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2018年3月15日 第12回HTLV-1対策推進協議会

健康局 結核感染症課

○日時

平成30年3月15日(木)14:00~16:00


○場所

厚生労働省 専用第22会議室(18階)


○議題

(1) HTLV-1に関する啓発について
(2) 日本HTLV-1学会関連疾患診療施設登録制度について
(3) その他

○議事

○野田結核感染症課長補佐 では、定刻となりましたので、ただいまより、第12回「HTLV-1対策推進協議会」を開催いたします。

 本日は、御多用のところ、本会議に御出席いただきまして、ありがとうございます。

 初めに、健康局長より御挨拶をさせていただきます。

○福田健康局長 健康局長の福田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げたいと思います。

 本日、御出席の構成員の先生方におかれましては、年度末、大変御多用のところ御出席を賜り、まことにありがとうございます。また、日ごろより厚生労働省行政、HTLV-1対策の推進に御指導を賜っておりますことを、この場をかりまして、まず厚く御礼申し上げたいと思います。

 私ごとで恐縮ですけれども、私自身は、以前、宮崎県のほうに福祉保健部長ということで出向していたことがありまして、宮崎県も御承知のとおり、HTLV-1の多い地域でございます。HTLV-1の問題につきましては、従来から関心を抱いていたところでございますけれども、先生方、よく御承知のとおり、近年では、九州だけではなくて、関東、そして関西の大都市圏でもキャリアの患者さんが非常にふえてきているということもありまして、特定地域の問題ではなくて、今やオールジャパン、国としてのHTLV-1対策を行うことが非常に重要であるということを強く認識しているところでございます。

HTLV-1につきましては、感染症という側面だけではなく、その感染経路から、母子保健、また発症する関連疾患によりましては、がん対策、また難病対策と、関連する領域はまことに多岐にわたってございます。それぞれの分野を超えた総合的な対策が重要であると考えてございます。今回は、研究開発の状況につきまして御報告いただくとともに、特に普及啓発と、それから医療体制の整備につきまして、先生方に御議論していただきたいと考えてございます。

HTLV-1総合対策の一層の推進に向けまして、構成員の皆様方には活発な御議論をいただきますよう、改めましてお願いを申し上げ、簡単ではございますけれども、開催に当たりましての御挨拶とさせていただきたいと思います。

 どうぞよろしくお願いいたします。

○野田結核感染症課長補佐 本日の出席状況について御報告をいたします。

 稲葉構成員におかれましては、前回の会議をもちまして御勇退されましたので、本日は、構成員14名中10人の方に御出席いただいております。

 岩本構成員、齋藤構成員、森内構成員、吉田構成員より御欠席の御連絡をいただいております。

 また、本日は参考人といたしまして、2名の方に御出席をいただいております。東京大学大学院内丸薫参考人、そして国立感染症研究所水上拓郎参考人でございます。

 次に、事務局より資料等の確認をさせていただきます。

 お手元に議事次第、構成員名簿、座席図のほか、資料1~6、参考資料1~3を御用意しております。また、未公表資料でございますけれども、机上のみの配付といたしまして、資料6の別添を配付させていただいております。さらに、お手元のほうに机上配付という形になっておりますけれども、資料1の関連で試し刷り版のパンフレットということで、「はたらく細胞」の資料も配付させていただいております。

 不足の資料等ございましたら、事務局までお申し付けください。

 冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。

(カメラ退室)

○野田結核感染症課長補佐 以降の議事運営に関しましては、座長の渡邉構成員にお願いいたします。

○渡邉座長 それでは、私がこれから座長をさせていただきます。

 まず、本日の議題を確認いたします。本日の議題ですが、議題1「HTLV-1に関する啓発について」、議題2「日本HTLV-1学会関連疾患診療登録制度について」、議題3「HTLV-1に関する研究開発の状況について」を予定しております。

 構成員の皆様には、円滑な議事進行に御協力をよろしくお願いいたします。また、質疑応答の時間を十分確保したいので、プレゼンテーション、発表に関しましては、時間厳守でお願いしたいと思います。

 それでは、早速ですが、議事に入りたいと思います。議題1「HTLV-1に関する啓発について」、事務局から資料1の説明をお願いいたします。

○繁本結核感染症課長補佐 説明させていただきます。

 資料1でございますが、「Press Release」と書かれた表裏の1枚と、「HTLV-1を正しく知ってください」と大きく書かれた、黄色が主体のリーフレット、表裏、あわせて2枚御用意させていただいております。

 こちらですけれども、「ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)」の啓発活動に体内細胞擬人化TVアニメ「はたらく細胞」を起用させていただくこととなりました。その資料でございます。

 このHTLV-1ですが、一般市民だけでなく、残念ながら医療従事者の認知度もまだ高いとは言えない状況でございます。そこで、広くこのHTLV-1を知ってもらいたいと考えておりまして、このたび「はたらく細胞」とコラボレーションして、ポスター、リーフレットを作成いたしました。もともと講談社の「少年シリウス」に連載中の漫画でございますが、150万部売れておりまして、女性や医療従事者にも人気がある漫画でございます。

 そして、この7月にアニメ化が決定しております。これは、細胞が登場人物になっておりまして、人の体が世界となっておりまして、そこでいろいろな細胞が出てくるのですが、ヘルパーT細胞も免疫系の司令官として登場してございます。このヘルパーT細胞は皆さんの体の中にもいることから、恐らく人ごとではなく、自分のこととして興味を持ってもらえると考えて、このコラボレーションを企画いたしました。

 このポスターとリーフレットが本日公表されております。表面ですが、HTLV-1、ヒトT細胞白血病ウイルス1型を正しく知ってくださいというのが一番のメッセージです。少しでも興味を持っていただいた方には、感染するとHTLV-1関連疾患を発病することがある。母子感染と性行為感染が主な感染経路である。HTLV-1の検査は保健所などで受けることができる。この3つが、我々が伝えたい大きなメッセージです。

 そこで、さらに興味を持っていただいた方には、裏面でもう少し詳しく知っていただければと考えております。

 以上でございます。

○渡邉座長 どうもありがとうございました。

 ただいまの説明に対して、御質問、御意見等ございましたら、お願いいたします。

 私のほうから、よろしいでしょうか。このようなリーフレットをどこに配るという話はされましたか。

○繁本結核感染症課長補佐 失礼しました。ポスターが3,200部、リーフレットは13万部ほど作成いたしまして、全国の都道府県や保健所設置市、特別区などにお配りして、その先、いろいろなところに掲示していただこうと考えております。

○渡邉座長 そうすると、基本的には保健所とか、そういったところにまずお送りするという理解で宜いですね?。自治体、保健所ですね。そうすると、いわゆる病院ではないということになりますが自治体の病院等には配らないのでしょうか?

○繁本結核感染症課長補佐 保健所を通して病院にも配っていただけるものではないかと考えております。

○渡邉座長 直接病院のほうには配らないと言うことですね。

○繁本結核感染症課長補佐 予定はしておりませんでした。

○渡邉座長 わかりました。

 菅付構成員。

○菅付構成員 非常にインパクトのある格好いいポスターだと思いますが、このまま公的施設に配置するだけではもったいないと思うのです。研究者が主催する講演会や学会などのイベントのポスターに起用していただきたいです。また、HTLV-1というウイルス自体が肝炎やエイズウイルスに比べて地味なので、多くの人の目にこのポスターを焼き付けてもらいHTLV-1を広げるために、いろいろ工夫して活用するべきだと思います。これを保健所や役所で必要な人にただ配るというのであれば、それ以上の広がりがないと思われます。ホームページやFacebookなどインターネットで最大限に活用できれば良いと思いました。

 また、ヘルパーT細胞という細胞に目をつけて、HTLV-1に関心を持たせるという、視点がすばらしいのでこれを利用しない手はないと思いました。そこで、HTLV-1の日という啓発の日を定めて、イベントを開催しこのポスターを最大限に生かしたいと思いました。そして、その啓発の日を、患者会のスマイルリボンだけではなくて、医師や研究者や厚生労働省の皆様方と一緒に盛り上げていけないかと思っています。まずHTLV-1の日というものを、先生方や私たち患者会や国の方々と一緒に話し合って決められないかと提案いたします。以上です。

○渡邉座長 ありがとうございました。

 これに関して、何か発言はありますか。

○野田結核感染症課長補佐 ありがとうございます。

 まさに、今、菅付構成員からございましたように、ポスターをただ出しただけでは広がらないということがございますので、啓発については複合的にやっていきたいと考えております。

HTLV-1の日について言うと、国だけの話ではなくて、学会とか患者会というところがあると思いますので、まずそこの議論が重要だと思っております。いずれにしても、今回、ポスターを出させていただきましたが、それと同時に、最近、感染症の関係の啓発については、単にポスターを出すだけではなくて、もちろんホームページで自由に使っていただけるように提供していくとともに、それ以外にSNSとか、そういうところで広く知っていただけるような形で、複合的にメディアを使って啓発していこうという形でやっておりますので、そういう形で、このHTLV-1の関係についても啓発を重層的に高めていきたいと考えております。

○渡邉座長 ありがとうございました。

 今のお話ですと、そのような活動の主体は厚生労働省が行うということですね。

○野田結核感染症課長補佐 このポスターの啓発については、厚生労働省のほうでさまざまなメディアを使ってやっていきたいと考えております。

○渡邉座長 ありがとうございます。

 私のほうからは、先ほど菅付さんのほうからの御発言にあった、関連の学会において、このようなリーフレットを配るという行為も、かなり有効な手段ではないかと私個人としては思います。それに関しては、誰が、どういう責任において配るかというところにちょっと問題があるかなと思いまして、それで確認したところです。我々研究者や、臨床の先生方が取り扱ってよければ、関連の学会で宣伝物を置くような場所が常にございます。ただ、事前に学会・学術集会の事務局に連絡をとって、承諾をとってという手続がございますので、その辺のところを現実に行うには、どこが主体になって、どういうふうに行うかというところが問題になるかなと思ったのですが、その点、どういうやり方がよろしいでしょうか。

○野田結核感染症課長補佐 ありがとうございます。

 厚生労働省も予算がなかなか厳しくて、現物を刷って、多くの方にお配りするというのは難しいのですけれども、特に学会に入っている先生方には知っていただく必要があると思っております。また、学会と調整して、何部ぐらい必要かということを御相談いただいて、それでお渡しするという形になると思います。恐らく、どこの学会に持っていったほうがいいだろうというところは渡邉先生と御相談させていただければと思います。

○渡邉座長 わかりました。

 どうぞ。

○三宅結核感染症課長 ちょっと見ていただきたいのですけれども、「Press Release」の資料1でございます。裏でどれぐらい刷るか、今、野田のほうから申しましたが、ポスターをA2のサイズで3,200部、それから、リーフレット、A4サイズで13万部。これについては、予算でどうにか印刷することができるわけです。

 それ以外に、ダウンロードして、印刷して、どんどん広げていただきたいというのもあるのですが、13万部、配付ルートが限られている中で、都道府県経由で医療機関とか、いろいろなところにと思っておりましたが、もしこれを例えば1万部とか、厚生労働省のほうでとっておけ。学会で少し配ってやるぞということを先生方のほうで言っていただければ、その辺は調整がきく範囲でございますので、今、野田が言ったとおりでございますけれども、調整をしてまいりたいと思います。

○渡邉座長 わかりました。それでは、HTLV-1学会がその辺のことを学会として相談させていただくと言うことにいたします。できるだけ適切な場所に啓発のこういうものを送り届けることができるように御協力させていただくということで、取り組んでいきたいと思います。

 どうもありがとうございます。

 それ以外に何か御質問ございますでしょうか。

 山野先生。

○山野構成員 済みません、今のことに関連してですけれども、研究班でもよろしいですか。研究班の班員の先生方とか、そういう関連の方々にもぜひお配りできたらと思います。

○野田結核感染症課長補佐 ありがとうございます。

 御相談いただきましたら、こちらで手配させていただきます。

○渡邉座長 菅付さん。

○菅付構成員 このポスターはアニメのキャラクターであり一般の方々への啓発だけではなくて、医学を学ぶ若い学生たちにも魅力的でインパクトがあると思います。HTLV-1関連疾患を研究しようという学生がふえてくれることは非常にありがたいので、ぜひ活用していただきたいと思いました。

○渡邉座長 ありがとうございます。

 そういったことも含めまして、厚生労働省の担当の方々と我々でよく打ち合わせをしまして、できるだけ広く、これを活用するように協力させていただきたいといいますか、我々も頑張っていきたいと思っています。ただ今のは、学会の理事長としての発言でございます。どうも済みません。

 それでは、また座長に戻ります。ほかに御質問、御意見等ございませんでしょうか。

 それでは、少し時間が早いのですけれども、それぞれの議題で少し時間をとりそうですので、早目に次の議題に進ませていただきます。

 次に、議題2「HTLV-1学会関連疾患診療施設登録制度について」に関して、内丸参考人から資料2の説明をお願いいたします。

○内丸参考人 よろしくお願いいたします。東大新領域の内丸でございます。

 お手元の配付資料2でございますけれども、「日本HTLV-1学会関連疾患診療施設登録制度について」ということです。名前が微妙ですけれども、その辺も含めて、ここに至る背景も含めて御説明させていただきたいと思います。

 1枚めくっていただきまして、2011年から始まっておりますHTLV-1総合対策で、重点施策のところ、赤線が引いてあるのは私でございますけれども、感染予防対策として、保健所におけるHTLV-1抗体検査と、相談指導の実施体制の整備。それから、相談支援(カウンセリング)の体制の整備ということが挙げられておりまして、保健所を軸とした相談支援体制というものが想定され、始まってございます。

 次のスライドでございますけれども、それでは実態はどうかということで、私の厚労科研の研究班で、少し古いデータになってございますが、2011年度、2012年度の調査で、全国の保健所を対象として調査したところ、実際にそういった相談が来たことがない施設がかなり多数に上っていて、保健所が十分に利用されていないのではないか、あるいは場合によってはニーズがないのではないかということも、この当時議論されたところでございました。

 次のスライド、お願いします。実際には、必ずしもそうではないのではないかということで、キャリアの方の行動と申しますか、動向を探ろうということで、これもまた私の厚労科研の研究班でキャリねっとという、HTLV-1キャリアの方に自主的に登録していただいて、そのときにいろいろな情報を入力していただくウエブサイト、これは現在も運用してございます。

 順調に登録数も伸ばしてございますけれども、こちらの登録者のデータの解析によりまして、次のスライドでございますが、相談に行かれた方を対象として、どこに相談に行きましたかということを御質問いたしますと、圧倒的多数が血液内科の病院に行っていて、保健所には余り行っておられない。したがって、保健所における相談の実態を見ているだけではニーズは見えないということでございますし、また相談体制の整備ということであれば、血液内科における相談体制を充実させる必要があるだろう。

 また、行かなかった方を対象として、どうして行かなかったのかということをお尋ねしますと、圧倒的多数がどこに行っていいかわからなかったということで、どういったところに行けばいいのかということを国民に知らせていくということも重要な課題であるということが浮かび上がってまいりました。

 次のスライドをお願いいたします。それでは、血液内科のほうに行けば、実際の相談対応が可能であるかということでございますけれども、これもHTLV-1総合対策が始まったときに、当時の厚労科研の研究班で調査した、HTLV-1対応が可能であると回答した、主に血液内科の病院を対象に再調査いたしまして、相談対応が可能ですかという調査をやったこれも厚労科研のデータでございますけれども、そういった血液内科を対象にしても、相談対応まで可能ですと答えた施設はわずか40%でございまして、血液内科であれば、どこに行っても相談に乗ってもらえるかというと、もともとのATLという疾患、HAMもそうですけれども、希少難病でございますので、それの母体になる感染症ということで、対応できる施設は、血液内科であればどこでもいというわけではないという実態が明らかになってございます。

 次のスライドをお願いします。そういったことを背景にいたしまして、これは前回も対策推進協議会で出された資料でございますけれども、日本HTLV-1学会のほうで、HTLV-1関連疾患の診療を行う医療機関を学会登録という形で、ある意味拠点化ということでございますけれども、ということを行うという方針を提示いたしました。

 その要件として、マル1.関連疾患診療に積極的に参加する。積極的に対応する意思がある。

 2番目に、他の医療機関での診療を支援する。

 3番目に、診療実績等について報告、公表する。

 こういった体制を整備するということを、HTLV-1学会から前回の対策協議会で御提案申し上げているところでございます。

 次のスライドをお願いいたします。こういった方針に従いまして、今年度、日本HTLV-1学会では、社員総会での方向性の報告、理事会での検討を経て、厚労科研の私の研究班を中心にして、主にキャリア対応の実績のある6施設に集まっていただいて、拠点化を進めるための要件の検討等の会議を行い、2018年2月からは、HTLV-1学会で実際に登録認定するための委員会の設置が承認されたということで、現在、その整備が進んでいるところでございます。

 最初、6施設から先行スタートするわけですけれども、来年度以降、登録施設の拡大、あるいはそこで運用していく中で、改めて施設運用上のさまざまな問題点が浮かび上がってくる可能性がございますので、その問題点の把握と規則の見直し、さらに、この後申し上げますけれども、当初、関連疾患ということでございましたけれども、スタートラインがキャリア対応からスタートしようということで、キャリア対応から疾患の診療拠点化を目指すという形での関連学会との調整、その他、広報・教育ということを来年度以降、進めていこうということでございます。

 次のスライドをお願いいたします。ということで、当初は関連疾患というよりも、赤字で書いてございます、キャリア対応に限定した形からスタートしようということで、名称的には「HTLV-1学会登録医療機関」という名前でここには挙げさせていただいております。昨年度、先行施設を中心に、こういった機関の要件として、どういったことが必要であるか、枠の中にあります4点をスタートラインとしての要件として挙げよう。

 1番が、キャリアのリスク評価を踏まえて相談と支援を行う。

 2番が、教育・研修活動を通じて、他施設のキャリア対応の支援を行う。これは、献血陽性者に対する対応であったり、妊婦対応を含みます。

 3番目に、年度ごとの実績の学会報告、あるいは学会から厚労省に報告し、公表するということ。

 4番目は、近隣の診療施設、あるいは保健所、官公庁などを対象にして、研修等にも当たろう。

 こういったことを要件として定めてございます。

 さらに、将来的な方向性として、1番下の黄色い枠でございますけれども、学会は、積極的にこういった体制について広報するとともに、こういった登録制度を事業化していけないか。あるいは、何らかの形で保険点数化できないかということを目指していこうということを附帯的な事項として挙げさせていただいております。

 次のスライドをお願いいたします。先ほど申し上げました4つの要件案でございますけれども、それについて少し踏み込んだ形で御説明させていただきます。

 まず、1番のキャリアのリスク評価を踏まえて相談と支援を行うということでございますけれども、いわゆる拠点としては、単にキャリアの相談に乗るだけではなくて、現在、キャリアの中で、特にリスクが高いケースはどういったケースなのかということが焦点になってきてございますので、年齢、感染ルート、診療、あるいはルーチンにできる血液検査でもってリスク評価しよう。本来であれば、さらに踏み込んで、末梢血中プロウイルス量あるいはフローサイトメトリーによる評価などが有用であろうというデータが出てきてございますけれども、これは現時点での診療体制の中では難しいということで、将来的な課題として挙げさせていただいております。

 それから、相談と支援ということでございますけれども、こういった学会登録施設では、どこに行っても同等の相談対応ができるように、一定の基準を示す必要があるということで、これも私どもの厚労科研の研究班で作成いたしました「HTLV-1キャリア相談支援に役立つQ&A集」、全部で98Q&Aがございますけれども、これにのっとり、かつ、この範囲内の相談には確実に対応するというのを一つの目安としております。

 それから、相談支援のために、これは外来のキャリア対応をしている先生方は皆さん、感じているところでございますけれども、心理的にかなり傷ついている方が多うございますので、そういった方々の相談支援のためには、そこに対応するコメディカルを配置する、あるいは教育をするということが、将来的な課題として必要であろうということを挙げてございます。

 次のスライドでございますけれども、他施設のキャリア対応の支援を行うということでございます。ここでは、特に焦点になりますのが献血、妊婦対応だと思います。日本赤十字社の献血でもって抗体陽性となった場合に、その通知を受け取った方にどこに相談に行ってもらうか、きちんとした組織的な体制ができていないのが現状かと思いますので、日赤との連携体制を構築していくということが必要でしょうし、また、妊婦健診で陽性となった方々の授乳指導以外の、キャリアであるということに対する相談支援、そこをどうやってつないでいくのかというのが問題であると、たびたびこの協議会で問題になってございますけれども、都道府県母子感染対策協議会あるいは日本産婦人科医会との連携体制を構築していくというのが、施設に求められる要件となります。

 それから、もちろん近隣の医療機関で困っている場合等のバックアップも行いますし、あるいは、保健所もキャリア対応に関して非常に重要な役割を果たすと考えられますので、そういったことの2次相談とかバックアップとしての機能を持たせることになります。

 それから、3番目でございますけれども、年度ごとの対応実績をHTLV-1学会に報告し、学会からさらに厚労省に報告する。これは、こういった拠点施設の指定というときにも問題になるかと思うのですけれども、こういった実績報告、基本的には病院単位になると思います。病院長の許可あるいは病院としての報告になるかと思いますので、こういった指定の場合に病院長の許可を得る、病院長を巻き込んだ形で指定していかなければいけないという点が問題になるだろうと思います。

 4番目でございますけれども、近隣の診療施設、保健所、官公庁を対象とした研修。これは、個別に今、いろいろな先生方が依頼を受けてやっていると思いますが、こういった拠点施設を構成している医師は、こういった研修などにも当たるというのを要件として挙げさせていただきたいと思います。

 こういった体制でスタートしようということでございますけれども、スタートラインの現状での問題点と今後の展開のポイントを幾つか挙げさせていただきました。次のスライドでございます。

 まず、1番、第1陣の6施設は、ここに挙げた施設でございます。この施設を挙げた理由は、1つは、現在、既にキャリア対応を十分にやっている実績を積んでいる施設であり、この施設からスタートすることが妥当であろうということが学会の理事会で承認されているということが根拠でございます。こういった施設、これまではボランティア的に、必要に迫られてやってきたという形でございます。スタートラインでは、同じところで同じようにやっていると言ってしまえば、それまでですが、これがきちんと組織化されるという意味では、これまでとは決定的に意味合いが違ってくるだろうと思います。

 また、こういった既に実績を持っているところから指定していくことによって、ただ単にこういったことをやってくださいというだけではなくて、実際にどういったことができるのか、どういったことが必要なのかとわかっている施設で、要件についてさらに検討していくということが可能になると思います。

 問題点としましては、ごらんいただいておわかりになりますように、地域が極めて偏っておりまして、これは、このスタートラインで十分に議論した上で、可及的速やかに全国的に対応施設を広めていくということが必要になろうかと思います。

 2番目でございます。次のスライドです。対応範囲が関連疾患ではなくて、無症候性キャリアからスタートするということを申し上げました。これは、先行施設の中でも十分議論したのですけれども、地域によってかなり実情が異なっておりまして、特に、例えば九州のようなエンデミックエリアでは、ATLのような関連疾患の診療に関しては、必ずしも拠点化のニーズがない。むしろ、そういった拠点化をすることによって混乱が起こる可能性が現状ではあるという指摘がございます。

 また、キャリアの場合には、いわゆる疾患を対象としている血液学会であったり、神経学会、その他とのすみ分けに関して、必ずしも問題は起こらないかと思うのですけれども、関連疾患ということになりますと、日本血液学会、日本神経学会等のいわゆる診療拠点との整合性、連携、調整等が必要になります。この点は、今後の課題として必要になる重要な問題であろうと思われます。

 3番目、最後のスライドでございますけれども、こういった施設が活動していくためには、例えばこれまで外来で1回1件の対応で30分ないし1時間を要しております。それに対しての診療報酬的なものも含めて、必ずしもそれを十分支援されているという状況ではございません。そういった意味で、各施設、拠点として学会登録された施設が安定的に活動していくための支援体制を整備することが、ぜひ必要であろうと思われます。

 また、例えばほかの学会のいろいろな指定施設の場合に、その指定を受けることによっていろいろなメリットがあってということで集まってくるわけでございますけれども、今回のHTLV-1学会の登録診療施設の指定によって、登録された医療機関、担当者にとって、どういったメリットがあるのか、それを明確にする、あるいはそういったインセンティブを設定していくということも今後の課題として重要だろうと思われます。

 以上でございます。

○渡邉座長 ありがとうございました。

 1つ、私のほうからつけ加えさせていただきますが、資料2と書いてあります1枚の印刷物がございます。これは、ことしの2月段階で、先ほどから出ております、先行している6医療機関におけるキャリア対応あるいは疾患の診療の実績を挙げていただきました。5年間でどのくらいの実績があるかということを集約して、表にまとめてございます。参考にしていただきましたら幸いです。

 以上が内丸参考人の説明ですけれども、これまでの説明に関して、御質問、御意見等がございましたら、お願いいたします。

○山野構成員 今の御説明で、学会がまずは主導で、こういう体制を構築していくという理解でいいのかなと理解したのですけれども、学会が中心となって、このような体制を全国的に整備していくということが、世の中に知られていくということが非常に重要だと思います。現場では、キャリアの方々はどこに相談に行ったらいいかということで困っているという声もかなり聞きますので、こういうことを学会で広報していくのに加えて、できれば厚労省のほうでもこのような取り組みをやっているというのを、ぜひ広報していただけたらと思います。例えば、ホームページとか、そういうところで学会とリンクするとか、そのような形はいかがでしょうか。

○渡邉座長 はい。

○野田結核感染症課長補佐 ありがとうございます。

 まさに、学会のほうで、まずどういう病院がキャリアの相談に対して力を入れており、また対応できるかというところを選んでいただいたということ、今回、重要な第一歩を踏み出していただいたということでございます。国としても、その対策をやっていく必要があるということで、先ほど御説明もありましたように、保健所だけでは相談される側も不十分だったということは、過去数回のこの協議会で出ていたということでございますので、選んでいただいた病院が、ある意味一番いいところが中核となって対策が進んでいくというところを国としてもお伝えしていきます。そこは、また御相談させていただきながらだと思いますけれども、さまざまな形で活用させていただきたいと考えております。

○渡邉座長 ありがとうございました。

 それ以外に御質問、御意見等ございますでしょうか。

 石母田構成員。

○石母田構成員 最初になれた病院から始めるということは理解できたのですが、現実に今、こういう拠点病院が一番欲しいのは、逆にここにない地域ですね。これを本当にいっときでも早く、それこそ東北1つ、北海道1つとか、そういう地域だけでもいいので、極力早く進めていただくようにお願いしたいと。今まで患者会をやっていて、キャリアの方とか患者の方の苦労話を聞くと、そういう地方が一番困っている。

 私も十数年前ですけれども、HAMという病気を診断されたときに、地域の病院では何の説明もされないし、治療もされない。そういう中で、鹿児島大学でキャリア外来があるというので鹿児島まで行って受けたという経験があります。現実に、今はまだ北海道の方もそうですし、東北地方の多くの方もそうなので、ぜひ早く進める方向で考えていただきたいと思います。

 以上です。

○渡邉座長 ありがとうございます。

 これに関しましては、本来、私、学会の理事長が答えるべきかもしれないですが、参考人の内丸先生のほうからお願いできますか。

○内丸参考人 御指摘ありがとうございます。

 お気持ちといいますか、思いは全く同じでございます。ただ、拙速に幾つかの拠点をつくった場合、私のスライドの中でも、血液内科に行ったのだけれども、一体何しに来たのみたいな漫画を書いておりますけれども、そういった事態が起こらないようなものをつくっていくということが非常に重要だと思っております。そういった意味で、とりあえず、あそことあそこというのではなくて、まず、今、やられていることをきちんと固めて、それをできるだけ早く広めていく。思いとしては全く同じでございますので、可及的速やかに、これは理事長のほうへのお願いですが、学会のほうでもその整備を進めていただければと考えております。

○渡邉座長 理事長として、今の発言に補足させていただきますと、御指摘のように、北海道、東北、それから中部地方等に拠点が欲しいということは我々も十分理解しておりまして、既にその辺の拠点となるべき施設に関しましては、根回しといいますか、交渉は済んでおります。ただ、制度的に登録医療機関をどういう形で運用するかということの議論がある程度成熟していかないと、依頼するにもなかなか問題があるということで、並行して可及的速やかにということで今、準備を進めているところでございます。

 菅付構成員、どうぞ。

○菅付構成員 今の御意見も全て踏まえて、これを発展させて充実させていくためには、最後の現状と問題点、今後の展開というところの財源とインセンティブ、支える支援体制と、指定を受けることのメリットを明確に示して、次の協議会ではこれを具体的に挙げて、国に要望したほうがいいと思います。幾ら学会の先生方が頑張られても、現実的な支援がない限り発展はしていかないと思います。できるだけ早く問題を解決して前に進んでいただきたいと思いました。

○渡邉座長 これに関しまして、内丸参考人。

○内丸参考人 今の御指摘、全くごもっともでございます。それに関連して、最初のプレゼンテーションでちょっと触れなかった幾つかの問題点を今の問題に関連して挙げたいのです。

 例えば、最後にちょっと触れましたが、既存の学会で、そういった指定病院という場合には、そこは教育・研修病院であり、そこに学会が指定した専門医がいて、それが指定施設の要件になっているわけですけれども、日本HTLV-1学会では、そういった意味では専門医制度というものができておりませんし、こういった制度の整備もしていかなければいけない。そういった制度整備がまだこれからということもございまして、そういったことをできるだけ早く進めていって、インセンティブというものを学会の立場から見せられる。

 それから、学会だけでは難しいところがございまして、途中でもちょっと触れましたけれども、診療自体が、現時点では30分、1時間やっても初診料しかとれないという状況では採算が取れない。そういった部分をどうやってカバーするのかというのは、これは学会だけでは対応できない問題でございますので、いろいろな形で、制度を定着させていくためには検討すべき課題がまだまだたくさんあるということを、改めてここでコメントさせていただきたいと思います。

○渡邉座長 ありがとうございました。

 はい。

○野田結核感染症課長補佐 ありがとうございます。

 まさに今、内丸参考人がおっしゃっていただいたとおりでございまして、既にこの6つの病院については、当然のようにされている。例えば相談をきちんとやるということ。そして、患者さんに対して、コメディカルも含めて対応するということが十分できている病院だと思っています。それをある程度一般化するために、研究なのか、定型というか、形にしていくということを作業としてやっていく必要がございます。いずれにしても、この6つの病院が決まり、こちらとしても話しやすい体制になりましたので、十分に話をしながらスピードを上げていきたいと考えております。

○渡邉座長 ありがとうございます。

 そのほか、御質問、御意見等ございますでしょうか。

 座長として取りまとめると、診療拠点というものをつくろうという動きに関しては、昨年度末からちょうど1年、時間がたちまして、学会の内部で議論した上で、現状のような形で物事を進めている。現状というのは何かというと、特定の経験のある医療機関に依頼して、試行しながら問題点を整理して、最終的なより安定した制度を目指していくという作業を進めているということが現状でございます。

 そのために、全国展開といいますか、全国的な拠点を展開する必要は十分承知しているのですけれども、議論を踏まえた上で前に進めようということで、今のところ、今年度、2017年度の間の議論はここまでである。それから、来年度に入りましたら、さらに一層議論を前に進めていこうということを考えているということでございます。

 よろしいでしょうか。

 それでは、どうもありがとうございました。この議題に関しましては以上にいたします。

 続いて、議題3「HTLV-1に関する研究開発の状況について」ということで、初めに事務局のほうから資料3についての説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○繁本結核感染症課長補佐 事務局から説明させていただきます。

 資料3、3枚、表裏で5ページございます。

HTLV-1に関する研究開発ですけれども、HTLV-1に対する総合対策の5本柱の5番目が研究開発の推進ということになってございます。もともと、総合対策ができる平成22年度までは、下の左の図にありますように、いろいろな分野におきましていろいろな研究課題があったのですけれども、現在はそれを横に統合しまして、HTLV-1関連疾患の研究領域ということで、10億円を確保しよう。研究開発を進めるように資金を確保しているところでございます。

 全部で4領域ありますが、めくっていただいて、2ページ目、これは、がん、ATL、リンパ性白血病の研究になってございます。これがおおよそ2.4億円確保されてございます。

 めくっていただいて、3ページ目、こちらは難病に関する、主にHAMに対する研究課題になってございます。これは、大体8億円ございます。

 その次のページが感染症、HTLV-1の感染であるとかキャリアといったことになりますが、これがおおむね1.5億円。

 さらにめくっていただいて、最後のページは母子保健、母子間の垂直感染、母子感染の研究になってございます。これが約1,000万円ございます。

 以上を合わせて、10億円以上の予算が平成29年度、もう29年度は終わりなので、この額で施行されているということでございまして、次の平成30年もおおむね同額が見込まれてございます。こうして、総合対策が始まって8年ぐらいが経過しているので、いろいろな研究も成果が出てきているところと存じます。そのうちの一部をこの後、先生方に発表していただこうと思います。

 以上です。

○渡邉座長 ありがとうございました。

 今の御説明に関しまして、御質問、御意見等ございますでしょうか。

 私のほうから確認でございますが、当初、総合対策がスタートした時点と、数年前からいわゆる研究費の配分のシステムというものが大きく変わっております。これは、当初の厚生労働科学研究費の枠の中でこのような図が描かれたのですけれども、こういう考え方は現在も引き継がれていると、今の御説明ですと、そういう立場の御説明だったと思いますけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。

 野田課長補佐。

○野田結核感染症課長補佐 現状、細かく言いますと、厚生労働省で行っております政策研究とAMEDで行っている実用化の研究に分かれているという状況が過去の経緯でございます。ただ、AMEDの研究費に関しましても、厚生労働省で予算を獲得し、その上でAMEDに配分するという形にしておりますので、基本的に10億円は確保するという形で厚生労働省として予算要求していくという形でやっております。

○渡邉座長 ありがとうございました。

 ほかに、御意見、御質問等ございませんでしょうか。はい。

 それでは、どうもありがとうございました。

 引き続きまして、最初の報告ですが、「ATLに関する新薬の開発状況」について、内丸参考人のほうから説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○内丸参考人 再び東大の内丸でございます。

ATLに関する新薬の開発状況ということでございますけれども、具体的には私どもが取り組んでおりますタイトルでございますが、新規EZH1/2阻害薬について御紹介、報告するようにという御指示でございましたので、本日のお話は、この薬剤に関して、開発の背景、現状から御説明させていただきたいと存じます。

 それでは、スライドを1枚めくっていただきまして、この図はATL治療の現状をあらわした図で、厚労科研で調査された最も新しいATLの治療成績の現状でございますけれども、緑と赤で記されている、いわゆるアグレッシブATLの生存曲線に関しては、20年以上前の下山分類が制定されたときの成績とほとんど変わっていない。いまだに非常に厳しい状況であるということがございます。

 次のスライドでございますけれども、その中で、昨今、ATLに対しては、抗がん剤の治療だけではなくて、造血細胞移植が行われるようになってきておりますけれども、このスライドのThis studyが今回の厚労科研調査でございます。急性型の生存期間中央値をごらんいただきたいのですけれども、同種移植が行われたケースに関しては、生存期間中央値26.2カ月、その横にあります、先ほど申し上げました下山先生の調査の6.2カ月に比べて、大幅に伸びてきておるわけですが、同種移植ができなかったケースに関しては、残念ながらほとんど変わっていない。こういったデータからは、既存の抗がん剤による治療では限界が見えてきているということが推察されます。

 次のスライドでございます。それでは、造血幹細胞移植のほうの成績、現状はどうだろうかということでございますけれども、左側は、臍帯血バンク、骨髄バンク、その他造血細胞移植学会等のデータを全て統合した、国内のATLに対する移植の生存曲線の現状でございますけれども、40%弱ぐらいの長期生存が得られる状況である。

 右側のほうは、私どもの東大医科研病院と国立がんセンターとの共同グループで治療したケースで、移植を受けたケースの生存率でございますけれども、約50%の長期生存が得られるところまでは移植の成績が改善してきているところでございます。

 ただ、次のスライドですが、ATLの移植、私どもはかなり高齢までやっておりますけれども、それでも70歳が限度でございます。ATLの患者さんの年齢分布の最新の調査では、年齢中央値68.8歳ということでございますので、このストラテジ、戦略で恩恵を得るのは、ATLの患者さんの約半分であって、残り半分の方は最初からこの方針に乗らないということです。

 さらに、ATLで移植に持ち込むためには、この図でAge70mLSG15というほうに矢印が流れてきますけれども、こういった抗がん剤の治療で、下のほうでPRCRといった反応が得られたケースのみが移植に行けるわけですが、その反応が得られなかった場合にどうするか。そういった意味で、この赤い枠に入っている患者さんたちに対して、既存の抗がん剤ではない、新しい薬剤の開発が望まれるところでございます。

 現在までのところ、既存の抗がん剤以外の新規薬剤ということで、既に実臨床には、抗CCR4抗体、レナリドマイドなどが導入されておりますし、またその下にあるように、幾つかの薬剤も臨床試験が行われているわけでございますけれども、ATLという疾患の発症メカニズムに根差した、新たな作用メカニズムの分子標的薬の開発が望まれている、期待されているところでございます。

 次のスライドです。私どもの研究グループでは、HTLV-1キャリアあるいは感染者の全国コホートスタディーであるJSPFADとの連携によって、ATLの患者さん、あるいはキャリアの方、あるいは正常・コントロールの皆さん方のサンプルを用いまして、ゲノム、遺伝子発現、microRNA、エピゲノム等、各種の視点から統合解析してデータを集めてございます。

 ちょっと難しい名前が出てまいりましたので、次のスライドをお願いいたします。少し解説を加えますと、ATLという血液がんでございますけれども、これを遺伝子の発現の異常という観点で捉えた場合、左のブルーの枠でございますけれども、本来、発現すべき遺伝子が発現しないとか、あるいは本来、発現しないはずの遺伝子が発現してくる、あるいはおかしな発現をしてくる。こういったことが細胞を腫瘍化させるわけでございます。

 こういった遺伝子パターンの異常というものがどういったメカニズムで起こってくるかを考えてみますと、右上のほうです。遺伝子、DNAというのは、細胞の中では染色体という形で存在しているわけですけれども、この染色体の断裂であったり、構造異常がございますと、当然ながら遺伝情報がおかしくなります。また、遺伝子の本体であるDNAの突然変異等によって、当然、遺伝情報がおかしくなりますので、これによっても発がんにつながってくる。

 あるいは、下のほうでございますけれども、DNAからたんぱく質に遺伝子発現の途中、メッセンジャーRNAというものを介するわけですけれども、これに結合することによって、そこから先の進行をとめてしまうマイクロRNAによって遺伝子発現が抑制される。こういったことによっても遺伝子発現の異常が起こってまいります。

 また、それ以外に、遺伝子のDNAというものが、右側の真ん中あたりでございますけれども、ヒストンと呼ばれる、ある種の糸巻のようなものにぐるぐる巻きついた形でDNAが存在してございます。このヒストンの構造の変化によって、この部分が開いてきて遺伝子が読まれたり、構造変化が起きて、がしゃっと固まってしまって遺伝子が読めなくなったりということがございまして、これによって遺伝子発現のオンとかオフが調整されている。こういったものをエピゲノムあるいはエピジェネティックな遺伝子発現の調節と申します。こういったエピゲノムの異常によっても、当然ながら遺伝子の転写の異常というものが起こってくるわけでございます。

 次のスライドです。このヒストンというものの構造変化と先ほど申し上げました。いろいろなものがございますけれども、その中の代表的なものにヒストンのメチル化というものがございます。このヒストンというタンパク質にメチル基がくっつくことによって、そのヒストンに巻きついた遺伝子の転写が抑制されるといったことが起こってまいります。

 次のスライドですが、このヒストンというタンパク質を先ほど申し上げたメチル化する酵素の一つに、上のほうにございますEZH2という酵素がございます。私どもの研究により、ATLの細胞では、このEZH2の発現が非常に上昇して高まっているということが明らかになってまいりました。

 右側の図は、正常なT細胞と急性型のATLについて、上から下にいろいろな各遺伝子ごとに巻きついているヒストンの部分がどれぐらいメチル化されているか。赤い部分は非常に強くメチル化されていることを示しますけれども、ATLの細胞では多数の遺伝子が、巻きついている部分のヒストンがメチル化を受けていることが明らかであります。このヒストンがメチル化されることによって、ATLにおいては多くの遺伝子の発現がシャットオフされる、抑えられるという異常が起こって、このことが感染細胞を腫瘍化に導いている一つの大きな理由であろうと考えられます。

 そこで、このEZH2を抑えてやることによって、ATLに対して抗腫瘍効果が得られないかということが考えられるわけでございまして、これまでEZH2という酵素阻害性薬剤、下のほうでございます。GSK126とか、幾つか並んでおりますけれども、薬剤の開発が続けられてきております。ここに挙げてあります数字が低いほど抑制活性が強いわけでございますけれども、これらの左側の薬剤はEZH2に対しては数字が低くて、非常に強く抑制するわけでございます。

 けれども、EZH2だけを単独で抑えた場合に、もう一つ、このヒストンのメチル化をする酵素としてEZH1というものがございまして、これを肩がわりしてしまうということが起こりまして、EZH2EZH1、両方を抑制することが抗腫瘍効果を来す上で非常に重要である。

 そこで、第一三共株式会社が多数の化合物をスクリーニングする中で、このEZH1EZH2を両方阻害するDS-3201という化合物を見つけてまいりまして、このお薬のATLの治療効果の検討ということで、私どもと共同研究を進めてございます。

 次のスライドをお願いいたします。実際に実験レベルで検討してみますと、左上でございますけれども、ATLの患者さんの血液細胞に対して、この薬剤、OR-S2というのはDS-3201と同じだと思ってください。濃度をふやしていくことによって、その増殖を抑制していくということがわかります。

 また、左下でございますけれども、これはフローサイトメトリーという方法で、くすぶり型ATL患者さんの血液の中で、4等分されたように見えますけれども、右側の2つ、上と下の黒いところがATLの腫瘍細胞でございますけれども、これにDS-3201を処理いたしますと、右側の部分だけがすこんと抜けていって、ATLの腫瘍細胞あるいは感染細胞を選択的に除去していることがわかります。

 実際、動物モデルでマウスにATLの腫瘍細胞由来の細胞を移植いたしまして、この薬剤で処理いたしますと、その増殖を強く抑制しているということが右側のグラフからわかります。

 こういったデータをもとにして、ATLの治療への実用化ということで、現在、臨床第1相試験が進行しておりまして、その中間報告が昨年12月のアメリカ血液学会で報告されてございます。そのときのポスターそのものですので、英語のままで申しわけございません。対象になった方のうち、上の表の真ん中の欄、T-cell lymphomaと書いてございますけれども、ATLを含むT細胞性の腫瘍に関しては、80%以上の有効率を示しているということで、かなり期待できる効果が得られてございます。

 次のスライドをお願いいたします。これも英語のままで申しわけございません。副作用のほうでございますけれども、容量制限毒性になったのは一番上にございます血小板の減少ということでございますけれども、これも十分にマネジメント可能なレベルでございまして、その他重篤な副作用は認められないという状況でございます。

 次のスライドをお願いいたします。このEZH1/2阻害薬の開発のこれまでの時間経過を漫画にしたものがこのスライドでございます。現在、一番右端のFirst in Human、第1相臨床試験というところにいるわけでございますけれども、ここまで基礎研究から非臨床の産官学連携から臨床研究、この枠組みの中にHTLV-1総合対策の開始時期の矢印が赤い矢印になるわけですけれども、HTLV-1総合対策の開始以降、こういった薬剤の開発に向けての基礎研究、あるいは非臨床研究等が加速されてきているということが、この図からもおわかりいただけるかと存じます。

 次のスライドでございます。今、御説明いたしましたEZH1/2の異常というのは、実はHTLV-1感染細胞がATLという腫瘍に向かっていく過程で、これは多段階発がんと言いまして、徐々に異常が蓄積していって、最終的にはアグレッシブな腫瘍細胞になるわけでございますけれども、この流れの初期の段階から、既にこういった異常がございます。したがって、この薬剤が成功しました暁には、アグレッシブなATLだけではなくて、前段階であるindolent ATL、さらにはキャリアの中で既にATLに向かって進みつつある、リスクの高い方々に対しても有効性が期待できるのではないか。そういった展望を持つことができるわけであります。

 最後のスライドでございます。以上の本薬剤に関する研究成果のまとめでございますけれども、ATLHTLV-1感染細胞のエピゲノム異常の発見をもとにしまして、その治療分子標的としてEZH1/EZH2という酵素が標的になることを同定いたしました。これらをもとにして、日本発の新規EZH1/2阻害剤の開発に、第一三共株式会社との共同研究で成功してございます。現在、初めて人に投与されるFirst in Humanの第1相臨床試験が進行中でございますけれども、その中間報告から、安全性、忍容性、有効性が期待できることが示唆されてございます。

 また、最後に、先ほど申し上げましたけれども、この薬剤により、HTLV-1感染細胞の選択的除去、ハイリスクのキャリアの方々まで対象になっていくのではないかという展望が持たれているところでございます。

 以上です。

○渡邉座長 どうもありがとうございました。

 それでは、今の御発表につきまして御質問あるいは御意見等いただけましたら、お願いいたします。

 私は、座長でもありますし、実際、開発の当事者でもございますので、質問ができない立場です。この研究は、先ほど内丸先生から発表がありましたように、総合対策が始まる前からずっと取り組んできた病態解析、そのデータの蓄積から実際の臨床につながる薬の開発が行われてきたという流れを持っております。ちょうどこの総合対策開始の時期から研究がどんどん加速されてきて、今の状況に至っているというのが実態でございますが。

 はい。塚崎構成員どうぞ。

○塚崎構成員 埼玉医科大学の塚崎ですけれども、いくつかののEZH阻害剤は、B細胞リンパ腫でも最近、有望な新規薬剤であるということで開発が進んでいる中で、希少なT細胞リンパ腫、その中でもATLというものに着目してということで、この薬剤が日本で開発されているというのは大変すばらしいことだと思っているのですけれども、これが早い時期に、そして、この薬剤の特性として、ほかの薬剤との併用療法がやりやすいということもあるのですけれどもね。

ATLを含めたT細胞リンパ腫の患者さんのもとに早く届けるための、この対策協議会というところでも何らかの働きかけをしていただいて、そういうところを進めていく何か方策がないのかと思って、これはどなたにお尋ねすればいいのか、よくわからないのですが。

○渡邉座長 ありがとうございます。

 私の理解している範囲で、開発側の人間としてちょっとコメントさせていただきますと、フェーズ1の段階ですので、その途中からフェーズ2がスタートするわけですね。その辺は、臨床研究の枠組みにきちんとのっとって進めるしかないので、そこは余り省略するわけにはいかない。手続的にはしようがない、必要な手続だろうと思っております。

○塚崎構成員 先生、おっしゃられるとおりで、フェーズを重ねて新薬開発というものがあるわけですけれども、内丸先生の資料の6ページに新規薬剤の開発状況としていうことで、いろいろなものが出ておりまして、その中に、ポテリジオとレブラミドが既に保険診療の中で使えるようになったこともお示しいただいていまが。承認されるまでに、モガムリズマブの場合でしたら、5年と言わず、10年近くの年月がかかったわけです。その後で、実際に保険適用となってからも5年前後たっていますが、まだ標準的な使い方というのは確立していないのですね。どういうふうに、ほかの抗がん剤あるいはほかの新規薬剤と併用すればいいか。

 そう考えていきますと、本当に患者さんのもとに届けることができる。保険適用をとるまでに10年。その後の段階としての標準治療を確立するところまで時間がかかる。私、少し感じておりますのが、希少疾患であるがために、このポテリジオにしましても、レブラミドにしましても、保険適用が通った後で、それから標準治療としての併用療法の確立にはほかの疾患よりも時間を要しているように思います。

 ですから、その意味から申しましても、恐らく数年後にここにあるブレンツキシマブ ベドチンというCD30に対しての新たな抗体医薬、さらには内丸先生が紹介されたEZH阻害剤もATLに承認される可能性もあるわけですけれども、その次のステップということを考えるときに、臨床試験を希少疾患であるATLに対して、保険適用が通った後は医師主導でやっていくわけですけれども、そういうところの仕組みが、今はJCOGあるいはAMEDなどによって行われています。

 実際、私も今、AMEDで臨床試験させていただいているもので、患者さんの登録がなかなか進まずに苦戦しているところもあります。オールジャパンで患者会の皆様とも協力しながら、今までもさせていただいているのですが、さらによりよく臨床試験を行っていく仕組みというものを、今後、皆様とぜひ検討できればと思っています。

○渡邉座長 内丸参考人、お願いします。

○内丸参考人 今の塚崎構成員のコメントに、私が答える立場かどうかわからないのですが、2点、私の思うことをお話ししたいと思います。

 まず、1つは、塚崎構成員もおっしゃったとおり、ATLHAMもそうですけれども、希少疾患、希少がんでございます。こういった領域で今、非常に重視されていることは、情報の集約化あるいは情報のシェアということだと思います。基本的には、個々の病院でばらばらとやっている分には、いつまでたっても標準療法が確立しない。そういった意味から言うと、一定程度の拠点化という形で、症例をいわゆる拠点施設のほうに集めてくるという仕組みは、私は必要なのではないかと感じております。

 先ほどの私のプレゼンテーションであったHTLV-1学会登録診療施設でございますけれども、現時点ではもろもろの事情からキャリア対応ということからスタートいたしましたけれども、各種関連学会ときちんと連携のもとで、ATLの患者さんに関して、きちんと情報が集約されていく。そこから臨床試験にリクルートされていくという仕組みをつくっていくことが大事なのではないかなと考えております。それが1点目です。

 2点目、ATLの患者さんにできるだけ早く、この薬剤を伝える。臨床試験のフェーズを飛ばすわけにはいかないのですけれども、ATLに関する情報をできるだけ早く集めたいという点で、私ども、工夫していることとしては、私どもと言いますか、第一三共がと言ったほうがいいかもしれませんけれどもね、現在進行中の第1相臨床試験では、ATLの患者さんも含まれてございますが、先ほど塚崎構成員がおっしゃったように、実はB細胞性の濾胞性リンパ腫であったり、T細胞性リンパ腫であってもAITL、血管免疫芽球性とかが効くというのがわかっているのですけれども、ATLが我々としてはどうしてもやりたい疾患ということでございますので、こういった臨床試験を並行して、ATLだけを対象にしたエキスパンドコホートを開いて、ATLに関する治験をできるだけ早く集めたいという工夫をしていきたいと考えております。

 それから、このお薬でメリットが得られる方をより広めるという意味から言うと、ATLだけではなくて、最後のほうにちょっと申し上げましたけれども、Indolent ATLであったり、あるいはその前のハイリスクキャリアであったり。特に、ハイリスクキャリアの方々に対して、こういった薬剤を使えるようにするためには、きょうの話題にはなっていないと思いますけれども、キャリアの中でどういった方が危ない、そういった人たちを一つの疾患概念として確立することによって、臨床試験ができる状況をつくっていく。これも今後の非常に重要な課題になるのではないかと、個人的には考えています。

 以上です。

○渡邉座長 ありがとうございます。

 塚崎構成員どうぞ。

○塚崎構成員 ありがとうございます。

 最初に内丸参考人がお話しされた、患者さんをしっかり登録していくというところにおいて、例えば私が参加していますJCOGの場合、全国40施設程度で先進医療によって、インターフェロン、AZTの臨床試験を行っているわけですが、なかなか患者さんの登録が進まない。その理由としては、それぞれの地域の施設で患者さんを治療するなかで、登録施設に患者さんを紹介するのが間に合わないということも当然あるのです。

 そういう希少疾患の場合に、臨床試験のシステムとして、欧米では時々されているのですけれども、それこそ1名の患者さんでもいいからということで登録を希望する施設は、臨床試験のグループの中にたくさんの施設が入っていて、その中から、希少な患者さんが発症されたところが登録していく。そうすると、全国の中の多くの施設が登録予定施設となって、その中からという形をとると、希少疾患でも患者さんは登録できやすいと思います。

 ところが、その場合には、いろいろな意味でどうしても予算がかかる。そういうシステムをつくることも大変になるのですけれども、希少疾患であるATLに対しての臨床試験ということを考えるときには、一般的ながんに対しての臨床試験とは違った仕組みというのも、将来的には検討していただければと思っています。

○渡邉座長 ありがとうございました。

 山野構成員どうぞ。

○山野構成員 先ほどの塚崎先生のお話で、このお薬の開発を早く進めるのは現場のニーズから非常に重要であるということで、オーファンドラッグ制度があるのですけれども、それに加えて、最近はたしか先端的な医薬品の開発を促進するための制度ができて、致死的な疾患であるとか、条件は限られてくるのですけれども、そういう制度ができていると思います。そこへの申し込みとかは、この薬剤はしていないのか、いかがでしょうか。

○内丸参考人 どうですか。

○山野構成員 多分、厚生労働省の方も。

○内丸参考人 私も聞いておりませんので。

○山野構成員 多分、そういう制度を利用されると、PMDAがタッグになって、より早く開発するという制度があるので、そういうものはぜひ御検討されてもいいのかなと思いました。

○渡邉座長 ありがとうございます。

○山野構成員 もう一つ、これはサイエンティフィックな質問なのですけれども、今、フェーズ1は、かなりいろいろな治療をしてだめだった患者さんみたいな感じの対象になっていると思いますけれども、すなわちかなりレートなフェーズと。それでも効いているのですごいなと思ったのですけれども、そういう状態の患者さんですと、ゲノム異常の蓄積もかなり固定されていると思うのですが、このお薬のメカニズムから考えると、EZH1/2を早く抑えることによって、そういう変異の蓄積とかが発生する前に抑えることで、より高い有効性が期待できるのではないかと思ったのですけれども、そういうATLのフェーズが進むと、EZH1/2の影響で変異が蓄積していくという知見とか、その辺はいかがでしょうか。

○渡邉座長 内丸参考人、お願いします。

○内丸参考人 今の山野先生の御指摘、大変重要な点でございまして、ATLの場合、EZH2の異常というものがかなり早期から形成されていて、そこに最近の研究論文では、京都大学のグループが出された、多彩な遺伝子異常が蓄積してATLが発症する。そういった意味から言うと、根本の部分のEZH2を抑えていっても、その後に蓄積された異常を克服できなくてということは十分考えられますので、かなり早い段階からこのお薬を使えるようにすることによって、よりお薬の有効性を高めるといいますか、価値を高めることができるのではないかと思います。

 そういったことの理論的な検証ということで、できることは限られておりますけれども、1つ、実際考えておりますのは、この臨床試験で有効であった患者さんと、必ずしも有効でなかった患者さんと、それこそゲノム全体の遺伝子異常の解析とか、網羅的に解析することによって、こういったケースにはよく効いたけれども、こういったケースには効かなかったというデータを取得していこうという研究がございますので、そういった研究から、先生が御指摘になった点についての回答が出てくるのではないかと期待しております。

○渡邉座長 ありがとうございました。

 もうちょっと時間がありますので、私のほうからちょっと発言をさせていただきます。座長としてではなくコメントをさせて頂きます。

 臨床研究をする上で、希少がんのグループを特定することが非常に難しいというお話は、前提として皆様の認識があると思いますが、HTLV-1という感染者を母体として発症してくる病気ですので、その特性を生かして、なるべくきちんと対象者を拾い上げるというシステム、つまり、レジストリの体制をさらに強化していくことが、臨床研究を有効に進める前提になるのではないかと考えています。

 現時点では、我々が手づくりでやってきているJSPFADというシステムがあるわけですけれども、そうしたものをさらにレジストリとして、今、難病のほうで進んでおります大きな流れの中に位置づけて、HTLV-1の感染者及び有病者のいろいろな病気を持っている人たちをきちんと登録していく、レジストリ化していくという作業をやることが、有効な臨床治験等を効率よく行うことに役に立つのではないかなと、私は今、議論を聞いていて思いました。

 今のは、私のコメント、感想でございます。

 菅付構成員どうぞ。

○菅付構成員 患者からの意見として、このまま待っていても治療薬がなくて、あした死ぬかもしれないとなったときに、今治験中の薬でも早くその薬を使いたいと願いながら亡くなった患者は少なくありません。それは、ATLだけではなく、HAMの患者も同様です。治療薬を待ってきたが、耐えられず自殺した患者もいます。ATLHAMなど希少疾患で、明日の命にかかわる危機を持っている患者には、どうにか早く治験を受けさせる制度がほしいです。

 それと、治験を受けたくても、その情報を得られない患者がいますが、それは、病院同士での情報が伝わっていないことが原因です。だから、拠点づくりというのも重要な役割だと思います。

 話が代わりますが、特にATLの患者ですが、ほかに治療薬がないだろうかと必死で、患者会に相談されたりします。パソコンで調べれば治験情報が載っていますが、そこに実際アプローチして治験を受けられる患者さんというのはごくわずかです。自分が対象なのか通っている病院で受けられるのか、どうしたらいいかわからないという理由は様々です。

 そこで、コーディネーターという役割が欲しいと思うのです。それだったら、がんの相談支援センターがその役割をするのではないかと言われるかもしれませんが、実際、患者さんが相談しても、答えられない場合が多いようです。コーディネーターの役割をする人を置く制度を置いて、その人が研究者の情報をつかみ、国の制度をつかみ、そして患者にそれを伝え、患者が治験をしたいというのであれば、その相談に乗れるような仕組みというものがあってもいいのではないかと思いました。

 以上、治験情報を掴み希望する患者が治験を受けられる体制を作るという解決策としての具体案です。

○渡邉座長 ありがとうございました。

 ほかに、御意見、御質問等ございませんでしょうか。

 それでは、お時間ですので、次の議題に移りたいと思います。続きまして、「CCR4抗体に関する研究進捗状況」について、山野構成員からお願いいたします。

○山野構成員 よろしくお願いします。

 資料5をごらんください。

 まず、1枚めくっていただきまして、ページ1です。HAMの病態から見た新薬開発の戦略です。これまでの研究で、1番、HTLV-1感染細胞の増加と活性化によって、2番、脊髄での慢性の炎症が起こり、3番、それが神経組織の破壊と変性を引き起こすという形で、これまでの研究でHAMの病態は理解されております。それぞれの病態に対しまして、さまざまな治療戦略が考えられるわけでありますが、現在、行われていますのは、この2番の慢性炎症をターゲットとしたお薬で、免疫を抑えるお薬、ステロイドやIFN-αなどが使われておりますが、残念ながら既存治療では効果が不十分であり、患者さん方が新しいお薬を待ち望んでいるというのが現状であります。

 予後改善を達成するためには、病気の根本である感染細胞を標的とした治療薬の開発が必要であるということで、世界中の研究者がこれまで取り組んでおりましたが、まだ実現しておりません。ただ、それが実現すれば、HAM患者のより根本的なお薬となり、ATLの発症予防にもつながるのではという発想で、我々は感染細胞に着目して研究を進めてまいりました。

 次の2ページをお願いします。HAMの患者さんにおいて、HTLV-1がどの細胞に感染しているかという研究を行いました。右にありますのがTh1とかTh17とかTregとかTh2。これは、きょう話題になりました広報のヘルパーT細胞の分類でありますけれども、このヘルパーT細胞の中で、どの細胞により感染率が高いのかという研究をしてまいりました。HAMという病気は、Th1という細胞が非常に活性化しているということが昔から知られておりましたので、この細胞に主に感染している可能性があると最初は想定したのですが、実はCCR4という分子を出しているTh2とかTregという細胞に、HAMにおいても主に感染しているということを証明してまいりました。

 次、お願いします。では、免疫をどちらかというと抑えるようなCCR4を発現しているような細胞に感染しているのですが、HAMの患者さんではその細胞がIFN-γという、先ほどのTh1のような細胞を、サイトカインを出すような異常な細胞に変化して、しかも病変部ではそれが非常にふえているということを証明し、さらにそれが神経の組織に働きかけて、慢性の炎症を引き起こすメカニズムを明らかにしてまいりました。

 次のページをお願いします。そうなりますと、このCCR4というものを治療の標的として、この病気を引き起こす病源的な細胞を破壊するということは、このような病気のメカニズムから考えても、HAMの理にかなった治療薬になるのではないかなと仮説を立てました。

 次、お願いします。ページ5ですけれども、そこで2007年から、このお薬の開発に成功しておりました会社と共同研究を実施しまして、HAMの患者さんの細胞を、試験管の中でこのお薬が効くかどうかを確認する研究を行ったところ、ウイルスの感染細胞というものを非常に特異的に下げるという効果があることがわかりました。

 さらに、これは2012年からATLに承認されているお薬ですが、左の図にありますように、ATLの患者さんに投与したときの血中濃度の1,000分の1ぐらいの薄い濃度で、HAMの患者さんでは効果を示すことがこの実験でわかりました。

 さらに、右のほうの図は、今度はHAMの患者さんは炎症が激しく起こるという特徴があるのですが、その炎症反応も抑える効果があるということで、このように非臨床のレベルでプルーフ・オブ・コンセプト、このお薬がどうやら効きそうであるということを証明してまいりました。

 次のページ、お願いします。そこで、このお薬を何とかHAMの患者さんに届けられないかということで、厚生労働省の研究費とAMEDの研究費の支援を得まして、このHAMの患者さんを対象としたお薬の第1/2a相医師主導治験を行っております。これは、最近、「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」という雑誌にアクセプトされ、公開されております。

 次のページ、お願いします。7ページですけれども、このお薬はCCR4という分子を表面に発現している細胞に対して、くっつく抗体、これがお薬になります。この抗体がCCR4にくっつきますと、抗体が結合した細胞だけにNK細胞が作用して、この感染細胞を主に破壊してしまうというメカニズムであります。

 一番下にありますように、ATLの患者さんでは1mg/kg/bodyという濃度のお薬を毎週、8回連続投与するという使い方となっております。

 次のページ、お願いします。そこで、このお薬をHAMに適用するに当たって問題になったのが、長期慢性の経過を示すHAMという病気に、この抗CCR4抗体をうまく適用するためには、できるだけ安全に使用できて有効性を確保できる用法用量を見出す必要がありました。

 次のページ、お願いします。そこで、そういうことを実現するために試験デザインをこのように工夫しております。まず、一番最低の投与量は、先ほどの非臨床のPOCの試験結果から、ATLの患者さんの1,000分の3ぐらいの投与で確実に何らかの効果を示す可能性があるだろうということで、最低の濃度を0.003mg/kg。そして、最高の投与量は、副作用がほとんど起きないであろう、HAMの患者さんにも忍容できるであろうという濃度で、ATLの患者さんの投与の10分の3の濃度を最高濃度とし、そこに公比用量を設けて、薄い濃度で開始して安全性が確認されたら、次の投与レベルに行くという形で、こういうものをドーズ・エスカレーション・スタディーと言うのですけれども、このような戦略で行っていきました。

 さらに、投与の間隔が、ATLの患者さんで先ほど1週間間隔と御紹介しましたが、これまでの血中濃度のデータとか、そういうものから踏まえて、2から3カ月の間隔を置いても有効性を十分担保できるだろうという仮説を考え、このようなデザインとして試験を行っております。

 次のページ、お願いします。10ページ目です。これが試験のプロトコルの骨子ですが、対象が重要で、既存治療で効果不十分なステロイド維持療法中のHAM患者。これは、簡単に言いますと、現在、行い得る治療で治療している患者さんですが、これ以上、全く効果を何も期待できない。すなわち、今後は悪くなっていくのを待つだけしかないという患者さんが対象となっております。

 主要評価項目は安全性。また、PKというのは薬物動態を評価する。そして、副次評価項目は、抗感染細胞効果。これは、ウイルス量を減少させる効果があるか。あるいは、フェーズ2では、その効果の持続期間や臨床的な効果も探索するというデザインになっており、また、付随研究では、髄液中のウイルス量や炎症のマーカー。また、各種免疫系への影響や、ATLの発症予防効果があるかどうかを探索するような研究を行っております。

 次のページ、お願いします。要するに、この試験で検討したかった仮説というのは、ここにございますように、HAMにおいて、この抗CCR4抗体療法が安全性を確保できる用法用量が得られるかどうか。本当にウイルス量を減少できるかどうか。脊髄での炎症まで軽減できるかどうか。また、臨床的な改善を示すかどうか。そして、ATLの発症予防薬としての可能性まで示せるかどうかというリサーチクエスチョンで治験を行いました。

 次のページ、お願いします。まず、安全性についてですが、次の13ページをお願いします。これがフェーズ1/2a試験の安全性に関するデータのまとめです。ここにございますように、主な副作用はRash、すなわち発疹、皮疹であります。皮膚の発疹が全体の47.6%の方に出ているのですが、Grade1、Grade2という軽度な皮疹でした。Grade3以上の皮疹は、今回の治験期間では認められませんでした。

 また、リンパ球の減少というのが下のほうにありますが、Lymphopeniaというものがありますが、これはお薬の作用そのものがこのようなメカニズムで起こるお薬ですので、その作用機構を反映している副作用であると考えられます。1例のみ、肝機能の上昇が認められましたが、これはすぐ回復しております。

 次のページ、お願いします。14ページですが、過去のATLの治験における副作用の頻度と、今回のHAMの試験における副作用の頻度を比較した表です。真ん中ぐらいにあります注入に伴う反応というのが、ATLの患者さんでは8割以上の方で見られたのですが、今回は0.9%の頻度でしか認められておりません。また、投与時の発熱も70%前後の患者さんでATLの治験では認められたのですが、今回は2.7%。また、Grade3以上の発疹、皮疹も、ATLの患者さんの治験では10%前後認められたのですが、今回はゼロ件。また、Grade4以上の重篤な皮しんは、ATLの患者さんで1名認められたのですが、今回はゼロ件という結果であります。

 次、お願いします。次に、では、ウイルス量を減少できるか。炎症を軽減できるか。また、臨床的な改善効果を示すかですが、16ページをお願いします。これは、お薬を投与したときの血中濃度の推移が左の図であります。投与濃度をふやせばふやすほど濃度が高くなり、体の中に残る量も高いということがわかってまいりました。

 そして、右のほうは、CCR4陽性細胞が本当に減るかどうかをちゃんと確認したものですが、これも濃度が上がれば上がるほど、きちんと減少できるというのを確認しております。

 次のページをお願いします。そのようなお薬の動態や作用を確認した上で、では、本当にウイルスが減るかというのを示したものが、このスライドであります。

 左は第1相で、投与して次の日には、ウイルスの量がかなり減ります。そのウイルスを減らす効果、また持続期間も、投与の濃度が上がれば上がるほど、その効果が高いという結果が得られております。

 右のほうは、その効果が持続するかですが、投与して24週後のフェーズ2aの最後、この治験の10カ月目の時点でも、その効果が持続できているという結果です。

18ページ、お願いします。これは、髄液の中のウイルスです。実際、病変に近いところのウイルスの量ですが、こちらもここのスライドに示すように減らす効果があるということが証明されております。

 次のページ、お願いします。19ページですが、今度はウイルスを減らすだけではなくて、炎症まで減らすかどうかというのを示したグラフでありますが、ここに示しますように、炎症を減らす効果もあるということが証明されました。

 次のページ、お願いします。20ページですが、これは臨床的な効果です。HAMは脊髄が障害される病気ですので、足がぴんと突っ張る痙性というものが出るのですが、その痙性が改善した患者さんの割合が全体の78.9%。

 また、右のほうの納の運動障害重症度というのは、重症度をグレーディングしたスコアなのですけれども、そのスコアが1段階以上改善したという患者さんが全体の3割ぐらいという結果が得られております。

 次のページ、お願いします。これは、どのような患者さんにより治療効果が高かったかということを解析した結果ですが、左にありますように、まず、治療開始までの病悩期間が短い方が有効性は高い。また、重症度もより軽い方が有効性は高いということで、こういう神経疾患の場合は、さまざまなお薬でこういう結果になるのですが、早期診断・早期治療が非常に重要であるという結果が得られております。

 次のページ、お願いします。最後に、ATLの発症予防薬としての可能性を示せるかというデータですが、23ページにあります。この赤で囲ってあるところは感染細胞で、Day 0というところには赤で囲ってあるところに細胞がたくさん密集しているというのがわかると思います。特に、赤の中でも下のほうに密集している患者さんというのはATLのリスクが非常に高い可能性があると考えられておりますが、Day 2というのは投与した次の日ですが、このようにきれいに消えます。10カ月後もそのような状態が続いているということになって、これはATLの進展予防薬に発展できるような、応用できるような効果を期待できる結果が得られております。

 次、24ページをお願いします。患者さんのレジストリをHAMの場合はつくっているのですが、このHAMねっとで、実はHAMの患者さんは生命予後が悪いということが前向きのコホート研究でわかってきました。さらに重要なのは、HAMの患者さんの死因の第2位がATLであることが明らかとなっており、その発症率が1,000人年当たり2.8ぐらいあるということもわかってきております。すなわち、HAMの患者さんも一部、Indolent ATLを合併していたり、あるいはATLになりやすい状況を既に持っているということがわかってきて、そこからAggressive ATLを発症する方がいるということで、そこにこのお薬が進展予防のお薬の選択肢として非常に重要ではないか。

 ここで重要なのは、IndolentATLの方々というのは、経過が長いので、長く治療を行わないといけない可能性が出てくるのですが、今回、HAMの治験において、現在、長期試験で3年以上投与している患者さんが結構いるのですが、そのような長期投与しても安全であるという結果を出してきておりますので、そのような長期安全性をHAMのほうで検討できたことによって、このような発症予防薬のお薬に応用できる可能性があるということを示していると思います。

 次の25ページは細かくは読みませんが、以上のように、Proof of Conceptが得られましたので、現在、次の長期投与試験、そして第3相試験は企業治験で現在進めているところであります。

 以上です。

○渡邉座長 ありがとうございました。

 それでは、御質問、御意見等ございましたら、お願いいたします。

 石母田構成員どうぞ。

○石母田構成員 とてもいい結果が第1/2相で出たと思うのですが、現実に今、第3相治験が始まっている中で、本当に受けたいけれども、除外される患者さんというのがいっぱいいるのが現実なのです。今、わかる範囲で結構ですけれども、第3相の進行状況と、実際、患者さんが保険適用で使えるようになるにはどのぐらいの見通しがあるか、教えていただけたらと思います。

○渡邉座長 山野構成員どうぞ。

○山野構成員 現在、第3相は52名の計画でスタートしまして、HAMねっととか患者会の御協力、そして全国の先生方の御協力のおかげで、既に52名、リクルートが完了しております。予想よりも非常に早く患者さんのリクルートが終わりましたので、もうこれ以上はほとんど入れないという感じになっています。

 その治験が長く見ないといけない。半年あるいは1年というスパンで見ないといけない計画になっていますので、その治験が終わった後に、今度はきちんと解析して、それを承認申請に出せるところにかなり時間がかかるのですけれども、そういうものを全て急ピッチでやっているところで、それでも承認申請は201912月ぐらいを目指してやっています。その後に恐らく半年から1年ぐらいかかるので、2020年の秋ごろを目標にやっています。

 先ほどおっしゃったように、多くの患者さんから待てないという声をいただいており、非常に身の引き締まる思いをしているところでありますので、より早く承認できるような工夫ができないかというのは、我々も検討していきたいと思っております。

○渡邉座長 ありがとうございます。

 そのほか、御質問、御意見等ございますでしょうか。

 それでは、少し時間が押しておりますので、次の議題に行きたいと思います。最後になりますが、「免疫グロブリン投与に関する研究進捗状況」について、水上参考人よりお願いいたします。

○水上参考人 それでは、よろしくお願いいたします。

 スライド、1枚目をお願いいたします。研究目的といたしましては、HTLV-1総合対策(2011年)において輸血、水平感染、母子感染の対策が講じられました。輸血に関しては、既にスクリーニングがなされていますので、対策が実施されております。母子感染に関しまして、実際は断乳しても3~5%で母子感染が発生しているということがありまして、我々としては、こういった感染予防薬として何かないかということで、HTLV-1のヒト免疫グロブリンの製剤の開発をスタートさせました。

 2枚目をお願いいたします。日本赤十字社と協力させていただきまして、HTLV-1の陽性献血血液を用いまして、そこから血漿を分離いたしまして、2つの感染モデル、プロウイルス量(PVL)を見るものと、シンシチウムを見るというモデルで、その有効性・安全性について検討させていただきました。

 3枚目をお願いいたします。これは、わざとその差が見やすいように添加濃度を振りまして実験したものになるのですけれが、見ていただくとわかるのですが、下の図です。バーグラフの一番左端がコントロールになるのですけれども、同じように集めてきたものでも、有効性の高いものと有効性の低いものがあるということが、このモデル1。これは、PVLを見たものです。

 4枚目をお願いいたします。こちらは、感染細胞の形質転換・シンシチウムの形成抑制能がどれぐらいかということを検討したものになります。こちらも有効性が高いものと、どうも低いものがあるということがわかりました。

 いろいろなパラメータを調べたところ、どうもPVLと関係がありそうだということが、その右上の図で少し予測されましたので、スライドの5枚目目を見ていただけるとわかるのですけれども、血中のウイルス量がPVL4以上のものと4以下のもので分けて検討しますと、4以上のものが、PVLを見るもの、シンシチウムを見るもの、いずれにおいても、赤色のところですね。有効であるということがわかりました。

 6枚目をお願いします。そこで,このHTLV-1の陽性血漿の中でも、PVL4以上のものを集めまして、コーン分画法というもので、これはいわゆる原料血漿から血液製剤であるグロブリンを精製する方法なのですけれども、SIIIのグロブリン分画というものを非常に高精度で製造することに成功いたしました。

 7枚目をお願いいたします。そこで、これが本当に感染予防能力があるかということを、2つのヒト化マウスモデルを使って検討しております。これは、超免疫不全マウス(NOGマウス)にヒトの血液細胞を移植しまして、そこにHTLV-1感染細胞を接種することでHTLV-1感染をミミックするシステムになります。このグロブリンを感染前に投与したときと、感染後に投与したときでどのような影響が見られるかということを調べました。

 8枚目をお願いいたします。これは感染前にグロブリンをある程度高い血中濃度で維持したような状態で感染させたときの結果ですけれども、末梢血、脾臓、腹腔内、赤枠で囲っているところは全てゼロということで、感染がほぼ100%ブロックできているということがわかります。

 9枚目をお願いいたします。このモデルは40日ぐらい、HTLV-1感染モデルとして検討することができるのですけれども、ピンクで囲っているところに完全に抑制と書いていますけれども、経過観察期間中、38日、ずっとPVLはゼロのままでした。隣は、コントロールの陰性血漿からグロブリンを精製したものですけれども、PVL100を超えていくということがわかりました。

10枚目をお願いいたします。これは脾臓ですけれども、各組織における感染細胞の分布を組織学的に検索したものですけれども、上の図がHTLV-1陽性血漿より精製したグロブリンを投与したもの、下のものはコントロールIgGを投与したもので、感染している細胞に関しては、先ほど山野先生の発表でもあったCCR4IL-2Rα陽性細胞が非常に多く出ております。

 一方、抗HTLV-1ヒト免疫グロブリンを投与したものに関しては、全て発現が抑制され感染細胞が検出できないということがわかりました。

11枚目をお願いいたします。こちらは、感染後に投与したときどうなるかということで、感染後20日前後で投与しまして検討しました。ワンショットと書いているのは1回だけ投与、スリーショットというのは3回連続で投与したものということになりますが、いずれもワンシットでは半分ぐらい、スリーショット打つとゼロにかなり近くなるのですけれども、完全にはゼロにはならなかったということになります。

 一方、感染させて60日位で慢性感染の状態をつくることはできるのですけれども、この状態ですとスリーショット打っても全く効かないということがわかりました。

 別の資料、会議後回収と書いているものを別資料と呼ばせていただきますが、別資料の1枚目をお願いいたします。その原因を調べたところ、これはフローサイトメトリーの結果ですけれども、HTLV-1のエンベたんぱくである Gp46の発現というのが極めて低くなっている。それ以外にも、これはmRNAをフロサイトメーターで調べる方法を使って検討しておりますが、ヒトのTAXHBZの発現というのが、この60日目のHTLV-1感染細胞では低下しているということがわかります。

 別資料2枚目をお願いいたします。その感染細胞の組織分布というものが、先ほどの組織分布と大幅に変わっておりまして、こういうfibrnlasticgranuloma-like nodule、いわゆる結節のところに感染細胞が集まっているという像が多数確認されました。

 さらに、先ほどCD25CD30といったもの、あるいはCCR4といったものが感染細胞で高い発現をしていることがわかっているのですけれども、こういったものの発現が消失していることもわかりました。

 別資料3枚目お願いいたします。以上から考えますと、感染細胞を抗体で除去した後には組織の再構成が行われまして、さらに何らかの理由でCD2530CCR4などが落ちて潜伏状態のものに入っていくのではないかということが示唆されました。

 もとの資料の12枚目をお願いいたします。そこで我々は、さらにどのような投与法が可能かということを最終的に検討いたしました。i.v onlyと書いているのは、静脈注射のみの場合。それ以外にも、感染後数時間前後であれば、ほぼ100%抑えられるということもわかっております。

i.oというのは経口投与ですけれども、経口投与も実は有効性があるということが本研究からわかりました。これは、後に新生児などに投与するときに、もしかしたら経口投与というものが有効であれば、そっちのほうが非侵襲的で良いのではないかということでやった研究になります。

 このような形で、ある程度事前に投与しておけば、感染というものは有効に阻止できるということがわかりました。

13枚目をお願いいたします。こちらは、実は感染血液から免疫グロブリンをつくっているような製剤をリスト化しております。実は、感染血液を原料として使ことに関しては、感染症由来のものが血液製剤に持ち込まれまして輸血による感染が起こってしまうということで、厳しい規則が定められております。それは、生物由来原料基準という中の血漿分画製剤総則という中で、こういった病原体が製造過程において不活化又は除去されていることが確認される必要があると規定されております。

 そこで、14枚目をお願いいたします。我々は、このHTLV-1の陽性血漿が安全である,それ由来のグロブリン製剤を投与することによってHTLV-1の感染が起こらないということを調べるために、この不活化工程がどうであるのかということを調べました。

 別紙4枚目をお願いいたします。結論的に言いますと、これは大量の感染細胞を原料血漿にスパイクと言いまして添加した状態で、先ほど言ったコーン分画法でグロブリンを精製したときの、各精製工程の分画におけるHTLV-1ウイルスの感染性とウイルス核酸量を調べたものになります。一番下にMT-2 in PlasmaMT-2 in PBSCryoprecipitateCryosupernatant、そして8%エタノールからの分画という形で製剤ができていきますが、いずれにおいても、製剤化したところの分画からは全て感染性ウイルスが存在していないということがわかりました。

 これは、非常に大量の感染細胞をスパイクした状況になりますので、現実論的にはこのようなことはあり得ないと考えますと、原料血漿は非常に安全であるということがわかりました。

 別紙5枚目をお願いいたします。次に我々は、PVL7の陽性血漿、あるいはPVL0.11、それから先ほど言ったMT-2という非常に大量の感染細胞を添加したものから、実際このグロブリンをつくりまして、超免疫不全マウスをヒト化したものに投与しました。もしここに感染性があれば、こういったヒト化モデルでは有意に感染を再現できると考えられます。しかし、いずれの検体から精製したものに関しても、この30日という短期モデルではウイルス感染は認められませんでした。

 別紙6枚目をお願いいたします。今度は、先ほど言ったとおり、このモデルは30日ぐらいしか安定して検証できないので、さらにそれを長期に24週見ることのできるモデル,新生児のマウスに造血幹細胞をIntraHepaticと言って、肝臓に移植してみるモデルがでも同様な検討をいたしましたが、24週の観察期間のうちで、いずれもウイルスが検出された状態はありませんでした。

 以上のことから、この製剤がin vitroin vivoの試験で安全であるということがわかりました。

 資料15枚目をお願いいたします。そこで、これを実際に製剤化するに当たって、日本赤十字社でどのようなスクリーニングをしていただければ効率的かということを検討していただきました。

16枚目をお願いいたします。その結果、スクリーニングの抗体検査のカット・オフ・インデックス10以上のものに関しましては、どうも男性のほうがPVLは高い傾向にあるということがわかりました。

17枚目をお願いいたします。このような解析結果から、血漿数にある程度余裕がある場合は、全血検体を保管し、カット・オフ・インデックス10以上のものを使う。この10以上のものは、全てHTLV-1の核酸陽性でございました。ですので、ここから血漿をつくればいい。さらに、PVL1%または2%以上のものを確保しい場合、男性のほうを優先して確保していくことで、かなり高いPVLの血漿を確保できるのではないかと考えております。

18枚目をお願いいたします。現在、我々の研究チームでは、この500mLの血漿からコーンのエタノールを使いましてIgGを精製することに成功しております。この精製したIgGを使いますと、1年で700mg製剤として400本程度のものがつくられると考えられております。一般的に100万人の妊婦をスクリーニングして、キャリアが大体1.6%と考えますと1,600人。そのうち、もし投与する方を10%としますと、年160人ということになりますので、十分な量の血液製剤がつくられるということが確認できます。

19枚目をお願いいたします。こちらは、これを本当に製剤化するに当たって、臨床上、色々問題があるかということを内丸先生の分担研究班で検討していただきまして、富山大学の齋藤滋先生、長崎大学の森内浩幸先生のから御意見をいただきました。基本的には、ネズミモデルのデータだけで十分であるか?いきなり妊婦や新生児に打てますかということが主な問題点でした。あとは、新生児のワクチン接種干渉等の問題等、いろいろあるので、もう少し製剤の有効性のターゲットを絞ったほうがいいという御意見もいただきました。

 また、医科研の牧山先生からは、これを臨床スタディーとして成立させるためには、最低でも99例が必要だろうという御意見をいただきました。

20枚目をお願いいたします。そこで我々としましては、これを実施するに当たり、ノンヒューマン・プライメートであるサルを使いまして検討を行うことにいたしました。実は、HTLV-1には非常に似たウイルスがありまして、STLV-1というサルのHTLV-1みたいなものがあります。実際、このようなニホンザルの母子感染というものがヒトと同様にもし起こっていれば、本製剤を使うことによって、このモデルの安全性・有効性というものを検証できるのではないかと検討いたしました。

21枚目をお願いいたします。このニホンザルの感染細胞、STLV-1の感染細胞のSi2というものと、ヒトのJurkat細胞というものを使って感染実験を行いますと、HTLV-Igは、ほぼ100%、感染を抑えることができました。

 さらにシークエンスを見てみますと、Si-2、さらに野生のSTLV-198%の相同性、94%のホモロジーがあるということがわかり、このSTLV-1HTLV-Igの交差性に関する実験というのは非常に有効であることがわかりました。

22枚目をお願いいたします。そこで、実際、サルにおいて母子感染が起こっているかというのを、検証しました。高いPVLからは母子感染が起こって、低いものからはないといった、ヒトであるようなものがサルでモデル化できるのではないかということを検証いたしました。

23枚目をお願いいたします。こちらは、明里分担研究班の成果ですが,京都大学の霊長類研究所におります全部で300匹のサルの検査を行いました。その結果、66%がこのSTLV-1に陽性であったということがわかりました。

 別紙8枚目をお願いいたします。我々は驚いたのですけれども、PVLと抗体価で非常にきれいな相関があるということがわかりました。ヒトでは、相関というのは認められておりません。サルでは、このようにきれいな相関が認められました。

 別紙9枚目をお願いいたします。そうしますと、こちらはサルの持っている抗体価ごとあるいはPVLごとの母子感染率を示しました。それを見ますと、赤で示しているとおり、PVLが高いものほど母子感染率が高くなって、上がっているのがわかるかと思います。

24枚目をお願いいたします。そこで、実際、本当にサルでこういった母子感染が起こっているかということを、このような図で、お母さんの出産前から3カ月に1回ごと採血して、もし子供が生まれたら、その子供も3カ月ごとに採血するということで、28年から29年は4ペア、そして29年から30年は6ペアでフォローアップしました。

 別紙10枚目お願いいたします。端的に言いますと、4ペア見た限りでは、出産後にPVLがちゃんと上昇して、移行抗体がヒトとほぼ同じで、3から6カ月ぐらいで消失していく。そして、出生後1年位でPVLが陽転化しはじめるという図がわかりました。

 別紙11枚目をお願いいたします。それをまとめたものがこの図になります。1年ぐらいしますと、抗体価はほぼ全て陽性に入りまして、PVLもほぼ陽性に入ってくる。2年見れば、ほぼ100%入ってくるということがわかりました。

25枚目をお願いいたします。以上をまとめますと,母子感染率が30%、これも非常にヒトと近かったということで、サルを使った研究が可能ということがわかりました。我々としては、この移行抗体が減弱する3カ月目から月1回接種して、1年後に母子感染が抑えられているかというのを見れば良いのではないかという、仮の臨床プロトコルを立てました。

26枚目をお願いいたします。そこで、もう一回、森内浩幸先生と齋藤滋先生とこの臨床プロトコルを検証したところ、抗体さえ投与すれば母乳を飲んでもいいという結論は出すべきではないし、胎盤感染というのは移行抗体があるので有効性の実証が難しいということで、経産道感染に標的を絞ったらどうかという提案していただきました。経産道感染を抑えるためであれば、出生時の1回投与で済むので、実際やる価値があるとご意見いただきました。新生児のストレスも極めて少ないということで、当初は、この図で言うと下のほうを考えていたのですけれども、出産してワンショットするという臨床研究が可能か今、ニホンザルで検証しようとしているところです。

27枚目をお願いいたします。今後のサルの臨床研究を実施するに当たって、森内先生の研究班、それから内丸先生の研究班、齋藤滋先生にも入っていただきまして、臨床評価をサルのものを使って実際、実施していく。それに加えて、抗体の精製と母子感染のヒト化マウスモデルの構築、それからサルのSTLV-1のゲノム解析というものをやっていきたいと考えております。

28枚目をお願いいたします。妊婦スクリーニングのあり方について。これは「母子感染」という教科書から転記したものですけれども、妊婦スクリーニングが正当化されるには、以下の条件が必要であると書かれています。➀母子感染のリスクが判断でき、➁予防または減らすことができ、➂カウンセリングの方法が確立し、➃費用対効果がよい。B型肝炎などはこれに当たるかと思いますけれども、HTLV-1も断乳するということの母子感染予防、それから我々のグロブリンの開発、あるいは俣野研究班のワクチンの開発といったものができれば、こういった形でHTLV-1の感染予防というものが将来、可能ではないかと考えております。

 済みません、以上です。

○渡邉座長 発表ありがとうございました。

 それでは、ただいまの発表に関しまして、御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。

 山野構成員どうぞ。

○山野構成員 大変すばらしいデータで、新規感染を特に防ぐ効果が非常に強いということを、非常に強い印象を受けました。

 今回の御発表の内容と少し対象が異なるのですけれども、我々、生体腎移植でウイルスの感染率も非常に高そうで、さらにHAMの発症率が高いということで、現在、移植学会と連携して、厚労省のほうから注意喚起を出していただいたという経緯があるのですけれどもね。一方で、ドナーはかなり限られていまして、移植のメリットというのはいろいろ大きいところがありますので、臓器移植での新規感染というのは、このデータからするとかなり防げるのではないか。となると、感染している人から感染していない方への臓器移植が実現できるような製剤になるのではないかと思ったので、その辺の可能性について、1つお伺いしたい。

 そういうことを早く臨床でやっていくという上では、この抗体製剤がどのような基準を満たせば、そういう臨床試験ができるのかということで、通常、GMPグレードというところが求められると思うのですけれども、そこをどうやってクリアしていくのか。その2点、できれば。

○渡邉座長 では、水上参考人、お願いします。

○水上参考人 1点目に関しましては、ヒトかマウスを使って、まず移植モデルでの有効性というものを我々も今後検討していきたいと思っておりますので、そういったデータをもとに、直接臨床スタディーも含めて検証していただければと考えております。腎移植というのは、マウスモデルではなかなか難しいので、皮下移植、腎皮膜移植とか、いろいろな方法がありますので、我々もぜひここは検討していきたいと思いますので、いろいろ御教示いただければと思います。

 製剤化するに当たってということになります。もちろん、GMP等をクリアすることは必要になってくると思います。実は、この血液製剤自身は、先ほどのスライドで出したとおり、抗HBsとか、実際、B型肝炎の陽性の方からの血漿を集めて製剤化するという意味では、既に製品化されております。原料血漿が違うだけということになりますので、プロトコルとしてはほぼでき上がっている形になります。ですので、先ほど言った製剤基準の中で不活化されているということが証明できれば、ほとんど問題なく製剤化できるのではないかと我々は考えております。

○渡邉座長 ありがとうございました。

 ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。

 私のほうから、コメントというか、余分なことかもしれませんが、最後の28枚目のスライドのところで、グロブリン製剤とワクチンができれば、国内より根絶可能かと言われると、どうかなという気がします。これは、少しオーバーディスカッションかなという感じがいたします。感染ルートがいろいろ複雑ですので、大きな部分を抑えることはできることはたしかだと思いますけれどもと、ここまで言うかなと思いました。済みません。

○水上参考人 根絶可能?と"?"をつけておりますので,希望的観測ということです。

○渡邉座長 菅付構成員。

○菅付構成員 最後に研究者の方々と先生方にお願いです。これからの発症予防と、HAMの軽症な患者には新薬が有効であったりと希望が持てる話が聞けて喜んでいます。しかしながら、もう何十年も痛みやしびれといったHAMの症状を耐え忍んだあげく、寝たきりになっている患者がいます。私が60歳なのですが、平均寿命からいって10年早く死ぬというHAMのデータがありますので、よく生きられて75歳まであと15年あります。その生きている間に、どうにかして自分の足で歩きたい、寝たきりになりたくないという思いはまだあるのです。治療薬の研究を重症者に対しても目を向けていただきたいと切に願います。これからの感染を防ぐために、HAM患者が中心になって運動を起こしてきました。その頑張ってきた人たちが次々に亡くなっています。また、重症の患者はこれからふえると思うのです。早くて40代、5060代がATLHAMの発症年齢ですから、母子感染予防策が結果を出したとしても、進行とともに重症な患者はふえていく方向で減ったりはしないと思うのです。

 例えばATLでは治療法として確立されてきた骨髄移植ですが、HAMの患者も過去に成功例が見つかっていると聞きました。大きなリスクが伴ったとしても、患者を救う強力な治療方法があってもいいのではないかと思います。山野先生、ぜひよろしくお願いいたします。

○渡邉座長 ありがとうございました。

 ほかに御意見、御質問等ございませんでしょうか。

 なければ、次回の開催につきましては、調整の上、事務局より御連絡をさしあげたいと思います。

 それでは、本日は以上で終了といたします。皆様、どうもありがとうございました。

 


(了)

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