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2017年7月12日 歯科医師の資質向上等に関する検討会(第5回)

医政局歯科保健課

○日時

平成29年7月12日(水)14:00~16:00


○場所

中央合同庁舎第4号館12階 共用1214特別会議室
(東京都千代田区霞が関3-1-1)


○議題

○歯科医師の資質向上等に関する事項について

○議事

○古殿歯科衛生係長 川添先生と小松本先生がまだお越しになっていらっしゃらないのですが、定刻となりましたので、ただいまより歯科医師の資質向上等に関する検討会の第5回を開催いたします。構成員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。まず、構成員の出欠状況ですが、森田構成員は所用により欠席との御連絡を頂戴しています。また、羽鳥構成員は、所用により一時的に中座される旨の連絡を頂いております。なお、本検討会では、参考人として高久史磨参考人、川越正平参考人、小松本悟参考人の 3 名に御参画いただいております。さらに、今回の検討会では、オブザーバーとして文部科学省医学教育課の森課長に御出席いただいております。今回の検討会については公開となっておりますが、カメラ撮りについてはここまでとさせていただきます。

 続いて、配布資料の確認をよろしくお願いします。議事次第、構成員名簿、座席表のほか、資料は 1 3 、また参考資料は 1 2 をお配りしております。乱丁・落丁等ありましたら、事務局までお知らせいただければと思います。以降の進行について、江藤座長、よろしくお願いいたします。

○江藤座長 江藤でございます。本日は大変お暑いところお集まりいただきまして、ありがとうございます。厚生労働省の中に場所が取れなくて、この中央合同庁舎になったのですが、多分ここのほうが少し涼しいのではないかと思っております。本日の議題ですが、「医科歯科連携の推進に関して」となっております。これは資料 1 の中の「歯科保健医療ビジョン」の策定に向けての論点の整理ですが、後ほど事務局から説明があります。この中で医科歯科連携が非常に大きなキーワードになっていることから、本日の議題を「医科歯科連携の推進に関して」とさせていただきました。議題に入る前に、ただいま申し上げた資料 1 の「歯科保健医療ビジョン」策定に向けた主な論点について、事務局から説明をお願いします。

○和田歯科保健課課長補佐 事務局でございます。資料 1 です。前回 5 月の第 4 回目の検討会で御了解いただきました今後の議論の進め方の中で、「歯科保健医療ビジョン」をまとめる際の論点の項目を表として整理したものを用意しております。次回の検討会で本格的に御議論いただく予定としておりますので、個別の項目の説明に関しては、今回は割愛させていただきます。

 簡単に説明します。 1 ページ目は、今後の歯科保健医療の需要の中で、ライフステージにおける需要です。これは、それぞれ人口、小児、成人、高齢者に分けて整理しております。

2 ページ目です。同じく今後の歯科保健医療の需要の中で、医療提供施設における需要です。これを歯科診療所、病院、居宅・施設等に分けて整理しております。

3 ページ目は、あるべき歯科保健医療の提供体制についてです。 (1) として地域包括ケアシステムにおける歯科医療機関の役割を、それぞれ全体、歯科診療所、病院等に分けて整理しております。

4 ページは、あるべき歯科保健医療の提供体制のかかりつけ歯科医の役割・機能等で、かかりつけ歯科医の役割・機能と、あるべき歯科医師像に分けて整理しております。

5 ページ目は、具体的な医科歯科連携方策や歯科疾患予防策です。それぞれ医科歯科連携方策と歯科疾患予防策に分けて整理しております。本日の御意見等を踏まえて、医科歯科連携方策等については更に加筆・修正を行っていきたいと思っております。

 今、説明した形式で整理しておりますが、申し上げましたように本日この後、議論される内容を踏まえて充実を図っていくこととしております。事務局からは以上です。

○江藤座長 ただいまの御説明は、本日の議題ではないのですが、今までの議論のまとめです。これについて、何か御意見、御追加等ありましたら頂きたいのですが。

○三浦委員 資料 1 の最初のページに、成人期においては「特に発言なし」ということなのですが、たまたま発言が拾われなかったというところで、成人期における歯周病は全身疾患、特にメタボリックシンドローム、糖尿病等と大変関連性が高いので、むしろ成人期における歯科の需要が医科歯科連携を推進する上でも、ニーズが高いと考えているところです。追加をさせていただきました。

○江藤座長 ありがとうございました。ほかにありませんか。

○伊東委員 関連してですが、成人期の歯周病対策は大事だと思います。総論的に今、発言がありましたが、具体的には法廷の節目健診とか、これは余り議論になっていないのですが、もう一つ全国的に普及している人間ドックがあります。しかし残念なことに、この中に歯科の検診がないというのは、大きな健康に対する欠落になっているのではないかと思います。人間ドックに歯科の検診を入れるように。進めることが成人歯科保健を進める上でビジョンとして必要ではないかと思います。

○江藤座長 ありがとうございました。ほかにありますか。それでは、今、頂戴いたしました御意見を踏まえて、議論を進めさせていただくことにしたいと思います。続きまして、医科歯科連携における取組に関して、事務局から資料 2 、それから本日御出席いただいております各参考人の先生から資料 3 について、 15 分から 20 分程度の御説明をいただくことになっております。その後、意見交換ということになりますので、よろしくお願いいたします。事務局から資料 2 についてお願いいたします。

○和田歯科保健課課長補佐 事務局でございます。まず、参考人の先生方から御説明いただく前に、資料 2 、医科歯科連携の取組に関して説明します。スライドの右下、 2 ページ目です。お示ししているのは、歯科医師の主な就業先となっております。それぞれ 3 本、折れ線グラフがありますが、一番上が歯科診療所、真ん中が病院 ( 医育機関 ) 、一番下が病院 ( 医育機関を除く ) となっております。グラフを見てお分かりいただけますように、歯科診療所に従事される歯科医師が大部分だということをお示ししております。

 スライド 3 です。いわゆる口腔ケア等による効果として、代表的なデータを 2 つ掲載しております。左側が、要介護者に対する口腔ケアによる肺炎発症率の抑制効果をお示ししております。右側が、入院患者に対する口腔機能の管理による在院日数の削減効果をお示しております。これは本検討会に限らず、他の検討会でも用いられているデータです。

 スライド 4 です。このデータは、 5 31 日の中医協で報告されたデータです。周術期口腔機能管理における医師と歯科医師の連携に関してお示ししております。このグラフですが、一番左の青色の部分と水色の斜線の部分が、周術期口腔機能管理等において医師と歯科医師との連携が行われている割合をお示ししております。病床数が多いほど連携が取られているというデータですが、実際に連携が取られている病院の多くは、青でお示ししている院内の歯科医師と医師とが連携されているケースが多いことがお分かりいただけるかと思います。こうした実態をどう考えていくのかということが 1 つの論点になるかと思います。

 スライド 5 です。病院における歯科関連標榜科数及び割合の推移です。折れ線グラフですが、実際の病院の中で歯科を標榜している、いわゆる病院歯科の割合については 20.9 %となっております。

 スライド 6 です。医科歯科連携に関する具体的な取組として診療報酬上の評価が挙げられております。お示ししておりますのは、医科の保険医療機関が患者の口腔機能の管理の必要を認め、歯科の保険医療機関に対して情報提供を行った場合の評価です。

 スライド 7 です。周術期口腔機能管理における医科歯科連携に関する取組で、岡山大学病院の例を掲載しております。これは、医科と歯科の連携の窓口となる中央診療部門 ( 周術期管理センター ) を設置して、この中で医科と歯科、あるいは多職種の連携が図られているというケースです。

 スライド 8 です。上段の部分ですが、医科歯科連携、いわゆる口腔と全身に関しては、様々な分野で取り上げられることが多くなってきているところです。医療計画について、昨年度末に通知された中で、近年は口腔ケアが誤嚥性肺炎の発症予防につながるなど、口腔と全身との関係について指摘されているため、医科歯科連携等を更に推進することが必要であること。また、下段ですが、いわゆる骨太の中でも、口腔の健康は全身の健康にもつながることなど、様々な分野でこうした報告が出されているところです。

 こうした経緯等を踏まえて、医科歯科連携を進める観点から、論点でもお示しておりますが、本検討会の方向性として、病院に歯科医師の配置を進めていくことが、結果的には医科歯科連携に資するのではないかということがありますので、今後この方向で議論を進めてはどうかと。併せて、今後お示しする「歯科保健医療ビジョン」の中でも、具体的にこういったことを記載してはどうかということを論点として挙げております。事務局からは以上です。

○江藤座長 ここで、今の御説明について何かありますか。

○山口委員  1 つ確認というか、質問したいのですが、よろしいですか。医育機関以外で歯科を設置している病院は 2 割で、歯科医師のわずか 3 %にしかすぎないということがあって、スライドの 4 ページを見ると、比較的大きな規模の医療機関のほうが歯科医師と医師が連携していると読み取れます。ということは、歯科を設置している医療機関は、どちらかというと大きな規模の病院に多い傾向にあると受け止めてよろしいのですか。

○和田歯科保健課課長補佐 そのような認識で間違いありません。

○江藤座長 ほかに、どなたか御質問はありますか。それでは、本日お招きした 3 人の参考人の先生からのお話を伺いたいと思います。最初に高久先生に御説明いただきたいと思います。先生、よろしくお願いいたします。

○高久参考人 高久です。江藤先生に、この会で何か短く話をするようにと言われまして、私は何も用意することを考えていなかったのですが、やはり何か資料があればいいかなと思いましたら、昔、大学におられるときにずっと関わっておりまして、お世話になった先生のデータがあったものですから、主に鴨井先生のデータを引用する形でお話したいと思います。これは皆さん御存じのことがほとんどだと思いますが、歯周病と様々な生活習慣病に関係が深いことが 1 ページ目のスライドの下にあります。動脈硬化とか、心臓病ということは大分前から言われておりましたが、骨粗鬆症、あるいは糖尿病、あるいは低体重児、あるいは早産ということに関係が深いことは、鴨井先生のデータを見て私自身が少し認識を新たにした次第です。

 次のスライドですが、口内細菌に関わる心血管障害、これは比較的最近言われるようになったと思うのですが、細菌性心内膜炎、あるいは動脈硬化症の場合に、その硬化症の病巣から口腔内によく見られる菌が見つかるということは恐らく 5 6 年前に言われるようになったのではないかと思います。

 下のスライドですが、歯周病の治療が心筋梗塞に対する相対危険度を減らすということも、「歯周病と糖尿病」という報告書の中に載せられたスライドを借りてきたわけです。

 次のスライドの骨粗鬆症ですが、私は今回初めて認識を新たにしたのですが、高齢者に多いと言われる骨粗鬆症と歯周病とは関係があって、腰椎と下顎骨で骨密度との間に有意な相関関係がある。また、骨粗鬆症は歯周炎の危険因子であるというのは下顎骨と関係するのだと思います。ある雑誌に載ったときに、歯の総数と全身の骨の骨密度とが相関しているというように、全身の骨と下顎骨だけではなくて、主に下顎骨と全身の骨密度との間に非常に相関があるというのは当たり前のことですが、したがって、骨密度が低下する高齢者、特に高齢の女性の場合に、歯周病などがひどくなるということが考えられます。当然ですが、誤嚥性肺炎の原因の 1 つとして、歯周病が原因で、細菌による誤嚥性肺炎が起こる。また、歯周病組織からいろいろなサイトカイン、 IL-1 とか、 IL-6 とか、 IL-8 とか、 TNF- αが放出されて、それが感染病原体の肺への定着と増殖を促進する。もちろん高齢者の場合、あるいはいろいろな疾患を持っている患者さんの場合に免疫力が低下しますと、歯周病の影響で歯周病を原因とする肺炎が増えてくる。当たり前の話ですが、そういうことです。

 今、東京オリンピック委員会で喫煙が問題になっていますが、喫煙が歯周病のリスクファクターになる。特にプラークと歯石、糖尿病、喫煙というのは、非常に密接に関係がある。また、受動喫煙も同じ因子によるリスクファクターである。これはかなり前から言われておりますが、歯周病が II 型糖尿病患者の血糖コントロールに影響を与えるということは当然考えられることですし、また糖尿病患者において虚血性心疾患が多いということは前から知られていますが、その場合の虚血性疾患の発症に歯周病が関連する。当然ですが、糖尿病患者の場合に歯周炎がより重篤になる、あるいは歯周病の治療をしますと、 HbA1C 値、糖尿のコントロールのマーカーが良くなるということ、あるいは肥満や高脂血症の治癒と、歯周病との間に密接な関連があると。 Body Mass Index が高いほど歯周病のリスクが上昇するとか、あるいは脂肪肝と歯周病が相関している。また、歯が無い人で義歯を装着しない人は認知症や死亡率が上昇するというデータも公表されています。特に肥満に関連した生活習慣病としては、糖尿病とか、動脈硬化症とか、虚血性心疾患があるわけですが、それぞれの発症との間に様々な機序を介して歯周病が深く関連していることを示したのが、下の図です。

 最後に、先ほど申し上げた妊婦の歯周病が早期の低体重の乳児の出産に関係があるということで、妊婦の場合には歯周病の治療をいち早くしなければならない。病院内の歯科医と、この場合には産科の医師が密接に連絡して、妊婦の歯周病を早く治すことが正常の出産のために重要であることを示しています。また、歯周病によって増加した、先ほど言った様々なサイトカインが子宮の収縮を誘発して、早期の低体重児の出産に関連するということなどが、私がちょっと調べたときに出てきましたので、御参考になればと思い報告いたしました。

○江藤座長 ありがとうございました。実は高久先生から、歯周病菌と全身疾患の関係について、いろいろなエビデンスが出てきているので、医学と歯学のほうで共同のシンポジウム、ないしはワークショップ等をやったらどうかという御提案を頂いたのです。それで、高久先生に手始めに、この会議でそういったことをお話していただけないだろうかということで、本日お話を頂きました。先生、大変ありがとうございました。

 続きまして、本日お招きしております川越先生にお話を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

○川越参考人 お招きいただきましてありがとうございます。千葉県松戸市で在宅医療を主に行う診療所をやっております、あおぞら診療所の川越と申します。本日は、狭義の在宅医療ということにとどまらず、地域包括ケアというような、より広い観点から歯科医師の先生方への期待ということをお話させていただければと思います。説明させていただきます。

2 ページのスライドに、ざっくりと今日お話したいことの要点をまとめて先にお示ししました。「食支援」は「認知症」や「がん」と並ぶ最重要テーマである。医科の外来・入院・在宅でのハイリスクアプローチが協働の鍵である。誤嚥性肺炎対策の成否の 8 割は発症より以前に決している。認知症対策では生活習慣病の管理やセルフケアが鍵となる。緩和ケアとしての口腔ケアが終末期患者には必要不可欠である。地域の食支援に取り組むかかりつけ歯科医師の養成が急務である。ここには書いておりませんが、地域包括ケアとなると、地域を 1 つの病棟だという言い方をしたり、 1 つのバーチャル病院だという言い方をすると分かりやすいのではないかと思います。その観点からの御説明もさせていただきます。

3 ページのスライドです。認知症やがんが医療の分野でものすごく重要な領域だということは、どなたでも直感できることかと思います。しかしながら、この食支援という領域も、この 2 つに劣ることのないほど重要な分野だということを御指摘しておきたいと思います。特に在宅医療を行っていますと、やはり人の生き死に関わることも多くなってきます。そして、いろいろな病を持たれた状況の方というのは、食べることにまつわる多くのことが関わってきます。栄養にしろ口腔にしろ摂食嚥下にしろ、そういうもの全てを「食支援」という言葉に込めて包括的に理解したほうがいいのではないかと思います。

4 ページのスライドが、今日お話させていただくキースライドだと思います。今までの検討会のまとめを見せていただきましても、それぞれの症状のステージごとにどのようなアプローチをするのかということで御議論されているというのを勉強させていただきました。そして今回、医科と歯科の連携ということが主たるテーマで、この会が行われているわけなのですが、医師の側からの観点で御意見させていただければと思いまして、このような形でまとめてみました。特に、先に考え方として、ハイリスクアプローチという考え方とポピュレーションアプローーチの 2 つに分けて考えたいと思うのです。ハイリスクアプローチの医科の外来・入院・在宅のところに、どのように歯科から医科に働き掛けるのがよいだろうか、そんな観点でお聞きいただければと思います。

 今までの提言等を見させていただきましても、通院が難しい方、すなわち入院中の方や、在宅医療を受けているような通院困難者といった方が、今後、歯科が関わらないといけない大きなターゲットの方々である。それはもちろんそのとおりだと思うのですが、現実はもっと深刻というか、より大きな対象者の方が放置されていると感じております。どういうことかと言いますと、通院はできるかもしれないけれども通院していない方も、よりたくさんいらっしゃるわけですので、その必要性に気付いていなかったり、認識が不十分だと、歯科にかかろうというふうに御本人が思われないかもしれません。そして、このハイリスクアプローチと書かせていただいたところは必ず関わっている医師や看護師がいるわけなのですが、我々医師や看護師が歯科の重要性というか、診療しなければいけないということに気付いていないと、そもそもコンサルテーションや受診勧奨をいたしませんので、結局そういう方々は放置されているというのが現状かと思います。

 具体的に言いますと、医科の外来では外来の医師が、そして看護師が、入院では病棟の担当している医師が、病棟の看護師が患者さんには関わっているわけです。そして、我々の在宅の分野でも在宅医や訪問看護師が関わっているわけなのですが、それにもかかわらず、目の前の患者さんの口の中の問題点について必ずしも気付いていないというのが、本当にこれは自戒も込めまして多数生じていることかと思います。

 先ほどの高久先生の御報告にもありましたように、様々な疾病と歯周病が関連しているというようなエビデンスも相当程度蓄積されているわけですので、ここで専門の先生方に重ねてお話する必要はないわけですが、少し捉え方というか、関わり方を戦略的にするべきだろうという意味で、ハイリスクアプローチという言葉を使わせていただいております。

 具体的にどういうことかと言いますと、やはり、特に歯科にかかる必要性が高いという方は特定できているわけです。今お話のあったような、例えば糖尿病の患者さんは、全員、歯科に継続的にかかるべきだと思うのですが、現状はそうはなっていないかと思います。例えば、医師の内科の教科書の糖尿病の所には、糖尿病には 3 大合併症がありますよと。そして、例えば、定期的にタンパク尿のチェックをしましょう。 1 年に 1 回の眼科受診をしましょう。そんなふうに常識としてみんな思っているとは思います。歯周病でコントロールすると HPLC が低下するというエビデンスも知っている人は多いと思うのです。しかしながら、自分が担当している糖尿病の患者さんに歯科受診を勧奨しているか、しつこく行きなさいと言っているか、確認をしているかというと、現状はそうなっていないのではないかと思います。

 ですので、明らかにハイリスク群と特定されている方を、どうやったら的確に歯科につなぐことができるのか。そのために診療報酬という方法もあるかもしれませんし、何らかの施策として打ち出していくという方法もあるかもしれませんし、また後でも少し述べますが、医科のほうで作られている様々な疾病に対する疾患ガイドラインというものもあります。疾患ガイドラインに必ず受診勧奨するのだとか、必ず診療のコントロールをするのだということが書かれているかというと、現状は必ずしも全ての分野がそうなっていないのではないかと思います。骨粗鬆症も同じです。

 それから、入院で言うと、やはり肺炎というのが大きなターゲットですし、がんや周術期の話は先ほどの前段の事務局の御説明にも出てきたかと思います。例えば心不全なども同じです。心不全の方も口腔のコントロールをすることによって再入院を防ぐことができるというような研究もなされているようです。また、在宅においては、認知症の方、後で御説明をさせていただく終末期の方、必要性が高い方は多数に上るというか、終末期の方などは全員ということになりますので、そのような認識が今のところ我々在宅医や訪問看護師にもまだ不十分なのではないかと感じます。ですので、これら医師や看護師にその必要性をいかに認知させるのかというか、啓発するのかということが非常に大きな戦略となっていき、それを実行させるための手立てというものも必要になるのではないかと思います。また繰り返し出てきますので、先に進ませていただきます。

5 ページのスライドは、今ざっくりと申し上げたようなことの例ですが、糖尿病の話で極端なことを言いますと、 3 大合併症という言葉をいっそやめて 4 大合併症にして、歯周病を加えてもらったらどうかと。例えばそのぐらいのキャンペーンを打って、 8020 ではありませんが、何かそういう認識が定着すると、医師や看護師も「ああ、そうか」と思うようになるのではないかという気がします。ビスホスホネートの顎骨壊死の問題を知らない人はいないと思いますが、実際に自分が処方を開始する前に必ず歯科受診をしているか、勧奨しているかとか、確認をしているかとか、処方するときに仮にやったとしても、半年、 1 年、 2 年、 3 年と継続処方をしている途中で口腔内の問題を抱える方、ケアがきちんとできていないが故にトラブルが起こってしまう方が現実にいらっしゃるかと思います。そういうことを防ぐような手立てを確実に打っているか、そんなふうに考えますと心許ないと思います。この辺りはいっそのこと、診療報酬で連携していないと減算するぐらいにしてもいいぐらいではないかと感じます。

 先に進みます。誤嚥性肺炎を 1 つの例に話をさせていただきます。「成人肺炎診療ガイドライン 2017 」が今年の 4 月に日本呼吸器学会から出されています。 7 ページにフローチャートとして示されているのですが、このガイドラインの発表が非常に物議をかもしたというか、驚きをもって迎えられたのです。簡単にまとめますと、この右側の枝の「老衰状態の判断」という言葉がありまして、赤いラインを引いてありますが、疾患の終末期や老衰の状態に該当する場合には肺炎治療を行わないという選択肢も考慮する。そのようなニュアンスでこのガイドラインが書かれたということで、治療を放棄するのかとか、見捨てるのかというような反応も含めて非常に波紋を呼んだというような状況があります。

 しかしながら、呼吸器の先生方は真剣に検討されて、このような踏み込んだ記載をされたと伺っております。実際に、誤嚥性肺炎の方は治療が難しいのは確かでして、仮に有効な抗生剤を選択して投与して肺炎が改善しても、改善した頃にまた次の誤嚥性肺炎が起きる。そういうことを二度、三度と繰り返して、結局救命できなかったというような経験も実際にすることになります。ですので、適切な抗生物質を選ぶだけが適切な診療とは言えないというようなことをガイドラインに示されたということになるのです。

 実際に誤嚥性肺炎の方に必要なケアというものを 8 ページのスライドに例示させていただいております。適切な抗生剤や酸素を投与しただけで肺炎が解決するなら話は簡単なわけですが、現実の世界はそうではありませんので、摂食嚥下障害に応じた食形態や座位姿勢や食事介助の技術、高次脳機能への刺激、この辺りは介護の技術ということになりますし、全身の筋力維持強化や関節拘縮の防止、摂食嚥下リハビリテーション、この辺りは専門的リハビリテーションということになります。歯科診療や口腔ケアの重要性はここで言うまでもないかと思います。また、低栄養状態であるがためにワンリスクが高いという方もいらっしゃるので、栄養介入も非常に重要である。このような多職種協働を同時進行で行わなければ誤嚥性肺炎に対応することができないということは自明であります。

 次のスライドを見ていただくと、先ほど例示させていただいた呼吸器学会の成人肺炎診療ガイドラインが踏み込んだ記述をしたわけなのですが、そうやって、やや誤解をもって受け止められたり、波紋を呼んだということは、少し表現の仕方を気を付けたほうがいいのではないかと、在宅医療を担当している立場から言いますと、感じております。すなわち、肺炎の治療を始める時期はいつかというような問いを立ててみると少しお分かりいただけるかと思うのですが、このガイドラインは、あたかも発熱が生じたとか、肺炎という炎症が始まったときを肺炎の治療の開始と考えているのかもしれないのですが、実際にはそうではありません。肺炎を予防するため、そして二度目の肺炎を防ぐために、ずっと継続して行わなければいけないケアを先ほど 8 ページのスライドで御説明しましたが、転倒して骨折をする、こういうものも同じかと思います。そういう事態が起こってから考えるのでは遅いので、低栄養や口腔ケア、筋肉の減少に対して日頃からアプローチをしておく、その対策というものが肺炎診療の 8 割を占めているのではないか。そんなふうに言い換えますと、残りの 2 割のことだけを考えてもなかなか治療のらちが明かないという事態は確かにあるので、 8 割のほうが大事だよという書き方をなさったらもっと良かったのではないかと、在宅医療を担当している立場から言うと感じます。

 認知症の方に関しては、その重要性は言わずもがなかと思いますが、一応確認をしておきます。 2012 年の推計で、全国に 460 万人ほどの認知症高齢者がいらっしゃるということが推計されていて、今後着実に増えていくことが予想されているわけです。そして、 12 ページのスライドは久山町研究のデータですが、認知症の生涯罹患率というような言い方をしてみると、この推計でいくと 55 %ということになっています。実際に 85 歳の高齢者の認知症有病率は 4 割に上るというデータもあります。ですので、大多数の日本人が人生の終盤期に認知症と関わりを持つという時代になるわけです。しかしながら、認知症の方は訴えることが非常に難しくなりますし、口腔の問題が脳に及ぼす影響というのは多大なものがあります。

13 ページのスライドに、事例をお一人だけ御紹介しているのですが、この方はうちでも教訓的に経験させていただいて勉強になった患者さんなのですが、体がいつも右に傾いているという患者さんでした。この方はグループホームに入居している認知症の重度の方で、ようやく車椅子座位を保つような状態の方で、発語は既にできなくなっていた状態の方でした。この方が、なぜか体幹が常に右に傾いているという状況があって、我々関わっている医師や看護師は、何で傾いているのだろうね、分からないね、不思議だねと、その当時は思っていました。たまたま歯科衛生士に歯科スクリーニングというものをやってもらう機会があり、この方のスクリーニングをしていただいたところ、有り体に言うと、重度のう歯があって、プラークや歯石が多量に付着して炎症も強いということで、要するに相当痛そうだということが分かりました。下に写真をお示ししております。

 次のページです。それは大変だということで、訪問歯科診療の御依頼をして、歯科衛生士も専門的口腔ケアということで入りました。グループホームの介護職員が怠慢をして口腔ケアをしていなかったわけではありません。しかしながら、認知症の方に「お口を開けてください」と言って開けてもらえるるわけではありませんので、適切なケアが素人の介護職員ではできていなかったという結果なわけなのです。この方に適切な歯科治療、そして口腔ケアが提供されるようになったところ、口腔の状況は改善しました。そうしたところ、驚くべきことに、傾いていた体幹が真っすぐに戻ったのです。さらに、食事の摂取量が増えました。更に驚くべきことには、単語ですが、言葉が出るようになりました。ですので、高次脳機能にまで好影響を及ぼしたということを経験しまして非常に驚いたのです。この方に限らず、実際に医科・歯科連携を進めていく中で、このような、俗に言うと驚くべき事例がたくさん経験されることになりまして、いちいち驚かなくなりました。ですので、いかに重要かということがよく分かったということです。裏を返せば、我々医師、看護師はいかに分かっていなかったかということでもあります。

 そんなわけで、認知症の方に必要な介入というのは、 16 ページのスライドに書かせていただいていますが、様々な合併症管理をすることが認知症の発症や進行を遅くするということがエビデンスとしてそろいつつありますし、運動というのは最もエビデンスが高いということもよく研究されています。そして、食生活、栄養、口腔衛生といったことが重要だということが指摘されるようになったわけです。

 今年、我が国の 6 つの学会、例えば精神神経医学会や神経学会、老年医学会といったような学会が合同で「認知症疾患診療ガイドライン」というものを策定しておりまして、まだ案の段階なのですが、既に案が公開されています。膨大なガイドラインを作られているのですが、その中にある歯科関係のものを抜粋して御紹介しております。認知症者の歯科治療はどのように判断するかというクリニカルクエスチョンが立てられていまして、その回答ですが、認知症者に歯科治療・口腔ケアは必須であり、予防的、継続的に口腔衛生管理を提供する。そのようなことが書かれていまして、実際に認知症を発症することによって、自発的な清潔行動が障害されるので、う歯や歯周病が多くなる。認知症を発症することによって歯科受診が途絶えてしまう。歯科介入の意味を理解できずに拒否してしまう。そのような結果として重大な問題が発生してしまうので、そうなる前に予防的な口腔衛生管理を提供する必要がある。このようなことがガイドラインに明記される予定になっています。こういうものを、いかに医師や看護師に普及させていくのかとか、医学教育の中に明記していくのかということが重要観点になるかと思います。

 終末期の患者さんについては、写真をお示ししていますが、これは肉腫という癌で亡くなった患者さんの 1 か月前ぐらいのときのお写真を出させていただいています。痛みや譫妄という精神症状が繰り返し出ていて、対応に非常に苦慮する患者さんだったのですが、この方のお口の写真を撮らせていただいたところ、この 19 ページのスライドのような状況にありました。この方に対して、ものの数分、歯科衛生士がケアをしますと、こうやってピカピカになりまして、 21 ページのスライドにお顔を出させていただいているのですが、この表情を見ていただくだけでも、緩和ケアとしての口腔ケアがいかに重要かということを直感していただけるのではないかと思います。

 最後に、かかりつけ歯科医師が地域の食支援を司るために、地域を 1 つの「バーチャル病院」として捉えたほうがいいのではないかというお話をさせていただきます。 23 ページは、食支援にまつわる問題がいろいろ対処されると、 QOL の向上、苦痛の緩和、急性合併症の予防、医療費の削減、いろいろなインパクトを生じ得るというのは先生方は御承知のことかと思います。冷静に、では誰が地域の食支援を司るべきなのか、そんなふうに問いを立ててみますと、我々医師の世界では、耳鼻科の先生方はもちろん関わってくださるわけなのですが、耳鼻科医は全国で 1 万人ぐらいです。歯科医師の先生方は 10 万人いらっしゃるということを考えますと、実際に耳鼻科の有病者も非常に多くいらっしゃいますので、耳鼻科の先生方というのは地域の医師会の先生方を見ていましても、著しく多忙で、耳鼻科往診をしてくださいとお願いしても、なかなか行ってくださらないというか、外来を離れられないという先生方が非常に多いのです。そのようなことも考えますと、もちろん人口の多い少ない地域で、たまたまの配置状況によっても事情は違うかもしれませんが、耳鼻科医が往診できないけれども歯科医ならできるという地域は多数に上ると思いますので、やはり物量的に言っても、専門性という観点から言っても、歯科医師の先生方が地域の食支援活動を司るのが理にかなっているのではないかと考えます。

 耳鼻科の先生方はもちろん耳鼻科の専門的なことでサポートしていただくのは有り難いのですが、中心を担うほどの時間的な余力やマンパワーは残念ながら、ない地域がほとんどだと思います。ですので、かかりつけ歯科医師の先生方に口腔ケアや摂食嚥下リハビリテーション、終末期ケアというようなものを担っていただければと思います。

24 ページのスライドには、そのようなかかりつけ歯科医師の先生方はどんな素養が必要だろうかということを書かせていただいています。食支援と一口で言いましても、カロリー・栄養・水分摂取、食形態、摂食嚥下リハビリテーション、味、姿勢や介助法と、こんなふうに項立てをしてみますと、学ぶべきことはたくさんあるかと思います。そして、在宅医療を行うというのは、我々医師が行う在宅医療ともほとんど同じ脈絡ですが、全科診療的にアプローチしなければいけないとか、認知症というのは基本になりますので、認知症やフレイルという患者さんに対する理解をする、多職種協働ということについて理解をする。それから、御家庭によって考え方や価値観が相当異なりますので、家族へのケアや多様な価値観を受け止める度量というのも必要になると思います。

 また、推進していく上で、ほとんどの方が合併症を持っておられますので、医科との連携ということも切り離せないことになります。医科がやっていること、疾患の予後を予測する。リハビリテーションのゴールを設定する。治療方針は立てますが、それを共有する。お互いに併存疾患の管理をする。それから、意思決定支援、これは、どのような終末期を過したいのかとか、迎えたいのかというようなことを継続的にケアしています。そして、もちろん狭義の緩和ケアを提供していく。このようなことに歯科医師の先生方にも関わっていただきたいですし、医師と連携していただきたいと思います。

25 ページのスライドは連携が現実においてはそんなに簡単ではないというか、今のところ、最初に紹介するときに情報提供書をお出しするかもしれませんが、そのやり取り以降に、どんな診療が行われているか、お互いに知らない状態が多いと思いますので、実際にどうやったら連携が現実に動いていくのか、亡くなるそのときまで、一旦関わった患者さんについては最後まで歯科診療を提供していただきたい。そんなふうに考えますと、我々医師と常に連絡を定期的に取り合う必要があると思います。

 最後に、バーチャル病院というところを御説明します。これは非常に奥深い話です。日本医師会の共同利用施設という概念で、定期的に 2 年に一度、総会も行われているような分野があります。例えば、血液検査の検体を、検査センターという地区医師会等が運営している地域がありますし、所によっては MRI などを設備して、その検査センターにオーダーをして MRI を撮影してレポートをもらって、かかりつけ医が説明をする。そのような形で共同利用しているような施設を地区医師会等で持っているということが実際にあります。また医師会立で、小児科などはどうしても夜の時間帯の受診ニーズが非常に高いということがありますので、そこに小児科の先生や内科小児科の先生方で輪番制を敷いて交代で医師会立夜間急病診療所というようなことを運営しているという実例があります。そういうことをすることによって、小児科病院であったり小児科の先生方に極端な負担が行かなくて、 24 時間対応を分散することができるというようなことがあります。

 また、地区の医師会等が訪問看護ステーションを経営していたり、ケアマネ事業所を経営している場合があります。これは見方を変えると、そのような専門職種を医師会を通じて間接的にかかりつけ医の先生方が雇用しているというような言い方もできると思います。また、この訴訟社会にもなって、地域によっては、例えば産科で開業していらっしゃる先生が、自分のクリニックで分娩を取り上げるのが非常に重たいというようなことがあります。例えば、市立病院の分娩室と助産師さんの援助を使って、そこで自分の患者さんの分娩を取り上げるというようなことが行われていたり、所によっては、医師会立の産科診療所というものを建てて、そこに助産師さんが 10 人雇用されているというような事例もあります。こうやって、分娩設備や人材を共有しているのだということです。

 それから、医師会が次域包括支援センターを運営しているような所もあります。こういう形を取りますと、行政の一翼を担うことになりますので、例えば歯科医師会立地域包括支援センターが全国に存在しているのかどうかちょっと存じ上げませんが、もしそういう所があって、やはり歯科連携の重要性や口腔ケアの啓発ということに、より協力的に取り組んでいただいて、その意義がその地域で普及されたと。そのような成果がもし出ましたら、なるほどそんなアナウンスの仕方もあるのだなということができるかと思います。

 また、介護保険の枠組みで、在宅医療・介護連携支援センターというようなものを作りなさいという政策が、介護保険のほうで作られていまして、今、全国およそ 200 か所ぐらい、こういうセンターが出来ています。松戸市でも来年度このセンターを設置する予定で、そこで考えている新しい取組として、このセンターに、より新しい機能を付与すると。例えば、かかりつけ医の先生が、今まで在宅医療をやっていなかったが、新しく在宅医療を始めようというときに、報酬請求事務の仕方から勉強しなければいけないのでちょっと重たいなと思われるということが、かかりつけ医の先生方にインタビューをして分かりましたので、それはもうやらなくていいですということで、センターの事務職員が報酬請求事務をサポートしますと。そんなことを仕組みとして、今、計画しております。

 それから、 1 人で行くのはちょっと重たいのだと。看護師さんが一緒に行ってくれると行きやすいのだけれども、クリニックの看護師に声を掛けると、労働強化につながると言って協力してもらえないのだと。そんなことを実際におっしゃる先生がおられました。ですので、地域の訪問看護ステーションの看護師さんと話合いをしまして、訪問看護師さんを時間貸しするというか、派遣していただいて、業務委託の形で同行してください、ちゃんと付与を払いますからということで、そのようなマッチングをセンターが請負いましょうと。そんなことを今、議論しています。

 また、管理栄養士さんが分かりやすいのですが、地域に非常にリソースの少ない専門職を、このようなセンターで人材登録をしておいて、必要な方が、患者さんが発生したときに御紹介をしてマッチングをして、訪問栄養指導に行ってもらう。そんなことをセンターが人材登録バンクとして機能することができるのではないか。そんなことを議論しております。

 また、もう少し話を膨らませますと、先ほどの共同施設利用という分娩室の例などをお話させていただきましたが、実際に、我々医科の世界でも、例えば眼科の先生や放射線科の先生が患者さんを入院させて何か治療や手術や処置を、放射線照射をしたいのだけれども、放射線科のベッドは持っていない。しばしば、そういうことはどの病院でもあります。大体そういう場合は内科病床か外科病床に入院させて、その治療をやる。ですから、その入院した時点での主治医は内科の先生か外科の先生になって、放射線科の先生はコンサルタントとして関わって放射線治療を実施する。それで、終わったら退院する。そんなふうにやっております。このことを考えると、例えば歯科の先生が在宅で間歇的な手術をするというのは、ちょっとこの合併症患者については重たい、実施するのは困難であると御判断されることはもちろんあって、それは歯科大学病院等に入院させて、やらせてもらえればもちろんいいのですが、常にそういうリソースとつながっていられるかとか、近くの地域に存在するかというと、先ほど 2 割という話もありましたので簡単でないかもしれません。ですので、連携という在り方でいくと、例えば地域の病院の内科病棟に入院させていただいて、そこに先生方が歯科往診をしていただいて間歇的処置や治療をしていただいて、全身管理、合併症管理、痛みの管理、出血に対する対応、そういうものは内科としてできることはやっていただく、外科としてできることはやっていただく、そして、安全に処置が終わったら退院して、また歯科の先生の元にお戻しする。そんなこともできるのではないかと思います。ですので、地域をバーチャル病院だというふうに広く捉えると、一体我々医師や歯科医師は、どこでどんな仕事をすればよいのか、どのような設備を一緒に持てばいいのか、どんな連携があり得るのかというふうな見え方が違ってくるのではないかと思います。

 最後に、予防のところはポピュレーションアプローチだと申し上げましたが、先ほど伊東先生がおっしゃっておられたのは正にそのとおりだと思います。人間ドックで、なぜ歯科のチェックをやる所がないのかというのは少しおこがましいなという気がしまして、視力や聴力は測るくせに、口腔のチェックをする人間ドックを見たことがないのですが、どっちが大事かと言ったら口腔が大事に決まっていると思うのです。それをもっと喧伝するべきではないか。そして、その人間ドックの付加価値も高くなりますし、 3 万も 5 万も 10 万も払って人間ドックにかかる方というのは非常に健康リテラシーの高い方ですので、そういう方が重要性を理解すると、国民全体に訴求する力が大きいのではないかと思います。

 もう 1 つが、産業歯科医師というのが、やはり会社で保険組合を持っているような所では、非常に医療費が下がるということに関心が高いと思いますので、そういう所にもっと強力にアプローチしていくことによって、市町村行政に歯科専門職を配置するのも非常に有用だと思いますし、健保組合などに働き掛けるのは非常に重要なのではないかと思います。

 長くなって恐縮です。今までの医療の世界は、予防、そして先進医療、支える医療、こんな構成になっていると思います。支える医療というところが、リハビリテーションや緩和ケアで構成されているわけなのですが、ここの重要性が今、非常に言われていて、地域包括ケアという時代になってきています。歯科の世界で言いますと、これを予防、そして食支援、在宅医療というふうに言い換えると非常に分かりやすいのではないかと思います。ここを強力に進めていただければ、我々医科の負担も減り、患者さんの生活の質や終末期ケアも豊かなものになると思いますので、是非、先生方のお力添えを頂ければと思います。ありがとうございます。

○江藤座長 川越先生、ありがとうございました。大変示唆に富むお話でした。今日の 3 人の参考人の先生方、医科・歯科の連携にとって非常に重要、かつ中身の濃いお話を伺っております。それでは、小松本先生、時間は十分にございますので、よろしくお願いいたします。

○小松本参考人 足利赤十字病院の院長の小松本です。今日はこのような機会を頂きまして、どうもありがとうございました。また、少し遅れてしまい大変失礼しました。今日は、私ども病院の医科歯科連携ということで、私どもの病院は、現在リハビリ科に常勤歯科医 3 人を雇い、全入院患者 555 人の口腔ケア、摂食嚥下リハビリをやっています。ですので、その 3 人の歯科医師は外来等はなく、全入院患者の口腔ケア管理に、チームとして携わっています。そのことによって医療経済的にも、また全患者の誤嚥性肺炎も減る、患者の QOL ADL の改善にもつながるということで、ある程度うまくいっているということで御紹介させていただきます。

 私の専門はそもそも神経内科で、私どもの病院は平成 23 年に全面移転をし、その前は昭和 40 年ぐらいに建てられたクラシック・タイプの病院で大部屋も多かったのですが、そこで神経内科の診療を副院長としてやっていたときに、脳卒中の患者が入院治療をして良くなってくるのですが、次の週に回診すると良くなり、次の週に行くと微熱が出ている、 3 週目には寝たきりになってしまい、不幸な転帰も得るということもあったので、これは自然の流れかなということで、その時点で歯科医を雇う気はなかったのですが、平成 23 年に病院が全面移転になり、そのときに回復リハビリ病棟も作りたいという希望があり、名古屋藤田保健衛生大学リハビリ科の才藤教授が私と一緒に神経内科の勉強をしたもので、リハビリ科を立ち上げたいので誰か人を送ってほしいということで、そのときにアメリカの Palmer の所で咀嚼嚥下のリハビリをしてきた馬場教授がいましたので、彼を私どもの所のリハビリ科の部長として赴任させ、もう 1 つ、口腔ケア、咀嚼嚥下リハビリをやるためには歯科医師も必要だということなので、医科歯科から常勤の歯科医師 3 人を雇っています。

 そして、 2 ページのスライドにあるように、足利日赤は、栃木県の一番南の足利市にあり、群馬に接している所ですが、平成 23 4 月に全面移転しました。新病院は 555 床、全室個室です。 3 ページはリハビリ科 / リハビリ歯科の紹介です。これが私どもの作業療法士を含めたスタッフで、真ん中にいるのが馬場教授、その隣に 3 人の歯科医師、神経内科医、リハビリ科 / リハビリ歯科として活躍しています。 5 ページです。彼らはリハビリ科にある口腔治療室で嚥下評価、義歯の調整等を行っています。 6 枚目のスライドは、義歯の調整で、歯科衛生士と一緒に口腔リハビリ、口腔ケア管理、内視鏡によって咀嚼嚥下、口腔内の衛生管理も行っているところです。

7 ページです。私どもの病院は看護師教育も一緒にやり、衛生士も付いています。全病棟で 555 人の患者に対し、口腔ケアのアセスメントを導入しています。軽症なものについては病棟の看護師ができるということで、重症なものについてはリハビリ歯科チームが介入するということです。 8 ページにあるように、病棟等いろいろな所で継続的に勉強会をやっているところです。

 実際に、入院患者に対して自立度はどうかというと、全介助、一部介助を必要とする者も 50 %以上、歯科医師が実際に介入しなければいけない症例も 65 %、義歯の適合がうまくいっていない患者も 42 %いることが分かりました。 10 枚目のスライドですが、入院患者の口腔汚染についても、舌、歯、口腔内乾燥、口唇、臭いという部分に問題があるということが分かりました。

11 枚目のスライドについても、口腔内の Visual Analogue Scale を見ても、半数以上の入院患者が 3 点以上の不快感を持っていることが分かりました。そして、脳卒中の患者について、以前は旧病院時ですので 2011 年のときは、脳卒中患者で誤嚥性肺炎を起こす人が 12.2 %いました。リハビリ歯科の介入を 2012 年から、教育も含めて全病棟に徐々に介入していき、 12.2 %の誤嚥性肺炎発症率が次の年は 9.4 %になり、新病院に移って 2 年目の 2013 年には 7.1 %、 2014 年には 4.4 %ということで、明らかに誤嚥性肺炎が減りました。現在も、大体 4 %前後というデータです。

 そして、脳卒中患者の Japan Coma Scale では、 2012 年、 2013 年、 2014 年を見ても、 3 桁の患者が増えているにもかかわらず、誤嚥性肺炎の発症率が 9.4 %、 7.1 %、 4.4 %と減っているということについても、口腔ケアチームと看護師、衛生士がトレーニングされてきて熟達度が上がってきたということで、対象患者が重症化、高齢化してきても、誤嚥性肺炎の発症率は抑えられているということが、私どもの病院では明らかになりました。

 口腔管理で、口の中をきれいにしているということで、脳卒中患者のほとんどで、食べられなかった人が食べられるようになったということで、 3 食経口移行率が 81.4 %、常食での 3 食経口移行率も 44.6 %ということで、経口摂取ができるようになったということで患者にも大変好評です。

16 ページです。誤嚥性肺炎の脳卒中の発生率を文献的に見ても、私どもも最初の頃は 12 %ということで、それ以外の報告を見ても 18 %、 35 %、 8.8 %、 36 %、 20.6 %とあり。海外を含めても 15 20 %が普通です。これらのデータについては、口腔ケアチームは参画していないデータだと思います。ですので、私ども口腔ケアチーム、リハビリチームを入れて、足利赤十字病院における脳卒中患者の誤嚥性肺炎発症率は 4.4 %まで下げたということで、他施設データよりも明らかに低いということが分かります。

 それから、脳卒中患者の何人かは呼吸器をつなげています。呼吸器をつなげているので、口腔管理としては更に口の中が汚くなる、それで飲み込みが悪くなり肺炎を起こすという大変致命的なことが起こるわけですが、私どもの病院の Ventilator-associated pneumonia (VAP) の発症率も 7.7 %で、全体での VAP 発症率も 0.4 %まで抑えられているところです。 18 ページの最近の 12 番目の文献を見ても、オーラルケアをきちんとすると、 VAP risk factor は確実に有意に減少するというデータがあるので、脳卒中患者における VAP 発症抑制にも、口腔衛生管理は重要であると思います。

19 ページ以降は、リハビリ患者についてです。うちの病院の自宅復帰率は 54 %、聖隷三方原病院が 41 %、藤田保健衛生大学病院も 31 %ということで、歯科医介入は ADL の向上にも寄与しているのではないかというところです。

21 ページ以降は、がん周術期患者ということです。私どもの病院は、ここに示すように消化器疾患、産婦人科、泌尿器科、頭頸部、呼吸器、肝胆膵等を含めて、 789 名の患者にも口腔ケアを行っており、その中でも肺炎発症者は僅か 3 名で、発症率は 0.4 %に抑えられているところです。がん周術期の肺炎発症率の文献が 23 ページにあります。症例報告的には、胃がん、食道がん、上部消化管、肺がんと限られており、発症率も 0.5 %、 2.2 %、 5.7 %、 8.8 %というところですが、私ども病院のリハビリ歯科チームは複数の診療科、要するに 555 床の患者全てについて介入していることにより、がん周術期の患者については 0.4 %に抑えられています。

 それから、私どもはがん化学療法も一緒にやっています。がん化学療法の患者についても、病棟の看護師、がん化学療法の認定看護師とタイアップしてカンファレンスをし、リハビリ歯科の回診がこのように行われています。がん化学療法 ( 放射線療法 ) の介入の内容については、口腔衛生指導、義歯の調整、スケーリング等です。

27 ページは、 Revised Oral Assessment Guide ですが、 1 が軽症、 2 が少し重症、 3 が重度ですが、リハビリ歯科の介入により 1 度が増え、 2 度が減っているということで、介入により口腔衛生は改善傾向にあるところです。

 私ども病院は、がん緩和ケア病棟に 19 床を有しています。 19 床の患者についても、がんリハビリ歯科チームが介入し、緩和ケア病棟は次の世界に家族と一緒に送り出される患者が全面的に入ってくるわけですが、彼らの家族も含めて、最後まで口から食べたい、家族と一緒に生活したいという希望があるので、治療内容としては義歯、口腔内の管理、抜歯、義歯の調整等を行っています。病棟にも家族が作ることができる台所があり、そこで作って上げたり、摂食嚥下リハビリを見て、この患者はこの時期はゼリーがいい、粥がいい、アイスがいい、フルーツがいいということで、患者の嚥下機能に合わせた食事形態で、最後まで経口摂取をして、患者、家族も満足してお帰りになっているところです。

31 ページ以降は、歯科衛生士が専属で付いています。それについても、きちんと歯科医師 3 人と一緒に、歯科チームで動いているということですので、歯科衛生士がだんだんトレーニングされてきて、 1 日当たりの検査件数、検査時間も大変有意に減少してきて、歯科医師介入については、私の病院では有用な人材として歯科医師が働いているところです。

33 ページ以降は、医療経営的にどうかということです。誤嚥性肺炎プラス脳卒中、いわゆる脳卒中で入院した人を見ると、平均在院日数が 57 日、脳卒中単独だと大体 27 日で、その隣に入院診療単価があります。そうすると、誤嚥性肺炎を起こすと、単なる脳卒中よりも平均在院日数が 30 日も延びるということです。論理的に、その 30 日に別の患者が入れば、ベッドの効率的有用利用になります。それから、脳卒中の患者で 4 6,050 円の入院診療単価の患者がそのベッドに 870 日入ったとすれば、年間 3,512 万円の収益につながるところです。

 実際的には、脳卒中だけで DPC のデータから出しているわけですので、全患者についても誤嚥性肺炎の患者がいるわけですから、脳卒中以外の患者についても同じようなデータが出るのではないかと考えるところです。

 その下のスライドに示していますが、今、医科歯科連携で診療報酬で認められているものに、がん患者等の周術期における包括的な口腔機能管理料が評価されているわけです。そうすると、うちで現在、平成 28 年度までやっているものは、口腔機能経過管理料、算定料、口腔機能管理料の (I) (II) 術前後、 (II) (III) 、栄養サポートチーム加算等の稼働額を合計すると、 1,492 万円です。ですので、 300 床以上の多くの病院が大変厳しい状況で 8 割が赤字です。その院長先生が歯科医師を雇うことについては、 1 人の歯科医師を雇うお金と大体同額だとなれば、そういうインセンティブが働かないと思います。ですが、その次の脳卒中以外の誤嚥性肺炎の予防効果もあるというアルファとか、入院患者、緩和ケアの患者、がん周術期の患者等を含めても、口腔ケアをしたことにより大変よかったと満足して経口摂取、あるいは 3 食を口から入って退院していく、次の世界に行くという患者を見ていると、 ADL QOL の改善、ベータの部分をもっと高く評価して、お金に表せない付加価値のほうが多いというところで、私の病院では今後も医科歯科連携を続けていこうと考えています。以上です。

○江藤座長 ありがとうございました。 3 人の参考人の先生方への御質問を頂く前に、現場を預っている川越先生、小松本先生から、いろいろな suggestion を伺いました。医科歯科連携を進める上で、どういったハードルがあって、それをどのように克服し、実際に進めているかというお話でした。その点を含めて、先生方から御意見ないし御追加等を頂きたいと思っています。いかがでしょうか。

○山口委員 非常に勉強になる御説明を頂き、ありがとうございました。私は患者の立場で、この委員会の中に籍を置いていますが、今の話を伺っていて、口腔ケアがいかに多くの病気に関係しているかということや、医科歯科連携の必要性を本当に痛感する思いです。なぜ、これがもっと早く、もっと広く広まっていかないのかということに、改めてそちらに疑問を感じてしまうような感想を持ちました。

 川越参考人と小松本参考人にお聞きしたいのですが、まず川越参考人が「医療者の中でも、ドクターやナースでも気付いていない、知らない人が結構多い」というようなお話があって、初めは驚くようなことがいろいろあったのだということでしたが、きちんと口腔ケアをすればこのような驚くようなことが起きるということがなぜ広まっていかないのかというのが素朴な疑問なのです。そこで、多くの方が気付かない、関心を持っていない中で、こういうことに取り組もうと思うようになられたきっかけは何だったのでしょうか。

 続けて小松本参考人にお聞きしますが、初めは歯科医を雇うつもりはなかったとおっしゃっていましたが、 3 人の方をリハビリ歯科チームとして導入されたのは、馬場教授という方の発案だったのでしょうか。それと、こういったいろいろな実績を出していらっしゃる中で、それが周りの医療機関に広まっているのでしょうか。もし広まっていないとしたら、何がハードルになっているのでしょうか。

○川越参考人 一言で答えるのは難しいのですが、突き詰めると医学教育の問題かなと思います。我々医師が学生のときから教育を受けていて、それこそ身体診察のカルテ記載をするときに、歯の記載などはしたことはないです。歯どころか、口腔内の観察をしていないと思うのです。 2017 年現在の医学教育は知りませんが、少なくとも自分が学生のときはそうでした。

 どういうことかと言いますと、例えば咽頭所見というのは書くのですが口腔所見は書いていないという、簡単に言うとそういうことです。ですから、教える側も認識していないし、教わる側はもちろん知りもしない、教科書にも書いていないというような教育を実際に受けてきています。

 ですから、自分も現場に出て 20 数年になりますが、そのような体たらくであったということで、実際に歯科の先生に怒られたことがあるのですが、「お尻に便が付いていたらきれいにするのに、どうして口はきれいにしないのだ。お尻に便が付いていても死なないけれども、口が汚いと死ぬ可能性があるのだ」と言われて、返す言葉もなかったのですが、そのことがリアルに分からなければ、もちろん悪気があって無視しているわけではないのですが、気付いていないことには対応できないのです。突き詰めると教育の問題ではないかなと思います。

 もちろん、そういうことに気付いている医師や看護師もいなくはないと思うのですが、いたらすぐに広がるかというとそんなに簡単ではなくて、適切な教師というか、本当に適切な診療やケアができる、そういう成功体験を積めば、驚きますし、この人も診てもらいたい、この人も診てもらいたいとなるはずですが、では実際にどこにそのような歯科医師がいらっしゃるのか、歯科衛生士がいらっしゃるのかといっても、分からないのです。

 医科の世界で言うと、例えば整形外科の先生にコンサルテーションしたいと思ったら、地域には整形外科の診療部門が病院にあったり、開業の先生がいらしたり、その先生のお顔も少しは思い浮かんだり、どのような分野が専門かは少しは聞いているぐらいの医師会関係があったりもしますが、医師会と歯科医師会の間で、そんなに密なやり取りはないので、歯科の先生方が病院や開業していらっしゃったとして、その先生がどのような専門分野をお持ちなのか、どのような診療スキルをお持ちなのか、どのようなキャラクターの方なのか、どのぐらいお忙しいのかということは確かに分からないでいます。そうするとハードルになります。

 パッとコンサルテーションする、病院で言うと、例えば職員食堂で昼食を取っていて、「ああ、最近はこの分野はどうなのですか」と食事しながら話をしていて、勝手に耳学問ができるのですが、開業してしまうとそういうものは全くなくなります。能動的にお付き合いしない限りなかなか出会えないということになりますので、なかなか成功体験を重ねていくというのが構造的に簡単でないということがあるかと思います。お答えになっているか分かりませんが、以上です。

○小松本参考人 正直申しまして、総合病院の院長については、歯科医師採用について多くの院長は関心がないと思います。考えが湧いてこないのではないかと思います。そして、私どもは誤嚥性肺炎を起こす人が多いのは分かっており、移ると同時に馬場教授に来ていただき、歯科医師も来て、その中で彼らもいろいろと文献を探してくれて口腔ケアを。そして、脳は外胚葉で口腔の中も外胚葉だから、私は文献的には、口の中の根幹の細胞でも、将来的には Stem Cell として万能細胞が生まれるのではないかという考え方は持っておりましたが、実際にその中で馬場先生以下に来ていただいて、いろいろ彼らが口腔ケアをやっていくと、認知症も完全によくなるとか、文献的にも馬場先生が向こうでやったデータでは、口腔ケアや義歯調整をすると、前頭葉などの細胞の活性があったり、脳血流も確実に増えるということも言われていて、うちは 320 列が入っていて、それで「咀嚼嚥下と脳機能」というテーマで臨床研究をやっているところが加速化して、うまくいっているのではないかと思います。

 今後は、総合病院に歯科を入れると、このようなベネフィットがあるのだということを厚生労働省の方々にもいろいろ伝えていただく。ですが、今は多くの病院が厳しい状況になった中で正直、インセンティブが働かないと。私どもの病院で彼らがやって、管理料だけで 1,400 万円だとすると、私どもの医業収益は年間 170 億円です。そうすると 0.5 %にも満たないのです。ですので、 1 つはこの管理料をポンと上げていただけると、院長先生も雇っていいのかなと思うところもあるし、このような QOL とか ADL について、患者が口腔ケアをして本当によかったと。我々が診察をしても、以前は口腔ケアをしてないので急病人が居ると、言っただけで口の中から臭いがして、汚なくて、神経学的に診察する気もしないと。ですが、今はうちの 555 人は、口の中は私よりもきれいで臭いもしないというところで、診察の環境も大変よくなっているところで、そういう目に見えない、お金に表せない付加価値が出てくるのだというところも、私は多くの先生に強調したいと思いますし、場を借りて、この前も医科歯科で学会をさせていただいたときに、このデータの一部を示して、いろいろな所で関心を持っていただいたということで、地道に宣伝をしていけば雇っていただける病院もあると。

 ですが、私は馬場教授に来ていただいて、リハビリ歯科をやって、チームを作って、 3 人の歯科医師を雇っています。数字で出るお金は低いけれども、私は雇ってよかったということで、今後もずっとこの体制は続けるつもりです。

○川添委員 私もお二人の先生から、現場での医科歯科連携の実例を聞いて、ひしひしと迫ってくるものを感じました。まず、小松本先生にお伺いしたいのですが、資料の写真に、早くから言語聴覚士、内視鏡の咽頭衛生管理、病棟専属の歯科衛生士と言語聴覚士が載っています。先ほど岡山大学のものもありましたが、言語聴覚士と歯科衛生士の必要性を非常に早くから聞くようになったのですが、まだそれほど雇用にまでいっている例はレアケースだったので、いつ頃からの導入なのかということをお伺いします。

 もう一点は、 34 のスライドに「歯科口腔リハビリテーション科 ( 有床義歯の場合 ) 」とあります。これを導入されたのはいつ頃なのでしょうか。

○小松本参考人 リハビリ科については、ここにあるように、うちは将来的には退院数を上げて、 365 日、土日も含めたリハビリをして、早期に退院していただこうというところで、リハビリ科に言語聴覚士、作業療法士等を多く雇っているわけです。ですが、正直な話をしますと、院長として経営的な観点からすると、彼らの働きはいろいろな科に直下していきますので、リハビリ科そのものの退院数だけでいくと、そんなに退院数は高くないのです。彼らの働きが、内科、外科、がん患者に収益が直下することをきちんと院長が理解できるのであるならば、いいと思います。

 あと、私どもは職員が 1,200 人強がいますが、リハビリ歯科、かつ歯科医たちは若いです。これだけ雇うと、定時昇級が上がってきます。そうすると、若いから、ここが一番の不採算部門になるのです。 1 年ごとの上がり率が高いです。私などは上がりきってしまって、 1 年たっても 1,000 円ぐらいしか上がらないのですが、彼らは万単位で上がっていきます。そういう意味では、医療経営的にはリハビリ科そのものは人件費を考えると不採算部門ですので、そこを不採算だけれどもこういう付加価値があるというところを、院長が病院経営者として理解できるかというのが大きな問題点だと思います。

○川添委員 川越参考人にお伺いします。スライド 24 の「かかりつけ歯科医師に必要な素養」の「多職種協働」についてです。在宅医療の中に多職種協働が入っていて、それまでは歯科衛生士や歯科医師が出てくるような医科歯科連携がほとんどだったのではないかと思っていたのです。

 このスライドで、食支援のカロリーからずっと入って、摂食嚥下リハとか、食形態とか、これは歯科医師との協働でしょうか、歯科衛生士でしょうか。どういう多職種が入っているのかが分からなかったのですが。

○川越参考人 地域包括ケアという脈絡でいくと全ての職種ということになります。より詳しく御説明しますと、多職種協働というと、少し専門職協働というように言葉が響くかもしれませんので、そういう意味では「医療専門職全て」という言い方になるかもしれません。

 あと、よく地域包括ケア脈絡で言われるのは、医療と介護な連携、医療と介護の統合という言い方をしますが、これは介護職とかケアマネージャーと医療側の連携という感じになりますので、言葉の使い方は微妙ですが、要はそういうものの総体だと思っていただくとよいかと思います。歯科医師や歯科衛生士だけでもありませんし、管理栄養士とか言語聴覚士、看護師、いろいろな職種を含めて、皆で同じ方向を向いて一緒にやっていかないと、違う方向を向いてやっていたり、連絡を取り合わないとうまく機能しないということはよくあります。

○川添委員 たくさんの職種があるものですから、どの辺りが医科歯科の歯科の部分に入るのかと。例えば理学療法士とか、 ST はほとんど歯科衛生士とともに働いている人が多いですが、作業療法士、理学療法士は、全身のリハなどはあっても、医科歯科連携の中に入るのかなという疑問もあるのです。

○川越参考人 ただ、体を通じて全部がつながっているので、例えば薬剤師は関係ないだろうということは決してありませんので、当然、どのように安全に服薬するかとか、剤形だけを見ても飲み込みに関係してきますよね。ですので、ヘルパーの食事、介助の仕方によっても状況には影響を及ぼすので、関わる人全員が関係あると思います。

○川添委員 歯科から医科歯科連携は、余り多勢でいったら小松本先生のおっしゃるように、それほど多勢を雇いきれないという所もあると思いますので、その重要度はあるのではないかと。

○川越参考人 現場で言いますと、ケアマネージャーという方が介護の元締め役になりますので、そこに情報が集まる居宅療養管理指導を報告しなさいという制度があります。集まった情報は、そこで止まっているのではなくて、その多職種に適切に共有される必要があると思いますので、そこできちんと医科と歯科の情報が相互に通じるという意味では、ケアマネージャーへの教育は非常に重要になってくると思います。

○水田委員 非常にいいお話をありがとうございました。私は、この間もこの会議のときに言ったのです。やはり先生がおっしゃったように、医学教育の問題、歯学教育の問題だと思います。私も歯科大学に関係していて、歯科のほうは体との関係で、医学の教育をどんどん入れるようにしています。医科の場合は、私が学生の頃は歯学部というのはなかったので、口腔外科のことも医学部で習ったのですが、ほかのことは全然習っていないのです。今の医科の学生にどれだけ歯科の話をしているのか、よくは知りませんが、小児で言えば、歯が生えてくるときからのことを全然習わないと思うのです。歯科の学生は習うけれども、医科の学生は乳歯と永久歯の区別だけで、どういうふうになっていくかとか、どういうあれがあるかということも習わないと思うのです。ですから医科の教育に、もう少し歯科を入れるようにしたほうがいいのではないかと、いつも言っているのです。

 やはり先生のお話などをいろいろ聞きますと、医学と歯学の教育は一緒にしたほうがいいのではないかと。後で専門科を選ぶときに分かれればいいだけです。これは私の前任の田中健藏先生がいつも言っていらした「口腔医学」との流れで、一元論ということをずっと言っていらっしゃいますから、どちらが良い、どちらが悪いという問題ではなく、やはり同じような教育をしていって、更に専門で分かれるときに、いろいろなことをすればいいのではないかと思うのです。歯学教育も医学教育もいろいろなやり方をやっているので、そこのところでも少し取り入れてやってほしいと思います。

 それから、確かに小松本先生、経営のほうは、いろいろな雇用をすると大変ですよね。うちは歯科大学だけれども、病院は医科歯科総合病院ですから、医科の診療科も、内科、外科、小児科、耳鼻科、眼科、整形外科などの科があるのです。耳鼻科に口腔ケアというか、嚥下専門の人がいらして、言語聴覚士も全部雇って、歯科と一緒にやって、非常に成績が上がってきていますので、そういうものを広げていきたいと思っております。確かに余りペイはしませんが、やっていかなくてはいけないところです。

 それと最近、病院歯科などの歯科医師の仕事がものすごく増えていっているじゃないですか。そうすると、歯科医師が多過ぎるなどということは誰にも言わせないという気持ちになってしまうのです。昔の考え方だけの歯科ではなくて、今の歯科の領域はものすごく広がってきているから、歯科医が多過ぎて何とかという議論は全然なくなっていくのではないかと思います。こういう領域が広がっていくのは、とてもいいことだと思っております。ありがとうございます。

○南委員 お話を大変興味深く伺いました。ありがとうございます。小松本先生に伺いたいのですが、 550 床余りで、全部の患者に口腔ケアが行き届いているというお話でしたね。聞き落としたかもしれないので確認ですが、通常ですと短期入院の外科系の患者に歯科のリハビリが関与するということは、一般の急性期病院では考えにくい。お願いしても難しいことが多いと思うのです。こちらの病院では、短期入院の方でも、必ず歯科のリハビリを入れるようにしておられるということですか。

○小松本参考人 それについてはスライドの 7 に示したとおり、病棟の看護師の教育も含めて、それ以外のリハビリ全体としての勉強会もして、入院患者の入院の最初のときには、全て病棟の看護師が、ここに口腔ケアアセスメントの導入を一緒にして、いろいろなチェックとともにデンカル上に記入しないといけないようになっております。そういうようにトレーニングされておりますので、ステージ 3 以上の患者 ( 専門の歯科医師が介入しないといけない者 ) については、自動的にデンカル上、リハビリ歯科のほうに行くようになっております。そうすると、彼らがそれに介入するのです。

 実際に、他科依頼等々をするときも、私ども病院の全職員が歯科介入については歯科チームが全部ラウンドする、重症な人はラウンドするということです。そこはコンサルテーションなしで全ての患者を見るということで、全職員の周知をもらって介入しています。ですから、病棟の看護師はトレーニングされておりますので、軽症な患者については病棟でそれをやります。あと、家族にも一緒にきちんと教育をするということでやっています。重症な患者については、口腔ケアチーム ( リハビリ歯科チーム ) が行って、きちんと病棟の看護師も付けて教育も兼ねてやります。そうすると、ステージ 2 ぐらいになれば、病棟の看護師だけでもできるようになりますので、最近は一応そういうようにシステマティックに動くようになっております。

○南委員 それをシステマティックにするためには、かなりの時間かけて、根本的に入院患者の動線を変える必要があると思うのです。それを最初から病院の職員に呼び掛けてされたということですか。

○小松本参考人 そうです。新しい病院については 555 床、全室個室ということで、私ども職員と患者のエリアは、動線が完全に 100 %分離されております。ですから医局から全部、バックヤードを通って病室まで行けるようになっているというシステムです。そういう動線できちんとしています。病棟に行くのも私ども専用のエレベーターが 5 基あり、一番早く来るエレベーターで 1 階から 9 階まで、高速エレベーターで移動できます。ですから看護師、職員、医師も含めた職員の移動については、動線が交差せず、いろいろな病棟まで行けるということで、ラウンドもスムーズにいけるのだと思います。

○南委員 分かりました。そうすると、先ほどお話がありましたように、それは馬場教授が核となり、 3 人の歯科医で 550 床をカバーされているということなのですね。

○小松本参考人  555 床の全患者については、一応カバーできています。

○伊東委員 大変素晴らしいお話をありがとうございました。普通、病院歯科の場合には口腔外科とか有病者の治療をしているということで、そちらにかなりエネルギーを取られてしまって、こういうケアやリハビリにまでなかなか手が回らないというのが、大きな病院になればなるほど言えるのではないかと思います。先生の所では口腔外科とリハビリ歯科とは、どのように住み分けておられるのですか。

○小松本参考人 完全に 100 %分けております。口腔外科も医科歯科から 3 人常勤をいただいて、そこの衛生士も向こうのリハビリ歯科の衛生士と完全に分離し、共有しないようになっております。ですから診療部門の領域については、口腔外科とリハビリ歯科の医師はお互いに完全に 100 %分離しております。

○伊東委員 分かりました。

○高梨委員 参考人の 3 人の先生方、貴重なお話をありがとうございました。私なりに理解を確認させていただきたいところがあります。疾患のある方に対して口腔ケアをすると患者の ADL QOL が改善されるということは、エビデンスレベルで証明されてきていると。ただ、それは残念ながら医療者や市民にまだ十分に周知されていない。医療者に対する周知としては医学教育や、ガイドラインで明記することによって認識させられることを進めていく必要があると。あと、実務的な臨床現場としては成功体験で、口腔ケアをやってうまくいったのだから、次も口腔ケアをやろうという経験が重要ではないかというお話がありました。

 かつ、それについて小松本先生からは、微妙なところはあるけれども、医療経済上メリットがある可能性があるということでした。 DPC の包括支払制度の中の合併症がなく、ベッド数が回転しやすくなることが、医療経済的に 1 つのプラスになる要素があるというところまでは教えていただきました。そこで川越先生にお伺いしたいのは、診療所レベルで経済的な観点から医科歯科連携による口腔ケアについてインテンシブが働く要素があるのか、それとも、医科歯科連携が、医療者、市民の患者の口腔ケアの重要性の認識で発展していくことを期待するしかないのかということです。医療経済的な観点から、診療所レベルの医科歯科連携に何かインテンシブが働く要素があるのか、もし無いとしたら、何をすれば診療所レベルの医療で医科歯科連携による口腔ケアについてインテンシブが働くようになるのかということで、お考えがあれば御教授いただきたいと思います。

○川越参考人 そのように考えたことがなかったのですが、御質問いただいてクリアになった気がします。在宅医療の場合、地域が病棟だとかバーチャル病院だという言い方をしましたが、入院だと思ってください。どういうことかと言いますと、在宅医療の診療報酬というのは、在宅時医学総合管理料というのが根幹の診療報酬なのです。 24 時間対応するドクターフィーなのです。それは例えば月額 4,600 点とか、決して安くない報酬が付いています。それが毎月です。ですから、ずっと入院していると思っていただいていいです。その方が肺炎を起こそうが何を起こそうが、緊急事態が起きたら緊急対応をしなければいけません。もちろん臨時報酬とすれば臨時報酬のフィーも乗っかりますが、それは 820 点といった点数が乗っかるわけです。ですから根幹は管理料なのです。そういう御説明の仕方をすれば分かりやすいかと思います。トラブルがないほうが医師人件費というか、労働付加は減ります。ですから同じです。ずっと入院しているのですよ。問題が起こるより起こらないほうが安定飛行ができることにはなりますので、それをインセンティブと思う人がいらっしゃればインセンティブです。

○井上委員 お三方の参考人のお話は、歯科大学の人間として非常に参考になりました。実は、私は病理学者で、病理解剖を 1980 年からやっております。その当時から口腔の細菌が体に回っているということは、当時の教授と話しあっていました。先ほど高久先生に言っていただいたように、ごく最近、病気と口腔細菌の関係が分かってきたのです。 2017 年現在、口腔内細菌が病巣にいるものが 3 つあります。 1 つが動脈硬化症、もう 1 つが低体重児の胎盤、もう 1 つが NASH で有名な肝臓です。

 それから、恐らく病気と関係しているだろうと言われているのが血清抗体価です。細菌がいれば生体は抗体を作りますので、それに対して明らかに今、エビデンスを持たれはじめているのが関節リウマチ、糖尿病、腎臓病、もう 1 つがアルツハイマーで、β - アミロイドの代謝と関係があるだろうと言われています。こういうことが水田先生がおっしゃったように、教育も変わらなければならない 1 つのことです。

 もう 1 つは、私が千葉の病院長をやっていたときのことです。病院長枠で 5 名を雇えるのですが、お恥ずかしい話ですが、その 5 名ともインプラントと矯正を雇うと大体 1 人で 2,000 万円から 3,000 万円の収入がプラスになったのです。摂食嚥下の人も雇ったのですが、おおよそ経費率はマイナスになります。

 それから、摂食嚥下の中でもいわゆる誤嚥性肺炎は、明らかに細菌が原因ですので分かりやすいのですが、先ほど川越先生がおっしゃった糖尿病の第 6 番目の合併症が歯周病と言われています。「合併症」と言うよりも、歯周病があるために糖尿病が増悪するといった逆の考え方がよいかと思います。うちの市川総合病院も約 550 床あります。そこには歯科医が 25 名おります。ただし、病棟を年中回っているわけではありません。私は今、衛生士校の校長をやっていますが、 50 人の学生が順次ケアを学んでおります。しかし、今は足利赤十字のほうが、より有効的に回っているのかなという感じをもちました。これから全病院がそうなるには少し時間が掛かるのと、金銭的な問題やキャンペーンが大きい。また、日本語で「過疎地」と言っていいかどうかは分からないのですが、そういう地域にはまず手が回らないだろうということも考えていかないと、首都圏だけの話になってしまうのも非常に問題なのかなというように聞かせていただきました。どうもありがとうございました。

○柳川委員  3 人の先生方には大変貴重で、かつ、具体的な御指摘を頂いたと思います。本当にありがとうございました。そこで私から、事務局に要望ということになるのでしょうか。お願い申し上げたいのは、今も議論がありましたように、病院の歯科ということで今日は大変うまくいっている事例、好事例が出ましたが、全国ではかなり格差がありそうです。冒頭に事務局から、資料 1 に基づいて説明がありました。総数や病院の歯科がどのくらいの割合あるかというのは分かっているのです。これは実際に都道府県の話になるかもしれません。医療圏ごとに病院にどのぐらい歯科があるのかということと、実際に在宅歯科医療の後方支援とか、歯科診療所では受療困難な障害を持った方の治療もやっていただけているのかといったことを、是非調べることができたらお願いします。なかなか大変かと思うのですが、そういった数字が今後の医科歯科連携を考える上で、とても大事だと思いますので、調査をお願いしたいと思います。

 それから本日お話を伺って、とにかく医科歯科連携を推進するというのは、いろいろな意味で必要だと改めて感じました。そうなりますと、推進を進める具体的な方策として病院歯科の設置、病院に歯科医師を置くことが極めて大事だということが分かりましたので、最初の資料の後半に医療計画の会議のものがありましたが、病院に歯科医師を設置すべきことを医療計画にも是非、明記していただきたいと思います。

 それから、病院の機能の中で 1 名しか病院歯科医がいない場合と、 2 名、 3 名いる場合とで、当然できることが変わってきます。病院歯科があったとしても、増強すべきことも併せて書き加えることをお願いしたいと思います。このことが、かかりつけ歯科医の機能と言うのですか、かかりつけ歯科医が今後の議論になるかと思いますが、病院歯科が 9 割を占める歯科医療機関、歯科診療所のサポートになる重要な役割でもあると思いますので、そういったことを是非、医療計画に記載していただきたいということを要望したいと思います。

○江藤座長 そろそろ時間ですが、高久先生、医学と歯科の学術的な連携と、先ほど出ていた医学教育と歯学教育の連携について、先生のコメントを頂ければと思います。

○高久参考人 ……先生もそうだと思いますが、私たちが学生の頃には歯周病とか歯の病原体について、全然、教育を受けていないのです。文部科学省の森課長がいらっしゃいますが、一番簡単なことは、モデル・コア・カリキュラムの中に歯周病などを入れていただきたいのです。厚生労働省の医師国家試験に歯科関係のことを入れれば、それが一番有効な教育だと思いますし、簡単です。

○江藤座長 いろいろな問題が出ました。先ほど地域包括ケアと、それに対して非常に示唆に富むバーチャル病院ということを、川越先生がおっしゃいました。と言いますのは、地域包括ケアのシステムにおける歯学の役割というのが、いま一つ具体的でないのです。この地域バーチャル病院というのが、非常に示唆に富むお考えかと思いますので、何かコメントがありましたら、どうぞ。要するに、医科歯科連携のシステム化を進めていく上で、非常に大きなポイントになるのではないかと思われますので。

○川越参考人 実際に我々、在宅医の分野で言いますと、あおぞら診療所は 1999 年の開設で、医師 3 人で開業したという日本では極めてレアケースというか、初めてのケースだったのですが、今になってみますと、複数の医師が常勤をする在宅専門クリニックというのは、東京都内に何百かあるぐらいの状態になっています。 24 時間 365 日対応が必要だとか、多職種協働チームを編成する必要があるというような言い方をしますと、たかが 10 数年のことですが、今では当たり前になったわけです。

 訪問看護ステーションが大規模化を図ることが診療報酬上で明らかに有利だということで、診療報酬上、誘導されるような状況が毎回の改定ごとに行われるようになっています。薬剤師の世界ではかかりつけ薬剤師というか、かかりつけ薬局、地域サポート薬局という概念が提示されました。待っていて薬を袋に入れて渡して、通り一遍の説明をするような薬剤師は機能しないというように突き付けられているわけです。そのビジョンというのは働き方を根本的に見直すという意味なのです。道路公団が民営化してとか、いろいろ言われていた過去もありますが、やはりどんな分野もその時代時代のニーズに合わせて変わっていく以外にないと思います。

 そこで地域バーチャル病院という言い方をしますと、別に自分がどこで働いていてもいいのかとか、働き場所を動いて 3 か所で勤務してもいいのかとか、多機関に勤めている人を間接的に雇用した感じで、一緒に働いてもいいのかとか、そういうように文脈を読み変えると、余り前例にとらわれる必要もないのではないかと思います。

 最も時代に即した働き方として、では歯科医師はどうするのか。医科ほど 24 時間対応は必要ないとは思いますが、多機能は必要かもしれません。通院できない人も増えていますし、病院に入院している人を放置するわけにもいかないので、やはり動く必要があると思います。そして医療や多職種と一緒に機能しないと、口だけというか、もちろん歯だけを診ていても駄目です。食支援というように捉えて、全体のチームの一員として司っていただけると有り難いと思います。

○江藤座長 まだまだ御議論はありますが、時間です。本日の御議論の中で、財源的なものをどうするか、ないし小松本先生がおっしゃったように、もうちょっと管理料を上げてくれれば経営が成り立つといった問題もあります。そういったことを含めて、今後議論を進めていきたいと思っております。

 もう 1 つは、病院歯科の問題です。今、日本にある 8,000 の病院のうちの 20 %、 1,600 しか歯科がありません。仮にその 20 %を 3 倍にしますと、かなりの数になるのです。これは医科歯科連携を進める上で、非常に大きな要因になるのではないかと思います。その辺で歯科医師の配置を進めていくような工夫を、医療計画の中にお願いしていきたいと思っております。本日の議論を踏まえ、歯科保健医療ビジョンを詰めていきたいと思っております。医療教育においても工夫していただきたいと思います。加えて、先ほど高久先生から出た学術的な分野での連携、ないしは教育の上での連携を、いわばインフラ整備として進めていくということかと思っております。

 長時間にわたりましたが、本日の会議はこれにて閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

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