 はい。

○木原座長 ほかにないようでありましたら、次のポイントに進ませていただきます。それでは、第23「循環器疾患の臨床経過を踏まえた緩和ケアについて」です。これは8ページからですが、ここに関して追加すべき議論がありましたらお願いします。こちらについては、第2回で提示した内容を報告書としてまとめて記載しております。池永構成員、お願いします。

○池永構成員 ここの8ページの「今後の取組に向けた考え方」の○の3つ目ですが、ここで研修や教育の機会が出ております。がんでもそうですが、ポイントは、先ほどもありましたが、医療用麻薬の適切な使用ということで、具体的に今後の取組の目標にも加えて、医療用麻薬の適切な使用についての研修や教育の機会の提供であることと、もう1つは、がんでもこれもそうですが、どのような現場においても使えるようにしていく体制づくり。例えば、麻薬が処方されているために受け入れてもらえない施設や診療所がないようにしていくこと、そういうことも少し教育の目標として強調した形で入れていただければどうかと考えております。以上です。

○木原座長 今の池永構成員の御意見に関して、いかがですか。教育の内容に関して、踏み込んだ記載を求められたと思います。もう1つは、研修や教育をどう実施していくかという問題があって、既にがんの領域では、様々な教育の体系が作られているわけですが、非がん領域の教育のあり方については御意見はありますか。一緒にやっていくのは安上がりであり、体系的にも美しいと思います。一方、別個にやらないと駄目だという意見もあるかとは思うのですが、その辺り構成員の方々の御意見があればと思います。いかがですか。余りそういうところまで踏み込む必要がないのではないかというのも、ひとつの御意見です。

○平原構成員 学会のレベルで申し上げますと、在宅医学会で、主に非がんや難病や認知症も含めた非がん疾患を中心としたコーディネーター研修をしております。また、これはACPと絡めた研修です。あと、エンドオブライフ・ケア学会でも、非がん疾患を横断的に学ぶという研修会を昨年からしており、それとは別にまたACPと研修をしております。恐らく非がんの場合は、メディカル、テクニカルの研修と意思決定支援とを絡めた研修プログラムを作っていくことが必要なのだろうということで、今、合わせたプログラムを作ろうということで取り組んでいるところです。

○木原座長 ありがとうございます。では、がん緩和ケアの教育を受けておられる方たちにも、非がん部分を追加していただきたいということでよろしいですか。

○久保田がん・疾患対策課長補佐 事務局です。平成30年度41日より、緩和ケア研修会において、がん以外の緩和ケアという項目が入ってきましたので、是非、こちらの中に非がんの領域についても、基本的な緩和ケアという分野においては、この中で学んでいただくという方向性でもよいのかと考えてはおります。

○木原座長 基本的にはがん教育と非がん教育のごとく、緩和に2つコースがあると考えるのではなく、今までの教育の中に非がん部分も入って、がん教育を受けておられた方々も、非がん領域に関してちゃんとした教育課程を受けていただくと、そういう考え方ですが、よろしいですか。

○安斉構成員 以前、木澤先生がおっしゃっていた、大学医学部教育の中に緩和医療学を組み込むという話がどうも進みそうだと聞いたのですが、それはいかがなのでしょうか、文科省のほうの問題かもしれませんが。

○佐々木がん・疾患対策課長 文部科学省が昨年3月にとりまとめた医学教育モデル・コア・カリキュラムは、この1年間、82の大学が自分の大学ではどういうカリキュラムにするかを検討したと思いますが、昨年3月のモデル・コア・カリキュラムの段階では、緩和ケア、また緩和医療について、相当踏み込んだ記述があったところです。恐らくこの4月からの各大学での新カリキュラムなので、文部科学省もまだ、では実際どのような、例えば教え方、講座の設置状況までは把握していないとは思いますが、少なくとも大きな方向性としては、安斉構成員が御指摘の方向で進んでいるものと承知しております。

○木原座長 ありがとうございました。

○山田構成員 がんというのは疾患であって、慢性心不全というのは状態だとよく言われますが、研修とか教育のあり方は皆さんの御議論のとおりだと思うのですが、一方で、私たちも臨床の中でよく経験するのが、骨折で来られた後期高齢者の方が突然リハビリをしている途中で、何となくしんどくて息切れがすると言っていたら、BNPがボンと上がっていたというような事例です。この患者さんは全く心疾患の既往もない、高血圧もない、血管系の既往歴がないので、何でこの人がというように、臨床の人たちは経験がないとびっくりすることがあります。ということは、非がん患者というのは多くが、慢性心不全、慢性呼吸不全、慢性腎不全というように、ある意味すごく状態を示すものであり、基礎疾患と言うか持っている病気というのが本当にまちまちです。

 その点から考えると、医療者全員が緩和についてはいろいろな形で学ぶ場が必要なのではないか。その辺のところをどのように組み込んでいくかというのが、今までやってきたがんの緩和ケアというところの視点とは少し違う面もあるのかなというように感じています。

○木原座長 そのとおりでありまして、これまでの医学教育では、緩和のように、まっしぐらに走るだけではなく、撤退について考えるとか、着地点を見つけるとか、そういうことについての教育がウエイトを占めてこなかったという事実がございます。そこのところはこれからの教育の中に組み入れていっていただきたいというのは、このワーキングのメッセージの1つではないかなと思います。

○池永構成員 私自身はがんを専門にはしていますが、やはり非がんの緩和ケアというのは、何と言いますか、もっとベースに大切なものとして横たわっているような気がして、がんが基本で非がんが特別ではなくて、非がんがベースであって、そこにがんという特殊性があって緩和ケアは進んできましたが、そうした意味で言うと、全ての医療従事者が学ぶべき教育、研修という位置付けで提案するほうがいいのではないか。その中にACPであり、症状緩和であり、意思決定支援というような形に提言するのがいいのではないかと私は思っております。

○木原座長 私は今の池永構成員の意見に全面賛成です。がんが主な対象としてスタートしたという緩和の歴史に引きずられている部分は確かにあるのですが、構造から考えると、非がん領域がよりファンダメンタルな役割を果たしている。特に、高齢化を迎えた我々の社会の中では、考え方としても大きな部分を占めていると思っております。

○平原構成員 今の御意見に全く同感です。私が「非がん」と言い始めたのは、当時、がんが緩和ケアのモデルとしてあったので、こちらも注目していかなければいけないという意味で言ったのですが、最終的には「非がん」という言葉がなくなるほうがいいのだろうなと思っておりまして、緩和ケア全般の教育が進んでいくことを望んでいます。

 別の切り口で、1点だけ御意見を申し上げます。1つは、連携のモデルについてのことです。後ろで4つのモデルを見せていただきました。在宅の立場から言いますと、心不全の重度の方はだんだん通えなくなるわけで、そのときに病院に通院が困難になった時点でも、やはり適切な医療が提供されなければいけないわけですが、この中で在宅が少しあるのは、飯塚病院のほうで、人事交流あるいは勉強会を通じて継続的な緩和ケアを実践ということで医師を派遣してという形のものです。うちも、実はそのような感じではあるのですが、たまたまそこに医師が派遣されていたから成立するようなシステムでしかないと、どこの地域でも普及するようなモデルにはならないわけです。海外のように、緩和ケアの医師や循環器の病院の先生が院外に出ていくということが制度的にも難しい状況にありますので、実際に日本の現場においてどのようなことがイメージできるのかということをきちんと考えておかないといけないのかなと思います。

 こういう地域の病院の先生に来てもらうということもあるでしょうし、あとは制度的には、今年度から複数医療機関が行う訪問診療の評価などもされていますので、在宅医療の分野で循環器の先生がいらっしゃる所と、一般在宅とが連携するとか、もう少し多様なモデル提示があったほうが、恐らく地域の資源が様々ですので、連携の形も様々ですので、少し病院から出ていかないと地域まで緩和ケアが行き届かないということではなくて、違ったモデルも必要かなと。

 がんのほうでも、親会議でも緩和ケアチームが地域に出ていくという議論もあったと思うのですが、なかなかそれを実現するのはハードルが高くて、より地域の中でがんの緩和ケアをやっている医療機関と一般在宅が連携してというような話もありましたが、それと同じようなモデルというのも提示できればいいのかなと思いました。

○木原座長 この点は、第3の部分で議論をさせていただいてもよろしいですか。在宅と基幹病院との連携は、とても大きなテーマだと思っております。ほかには構成員の先生方から御意見はないでしょうか。参考人の先生方からはいかがでしょうか。

○津田参考人 緩和ケアチームの体制に関してです。循環器の部分でも、大きな病院では緩和ケアチームも循環器科もありますが、小さな病院になってくるとなかなかそれができないというのもありますし、特に呼吸器疾患では大学病院だとか大きな病院では、どちらかと言うと肺がんの治療などが先行して、COPDなどの非がん性の呼吸器疾患を診る機会が少ないという場合もありますので、是非地域の連携体制を密にした上で、緩和ケアチームと連携してというところを強調していただければ有り難いと思います。

 この前、緩和医療学会で私が講演させていただいたときも、今までがんをやられていた方から、「私たちが是非協力するから」と、すごく力強いお言葉を頂きましたので、本当にそういったいい意味の地域の緩和ケアチームが非がんの部分でできれば有り難いと思っております。

○木原座長 御意見がなければ、前へ進めさせていただきます。それでは、第24です。「心不全患者の臨床経過及び提供されるケアのイメージについて」です。追加すべき議論がありましたら、お願いいたします。この点は図2に集約されたところがありますので、図2に関しても意見があれば、お願いいたします。

○平原構成員 素晴らしい図だと思いますが、1点だけ意思決定支援の所で申し上げますと、御本人の意思をなるべく早くからというところで、しかも急性期にやるものではなくて落ち着いたところからということがあります。恐らく第1回目の心不全発作を起こした後が、最初の意思決定支援のスタートすべきところで、我々は「緩和ケアのトリガー」と言っておりまして、そこだと思っております。したがって、下から2段目の上にある「支持的なコミュニケーションによる継続的な意思決定支援」というのは、もう少し前の所にあるのがイメージなのかなと思いました。もちろん意思は変わっていくわけですが、話合いを積み重ねていく最初のトリガーがもう少し前のほうがいいのかなという、少し細かいところで恐縮です。

○木原座長 どこを変えたらよろしいですか。

○平原構成員 第1回の発作がここだとすると、この辺まで。

○木原座長 「支持的なコミュニケーションによる継続的な意思決定支援」と濃い黄色で書いてあるものを、ステージCの後半ではなくて、もう少し前に持ってくるということですか。

○平原構成員 ステージCでいいのですが、最初の発作の後に、最初に話合いが始まったほうが理想だと。最初の発作がどこかは。

○木原座長 一番最初の「心不全発症」という所に、1つめの谷があります。その谷の終わりかけぐらい、心不全のステージで言えば、ステージCの左端の辺りまで引っ張ると。

○平原構成員 私はそのように思っています。

○木原座長 いかがでしょうか。

○山田構成員 私は、最初の発症のときに死ぬ話はしなくてもいいと思いますが、これからどのようになっていくかというところの最初のプレゼンというのは、一番最初の山の下がりかけ辺りからと。やはり緩和ケアというのは、もともと発症したときからといわれており、できる限り早期に開始すべきと思っています。

○木原座長 そうすると、今平原構成員が言われた所よりももう少し前に持ってくるということですか。最初の谷の所からスタートするということですね。

○安斉構成員 参考資料2にガイドラインがありまして、その12ページにある図がこちらの図の基になっていると思います。症状が出た時点からステージCになるので、これの最初の山は、もしかしてなくてもいいのかなと思いました。ABCのステージが、今はファジーな形になっていますが、学会では症状が出たところからステージCとなっていますので、ここの最初の山を手前のところまで持ってこなくてもいいのかなと思いました。最初の山がなければ全てそのままで、もう少しACPの所を少し左にずらしていただいて、最初に入院して退院の所から始める形とすると、ガイドラインとは整合性が取れると思います。

○木原座長 最初の谷は「心不全発症」という矢印がある所で、ステージCですよね。

○安斉構成員 そこから本当はステージCになってしまうことになるわけです。ですから、最初の波はなくてもいいのかもしれません。

○木原座長 では、最初の谷を少し右に持ってくるか、あるいは心不全のステージを左に持ってくるかというようなことですね。

○安斉構成員 ABCDは比較的明確に分けられているので、今のような、ファジーなものではないと思います。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 この絵のステージA/BとステージCDの区別ですが、CDについては区別が難しいということでファジーな絵にしているところです。A/BCを少しファジーにしている背景として、前回の診療提供体制のあり方に関する検討会で、いわゆる心不全の発症自体が、いわゆる急性心不全で目に見える方から、気が付いて診療してみるとむくみ等の基準で心不全になっている方も含まれていて、その辺はA/BのどこからCになったのかがよく分からない方もいるだろうという議論を受けて、ここではそれも含めてファジーな表現にしたという背景がございます。

○木原座長 安斉構成員、よろしいですか。

○安斉構成員 学会のものと似た形の図で。

○木原座長 12ページの絵との整合性はもう一回確認するということでよろしいでしょうか。

○安斉構成員 よろしくお願いいたします。

○佐々木がん・疾病対策課長 今のは大事かと思います。委員の皆様のみの配布で恐縮ですが、ピンク色の紙ファイルの中で、今、岡田が説明した内容というのは、「第1回ワーキンググループ」という所で言うと、資料4のスライド11です。ここに手を挟んでいただいて、第2回ワーキンググループの資料1のスライド6を御覧ください。この2つを見比べていただきますと、もともと第1回ワーキンググループのときは、少し幅はあるものの、ステージCの心不全発症というのは、今御指摘のあった「そこからステージCだ」ということに対応していたのに対して、ここの御指摘で、「後々に振り返ってみると、あれが最初の症状だったということもありますよね」という指摘があったので、第2回ワーキンググループからは、第2回ワーキンググループ資料1のスライド6にあるようなものになっています。ここで「心不全発症」という言葉を使っているので、今のは言葉をもう少し丁寧にして、例えばステージAに近いほうは「症状初発」ぐらいにして、「心不全発症」という言葉はもう少しステージC寄りにすることによって、もしかしたら対応できるかと思いますので、そこは図の工夫で、今の御指摘が分かるようにしたいと思います。

 その上でなのですが、平原構成員から御指摘のあった、今回の資料の11ページにある意思決定支援は、もう少し、厳しい症状でという意味での心不全発症の最初の所に持ってくるようにしたいと思います。このイメージで、お二人の御指摘は合いますでしょうか。あと、安斉構成員の参考資料2ともイメージは合うでしょうか。

○安斉構成員 心不全学会の立場で言うと、ステージA/Bはあくまでも症状がないということなので、それに対して緩和ケアはやりすぎと言うか、緩和ケアは症状に対してなので、ない方にやるものではないと思うのです。

○佐々木がん・疾病対策課長 では、先ほどの「後から振り返ってみると、あのときが初発症状だったのか」ということも成り立たないのですね。

○安斉構成員 それはステージCです。

○佐々木がん・疾病対策課長 分かりました。

○木原座長 ステージA/Bだと思っていたけれども、実は1年前からステージCだったということもあるということですよね。

○安斉構成員 そういうことです。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 こちらに関してですが、第1回から第2回でこの記載が変化したもう1つの背景として、第1回ワーキンググループの資料6の慢性心不全の管理プロセスの中で、ステージBの状態も少し視野に入れたような議論がなされたものと理解しておりましたので、その辺りを踏まえて、ステージCで切って提示するよりは、心不全というのはそもそもいわゆるリスク状態から進んでいく中で、その中でどう考えるかという視点をこの議論の中で入れる必要があるかなという整理で、A/Bという形を追加したという背景もあります。

 その中で、この緩和ケアが、いわゆる心不全の症状を目的として考えてくるものなのか、例えば心不全の基になるような病気を発症した際に出てくるような心理的、社会的な苦痛も含めたイメージで捉えるかという観点で、恐らくここの図の捉え方が変わってくるのかなと理解しておりますが、現時点では、今回学会のガイドラインも提示されましたように、心不全自体がリスク状態から発症状態まで連続的に進展してくるような病態であるということを踏まえて、このような図にしているところです。ABCをファジーに書くかどうかは、きちんと症状の段階で切ることはできると思いますが、A/Bがこの図に入っている意味にはそういう点もございます。

○木原座長 確かに、今、岡田課長補佐が言われたように、何も症状がなければ緩和の対象ではないのかと言うことです。それでは症状がない人はずっと緩和の対象ではないということにもなるかと思いますので。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 これは症状はないけれども、いわゆる心不全の基になる心血管疾患はBでは存在しているという理解ですので、それに伴う症状や何らかの循環器疾患としての苦痛は存在している可能性はあるのかなという観点で記載しています。ABに関してはスラッシュを入れていますので、Aまではということはありますが、ここではA/Bはリスク状態でまとめて記載して、あくまでもベースになるようなことで、Bでは心血管疾患は所有しているという位置付けだったと思いますので、そういう虚血性心疾患やその他の弁膜症等に伴う、こういう疾患を持たれている方という理解ですので、それも含めた概念として提示しております。

○安斉構成員 すみませんでした。私は第1回目は出席しておりませんでしたので、十分に議論を聞いておりませんでした。そういうことであれば、器質的心疾患があるという段階から、多少考慮するということでよいかと思います。

○佐々木がん・疾病対策課長 いずれにしろ、この絵だけで使われる場面、この文章が使われる場面もありますので、今、岡田が説明した内容も書き込むことによって、基になる病気からのケアが大事なのだという趣旨を入れたいと思います。

○木原座長 とてもよくできた絵だと思います。分かりやすく、しかも身体機能と苦痛とが必ずしもミラーイメージではないことも明確に言っていただいているし、もともとの循環器疾患に対しての医療と緩和ケアが相補的に行われるものでもないこともきちんと書かれている。大変よくできた絵なので、そういう意味で絵がこれから先一人歩きしていく場面というものもよく考えながら、練り込んでいただきたいと思います。

○井上構成員 患者としては、最初の段階から様々なリスクも含めた御説明は頂きたいと思います。できれば御説明の際に、このような大変分かりやすい図なども提示していただきながら、あなたの状態はこの辺にあって、もしかしたらこういう道のりをたどる。これからは、これこれこのようなことに注意をしながら日常を送っていかなければならないというご指導も含めて、最初の段階で丁寧な御説明を頂戴できたらと思っております。

○木原座長 そういう場面で使っていただける絵として、完成度が高いものを提示したいと思いますし、平原構成員が先ほど言われたポイント、それから、今、安斉構成員からの御指摘があったポイントなど、少し修正をして、より理解に至りやすい絵を作っていきたいと思います。

○山田構成員 私たち看護師は、身体症状がない時期にどのような苦痛があるかと言われると、結構多いのが経済的な苦痛です。

○木原座長 社会的苦痛ですね。

○山田構成員 そうです。心不全になっている方というのは、もともと余り仕事が十分にできず、貯えがないというか。循環器の症状緩和のための治療もお金がかかるので、途中で治療を中断する人も何人かいらして、その理由がお金が払えないということです。生活保護であれば、まだ手立てがあるのですが、そうでないとなかなか社会的には難しいところがあるという点で、早い時期からの緩和ケア、社会的苦痛も含めてどのように緩和していくかということを考えていただけたらと思います。

○木原座長 お薬が途中で切れてしまってそのままになっている人など、しょっちゅうあるのが現実です。山田構成員の御指摘も大事なポイントかと思います。そういうことになると、またこういういろいろだという話から、やはり早くからないといけないということです。よろしいでしょうか。たくさんの意見を頂きました。

 次に、第3の項の「循環器疾患における緩和ケアのチーム体制について」です。これは12ページからですが、先ほど平原構成員から指摘があった部分も含めてということになります。16ページの辺りまでですが、幾つかの施設からの先駆的な試みも含めて、図入りで表示されているところです。これに関して、意見がございましたら頂ければと思います。いかがでしょうか。

○山田構成員 「今後の取組」という所です。高齢者の心不全の方から家で過ごしたい、最期は家で迎えたいという御希望をよく聞きます。そうしたときに一番力になるのが、訪問看護と訪問看護を中心にした在宅側のチームであるように思うので、そういうところを少し強調していただけたらいいなと思います。

 それと、昨今、急性期の病院は在院日数が短縮傾向にあるのもあって、正直申しまして、ベッドが空いてきています。そうすると、多くの急性期の病院の医療者は、「しんどかったらいつでも入院したらいい」「入院してゆっくりしたらいい」「入院したほうが治療がうまくいく」という声掛けをすることがあります。どちらかと言うと、入院を勧めてしまうということです。けれども、御本人は在宅で過ごしたいという強い気持ちを持っていて、高齢者に限らずですが、在宅を非常に希望している方がいるように思うので、在宅チームについて、今はなかなか難しい点が多いですが、いろいろと先ほどの制度が変わっていけば、もう少し在宅チームの活動や、そういった医療人材の確保も可能になってくるのではないかと思います。そこに至るまでは、これも人的資源の問題がありますが、急性期病院からのアウトリーチや急性期病院の相談窓口、相談機能というものを高めていく辺りを強調して、方向性として出すのがいいのではないかと思いました。

○木原座長 いかがでしょうか。

○平原構成員 心不全の方で専門的な治療がすごく必要で、大きな病院にずっとかかり続けなければいけない方と、御高齢の方で肺炎を経験、心不全を合併して、認知症もあって嚥下障害もあってと、非常に幅が広いわけです。それで、例えば我々は北区ですが、北区の患者の動向を見ると、がんにかかったら北区から外れて千代田区の周辺にある大学病院に行って帰ってくる。でも、骨折、心不全、肺炎は、大体北区の中の病院で行ったり来たりしている。だから、モデルを提示するときに、こういう連携モデルもあるのでしょうけれども、専門性の高いものは少し医療圏が広がって連携するモデルになるでしょうし、本当にお年寄りの心不全は地域の病院とのキャッチボールという、どの医療圏で解決するべき問題なのかというようなモデルの提示の仕方も必要なのかなと思っています。

○木原座長 言えば、専門病院が2種類あると。地域専門病院と、地域ではない全国区専門病院というような考え方ですかね。

○平原構成員 正直申しまして、私たちが在宅で診ている高齢者の心不全は、地域の循環器の専門の先生とのやり取りで何とかなっている状況です。そうではない心不全の方も実際にいらっしゃいますので、そういうことのイメージが湧くような提示の仕方はないのかなというところです。

○木原座長 御提案ありがとうございます。

○佐々木がん・疾病対策課長 今の平原構成員、山田構成員のイメージで言うと、13ページの「今後の取組に向けた考え方」の下から2つ目、又は一番下の○の所で、例えば下から2つ目の○の上から4行目で言うと、「心不全多職種チームの体制など、地域の実情に応じて柔軟に設定される必要がある」と書いてありますが、今のからすれば、ポイントが2つあって、まず、緩和ケアに特化した場合でも、恐らく地域の医療資源によって違うという意味合いもありますし、もともとの病気、恐らく一定年齢になるとほかの病気の治療もあるでしょうから、そういう治療においての特性に応じた組み方が必要になるということを盛り込むのが1点です。

 もう1つは、一番下の○の、かかりつけ医の先生を中心に行っていただく訪問診療又は在宅医療を、これだけではなくもう少しイメージできる書き方が必要だろうと思います。その際には、第1回のときに平原構成員からも在宅医療の課題も含めてプレゼンを頂いたので、そこの記載なども参照しながら記載していく。大体そんなイメージの修正になりますか。

○山田構成員 もう1つだけ、その中に「患者の意向を踏まえた」という文言を入れていただくと、こちら側だけの問題ではないので、患者さんの希望、期待をどうしていくかというのがACPにもつながるので、それが入るとより良く分かる。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 山田構成員の問題点として、「社会的苦痛」の所にも出てきましたが、療養場所等の問題も含んだ患者様の意向というイメージで、その視点が入るということ、患者様を居宅においてケアが提供されるためのチームがサポートするべきなのか、若しくは少し入院的な観点のチームがするべきなのかということも、それを含めてイメージできるような書きぶりというか、修正のイメージの理解でよろしいですか。

○山田構成員 それがいいと私は思います。というのは、たとえ後期高齢者ではなくても、最近ではNPPVとかASVとかは在宅でできますし、保険の問題はありますが、いろいろ投薬もできる時代なので、患者さんの意向が一番大事にされるということがあればいいのではないかと思います。

○木原座長 良質な医療を受けようと思えば、都心の○○大学附属病院まで出かけて、そこで1日かけて循環器、呼吸器、糖尿病、昔手術してもらった外科とかを数々回ってへとへとになって帰っていくという構造があります。これを地域で引き受けていくことができれば、そのことも患者さんのトータルペインを減らすことにつながるのでしょう。

○山田構成員 本当にそのとおりだと思います。多分、緩和ケアというのは、ここは医療の話ですが、介護保険を使える人だったら、心不全の患者さんはADLも落ちますので、どうしても介護というか、生活支援が必要で、医療と生活支援を並行しながら在宅で診ていくのが、今、私たちが少しやりかけていることだと思いますので、そういった意味で書いていただけるといいかと思います。

○木原座長 よろしいですか。

○羽鳥構成員 先ほど平原先生がおっしゃっていた在宅医療に関して、今回の診療報酬改定で、複数の医師が行けるようになったというメリットをこの中で書き込んでいただけたら、現場の先生方はイメージが湧くのではないかと思うのです。もう少し心不全の増悪があっても複数医師が診れるようになると在宅医療の幅が広がると考えます。

 もう1つは、循環器の疾患の患者さんは徐々に悪くなるというイメージでしたが、それ以外にも、例えば大動脈瘤を抱えていて、最後は破裂されて御自宅で亡くなるような方もいらっしゃるのも事実ですので、そういう絵柄もどこかに欲しいかなと思います。

 もう1つは、大動脈弁狭窄症で、手術はしないにしても、TAVIとか、そういうのが適応になったかもしれませんが、それも患者さんの御希望で、そういうことは受けたくないという方を在宅で診ていかなければいけない先生方もこれから出てくるのではないかと。在宅酸素のASVはこれから確実に増えてきますから、びっくりするような事態が起きるのではないかと思いますので、そういうポンチ絵も必要ではないかと思います。

○木原座長 ありがとうございます。

○池永構成員 別の部分で14ページ、「既存の緩和ケアチームと心不全の多職種チームが連携し」とボンと書いてあるのですが、なかなか病院の中でこういうチームが一緒に仲良くやっていくというのは非常に難しい部分もあって、これはまだ日本の現場でチーム医療の思想はそんなに行き渡っていなくて、得意分野があるのをいかしていこうという文言というか、終末期患者さんの症状緩和の知識が十分ある緩和ケアチームと、いわゆる病態の改善や生活指導に経験のある心不全チームがうまく連携し、患者さんの様々なニーズに応えられるように協働するという形にしたほうが、若干、チームとしてはうまくやっていけるのではないかと思います。ほかの部分もそうですが、やはり、在宅だからとか、病院だからと言っても、能力の有る無しではなくて、やはり、何々の部分には非常に得意な部分もあるということは強調して、チーム医療をしていかないといけないということを普及していくような内容にしていけたらと思います。以上です。

○木原座長 今の点に関してですが、13ページに「心不全多職種緩和ケアチーム」という言葉が3か所出ています。これは緩和ケアチームと心不全チームがマージしたというイメージからそういう言葉が出ているのですが、このままで、よろしいですか。少し強引な感じもするのですが。

○池永構成員 そうですね。恐らく、よく地域包括であるように、それぞれのリソースに合った形での多職種チームということだろうとは思います。

○木原座長 全部一緒になってしまうことを求めているのではなく、それぞれのメリットを生かしながら、協働していくという感覚ではないかと私は思います。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 御指摘に関しては、12ページの第3の「緩和ケアチーム体制」の「基本的な方向性」の一番最初の部分を御覧ください。後半の各論的な部分に入る前の前段の考え方の課題の中で、1つ目の○の「緩和ケアは、全人的なケアが必要な領域であり、多職種による連携を促進する必要がある」、この後段で、「そのため、互いの役割や専門性を理解した上で、協働することが可能な体制を整備する必要がある」という形で、これは少し総論的な形で記載している。これを受けて、後半に「心不全のチーム」という形で記載しているところです。

○津田参考人 心臓リハビリテーションは、心臓の領域であると思います。特に呼吸器の領域では、呼吸リハビリテーションというのはかなり初期の段階から、患者さんに対応して、例えば、社会的なスピチュアルなケアもやりながらということをやっているわけですが、この場合に、心臓リハビリテーションのチームの役割というのはどの辺になるのか教えていただければ、これからの呼吸器の展開にも参考になるのですが、いかがですか。

○木原座長 心臓チームのコアになる部分が心臓リハビリテーションだと理解しております。保険点数の問題もありますが、患者さんが心臓リハビリテーションに来られる、そこで、いろいろな職種が集まって協働をするみたいな形が心不全チーム、特に外来の部分はそんな感じかと思います。

○津田参考人 ありがとうございます。

○平原構成員 今回の循環器のワーキング、いろいろながん疾患の緩和ケアのモデルということを考えると、連携モデルも今後普及性、あるいは普遍性のあるようなモデルを考えていく視点も必要かと思いました。

 循環器の専門の先生が地域の病院にいらっしゃったりするということも結構あるという状況で、高齢者のモデルですが、高齢者についてはかかりつけ、あるいは在宅医と地域の病院の専門医との連携で、いわゆる一般的には地域包括ケアでいう一般的な垂直連携の中で解決することが多いと思います。なかなか病院に行けない方については、先ほど羽鳥構成員がおっしゃった複数の医療機関での横の連携を作っていく形で実現するような気がするので、このモデルであれば、例えば疾患が変わったとしても、呼吸器だとしても、ほかの病気だとしても、一定の何かイメージが湧くモデルになるなと思います。やはり、プライマリーサービスというのは、1つの疾患だけを診ているのではありませんので、様々な疾患や障害を診ているわけですので、この病気でこのシステム、この病気でこのシステムということを作っていくことは実は非常に不合理というか非生産性なので、そこのところをうまく書き込めると非常にいいのかなと思って聞いておりました。

○木原座長 ありがとうございました。安斉構成員どうぞ。

○安斉構成員 先ほど津田先生がおっしゃったリハビリテーションのチームは、確かに循環器の領域でかなり広まっているのですが、ただ、その先生方は余り緩和というスタンスはないのです。元気にさせたいということはもちろんあるので、心臓リハビリテーションのチーム医療の中に緩和という概念を少し取り込んでもらえると、それはそれで普及の1つの道筋になるかと思いました。ありがとうございました。

○木原座長 そうなのですが、ただ、心不全の定義が、だんだん悪くなる病気とか、学会もそんなことを宣言してしまったりするから、少しずつ循環器の医者も、そういう意味ではこの患者さんを、今、一生懸命元気にさせようとしているのですが、長期的にはなかなかというところも踏まえた感じでの治療の展開をするようにはなってきているということかなと思います。

○津田参考人 呼吸リハビリテーションの場合は、まず患者さんは今まで縛られてきた人生を行動変容して、楽に動けるような工夫をしていこうというので、やはり、心臓リハビリテーションと同じように、最初はとにかく動いてもらおうといくわけですが、将来のことは呼吸リハビリテーション教室の中で話をして、これからこんなふうになっていくのですという疾患機能を説明する仕事をやっておりますので、多分、心臓リハビリテーションでもそういうのはやられているかと思います。

○木原座長 ありがとうございました。次のセクションにまいります。第417ページからです。緩和ケアにおける循環器疾患と、がんとの共通点、あるいは相違点等について意見を頂きたい。循環器、とりわけ心不全で話を進めてきているわけですが、ほかの疾患の立場から、どういうふうな応用、あるいは展開ができるのかということの意見も頂きたいと思います。宮本先生、いかがですか。

○宮本参考人 今日は循環器では心不全を対象にしてうまくガイドラインを作ってこられたと思いました。今後脳卒中領域においても参考にさせていただきました。

 私は日本脳卒中学会の理事長をしておりますが、脳卒中という立場から言うと、18ページの図9の病状経過を考えるのであれば、縦軸は身体機能だけではなく、意識障害や高次機能障害という事項が必要になります。脳卒中では図9のように悪くなって右肩下がりというのもありますが、意識障害が比較的軽くて、少し回復してプラトーになることがあります。そういうケースでは、緩和ケアというよりは介護支援であったり、リハビリテーションの対象になります。初めから重症脳卒中でどんと下がる場合には、非常に重症であれば、いわゆる脳死ということになります。そこまで至らなければ遷延性意識障害ということになって、かなり低空飛行で経過するということになりますので、心不全と脳卒中では違う点があります。心臓は、臓器不全として心不全があるわけですが、脳機能不全と言いますと、不可逆的脳機能不全、これは脳死ということになります。いずれにせよ、脳卒中における終末期と緩和をどう考えるのだということで、モデルケースとしてこのガイドラインはすごく有り難いと感じております。

 先ほどお話が出ましたACPですが、重症の措置の場合は基本的には意識障害がありまして、発病前に事前指示を出しておられる方というのは極めてまれです。そうなると、脳卒中発症後に意思を示せない中でターミナルケアを考えていかねばならない、本人の同意に基づく選択は多くの場合不可能という特性があります。そうなりますと、先ほど多職種の支援チームというお話がありましたが、重症脳卒中でと言うと、そこに法律家とか、生命倫理家が入っていないと難しいであろうと思います。

 参考資料1にある「人生の最終段階の治療選択の報告書」ですが、厚生労働省の「患者の意思を尊重した人生の最終段階における医療体制について」という事業を医政局でやっておられて、その研修事業のPPTが厚労省のホームページからアクセスできるようになっております。それを拝見しますと、例えば、「延命治療の差し止めをしても、もはや殺人罪にはならない」というような、非常にセンセーショナルな内容のPPTが公開されております。

 昨年、NHKの「クローズアップ現代」で、救急医療現場で脳卒中の患者さんの気管内挿管がテレビカメラの前で抜かれるという、非常にセンセーショナルな報道がありました。脳卒中をやっている立場からすると、非常に違和感と戸惑い、あるいは驚きを持って感じております。現在、日本においては臓器移植を前提とした脳死は存在しますが、臓器移植を前提としない脳死というのはありません。それはいわゆる脳死と見なされる病態と呼ばれているわけです。それこそが必ず死に至る状態ですから、脳における終末期と考えられるわけです。しかしながら、臓器移植を前提としない場合には、現場が置いてけぼりになっていると言いますか、何も対応策がありません。このため、日本脳卒中学会では重症脳卒中と生命倫理に関するプロジェクトチームを作りました。これはもともと循環器病委託研究として同じ名称の研究班があったわけですが、それを引き継いで、学会のプロジェクトチームとして現在、まずは比較的分かりやすい臓器提供を前提としない、いわゆる脳死と見なされる病態についてどう対応すべきかという検討を始めております。いささか本日の緩和ケアとは趣が異なるのですが、脳卒中の場面でまず一番初めに手を付けていかねばならないのは、その問題であると考えております。その次には、重症脳卒中で遷延性意識障害になった場合にどうするかということになるのではないかと考えております。いくかなと。

 いずれにしましても、非がんの領域で、このようにターミナルケアあるいは緩和ケアのことがガイドライン化されていくのは非常に望ましいことだと思っておりまして、脳卒中の分野も少し整備していきたいと考えております。ありがとうございます。

○木原座長 宮本先生がおっしゃったのは、比較的急性期の脳卒中の問題点を指摘いただいたと思います。一方、我々がここで考えているのは、循環器疾患をモデルとしながら慢性期の経過です。脳卒中の方であれば、麻痺を残しながら身体的な障害を抱えて生きていかれる方をどうするかみたいな、そこのところの話のほうがより親近感があるかと思います。

○宮本参考人 本日ディスカッションをされているガイドラインは、脳卒中の中で慢性期対応にいかしていけることではないかと思いますが、かならずしも心不全のように右肩下がりの経過にならない点が、すこし脳と心臓では違いがあると思います。

○木原座長 いや、心臓も必ずしもなのですが。津田参考人、いかがですか。

○津田参考人 これはCOPDということで取り上げられていますが、心不全と取り上げられていますから、やはり、呼吸不全として取り上げられたほうが有り難いと思います。というのは、間質肺炎とかすごく急激な経過を取って死のほうに向かっていきますし、その方々に対しては、本当に緩和ケアというのはすごくニーズは高いと思いますので、COPDも重要ですが、是非、呼吸不全という形で、そうすれば割と同じような考え方で持っていけるのではないかと思います。

○木原座長 COPDという疾患名ではなくて、むしろ呼吸不全という病態をですね。

○津田参考人 はい。

○木原座長 ありがとうございます。

○平原構成員 循環器疾患以外の疾患の適応ということで、COPDも脳卒中も在宅医という立場で見させていただいておりますが、COPDは、今回の循環器の検討したことと類似性があるなと思います。

 脳卒中については、私も在宅の7施設ぐらいで研究したこともあるのですが、やはり、最初の発作による死亡というのは、日本では1割ぐらいなのです。多くの方が生き残って、重い障害を残す方が23割ぐらいでしょうか。中等度の人が4割で、10年生きる方が2割ぐらいいらっしゃるという海外の文献を読んだことがあります。もちろん重症な障害を残せば残すほど、予後が短いということも言われております。最初の発作で亡くなる人の緩和ケアと、長く慢性期を生きていく方の緩和ケアという2つ存在するという認識です。アメリカのホスピスの導入基準の中にも、急性期の緩和ケアの導入基準と、慢性期の導入基準がちゃんと書かれているので、そういう視点で少し分けて考える。慢性期はほとんどが合併症による死亡ですので、なかなか軌道を予測したり、疾患の管理のことを画一的に話すのは難しいような状況があります。そこは少し同じ循環器というか、病気でありながら、かなり違うところだと思っておりますので、その辺を学会の中で御議論いただいて、是非進めていただければと思います。

○木原座長 ほかに意見がございますか。

○羽鳥構成員 宮本先生の御意見に本当に感銘しました。国のほうの議論で、国会で、いわゆる脳卒中・循環器病対策基本法ができれば、がん対策に負けないようなレジストリー調査ができて、患者の背景もきちんと登録できて、がん疾患の患者さんは一人一人病院に入院されるとレジストリーされていくわけですが、それがきちんと出てきていろいろなことが分かってくるのだと思いますので、先生、また一生懸命努力していただきたいと思います。

 あともう1つお願いしたいのですが、6年ぐらい前からから4疾病5事業、現在、5疾病5事業になりましたが、今回、5疾病5事業のうち心筋梗塞が心臓病と広くなっていますので、やはりどこかにこのことも取り上げてほしいなと思います。せっかく循環器をやって、特に名称が変わったので、実際に私たち現場で見ていますと、急性期の病院とのやり取りが非常に多いので、クリニカルパスが有効に働いているのが現実だと思いますので、どこかに書き込んでほしいと思います。

○木原座長 岡田課長補佐、お願いします。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 羽鳥構成員御指摘のように、第7次医療計画から5疾病の心筋梗塞に関しては、心血管疾患の形で慢性期も含めた観点での記載がされているところです。恐らくこの観点は、いわゆる疾病管理という観点に非常に関連する部類だと思いますので、いわゆる長期的な疾病管理を心血管疾患として考えていくことが、医療計画上もここに示されているという形で、この疾病管理の中で読み込めるような形で今後対応していければと考えております。

○木原座長 それでは、第1「はじめに」の1ページ、あるいは第5の「おわりに」、19ページも含めて、全体を通して構成員の先生方の意見を頂ければと思います。本日の第3回WGを通して、構成員の先生方から非常に有益な意見を頂くことができ、私たちのワーキングの内容を深めることができたと思っております。井上構成員、ここまで話を聞いていただいて、流れとしていかがですか。

○井上構成員 恐れ入ります。第5の「おわりに」の最後で「必要な支援を継続的に受けることができる環境が整備され、患者自らが望む生き方を実現する一助になることを期待したい」と結ばれています。自らが望むと申しましても、それを発することができない状態にあるという場面のほうが、多いと思います。自分がこのように生きたいとか、このような人生を送りたいということは誰しも思うのですが、もし病気になったら、思わぬ事故でけがをしたらとか、そういう不測の事態も考え、予測しながら、人生を一人一人が生きていく。些か漠然とした申し上げようですが、啓発と申しますか、患者になる以前からできれば学校教育の中とか、何らかの形で自らが望む生き方と同時に、終わり方に関しても考える、ケアという広い分野ではありますが、そういう啓発も行っていけたらと願っております。

○木原座長 病気にならないように、健康な生活を国民に送っていただくことは、とにかく何より大事なことかと思います。そこにつながるような緩和のあり方を模索していきたいと思います。ありがとうございました。

 本日の意見等を総括してみるに、全く新しい追加を求められた点はないと思います。若干の修正はありましたので、それらに関しては、私と事務局にお任せいただければと思います。本日の議論を踏まえて、事務局とともに整理して、循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方についてのとりまとめを行います。本ワーキンググループで頂いた意見の調整や、字句修正を含め、最終的な判断は座長に一任いただければと思いますが、よろしいですか。ありがとうございました。若干、時間が超過してしまい申し訳ございません。本ワーキンググループを3回行って参りましたが、これで終了にいたします。進行を事務局にお返しします。

○権がん・疾病対策課長補佐 ありがとうございました。それでは、本日のワーキンググループを終了します。構成員、参考人の皆様、約半年間にわたりまして御協力いただき誠にありがとうございました。以上で終了いたします。

 


(了)

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