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2018年1月24日 第2回循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループ 議事録

健康局がん・疾病対策課

○日時

平成30年1月24日(水)15:00~18:00


○場所

厚生労働省 共用第8会議室(20階)


○議事

○岡田がん・疾病対策課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより「第2回循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループ」を開催いたします。構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます厚生労働省健康局がん・疾病対策課の岡田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日の出欠状況ですが、羽鳥裕構成員からは、遅れて到着との御連絡をいただいております。また、今回参考人として、精神心理分野の専門家として、東京女子医科大学医学部精神医学講座教授の西村勝治先生、ソーシャルワーカーとして在宅医療に従事されている「ゆみのハートクリニック」在宅療養支援室室長の齋藤慶子先生に御出席いただいております。

 続いて、資料の御確認をお願いいたします。議事次第、座席表、循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループ構成員名簿、資料1「第1回ワーキンググループにおける論点に対する議論の整理について」、資料2「循環器疾患患者の身体的苦痛とその対応について(安斉構成員提出資料)」、資料3「循環器疾患患者の精神心理的苦痛とその対応について(西村参考人提出資料)」、資料4「循環器疾患患者の社会的苦痛とその対応について(齋藤参考人提出資料)」、資料5「循環器疾患患者の全人的な苦痛への対応を検討する上での論点について」、資料6「循環器疾患における緩和ケアのチーム体制について」。資料7「医政局地域医療計画課在宅医療推進室提出資料」。資料8「循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループとりまとめ骨子案」。参考資料1「第1回ワーキンググループにおいて出された意見」。参考資料2「心不全に対する緩和ケアの取組事例」。参考資料3「循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループ」今後の予定です。

 また、構成員のお手元には、第1回ワーキンググループの資料を配布させていただいております。こちらは会議終了後、机の上に置いたまま、お持ち帰りになりませぬよう、よろしくお願いいたします。以上です。資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。

 以上をもちまして、カメラを納めていただきますよう、御協力のほどよろしくお願いします。これからの進行は木原座長にお願いいたします。

○木原座長 皆さん大変お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。およそ3時間の予定しております。長い時間になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。早速議事に入りさせていただきます。

 まず、本日の議題(1)「 第1回ワーキンググループにおける議論の整理についてです。資料1の説明を事務局のほうからよろしくお願いいたします。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 事務局です。お手元に資料1を御用意ください。こちらは「第1回ワーキンググループにおける論点に対する議論の整理について」としております。第1回のワーキンググループにおきまして、本ワーキンググループにおきましては、主に循環器疾患の中でも心不全患者を対象に検討するとされたところですが、「心不全患者の臨床経過を踏まえた緩和ケアを検討する上での論点」として、第1回ワーキンググループにおいて提出した資料を2ページ目に提示しております。

 こちらの3つの論点に対して、前回のワーキンググループでの意見を整理したものが次のスライドになります。

3ページです。1.心不全患者における緩和ケアのニーズの認識と概念の共有について(前回の議論を踏まえ整理)です。現状と課題ですが、緩和ケアのニーズの認識と正確な概念及び心不全の正確な理解は、患者やその家族、医療従事者等の関係者間で十分に共有されていない、としております。それを受けた考え方ですが、考え方の1つ目は、緩和ケアのニーズの認識と正確な概念の共有に当たっては、がん以外も対象疾患となりうること、初期の段階から原疾患の治療と並行して提供されるものであり、原疾患の治療法がなくなった段階で切り替わって提供されるものではないこと、全人的な苦痛がケアの対象であること、といった観点が重要ではないか。2つ目は、心不全の正確な理解に当たっては、増悪と寛解を繰り返しながら徐々に悪化していく心不全の経過の特徴、心不全において必要とされる緩和ケアやその提供方法、といった観点が重要ではないか。3つ目ですが、医療従事者等が、緩和ケア及び心不全を正確に理解し、共通の認識を持つためには、緩和ケアや循環器疾患に関する研修や教育の機会の場や、専門的な相談が可能な連携体制が必要ではないか。4つ目ですが、患者やその家族が、緩和ケア及び心不全を正確に理解するためには、医療従事者等からの正確な情報提供に加えて、がん診療連携拠点病院における患者サロンの取組のような、同じような立場の人との情報共有やコミュニケーションの場についての検討も必要ではないか、と提示しております。

4枚目のスライドを御覧ください。2.心不全患者の臨床経過に伴う課題についてです。現状と課題です。1つ目ですが、心不全は、増悪と寛解を繰り返しながら徐々に悪化していくことが特徴であり、増悪時には急激に悪化することも多く、症状改善のために侵襲性の高い治療を含む専門的な治療が必要となります。このような背景から、心不全では最終段階でも侵襲性の高い治療が選択されることもある。2つ目は、病期が進行した心不全患者や高齢心不全患者は腎機能障害や認知症等の複数の併存症を有していることが多く、また、これらの併存症が誘因となって、心不全の悪化を来すことも多い。しかしながら、高齢心不全患者等に対して侵襲性の高い治療をどこまで提供するべきかについては、明確な基準はない。また、患者の意向を反映することが難しい場合もある。3つ目ですが、心不全症状の寛解後は、再増悪や重症化を予防するための日常生活における管理が重要ですが、症状が寛解しているため、患者は心不全が完全に治癒したと誤解してしまうこともある、としております。

 これらを踏まえた考え方です。1つ目は、心不全の疾患特性を踏まえると、心不全の管理全体の流れの中で、緩和ケアがどうあるべきかを検討する必要があるのではないか。2つ目ですが、併存症を有する心不全患者に対する緩和ケアを検討するにあたっては、心不全の管理、緩和ケア、併存症を含めた全身管理をバランスよく行っていくことを検討する必要があるのではないか。また、高齢心不全患者等については個別性が高いことから、患者の意向を反映した対応を行うためには、医療従事者と患者・家族が、疾患の特性や状態、患者の意向や価値観等を十分に共有し、理解することが重要ではないか。3つ目ですが、心不全の再増悪や重症化の予防に当たっては、心不全の長期的な経過を理解した上で、患者の自己管理をサポートすることが必要であるが、このようなサポートが患者の苦痛の除去にもつながり得るのではないか、と整理しているところです。

5ページです。こちらは多職種連携及び地域連携による心不全患者管理の一環としての緩和ケアについてです。現状と課題です。1つ目は、緩和ケアの提供においては、多職種が連携しながら、病院と在宅間で医療従事者が相談できるチーム体制が必要であるが、循環器疾患の専門的知識を有する看護師、栄養士、薬剤師等の人材については、十分整備されているとは言えない。2つ目ですが、心不全は増悪と寛解を繰り返すため、緩和ケアを提供する医療機関においては、循環器疾患の急性期診療を提供している地域の病院との連携が求められている。3つ目は、心不全患者は高齢化が進んでおり、様々な合併症を有することから、同行訪問等の制度を括用し、多職種が連携することが重要である。また、各疾病に対する専門的な判断が必要な際に相談ができるようなコンサルタント体制も必要であるとしております。

 これらを受けまして、考え方ですが、多職種連携においては、包括的かつ継続的な管理・指導のため、地域のかかりつけ医、看護師等が中心的な役割を担う必要があるのではないか。また、多職種連携に関わる医療従事者の人材育成について、学会等が連携して取り組む必要があるのではないか。2つ目ですが、循環器疾患では、中小病院や診療所等の地域が主体となって診療を行っていることから、緩和ケアの提供においても地域が中心的な役割を担える可能性があるのではないか。また、地域の基幹病院においては、寛解後の心不全患者に対して緩和ケアが適切に提供されるよう、地域の実情を踏まえた上で、かかりつけ医等と連携することが重要ではないか。そして、このような緩和ケアの提供体制構築においては、既存の取組が参考になるのではないか、というような形で整理をしているところです。

6枚目のスライドです。こちらは、第1回目のワーキンググループにおいて提示いたしました心不全患者の臨床経過及び提供されるケアのイメージ図に、第1回における議論内容を反映させて改変したものです。こちらにあるように心不全患者には、個々の患者の全体像を踏まえた上で、患者に応じた適切なケアが提供される必要があり、そのためには地域において多職種が連携することが重要である。心不全患者に対する緩和ケアも、このような心不全患者の管理全体の流れの中で提供される必要があるとしてあります。

 具体的には、このイメージの中の真ん中の部分の「情報の共有」という観点や、「多職種連携・地域連携による介入」という視点を記載いたしまして、その下に「心不全患者の状態に応じた適切な緩和ケアの提供」としております。

 また、右側部分に、適切なコミュニケーションによる継続的な意志決定支援を記載し、必要とされるケアの部分に、ケアに介入していく職種のイメージを追加いたしました。まず、かかりつけ医等を中心とした地域における総合的診療が中心にあり、循環器の専門的な疾患の重症度が上がるに従い、循環器疾患を専門とする医療職の関与が強くなります。更に重症度が進行し、緩和ケアの必要が大きくなってくる際には、緩和ケアを専門とする医療職の管理が関与してくるようなイメージで全体のイメージを改変したところです。事務局からは以上です。

○木原座長 ありがとうございました、第1回のワーキンググループにおける心不全患者の臨床経過を踏まえた緩和ケアを検討する上での論点に対する議論を整理した資料を説明していただきました。これは構成員の方々の様々な御意見の集約ということでございますが、欠けている部分もあるかもしれません。ただいまの事務局からのおまとめの発表に関して御意見がございましたら、よろしくお願いいたします。

 とりわけ、3枚目のまとめの考え方、現状の心不全に対する様々な治療を排除するものであってはならず並行して行われるものであることが大きく述べられています。それから、心不全というものがよく理解をされていないということも、踏まえる必要があるのではないだろうか。そのために様々な医療従事者の教育や研修等による更なる啓発や、専門家との連携体制というものが必要ではないか。また、同じような病気で苦しんでおられる患者さんの間での情報共有やコミュニケーションの場の設定が必要ではないかということが、第1回のワーキンググループでのまとめになっております。

 患者さんの代表として、井上構成員、いかがでしょうか。

○井上構成員 はい、先ず緩和ケアという問題に関して、前回では、その概念について、患者の側も、医療提供者側でも正確に認識されているのかどうかという疑問を申し上げましたが、今回のまとめの考え方においては、言葉を尽くしその重要性と必要性が具体的に指摘されておりますので、とても心強く思いました。

 最後の部分では、患者やその家族が緩和ケア及び心不全を正確に理解するためには医療従事者からの正確な情報及び情報提供に加え、拠点病院における患者サロンの取組のような、同じような立場の人との情報共有やコミュニケーションの場についての検討も必要ではないか、というところまで触れていただきましたので、その一端を担っている患者会の立場としても、動を推し進めていきながらお役に立てればと思っております。

ただ、拠点病院における患者サロンですと、病院内での取組というような形で心強いのですが、私どものように病院を出てしまっている立場になりますと、どうしても一人よがりと言いますか、情報として不正確なものや、患者として取り入れやすい情報だけ取り入れるような、ある意味ちょっと危険な、慎重を期さなければならないこともあります。私ども外に出た患者会も医療従事者はじめ、多職種の様々な情報を提供してくださる専門の方々に教えを乞いながら進めていきたいものだと思いました。以上です。

○木原座長 ありがとうございました、継続した情報がないと、やはり迷ってしまうということですよね。

○井上構成員 はい、そのように思います。

○木原座長 ありがとうございます。4枚目のところも、よくまとめていただいているのですが、結構難しいことが書かれてあります。これを具体にするにはどうしたらいいのだろうか。とりわけ、併存症もたくさんあり、高齢者が多いので全身管理をバランス良くやっていくというのは当たり前ですが、それを具体にどのようにやっていくのか。また、長い経過なので、その中で患者さんの意向や価値観などを共有していく。そこのところがどうあるべきかということが、考え方の中で提起されております。この辺をどのように解釈、あるいはまとめていったらいいのか、平原構成員、いかがでしょうか。

○平原構成員 そうですね、非常に難しい問題です。明確な基準がなく、実際、臨床判断に困る場面が非常に多いのも事実です。その辺は、まだこれからの検討課題です。以前にお話したかもしれませんけれども、こういう状態の方にはこういう治療が概ね適切だという大まかなコンセンサスを作らなけばなりませんし。そこを議論していかなければいけないのかなと思います。例えばフレイルティ、具体的には国際FRAIL scaleのようなものを基準とし、非常に重度で耐久性がない方については、このぐらいの治療が妥当という指針みたいなものがあればよいと思います。そのようにしないと、エビデンスをつくることがなかなか難しいので、専門家のコンセンサスを集めて一定のものがあると相当判断しやすくなるというのは常に感じるところです。やはり、ご家族は過剰医療を選択しやすいことが分かっておりますが、「とにかく治療してくれ」という患者様の御家族が多く、御本人がその時は意識がない状況が多いので、どうしても御家族の意向に沿った治療になると、どうしても侵襲的な治療を選択せざるを得ないという背景もあるので、そこら辺の基準ということを検討することが非常に大事かと思います。

○木原座長 この辺りを詰めるのは、かなり難しいことかと思っております。

5ページ目ですが、この中の考え方としては、専門病院だけでなく、やはり地域が大事でしょうというディスカッションがあります。とりわけ、地域のかかりつけの先生方、あるいは看護師等が中心的な役割を担っていくことが必要ではないかということが述べられております。羽鳥構成員、お考えがあれば述べていただければと思います。

○羽鳥構成員 地域の開業医の立場からということで言いますと、これからいわゆる地域包括ケアシステムがいよいよ動き出すので、そういう場において患者さんも交えて、かかりつけの先生方とチームを組んでやっていかなければいけない。もちろん看護師さんもそうですし、場合によっては心不全の患者さんも、できる範囲の運動をすることが心不全の改善にも役に立つという面もあると思います。本当のエンドステージのところではないところでは運動療法、運動療法と言っても、ただひたすら歩け歩けということではなくて、できる範囲で筋力を落とさないとか、サルコペニアとか、フレイルを予防するという運動があると思います。そういう運動をきちんと理解した先生たちを交えて、あるいは健康運動指導士の方にも理解をしていただいて、そういう人たちに取り組んでもらうということを活用できたらいいと思います。

もちろん、そのためには基幹病院や循環器専門病院の先生たちにも、そういうところに参加していただいて、基本的な指導はもちろん必要ですけれども、日頃の活動においては、かかりつけ医もやはり活用していただきたいと思います。

○木原座長 ありがとうございます。この辺りで前回のまとめとさせていただきたいと思います。キーワードとしては並行した治療、あるいは地域、多職種、情報の共有、そのようなことをどうしていくかということが、やはり大きなテーマとして前回のワーキンググループの中で皆さんが共有できたのではないかと思っております。

 議題(2)に移ります。「循環器疾患患者の全人的な苦痛について」です。全人的苦痛として身体的苦痛、精神心理的苦痛、あるいは社会的苦痛、三つの観点から議論をしていきたいと思います。その中でまず身体的苦痛について、資料2を中心に安斉構成員から、また資料5を事務局より御説明していただいたあとで議論を進めていきたいと思います。まず、安斉構成員から御説明をよろしくお願いいたします。

○安斉構成員 北海道大学の安斉と申します。私は9月から北海道大学に赴任しておりますが、その前6年間は国循におりました。そちらで心不全の緩和ケアに取り組んでおりましたので、その経験を踏まえてお話をさせていただきます。

 まず、資料のスライド3枚目を御覧ください。慢性心不全におきましては全人的苦痛を伴うということが以前から言われております。まず、社会的苦痛、スピリチュアルな苦痛、精神心理的苦痛に加え、やはり身体的苦痛が非常に多くを占めております。中でも息苦しさ、痛み、また全身倦怠感といったものが著明になってくるわけです。

 資料のスライドの4枚目を御覧いただきますと、これは慢性心不全の病みの軌跡を示しております。急性増悪を繰り返し、最終的には急激な悪化を来す。恐らく、この急性増悪を繰り返している段階で緩和ケアが必要になってくるのではないかと考えられております。

 国循の取組をスライドの5枚目に記しております。20139月に国内で循環器に特化した緩和ケアチームとしては初の取組を始めております。医師、看護師、薬剤師、また医学療法士、心理療法士、管理栄養士、メディカル・ソーシャルワーカー、こういった多職種によりチームを組んで、主治医からの要請に従って身体症状の緩和、精神・心理・社会的サポートを行っていくということで、大体、国循では年間70例ほどのコンサルトに対応してまいりました。院内でも緩和ケアの啓発活動ということで講習会を開催し、また地域医師会とも連携を進めてまいりました。

 また、緩和ケアを始めるに当たり、最初にセンター内での循環器の医師を対象にしてアンケートを行っております。その結果をスライド6枚目に示してあります。まず、緩和ケアに関心があるかどうかということで聞いてみますと、90%近い医師の間で「関心がある」というお答えでした。また、実際に必要かどうかということで問いますと、93%が「必要だと思う」という結果となっています。また、現場におきまして緩和ケアが必要と感じたことがあるかどうか、これに関して聞きますと、82%というお答えでした。

 スライド7枚目を御覧ください。こちらには「どのような時に緩和ケアが必要だと感じたか」というアンケートの内容を示しております。今回は身体症状に関してお話させていただきますが、やはり呼吸困難、心不全治療を行ってもなかなか改善できないような呼吸困難61%、高度医療を行っている国循であっても実際に経験している。また、全身倦怠感に関しても50%、疼痛が46%といった内容でした。精神症状に関してはまたのちほどお話があると思いますが、不安、抑うつ、せん妄といったもの、また倫理的な問題として治療を差し控えてよいかどうかの判断に迷うケースがある。また、患者さんの意思決定支援、例えばICDを停止してもよいものかどうか。そういったことでも、実際に緩和ケアで聞いてみたいといったことがあったようです。

 それ以外には、循環器専門医ですのでオピオイドの使用というのはほとんど経験がありませんし、鎮静薬に関してどの程度使ったらいいかということに関しても十分な知識がないというのが現状でした。

 最終的には、緩和ケアチームにコンサルトしてみたいかと思うかどうかを問いますと、約80%の医師が「思う」ということでした。この結果を以って、やはり緩和ケアチーム活動というのは、高度医療を行っている循環器医療センターでも必要であるという判断に至り、活動を行ってまいりました。

 スライドの9枚目です、こちらは文献による各種の身体症状の頻度を示しております。6088%に呼吸困難、6982%に全身倦怠感、3578%に疼痛が認められるということになっております。また、心不全そのものがこういった症状の原因にもなりますので、やはり心不全治療を継続しながら症状の緩和を図らなければいけない。ここは、がんの緩和ケア医療とはちょっと異なるところであり、心不全治療というのは、最後まで継続していくということが原則になってまいります。また、適切な心不全治療を行っているということが緩和ケアを行う上では条件となるとも言えるかと思います。

 呼吸困難への対応の具体的な内容に関してはスライド10枚目に示しております。治療抵抗性の呼吸困難、内服薬や注射剤を使っても、どうしても症状が取れないような場合には少量のモルヒネなど、オピオイドの有効性あるいは安全性が報告されております。

 また、オピオイドに関しては、呼吸困難だけでなく、のちほど述べます疼痛、また不安に対しても緩和効果があると。特に頻呼吸の患者に対して有効であるということが経験的に知られています。また、嘔気・嘔吐、便秘などの副作用や、高齢者並びに腎機能障害患者における過量投与には十分な注意が必要であり、少量から開始して、症状の経過を見ながら適宜増量を行うといったことが原則となっています。また、呼吸抑制も希ではありますが副作用として生じる可能性がありますので十分なモニタリングが必要であるということ、更には今後、在宅でも緩和ケアは行っていく必要があるかと思いますが、そのような場合には、非侵襲的陽圧換気(NPPV)なども有効ではないかと考えられます。

 スライド11枚目になります。全身倦怠感に関してはどのように対応するか。全身倦怠感を来す原因には様々なものがあり、心不全に伴う低心拍出以外にも、抑うつを合併することが心不全の方では4割程度認められます。そういった方の抑うつ的な症状だったり、あるいは抗不整脈薬などを使ってそれが甲状腺機能を低下させる原因にもなる場合があります。あるいは貧血や利尿薬の過量投与、電解質異常、睡眠時無呼吸、潜在性感染症など、そういった様々なものを、まずは検索して補正するというのが重要なポイントになってまいります。倦怠感に対しては、薬物療法が非常に効きにくいということが言われております。有酸素運動、あるいは生活の中でエネルギー消費を分配するエネルギー温存療法、具体的にはエネルギー消費が過度にならないようにバランスの取れた生活を行っていく、周りで十分なサポートを行うというものですが、こうした非薬物療法が有効な場合があるとされています。

12枚目のスライドには、疼痛への対応を示しています。疼痛に関しては、やはり心不全の重症度が上がれば上がるほど、その頻度は高くなる。また、心不全そのものや併存症、精神的なストレスも原因とされていますが、症状は多様であり、原因の同定が難しい場合も多いとされています。非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)は、しばしば腎機能障害の悪化をもたらし、また体液貯留の増悪にもつながりますので、できるだけ使用を控えるということが原則とされています。第一選択としては、非麻薬性鎮痛薬ではアセドアミノフェンとなり、これでもコントロールが困難な場合にはオピオイドの追加投与が考慮されることになります。

 こうした治療をまとめたものが、スライドの13枚目になります。呼吸困難に対しては、酸素投与やオピオイド、また非侵襲的な陽圧換気、全身倦怠感に対しては、まず原因に対して検索を行って介入を行い、有酸素運動、エネルギー温存療法などをしていく。疼痛に関してはアセトアミノフェン、オピオイドを使用することになります。

 また共通して行うことは、ここではチームとして行うものになりますが、もちろん心不全の治療、精神科的な介入、カウンセリング、リハビリ、栄養療法、社会環境調整、家族ケアなどということになります。また、終末期には、しばしば鎮静が必要になる場合もあるとされています。ただ、こうしたことに関して、例えばオピオイド、あるいは鎮静薬といったものは心不全に対する保険適用は通っていませんので、やはり使用に当たっては十分な注意とICが必要であるということで、国立循環器病研究センターにおいては、まずは緩和ケアの啓発を目的とした患者さん向けのパンフレット、スライド14枚目の左上に示してありますような分かりやすい内容のパンフレットを作成して配布しております。また医療者の中でも、緩和ケアと言うと、特に国循におきましては積極的な救命救急を行っておりますので、あきらめの医療と誤解される場合が多いので、こういったものを作って広く啓発活動を行いました。鎮静薬、それからオピオイドの使用に当たりましては説明同意書を医療安全部と共同で作成いたしまして、弁護士さんにも見ていただいて、左下に示したようなものを作っております。更に医師が、せん妄、あるいは疼痛に対してどのように対応したらいいか困っている場合もあるということを聞いておりましたのでマニュアルを作成しています。これも多職種チームで、特に薬剤部などの御協力をいただいて作成したものになります。

 最後、スライド15枚目には具体的な緩和ケアチームの介入の症例を示します。60歳代の男性で、拡張相肥大型の心筋症で左室駆出率が10%の非常に重症な方でした。40歳時には肥大型心筋症でありました。その後、拡張相肥大型心筋症の病態に移行して、心不全による入退院を20回繰り返しました。御本人も移植はもともと希望されていなかったこともあって、移植はせずに経過をしてきたのですが、最終的には入院後強心薬を使ってもなかなか症状が改善せず、9か月間の長期入院となっておりました。

 ドブタミンという強心薬をかなりの高用量で使っているのですが、症状が改善せず、心機能もかなり悪化してまいりまして、また心拍数も低下して身の置きどころのないような心不全に特徴的な全身倦怠感が出現しています。この時点で、御本人のストレスも蓄積し、緩和ケアチームにコンサルトがありました。患者・家族の最大の希望は何かということで伺いますと、とにかく一度でもいいから外出をしたいということがありましたので、まずは医師同伴でドブタミン持続静注下で近隣の公園に外出していただいて、屋外で昼食を摂っていただきました。それは本当に家族にとっても御本人にとっても良い想い出となり、その時の写真が亡くなるまでずっとベッドサイドに置かれておりました。

 その外出から戻られまして、ドブタミンを12γに更に増やしたのですが、症状、腎機能も更に悪化した状況になりました。そこで、外出によりある程度、最後の望みはかなえられるということで、症状緩和のために塩酸モルヒネを持続点滴で開始いたしました。青いグラフで示していますが、モルヒネを開始いたしますと自覚症状、全身倦怠感が6日目からかなり改善してまいりまして、9日目の時点ではほとんど倦怠感も消失し、呼吸困難感も消失、呼吸回数も段階的に低下してまいりました。もともと、努力性呼吸で頻呼吸だったものが安定してまいりまして、自力歩行も可能になりました。したがって、モルヒネはやはり症状緩和には非常に有効であり、心不全患者さんにおいても有用であるということが確認されております。

 その後、1か月間は症状もなく、非常に安らかに過ごされてまいりました。ただ、1か月経過したところでモルヒネ増量の効果もなくなってまいりまして、最終的に非常に呼吸困難が強くなりましたので、鎮静薬のミダゾラムを開始しています。そして、その後、同日、家族の見守る中で永眠されたという症例でありました。終末期においては、このような緩和医療も、これは院内でありましたが、将来は在宅でも可能になればいいのではないかと考えております。

 まとめです。末期心不全患者の多くは、呼吸困難・全身倦怠感・疼痛などの身体的苦痛を抱えています。また、このような末期心不全患者の身体的苦痛を軽減するためには、適切な緩和ケアの提供が必要ですが、心不全そのものが身体的苦痛の原因ともなり得ますので、心不全に対する治療を継続しつつ、適切な緩和ケア、質を担保した緩和ケアを提供する必要があるということになります。また、身体的苦痛を軽減するための適切な緩和ケアを提供するに当たっては、高齢患者が多いこと、また併存症を有する場合が多いことなどの心不全患者の特徴を踏まえる必要があるということでお話させていただきました。以上です。ありがとうございました。

○木原座長 どうもありがとうございました。次に事務局から、説明の追加をお願いいたします。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 資料5をお手元に御用意ください。こちらは循環器疾患患者の全人的な苦痛への対応を検討する上での論点案として提示しているものであり、資料の2枚目に身体的苦痛に関しては、1番目に記載しております。心不全患者の臨床的な特徴を踏まえた呼吸困難・全身倦怠感・疼痛などの身体的苦痛に対する適切な対応についてという形で、論点案を提示しているところです。以上です。

○木原座長 では、構成員の方々は、資料2と資料5に基づき安斉委員のほうから御説明がありました身体的な苦痛に対しての対応の仕方ということで、ディスカッションいただければと思います。よろしくお願いいたします。

 安斉構成員への私からの質問です。今、国立循環器病センターを中心とした比較的専門の高度医療を行っている所の現状をお話いただいたと思います。これを、前回ワーキングでの論点の1つである地域の中での在宅看取り、そういうことも考えの中には入れていく必要があるかと思うのですが、その辺りの展開としては、いかがお考えでしょうか。

○安斉構成員 ありがとうございます。確かに国循で見ていた症例というのは、ほとんどが左室駆出率の低下したHFrEFでありまして、移植の適応に、本来ならばなりそうな方で、ただ、65歳を超えていて適用にならないといった症例が中心でありましたけれども、今後、心不全患者さんはEFの保たれたHFpEFの方が半数以上を占めることになりますし、その頻度はどんどん増加していくと思われます。

HFpEFに関しては、残念ながら現在、エビデンスがある治療というのはありませんで、ほとんどが対症療法になります。利尿薬であったり血圧のコントロールであったり、心房細動に対する心拍数のコントロールであったり。あと、一番大事なポイントが、やはり併存症の治療と、それから生活管理ということになってまいりますので、そういった意味では在宅医の緩和ケアに果たす役割というのは非常に大きくなると思います。ですから、多職種でサポートしていくこと。心不全というよりは高齢者をどうサポートしていくかに近い内容かと思いますけれども、いかにして生活の管理を皆さんでサポートしていくかというポイントでの展開を今後は必要かなと思っています。

○木原座長 ありがとうございます。呼吸困難と全身倦怠感、それから疼痛、確かに末期の心不全の患者さんたちで、そういう訴えというのは、頻度が高いものがあります。恐らく、それは病院に入院されている患者さんも、在宅における患者さんも、同じようなことを考えていく必要があるのではないかと思います。対応方法として、構成員の方々からの御意見を頂きたいと思います。

○平原構成員 非常に勉強になりました。ありがとうございました。私自身も、この書かれている内容を、先ほどの事例などは非常に実感を持って、こんな緩和ケアが必要だなと実感しているところですが、1つは心不全の苦痛は、多分、がんの方よりも長く続くというエビデンスがあるような気がするのです。長期にわたって緩和ケアを提供しなければいけないというところがあると思っています。

 それについて、先ほどのモルヒネとかオピオイドを、どのタイミングで使うかということが、いつも問題になるのですけれども、利尿薬を使って効かなくなったところで使うのか、もう少し早めから使うのかというところは、今後の検討が必要なのかなというのは、いつも議論になるところかなと思っています。

 もう1つは、オピオイドの種類で、基本は呼吸困難にエビデンスのあるモルヒネを使うのですが、やはり心腎症候群が高率に出現するため、最後は心不全と腎不全と両方ともに末期状態になる方もかなりいらっしゃって、オキファストをCSIで使うことが多いのですけれども、保険が通っていないという現状もありまして、その辺の課題もあるかなと思っております。

2点目は、末期心不全のだるさへの対応が本当に困るのですけれども、書かれているとおりだと思いまして、なかなかいい方法がないのだと思います。特に、ステロイドは効かないのですかということを聞かれることが多くて、やはりがんの緩和ケアをやっている先生から言うと、「ステロイドをなんで投与しないんだ」という話にどうしてもなってしまうので、その辺、がんと循環器のだるさの違いというのは、明確に言っておかないと、体液貯留のほうに傾くようなこともありますので、その辺が注意点かなというようなことを思っています。

 もう1つは、NPPVのお話がありました。あと、ドブタミンとかの強心剤をどこまで使うか、強心剤も緩和になるわけですし、NPPVも緩和になるケースがあるのですが、それを行う上での負担感というのが伴う治療ですので、このような侵襲的な治療をどの状態だったら、緩和ケアとして、そういうものを使うのかというのが、やはりいつも悩むところです。

 その辺の、何か先ほどの話とも通じますけれども、入院してやらないといけないような緩和ケアをどういう状態だったら治療法として選択するのかというようなことも、考えないといけなくなるかなと思います。以上です。ありがとうございました。

○木原座長 ありがとうございます。平原構成員から、最後はやはり入院ですかという御意見もあったように思うのですが、その辺りに関して、患者さん、あるいは家族からACPを取ってということになるのかもしれませんが、御意見があればと思います。特に、強心薬あるいは呼吸器の使い方ということになるかと思います。

○安斉構成員 やはり、ドブタミンの持続静注が、在宅では保険適用になっていないのですね。これは在宅で使っても比較的安全に使えるものですし、先ほど、患者さんが外出の際にもドブタミン持続静注下で外出していますが、切ってしまうと大変なことになりますので、やはり在宅医療を今後、推進する意味では、その保険適用を在宅で認めるというのは非常に大事ではないかなと思います。

○山田構成員 私たち看護師のほうも、どうしても在宅で過ごしたいと御希望をなさる患者さんが最近はやはり増えていて、在宅に変えるのですけれども、結局、先ほどからお話が出ているように、治療薬が保険適用で継続的に使えない。それでも在宅の先生によっては、もう持ち出しのような形で使ってくださる先生方もいらっしゃるのですが、ごくごく僅かで、結局のところ最後は救急車に乗って、親族でどうしようもないから入院してほしいという、そういうケースを何例か経験しているので、医療保険制度の問題はあります。

 またもう1つは、例えば現在、看護師特定行為研修を私たちの大学でもやっているのですけれども、PICCの挿入とか、それから非侵襲的陽圧換気等も特定行為に入っています。だから、そういったようなことが、ナースのある一定の教育を受けた人が可能になっていけば、在宅で結構、訪問看護と組みながらサービスを提供できて、できるだけ患者さんの意向に沿った在宅での緩和ケア、特に終末期というのが可能になってくるのではないかなと感じました。

○木原座長 ありがとうございました。山田構成員の提起の中には、なぜその適用が認められていないのかということの中に、呼吸器にしてもあるいはモルヒネにしても、管理の問題が付きまとってくるところがあるかと思います。

 そうすると、かかりつけの先生方の御負担が増える。管理もしないといけない、患者の意見も聞かないといけない、それで苦痛も取らないといけない、ちょっと大変になるかもしれないみたいなところも、懸念としてはあるかと思います。その辺り、どのような対応の仕方があるかということに関して、御意見があればと思います。

○羽鳥構成員 先ほどの➀モルヒネ、オピオイドの循環器疾患でも使えるか?➁ドブタミンの外までの使用などに関して、安斉先生にお願いしたいのですけれども、これらの薬が保険適用になるかどうかは、やはり学会からの申請が最も重要ですので、心不全学会とか循環器学会から、モルヒネとかドブタミンなどの、在宅での適用を申請していただくのが、やはり一番早いのかなと思います。

 それから、もちろんCPAPとかSVなどの管理は、私たちも在宅でやっている場においては、結構、使っているので、その辺のもう一回教育でしょうか、地域の先生の教育なども必要なのだろうと思いますけれども、その薬に関しては、何かみんなで共通のアクションをすることが大事ではないかなと思います。

○木原座長 ありがとうございます。齋藤参考人そういう在宅を、かなりやっておられると思うのですが、終末期の循環器の患者さんを御覧になっていて、オピオイドの使い方、あるいは在宅における人工呼吸器等の使用に関して、日々葛藤を感じておられるのではないかと思います。そういうお立場から御意見があれば頂きたいと思います。いかがでしょうか。

○齋藤参考人 ありがとうございます。当院でもドブタミン点滴持続の在宅管理を行っている患者様もおります。確かに管理のところで御家族の負担や、地域のスタッフが慣れていないというところもあり、簡単に全症例に対応できるかというと、なかなか難しいのが現状ではあると思います。もう少し管理がしやすい形で使えるようになると、家でも十分できるようになっていくのではないかと感じております。

○平原構成員 在宅の視点で申し上げますと、高齢者の心不全の方が多くて、2人暮らしで、介護者が配偶者ということがあるのですね。それで、我々、最近は在宅で心不全に限らず、最も心掛けなければいけないのは、治療とかをシンプルにすることなのです。複雑なものはなるべく持ち込まない、そうではないと在宅は成り立たないという状況にありますので。

 例えば、ドブタミンで呼吸困難が取れるかもしれないけれど、同じぐらいモルヒネの内服で取れるのであれば、同じぐらい効きますよということを提示してモルヒネだけを飲んでもらうということをします。多分、高齢の介護者の方はそういう形で見ないと見れないし、ほぼ同等の効果があるのであれば、それは患者さんのQOLやコストパフォーマンスを考えると、そのほうがいいのではないかという考え方もあるかと思います。

 ただ、それにしても、モルヒネは、がんの方が使う量と、心不全で使う方の量が違います。モルヒネのレスキューは5mgが最小量ですけれど、心不全の場合は通常その半分量で大丈夫なのですよね。 ただ、2.5mg の速溶錠を作ると採算に合わないようです。アルミパックのほうが高いものですから業者は作りたがらないのですが、2.5mgの錠剤を作っていただくとすごくいいと思っています。そういう意味で言うと、医薬品を非がんの方に緩和ケアを行き届かせるための医薬品の提供というのは、まだ十分ではないということには問題がありますが、工夫をすればそういう簡便な方法で緩和するということを在宅では選択するほうが、よりベターな場合が多いと思います。

○川本構成員 先ほど、山田委員からも御説明がありましたように、心不全の患者さんの場合には、やはり訪問看護での支えというのが非常に重要な意味を持ってきていると思います。今のままだと特定行為の研修制度を受けますと、かなりの意味でニーズにかなったことが提供できるかと思うのですが、何しろ訪問看護ステーションの人数は少ないので、なかなか研修を受講する方が、まだまだ進んでいないという現状があります。その辺に関しましても、もう少し制度的にサポートできればいいなと考えているところです。

○木原座長 特定行為に関しての研修の仕方みたいなことも、やはり工夫が必要だということですね。

○川本構成員 そうですね、研修に行かれる間にサポートがないと、運営ができないという現状があります。今、その点について制度のことについてもお願いしているところです。

○木原座長 大変貴重な意見ではないかと思います。ありがとうございます。次の議論に入らせていただきます。3つの苦痛ということですけれども、2つ目の精神心理的な苦痛ということで、資料3です。本日お越しいただきました西村参考人から御説明いただき、議論を進めてまいりたいと思います。それでは、まず、西村参考人、どうぞよろしくお願いいたします。

○西村参考人 よろしくお願いいたします。資料3を御覧ください。2ページにありますように、ここに提示しているような、しばしば遭遇する患者像としては、重症心不全で複数の合併症があって、ポリファーマシーという、たくさんの薬を飲んでいらっしゃって、様々な身体症状を訴えて、QOLが落ちていて、そういった方に、もう何もできないから死んだほうがいいとか、そういう鬱や不安や、更に時々ぼんやりとして見当識が曖昧になるような認知機能の低下や、せん妄などが、混在したような状況になるということが、しばしばあると思います。

 次のページですが、終末期においての苦痛の頻度というのは、心不全もがんも精神症状に関しても同等であることが、いろいろな所で言われているとおりです。心不全の経過の中で様々な心理的な危機というのが訪れるわけですけれども、主な精神症状としては下に書いてあるように、鬱や不安が心不全の初期から一貫して見られるということ、それから認知機能の低下も、最初はそうでもないかもしれないのですけれども、徐々に増え、認知症までつながるような認知障害が出てくるということ。それから、せん妄と言って、意識が混濁するような状態が、特に心不全の増悪期に頻繁に見られることが特徴的だと思います。

 特に終末期のステージDになってきますと、認知症、せん妄、鬱が、これらは高齢者の精神障害の3Dといわれるのですけれども、この3Dが混在しているような状態に、しばしばなってきます。

 そういった患者さんを心理的、精神的に支えていく、支援の柱は、この図の上に書いてあるように、1つは、がん同様に精神症状を緩和する薬物療法であったり非薬物療法であったりするのですが、それと同時に、がんと少し違うと思うのは、最後の最後まで疾病管理(セルフケア)を患者さんに強いるというか、そうしなければ心不全悪化や予後悪化に直結するという問題があります。そういうセルフケアを支えるというのが、支援の2つ目の柱になると思います。

5ページ目にいきますが、心不全患者の鬱に関してお伝えします。大鬱病という、耳慣れない名前ですけれども、いわゆる鬱病の中核的な病状が出揃っている状況は大体2割ぐらいの患者さんにみられます。鬱状態ですと、もっと増えて3割ぐらいです。やはり心不全の重症度に応じて、鬱も増えていき、QOLとかセルフケアを落とすばかりでなく、死亡・併発イベントを増やし、入院率を高めるなど、予後との関係が鬱に関しても言われています。

 更に、この鬱に不安が合併すると、更に予後が悪化することも指摘され、心理的な苦痛が鬱だけではなくて、不安を考慮に入れなければいけないと主張されています。

6ページは、女子医大病院循環器内科での心不全の患者さんの予後を見た研究なのですけれども、やはり鬱や不安、単独で見られる患者さんに比べると、両方が見られる患者さんのほうが死亡や再入院率が高かったということがあり、海外でも日本でも確認されたということになります。

7ページ目ですけれども、不安に関してですが、いわゆる不安感を抱える患者さんは半数以上いるのですけれども、いわゆる精神科的に、不安障害という病名が付く方も13%ぐらいということがメタ解析で分かっております。虚血性心疾患などでは、不安は直接、心血管死のリスクを上げるということは言われているのですが、心不全では、不安単独では死亡リスクとは関係ないけれども、いわば鬱状態とあいまって死亡リスクを高めていくということが言われております。

8ページ目です。そういう心不全患者の鬱や不安というメンタルヘルスと予後との関係です。様々な原因で鬱や不安が心不全の患者さんに生じてくるわけです。鬱や不安があると、この左側の自律神経系や炎症、血小板、内皮機能等々の変化が生じます。右の、がんと明らかに異なってくるのが、セルフケアの行動がなかなか上手にいかなくなるということが起こってきます。これらは心不全の悪化に直結し、予後悪化に繋がるので、鬱や不安と予後との関係を、心不全では特に注目しなければいけないのではないかなと思います。

 さて、こういう鬱や不安のマネジメントをどうするかということなのですが、鬱病に関しての治療を考えてみますと、いわゆる薬物療法と非薬物療法とがあるのですけれども、いわゆる抗うつ薬を使った鬱病治療は、2030年前は抗うつ薬は心血管系のリスクが非常に高くて、危なくてほとんど使えないという状況でした。

 しかし、最近の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などに関しては、健常人と同じ用量を十分量使っても心血管系への安全性は実証されています。昔と違って、きちんとした薬物治療ができるようになってきたのは非常に大きな変化だと思うのです。

 ただ、それでは、SSRIで鬱が良くなるかというと、みんながみんな良くなるわけではなくて、最近、効かない群というのは不安が強かったり、埋め込み型除細動器(ICD)が入っている患者さんだということが分かってきました。ICDの装着患者さんというのは、作動が心理的トラウマになってPTSDを発症するなど、しばしば非常に不安が強い状態になることが言われています。こういう不安に対する治療戦略というのが、精神科医からすると、薬物療法的にも、今後非常に大事になってくると思っています。

 ただ、鬱を良くしても、予後は余り変わらないということが指摘されています。非薬物療法に関しては、通常の精神療法で支持的なコミュニケーションなどは、非常に重要なのですけれども、運動療法や、心理療法の1つである認知行動療法の鬱に対する改善効果が報告されています。ただこれらも、セルフケア自体を改善させることはないので、トータルに考えて、鬱や不安を改善し、かつ予後も改善させるというようなことになると、単独に、例えば循環器の先生から精神科に紹介されて、精神科医が抗うつ薬で治療する、心理療法を行うというような、単純な併診スタイルでは、予後までのトータルな改善には導けないというのが、最近は指摘されています。

 スライド10に移りますが、これは心不全の患者さんではなく、糖尿病や虚血性心疾患の患者さんを対象としたものですが、鬱を併存する、このような患者さんに対して、最近は多職種によるcollaborative care(協働ケア)というものが、非常に有効だといわれています。

 つまり、鬱や不安を良くし、かつ予後の改善にも役に立つ点で最近注目されています。どのような仕組みかというと、鬱病などのメンタルケアのトレーニングを受けた看護師さんや心理職を養成して、直接、かかりつけ医の所で心理的なケアをやってもらい、かつ服薬のアドヒアランスなどセルフケアの支援とか、身体的なケアも一緒にやってもらいます。精神科医は、直接患者さんには会わないで、後ろから週に1回、スーパービジョンをします。このようなケアシステムを作ると、メンタルヘルスも良くなり、セルフケアも非常に良くなって、QOLや予後への良い影響が期待できるということが示されました。

 心不全の緩和ケアに関しても、このようなモデルが、今後は必要になってくるのではないかなと考えています。特に、一番下に書いてありますように、心不全に対する多職種による包括的疾病管理プログラムとか、心臓のリハビリテーションプログラムに、こういう心理的なケアを、トレーニングを受けた看護師さんなどに入っていただく、そこを精神科医がバックアップするというようなシステムが、今後は有用かもしれないと考えています。

 次に11ページに移ります。鬱や不安のようなメンタルヘルスの問題だけではなく、心不全の患者さんには、認知障害が特に高齢化に伴って多く起こってきております。4分の1から4分の3ぐらいの患者さんに生じると言われているのですけれども、ある研究では、認知症という診断が付くのは15%ぐらい、実際にはもっといらっしゃるかもしれません。

 やはり心不全の重症度と一致して、このような認知症の方も増えていきます。特に、記憶障害が中心になってくるのでセルフケアに悪影響を与えてしまいます。重要なのは半数ぐらいは見逃されているということで、この辺も重要だと思います。

 このような認知症とともに、12ページにありますように、せん妄があります。精神科のリエゾンコンサルテーションなどをしていますと、大学病院の入院患者の精神科コンサルテーションの半分ぐらいは、せん妄です。ライン抜去や転倒とか、いろいろな行動上の問題が非常に大きいというのがあります。心不全の患者さんのせん妄の報告は余りないのですけれども、頻繁に生じていて、余りに頻繁過ぎて、研究に繋がっていないという感じかもしれません。

 せん妄は急性心不全でも13%ぐらいに起こるといわれているのですけれども、慢性心不全の急性増悪だと多くなって、当然ステージDだとさらに多くなってきます。心不全の増悪自体が脳の潅流低下を起こしますので危険因子になるのですけれども、それとともに感染症や電解質異常、さらには薬剤、いわゆる循環器領域でもよく使われている薬では抗コリン作用が強いものがあり、この抗コリン作用がせん妄の誘発に影響されているといわれています。それと睡眠薬や抗不安薬などのベンゾジアゼピン系薬剤が、せん妄を誘発するといわれていますので、心不全の管理だけではなくて、これらの調整というのが、循環器の先生と共同して解決していかないと、せん妄の発症を減らしていくということはなかなか難しいのではないかと考えているところです。

13ページに移ります。これら以外にも精神心理的に支援にとって重要な課題というのが幾つもあります。1つは、先ほどちょっと触れましたように、ベンゾジアゼピン系薬剤の多用などが、まだまだ見られています。不眠に対しては、単純に睡眠薬だけを出すということではなくて、睡眠衛生指導を、もう少し普及させる必要があると思います。

 これに関して、資料が14ページにあります。これは女子医大病院でベンゾジアゼピン系薬剤の処方調査を大学全体を挙げてやったのですが、実は精神科に次いで、循環器内科で2番目にたくさん処方されていて、過量投与も、つまり3剤以上投与されている患者さんもおられました。この後、女子医大ではベンゾジアゼピン使用を減らすキャンペーンをやって、大分減ったのですけれども、裏を返せば、循環器領域ではベンゾジアゼピン系の抗不安薬や睡眠薬を使いたくなるような患者さんがそれだけ多いということを示していると思います。これが1つです。

13ページに戻ります。次にコミュニケーションです。がんの領域では「Bad news」の伝え方をトレーニングされていますが、循環器領域では心不全の経過に配慮した工夫がやはり必要です。「ギアチェンジ」のタイミングがなかなか計りにくかったりとか、先ほども言いましたようにしっかりセルフケアしましょうと言いながら、同時に先々のことをどうしましょうかと、ポジティブなことと、そうではないことを一緒に考えていくということは、ちょっと難しいというのは確かにあると思います。

 そういう難しさの中で、アドバンス・ケア・プランニングにつなげていくというようなことが必要なので、がんとは少し違った工夫が必要になってくるかもしれません。それから家族支援や遺族ケアは言うまでもありません。それから特殊な状況として、埋め込み型除細動器(ICD)や補助人工心臓(VAD)などの特株なデバイス関連には、やはり特有の心理的な問題や支援が必要になってくるので、これは今後の課題として大きくあると思います。

 それから、早期からの緩和ケアというようなことが、がんの領域でもいわれています。今日の議論をお聞きしていますと、やはりまだ循環器では、まず心不全、終末期をどうするかということが最初の第一歩だと思うのですが、よく考えてみますと、例えば15ページを見ていただければ分かると思うのですが、お示ししましたような虚血性心疾患などは、発症から再発し、心不全に移っていくというような経過をたどりますので、最初からということになると、虚血性心不全の発症が緩和ケアの始まりかなということになります。

 この虚血性心疾患に関しても、鬱病の合併は、発症初期から一貫して1520%といわれていて、鬱病を合併すると心血管イベントを起こしやすく予後を悪化させるということがはっきりと言われています。ですから、初期からのメンタルケアは、患者さんのQOLを上げるだけではなくて、予後を改善するという意味でも必要だということがあります。

 ただ、ここも先ほどお示ししましたように、抗うつ薬中心の通常の精神科治療では鬱病もなかなか良くならず、予後も改善しないと言われているのです。ここでも先ほどお示ししたような多職種によるcollaborative careというか、多職種で協働してやっていくような包括的ケア、いわゆるケースマネジメント、それぞれのケースごとに包括的に支援していくということが重要だということを繰り返し報告されておりますので、初期からシームレスな包括的な支援の提供というものが、やはり欠かせないのではないかと考えます。

 まとめです。心不全患者さんにおいては、鬱や不安、それから認知症やせん妄などの認知障害、不眠、それからデバイスに関連したいろいろな問題など、様々な心理的、精神的な苦痛が生じます。これには、やはり多職種が協働し、身体管理と連携して、精神心理的なケアを実施していくということです。適切なBad newsの伝え方を工夫しながら、アドバンス・ケア・プランニングにつなげていくためには、コミュニケーション能力の向上に加えて、私ども精神的、心理的な専門職と連携して仕組みを社会の中で作っていくというのが重要かなと考えます。以上です。

○木原座長 西村参考人、ありがとうございました。続いて事務局から資料5の説明をお願いいたします。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 事務局です。資料52ページ目、全人的な苦痛への対応を検討する上での論点()としての2つ目です。精神心理的苦痛に関しては、地域や院内における頻度の高い精神心理的苦痛に対する適切な対応について、という形で論点案を提示しております。以上です。

○木原座長 西村参考人から有益な議論の提供がありました。それに関しての御意見、御議論を頂ければと思います。いかがでしょうか。

○山田構成員 多職種でという点ですが。私たちもデータを取っていないのですが、やはり心筋梗塞等、急性の心疾患の方を救急等でお迎えして、治療する中で、自己管理に関する支援をナースはしています。その自己管理支援を通して、いい人間関係ができると、比較的管理能力自体も向上しますけれども、メンタルの部分も非常に安定してきて、そういう患者さんは困ったことがあったり、ちょっとこれはおかしいと思うことがあると、担当のナース当てに電話を下さって、そこでまたコミュニケーションができて信頼関係ができるといういい循環が生まれます。それでナースもナースだけではできないことは、薬剤師とか管理栄養士とかの院内の資源を使って提供するということで比較的うまくいく事例と、自己管理のところで患者さん自身もなかなか自分でしない、したくない、看護師もそこら辺であきらめてしまうというようなところでは、せん妄とか結構そういうことを起こす傾向が強いと先生のお話を聞きながら感じました。

 もう1つは、ケースマネジメントという言葉が出てきたのですが、日本の場合、よく使われるのがケアマネジメントなのですね。ケアマネジメントというのは、そもそもが介護保険から出てきた言葉で、どうしても生活支援というか生活が主体となってきているので、なかなかケアマネージャーは医療の部分がちょっと弱いと思います。特に最近は看護師ではないケアマネージャーが増えているせいもあって、在宅につなげるときに、身体のこととメンタルのことがうまく統合した形でつながっていかないような傾向があると思うのです。アメリカなどはケースマネージャーというのは、多くはナースが役割を担っていますけれども、一事例ごとに、患者さんにどんなサービスが必要か、ちゃんと資源を集めてきて、束ねて患者さんに届けていくという、そこのところが日本は制度的にというか、仕組み的にもちょっと弱いので、これからそういうところが強化されるべきだと思います。ケアマネジメントがいけないと言っているわけではなくて、ケアマネジメントは生活支援のところが主なので、循環器の場合は特に、このケースマネジメントが必要ではないかなと思いました。

○木原座長 大事な御提起ではないかと思います。西村参考人にお伺いしたいのですが、多職種によるcollaborative careは大変大事で、精神科に患者さんを直接出してもなかなか受け付けてくれない所があるので、やはり後ろでという考え方はよく分かります。具体的に、このトレーニングを受けた看護師あるいは心理系職種というものをどのように組み込んだらいいのだろうかというところが少し、まだ十分に納得していないところがあるので、追加の説明を頂ければと思います。

○西村参考人 これは北米では、一部すでに保険で運用されている仕組みです。いわゆる鬱病を中心にしたケアのトレーニングを受け、認定を受けた看護師や臨床心理士は鬱病ケアマネージャーと呼ばれます。ある程度の薬物療法にも精通しており、スタンダードな薬物療法とか、心理療法といった治療オプションを患者さんに提示できるぐらいのところまでトレーニングを受けた人が入っているようなケアシステムです。でも、よく考えてみると、循環器の看護師さんは非常に熱心で、身体的ケアに加えて、いわゆるメンタルケアのスキルがしっかり付いてくると、こういうケアシステムが可能になるのではないかなと思っています。ちなみに、このスタディーではウェブ上認定の資格が取れるというレベルではありますけれども、そこまで本格的な・・。

○木原座長 それは日本ではなくて。

○西村参考人 日本ではなくて。

○木原座長 ではないですね。

○西村参考人 そうです、今後の型の。

○木原座長 でも、1つのプロトタイプはあると。

○西村参考人 プロトタイプはあるということです。

○木原座長 ということですね。

○西村参考人 はい、そうですね。

○木原座長 はい、池永構成員、お願いします。

○池永構成員 がんの場合でも、やはりこの心理的な問題についてどうアプローチするかというのは問題で、精神科でやったりカウンセリングをというようなことを言っても、患者さんもなかなか抵抗感があることも多くて。結局、がんのところでは、やはり専門認定看護師がカウンセリングに、要するに医師の面談に同席をして、その後のフォローアップをするということを診療報酬で手当てをすることです。あとは、拠点病院の中では相談支援センターを作り、何か現場で問題があったときにすぐ相談できるような窓口を作るということで対処する。そのためにスクリーニングを行うような形を体制としては作っていますが、何らかの形で、その心不全なりの認定の看護師に、ある程度の精神的なサポートの知識・技術を持ってもらい、そこに問題があったときにすぐ相談できるようなこと。また病院の中に相談窓口を固定化して、何かあったときは心理職であったり、精神科医につないでいくような形は、がんでやっているようなことが、何か循環器としての枠組みとしてできる。そういうことでいくと、トレーニングを受けた人をつくっていくことも重要ですが、現場の忙しさからすると結構、なかなか難しいなという気はいたしましたが、大切だと思っております。

○西村参考人 トレーニングだけではなくて、これはバックアップがないと全く機能しないシステムなのです。だから精神科医が定期的にスーパービジョンをきちんとするというのが前提になっているシステムで、日本で考えていくときもそのようなバックアップシステムをいかに構築するかが非常に重要です。NICEのガイドラインで出てくるような、いわゆるstepped care、段階的なケアの構造がきちんと機能して、バックアップがしっかり機能していることが重要だと考えます。

○木原座長 様々な格好でその教育啓発をやっていく中において、そういう精神的な問題が必ずあるということを周知することはとても重要だということは認識していただけるのではないかと思います。

○山田構成員 日本循環器看護師学会等で立ち上げている慢性心不全看護の教育の中には、もちろんメンタルの部分の教育が入っているのですが、先日も申し上げたように非常に人数が少ないので、なかなかまだまだ活用して成果がどうこうと測るような段階ではないと思います。現状では、緩和ケアチームが結構がん拠点病院を中心にできていて、その中に次回診療報酬改定では、末期心不全が対象患者として入るようなので、今ある緩和ケアチームの人たちが、循環器というか、心不全のことを少し学習し、慢性心不全看護認定看護師や循環器チームと連携していくかたちで緩和ケア等を統合させていくことはできるかもしれないと思います。

 それから認知症ケアについては認定看護師も増えていますし、認知症ケア加算の2というか低いほうの点数だと9時間の研修を受けると、一応その要件に合うのですね。看護師やメディカルスタッフの人たちも認知症あるいは精神的なケアという点については、疾患を問わず学習している部分があるので、それを少し体系化していくと、もう少し拡大していけるかと思います。

○木原座長 医療と両方とれると。

○山田構成員 そうですね。そしてもう1つは、不安尺度とか、認知症も測る尺度があり、最近は生活の困難さを測るような簡単な尺度等あります。それらの尺度を使って、まず評価をしてその評価がもう少しきちんとできると、対処も早くできるのではないかなと思います。

○木原座長 心不全の機能評価の中に、そういう側面を取り込まないといけないということになりますね。

○西村参考人 確かに、スクリーニングはすごく重要ですけれども、スクリーニングが本当に最後に役立つかどうかが問題です。役立たないのなら初めからやらないほうがいい、バックアップがないのにスクリーニングだけやっても時間と労力の無駄だと言われています。バックアップ体制をしっかり作って、スクリーニングシステムを作るということがないと、難しいかなと思います。

○木原座長 確かにこういうことにお金をかけることによって、患者さんのメンタルな部分のサポートが増えれば、その分だけ緊急入院や不要な入院等も減らせる可能性は大いにあるのではないかと、現場では思います。何度も入院して来られている患者さんなどは、ある意味で安心感があるのですね。入院したら何々先生がいて、誰々看護師がいてという。もう名前を覚えていて顔が分かっているというのは非常に安心するところでありますし、MCIの発症が少ないことも大いにうなづけます。そうすると、基幹病院も含めた地域での連携・包括みたいなことの中でケアすれば、その分、患者さんも安定が得られて早く退院されたり、いろいろあるのではないかと大いに考えられます。

○井上構成員 後退的な発言になりますけれども、患者は最初、急性発症した際には、何から何まで不安なのです。何も分からないし、不安でしょうがない。それをドクターにお話するのはまた大変勇気のいることで、これこれこういうことがありますと訴えます。そうしますと、それはこの検査では大丈夫、良くなっています、心配は無用ですとおっしゃってくださる。そこで安心するはずなのが安心できず、またそれをきちんと受け止める力もないから何度も繰り返す。二度、三度となると心療内科の受診を勧められ、お薬が処方される。このスライドの9ページにございますように、非薬物療法で支持的コミュニケーション・良好な医師と患者の関係、十分な説明と保証という、これは大変お時間もかかり、一人の患者にそう多くの時間は費やせないとは思うのですけれども、この様な取り組みは、かなり初期の段階で薬に頼らず、患者も元気になるということは十分に考えられることと思います。次の10ページにもありますように、トレーニングを受けた看護師や心理系職種の方々が何かと患者に関わってくださる時間が多いと、予後も薬に頼るパーセントが少なくなるのではないかと、一患者としては感じるところでございました。

○木原座長 接し方と言いますか、ナラティブな対応というものがなかなか、言葉で言うのは簡単なのですが、実践というものは、現場においてまだ不足しているのが現実ではないかなと思います。

○池永構成員 先ほど、山田構成員からの意見にもありましたが、緩和ケアチームという既存のチームを循環器の緩和ケアにも活用していく方向にはなるのだろうとは思うのですが、注意しないといけないのは、がんの症状緩和のお薬の使い方をそのまま循環器の患者さんに持って行く危険性は、取りまとめをしていく上では非常に重要なのだろうと思っています。平原構成員がおっしゃったようにオピオイドの開始量が明らかに違って、現状で使えるオピオイドの単位がやはり循環器の患者さんに合わないという設定であるということを十分認識するとか、ステロイドは緩和ケアチームは非常に多用するのですが、循環器の患者さんにした場合に、水分貯留や、やや活動性をアップさせてしまうというリスクも伴うことがあったり、あと西村参考人からも三環系抗うつ薬というのも我々は使うのですが、それは大変注意しないと血圧が下がってしまう。がんの症状緩和の知識を活用しつつ、循環器疾患の注意点をきちんとメッセージで出すような取りまとめが必要なのだろうなと思っております。これまでは決して緩和ケアチームは循環器の患者さんを常に診ているわけではなかったわけなので、そこは循環器の先生とうまくコラボしていくことが大事なのだろうなと思いました。

○木原座長 だから今までの緩和ケアチームが、そのまま循環器へ「診てね」ということにはならないということですね。その間に循環器のチームなどとのコラボが必ず入らないといけない。

○池永構成員 何らかの形で、学会なりでメッセージを緩和ケアチームに出すというのは大事なのかなとは思います。でないと危険性は、やはり伴うように思います。

○平原構成員 鬱と不安のことについては非常に勉強になりました。COPDの方も実は鬱と不安がある方は予後が悪いというエビデンスが出ているので、それは同じような状況にあるのかなと思っています。これは全般的な、疾患を問わず共通しているものなのかなと認識して、非常に勉強になりました。

 それと認知症の件につきましては、在宅では認知症と心不全を両方持っておられる方がすごく多くて、心不全で入院される方のほとんどは、ほぼ認知症を合併しているということになります。御存知のように、認知症は5歳刻みに倍加的に増えていきますし、心不全も80歳から90歳で急速に有病率が増えていくので、当然両方を持っている方が多いということの中で、2点ほど少し気になっているところがあります。1つは苦痛の評価法が、がんの場合は割と最後まで意識がちゃんとある方が多いのですが、認知症の場合は苦痛の評価法がいわゆる主観的評価法が余りうまく機能しないことがあって、客観的評価法というのをきちんと普及させていく必要がございます。海外のレビューでは苦痛についての客観的評価法は28ぐらいあるのですが、どのシチュエイションで何を使ったらいいかというコンセンサスはまだ得られておりません。その国のあるいはそこの場所の機能とか文化に合ったものを選択して使いなさいということが書かれているだけなので、やはりそういうものを使っていかないと患者さんが苦痛の中に放置されていることを専門職は気付かないことになり兼ねないというのが一番の懸念です。

 呼吸困難の評価法については、また違った評価法がございますので、客観的評価法を普及させていくことも是非、非がんの場合の全体に言えることですけれど、特に認知症の合併例で必要になってくるということが重要な視点だと思います。あと残念ながら、在宅の高齢者心不全の方が急性で入院したとき、肺炎のときもそうですけれど、拘束されていることが実態的には多くて、デバイスがつけばつくほど拘束されることがございます。その問題も、実は緩和ケアと本当は相反する問題なので、この辺のことも現状はすごく大きな問題で無視できないと思っておりますので、是非その辺の論点を挙げていただけるといいかなと思います。

○木原座長 がんの患者さんは、今までよく頑張ったねと、ここからはちょっとゆっくりしていいよみたいなところがあるのかもしれないと思うのです。循環器は最後まで頑張れ。頑張れのところは、やはり外してはいけないよみたいなところがあるので、その辺のスタンスが違う。その辺をどのように取り違えないようにしていくかという視点も大事なポイントではないかと思います。

 引き続いて3つ目の側面ですが、社会的な苦痛に関して、資料4を中心に、齋藤参考人から御説明を頂きたいと思います。齋藤先生よろしくお願いいたします。

○齋藤参考人 よろしくお願いします。ゆみのハートクリニックの齋藤と申します。改めてよろしくお願いします。2枚目のスライドは当院について御紹介させていただいております。当院は東京都の豊島区にございまして、外来と在宅医療を行っているクリニックになります。当院の特徴としては、循環器専門医が複数在籍していることと、ソーシャルワーカーや看護師、理学療法士など、コメディカルスタッフも複数在籍しております。多職種心不全クリニックとして地域の皆さんと日々連携しながら東京23区で活動を行っております。 3枚目のスライドです。2016年、当院で訪問診療を開始した患者の状況の御報告になります。がん患者が29名、心不全患者が162名でした。母数に差がありますので、参考という形で提示しておりますが、心不全患者は平均年齢が84歳と高く、当院の平均介入期間が247日と、がん患者に比べて約2倍の日数介入していることが分っています。自宅看取り率は心不全患者が56%でした。このデータからも分かるとおり、やはり心不全患者というのは療養期間が長いことが言えます。また、心不全は生活の場で悪くなるとも言われておりますので、食事であったり、活動であったりという生活を支える支援が必要となります。

4枚目のスライドです。当院の心不全患者の要介護度認定を調査したところ、約40%の患者が要介護1以下であることが分かりました。介護保険で要介護1以下ですと、福祉用具の貸与などサービスに利用制限があります。例えば、心不全の症状緩和として、薬物療法以外にbed up、体を少し起こすことで症状が緩和されることがありますが、その目的で介護用ベッドを導入しようとしたときに、スムーズにいかないことがあります。また、介護度が低い場合ですと、やはり介護保険内でサービスを利用できる単位数が少ないので、サービスを入れようと思った際に入れづらいことが発生します。

5枚目のスライドです。がん患者の訪問看護導入率が83%であったのに対し、心不全患者は58%でした。介護度が低いと、サービスを導入する際に、どのサービスの優先順位が高いのか、訪問看護なのか訪問リハビリなのかヘルパーなのかを協議します。その際、疾病管理よりも、生活を支えるサービスや、単位数が低く済むヘルパーをまず導入しようという話になる傾向があります。つまり、訪問看護や、訪問リハビリなど、疾病管理目的でのサービス導入は後回しになってしまうことがあります。一方で、心不全患者の6割には訪問看護が導入できているという見方もできますが、導入率のほかに訪問の回数も異なります。がん末期の診断を受けると、訪問看護は医療保険の給付が優先されるほかに回数制限がなくなります。例えば1週間のうちに看護師さんが34日訪問したり、1日のうちに2回訪問したりということも可能になります。

 一方、心不全患者は病期にかかわらず介護保険での訪問になりますので、介護度が低いと、訪問看護師が週130分程度しか訪問できないなどということも発生します。やはり疾病管理を行う上で、看護師の力は強いかと思いますので、訪問看護導入の重要性を理解していただくとともに、上手に活用していくことが必要ではないかと考えております。

6枚目のスライドです。希望する看取りの場と実際の看取りの場を調査したものです。当院では、訪問診療開始時に調査票を配布しています。提出は任意としており、がんも心不全も提出率は30%台で、ほぼ変わりはありませんでした。内容を見てみると、最初に、「最期まで自宅で過ごしたい」と希望されていた方のほとんどは御自宅でお看取りしています。一方、今は分からないと答えた方が心不全患者は30%おりました。30%の方たちとお話をしていますと、悪くなったときはまた病院に行って良くなるから大丈夫だとおっしゃる方が多く、心不全イコール死のイメージに直結しないのが、がんとの違いと感じているところです。ただし、どの疾患にも言えることですが、症状が増悪した際に、次の療養先選択、例えば転院なのか退院なのかや、医療の方針の選択、決定を迫られることがあります。つまり、身体的苦痛が既にある中で、更に患者や家族の人生を左右するような療養場の選択を求められることがあります。それは、ただ単にどこで生活するのか、どこで治療を受けるのかということ以外に、例えば一家の大黒柱のお父さんがその役割を喪失してしまうとか、お母さんがそのお父さんの役割を担わなければいけないなど、家族の役割機能が変様してしまうなど、心理的苦痛も伴うことになります。療養期間が長い心不全患者だからこそ、日々のケアの中で、今後どのような人生を送りたいのか、どのような生活をしたいのか、そしてどうのような医療を受けたいのかという意思決定支援を継続して行っていくのが必要なのではないかと考えております。

7枚目のスライドです。もう1つ大きな課題として、在宅療養を継続するためには御家族を支えることも重要です。心不全の場合、予後予測が難しいと言われていますので、先の見えない介護に精神的な負担が大きくなることがあります。また、日常生活そのものが疾病管理になりますので、11日の負担は軽いかもしれないのですが、それが長期になると大きな負担へと変わっていきます。また、相談する場が少ないので1人で家族が抱え込んでしまうこともあります。当院の調査では、介護による疲弊や、介護者自身が入院してしまったという御家族の意向によって中断した割合が大きいことが分かりました。介護保険など社会資源を上手に活用すること、家族が定期的に計画的にレスパイトできるような期間を設けることなど、家族自身のサポートをすることも重要ではないかと考えています。

8枚目のスライドです。では、どこでレスパイトができるのか。実は、在宅酸素療法や、人工呼吸器などを使っている医療依存度の高い方のレスパイト施設が限られているのが現状です。対応できる施設と日頃から連携を強化しておくことが重要だと思います。また、どうしても御自宅では生活し切れないという方が一定の割合数おられます。心不全患者においては中長期的な療養先の選択肢が少ないというのも特徴ですので、選択肢を今後広げていくことも重要ではないかと考えております。

9枚目のスライドです。一般的には御入院をされたほうが経済的な負担は高いと言われています。心不全患者は入院を繰り返しますので、その分、経済的な負担が高まってきます。できるだけ無理のない範囲で在宅療養生活を続けられることが経済的負担の軽減にもつながっていくのではないかと考えられます。

10枚目のスライドは、これまでお話ししたことをまとめとして出しております。社会的苦痛は複合的な理由になりますのでしっかり分類ができないのですが、今回はこの4つの分類にいたしました。

11枚目のスライドには、介護負担と家族関係の問題を挙げました。問題は今までお話しした内容になります。その課題解決に向けて、訪問看護の活用や、介護従事者と共同した疾病管理、そしてレスパイトを目的とした施設と地域の連携強化が挙げられると思います。また今、ほとんどの医療機関で退院調整看護師や、ソーシャルワーカーが在籍している相談支援部門が設置されていますが、在宅医療機関への相談員の配置は進んでいないのが現状です。やはり病院と地域の連携が必要なことですとか、生活の場は地域であることから、地域における相談員等の配置というのも必要ではないかと考えております。

12枚目のスライドの療養場所の選定の問題としては、先ほどから認知症が挙がっていますが、やはり認知症等によって意思決定が難しい場合があります。そのような場合でも、地域権利擁護事業や、成年後見等を活用して、最期まで人としての尊厳を大切にすることが重要かと思います。また、どの疾患にも言えることですが、患者家族の歴史や現在の思いを大切にした病院と地域、そして多職種チームによる意思決定支援が重要です。また、長期的な施設の体制整備も必要かと思います。

13枚目のスライドの経済的な問題という所では、なるべく無理なく在宅療養生活を継続するための社会資源を整備することと、社会資源同士がシームレスにつながれるようなサポート体制の構築が必要です。また、もう少し年齢層の若い心不全患者におきましては、生活を支える就労支援も重要と思います。そして認知症患者さんに地域権利擁護事業の啓発活動も必要になっていくかと思います。

14枚目のスライドのコミュニティの問題としては、相談できる窓口が少ないこと、そして情報量が少ないのが挙げられますので、まずは疾病の啓発、医療介護従事者向けの教育が大事かと思います。そして、がん相談支援センターのように、開かれた相談できる場の設置や相談員の配置も必要と思います。また、私もそうなのですが、医療に携わっていると、どうしても心不全患者という患者さんの括りになってしまうのですが、1人の生活者でもありますので、その方の人生や生活の質を高めるために地域全体で支えるコミュニティの構築も一方で考えていかなければいけないのではないかと思っております。

15枚目のスライドは、まとめのスライドになります。心不全患者は、介護負担や家族関係の問題、経済的な問題等の社会的苦痛を抱えています。個々の状況に応じて、社会的苦痛を緩和する支援が必要です。また、比較的療養期間が長い心不全患者は、患者や家族の歴史や現在の思いを踏まえた意思決定支援が重要となります。そして最後に、在宅療養生活を長期に継続するための支援体制の整備や、医療・介護・福祉で支えるネットワークづくりが必要であると考えております。以上です。ありがとうございます。

○木原座長 齋藤参考人、ありがとうございました。引き続いて、事務局から資料5の説明をお願いします。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 事務局です。資料52枚目を御覧ください。全人的な苦痛への対応を検討する上の論点としまして、社会的苦痛に関しては、3番目として「活用できる社会資源等を踏まえた社会的苦痛に対する適切な対応について」という形で論点()を提示しているところです。以上です。

○木原座長 ありがとうございました。今の社会的苦痛についてということで、これから構成員の方々にディスカッションを頂きたいと思います。本当に地域包括ケア、医療、看護の全ての問題がここに全部そろっているような本当に難しいテーマかと思いますが構成員の方々に御意見を頂きたいと思います。

○池永構成員 大変詳しく、幅広い御説明をありがとうございました。がんの中でも、やはり、この地域における相談員をどう置くかというのが非常に大きな課題で、拠点病院にはがん相談支援センターがある。ですが、あれは二次医療圏に1つみたいな大きな括りなので地域のリソースにあまり合わないということがあって。先生がおっしゃった相談員の配置であるとか、がん相談支援センターのようなというのは、どういう場所に置くのが現状としては一番いい、活用されやすいとお考えでしょうか。

○齋藤参考人 ありがとうございます。実際は、地域包括支援センターや、ケアマネージャーなど相談員がいるのが実態だと思うのです。先ほど山田構成員からもお話がありましたが、なかなか医療に詳しくなかったりする方たちが配置されているところがまず1つ課題かと思うので、そこの底上げをしていくのが1つと、在宅医療機関に相談員がいると、より良いのかと思うのです。全診療所に配置するのはなかなか難しいので、二次医療圏の中の診療所の1つに相談員がいるのも1つの方法ではないかと思います

○池永構成員 ありがとうございます。私もそれが非常に大きな悩みで、私が検討会で挙げたのは訪問看護ステーションなのです。元気なうちに地域の訪問看護ステーションに一度顔を出すみたいなこと。いずれは、お世話になる可能性があるということと、やはり地域のことを一番よく知っているというか、そういうところがあって、訪問看護ステーションが最近は街角の保健室をしたりしているというのは大変面白い活動だろうと思いますので、そういうところなのかと個人的には考えていました。ありがとうございます。

○山田構成員 先生のおっしゃるとおりで、特に循環器の患者さんは高齢者が多いので、余り遠くまで出掛けて行くというのはちょっとナンセンスです。地域包括ケアセンターにはナースがいますので、そこも相談窓口としてはいいのですが、ちょっと距離がある方もいらっしゃるので、早くから循環器の疾患以外でも、やはりいずれ在宅でと思っていらっしゃる方は、特に訪問看護と連携を取ると言うか、顔見知りになっておくことはすごくいいことだと思うのです。うちの病院の近辺の幾つかの訪問看護ステーションも、先ほどおっしゃっていたように、週に1回とか、2週間に1回ぐらいは街角で健診のようなことをしたり、それこそ患者サロンのようなものを開いて、その中で啓発活動だったり相談を受けたりとかして、医療機関等いろいろな所につなげている例が、もう既にあるので、先生のおっしゃっている提案は、すごく現実的で、これからシステム化したらできそうな感じがします。

○木原座長 いかがでございましょう。様々な課題が入っているパッケージみたいなことを考えないといけないわけですが、うまくやれば費用も下がるし、患者さん自身も幸せになるというところでは、皆が一致した意見を持っていると思うのです。ただ、どのようにやったらいいのか、今の配置をどうするのかなども大事な問題ではないかと思います。どのような格好にしたらいいのだろうかということについては、様々なディスカッションが必要ではないかと思って聞かせていただいております。井上構成員、いかがでしょうか。

○井上構成員 患者は、どこか不自由だというところがなく、ほぼ元気になった状態で家に帰りますので、支援をしていただく必要性を余り感じないで日常生活に戻っていくということが、ほとんどだと思うのです。齋藤参考人が、5ページで示されますような、日常生活における疾病管理が非常に重要だということの認識もなく、スライドには、医療介護従事者に必要性が理解されていないとありますが、患者こそ理解しておりません。まず早い段階で、例えば、自分の病気に対する理解とか、どういうことがこれから大切なのか、ちょっと背中を押してくださるような機会と場所があると、自分の日常生活をきちんと考えながら、家族と一緒にコントロールしていくような体制が患者自身も取れるのであろうと思いました。

○木原座長 ありがとうございます。

○平原構成員 在宅で療養されている心不全の方を考えると、なかなか相談のある場所に行けないということがあって、恐らく実際は、看護師さんがその辺も担っていくというのが現実的なことだろうと思うのですが、先ほど齋藤参考人からあったように、訪問看護には診療報酬、介護報酬上があることが最大の問題ではないかと認識しています。具体的にはがんの場合は連日医療保険で訪問に行けるわけですが非がん疾患では介護保険の枠内でしか関われないわけですが、非がん疾患の終末期の方に手厚く看護がいけるような制度設計をしない限りは、そこはちょっと解決しないと思っていることです。

 私が以前から提案しているのは、やはり一定の基準のもとに主治医が終末期であることをある程度認めたときに、永遠にではなくて、例えば3か月なら3か月、特別訪問看護指示書が連続して出せるようにするということです。例えば今、深い褥瘡があったら2週間、2週間で連続して特別指示書が出せますし、呼吸器を装着している方にも出せるのですが、それと同じような制度が非がん疾患の終末期にもあれば、恐らくほぼうまく機能するのではないかと思っています。なぜならば、アメリカのホスピスの制度で、一定の基準をもとに2人の医師が終末期だと認めた場合に、6か月間でホスピスプログラムに入れるわけですが、実際、心不全の方はもっと、ものすごく短い期間で亡くなっていらっしゃるわけです。なおかつその基準というのは、実は90年代で決められた基準で、予後の予測のエビデンスはそれほどないのですが、取りあえずそれを基に医師が客観的に認めた場合に末期として運用することで、一定の期間で適切な緩和ケアを受けられているという海外の実績もあるので、恐らくそのようにすることによって、看護師さんが最期の時間の意思決定にも寄り添えるし、体調管理もできるし、症状緩和にもかなり貢献できるのだと思います。既存のシステムを利用するとすれば、そのようなことが現実的に考えられるかと思っています。

○木原座長 ありがとうございます。キーワードとしては、やはり地域でないと駄目。基幹病院中心というだけでは少し難しい。それから、先行的な意味も含めて訪問ということが必要であるし、中心となる人物としては、訪問看護師であろうと。今、御指摘があったように、そういうことを可能にするような制度的なものの調整も必要だろうということですね。もう1つ、井上構成員から指摘があった教育、地域啓発、そういうことも相当足りないところがあるので、どのように地域の中で、そういう方々がいらっしゃったり、そういう人たちと一緒にコミュニティとして暮らしていかなければいけないことが今からの日本の姿ですよみたいなことをお話したり、その支え合いみたいなものを作ったり、社会的な啓発みたいなことも要るのではないかと考えたわけです。

○安斉構成員 やはり在宅に持って行くには、訪問看護ステーションの相談員とか、そういった方が中心的な役割を果たすと思うのですが、拠点病院の中の多職種チームと情報を共有するというのは非常に重要だと思います。その情報をどうやって共有するかという意味で、できればICTなどを使って、常に患者さん自身もアクセスできるような情報が患者・家族にとってよいのではないかとは思うのです。せっかくシステムを作るのであればそういうものも一緒にできると、日本オリジナルというか、いいのではないかと思います。

○山田構成員 地域での教育の面では、やはり先ほども少し申し上げたように、ケアマネージャーのケア計画に私たち医療側からすると、当然、訪看入れるだろうという患者さんに訪看が入っていなくて、急変してきてちょっとびっくりするということがあります。今、私たちの地域では、急性期の病院がケアマネージャーとか介護士を対象にした研修プログラムを企画しています。約1年間のコースで、医療者ほどできないにしても疾患をある程度理解するための講義と講義で得た知識を具体的に活用するための事例検討を企画しています。もし循環器疾患関連も拠点ができるのであれば、そこが中心になって地域の医療者以外の方たちの教育にも力を注いだらいいと思うのです。

 もう1点は、やはり循環器疾患の患者さんは急性期病院と縁が切れなくて、いつも行ったり来たりの状況です。私たちが実際にやっていて、ちょっと効果があると思っているのは電話訪問です。お金にはならないけれども訪問するよりは時間も掛からないしお金もかからない。ちょっと、お薬がちゃんと飲めているかとか、そういう自己管理の部分の確認と、何か退院してから変わったことがあるかとか、それから家族が疲弊していないかとか、そういったことを尋ねるだけでも随分患者さんは安心されるし、重症化の早期発見につながった事例もあるので、今後も積極的にできたらいいなと思います。

○木原座長 ありがとうございました。佐々木課長、特にコメントございませんか。

○佐々木がん・疾病対策課長 ありがとうございます。ちょっと気になったのは、体制面という意味では、今年度までの3ヶ年計画である第6期介護保険事業計画、市町村が行う地域支援事業の中に在宅医療介護連携推進事業というのがありますが、全くプレゼンいただいた資料の中で、例えばツールとしても、また課題そのものにも挙がってきていないという辺りに、医療と介護の連携の難しさを感じているところです。といった点も含めて、最終的な取りまとめの中では事務局的にも盛り込んでいければと思います。ありがとうございました。

○木原座長 心不全という慢性疾患の管理、地域でないとできないようなことを、1つのモデルとして介護と医療との間の連携の図り方みたいなことを考えていくというのも必要ではないかとは思っております。3つの身体的苦痛、精神心理的苦痛、それから社会的な苦痛、大変難しい内容ですが、そういう観点での御議論を頂いたわけですが、この循環器疾患患者の全人的な苦痛について、この3つをまとめて構成員の先生方から御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

○川本構成員 最初に安斉先生からありましたように、緩和ケアのときにどうしても私たちも扱いに困っているのが、スピリチュアルな苦痛の問題です。そのスピリチュアルな苦痛はなかなかまだ浸透していないので、精神であったり社会であったり問題なのですが、今のような混沌とした時代だからこそ、その人がどう生きたいのか、どのように生涯を迎えたいのか、やはり人間としての尊厳の根源のような問題だと思います。現時点で入れるのは難しいとは思うのですが、今、挙がっている3つの苦痛の中からでも、少しその視点を盛り込んだような形でこれから検討を進めていったほうがいいのではないかと思っております。

○木原座長 もう少し、ですから高次的な苦痛、何が高くて何が低いのかちょっとまた言いにくい、分からないことですが。

○川本構成員 最終的な選択とかいろいろなことをされるときには、やはりそういう視点もどこかに入れておかないと、その方の意向に沿った最期の緩和ケアというのは難しくなってくるのではないかと思っております。

○木原座長 ありがとうございます。

○池永構成員 川本構成員がおっしゃったとおり、そういうスピリチュアルな問題、やはりがんの中でも大きな問題にはなるのですが、社会的な苦痛の中で、齋藤参考人が、患者家族の歴史や現在の思いを大切にしたということも書いていただいていますし、ある部分、やはりその方の価値観であるとか、人生の意味付けであったり、そういうものを大切にしたケアを展開していくところなのだろうとは思っております。がんに比べると、循環器疾患の場合は長いということであったり、あと様々な合併症が出て非常に治療が複雑化する。あと、意思決定がだんだん困難になってきて、どういう人なのかがだんだん分からなくなってしまうというところ、なおかつ施設が変わっていくというところがありますので。がんでしたら、地域と診療所と拠点病院ということもあったりするのですが、施設や地域を超えてもその患者さんの歴史であるとか、現在の思いや価値観や意味付けをきちんと受け渡ししていく、これはきっと医政局がやっておられることとも被ってくるのだろうと思うのですが、そういう、いわゆる病気だけを紹介するのではなくて、その人を紹介して地域で支えていくシステムを大事にしていくことがスピリチュアルなケアにつながっていくのかと思いました。以上です。

○木原座長 この辺りは、がん緩和の世界で、様々な御議論があるのではないかと思います。そういう先例に倣える部分については、やはり非がんの領域も倣っていくべきではないかと思います。

○平原構成員 今のと関連するのですが、非がん疾患全般に言えることではありますが、緩和ケアのトリガーをどこに置くか、緩和ケアの視点でどこから関わるのかというのがいつも問題になります。緩和ケアのトリガーは何かと言うと、多分モルヒネを使うところが緩和ケアの始まりでは決してなくて、意思決定の支援を始めるタイミングをどうするのか、終末期に向けての意思決定の支援をどの段階で始めるのかという事でよいと思います。これは、恐らく疾患によっても違いますし、その国の医療制度とかシステムによっても全て違うと言われているので、例えば循環器疾患でしたら、どういうところでスタートするのがいいのかを議論していく必要があるかと思います。と言いますのは、非がん疾患の方、心不全の方も、よもや自分が死に向かっているとは思っていない、家族も思っていないという方がほとんどなので、医療者がそのことを率直に話をすることがなければ、そのことの話合いはスタートしないです。ですから、今はこういう状態であるということを、そのコミュニケーションの仕方は非常に難しいのですが、いい情報も悪い情報もイーブンに出して話し合って、率直にコミュニケーションを始めるタイミングをどこに置けばいいのかというのも重要な論点だと思いますので、今後、議論ができればいいと思っております。

○木原座長 ありがとうございます。そこのタイミングの取り方が、がん疾患と少し趣が違うというのがポイントかと思います。また、最期がどこにあるのか、なかなか判断ができないと、予後何か月とかという言い方がしにくい疾患であるところが、本人も家族も、あるいは地域で支える方々とも問題が発生してくる部分で、がんとは少し違う観点が必要かもしれません。

○羽鳥構成員 日本医師会で、終末期医療の担当でまとめをやっておりますが、今年の3月ぐらいまでには、医療機関、介護施設とかそういう所で参考になる資料を作るということでやっています。いずれ人は死ぬということで公平でありますが、がんの患者さんのように、先が見えている方、それから大動脈瘤とか心筋梗塞の一部の方のように発症してすぐに亡くなってしまう方、それから循環器、呼吸器疾患のように少しづつ進行して、どのタイミングで悪化したのかわからない方が確実に進行する方、それから、認知症が早く始まってしまったりとか、4つのパターンぐらいあるかと思うのですが、皆さんがおっしゃっているように、どこかで意識を共有して、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を確立していかなければいけないのだと思います。

1つ、先ほどから循環器の専門病院、訪問看護ステーションも役割がわかりやすいですが、地域包括ケアシステムに中でも循環器のことがよく理解できる人に入ってもらう。それには医師、看護師にチームを作ってもらい専門病院の方に講義に来てもらうことも大事だと思うのですが、そういう仕組みづくりを、提示していくのがこの委員会の一番大事なところだと思いますので、その辺の、少しレベルの高いところでまとめを作っていただけたらとも思います。

○木原座長 そうですね。

○羽鳥構成員 しっかりした提言になるようなものを作っていただくのがいいかと思います。

○木原座長 最低限の要件をきちんと書き込むということですね。ありがとうございます。ここでちょっと休憩を取りたいと思います。

                                     (休憩)

○木原座長 短い休憩で申し訳ございません。それでは、ワーキンググループを再開いたします。続いて、議題(3)循環器疾患における緩和ケアのチーム体制についてディスカッションしていきたいと思います。まず資料6に関して、事務局より御説明をよろしくお願いします。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 事務局でございます。御手元に資料6を御用意ください。「循環器疾患における緩和ケアのチーム体制について」です。資料62ページ目ですが、がんや循環器疾患における多職種連携体制についてという形で、がんや循環器疾患における多職種連携体制について記載しています。

 まず1つ目です。緩和ケアは、全人的なケアが必要な領域であり、多職種による連携を促進する必要がある。そのため、互いの役割や専門性を理解し、共有することが可能な体制を整備する必要がある。2つ目は、がんにおける緩和ケアチームでは、患者の全人的な苦痛を包括的に評価し、必要に応じて身体症状や精神症状の緩和に関する専門家と協力する体制が必要とされている。3つ目は、循環器疾患の再発予防・再入院予防に向けた疾病管理は、生活一般・食事・服薬指導等の患者教育、運動療法、危険因子の管理等、多岐にわたっている。そのため循環器疾患の疾病管理においては、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、栄養士、医療ソーシャルワーカー、保健師等の多職種の連携が必要であるとしています。

 下の図ですが、左側は、がん診療連携拠点病院等の緩和ケアチームということで、このようながんの緩和ケアにおけるチーム体制の一例を示したものです。右側は、循環器疾患の疾病管理に関わる職種という形で、循環器疾患の多職種連携の疾病管理に関わる職種を例示したものです。

 次のページを御覧ください。3ページ目は、緩和ケアチームを有する施設と循環器研修施設です。平成26年の医療施設調査の調査票情報と、日本循環器学会のHPをもとに、当課で作成したもので、緩和ケアチームを有する施設992施設中、日本循環器学会の循環器研修施設である施設は729施設(73.5)であるというデータです。このように、緩和ケアチームを有する施設992施設の中に、大体7割強が循環器疾患の専門的な治療を行っていることを示すデータです。

4枚目のスライドは、緩和ケアチームを有する施設と循環器関連施設という形で、もう少しデータを詳しく提示したものです。緩和ケアチームは、大病院に多く設置され、中小病院において少ない傾向があり、先ほど提示した、緩和ケアチームを有する施設992施設のうち、300床以上の病院が714施設、300床未満の病院が278施設です。

 この300床以上の病院の中で、緩和ケアチームを有する施設のうち、循環器系の科として、循環器内科、心臓・血管外科を標ぼうしている施設数は、この714施設の大体95%程度です。その中で、さらに循環器研修施設は、714施設中の626施設(87.7)というデータを示しています。一方、300床未満の施設になると、緩和ケアチームを有する施設のうち、循環器系の科を標ぼうしている施設は、74.8%、循環器研修施設は37.1%と、少し少ないようなデータが提示されています。

 次のページを御覧ください。資料の5枚目ですが、こちらは循環器疾患における緩和ケアのチーム体制に関する検討の方向性()としているものです。1つ目は、緩和ケアを行う場合は、医師・看護師・薬剤師などを中心にした心不全多職種緩和ケアチームとして行い、多職種カンファレンスを持って問題点を討議し、解決を図ることが必要であるとしています。2つ目は、緩和ケアチームを有する施設の中に、循環器疾患に対する診療を行っている病院も多く含まれている。これは先ほど提示したデータからです。3つ目は、地域で心不全患者を診ていくためには、多施設、多職種の連携が必要となるため、情報共有・コミュニケーションが重要となる。また、患者の症状緩和を行うだけでなく、家族のケアも念頭に置いた診療が必要となるとしています。

 シェーマ図は、緩和ケアチームのイメージを提示したものです。左側は、先ほどの資料に提示したように、同一医療機関内に循環器系のチームと緩和ケアチームがあるケースのイメージです。こちらでは、当該医療機関内の既存の緩和ケアチームと、心不全多職種チームの連携に加えて、地域の医療機関(かかりつけ医等)が連携することで、心不全患者と、その家族に対して緩和ケアを提供するイメージ図を提示しています。こちらの心不全患者は、院内及び在宅の心不全患者をともに想定しています。

 一方、右側のイメージは、同一の施設内に既存の緩和ケアチームと、循環器に関するチームがないケースのイメージで、こちらの場合は地域の既存の緩和ケアチームと心不全多職種チームが病院間の連携という形で連携し、それに地域の医療機関等がさらに連携し、心不全患者とその家族に対し、緩和ケアを提供するようなイメージ図を提示しています。このように、循環器疾患における緩和ケアのチーム体制について、既存の緩和ケア及び循環器疾患に関する多職種チーム間の連携による体制を中心に、これまでの取組事例を参考にしながら検討することとしています。参考資料2をお手元に御用意ください。こちらは、第1回ワーキンググループの資料としても提示しましたが、心不全に対する緩和ケアの取組事例として、いくつかの取組事例を提示しています。

 参考資料22枚目には、先ほど安斉構成員から御紹介がありましたように、国立循環器病研究センターにおける取組を提示しています。次のページ、資料の3枚目には、兵庫県立姫路循環器病センターにおける取組で、循環器専門病院における緩和ケアチーム体制の取組として提示しています。姫路循環器病センターにおける患者支援・緩和ケアチームは患者・家族への緩和ケア提供を多職種で支援することを目的に創設されており、活動内容の主体は、調整・支援という形で、診療の主体である主治医団や、病棟看護師、各職種を支援する体制を構築しています。

 資料の4枚目は、久留米大学における取組です。こちらは、既存の緩和ケアチームと協働した心不全支援チーム体制ということで例示しています。久留米大学では、心不全支援チームは、多職種連携による心不全患者管理と心不全緩和ケアをシームレスに提供するために創設されたチームであり、その対象は高齢者心不全から移植・補助人工心臓の検討患者にまでわたります。久留米大学病院緩和ケアチームや植込み型補助人工心臓チームとの協働体制を構築しているような体制です。

 次に資料の5枚目を御覧ください。こちらは、地域基幹病院としての飯塚病院における取組で、総合診療科医師も加わった地域における緩和ケア提供体制の一例です。飯塚病院のハートサポートチームは、循環器内科医師、緩和ケア科医師、総合診療科医師で構成され、看護師、薬剤師、理学療法士、栄養士、医療ソーシャルワーカー等とは個別に相談し連携する体制を構築しています。地域の病院に、ハートサポートチームの医師(循環器内科、緩和ケア科、総合診療科)を派遣し、飯塚病院退院後も、継続した心不全緩和ケアを提供する体制を構築している一例です。

 資料6にお戻りください。6ページ目は、参考として、先ほど提示しました緩和ケアチームを有する施設と、循環器関連施設のデータを更に詳しく提示した資料です。事務局からは以上です。

○木原座長 ありがとうございました。それでは今の事務局の御発表、御提案を踏まえ、循環器疾患における緩和ケアのチームづくり、チーム体制のあり方について、御議論をいただけたらと思います。難しいテーマだと思いますが、最後にお示しいただいたように、成功事例というか、うまくやりつつあるところもあります。構成員の先生方の御意見をしっかり伺いたい。どんな格好があり得るのか、あるいは多くの基幹病院でできている、がん緩和チームと循環器チームとの擦り合わせ、後は地域との擦り合わせということがテーマになるかと思います。御意見をいただけたらと思います。

○安斉構成員 参考資料24ページ目に書いてある、久留米大学の取組ですが、これは国循の元レジデントの柴田先生という、若い先生なのですけれども非常に活躍されていて、久留米の地域全体の緩和ケアにも携わっていらっしゃいます。実際に緩和ケアチームと協働することで、かなり有効な緩和ケアを提供できているという話を聞いています。先ほどお示しいただいたデータで見ても、緩和ケアチームがあって300床以上で、循環器内科あるいは外科を標ぼうしている施設を見ますと、ほぼ100%になっていますので、やはり大病院で300床以上の病院において、既存の緩和ケアチームが心不全を見ていくような体制を整えていただくというのが、緩和ケアを普及させる上では一番有効ではないかと思います。

○木原座長 ありがとうございます。平原構成員、地域とのすり合わせのような観点から、いかがお考えでしょうか。

○平原構成員 在宅の患者さんが通える範囲においては、多分、外来に通院して専門病院に通っていくということでいいと思うのです。通えなくなった時点の体制をどうするかというのが、1つの課題になるかと思います。その時に一般在宅の立場から言いますと、心不全についてコンサルテーションができる体制というのが、まずは必要かなということがあります。それをどういう体制にするかということは、ちょっと工夫がいるかなと思います。飯塚病院のやり方というのは、1つの方法かもしれません。当院も地域の中核病院から循環器のパート医師に来ていただいて、毎日はいないのですけれども、何かあったとき、そこにコンサルテーションできる体制があって、それによって、病棟とか在宅とかの基本的な治療がこれで間違っていないかという確認をさせていただくのは非常に心強いのです。そういう体制が1つあるのかなと思います。

 ただ、一般的にはそういう体制がないところが多いので、一般在宅で、そういうコンサルテーション、あるいは実際に見ていただいて判断していただくということで、アウトリーチシステムというのがどうしても必要になってくるのかなと思っています。

 地域においては、循環器だけではなく、様々な専門領域のセカンダリサービスというのが不足しているのですね。精神科にしても、セカンダリサービスというのがないので、そこが在宅医療の1つの課題ではあります。循環器においても、本当に通えない方についてアウトリーチしていただくというのが、何か制度の工夫とかであれば、非常に在宅での質は上がるだろうと思われますので、今後の検討課題かと思います。

○木原座長 ありがとうございます。全ての専門職が、その専門性をキープしたまま、皆さんと連携して、情報共有ができたら、これができるわけですが、なかなか言うは易し、行うは大変難しいところがあると思います。池永構成員、既に活動しておられる、がん緩和ケアのチームとの擦り合わせという観点から、いかがですか。

○池永構成員 現状、我々の施設では、やはり循環器の先生方から緩和ケアチームに相談を頂き、最近では心不全の症状緩和であったり、終末期のケアということでの御相談が増えてきています。そういったときにオピオイドの使い方や、鎮静の方法や家族への御説明の仕方を御相談することはあるのですが、そういう1対チームで、その先生やナースにサポートするということは、ある程度は可能なのですが、チームとチームでうまく協働するというのは、私はあまり経験がありません。

 がんの中で非常に大事なのは、NSTと緩和ケアチームが協働するという施設が時々あるのです。それがうまくいくのは、同じ医者がいるからというところが大部分なのですけれども、中でもNSTの見方、やはり客観的なデータをよくするような、栄養療法のアプローチと、緩和ケアチームの言う、いわゆる主観的な症状緩和を第一にするという、価値観とか言語が非常に違う中で、一緒に協働するというのが、これまではなかなかむずかしかったということがあります。

 やはりかなり高度な協力関係であったり、チーム医療の理念をきちんと伝えた上で、患者さんファーストで関われるような、チームの構成員の態度というか姿勢というか、そういうのが非常に大事なのだろうと思います。いろいろな意見の対立があったときに、現場が困らないようにしていかないといけないと思います。

○木原座長 広島大学病院も、緩和チームと心不全チームが、別々にやっていたのですが、最近緩和チームの一人の先生が心不全カンファレンスに顔を出すようになって、それだけで、がらっと変わるのですね。先生がおっしゃった、言葉の違いとか概念の違いとか、いろいろなことがあります。どうすればいいのかと言えば、小さい穴が1つできたら、かなり壁は取れるのではないかという感じを持っています。確かに人の問題ですよね。山田構成員、いかがでしょう。

○山田構成員 地域によっては、循環器内科医の配置がなく、心不全チームがどれだけ構築できるかと考えたときに、一般のがん診療に比べて、医師の絶対数が随分ちがうのではないかと思います。ですから、まずは、300床以上、あるいは500床以上のがん拠点を取るような病院では、心不全チームも緩和ケアチームもあって、うまくやっていけると思います。

 地域医療になってくると、開業されている先生も、循環器が専門ではないけれども高齢者等は一般の内科医の先生が中心に診療しています。そういうところでチームが、どう活用できるかと言われると、先程の拠点となるような病院が広く相談窓口を開けて、コンサルテーションを受けやすくする。アウトリーチについても、看護師をはじめとして、他のメディカルスタッフは可能な面があると思うのです。ただ、医師は先ほど申しましたように、うちのような急性期の病院でも、今、循環器の医師は400床ぐらいのベッドに2.5人ぐらいしかいなくてPCIもやり、あれもやり、これもやりみたいなことなので、先生にちょっとあそこに行って診てあげてくださいとは、正直申し上げにくいというのが実態です。

 それに高齢者の場合は、平原先生も前におっしゃっていたように、そんなに専門性の高い何かを求めるというよりは、一般的な診療の中でできることもたくさんあります。看護師については、当院も特に専門性の高いナースは、在宅に出すようにしています。急性期の病院で循環器系をやっている専門性の高いナースを媒体にして、地域がつながることは、ある程度できると思います。

○木原座長 山田構成員がおっしゃっていることは、ステージによって関わる人が変わらないといけないということですか。

○山田構成員 それと、地域の医師の偏在というのがあるので、一概に心不全チーム、緩和ケアチームでやりましょうということは、難しいかなと。

○木原座長 循環器の医者はいるけれども、カテしかやらないとか、カテ手術医師になっていたりとか、そういうことはいろいろありますよね。

○安斉構成員 やはりしっかりとしたオプティマイズされた循環器の治療をするというのが、緩和ケアにおいては前提となると思うので、やはり循環器の医師が1人緩和ケアの中に入ってディスカッションしていくのは、どうしても必要だと思うのです。ですから、もし地域によって、循環器医が非常に少ない場合には、少し遠くからでも一回派遣して、そのチームの中で話し合うとか、導入に当たってはそういった拠点病院で導入するほうが、安全なのかなと。救命を放棄するようなことがあってはいけないというのが、日本集中治療医学会でも言われていますので、そういう意味でも一度はそういったクオリティ・インディケーターみたいなものを今作成中なのです。AMEDの研究で作っているところなのですが、そこでしっかり、ここは緩和ケアの適用であると判断する、1つのプロセスはあったほうがいいと思います。

○木原座長 そういうステージの中において、地域のかかりつけの医師の役割というのは、大きいのではないかと思うのですが、羽鳥構成員、いかがでしょう。

○羽鳥構成員 この心不全と緩和ケアに関して、臨床の先生たち、かかりつけの先生たちは、もっと深く勉強しなくてはいけないと思うのです。今、かかりつけの先生たちが勉強する機会の1つは、例えば7時ごろまで診療して、その後7時半頃から地域の医師会でやる勉強会に出る。あるいは製薬メーカーがやる勉強会に行くというタイプがあると思います。ただ、今は製薬メーカーの勉強会は、非常に限定されていて、自分の商品、自分の売りたいものしか宣伝してはいけない。そういう意味では、こういう心不全と麻薬では、例えば第一三共がやっているのですけれども、第一三共はこれをやっていたら全然収入にはつながらないので、これはやりたくないというようなこともある。

 そうすると、医師会がきちんと主導して、医師会でこれはやらないといけないのだからということで、やっていかなければいけないのですけれども、それはある程度、行政のほうから、例えば緩和ケアで認定などを取るということがあるのか分かりませんけれども、そういう一定の、柔らかいものでいいですから、資格を付与するとしたら、そういう勉強会を例えば1年間に10時間やるとか。看護師が特定看護師として勉強しているのと同じように、医師もそういう勉強をする機会を作らせないといけないのではないかと思います。メーカーに頼った講演会は、余りにも今は偏っています。糖尿病の、この薬とこの薬だけしかやらないということになって、それ以外のものを勉強する機会が少ない気がするのです。こういうところで話すべきことではないと思いますけれども、実情として地域の先生方が勉強するときには、そういう形が多いと思うので、それではない仕組みをまた1つ作ってもらわないといけないと思います。

○木原座長 医師会としては、そういうことの受け皿には。

○羽鳥構成員 もちろん、いつでも対応したいと思っています。

○木原座長 ありがとうございます。齋藤参考人にお伺いしたいのですが。ゆみのハートクリニックは、実際に地域における在宅も含めての循環器領域の緩和がうまくっている成功事例ではないかと思っています。ゆみのハートクリニックと限定してはいけないのかもしれませんが、そういう形での展開が、例えば非都市部でも可能なのかとか、こういうものが普遍的に日本の中にたくさんできるとお思いなのか。あるいは弓野先生でしかできないことだと考えるのか。その辺を展開という意味で御意見をいただきたいと思うのです。

○齋藤参考人 ありがとうございます。ゆみのハートクリニックだからではなく、なるべく全国どこの、地域が違ってもできるようなシステムが作れるといいなと思います。地域ですと、緩和ケアチームと言っても、介護の方たちを含めての緩和ケアチームとなるので、医療ではない部分も含めて緩和ケアというのを私個人的には考えています。そうなると、全人的な意味での緩和と捉えると、循環器だからとか他の疾患だからというのはもちろんあるのですが、人として最後をどう迎えていくのかをサポートする地域のチーム、それを病院の緩和ケアチームの方が支えてくれるという構図がいいのかなと思います。

 一方で、これは都市部の課題なのかもしれないのですが、大学病院や大きな病院の先生がかかりつけ医になっている傾向があるので、かかりつけは地域の先生に担っていただいき、大学病院の先生にコンサルテーションする医療の仕組みづくり、それを患者にも理解してもらうといいのかなと感じています。

○木原座長 ありがとうございます。池永構成員に、もう一回聞いてみたいのですが、既存のがんを中心とした緩和チームの他に、そういう心不全とか、非がんのチームを新たに作るという考え方が1つあって、もう1つは、既存のがんを中心とした緩和ケアチームをエクスパンションして、非がん領域もカバーできるようにするという考え方と、大きく言えば2つあるかと思うのです。いろいろあってもいいという考え方もあると思うのですが。

○池永構成員 現状では僕はいろいろにするしかないと思っています。緩和ケアチームを有する施設が全国で992と書かれているのですが、かなり力の差があると思います。専従の緩和ケア・専門医があるところもあれば、たまたま腫瘍内科の先生がその任を兼任という形で負っている施設もある。もちろん認定看護師や専門看護師は、かなりの努力をして良い仕事をしていることが大部分であります。それはチームによる力と、病院の中での形なのだろうと思います。

 もちろん既存のチームを活用して協力しながら進めていく。また、難しい場合には緩和ケアチームが少し循環器内科医と相談しながら、逆に心不全チームが緩和ケアチームを巻き込みながらと、いろいろな形にせざるを得ないのではないかと、緩和ケアチームを見ているとそういうふうに感じます。今すぐに、緩和ケアチームの先生に、循環器の相談をして大丈夫かというと、なかなか難しい部分も多々あるような気がします。

○木原座長 ありがとうございます。国循のようにしなさいとか、久留米のようにしなさいとかは恐らくないわけで、様々な地域とかいろいろなことを含めてのオプションが必要なのではないかと思います。

 あと1つだけ、西村参考人、よろしくお願いします。

○西村参考人 今のがん緩和ケアチームの構成員として精神科医も入っていて、精神症状の緩和を担当しているという現状があります。先ほど薬の使い方でもありましたように、心不全の精神症状に対して精神科医も慣れていないということが圧倒的にあると思うのです。心不全の患者さんに特有の精神症状をアセスメントし、マネジメントにしても、見落としてはいけない薬物相互作用や、心毒性のある薬剤についての知識をきちんとまとめないと、その質は担保できないかなと思います。

 どういう形であれ、精神症状を担う医者側のトレーニングというのも、ある程度きちんとしていかないといけないのではないかと考えています。

○木原座長 ありがとうございます。そこの教育というか、そういう制度を作っていくやり方みたいなことがポイントではないかと思います。

○平原構成員 教育と直接あれなのですが、1つ課題として意識しておかなければいけないのは、中小病院で心不全で亡くなる方が恐らくかなり多いのではないかと推測されます。がんの親会議の方でも、がんの方でも一般病床で亡くなっている方が多くて、そこは実態が分からないブラックボックスになってしまっているという議論がありましたけれども、実は心不全の方も、在宅で看きれないと、後方支援病院に入って、そこで最終的に亡くなる方が多い。そこの実態が分からないということと、まず、そこの緩和ケアをどういうふうにやっていったらいいのかということが、全く見えていないということがあります。

 そこは恐らく、がんも循環器も他の病気も、急性増悪で入って、恐らく疾患を問わず緩和ケアが必要な場だと思われるのですけれども、そこのところは循環器においても、課題として意識しておかなければいけないのかなと思っています。

○木原座長 ありがとうございます。教育の視点ということに関して、どなたか御意見はございませんか。

○池永構成員 本当に、心不全の呼吸困難の緩和に、オピオイドを逆に使うべきであるみたいなメッセージが送られると、中小病院では、簡単にモルヒネをセデーションの道具として使われてしまう危険性が非常にある。鎮静のガイドラインの中でもよく問われている内容なので、オピオイド、イコール、セデーションというのが、やっぱり誤解としてありますので、オピオイドは非常の有用な薬であり、専門的な知識をもった、緩和ケアチームでもいいと思いますし、循環器内科の先生でもいいですし、総合診療の先生の方がよく御存知のことも多々ありますので、十分に専門家と相談しながら投与量を決めていき、有効に使っていくということなのだろうと思います。そういう教育が非常に重要です。

○木原座長 ありがとうございます。そういう地域を含めたチームビルディングをやっていく上においては、やはり子細なポイントに関して、特に危険や問題のある個所に関しては、ちゃんと書き込む必要があるということではないかと。先ほどの羽鳥構成員の御意見とも通じるところかと思います。

 そうしますと、議題のもう1つ残っている(4)ですね。人生の最終段階における医療の取組についての経過報告ということで、議論の中でもありますように、循環器疾患の緩和ケアについては、その考え方を患者や家族と共有の上で将来に備えた意思決定支援が重要であるということなので、現在厚生労働省医政局で進められている取組について、御発表いただけたら大変ありがたいと思います。資料7の説明を事務局からよろしくお願いします。

○医政局地域医療計画課在宅医療推進室長補佐 医政局地域医療計画課でございます。御案内がありましたように、私からは、人生の最終段階における医療に関する取組についての経過報告をさせていただきます。

2ページです。左上の四角の囲いになります。現状としては、自宅で最期を迎えたいという方が約55%いらっしゃるのですが、実際の死亡場所としては、自宅は10数%にとどまっているということがあります。また、高齢化に伴い、65歳以上の救急搬送人員の構成比も、平成元年には高齢者が23%であったのが、平成26年には50%を超えているということになっています。また、人生の最終段階における医療について、家族と全く話し合ったことがない方の割合が約56%、あるいは、その意思表示を書面として作成している方は3%にとどまるということが現状です。こうしたことから、患者さん本人の意思の推定が困難な場合に本人の意思に反した医療処置や搬送が行われている可能性が示唆されております。こうしたことから、これまでの厚生労働省の取組としまして、右上の囲いになりますけれども、人生の最終段階における医療は、患者・家族に十分に情報が提供された上で、これに基づいて患者が医療従事者と話し合い、患者本人の意思決定を基本として行われることが重要としております。そうした経緯から、これまで医療機関を対象に平成19年度には意思決定のプロセスに関するガイドラインを策定しており、また、平成26年度からは医師、看護師等に対して、合意形成を行うプロセスやコミュニケーションスキルに関する研修を実施しています。今後の対応として、ページの下にありますが、方向性としては、あらかじめ本人の意向を、家族やかかりつけ医等と共有し、人生の最終段階における療養の場所や医療について、本人の意思が尊重される取組を推進してまいりたいと考えております。

 これらの観点から、➀住民向け普及・啓発、➁在宅医療・救急医療連携、➂医療機関での相談対応の充実を図っているところです。

3ページは、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」になります。ガイドラインの概要としては、大きく2つあります。1つは、人生の最終段階における医療及びケアの在り方です。医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされた上で、患者が医療従事者と話し合いを行い、患者本人による意思決定を基本として終末期医療を進めることが重要。人生の最終段階における医療の内容は、多専門職種からなる医療・ケアチームにより、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断するとされております。また、2つ目として、人生の最終段階における医療及びケアの方針の決定手続については、患者の意思が確認できる場合、あるいは、患者の意思が確認できない場合、そして、患者・医療従事者間で妥当で適切な医療内容について合意が得られなかった場合を想定して、このようなプロセスが踏まえられているところです。

4ページは、今、御説明したガイドラインの方針決定の流れを、イメージ図として策定しているものです。

5ページです。このように、人生の最終段階における医療の決定プロセスのガイドラインを策定し、周知を図ってきているところではありますが、平成25年の国民や医療や介護従事者等の調査によれば、当該ガイドラインは、医療従事者に十分認知されているとは言えず、人生の最終段階における医療に関する研修も十分に行われていない状況でした。そのため、人生の最終段階における医療に関する患者の相談に適切に対応できる体制を強化するため、平成26年、27年度にモデル事業を行い、平成28年度から医療・ケアチームの育成研修を全国8ブロックで実施しているところです。平成30年度は、平成29年度同様、人材育成研修を継続するとともに、国民への普及啓発のための取組を行う予定としております。

5ページの下の段にありますように、プログラムの中ですが、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の解説、あるいは、アドバンス・ケア・プランニングに関するものが構成内容となっています。

6ページです。現在、人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会を開いております。下の囲いにありますように、主な検討事項としましては、国民に対する情報提供・普及啓発の方法についての検討、患者の意思決定を支援する手法の検討、人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドラインの見直しに関する検討を行っています。以上です。

○木原座長 ただいまの医政局からの発表に関しては、現在の取組の経過報告としての位置付けですので、御理解いただきたいと思います。何かございましたら、御意見をいただきたいと思います。

○池永構成員 教えていただけるならば。やはり、どうしてもよく問題になるのは、どの時期に、誰が、みたいなことが、きっと議論になっているのだろうと思うのですが、どのような御意見が出ているのでしょうか。

○医政局地域医療計画課在宅医療推進室長補佐 こちらのガイドラインの解説にある内容ですけれども、人生の最終段階には、がんの末期のように、予後が数日から長くとも23か月と予測できる場合、あるいは、慢性疾患の急性増悪を繰り返して予後不良に陥る場合、あるいは、脳血管疾患の後遺症や老衰など、数か月から数年にかけて死を迎える場合など様々でございます。どのような状態が、いわゆる人生の最終段階かということにつきましては、患者さんの状態を踏まえ、医療・ケアチームの適切、かつ、妥当な判断により、行われるべき事柄ですので、いつからということは銘々に決めるというのは難しい、それを含めて、医療・ケアチームで、きちんと議論がなされるべきではないかと考えています。

○池永構成員 医療・ケアチームということは、やはり病気が見つかってからということでしょうね。

○医政局地域医療計画課在宅医療推進室長補佐 この話合いをどこから行うことが適切かというのは、正に今検討会で議論が重ねられているところですので、今後我々としては、そういった意見を取りまとめていきたいと考えております。

○木原座長 最後の議題です。(5)ワーキンググループ取りまとめの骨子案についてです。資料8を、事務局から説明をお願いいたします。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 事務局です。資料8です。循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制のあり方に関するワーキンググループとりまとめ骨子案として提示しております。おおむね、このような項目立てで取りまとめを行っていければという案を提示しているところです。まず、第1は「はじめに」として、導入の部分です。

 第2は「循環器疾患における緩和ケアについて」です。そのうちの1つ目は「緩和ケアの対象となる循環器疾患について」です。第1回のワーキンググルーブでも御議論いただきましたような、特に心不全を中心にした内容等を整理することができればと考えております。2つ目の「循環器疾患患者の全人的な苦痛について」につきましては、今回のワーキンググループで御議論いただいた内容を整理して記載することを想定しております。3つ目の「循環器疾患患者の臨床経過を踏まえた緩和ケアについて」につきましては、今回のワーキンググループの資料1で提示しました内容を中心に整理することができればと考えております。

 第3「循環器疾患における緩和ケアのチーム体制について」ですが、こちらは、1、基本的な方向性、2、循環器疾患における緩和ケアのチーム体制のイメージについてという形で整理しております。こちらの内容は、本日御議論いただきましたような内容を踏まえて整理することができればと考えております。

 第4「緩和ケアにおける循環器疾患と、がんとの共通点・相違点について」につきましては、第1回ワーキンググループにおきましても資料を提示しました。また、本日のワーキンググループにおきましても、このような観点の議論が多数なされたものと理解しており、その辺りを十分に整理した上でまとめることができればと考えているところです。

 第5「おわりに」という形で、最後に議論の経過等の資料を追記する形で、取りまとめの骨子案として提示しているところです。以上です。

○木原座長 もう1回、この会があるわけですが、そこに向かっての取りまとめの仕方として、今、事務局から御提案があったところです。十分に議論したかといえば十分とはいえず、議論は尽きないわけですが、第2章、第3章、それから第4章の問題というのを、構成員の皆様から相当に議論が出て、意見をまとめられるレベルに近づいているのではないかと、議長としては思っております。意見をいただけたらと思いますが、いかがでしょうか。

○川本構成員 今日、初めにいただいた資料1に、やはり緩和ケアのニーズの認識と概念の共有、患者の皆様と医療従事者との共有をしなければいけない。ある意味では啓蒙だと思うのですが、そういう点をどこに入れるかということが、意識しておかないと落ちていくのかなと思いました。章を挙げるかどうかとは別にして、大事な論点ではないかなと思っております。

○木原座長 職種間もありますし、患者さんとのということもあるかと思いますし、あるいは地域での、病院と病院での、診療所と病院でのと共有というと、いろいろなところでの状況を考えないといけないわけですが、そこのところの項立てをするかどうか、これから議論を、次回に向かってディスカッションできたらと思います。

○羽鳥構成員 どこでもいいのですけども、やはり課題を少しピックアップしていただいて、麻薬の使い方もそうですし、地域でのかかりつけ医の勉強の仕方とか、そういうのを具体的に書き込んでいただけるようにしていただけると。例えば、さっきの麻薬の使い方でいえば、どこに申請するべきだとか、学会として取りまとめるべきだとか、そういう提案も書き込めたらありがたいと思います。

○木原座長 ここで、必ず具体に言及するべきことを箇条書きにするべきだと。

○羽鳥構成員 はい。

○佐々木がん・疾病対策課長 まず、先ほどの川本構成員の御指摘については、基本的には文書ですから、誰に読んでもらいたいかを明確にするという意味では、「はじめに」のところで国民の皆さんも対象にしているということを明記したほうがよいかと思います。先ほど齋藤参考人の指摘にもありましたとおり、もともと4年前の医療法改正で、国民の責務という形で地域医療の理解とかもありますので、そうした制度的な背景も含めて「はじめに」のところで明らかにしたいと思います。羽鳥構成員の御指摘のところは、どちらかというと、2のところで明らかにしたほうがよいのかなと思っております。まずは、それで案を書き起こした上で、座長と相談のうえ、各構成員にも相談したいと思います。以上です。

○木原座長 ここに関しては、具体に詰める必要があるということを少しきちんと明記することではないかなと思います。第1回ワーキンググループ、及び本日の議論の内容に関しては、事務局で、これから整理していただき、次回のワーキンググループにて、とりまとめを行いたいと思います。大変多くの御議論をいただきまして、ありがとうございました。最後に、事務局から連絡事項をよろしくお願いいたします。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 事務局です。次回のワーキンググループに関しましては、事務局より追って御連絡いたします。お忙しい中、恐縮ですが、日程の調整をよろしくお願いいたします。

○木原座長 それでは、本日のワーキンググループを終了いたします。ありがとうございました。


(了)

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