ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会)> 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会 第48回議事録(2017年10月4日)

 
 

2017年10月4日 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会 第48回議事録

○日時

平成29年10月4日(水)9:00~9:51

 

○場所

厚生労働省講堂(低層棟2階)

○出席者

荒井耕部会長 田辺国昭委員 関ふ佐子委員
吉森俊和委員 幸野庄司委員 間宮清委員 宮近清文委員 松浦満晴委員
松本純一委員 松本吉郎委員 万代恭嗣委員 猪口雄二委員 遠藤秀樹委員 安部好弘委員
日色保専門委員 昌子久仁子専門委員 上出厚志専門委員 加茂谷佳明専門委員
<参考人>
福田敬参考人 池田俊也参考人
<事務局>
鈴木保険局長 渡辺審議官 伊原審議官 迫井医療課長 古元医療課企画官
矢田貝保険医療企画調査室長 中山薬剤管理官 小椋歯科医療管理官 他

○議題

○試行的導入にかかる総合的評価(アプレイザル)の方法について

○議事

 

 

○荒井部会長

 

 おはようございます。ただいまより、第48 回「中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会」を開催いたします。

 

 まず、本日の委員の出欠状況について報告します。

 

 本日は、榊原委員、中村委員が御欠席です。

 

 関委員はもうしばらくしたら、いらっしゃると思います。

 

 なお、会議冒頭のカメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。

 

(カメラ退室)

 

○荒井部会長

 

 それでは、議事に入ります。

 

 本日は「試行的導入にかかる総合的評価(アプレイザル)の方法について」を議題といたします。

 

 事務局より資料が提出されておりますので、説明をお願いします。

 

○古元医療課企画官

 

 企画官の古元でございます。

 

 資料「中医協 費-1」に従いまして、御説明をさせていただきます。

 

 1ページ目、「試行的導入にかかる総合的評価(アプレイザル)の方法について」。費用対効果の試行的導入につきましては、これまで対象品目の選定、企業による分析・データ提出が行われ、現在第三者による再分析が行われているところでございます。

 

 このうち総合的評価の具体的な評価の方法について検討を行いたいと考えてございます。

 

 試行的導入の全体の流れを図1にお示ししております。

 

 続きまして、2ページ目をごらんください。本日は2ページ目の上に示します5項目について順次検討を行いたいと考えております。

 

 1つ目から参ります。価格調整を見据えた評価結果の示し方についてでございます。これまで当部会においては総合的評価の評価結果については、そちらに記載の5段階とする案を御提示していたところでございます。他方、当部会におきましては、評価結果を5段階とすることの妥当性及び評価結果を「良い」「悪い」などと表現することの妥当性についても指摘がなされてきたところでございます。

 

 そこで、3ページに参ります。検討の視点でございます。試行的導入の対象品目について、総合的評価の結果に基づき価格調整を行うこととされております。その際、段階的な評価に基づき価格調整を行うと、各段階の境界の前後で価格調整幅が大きく変動することになります。

 

 イメージとして図2-1をごらんください。それに対して、よりきめ細やかに価格調整に反映させるという観点からは、段階的な評価ではなく、対象品目のICER などに応じた連続的な価格調整方法が望ましいのではないか。

 

 また、こうした連続的な価格調整方法を採用する場合、総合的評価について、「良い」「悪い」などの評価を示す必要はないのではないか。

 

 そこで、具体的な対応案でございます。総合的評価の評価結果としては、こうした視点を踏まえ、5段階の評価ではなく、各品目のICER 及び倫理的・社会的影響等に関する観点から考慮すべき各要素への該当の有無を示すこととする、という御提案でございます。

 

 続きまして、4ページをごらんください。基準値の設定について。これまで、基準値については過去の調査並びに諸外国における評価基準を活用して設定するということでお話を整理してまいりました。

 

 そこで具体的な対応案です。まず、(1)過去調査の活用については、前回の当部会において表1にお示しした4つの調査を御説明いたしました。このうち以下の要件、すなわち4ページの中段にありますが、例えば受諾確率曲線の作成が可能であること、「社会としての負担」を尋ねた調査であることなどの要件を考慮して、2010 年に行われた白岩らによる調査を活用して試行的導入における基準を設定するという御提案でございます。

 

 なお、5ページ目に2010 年の調査の受諾確率曲線などの資料を掲載してございます。

 

 また、6ページ目をごらんください。諸外国における評価基準等について。こちらも前回の中医協において諸外国における評価基準の御説明をいたしました。その中で、具体的な評価基準が公開されている国のうち、生活水準が比較的日本と近い英国の評価基準を活用して試行的導入における基準を設定する。また、その際は値の変動の大きな為替レートを直接用いて換算するのではなく、当該金額の1人当たり所得に占める割合を示す1人当たりGDP 比を用いて換算するという御提案でございます。

 

 英国の基準は、結果としては表4のとおりとなります。

 

 そして、6ページ目の一番下、(3)です。これら過去調査並びに英国の基準を具体的に価格調整にどう活用するかということについては、当部会の後、本日開催予定の当部会及び薬価専門部会、保険医療材料専門部会の合同部会で検討したいと考えてございます。

 

 基準については以上になります。

 

 続きまして、7ページをごらんください。複数の分析結果(ICER )が得られる場合の対応についてということです。これまでの検討状況ですが、複数の適応疾患を持つなどにより、複数の ICER が得られる場合があります。この場合の取り扱いについて、9月 13 日の当部会において、枠の中に記載にとおり、3つの案を御提示いたしました。

 

 検討の視点になりますが、このうち案1については総合評価の結果を5段階で示すことを前提としていますので、これを行わない場合には、この案は採用できないということ。また、案2、案3については仮想的な医薬品A及びBに当てはめた状況を表5のとおり想定して記載をしております。

 

 その結果ですが、8ページをごらんください。案2すなわち使用患者さんの割合を用いた加重平均値を用いた算出では、疾病ごとの使用患者割合の違いがそうした医薬品の評価に反映される一方、案3すなわち最もよい、または最も悪いという数値を採用する場合には、そういった使用方法の違いが評価に反映されないため、案2のほうが当該品目の評価としては妥当なのではないか。また、案3において費用対効果が最も悪いなどの結果を用いて評価する場合に、そうした疾病に対する開発に影響を及ぼす可能性がある。こうしたことを考慮して、案2すなわち複数の分析結果が得られる場合には、使用患者割合などで加重平均し、総合的評価に用いるという御提案でございます。

 

 続きまして、8ページの4。ICER が算出できない品目の評価方法についてでございます。品目によっては比較対照品目と比べて効果が増加しており、もしくは効果が同等であり、かつ、同時に費用が削減される品目もございます。試行的導入の品目の中にこうした品目が存在する可能性もありますので、こうした品目の総合的評価の方法について、別途、検討する必要がございます。

 

 具体的な対応案としては、総合的評価の評価結果には、そちらに記載のとおり、効果が増加しており同時に費用が削減される、または効果が同等であり同時に費用が削減される旨を明記する。また、それらの品目の価格調整に必要な情報として、比較対照品目との比較方法、比較結果などについても評価結果に記載することとする、という御提案でございます。

 

 最後に、本日5つ目の検討項目でございます。9ページをごらんください。倫理的・社会的考慮要素について。まず、これまで表6に示した6項目について検討をいただいていたところでございます。

 

 下の、検討の視点に移ります。試行的導入の対象品目が、これらの要素に該当するか否かについて、費用対効果評価専門組織で判断をいただくことになりますので、どのような品目が該当するのかについて、より明確化する必要があるということでございます。

 

 順に参ります。考慮要素3については、表の3番ですが、重篤な疾患での、必ずしもQOL は大きく向上しないが生存期間が延長するという場合を考慮するという趣旨ですので、少し表現を明確化してはどうかという御相談でございます。

 

10 ページ目に参ります。続きまして、5のイノベーションについては、試行的導入の対象品目はいずれも革新性、有用性が大きく、薬価・材料価格の算定においてそれらが評価されております。今回の費用対効果評価の試行的導入は、その評価の妥当性を検証するという意味合いもありますので、5のイノベーションについては、試行的導入においては総合的評価における考慮の対象から除くことが妥当ではないか。また、6番、小児の疾患を対象とする治療については、去る8月9日の当部会でも議論させていただいたとおり、試行的導入の対象からは除外して、今後、小児の疾患を対象とする治療を費用対効果評価の対象とする場合に改めて検討することとしてはどうか、ということでございます。

 

 それを踏まえて具体的な対応案としては、試行的導入において各要素に該当する品目については表7にお示しした4項目としてはどうかという御提案でございます。

 

 資料の説明は以上となります。よろしくお願いいたします。

 

○荒井部会長

 

 ありがとうございました。

 

 ただいまの説明に関して御質問等があればお願いします。

 

○万代委員

 

 今回、総合的評価(アプレイザル)の方法についてということで、これまでの議論も踏まえて事務局から新しい提案をいただいたことについて、全体としては納得できるものとは考えております。

 

 その上で幾つか細かいところの質問と意見を申し上げたいと思います。

 

 まず、1ページ目の○の2つ目のところに、試行的導入の流れということで、ここの総合的評価を本日さらにブラッシュアップするというところですが、中括弧で囲った3つの四角の枠の一番下のところに評価結果という名称を改称するということが提案されています。これについては確かにこれまで総合的評価といった文言だったように記憶しますので、これについても混同がなくなるので、これについてはこれでよろしいかとは考えております。

 

 次に、3ページの図2でございます。イメージ図なので、本当にイメージですが、線が下に行くと、どうもICER が右に高くなるに従って何か安くなるようなすなわち調整幅が小さくなるイメージにも取れないわけではありませんので、この縦軸の用語が「価格調整」というよりも価格調整する幅というような文言のほうが、よりわかりやすいかと認識していますので、それでよいかどうか、事務局に確認したいと思っております。

 

 次に、6ページ。基準値の設定についての2つ目の、諸外国における評価基準等についてということで、英国のものを採用するということですが、6ページの(2)の○の2つ目の、これは前回も出ていたので後追いで議論するのは申しわけないと思いますけれども、「値の変動の大きな為替レートを」と書いてありますが、今回は試行的導入なので、為替レートは大きく変動しないのではないかと考えております。したがって、揚げ足をとるつもりはありませんが、この項目は根拠としては少し薄弱と思います。

 

 いずれにしても、この評価基準等について、諸外国のうち日本との近似値を採用するということで進んでいますので、あとは決めの問題かなと思いますので、どの金額をとるかということについては余りこだわるものではありません。

 

 ただし、今後の評価基準価格が、例えば表4にあるように3万ポンドを採用するとして、この行を右側にたどっていけば換算方法によって30 万ぐらい違うというこの差が微妙に響いてくることもあると思います。いろいろな立場の方がおられると思いますので、英国における基準はとして、あくまでも試行的導入における諸外国での評価基準のは参考とするというような形で考えたほうがうよいとは思っております。

 

 それについて、この表3の注記の(出典)というところにNICE の出典が出ていますが、 2013 とあります。それほど昔ではありませんが、これが直近のデータなのかどうかをお伺いしたいと思います。

 

 さらには英国において、どの程度の期間でこれが見直されているのか。これまで随分長いこと議論してきましたが、参考人の先生方から教えていただいた、この英国における評価基準の価格については、ずっと2万ポンドと3万ポンドが境界値であったかなとも記憶しますので、そのあたりをどの程度の期間で見直されているかについて教えていただければと思います。

 

 それから次に、これが最後でございます。8ページのICER が算出できない品目の評価方法については別途検討するということで、それはそのとおりかなと思いますが、具体的な対応案のところの○の2つ目、一番下の項目ですが、品目の価格調整に必要な情報として、比較対照品目(技術)との比較方法、比較結果等についても評価結果に記載することとするということで、これは当然かなと思います。

 

 と申しますのも、比較対照品目に、どの品目が採用されたかによって、かなりICER が変わってくるのではないかと思います。例えば比較対照品目として、かなり以前の品目しかないという場合には、当然の結果として、時代の変遷によって、あるいは時代の進歩によって、新しく出たものについては ICER がよくなるのではないか、よい結果となるのではないかと認識しますが、それがどの技術においても、こういった ICER が算出できない品目についてはそういったことが普遍的に言えるのかどうかについては、参考人の先生に教えていただければと考えております。

 

 一方、長い間、新しいものがなくて、新しい技術なり医薬品が出たときに、それを古い品目と比較せざるを得ないという意味では、長い間なかなか開発されなかったものが、新しくできたということであれば大きな変革、イノベーションとも考えられますので、そこでICER に有利に働くということになったとしても、それはそれとして、私としてはイノベーションの評価として受け入れるべきかなとは考えております。

 

 以上、幾つかの質問について、よろしくお願いいたします。

 

○荒井部会長

 

 ありがとうございました。

 

 まず、企画官、どうぞ。

 

○古元医療課企画官

 

 まず、3ページの図2でございます。価格調整のイメージとしてグラフをお示しいたしました。価格調整の詳細については、この部会の後に行われる合同部会でまた御相談を申し上げたいと思いますが、イメージとしてはICER が右に行けば行くほど費用対効果がどちらかというとよくないという方向ですので、それに向けて価格の調整を行っていく。調整の幅が小さくなるという意味ではなく、調整を全体としてこのように下げていくというイメージでございます。

 

 英国の状況については、また福田先生からも補足をいただきたいと思いますが、2013 年の出典でございますが、現状も同じ基準で対応されているという認識でございます。

 

○荒井部会長

 

 それでは福田参考人、お願いいたします。

 

○福田参考人

 

 参考人の福田でございます。

 

 幾つか御質問をいただいたので、御回答させていただきます。

 

 今、企画官からありましたが、6ページの表3の下の出典にあります「Guide to the methods of technology appraisal 2013 」という NICE の文書ですが、これは NICE におけるアセスメント及びアプレイザルの方法について記載したもので、何回か改訂されていますが最新版は 2013 ですので変わっておりません。この中で2万ポンドとか3万ポンドという記載がされていて、これは何回か改訂を受けている中でも変更されていませんので、ずっとこの値を使っているという状況です。

 

 それから、古いものとの比較ということで、8ページのあたりだと思うのですが、費用対効果を評価する際に、古い比較対照の品目の場合に、当然、価格的にも安価なものの場合がありますから、追加的な費用が大きくなる可能性はあります。ただし、その分、従来はそれしかなかったものに対して新しい治療法ができてきたことによって、効果も大きく上がるということが期待されますので、万代先生が御指摘のとおり、費用対効果という観点からは、費用もかかるけれども効果も上がるということで、通常の増分費用効果比で算出ができると思います。古いものと比較するからといって、特段、分析方法上有利になるとか不利になるということはなく、通常の、効果がふえる分と費用がふえる分との関係で見ていくことができると考えます。

 

 もう一つはICER が算出できない品目に関してという御質問もいただいたと思っているのですが、 ICER が算出できない品目についても比較対照は古いものであっても新しいものであっても、どちらも生じるという可能性がありまして、この場合には効果がふえるか同等で費用が削減される場合ということになります。

 

 まず、効果が同じ場合には、増分費用効果比の数式の定義上、分母が効果の増分になりますので、効果の増加がないとそこはゼロになりますから、算術上算出できないということになります。もう一つが、効果はすぐれていて、ただし費用が削減になる場合。この場合には、増分費用効果比の算出式どおりですとマイナスの値が出ることになりますが、マイナスの値自体には意味がないと考えていますので、この場合にはやはり別の方法を考える必要があるということであります。ここについては、比較対照は古いものでも新しいものでもやはり検討が必要だと思います。

 

○荒井部会長

 

 万代委員、どうぞ。

 

○万代委員

 

 ありがとうございました。

 

 福田参考人の1つ目のお答えで半分はわかりましたけれども、どの程度の期間で見直しているかということについて、ちょっと教えていただきたい。

 

○荒井部会長

 

 参考人、どうぞ。

 

○福田参考人

 

 金額の2万、3万ポンドについては一回も変更されたことはないと理解しています。

 

○万代委員

 

 でも、見直しはかけているということですか。

 

○福田参考人

 

 分析方法については見直しなりアップデートがされているのですが、2万とか3万ポンドの基準については変更されたことはないと思います。

 

○万代委員

 

 それと8ページ。私の理解が悪くて大変申しわけなかったと思いますが、8ページのICER が算出できない品目の評価について、比較対照品目が古いからといって、この ICER が算出できない品目に該当した場合に、新しい比較対照品目がある技術と比べて、より有利になるとかそういったことはないという理解でよろしいのですね。

 

○福田参考人

 

 そのように考えております。

 

○荒井部会長

 

 松本吉郎委員、お願いします。

 

○松本吉郎委員

 

 先ほどの6ページの、万代先生も発言された部分について。英国の生活水準が日本と比較的近いということはそうかもしれませんが、もともとのこの2万ポンド、3万ポンドというのは非常にぴったりな値ですよね。ということは、これは何かの調査をして決めたような値とは考えにくいような気がするのです。なぜ2万と3万になったのか、もう一度そこの根拠をお示しいただきたいと思います。

 

○荒井部会長

 

 では企画官、お願いします。

 

○古元医療課企画官

 

 この基準の根拠につきましては、私どもも、NICE の御担当の方にも直接お伺いするようなこともしておりますが、現時点では特段の根拠として、何かの調査をもとに設定したというものではないと伺っております。

 

○松本吉郎委員

 

 しかし、それは論文か何かになっているのではないのでしょうか。そういった値から引っ張ってきたものでもないのですか。どこから出てきたのかがよくわからないとなると、どう取り扱っていいか、ちょっと難しくなってしまうと思うのですが。

 

○荒井部会長

 

 参考人、どうぞ。

 

○福田参考人

 

 英国の、NICE の2万、3万ポンドについては今お話があったとおり、明確に根拠は示されていません。ただ、従来から英国では医薬品等の費用対効果の評価というものが研究として進んでいて、それを、どういう品目はどのくらいというものを並べて議論するようなことが研究としてやられていました。そういう過去の評価した結果をもとに、おおよその基準を決めたものと理解しています。ですから、明確に、この調査とか、ここまでを給付するために決めたということではないと理解しています。

 

○荒井部会長

 

 吉森委員、お願いします。

 

○吉森委員

 

 まず、今回の「費-1」の資料の検討案を拝見しますと、その表現ぶりが各検討項目の、特に具体的な対応案の提示、これは従来の、何々してはどうかというような投げかけ調の語尾ではなくて、「こととする」というように断定的に御提案いただいている。これは事務局の背水の陣というような、決意のあらわれだと受けとめておりまして、歓迎したいと思っております。

 

 そこで、幾つか個別の論点について御意見を申し上げたいと思います。まず、1の価格調整を見据えた評価結果の示し方ですが、これは御提案のとおり連続的な調整方法を採用することによって、個別の品目について、よいとか悪いとかといったような、風評や誤解を生むようなリスクが低減されると思いますので、倫理的・社会的影響等に関する要素に該当した場合でも価格調整の幅がまたなだらかになるというようなことですので、よく考えられた案ではないかと考えています。

 

 次に、2の基準値の設定ですが、これは御提案にあるように、試行的な導入については2010 年の白岩らの調査を使う。また、今、診療側の先生からも御意見がありましたけれども、外国価格調整、英国を基準に使うということでよいのかと思いますが、今後、この制度化を本格的導入に向けて検討していく中で、支払い意思額調査をきちんとやるということで理解しておりますので、これとどの程度の差が出るのか。外国為替調整についても、今、縷々御質問で御回答をいただきましたが、その内容をどのように把握して制度化するのか。追って必ず検証をして、御提示をしていただきたいと思います。

 

 最後に、ちょっとこれは先走り過ぎかもしれませんが、5の倫理的・社会的考慮要素の関係で、今回、試行的な実施ということで対象品目が薬価の算定上、イノベーションが評価されているということで、総合評価における考慮要素からイノベーションという項目が除かれた。これについては全く異論はありませんが、これも今後の制度化に向けての検討の段階で、このイノベーションの要素を考慮するときには、例えば逆のケースで薬価算定でイノベーションの評価を受けていない品目、これが費用対効果で考慮要素としてイノベーションを評価する。こんなことは非常におかしいだろうと思っていますので、この点は今後、薬価の抜本的改革でしっかりとイノベーションを議論し、それを踏まえて慎重に検討していくべきだろうと思っています。

 

 以上、意見です。

 

○荒井部会長

 

 ありがとうございました。

 

 松本純一委員、お願いします。

 

○松本純一委員

 

 試行的導入に限って言えば、2ページにある1~5の、それぞれの具体的な対応策については評価できるものと思います。

 

 ただ、今も御意見が出ていましたが、6ページの英国における評価基準が出ています。これは参考人からの意見で、研究を続けてきた結果というお話でしたので、支払意思額調査とかそういうものも、もちろん考えなければいけないのかもしれませんが、こういうものも参考にできるのではないかと。本格的導入に向けては、そういうことも考慮していくべきではないかと思います。

 

 以上です。

 

○荒井部会長

 

 幸野委員、お願いします。

 

○幸野委員

 

 全体として7ページまでについては、おおむね事務局案として示されたものに異論はなく、試行的導入についてはこの方法でやるのが妥当ではないかと思います。

 

 一点、8ページの4のICER が算出できない品目の評価方法について、気になる点を確認させていただきます。具体的な対応案に示されているような内容が記載されるということと、 ICER が算出できない品目の総合的評価の方法については別途検討するとなっていますが、効果が増加して費用が削減される、あるいは効果が同等で費用が削減されるという品目は、確かに非常によい評価につながると思いますが、このような品目に対して価格を引き上げるという選択肢もあるという主旨で書かれているのでしょうか。

 

○荒井部会長

 

 企画官、どうぞ。

 

○古元医療課企画官

 

ICER が算出できない品目については、3ページに記載いたしました図2の価格調整のイメージ。これはあくまでも ICER が算出できる品目について記載をしたイメージですので、なかなかこの考え方の中に入ってこないという客観的事実をここは記載しておりまして、具体的な価格調整の方法については、できれば次の合同部会の中で少し御議論をさせていただきたいと思っております。

 

○幸野委員

 

 では、合同部会でも発言しますが、ここで申し上げたいのは、そもそも試行的導入における対象品目は、補正加算の加算率が高いものや保険財政に大きな影響を与えるもので、費用対効果評価を行うことで本当に価値のあるものなのかを別途見極めるという趣旨であったと理解しています。費用対効果評価の結果、一定の価値があるものについては、現行の薬価等の基準が正しいとしてその価格が維持され、一方、費用対効果評価の悪いものは、価格は妥当ではないとして引き下げられると考えています。この2つの選択肢しかないと思っているので、費用対効果評価の結果がよかった場合に価格を引き上げるという選択肢はないと考えています。資料に「別途検討する」という表現がありますので、事務局は価格の引き上げも考えているのかと思い、このような発言を致しました。

 

 次に倫理的・社会的考慮要素について、9ページのところで、当初は6つだった要素が4つに絞られたことについては理解しています。しかし、4項目を見ると、概念的には理解できるのですが、果たして検討の経緯を何も知らない国民がこれを読んだときにどういうものなのかのイメージが持てるのかと非常に疑問に思います。

 

 例えば○1の感染症対策における有用性といっても、どれぐらいの規模で効果を及ぼしたものが評価されるのか、○2の公的医療の立場からの分析についても、介護費用や生産性損失はどうやって算出するのかというのもわかりませんし、どれも今回の案では、基準が概念的なものでしかありません。また、○3の長期にわたり重症の状態が続く疾患の延命治療は、例えば超高齢者でコミュニケーションもとれないような非常にQOL の低い状態の患者が1年間延命した場合はどう評価するのか、○4の代替治療が十分に存在しない疾患の治療は、そもそも対象品目の要件で、治療法が十分に存在しない希少疾病に対する治療にのみ用いられる品目は除外されていますので、考慮すべき要素として改めて評価すべきなのかという観点からも、考える必要があると思います。

 

 したがって、試行的導入については、事務局案のとおりに進めることに反対はしませんが、本格導入に当たっては、この概念的な基準を国民がより理解しやすいような具体的な基準をしっかりとつくっていくべきだと思います。

 

 以上です。

 

○荒井部会長

 

 ありがとうございました。

 

 宮近委員、お願いします。

 

○宮近委員

 

 資料の10 ページ目の1つ目の○について、意見を述べさせていただきます。

 

 ここでは、イノベーションは総合的評価における考慮の対象から除くことが妥当ではないかとされております。今まで論議してきた総合的評価については、論議経過も踏まえて早期かつ着実に試行的導入を進めていくことが重要であると考えますので、今回の対応案については賛成するものですが、ただし、イノベーションの推進は今日の医療の現場でも不可欠な、重要なファクターになっていると思います。もちろん、必ずしも評価が十分でないことは、イノベーションにおいては避けては通れないステップと思います。そうした中で、いろいろなチャレンジが行われていることが、今日の革新的な新薬の創出につながっているのではないかと思います。今後、本格導入に向けて、試行の結果を踏まえて、倫理的・社会的考慮要素においても、イノベーションをどのように評価していくのか、引き続き課題の1つとして検討していただきたいということを申し上げたいと思います。

 

 以上です。

 

○荒井部会長

 

 ありがとうございました。

 

 安部委員、どうぞ。

 

○安部委員

 

 今回の試行的導入に関しては、一定期間の間に結果を出さなければいけませんので、一定のルールに基づいて、スピード感を持って実施できるような議論を進めなければいけないとは思っております。しかしながら、一方で、10 ページにも書いているように、1つ目の○の2行目に「今回の試行的導入はその評価の妥当性を検証するという意味合いもある」という記載がございます。私はそのとおりだと思いますので、そういう前提の中で、スピード感を持って進めるということが非常に重要であると思っておりますし、その結果についても、評価の妥当性を検証するという目的を忘れてはいけないと思っておりますので、スピード感を持ちながらも慎重に議論をする必要があると考えております。

 

○荒井部会長

 

 松本純一委員、お願いします。

 

○松本純一委員

 

 ちょっと事務局にお伺いしたいのですが、9ページにある倫理的・社会的考慮要素について。これが6つから4つになったというのは、私も評価をしているところですが、使用してみて、最初のときからは考えられなかった、こういういい面もありますねという部分がこの4つだと思っております。ですから、5番目のイノベーションとか6つ目の小児の疾患を対象とする治療については、最初のときに十分薬価に考慮されているものであるという理解でおりました。ところが、先ほどからの御意見を聞いていると、どうもそうではないようにも聞こえてきますので、確認をさせていただきたいと思います。

 

○荒井部会長

 

 企画官、お願いします。

 

○古元医療課企画官

 

 まず、少し分けてお話をさせていただきますと、イノベーションについては10 ページの上に記載のとおりです。いずれも今回の 13 品目については革新性、有用性が大きいということで、まず、薬価・材料価格の算定において既にそれは評価をされている。そこを、その評価の妥当性を評価するというのが今回の位置づけですので、除くのが妥当ではないか。また、小児については少しまた視点が違うとは思うのですが、今回、そもそも 13 品目を選定するに当たり、小児の疾患を対象とする治療は入り口から除外していますので、それについて改めてここで考慮する必要はないのではないかと、こういった整理で御提案をしております。

 

○松本純一委員

 

 ということは、1~4は使ってみて思わぬ効果があったというような理解でよろしいのですか。最初の、いわゆる薬価を算定する際には、ここまでは思いが至らなかったという意味で書かれているということでよろしいのですか。

 

○古元医療課企画官

 

 直接的には、今回、費用対効果に関してICER という数値を用いて評価をする中で、そこでは反映し切れなかったというところであり、かつ、現在の価格の算定において十分考慮し切れていない面もあるということだと思います。

 

○荒井部会長

 

 医療課長、お願いします。

 

○迫井医療課長

 

 医療課長でございます。

 

 これには若干経緯がありますので、改めて考慮要素と、それから今御提案している具体的な最終案との関係を一度説明させていただきたいと思います。

 

 御案内のとおり、これは平成24 年からずっと検討してきている中身でありますけれども、制度を議論していただくに当たっては、まず、一般的な考え方として整理をして、例えば ICER だけを使って機械的にやるのではないですよ、というようなことを議論していただきました。それを具体的に考慮するに当たって、特にイギリスの例などを参考にしながら、具体的に考慮する要素は何かということを、今回の制度運用とは別に一般論で始めたということであります。

 

 そのときに掲げられたのが、この原案の1~6ということでございます。その時点では、試行の具体的な品目や、あるいは実際に評価をするに当たって加算がついている、ついていないとか、その対象とする技術を限定するとか、そういったことは全く度外視をして、非常にフラットな考え方で、こういうことを考慮する必要がありますねというリストでありました。

 

 それ以降、検討を進めてまいりまして、具体的な13 品目、それから今回いろいろな価格調整をしていくという整理をしていくに当たりまして、例えば先ほども企画官が説明をしましたが、あらかじめ対象技術を絞っているのに、改めてその項目があるのは矛盾しているのではないか。これはいろいろな御指摘を受けました。そういったことがありまして、幾つかの項目については除外をして、最終的にこの試行についてはこの4つでお願いしたいということでございます。

 

 ですから、そもそも薬価あるいはデバイスの価格を設定したときの考え方、それが足りる、足りないということではなくて、あくまで考慮すべき要素として今回、試行についてはこういう整理をさせていただきたい。こういう経過でございます。

 

○荒井部会長

 

 幸野委員、お願いします。

 

○幸野委員

 

 先ほども申し上げましたが、考慮要素の○4の代替治療が十分に存在しない疾患の治療について、これは対象品目の要件で、治療法が十分に存在しない希少な疾患の治療にのみ用いる品目は除外されます。小児の疾患を対象とする治療を考慮要素から除いた理由もこれと同じだと思うのですが、考慮要素から除けないほかの理由が何かあるのでしょうか。

 

○荒井部会長

 

 企画官、どうぞ。

 

○古元医療課企画官

 

 御指摘のとおり、今回の13 品目を選定するに当たっては、そういった、治療法が十分に存在しない希少な疾患に用いるものについては除外をしてございます。ただ、そこの希少な疾患の定義として、指定難病、血友病及び HIV 感染症ということで、少し限定的に除外をするという形で、今回の品目の選定をしているため、今申し上げた指定難病、血友病及び HIV 感染症以外の、何か適応症に該当するようなものが仮にありましたら、やはりそれは対応する必要があろうということで残しているということでございます。ここについては、先ほど御指摘いただいた制度化の中で、また品目の選定を含めてどのような整理が適当なのか、しっかり検討してまいりたいと思っております。

 

○幸野委員

 

 試行的導入では事務局案のとおりで良いと思いますが、本格導入にあたっては、企画官がおっしゃったように、細かく書かれたほうが良いのではないかと思います。

 

○荒井部会長

 

 間宮委員、どうぞ。

 

○間宮委員

 

 今、13 品目が挙がっていて、それについて実際の費用がどれぐらいかかっているのか、その算出方法はどのように考えているのでしょうか。また、その 13 品目の薬に対しての評価あるいは満足度といったものは考慮に入れるのか入れないのかというところが気になっています。実際の費用の算出方法が、薬によっては1年間ずっと使うものなのか、期間が限られているものなのか、いろいろあると思うのです。そのあたりでの、評価をするに当たっての額の算出方法は何かあるのでしょうか。

 

○荒井部会長

 

 参考人、お願いします。

 

○福田参考人

 

 該当品目の費用の算出方法ですが、あらかじめ分析についてのガイドラインを定めさせていただいて、それに従った分析をしているところでございます。

 

 費用に関しては、御指摘のとおり当該の医薬品の費用だけではなく、それをずっと使ったときに影響すると考えられる、長期にわたった費用をとるという形になっています。

 

 言い方としましては、対象技術の費用や効果の及ぼす影響を評価するのに十分長い分析期間をとるということで、その治療が生涯にわたって影響する。例えば後で発生する可能性がある疾患を抑えられるとか、そういうことがあるのであれば、生涯にわたった費用の推計を行うという形での費用計算を行っているところでございます。

 

○間宮委員

 

 それは何か具体的に、こういう算出方法ですよというのを示すことはできるのですか。

 

○福田参考人

 

 試行的導入の開始に当たって中央社会保険医療協議会における費用対効果評価の分析ガイドラインというものを作成し、これをこの中医協の場で御承認いただいたという形で、それは公表されていますので、御提示することは可能でございます。

 

○荒井部会長

 

 よろしいでしょうか。

 

 では専門委員、どうぞ。

 

○上出専門委員

 

 倫理的・社会的考慮要素については従来からいろいろ御議論もありましたし、また、本日も特にイノベーションについていろいろ御議論があったところでございます。

 

 本日の御議論では、とりあえず試行的導入からは除外し、制度化についてはまた改めて議論というようなところかと理解をしておりますけれども、一方で、今回、資料にもありますとおり試行的導入の対象品目はいずれも革新性の高い品目でございます。

 

 また、先ほど幸野委員からも御発言がありましたが、ここまでの議論ではなかなか具体的なイメージが湧かない中での議論だったということもあろうかと思います。今回、試行の目的の一つには、いろいろ出てくるであろう課題について、具体的な事例をもって検証するというような意味合いもあろうかと思いますので、むしろ試行の中では、このイノベーションというものを最初から除外してしまうのではなく、具体的な事例で検討した上で、その結果をまた制度化の議論につなげていくというような方法もあるのではないかと考えますので、意見として述べさせていただきました。

 

○荒井部会長

 

 松本純一委員、お願いします。

 

○松本純一委員

 

 しつこいようですが、イノベーションについては十分議論をしたと私は理解しております。そちらの立場はよくわかりますが、意見をお聞きしたということにとどめたいと思います。

 

○荒井部会長

 

 そのほか、いかがでしょうか。

 

 ほかに御意見等がないようでしたら、本件については本日の御意見を踏まえ、御提案いただいた方向で事務局において検討を進めることとしてよろしいでしょうか。

 

(「異議なし」と声あり)

 

○荒井部会長

 

 ありがとうございました。

 

 それでは、そのようにしたいと存じます。本日の議題は以上です。

 

 次回の日程については追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。

 

 それでは、本日の費用対効果評価専門部会はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。

 

○古元医療課企画官

 

 ありがとうございました。

 

 続きまして、合同部会につきましては5分後、会場の時計で9時56 分からをめどに開始したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

 

 

(了)
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