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2021年6月28日 第89回社会保障審議会年金数理部会 議事録

年金局

○日時

令和3年6月28日 16時00分~18時00分

 

○場所

TKP新橋カンファレンスセンター 15階 ホール15D



 

○出席者

 
翁部会長、浅野部会長代理、小野委員、駒村委員、関委員、永瀬委員、野呂委員、枇杷委員、山口委員


○議題

(1)公的年金財政状況報告-令和元年度-について
(2)その他

○議事

 

○鎌田首席年金数理官 定刻になりましたので、ただいまより第89回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
 審議に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。
 本日準備している資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか、
 資料は、「公的年金財政状況報告-令和元(2019)年度-(案)」でございます。
 資料は、5つの資料に分かれておりまして、
 資料1は、「表紙、委員名簿、目次、ポイント、概要」を一まとめにしたもの
 資料2は、「第1章」
 資料3は、「第2章」
 資料4は、「第3章」
 資料5は、「付属資料」
でございます。
 次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は全委員御出席でございます。御出席いただいた委員の方は3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
 なお、駒村委員、関委員、永瀬委員につきましては、オンラインでの御参加でございます。
 それでは、以降の進行につきましては、翁部会長にお願いいたします。
○翁部会長 委員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日は、公的年金財政状況報告-令和元年度-について審議を行いたいと思います。
 カメラの方がいらっしゃいましたら、ここで退出をお願いいたします。
(カメラ退出)
○翁部会長 令和元年度の報告書の作成に当たっては、委員の皆様に御協力をいただき、あらかじめ作業班において作業を行い、本日の資料である報告書案を作成いただきました。
 それでは、事務局から、本年度の報告案について、説明をお願いいたします。
○鎌田首席年金数理官 それでは、首席年金数理官室から説明をいたします。
 先ほど部会長からありましたけれども、委員の皆様におかれましては、作業班に御尽力いただきまして、誠にありがとうございます。今日は、何分、大部ですので、資料-1を中心に説明させていただきたいと思います。
 資料-1ですが、最初が表紙、その後、委員名簿、目次とありまして、紙で言いますと6枚目ぐらいです。PDFで言いますと11ページぐらいになろうかと思いますが、「公的年金財政状況報告-令和元(2019)年度-(ポイント)」というタイトルがついておろうかと思います。こちらは、年金数理部会として、この報告書で一番言いたいことを絞ったものになってございます。
 ポイントは3つございまして、1つは「単年度の収支状況」でございます。令和元(2019)年度の公的年金制度全体の単年度収支状況は以下のとおりであるとなっておりまして、単年度収支状況は、年金数理部会が公的年金財政状況を制度横断的に比較・分析しているものだとございます。
 例えば厚生労働省からは、厚生年金の決算を毎年公表しておりますが、それは年金特別会計のうちの厚生年金勘定のみということで、共済は含まれておりません。各制度所管省は、あと、実施機関におかれましても、それぞれの厚生年金相当部分は公表されておりますが、厚生年金全体がどうなっているかというのはこの数理部会の資料のみということでございますので、それもこの数理部会の大きな役割の一つだと思っております。
 そういった観点で「厚生年金計」をつくりまして、そのほか、国民年金のうちの国民年金勘定と基礎年金勘定を足したものを、下の表の一番右端でありますけれども、「公的年金制度全体」として取りまとめているということでございます。
 日本の公的年金は、賦課方式を基本とする財政運営が行われておりますので、財政収支状況を大きく2つに分け、1つは運用損益分を除いた単年度収支残、もう一つは運用損益に分けて分析しております。
 「公的年金制度全体」、下の表の一番右端ですが、全体で見ますと、収入面では保険料収入が39.1兆円、国庫・公経済負担が13.0兆円等でありまして、運用損益分を除いた単年度の収支総額は52.9兆円となっています。
 支出面は、年金給付費が大半でございまして、支出総額は53.3兆円となっておりますので、この結果としまして、運用損益分を除いた単年度収支残は0.4兆円のマイナスとなっております。
 2つに分けたうちのもう一つ、運用損益でございますが、これは新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けたということで、金融市場が第4四半期において短期的に変動した影響により、時価ベースで9.8兆円のマイナスとなっております。
 これらを合わせますと、公的年金制度全体の時価ベースの年度末積立金は前年度末に比べ10.1兆円減少し、190.5兆円となってございます。
 めくっていただいて、ポイントの2つ目「被保険者数」でございます。令和元(2019)年度の被保険者数は、厚生年金が4,488万人(うち短時間労働者48万人、厚生年金に占める割合は1.1%)となっております。このほか、国民年金第1号、自営業者等ですけれども、それと、国民年金第3号被保険者は、これは2号の被扶養配偶者ですけれども、それらを合わせますと、公的年金制度全体では6,762万人となっております。
 国民年金の第1号と国民年金の第3号の被保険者は減少したのですけれども、厚生年金の被保険者数が増加したため、公的年金制度全体では0.2%の増加となっております。
 厚生年金被保険者は増加している一方、1号と国民年金3号が減少しているというのは、生産年齢人口が減少する中で、被用者化が進んだということで、1号、3号それぞれから厚生年金被保険者にシフトしている影響と考えております。
 厚生年金の被保険者数の増加率は1.3%となっておりまして、短時間労働者以外の被保険者数の増加率も同じく1.3と。短時間労働者の被保険者数の増加率は8.6%ということになってございます。
 厚生年金の被保険者の年齢分布について見たものが下の図でございますが、厚生年金の男性、下のグラフの左側の青い折れ線グラフですけれども、厚生年金の男性では、最も被保険者数が多い年齢階級が、10年前は35~39歳でしたけれども、5年たつごとに、40~44歳、令和元年度では45~49歳にシフトしている。山の頂上が右にシフトしておりますが、これは団塊ジュニア世代のコーホートによる影響だと考えてございます。
 厚生年金の女性につきましては、40歳以上の被保険者が増加しております。
 厚生年金計の短時間労働者、下のグラフの右側ですけれども、縦軸が大分倍率が違いますので、御留意いただきたいと思いますけれども、厚生年金計のうち、短時間労働者につきましては、前年度末に比べて一部の年齢階級を除いて被保険者数が増加していることが見て取れるかと思います。
 ポイントの3つ目ですが、「令和元(2019)年財政検証との比較」でございます。令和元(2019)年財政検証は、2019年の8月に公表しておりますけれども、それは被用者年金一元化後、初の財政検証であり、本報告も厚生年金計、要は、旧厚生年金に3共済を足したものの実績と将来見通しを比較・検証しております。
 令和(2019)年度は実績と将来見通しの比較の初年度ということもありまして、被保険者数、受給権者数等については、ほぼ将来見通しのとおりの実績となっております。
 一方、積立金については、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、世界経済等に対する懸念から、金融市場が第4四半期において短期的に変動した影響により、時価評価した運用利回りが一時的に大幅なマイナスとなったことから、実績が将来見通しを下回っております。
 なお、本報告では、単年度の積立金の実績を用いて財政状況の評価を行っておりますけれども、ピアレビューは、昨年12月に行ったものですが、財政検証の検証というものですけれども、そこにおいて積立金の初期値の設定方法について提言しておりますけれども、時価評価された積立金は、金融市場の短期的な変動を受けやすいことから、初期値の設定のみならず、長期的な観点から、財政状況を評価する際には、例えば一定期間平滑化した積立金額を用いることも考えられ、今後検討していく必要があると。要は、projectionの初期値について平滑化するのみならず、毎年の評価においても平滑化することも今後検討していってはどうだという提言を数理部会から出しているということでございます。
 最後になりますけれども、年金財政の観点からは、人口要素、経済要素等いずれも短期的な動向にとらわれることなく、長期的な観点から財政状況の動向を注視すべきであるとしております。
 こちらが数理部会として言いたいことのポイントを3つにまとめたものです。
 次のページからは概要となってございますが、これは先ほど申し上げましたけれども、報告書は何分大部でございますので、それを網羅的に、コンパクトにまとめたものとなってございます。
 紙ベースのフッターのページで説明いたしますけれども、6ページ目「公的年金財政状況報告-令和元(2019)年度-について」は、報告書の構成を述べたものでして、先ほどの資料説明もしましたけれども、第1章、第2章、第3章、付属資料に加えて、制度所管省から御報告いただいたものもつけて、報告書としているものです。
 次のページからは、「被保険者の現状及び推移」という報告になります。
 紙のページで8ページ、1.「公的年金の被保険者数の推移」ですが、これは先ほどポイントで触れましたので、説明割愛します。
 9ページに、「被保険者の年齢分布」ですが、一番左端が厚生年金計となってございまして、これは45~49をピークとする山型になっていると。あと、目立つものとしましては、国民年金第1号被保険者、右から2番目ですけれども、20~24というところが多い、2割を占めるということでございます。
 続きまして、10ページ、3.の「被保険者の年齢分布の変化」ですけれども、これは厚生年金計になっております。下のグラフの左は、先ほどポイントで説明しましたので、右側、それぞれの年齢階級別人口に占める割合を示したものですけれども、男性は25~59歳辺りまで8割前後、各年齢階級人口の8割程度が被用者だということでございます。女性はそれより割合はちょっと減るのですけれども、25~59歳までの間に、70から4割強という形になっておりますが、女性の人口に対する割合は、この5年で大きく伸びていることが分かろうかと思います。
 11ページは、厚生年金計の短時間労働者の割合を示したものですが、これも先ほどポイントで説明しました。特徴的なのは、男性のほうが60歳の手前までずっと少ないのですけれども、60歳になりますと、急に増え、65歳以上では女性を逆転して男性のほうが多いことが特徴的かと思われます。
 続いて、12ページ、5.「被保険者の年齢分布の変化(国民年金第1号)」です。これは、厚生年金が増える一方、先ほど減ると言いましたけれども、それがグラフにも表れておりまして、右側の年齢階級別人口に占める割合も継続的に下がっているということでございます。
 次の13ページは、同じく国民年金第3号ですけれども、これも下がっていることが見て取れるかと思います。
 次のページは、「厚生年金の標準報酬月額別被保険者の分布」。横軸が標準報酬月額になっておりまして、縦軸が被保険者数となっておりまして、厚生年金計で見ますと、男性は標準報酬月額62万のところが一番高い。これは、現在は65万になっておりますけれども、これは令和元(2019)年度の分析ですので、62万となってございます。62万のところが一番高く、あとは、2つ山の頂上があるような形をしております。女性は、もうちょっと低いところ、22万のところにピークがあるような山型をしているということでございます。
 次のページ、15ページは短時間労働者の標準報酬月額の分布です。紙の方は、上下並べて見ていただくと違いがよく分かろうかと思いますけれども、女性は、統計を取った最初の年度である平成28年度のときは、9.8万円の辺りにピークがありましたけれども、最近は、ピークが少し高いところに移る、11.8万円のところにピークがあるという山型になっております。男性は、山型というよりはちょっとなだらかな形となり、形にあまり変化が見られないという形になっています。
 今までは被保険者でしたけれども、次のページからは、「受給権者の現状及び推移」となっています。
 17ページは、9.「受給権者の年金総額の推移」でして、年金総額と申しますのは、通常、高齢化、あとは、賃金、物価が増えれば増えると思われるところですけれども、支給開始年齢の引き上げがありまして、必ずしも翌年上がるわけではなくて、横ばいもしくは下がることもあります。ちょうど令和元(2019)年度がそれに当たっておりまして、矢印つきの吹き出しが4つございますけれども、一番右端、令和元(2019)年度におきましては、男性及び共済組合等の女性において、報酬比例部分の支給開始年齢が63歳に引き上げられたということでございますので、昨年と比べて0.1%年金総額が減少しているということでございます。
 18ページ、10.の「老齢・退年相当の受給権者の年齢分布」ですが、これは、国共済の女性が人数も少なく、かつ年齢階級ごとにあまりばらつきも少ないというのが特徴的かと思われます。
 19ページ、11.ですけれども、「共済組合等の職域加算部分を除いた老齢・退年相当の平均年金月額(推計)」を比べたものですけれども、特に女性を見ていただきますと、旧厚生年金と国共済、地共済、私学共済などにちょっと差があるということですが、その差につきましては、一番下の枠囲いで記載しておりますけれども、女性では、年金額の算定基礎となる標準報酬額の差があると考えられることと、共済組合等の平均加入期間が旧厚生年金よりも相当長いといったことが考えられるとしております。
 続いて20ページ、12.「老齢相当の受給権者の年齢階級別平均年金月額」ですが、これは、一番上の四角にありますけれども、旧厚生年金の平均年金月額は、受給権者全体の平均加入期間が伸長する中で、減少傾向にあるということで、その要因を6つほど挙げてございます。男女で傾向が違うことは見て取れるかと思います。
 21ページ、13.「老齢相当の年金月額階級別受給権者数」ですけれども、男性のほうが受給している年金月額は高いのですけれども、分布は結構裾野が広いことが見て取れます。一方女性は、年金月額のピークが男性よりも低いのは分かるのですけれども、それに加えて、分布が集中しているというところが、山がとがっているのが特徴的かと思われます。
 次のページからは、「財政収支の現状」の御報告になります。
 23ページの「令和元(2019)年度の単年度の収支状況」は、先ほどポイントで説明しましたので、割愛します。
 続いて24ページ、15.「厚生年金の保険料収入の増減要因の分析」となっております。緑で囲った部分が保険料収入、総額ベースの対前年度増減率となってございます。伸び率の高い順に、私学共済4.4、厚生年金勘定2.2、その後、国共済、地共済と続いております。
 一番影響しているのは、その下の要因別の寄与分ですけれども、保険料率の要因が一番強く働いておりまして、私学共済では4.4のうち2.5となっております。これは、私学共済だけは保険料率の引き上げが続いていることが影響しているかと思います。あと、大きいものは被保険者数が増えたことが、厚生年金勘定、私学共済、それぞれ1.6となっておりますので、これが合わさった形が先ほど申し上げた対前年度増減率に反映していると思っております。
 25ページ、16の「国民年金勘定の現年度保険料収入の増減要因の分析」。本日、令和2年度の国民年金の保険料納付率が公表されていますけれども、これは元年度の分析になります。令和元(2019)年度の現年度保険料、総額ベースの対前年度増減率は、下の表の一番右端の列、マイナス2.6%ですけれども、一番大きく効いておりますのは、被保険者数マイナス2.0、これは減ったということですね。あと、枠囲いはございませんが、そのすぐ下の保険料免除被保険者割合が効いておりまして、マイナス1.8となっております。ただし、現年度納付率は1.7%、増やす方向に働いたのですけれども、これらの要因から、対前年度の現年分の保険料納付総額は減っているというのが、国民年金勘定の状況でございます。
 次のページからは、財政収支の実績と将来見通し、要は、財政検証との比較になります。
 次のページからしばらくは、実績と財政検証で前提としたものの比較。大体折れ線で表しているものですけれども、その比較になります。左が合計特殊出生率、右が65歳の平均余命でして、実績は黒、いずれも黒になっておりまして、合計特殊出生率を見ますと、実績は、黄色い点線と青い点線の間ぐらいということですので、将来推計人口の中位と低位のちょうど間ぐらいになっております。65歳の平均余命は、ちょうど黄色い点線に載っておりますので、死亡中位の仮定値と同水準だと考えています。
 続いて、28、29ページは、18の「物価上昇率の実績と前提の比較」で、19が実質賃金上昇率、物価上昇率を除いた部分ですけれども、前提との比較ですけれども、いずれも、若干実績のほうが低くなってございます。赤は成長実現ケース、青はベースラインケースとなっております。
 続いて30ページ、20.「実質的な運用利回りの実績と前提との比較」。先ほど来見てまいりました合計特殊出生率でしたり、物価上昇率はあんまり差異はなかったのですけれども、実質的な運用利回りは、ベースラインケース、成長実現ケースと比べて、厚生年金計、これは実績ですけれども、緑の線ですけれども、大分下に行っているということでございます。この説明は上にありますけれども、再三御説明しておりますような、第4四半期において短期的に変動した影響によるということですが、このまま見るのも何だろうということで、今年から、厚生年金計(5年移動平均)、黒い線ですけれども、これを作成しております。これを使いますと、緑は単年度そのままですけれども、5年移動平均にしますと、当然、ちょっとモデレートな形になって、ちょうどベースラインケース、成長実現ケースと大体同じようなところに落ち着いているという感じでございます。
 31ページは「労働力率の実績と前提との比較」ですけれども、男女ともほぼ実績推計とあんまり変わらない、若干上回っているという感じでございます。
 次の32ページからは、「被保険者数の実績と将来見通しとの比較」。先ほどまでは、実績と将来見通しの前提との比較でしたけれども、今度からは、例えば実績と将来見通しの推計結果との比較ということになりまして、実績をいずれも★印、財政検証の結果みたいなものを棒グラフで表したものです。
 32ページは、22として、「被保険者数の実績と将来見通しとの比較」としておりますけれども、厚生年金計は、実績が若干上回り、国民年金第1号につきましては、実績がちょっと下回っている。
 次の33ページ、これは「受給者数の実績と将来見通しとの比較」ですが、ほぼ同じ数字になっている。同水準となってございます。
 34ページは、「保険料収入の実績と将来見通しとの比較」ですが、厚生年金計、国民年金(国民年金勘定)ですけれども、実績が若干上回っていますけれども、ほぼ同じようなところに収まっている。
 給付費が35ページにありますけれども、これの棒グラフと★印がほぼ同じようなところ、同水準にあるということでございます。なお、ここで言っている国民年金は、国民年金第1号被保険者及び任意加入被保険者にかかる付加年金等の独自給付に係るものです。
 36ページは、「基礎年金拠出金の実績と将来見通しとの比較」。これもほぼ同様ですけれども、37ページの「積立金の実績と将来見通しとの比較」は、実績のほうが、厚生年金計、国民年金(国民年金勘定)いずれも将来見通しを下回るという結果が出ております。
 このように、積立金以外は大体同じようなレベルですけれども、積立金のところは大分乖離があるということで、積立金の乖離の分析をしようということで、以下のページの説明になります。
 39ページは、「積立金の実績と将来見通しの乖離分析の流れ」で、ちょっとカラフルな図になっておりますけれども、こういった形で緻密に分析しようということでございます。
 ただ、緻密に分析と申し上げましても、結果としては、ちょっと1ページ飛んでしまうのですけれども、41ページに、30.「積立金の乖離分析の結果」がございます。下に枠がありますけれども、右の緑の四角の上のほうに、合計マイナス12.82兆円からマイナス12.78兆円がありますけれども、これを下の注にありますように、積立金の乖離を要因別に集約して、ケース1と3と5のうち、最大値及び最小値を表示したものとなっております。要は、積立金への影響は、マイナス12.8兆円程度だったということですけれども、乖離の発生要因として大きいのは、左の一番上にありますような名目運用利回りが大幅に低下したということで、額に直しますと、これがマイナス12.82兆円程度のもののうち、マイナス13.09兆円と、ほぼこれで説明がついてしまうという状況です。
 そのほか要因分析としましては、賃金上昇率とか年金改定率とか被保険者数、受給者数、その他いろいろ考えたのですけれども、結局、名目運用利回り、要は運用損益だけで説明がついてしまったということです。
 42ページは、国民年金ですけれども、現象としては同じです。
 積立金の影響はこれだけあったということですけれども、日本の年金は賦課方式でございますので、当然、若い人から保険料をいただいて、それを現在の高齢者に渡すということをしていますので、自前の財源という意味で保険料の収入原価と積立金を足したものがどれくらい変動したのかというのを見たのが43ページでして、これで見ますと、実績との乖離は、実績と年度末の評価基準との乖離はマイナス0.7~マイナス0.6%程度となっているということでございます。
 最後のページは、社会保障審議会年金数理部会とはということでございまして、一元化の推進に係る閣議決定の要請を踏まえて、各被用者年金制度の安定性及び公平性の確保に関して、財政再計算時における検証及び毎年度の報告を求めることを審議内容とする部会として設置されたものということですので、今回の報告は、この「毎年度の報告を求めること」に当たるということです。
 一点だけ本体についても言及しておこうかと思います。第3章ですので、資料番号で言いますと4になります。紙で言いますと、1枚めくっていただいた217ページ、PDFですと3ページぐらいに当たるかと思いますけれども、第3章の冒頭です。
 「財政検証結果との比較」ということで、3-1-1、最初ですけれども、「本章(第3章)では、財政収支等の各項目、積立金及び財政指標について、令和元(2019)年度財政検証の結果との比較を行う」と。この本は令和元(2019)年度の財政検証との比較を行いますよと書いてございまして、「公的年金の財政状況を分析・評価する。財政検証の結果との比較を行うことで年金財政が将来見通しどおりに推移しているのかどうかを明らかにし、乖離が生じている場合にはその要因分析を行い」としておりますが、次の218ページの3-1-8、最後ですが、「なお、」と書いてございますが、「本報告作成時点においては、令和元(2019)年度財政検証に令和2(2020)年の改正を反映した財政見通し等がケースⅢとケースVについては公表されている」ということです。
 先ほど申しましたとおり、この報告書自体は財政検証令和元(2019)年度との比較をしているのですけれども、今後の議論としましては、それに令和2(2020)年改正を反映したものと比較すべきではないかというのが、数理部会の指摘としてございましたので、一言言及しておこうかと思います。
 最後になりますが、度々、新型コロナウイルスの感染で短期変動と申しておりましたけれども、ちょっと飛びますけれども、226ページをご覧いただきたいと思います。
 226ページの上の図表3-2-11は、先ほど概要で説明したものです。
 第4四半期でどうこうというのが、図表3-2-12、GPIFにおける収益率ということで、第4四半期にマイナス10.71という変動を受けましたので、第1四半期からの累積で、マイナス5~マイナス6%やられたということで、上の緑の2019年度のところになっているということでなっております。
 数理部会として、別にマイナスだから何か平滑化をしようというわけではございませんで、例えば、これがプラスマイナスが逆であったとしても、例えばある四半期だけ高いということをもって評価をしても、それは単に短期変動でそうなっただけでしょうと言われてしまいますと、分析の意義といいますか価値についてどうなのかなという疑念がありましたので、最初のポイントにもありましたように、評価についても積立金の平滑化等について検討してはどうかという提言を頂戴しているところです。
 資料の説明は以上です。
○翁部会長 御説明どうもありがとうございました。
 それでは、報告書の案に関しまして、何か御意見・御質問などございましたら、お願いいたします。
 いかがでしょうか。
 野呂委員、お願いします。
○野呂委員 ご説明、ありがとうございました。
 最後にご説明のありましたとおり、時価ですと、一日で大きく変わりますので、そこをどうスムーズにするかというのは、やはり今後検討する課題だということで、今日の報告書のとおりでよろしいかと思います。特に今回の報告書については、特に修正、質問等はないのですけれども、今回、この作業を通じて、来年度以降に、こういう検討、研究もできればということで、来年以降に向けてですけれども、準備といいますか、検討をしていただきたいことが3点ほどあり、ちょっと長くなりますが、申し上げます。
 概要といいますか、資料1で、下のページで2ページのところの「被保険者数」でございますけれども、70歳までの就労についての努力義務が言われている中で、ますます高齢者の就労促進が進むと思います。一方で、短時間労働者の受給拡大につきましては、今後、また、50名以上企業などにも広がるということで、そうした中小企業は今経営が非常に厳しいところだと思いますので、そうした高齢者、特に65歳、70歳に広がる中で、短時間労働者も含めまして、被用者になっていくのかどうかという分析を、引き続き、緻密にやってほしいと思います。
 それから、以前にも申し上げましたけれども、実際に受給権が発生した65歳の方がどういう選択をしているかということについては、これから継続的に見ていったほうがいいと思います。簡単に言いますと、繰り下げをするのか、即時でもらうのか、あるいはすでに繰り上げていて早めにもらっている人が多いのかという辺りについて、そういう数字が要るのではないかと思います。これが1点目でございます。
 2点目は、14ページ目の標準報酬月額のところですけれども、このデータ自身は非常に重要な数字だと思いますし、御説明でもコロナという話がありましたけれども、来年は、標準報酬月額にそうしたコロナの影響が出てくるかと思いますので、単年度ベースで標準報酬月額をきちんと見ていくことは重要かと思います。
 加えて、もし可能であれば、将来の年金受取額の推定に必要な、例えば何年ぐらい加入しているかという過去の加入年数とか、あるいは被保険者が過去平均でどれぐらいの標準報酬月額であったかという、そうした分析から、将来どのような年金額の受取推計がされるかということにつきましても、もし可能であれば見てみたい、検討できないかなと思います。これは可能であればということでございます。
 最後が、本日、新聞発表がございました納付率について、新聞報道を見ましたところ、71.5%ということで非常に高まっているのですけれども、一方で、免除者も609万人ということで、これも過去最高というので、財政にとってはプラスのところとマイナスのところが相まっています。免除者の増加についてはコロナの影響も大きいという報道でしたけれども、免除者の動向を今後見ていくと同時に、免除者が今後、追納といいますか、免除により支払わなかった分を後で払う、そうした行動も行われていくかどうかということも見ていきたいと思います。そうした分析ができるかどうかも、来年度以降の研究課題としてどうかと思っております。
 以上でございます。
○翁部会長 大変貴重な御提言ありがとうございます。
 何か事務局からありましたら、お願いいたします。
○鎌田首席年金数理官 御意見ありがとうございます。
 全部網羅しているかどうかはちょっとあれなので、もし不足があれば、また、おっしゃっていただければと思いますが、就労状況のところは、引き続き見ていきたいと思っておりますし、繰り上げ下げにつきましても、各制度所管省から報告をいただいた中で、どれくらいいるというのは報告いただいているので、それである程度分かろうかなとは思っております。ただ、制度所管省から報告いただいたものは、実際に繰り上げた、繰り下げたというところの数字しか分からないので、あと5年待っておこうかなみたいな数字はちょっとこちらでは分からないので、そこをどうするかという問題はちょっとあろうかなとは思います。年金数理部会だけで全部フォローできるかどうかはちょっとあれですが、事業統計のほうも活用して、何かを提供できればと思っております。
 2点目の標報の関係ですけれども、令和元(2019)年12月ぐらいで初めてコロナの話が日本でも出たかと思いますので、今回の報告には、運用のところを除いて、コロナの影響はあんまりないのかなと思っておるのですけれども、ただ、来年はちょっと出てくるかなと思いますので、そこは、コロナに限定せず見ておきたいと思っております。
 今まで何月ぐらい被保険者期間があるかというのは、これは制度所管省から、年齢階級別、被保険者の期間別の統計の分布を出していただいておりますので、それで一定程度は分かるのかなと思います。累積の標報はさすがにちょっと、そこまで各制度に御協力をお願いするのはあれかなと。財政検証のときには、それは数字できちんと持っていてやっておるのですけれども、累積はなかなかちょっと難しいのかなと思いますのと、累積したものの1年の差分を見て何が分かるのかというのは、すみません、私、今、急にはちょっと思いつかないので、メリ・デメがあろうかなというか、作業をしていただくだけのことがあるかどうか、すみません、先生の域に私もまだちょっと達してないので、そこまではちょっと分かりかねるところでございます。
 先ほども申し上げましたけれども、今日、納付率の話があって、免除者ということもありましたけれども、免除された方、追納の保険料の話は、前の作業班のときに少し御説明しましたけれども、そういう統計はないということでしたので、また、そこは課題のままということになりますけれども、また、引き続き御指導いただければと思います。
 ありがとうございます。
○翁部会長 ありがとうございます。
 来年は、免除のことがすごく気になるところですので、少し前広に何か調査ができるかどうか、ちょっと検討できるといいかなとは思います。
○鎌田首席年金数理官 年金数理部会というよりは、事業統計のほうとの連携を少しさせていただいて、分かるものであればと思っております。
○翁部会長 ありがとうございます。
 そのほかに、御意見、御質問はいかがでしょうか。
 小野委員、お願いいたします。
○小野委員 ありがとうございます。
 まずは、様々なお願いに御対応をいただきました事務局の皆様に御礼を申し上げまして、3点ほどコメントをさせていただきます。
 まず私は、今後の公的年金制度にとって重要な課題は、人々が長く働き、公的年金を充実させることができるような世の中になることだと思っております。そうした観点から、実施機関からの御報告を基にしまして、高年齢者の処遇や雇用の実態が分かるように、第2章112ページとか114ページ辺りになりますけれども、資料の改善をお願いし、また、繰り上げとか繰り下げの受給状況が分かる資料を、第2章の156ページ辺りになりますけれども、追加掲載をお願いしまして、それぞれ御対応いただいたということで、御礼を申し上げます。
 第2点は、従来から行っている第3章の財政検証との比較です。これは首席年金数理官からも御説明がありましたけれども、従来は、ピアレビューの直後に公表する財政状況報告書は、その1つ前の財政検証との比較の5年目という位置づけでした。今回、これを最新の財政検証を受けた1年目の評価に変更したことは、非常に前向きな対応でありまして、高く評価したいと思います。
 その一方で、2004年財政再計算を受けて2006年に公表されたピアレビュー直後の財政状況報告書は、1999年の財政再計算ということで、言わば給付建制度の下での比較だったということでして、現在の報告書もその報告書を踏襲したような形と考えています。保険料建てという現在の運営となった報告書の在り方は課題なのかなと思っております。
 特に、財政再計算と財政検証とでは、実質的に定義が変わった点に留意が必要だと思っております。それは、財政再計算では制度変更を加味した結果が示されているのに対しまして、財政検証では制度変更が想定されず、結果を受けて策定されるという位置づけになっております。したがいまして、財政検証を受けた制度変更をいかに整理するかということは、次年度以降の財政状況報告書の課題の一つだと思っております。これが2つ目でございます。
 最後は、これも首席年金数理官が御指摘いただいたことですけれども、積立金の評価に関するものでございます。令和元(2019)年度の運用パフォーマンスはご覧のとおりで不振であったということですけれども、対照的に令和2(2020)年度はおそらく空前のパフォーマンスになるのではないかなと思います。こうした状況は、ピアレビューでも足下の積立金の変動の影響が相応にあることが確認されていますが、結果として長期的な観点からの財政を評価する上でのノイズとなる懸念があります。積立金の初期値の設定方法に関して、数理的評価を導入することを提案させていただいたというのがピアレビューでございます。ただ、毎年の評価につきましても、同じく短期的な変動をどう考えるかという問題があると思います。
 そこで、財政検証の初期値の設定方法は、経済前提の専門委員会等で検討することになるとは思うのですけれども、そこでの検討に資する材料としても、毎年度の報告において、数理的評価の試算が必要ではないかと思っております。
 以上でございます。
○翁部会長 貴重な御意見ありがとうございます。
 何かコメントをいただけますでしょうか。
○鎌田首席年金数理官 御意見ありがとうございます。
 1点目は、こそばゆいお礼の言葉でしたので、ちょっとコメントを差し控えさせていただいて、2点目ですね。制度変更が反映されていないというところ、御指摘もあるということで先ほど御説明いたしましたが、今回は、作業時間の関係もございましたので、できませんでしたけれども、来年度以降の課題とさせていただきたいと思っております。
 大きな3点目として、評価のところについて平滑化ということでございまして、これは書いているだけでは物事が先に進みませんので、これは、事務局としてちょっとたたき台等をつくって、そういった方面にお強い技術作業班の先生方にちょっと見ていただいて、ただ、制度所管省からデータが出せる、出せないというフィージビリティーもございますので、その辺はちょっと早めに検討を進めて、令和2年の報告からできるようにしたいなとは思っておりますが、具体的なスケジュールはまだ思いつかないのですけれども、令和2年から、制度所管省の方もできるような形で、次回の財政検証の初期値の設定に関しても、何らか有意義なものになるようなものができればと思っておりますので、また、引き続き御指導いただければありがたいと思っております。
○翁部会長 ありがとうございました。
 そのほか、御質問、御意見いかがでしょうか。
 枇杷委員、お願いいたします。
○枇杷委員 ありがとうございます。
 御説明もありがとうございました。
 意見はないのですけれども、意見というか、非常によくまとめていただいて、今の御説明もすーっと非常に頭に入っていく感じでしたので、すばらしい資料だと理解をしています。
 今後に向けてということで、感想も若干含めてですけれども、非常に仕組みが難しいものをどうやって説明して、国民の人にできるだけ情報を正しく理解していただくかということが引き続き課題だと思っておりまして、そういう意味では年金資産の評価の問題もその一つだとは思うのですけれども、全体的に信頼を保ちつつも適切に正しくポイントを理解していただくというところの工夫は、引き続きやっていく必要があるかなと思っているのですが、そういう中で、今、年金広報の検討なども、別途、厚生労働省で進められていますので、その中にこの報告などをどういうふうに取り込んでいくのかとか、あるいは若い人への教育とかその辺をもう少しやっていく必要があると思いますので、あと、この部会でも、年金白書でしたか、何かつくったらどうかという話も出ていたかと思いますので、いろいろなやり方はあるとは思うのですが、そういう側面での検討は進めていく必要があると思いました。
 それから、積立金の評価については、短期的なノイズを排除することについてはそうだなと思います。一方で、世の中全体は時価会計だということで、企業会計はもうそういうふうになっているという中で、これだけ数理的評価だということについて、評価する方のコンセンサスをどうやって取っていくかというのも非常に大事なポイントだと思っています。なぜ、数理的評価が妥当であるのかということですね。そういう意味では諸外国の取組とかも参考になるかもしれませんし、会計とかそういうところの専門家の知見みたいなものも少しヒアリングしてもよいのかなと思いましたので、申し添えたいと思います。
 以上になります。ありがとうございました。
○翁部会長 ありがとうございます。
 いかがでしょうか。
○鎌田首席年金数理官 御意見ありがとうございます。
 いいものになったとしたら、それは委員の皆様のお力ですので、どうもありがとうございます。
 広報の観点ということで、先ほど年金局内でも広報検討委員会がございますので、そこに何かいい材料があればということもありますし、先ほど白書という話もありましたが、白書というやり方もありますし、このコロナの環境の中ではちょっと難しいのですけれども、来年度以降、セミナーみたいなこともかつてやっておりましたので、どういうやり方が今の時代ふさわしいかは分かりませんけれども、そういった形での広報というか、分かりやすい説明はあろうかなと思っております。
 積立金のところ、企業会計はそうだと、おっしゃるとおりなので、なぜ、この平滑化をしなければいかんのかといったところをきちんと説明する必要があると考えております。別に単年度の成績に目を背けるつもりはございませんので、なぜ平滑化をしなければいかんのかというのは、それこそ丁寧な説明が必要なのかなと思います。
 あと、諸外国でどうやっているかというところも、ヒアリング等できれば行いたいと思っております。
 御意見ありがとうございます。
○翁部会長 ありがとうございます。
 意見、そのほかいかがでございますか。
 山口委員、お願いします。
○山口委員 ありがとうございます。
 今、枇杷委員がおっしゃいましたように、国民に対しての正しい情報提供は、今後も工夫していただきたいと思います。
 それから、先ほど概要の説明のところで、被保険者の年齢分布で、国民年金第1号被保険者について、20代前半の人が2割を占めるということです。職権適用にはなってきて、加入したばかりの人の納付率も上がってきています。
 これまで御議論の中で、図表の第1号被保険者の「自営業者等」というネーミングというのでしょうか、説明の仕方には検討の余地があるのではないかという御議論があったと思うのですけれども、ここの辺りも、どういう人が加入するのかというところも含めて、今後さらに検討していただきたいと思いました。
 ありがとうございます。
○鎌田首席年金数理官 御指摘いただいた図表が、資料2の第1章の48ページの図表1-2-1の「年金制度の体系」ということで、年金数理部会だけではなく、うちの省で幅広く用いているものですが、これの国民年金第1号被保険者の上に「自営業者等」とあるところが、これでいいのかという御議論だったかと思います。
 数理部会だけで使っているわけでもないという、若干そういう消極的な意見もあるのですけれども、国民年金1号、2号、3号とありまして、要は、作業班のときには、今、無職が多いのだから「無職」と書くべきではないかという意見も確かに頂戴したことは覚えておりますが、イメージとしていかがなものかと思っておりまして、イメージは2つありまして、まず、国民年金の1号、2号、3号は、2号は厚生年金の被保険者、要は被用者となっていまして、3号は2号の被扶養配偶者となっていまして、1号は2号でも3号でもない人となっています。ちょっと3号を置いておくと、2号は被用者で雇われている人ということですので、それと対になる概念としては、自営業というのがすとんと来るのかなと思っているというのが1点。
 もう一つは、無職というのは、国民年金被保険者実態調査で無職というのを集計しておりますけれども、その中には、先ほど国民年金1号で20~24が多いと言っていましたが、無職の中には相当数の学生が入っている。あと、1号被保険者の専業主婦も入っています。ということと、普通、無職と聞いて何をイメージするかというと、ちょっと失業中の方もいらっしゃれば、リタイアした方もいると。その辺を先ほどの話と重なりますけれども、国民に対するメッセージとして、無職と言ったときに、ああ、学生は入っているよねと素直に思っていただけるとはちょっと思えないので、そういった分かりやすさという観点から、「自営業者等」ということで踏襲してはいかがかなとは思っています。
 ですから、統計上、国民年金被保険者実態調査の無職には、学生の自営業者も入っていて、一番多くなっているのですけれども、それをそのまま使うのはいかがなものかなと思っておりますので、すみませんけれども、この報告書としては、今回は、この「自営業者等」ということでやらせていただいて、分かりやすいという説明の観点から、また、検討をしたいかなと思っております。
○翁部会長 ありがとうございます。
 オンラインで参加されている方で、もし御意見ございましたら。
 関委員、お願いします。
○関委員 分かりやすい報告書をまとめてくださり、どうもありがとうございました。
 今回、状況報告書も新しい形になり、読みやすくなったと思います。
 広報をできるだけ今後してほしいというお話がほかの委員からもありました。例えばYouTubeで、今回、我々に御説明くださったような内容を年金数理官に話していただくといった形の広報もいいのではないかと思いました。今まで、シンポジウムを開催したり、いろいろな形での広報を行ってきています。他方で、最近、学生、つまり若い人は、Googleに加えてYouTube検索をしているようです。しかし、「年金」とYouTubeで検索すると、よく分からない解説等が出てきます。そうしたものよりも、今、御説明があったような内容を5分ずつに分けて上げるほうが、より効果が高いと思いました。
 以上です。
○翁部会長 ありがとうございます。
 YouTubeでの発信をご検討いただくことについて、ぜひいかがでしょうか。
○鎌田首席年金数理官 私がやって視聴率が下がるとちょっと嫌だなと思いますので、その辺も含めて、ちょっと検討させていただければと思います。
 御意見ありがとうございます。
○翁部会長 分かりやすく、先ほどのような説明をしていただければ、すごくいいかなと思います。
 そのほか、よろしいでしょうか。いかがですか。
 それでは永瀬委員、その後、駒村委員お願いします。
○永瀬委員 貴重な資料をまとめていただきありがとうございました。
 私が今回の資料の中から、改めて関心を持ったのは、1つは参考資料第2章106ページの標準報酬月額分布のところです。ポイントには取り上げられていなかったですけれども、図表2-1―12の(b)ですが、厚生年金に加入している現役男女の月額報酬の分布の差がきわめて大きいこと。これは厚生年金加入者のみの統計ですから、女性に多いパートやアルバイトはあまり含まない上での男女の月収差です。それでも女性は月収22万円のワンピークであり、一方、男性は月収26万から月収62万ぐらいまでに幅広く分布しているという大きい男女の月収の差があること。
 それから、その下の図表2-1-12の(c)です。厚生年金の短時間労働者の月額報酬の分布ですが、短時間雇用者に関する年金法改正の効果として、興味深い変化がみられたことを示しています。先ほどご説明にもありましたけれども、501人以上企業で週20時間以上の短時間労働者の厚生年金加入を企業の義務づける法改正が2016年10月から施行されました。法施行されたばかりの2016年度には、そうした短時間雇用者の月収は、図のとおり、多くの女性は9.8万円であって、それ以上の賃金を得る者はあまりいませんでした。しかし、2017年、2018年、2019年度と、図に変化が示されていますが、短時間雇用者の厚生年金加入者が増えただけでなく、どんどん月収が高い者が増えていったこと。2019年の女性をみると、月収11万円から20万円ぐらいまでに賃金分布の幅が広がったこと。つまり、短時間雇用者に対して、厚生年金加入を義務化したことで、女性の行動がかわり、また企業側も雇用選択がかわり、その結果として、これまで、9.5万円に集中していた短時間労働者の月収が上がり、幅が出ていくという大きな影響が出ていることが図として示されたこと。労働時間が少し伸びたのかもしれませんが、賃金率そのものが上がったのかもしれない。とても重要な変化が示されており、このあたりは次回に分析してほしいと思います。年金制度の変化が労働市場の賃金分布に与える影響を示す図として大変興味深く拝見いたしました。
 もう一つ、私は女性労働が専門なので、96ページの第2章図2-1-7あたりで、女性の第2号が非常に大きく増えたということにはおおいに関心を持ちました。反面、このように女性の労働力率が大きく伸び、厚生年金加入も増えているのに、依然として男女賃金格差が大きいことは課題です。しかし、短時間雇用者を厚生年金に加入することを企業の義務とするという制度変化により、短時間雇用者の月収が上昇するような変化が起きた。つまり社会保険制度のあり方によって、人々の選択が変わり、労働市場が変わることが示され、今後さらに分析が必要かと思います。
 時系列のデータも豊富で、学生など、若い人たちが勉強するのにもいい資料だと思います。
 その上で、感想めいたことになりますけれども、財政検証では、100年先の見通しについて、たとえば賃金上昇率の見通しについて、ケース1からケース幾つと、いくつも検討がされているのですが、これは男女の賃金の伸びの「合計」についてに限定されています。男女の賃金分布の変化について、たとえば女性の賃金がもっと男性に追いつく、追い付かないといったことで、どう年金分布が変わるのかといったケースは特には今まで考えられてきませんでした。
 しかし男女の賃金が将来どうなっていくのかは、将来社会に大きい影響を与えます。海外では男女の賃金差の大幅な縮小が継続的に続いていると知られています。しかしもし日本では男女賃金差の大きい縮小がおこらないとすれば、女性の将来の貧困が大いに懸念されることになろうかと思います。
 現役時代に女性が低収入にとどまりやすいのは、子育て負担などのほかに、第3号被保険者であれば自分で社会保険を納めないで済むという年金制度が、低収入を女性に奨励しているという側面も否めません。今回、短時間雇用者を厚生年金に加入させることを義務化したところ、短時間雇用者の賃金が少し上がっていったことが示されたのは、この制約がはずれたからと思われます。
 他にも主に女性の働き方に影響するいろいろな制度があるかと思います。年金給付については、特に女性に関連するものとしては例えば加給年金や遺族年金があると思いますけれども、その辺については、統計がよく分からない。どのくらいの人がどのくらいもらっているかよく分からないということを作業班で説明されました。こういった実態がどうなっているのか、今後、詳しい統計を知りたいと思います。
 また政府の方針としては、女性の就労や被用者年金加入を推進していく方向にあると思っております。そのためにも細かくジェンダー統計を見られるよう、資料がより整備されると、ありがたいと思います。付属統計表において、基本的には男女別に出ているものも多いのですけれども、例えば基礎年金を除いた厚生年金部分についての男女の年金の時系列の推移などは出されていません。さまざまな統計について、ジェンダー統計が示されるといいだろうと、次回に向けてのお願いとしてさせていただきます。よろしくお願いいたします。以上でございます。
○鎌田首席年金数理官 御意見ありがとうございます。
 作業班でも、先生からは加給年金のところと御質問いただきましたが、制度所管省からいただいているところでは、1人当たりの加給年金額は何百円とかという、そういった統計しかございませんで、そこの拡充につきましては、また、いろいろ検討しないといけないこともありますが、先生の問題意識といいますか、そういうことは分かりましたので、数理部会として、財政の安定性・公平性というところを検証するという、そういう道筋の中で、加給年金とか女性の就労についても検討できるところは検討し、統計をつくれるところはつくれる範囲でやろうかなと思っております。
 御意見ありがとうございます。
○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、駒村委員お願いいたします。
○駒村委員 ありがとうございます。
 今回の報告書はさっき御説明があったように、1号の表現は、ほかとのバランスも考えると、今のままで仕方がないのかなとは思う一方で、今後、この部会はあくまでも統計というか、財政状況の議論ということでありますけれども、全体的な国民年金1号とは何者なのかということは、今後、基礎年金の水準の話やいろいろな議論が、被用者と自営業者と何か異質なグループみたいな捉え方をされないような工夫は必要で、例えば、1章の5ページにあるこの記述で実態を示しているのか。1章の5ページの1-2-2のような記述のままでいいのかどうかは、今後は、ちょっと考え直したほうがいいのではないかなと思います。
 厚生労働省の国民年金被保険者実態調査を見ると、先ほども、どう整理するかというところはありましたけれども、一番多いのは、グループとしては無職で、次のグループとしては短時間労働者、さらにその次のグループに自営業者・家族従業員。家族従業員よりも、むしろ常用雇用で適用されていない中小零細企業の方もいると。要するに、1号というのは、85年に基礎年金ができた頃とはかなり違っているような構成状況である。自営業者だって一部は厚生年金に加入されているところもあるわけですから、この辺は、国民年金1号イコール自営業者と思われないように、今後は、説明を工夫したほうがいいのではないか。特に、例えば1-2-2は、既に、これをもう少し丁寧に書いてもいいのではないかなと思いました。
 以上です。
○鎌田首席年金数理官 御意見ありがとうございます。
 一応来年度以降の課題ということで受け止めさせていただいた上でですけれども、先ほども説明しましたし、駒村先生からもありましたけれども、先ほどの国民年金被保険者実態調査で一番多いのは無職ということで、学生も入っていますよという話をしまして、2番目に多いグループが、パート・アルバイト・臨時というグループですと。次が自営業者とその家族従業者という感じになるのですけれども、先ほどの無職の話は済みましたので繰り返しませんが、では、次に多いのはパート・アルバイト・臨時ですけれども、これは今日の報告書でも説明しましたけれども、適用拡大をしているということですので、また、この先、減少が見込まれるということになると、これも代表性としてはいかがかなと思っております。
 ただ、昔々は、第1号というのは農業従事者みたいな言い方もしていた時代もありますので、時代とともに変えなければいけないところもあろうかと思いますので、また、そこにつきましては、先生の御意見も参考にして、少し来年度以降としつこいですけれども、そういったところでちょっと検討していきたいと思っております。
 御意見ありがとうございます。
○翁部会長 この報告の性格にもよるのですけれども、ほかのいろいろなレポートなどでは、コラムみたいなものをつくって、そのことをしっかりと説明するとか、そういう工夫をすることがあるのですけれども、この財政報告にはちょっとなじまないのかもしれません。でも、今ご説明いただいたような情報が見られることも必要かと思います。だから、注でもいいのかもしれないのですけれども。来年度以降の課題で構わないとは思うのですが、ぜひ検討していただく必要はあるかなと思います。
○鎌田首席年金数理官 分かりやすい広報という観点からも、時代も変わってきていますので、その辺を踏まえた記載を検討したいと思っております。
○翁部会長 よろしくお願いします。
 それでは、浅野部会長代理、お願いいたします。
○浅野部会長代理 どうも、資料作成お疲れさまでした。
 3点ほどコメントさせていただければと思います。
 1点目が、今年度の今回の報告についてですが、今、議論があったように、課題はあるというものの全体としまして、これまでから幾つか進歩があったところもありまして、大変評価できるのではないかなと思います。
 具体的に言いますと、これまでは毎年の報告では、提言というものはあまりなかったと思うのですけれども、部会としての決意表明も含めて提言がされていると、こういうことは大変評価できるのではないかと思います。
 それから、厚生年金の一元化の中で、本来、厚生年金全体だけ表示すればいいという考えもありますが、後ろのほうの参考で、各実施機関ごとの収支についてしっかり分析をしてコメントをされているということで、これも評価できるのではないかなと思います。作成される事務局としては、できれば、もう一元化だからやめたいというお気持ちも若干あるかもしれませんけれども、国民にとって大切な情報だと思いますので、ぜひとも、今後ともこれを続けていただければなと思います。
 それから、2つ目ですが、今申しました提言にも関係しまして、それから、多くの委員の方がおっしゃっているように、積立金の評価につきましては、これは今年度この短期的なマイナスがあったということで、こういう結果になっているのは非常に象徴的ないしは示唆的なことで、今後、これを平滑化なりスムージングしていくことは極めて大切かなと思いますので、ぜひお願いしたいと思います。これはマイナスになっただけではなくて、プラスになったことによって、かえって安心を与えてしまうような誤ったメッセージになるというところでも問題かと思いますので、よろしくお願いします。
 それとともに、実際にこういうふうに変えるということにはいろいろ御意見が出てくる可能性はあるとは思うのですが、まず一歩進めることが大切だと思うので、簡単な方法でも結構だと思うので、令和2(2020)年度の分析のときには、ぜひ、何らかの対応をしていただきたいなと思います。
 それから、3点目が新型コロナの影響ということで、各委員の方からもお話出ましたが、私自身が非常に気になるのは、出生率の低下が非常に気になっておりまして、作業部会でも少しコメントはさせていただきましたが、これは令和2(2020)年度以降、また、数値が出てくると思いますが、短期的な影響とかだけで捉えないで、この影響がしばらく続いたらどうなるだろうかとか、こういうのを契機に出生のトレンドは変わってしまう可能性もあると思うので、そのような視点で分析をお願いしたいと思います。要は、短期的な問題だということで一蹴しないでいただきたいなと考えております。
 私からは以上です。
○翁部会長 ありがとうございます。
 いかがでしょうか。
○鎌田首席年金数理官 御意見ありがとうございます。
 提言につきましては、部会としての提言であって、別に私がやったわけではありませんので、提言いただきまして、ありがとうございます。
 一歩進めるというところにつきましても、令和2(2020)年度から、先ほど小野委員のときにも御説明しましたけれども、まずはやってみるという感じで進めたいと思っております。それがそのまま財政検証に使えるかどうかは分かりませんが、検討の材料にはなろうかなと思っております。
 コロナの出生につきましても、令和元(2019)年度は、先ほど申しましたとおり、出生にはそんなに影響はないと思っているのですけれども、2年度、3年度で何か出てくるかもしれません。ただ、財政検証では、出生の低位、中位、高位ということで、ある程度下がったときはこうなるというのは見えていますので、それとの比較でどうかということは、2年度、3年度の報告のときに、また、検討なりしたいかなと思っております。
 説明は以上です。
○翁部会長 ありがとうございました。
 皆様から御意見をいただきましたが、追加的に何かよろしいでしょうか。
 大変貴重な御意見をたくさんいただきまして、私が申し上げたいこともほとんど皆様に言っていただいたことばかりでございまして、来年に向けての課題がたくさん建設的な課題を問題提起していただいたと思っております。報告書そのものの修文について、ぜひこれだけはというようなことは今回なかったので、これをもちまして、本部会の「令和元年度公的年金財政状況報告」とさせていただきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
(首肯する委員多数あり)
○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、異議ないということで、このまま進めさせていただきたいと思います。
 誤字とか脱字とか細部の修正がもしございましたら、また、御指摘いただきますけれども、基本的に、私に御一任いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、これで、令和元年度公的年金財政状況報告についての審議につきましては、終了としたいと思います。
 本当に、今後の検討課題いろいろ御指摘いただいたと思います。これにつきましては、作業班等で今後も検討を進めていきたいと思いますので、ぜひ、委員の皆様には引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 事務局から、今後の日程等につきまして、何か御報告がございましたら、お願いいたします。
○鎌田首席年金数理官 今後の日程につきましては、調整して、また、御連絡申し上げますので、その際はどうぞよろしくお願いいたします。
○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、第89回年金数理部会は、これにて終了させていただきたいと思います。皆様、どうもありがとうございました。
 

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