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2017年12月25日 第4回労働政策審議会労働政策基本部会

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成29年12月25日(月) 15:00〜17:00


○場所

厚生労働省 専用第22会議室


○出席者

(委員)

石山氏、岩村氏、大竹氏、川崎氏、古賀氏、後藤氏、佐々木氏、武田氏、長谷川氏、御手洗氏、守島部会長、山川氏

(ヒアリング対象者)

石山 洸氏 (株式会社エクサウィザーズ代表取締役社長)
山本 陽大氏 (独立行政法人労働政策研究・研修機構 労使関係部門研究員)

(事務局)

藤澤政策統括官(総合政策担当)、本多総合政策・政策評価審議官、奈尾労働政策担当参事官、大竹企画官

○議題

・ 技術革新(AI等)の動向と労働への影響等について(ヒアリング)
・ その他

○議事

○守島部会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第4回「労働政策審議会労働政策基本部会」を開催したいと思います。

 皆様方におかれましては、年末のお忙しい中、御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。

 カメラ撮りはここまでなのですけれども、特にカメラはないみたいなので、進めたいと思います。

 本日は、所用により、入山委員、大橋委員、冨山委員が御欠席でございます。

 それから、本日は、委員の皆様方のほかに、ヒアリングのために独立行政法人労働政策研究・研修機構労使関係部門研究員の山本さんにお越しいただいております。よろしくお願いします。

 まず、議事に入ります前に、本日の部会はタブレットを使ってやらせていただきますので、事務局から何か説明があればお願いします。

○奈尾労働政策担当参事官 労働政策担当参事官の奈尾でございます。

 厚生労働省では、審議会等のペーパーレス化ということで、本日の部会からペーパーレスで実施させていただきたいと思っております。お手元にタブレットとスタンドとスタイラスペンが配付されているかと思います。使用方法につきましては、「ペーパーレス審議会等タブレット操作説明書」という1枚紙、裏表で書かれてございますけれども、簡単に申しますと、一番下のツールバーの真ん中あたり、左側の一番右側にファイルの形をしたアイコンがございまして、これをタッチしていただくと、きょうの資料が1つずつ出てくる。その資料をタップしていただきますと、それぞれの資料が出まして、閉じるときはそれぞれのファイルの右上のバツ印を触っていただくと閉じるということでございます。

 何か御不明な点がございましたら、近くに職員を配置しておりますので、お申し出いただければと思います。

 あわせまして、お手元にアンケートを配付しているかと思います。今後のペーパーレス開催に向けた、よりよい環境整備のために御協力をお願いできれば幸いでございます。このアンケートは、御記入後は、お帰りの際に机上に置いたままで結構でございます。

 以上です。

○守島部会長 ありがとうございました。

 それでは、議事に入ります。本日の議題は、第1に「技術革新(AI等)の動向と労働への影響等について」、第2に「その他」となっております。

 まず、本日の進め方について御説明させていただきます。

 議題1ですが、最初に石山委員より「働き方改革へのAI利活用について」の話題で20分程度御説明いただいた後、その内容について、同じく20分程度、質疑応答を行います。

 次に、ヒアリングのためにお越しいただいております山本様より、「第四次産業革命による雇用社会の変化と労働法政策上の課題−ドイツにおける“労働4.0 をめぐる議論動向」について20分程度で御説明いただき、その後でその内容について20分ほど質疑応答を行います。

 2名のヒアリング終了後、事務局より前回の有識者ヒアリングの概要を御紹介いただきます。

 引き続きまして、議題2「その他」ですけれども、議題1のヒアリングと前回の議論を踏まえて、前回同様、AI等の技術革新は労働にどのような影響を与えると考えるか。労働政策にAI等をどのように活用できるか。技術革新の労働への影響を踏まえ、今後の労働政策はどうあるべきか等の観点について、自由に御議論いただきたいと思います。

 それでは、説明が長くなりましたけれども、議題1のヒアリングに移りたいと思います。

 では、石山委員、よろしくお願いいたします。

○石山委員 まず、私の資料ですけれども、配付資料がない形で投影のみの形になっておりますので、よろしくお願いいたします。今回、タブレットには、ここでHDMIを差したものは対応していないということで、せっかくペーパーレス化していただいたのですけれども、画面は手前のほうにしか出ない形になっているということで、次回以降、ぜひ投影できる形になればと思っておりますが、済みません、よろしくお願いいたします。

 よく技術革新、AIがいわゆる技術として発展してきたことによって、私たち自体の働き方がどういうふうに変わるのかという話はよくある話だと思うのですが、きょう、私のほうでは、ちょっと違う観点で、働き方改革そのものにAIがどういうふうに使えるのか。第2回のときに、例えば労働経済学において、AIをそもそも使ったほうがいいのではないかみたいなお話も少しさせていただいたのですけれども、働き方改革そのものにAIをどういうふうに使っていけそうか、あるいはHR-Tech等々の言葉も出てきている中で、どんな形で企業の人事の方々がAIを使い始めているかみたいな事例を幾つか御紹介させていただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 私どもの会社は、最近できた人工知能の会社でして、社会課題、特に超高齢社会とか働き方改革みたいなところに人工知能をうまく活用しながら問題を解決していくみたいなコンセプトの会社となっておりまして、御用学者ならぬ御用起業家みたいな形で、プロダクトを通じて社会課題を解決していくことを目指している会社でございます。

 ということで、さまざまな事業をやっているのですけれども、この前、国際ロボット展示会で展示させていただいたのですが、デンソーさんと一緒にロボット等々も人工知能を活用しておりまして、例えば左上にあるようなロボットですと、関節の数が40個ありまして、一個一個、人間がプログラミングすることはできないのですが、例えばタオルを畳んでくださいということを、VRを通じて人間がロボットに教えてあげると、このロボットがタオルを畳めるようになることが簡単に実現できるような人工知能をつくるということをふだんしております。

 同じように、VRでサラダを盛りつけるとサラダを盛りつけてくれるみたいな形になっておりまして、ちょっとおいしそうではないのですけれども、こんな形でサラダを同じように学習させて盛りつけることができるみたいな技術をふだん開発しております。

 そういった技術が、ふだんはロボット等を使って自動化するという話が多いのですが、実は働き方改革においてAIを利活用する方法はもっといろいろありまして、きょうはいろいろな事例を御紹介できればと思います。実は、私たちが一番最初に取り組んだのが、介護の世界の働き方に対しまして、どういうふうに人工知能を活用するかという事例です。そこで出てきた知見を一般化して、いろいろな領域に活用することをやっておりますので、まず最初に介護の世界の働き方改革にAIをどういうふうに利活用したかという事例を1つ。

 介護の世界で働いていると、こういうことが起きます。これは、いわゆる介護拒否が起きている様子ですが、こういった部分に対して、どういうふうにケアすると実際に介護拒否がなくなって、あるいは認知症の方が元気にお話をしていただけるのかというところを研究しているところです。この後、具体的に話していくのですが、今までのケアの世界はエビデンスベースドになっていなくて、どういうケアしたときに介護拒否がなくなるのかということがよくわかっていなかったのですが、それを動画で解析するというのをやっております。

 これは、フランス生まれのユマニチュードという認知症ケアの手法があるのですけれども、見る、話す、触れる、立つという4つのコンポーネントからなっているのですが、それをふだんこういった形で、研修で教えられているのですけれども、実際にそのケアがどのぐらい正しくできているかということを、動画解析、あるいはディープラーニングを使いながら評価してあげる。さらに、その技術を身につけるために人工知能をどういうふうに活用していくのかみたいなことを日々取り組んでおります。

 どういうことかというと、これは「クローズアップ現代」でも以前放送された動画ですが、左は見る、話す、触れるというのが、ベテランのケアの方はかなりできているのです。右のほうは、見る、話す、触れるというのが余りできていなくて介護拒否されている状態で、こういったものをまさに動画で解析することができるようになりまして、介護の世界における働き方のエビデンスみたいなものがとれるようになりました。

 これは、実際に論文になっている内容ですけれども、英語の内容でちょっとわかりにくいのですが、解説させていただきますと、コンベンショナルケアと書いてあるのが既存のケア手法です。ユマニチュードケアと書いてあるのが、先ほど申し上げましたフランス生まれの認知症ケアの手法です。1、2、3がそれぞれ人で、トータルケア・タイムというのが1回のケアのセッション、例えばおむつをかえるのに5分かかるとすると、秒単位に書かれておりますので、コンベンショナルケアの1番の人は300という数字で書かれているわけです。

 アイコンタクト、バーバルコミュニケーション、タッチ、見る、話す、触れるで、コンベンショナルケアのほうは、1回のケアの時間の中で、見る、話す、触れるができている時間の割合が非常に少ないのですが、ユマニチュードのケアのほうは、それができている割合が非常に多いということです。その結果、赤枠のアグレッシブビヘイビア、先ほどおばあちゃんが嫌だと言っていた部分が、コンベンショナルケア、既存のケアの手法のほうはいっぱい出るのですが、ユマニチュードのケアのほうは余り出なくなっていまして、介護が拒否されていたものが全部受容してもらえるようになることがわかってきております。

 例えば、ケアの世界で、山本さんというおじいちゃんに「これからおむつをかえます」と言うと、「うん」と言ってくださっているのですが、この距離で「おむつをかえます」と言っても認知してもらえないのです。実際に認知してもらおうとすると、どのぐらいの距離にならなければいけないかというと、このぐらいの距離、20cm以内に近づいて始めて、ケアしてもらえることに気づくわけです。

 そうしないと、こっち側はケアをすると思っているのですけれども、おじいちゃん側はケアをされることがわかっていないので、気づいた瞬間におじいちゃんは下着を脱がされているわけです。ということで介護拒否が起きるというメカニズムなのですが、20cm以内に近づいてアプローチすることによって、介護拒否が起きにくくなるといった工夫が達人のケアにおいてはたくさんされているのですけれども、実際にどういった部分が本当にきいているのかがわからなかった部分に、人工知能の研究者が立ち上がりまして、きちんと動画を通じて測定できるようになって、ケアの世界の働き方が改革されていっているという事例があります。

 これは、福岡で高島市長が「健寿社会」モデルをつくる100のアクションのうちの一つに、先ほどのユマニチュードを使ったエビデンスベースドケアを003番のアクションに入れていただきまして、いろいろな実証実験をしています。例えば、被介護者におきましては、認知症の症状は大きく2個に分解できます。1個が中核症状という、脳の機能自体が低下することでして、もう一つは介護拒否のような適応障害がどのぐらい出ているかという行動・心理症状というものです。一般の御家庭の方100人ぐらいに対しまして2時間だけ研修させていただいて、1カ月後の効果を測定したところ、行動・心理症状が20%低下しているということで、介護拒否が非常に減りつつ、認知症の状態も緩和しているような形になっている。

 あるいは、まさにここが働き方と非常に関係するわけですけれども、介護者の方の介護者負担感、達人のケアのテクニックをいろいろ使うので、負担が一見ふえるかのように感じるのですが、実際にどういうケアをしたときに介護拒否が起きるのか、起こらないのかというメカニズムを理解しながらケアできるということと、それから、実際に介護拒否自体が減るので、それによってバーンアウトが減っていくということで、評価したところ、28%低下ということがわかってきております。この介護者負担感が減っていく中で、施設の中で働く人の離職率、介護離職が減っていくと考えると、結構なインパクトがあるのではないかと思います。

 日本では、大手の施設さんですと、年間数千人の新規採用をしていたりするわけです。一方で、1年以内の離職率が30%から40%ぐらいと言われておりまして、外部人事の採用コストは1人当たり数十万円かかっているので、施設によっては結構払っている。というところと、実際に働いている人自体の介護者負担感も非常に高くて離職につながっているということ自体が、実はAIを活用して動画を解析することによって介護者負担が減少していきまして、働いている人も楽しく働ける。それから、離職率が減っていくことによって、施設側も外部人事のコストが減っていくという経営上のメリットも生まれていくことが、AIを使って実現でき始めているということが事例として起き始めております。

 進んでいる施設は、介護者負担感が減っていくだけではなくて、きょう、このかわいいおばあちゃんを誰がお風呂に入れるのかで、けんかになるみたいなことまで起きることもあります。もちろん、仕事ですので、全てが全て楽しいわけではないのですけれども、働くことが楽しいみたいな部分にもつながることも生まれていくということが起き始めておりまして、最終的には介護者負担感が減っていくだけではなくて、ケアの仕事が部分的には楽しいところもたくさんあるということで、労働市場における介護者の方の総供給量がふえるみたいなこともPDCAとして回っていく可能性があるのではないかと思っておりまして、このような実験を進めております。

 そうしますと、1段階目でいろいろなものがエビデンスベースドになっていくのですが、次の世界でAIを活用して考えられるものの一つがAIコーチングという概念でして、例えばケアの達人の能力を、動画を通じて人工知能が学習して、それをケアの初心者の人にどういうふうに教えてあげるのかという研究も進んでおります。

 ちょっとわかりやすくするために、最初にゴルフの事例で御説明させていただいて、その後、ケアの話に入っていければと思います。まず、ゴルフのローパフォーマーの人に動画を送っていただくことから始まります。今、「うん」という声が聞こえまして、いかにもローパフォーマーみたいですが、ここにゴルフのハイパフォーマーの人から赤ペンを入れていただきます。そうすると、このような動画になりまして、こういった形でどんどん赤ペンを入れていただきます。

 この知識と同時に、人工知能が大量のゴルフの動画を学習しまして、1週間ぐらいたつとゴルフのヘッドの位置がどこという物体検知がおおよそできるようになりますが、2つの知識を総合しますと、ゴルフのスイングに対して点数が入れられるようになって、2つの人工知能のアルゴリズムがありまして、71点と75点で平均が73点です。この人があと27点うまくなるためには何をしなければいけないかみたいなことを人工知能で指導することができると、AIコーチングとしてAIを通じてゴルフがうまくなっていく。

 将棋の世界では、藤井4段は実はふだんAIでトレーニングしていまして、それで実際に将棋で戦って29連勝したのですが、今、将棋の世界では藤井4段よりも若い世代がみんなAIでトレーニングしているらしいです。ということは、各産業領域の中で1人、AIコーチングで際立った成果を出す人が生まれていくと、後に続く後任の若い人たちもどんどんAIでトレーニングしていくようになるというのが、今後、将棋以外の世界でも起こっていくのではないかと思います。

 これをケアの世界で使いますと、こういったケアのロールプレイングの動画に対して、インストラクターの人がどんどん赤ペンを入れていくことができます。先ほど申し上げたとおり、この距離でアプローチして認知症の方にお話をすると、距離が遠いという赤ペンが入れられる。ということを人工知能がどんどん学習していって、自動的にもっと近づいたほうがいいですよということを教えられるようになる技術が研究としても始まっています。

 さらに、これは文科省のJSTCRESTの研究資金で京都大学の中澤先生と一緒に共同研究させていただいている内容です。さらに、センサー等のデバイスを使っていきますと、もっと簡単に計測できる可能性がありまして、例えば視線の距離のアプローチみたいなところも、ウエアラブルのグラスにカメラをつけることによって自動的に測定することができます。今は30cmぐらいなので、例えば20cmぐらいが適切だとすると、あと20cm近づいてケアしたほうが介護拒否はなくなります。あるいは、介護者負担感がなくなりますみたいなことをAIが教えることができるようになり始めています。

 今、介護施設ではいろいろとPoCをやっていたりするのですが、同時にもう少しマクロな視点で見たときに、どういうメカニズムが起きるのかと申し上げますと、例えば介護費・医療費の予測みたいなことがあります。それこそ私自身が前職、リクルートのAI研究所にいたときにさまざまな予測をやると、採用候補者の方が入社する前に、その人が5年後の給料は幾らぐらいになるのかみたいなことが人工知能で予測できるということがHR-Techの現場で起き始めているのですが、介護の世界でも、私が将来、幾らぐらい医療費が必要で、幾らぐらい介護費が必要なのかという統計的な予測ができるようになります。

 そうすると、今までマクロにざっくり自治体の介護費を予測していた部分が、個人一人一人に対して積み上げで予測できるようになるので、特定の医療費・介護費がかかる人たちに対して、先ほどのようなケアをやっていったときに認知症の行動・心理症状が低減した結果として、介護費に対して幾らのインパクトがあるのかということがビッグデータで全部つながって回せるようになるわけです。

 そう考えると、先ほど20cmでやっていたケアの世界と、20kmぐらいの距離の自治体の介護費のミクロ、マクロの世界のPDCAがデータでつながって、全部回せるようになりますので、経済学自体の考え方もディープラーニングみたいなものを通じて少しずつ変わっていくことが、今後の社会で予見されるのではないかと思っておりまして、労働経済学、社会科学におけるAIの活用がこういったところにインパクトがあるのではないかことで、第2回のときにお話させていただいた部分の各論の事例がこういう形になっていくわけでございます。

 そうしますと、例えば認知症の方に先ほどのユマニチュードのケアをして、行動・心理症状が減少して介護度を緩和することができると介護費自体が下がっていく。要介護度4と要介護度5で月額支給額は最大5万円ぐらい下がりますので、12カ月ですと60万円。亡くなる前の3年間、要介護度4で終わるか、5で終わるかがずれたとすると180万円ぐらいのインパクトがあるわけです。

 福岡でユマニチュードの研修を1回実施するのにかかったコストは1.5万円ですが、例えば1.5万円使った場合に社会保障費として180万円戻ってくるというPDCAが今後回せる可能性があるかなと思っておりまして、インパクトボンドのようなものを活用しながら、こういったことがAIで回せるようになっていくと、個人のミクロの働き方の部分からマクロの社会保障費までが一気につながって、いろいろな解析ができるのではないかと思っています。

 これを一般化したものが、ほかの領域でもいろいろ使えるのではないかということで、いろいろな実験をしています。先ほどのAIコーチングの概念、第1回のときにも少しお話させていただいたのですが、仕事というのはジョブとタスクという概念がありまして、ジョブのうちのタスクの8割ぐらいをAIがやってくれると考えたときに、10個中8個をとられたので、AIによって雇用が奪われているという考え方もあれば、今まで10個のタスクがこなせないとこの仕事につけなかったのが、2個のタスクだけこなせればこの仕事につけるようになるわけです。

 そこの部分のジャストインタイム・エデュケーションをどうするかということで、先ほどのAIコーチングみたいなものを活用することによって、実は雇用機会自体もふやしていくことができるのではないかなと考えております。

 加えて、HR Techの現場で、介入によるAIコーチングだけではなくて、人事の現場で最近分析されているツールにどんな形のものがあるかということをデモで少し御紹介できればと思っております。例えば、採用のケースが一番わかりやすいので、サンプルのデモデータを御用意しておりますので、見ていただければと思います。左側に採用候補者の方がいます。その人の属性ですね。それこそリクルートがやっているSPIのようなアセスメントのデータがありまして、最終の合否がここにあります。こういったデータは人事の現場にはたくさんあるのですが、こういったものを人工知能で解析するというのが、去年ぐらいから人事の現場で非常にふえてきております。

 今、やらせていただいたのは、先ほどのエクセルのデータをHR君という弊社でつくっているツールにドラッグ・アンド・ドロップさせていただいた形になっておりまして、データの読み込みを行っております。5秒ぐらいかかります。そうすると、先ほどのエクセルのデータが読み込み終わりました。これを人工知能で学習していくのですが、普通ですといろいろなアルゴリズムがありますみたいな話ですが、今、人工知能を活用するのは非常に簡単になってきておりまして、ここにHR君1号というアルゴリズムがあるので、何も考えずに先ほどのシートを選んでいただきます。

 そうすると、一番右側の属性に対して何がきいているかということを勝手に予測してくれる形になっておりますので、何がきいているか予測しましょうということで、OKボタンを押すだけです。そうしますと分析が回りますので、あとは人工知能が解析してくれている内容を待つだけになります。5秒ぐらいかかりますので、お手元にあるお水とかをこのタイミングで飲んでいただければと思います。

 そうすると、先ほどの最終合否にきいている属性が上から順番にランキングで並んでおりまして、このデータの場合、一番上がSPIの言語得点、国語の点数が一番きいていたことがわかっておりまして、平均が50点ぐらいで、ここがボリュームゾーン。青が候補者の人が何人いたかという度数になっていますが、赤が合格率です。そうすると、この辺は足切りですみたいなことがわかるのです。ここは縁故採用みたいな人がいますということがすぐわかってしまうわけです。合格率がどんどん上がっていくのですけれども、途中で落ちていきます。

 実際、この会社にヒアリングしたところ、営業が新卒の採用の面接を主にやっているのですが、小賢しい人が嫌いなので、ここの点数が高いやつは結構落とされ始めていたということがわかったりということで、こういったことが一目瞭然でわかるような時代になり始めてきています。

 さらに、分析だけではなくて予測も簡単にできるようになっておりまして、例えば2016年の新卒採用のデータで、2017年のデータがありまして、最終合否がないところに対して、このデータをドラッグ・アンド・ドロップしますと、17年のデータを読み込んでいきます。16年で学習した内容をもとに、17年の合否に対して参考値を人工知能が返してくれるというメカニズムがあります。今、データの読み込みが終わりましたので、ここで予測実行をしていきますということで、あとはOKボタンを押しますと、15秒ぐらいで合否の結果を出してくれます。

 ここで出てきた合否の結果の運用方法自体は、企業様の御判断になると考えておりまして、本当に流動性が高くて出入りが多い会社様ですと、人工知能の合否で全部決めてしまうという会社様もあれば、比較的人数が多くて長期雇用の会社様の場合に、1次の書類審査の一部だけ人工知能をうまく活用していきましょうという形で活用される会社様もあるという形で、使い方はそれぞれさまざまなのかなと思っております。

 今、採用の話をしたのですが、HR Techの世界は人工知能の現場から見ると比較的シンプルな世界でして、究極的には従業員IDにひもづいていろいろなデータがあるわけです。応募のタイミングから内定を予測するみたいなことが先ほどのデモだったわけですが、例えば応募から配属ぐらいまでを全てデータをとりまして、配属した後の1年後の人事評価が何点ぐらいになりそうかみたいなことを事前に予測すると、今度は配属自体の最適化ができるという話になっていくわけでして、人工知能側からすると、こういったデータを解析していくと汎用的にアプローチすることができるというところが、HR Techの現状となっておりまして、これから人事の現場での利活用もどんどんふえていくところが予見される形でございます。

 そうなってきますと、いろいろな活用方法ができまして、例えばハイパフォーマーだということがわかった方を採用したり、あるいは配置すればいいのですが、ミドルとローの人をどうしていこうかということで悩んだときに、先ほどのAIコーチングですとか、休職しそうな人のメンタルヘルスのいろいろなアラートを、人工知能を用いて出すことができます。そういったところに関しまして、遠隔医療でカウンセラーの方あるいは産業医の先生方とチャットで相談できるアプリとの連携もしておりまして、人工知能が事前に予測してくれた内容をベースに、ハイパフォーマーから休職されそうな方まで適切に介入していってPDCAを回していくことが実現できそうなことも、HR Techの現場で起きていたりします。

 ということで、ざっとした紹介だったのですけれども、こういったことが現在、働き方改革自体に人工知能をどういうふうに活用していこうかみたいなことで、現場で活用されている内容の御報告となりました。

○守島部会長 ありがとうございました。

 それでは、質疑応答に入りたいと思います。ただいまの御説明について、御質問のある方は、どうぞ挙手を願います。

 はい。

○後藤委員 ありがとうございます。後藤です。

 大変貴重な御説明ありがとうございました。1点質問ですが、AI等が進化すると仕事が奪われてしまうという議論にどうしてもなりがちですが、先ほどの話を総合的に受け取ると、AIの進化は、現時点ではどちらかというと今の仕事に対してサポートしてくれるといいますか、今の働き方に対するサポートツールのような形で受け取る面のほうが多いと理解していてよろしいのでしょうか。

○石山委員 現時点では、そういった側面が非常に強いのではないかと考えております。

○後藤委員 ありがとうございます。

○守島部会長 では、御手洗委員。

○御手洗委員 貴重なお話をどうもありがとうございました。

AIコーチングの部分について質問なのですけれども、先ほどジョブとタスクに分解して考えた際に、例えばジョブの8割がAIによって代替された際、残りの2割が人間の仕事になって、そこはジャストインタイム・エデュケーションでAIコーチングしていくというお話があったかと思いますけれども、私は先ほどのAIコーチングのお話を伺っていると、あれは人間の行動を画一化させていくようなものなのかなと感じました。まず1点目、それについてはそういうことなのでしょうか。

○石山委員 ここは学習のさせ方がいろいろなパターンがあると思っておりまして、まさに今、御手洗さんにお話しいただいた質問の論点は、よく出る質問集ベスト5のうちの1つみたいな形になっています。結論としましては、何をモデルとするのかというところは、それぞれの現場で決めていく必要があるなと思っております。それは、例えば人工知能がない世界の中でマニュアルがあって画一化されていた世界が、逆に実は実際に動画解析を通じて分析してみると、働き方というのはもっとユニークで、ちょっと大げさですけれども、16パターンぐらいありますということがわかるかもしれない。

 それによって、今まで画一的なマニュアルでこれをやってくださいという話だったのですが、あなたはこの16パターンあるうちの、このパターンで成長していくともしかしたらいいかもしれないですねみたいなことを学習することができるというのが、まず論点として1つありそうだなと思っています。なので、結論としては、画一化して運用するか、画一化されないような、もっと多様性を含んだ働き方を目指していきたいかというところは、1段階上位概念で人間が決めていくことになるのかなと思っております。

 もう一つが、これは第4次産業革命全般に出てくるのですけれども、データドリブンで既存の教師データで学習していくと、局所最適解にロックインしていくみたいな話があったりするわけです。それを超えていくためには、まさに新しい教師データをどういうエコシステムの中で獲得していくのかみたいなことが非常に有用でして、それこそある程度のマニュアルとか型が決まっている中でも、働き方の中でのイノベーションが生まれるような機構をどういうふうに人事制度として残していくのかということによって、新しいデータを獲得していくということも非常に重要ですし、それこそ、今、人工知能の世界で上流の工程でデザインシンキングみたいなアプローチがよく使われるわけです。

 例えば、ウェブサイトのデザインをするために、ウェブサイトのデザイナーの人がホテルのコンシェルジュの人にヒアリングを行ったりすることがあるわけです。ということで、自分たちの業界ではない領域のデータをうまく学習することによって、さらに進化を遂げていくみたいなことも、運用しようと思ったら運用できるわけです。そういった中で、結局、人間がどういうふうに運用していくかによって、画一化するかというのは決まっていくのではないかなと思っております。

○御手洗委員 ありがとうございます。

 今、画一化するか、例えば16パターンみたいに多様化するかと言われましたけれども、私は16パターンが多様だとはとても思えず、本来、画一化しなければいけないとか、そろえなければいけないとか、人間の個性に関係ないところをAIやロボットがだんだんやってくれるようになって、人間は人間らしく、その人らしくいればよくなるという方向だと、すごく素敵だなと思うのです。

 例えば、私たちがお店に行ったときに、マニュアルで言われる「ありがとうございました」と心から言われる「ありがとうございました」はすぐわかりますし、マニュアルの笑顔なのか、本当の笑顔なのかわかりますし、そういうマニュアル化されていくようなものはAIが引き受けて、そうではない、より人間の個性が生きるような働き方に分かれていくということは、現時点では余り考えられないのでしょうか。

○石山委員 あると思っておりまして、これがまさに先ほどから何回も申しているのですが、人間が決めることだと思っています。それこそ、お茶の世界で「守破離」みたいなものがありますけれども、いきなり「離」でいくか、「守」でいくかという意思決定の問題だと思っております。それは現場を見てみないとわからないところがたくさんありまして、それこそ接客の現場でもバーンアウトしている会社さんは、めちゃめちゃいっぱいあるわけです。

 そこの従業員の方に対して、今の段階でバーンアウトしそうな人に対して、あなたの個性を重視しますか、それとも、まずは型化されたものを習得していって、自分自身が楽しく働けるような世界観を目指しますかみたいなところの機会が提供できること自体も大切だなと思っておりまして、そこは運用の仕方で決まってくるのかなと思っております。

○御手洗委員 ありがとうございました。

○守島部会長 ほかにいかがですか。

 武田委員。

○武田委員 貴重なプレゼンをどうもありがとうございます。

 御手洗委員とほぼ同じような意見になりますが、私もジョブとタスクという話はそう思います。あたかもAIで全ての仕事が失われてしまうという議論に対しては、以前から違和感を抱く一方で、タスクの中身をシフトしなければいけないという現実はございます。そのタスクが何割なのかという分析は弊社でも行っていたりしますが、どなたがやってもおおむね同じという単純なタスクがAIにとってかわられるとしても、右側にある部分については、AIなどでコーチングできない部分になってくるのではないかと思います。

 つまり、人の感性とか創造力、交渉力、あるいは人間力なのかもしれませんが、そういった部分はAIコーチングでは学べない。だからこそ、教育のあり方という観点では、創造力とか感性とか人間力、あるいは交渉力や説得力といった点を今後重視していかなければいけない時代になってきているのではないかと考えています。

 実際、米国のO NET を用いて、近年求められるスキルへどのような変化があったのか分析してみますと、今、申し上げたようなスキルへのニーズは高まっています。つまり、そうしたスキルはテクノロジーでは代替できないのではないかと、弊社では分析しております。

 意見として述べさせていただきました。ありがとうございます。

○守島部会長 では。

○石山委員 まさに職種によって、この黄色と赤のバランスは非常に変わってくると思っていまして、例えばケアの世界ですと、黄色の領域は少ないわけです。というのは、まさに職種ごとにあるなと思っておりまして、武田委員の分析レポートなどもぜひ拝見させていただければと思いました。

○守島部会長 ありがとうございました。

 ほかに。

 では、私が1つ。HR Techの部分で、人の合否を決める、予測が出たときに、その予測をどういうふうに使うかというのは、1つ上のレベルの意思決定だという話をしていただいたのですけれども、そこまでもいずれはAI的なものが入ってくるのですか。

○石山委員 そこの1段上にAIが入ってくること自体は、私のほうではないのではないかと実際は思っています。

○守島部会長 それは、将来ずっと先を見てもですか。

○石山委員 そのように思っております。ゴール設定は人がすべきものだと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。

 岩村委員。

○岩村委員 ちょっと話題の本質から外れるので申しわけないのですが、先ほどHR Techで御説明いただいて、例えば従業員の働き方の評価の問題についても、予測の問題もあるでしょうし、現実に過去を振り返っての評価というものも行えるようになるし、現に行っているのかもしれませんが、そのときに、評価は別として、出てきた結果が適正なものであるかどうかというチェックというのは、一体誰がやるのだろうというのがちょっと気になっていまして、そこのところはいかがでしょうか。

 先ほどのものを見ていると、ほとんどブラックボックス状態で、AIが計算して出てきます、こうですということになるのですが、それが適正な結果であるかどうかということの検証といったものはどういうふうにするのかというのがちょっと気になったもので、お伺いさせていただければと思います。

○石山委員 かしこまりました。

 2つありまして、今は比較的人事評価が明確で、それにのっとって評価していきたいという会社様と、実は自分たちの会社の人事評価がどうなっているか、ぶっちゃけよくわかっていないということで、合格してきた、あるいは登用した人たちから逆引きで、どういう変数が重要視されていたのかを改めて分析してみたいという会社さんもあったりするのですね。それこそ、厚労省の中で誰が登用されてきたのかということはわからないという話だと思いますけれども、みたいなものを改めて分析してみたいというたぐいのものです。例えば銀行さんとか、パフォーマンスが出ていればピュアに出世するという会社でない場合に、よりそういった要素が多かったりするのです。

 人事自体もローテーションで回っていたりすることがあって、人事の方にとっても結構ブラックボックスみたいな話がありますので、半分以上のニーズは、今まで、その会社として人事評価してきた内容が、現段階において結構ブラックボックスなので、逆引きで、登用してきた人がどういう属性だったのかというのを可視化したいというニーズが結構あったりします。こっちは、逆に今までブラックボックスだったものがホワイトボックス化されているという事例の活用の仕方なのかなと思います。

 もう一つは、既存の評価軸に従って、それを人工知能に学習させていきながら自動的に判定していくみたいな話なのですけれども、ブラックボックスかというと、先ほどの統計上のランキングみたいなものは出て行くので、そこでどのようにレスポンシビリティ、説明責任を果たしていくのかということが重要なのかなと思いまして、いわゆる因果ではなくて相関という形になりますので、それを実際にどういうふうに言語化しながら、どういう解釈で自分たちがやってきたのかみたいなことを説明する能力は人間に求められるのかなと思っています。

○岩村委員 ありがとうございました。

○守島部会長 ありがとうございました。

 ほかに。よろしいですか。

 それでは、石山委員のお話はこれで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

 続きまして、山本様にお話をいただきたいと思います。準備ができ次第、よろしくお願いいたします。

○山本氏 労働政策研究・研修機構(JILPT)の山本でございます。本日は、このような機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、JILPTでは日本とドイツの労働法の研究をしております。その関係で、私は、今日のこちらの部会の「技術革新の動向と労働への影響等について」というテーマで、ドイツでは一体どのような議論がされているのかということについて御説明をさせていただきたいと思います。

 まさに、今、石山先生からもお話がありましたように、AI等の新しいテクノロジーが雇用社会に対して一体どういう影響を及ぼすのかという問題は、法学を専攻している私にとっては未来予測的な問題でありまして、よくわかっていないという点も多々あるのですが、未来に備えて、あり得る労働政策としてのオプションを考えていくということは非常に大事であろうと考えているところでございます。それでは、諸外国に目を向けたときには、各国では一体どういう議論がされているのかということで、ヨーロッパのなかでもドイツの議論の動向を最近は勉強しているところであります。

 なぜドイツかといいますと、ご承知の通り、第4次産業革命というのはドイツ発信の言葉でありまして、ドイツにおいては、2011年以降、政府の旗振りで、特に製造業を念頭に置きまして、AIIoT、ビッグデータなどの新しいテクノロジーを生産プロセスの全過程にわたって徹底的に活用して、生産性を飛躍的に向上させようという取り組みがなされております。これがいわゆるIndustrie4.0と呼ばれるものでありまして、日本語ではこれを第4次産業革命と呼んでいるわけであります。ただ、ドイツにおいては、この議論を管轄しているのは、日本で言うところの文科省と経産省でありまして、雇用・労働分野に一体どういう影響があるのかという点については、従来、必ずしも十分な議論がなされる状況にはありませんでした。

 そこで、雇用・労働分野に一体どういう影響があるのかという問題に関する議論を補充する目的で、日本で言うところの厚労省、ドイツの連邦労働・社会省が主導して労働4.0、ドイツ語でArbeiten4.0という取り組みを2015年から開始してきたところであります。すなわち、連邦労働・社会省は、2015年4月に、まず議論のたたき台となるグリーンペーパーを公表しまして、その後、このペーパーに基づいて独自に調査研究を実施しながら、そのほかにも外部の研究者あるいは労働組合、経営者団体、さらにはSNS等を通じて一般市民からも意見集約を行うというプロセスを実施まいりました。これが、向こうでは対話プロセスと呼ばれているものであります。

 そして、こういったプロセスを経て、201611月にこの労働4.0の白書が取りまとめられ、公表されたところであります。私のほうからは、まずはこの白書を軸にドイツにおける議論の概況をお話させていただきたいと思います。

 それではまず、この白書の概要を、目次から簡単に確認しておきたいと思います。

 まず、第1章においては、今後、ドイツの雇用社会に対して変化をもたらし得る原動力が示されております。なかでも一番中心であるのは、第1節で検討されているデジタライゼーション、デジタル化と呼ばれるものであります。

 次に、第2章では、そういった変化によって、雇用・労働分野にどういったメリットおよびデメリットが生じるのかということが検討されています。

 さらに、第3章では、デジタル化の中での良質な雇用、良質な雇用という言葉をドイツ語ではGute arbeitと言いまして、概念としてはILOが言うディーセントワークとおおむねイコールであると理解していただいて結構でありますが、かかる意味での良質な雇用というのは、デジタル化していく雇用社会の中ではどういったものであるべきなのかということについての、いわば総論的な検討がこの第3章ではされております。

 そして、続く第4章では、第3章でみたデジタル化の中での良質な雇用というものを実現するための政策オプションとしては、一体どんなものがあり得るのかということについての、いわば各論的な検討が行われていて、最後、第5章ではまとめが行われているということであります。

 この白書は、全部で200ページ以上に及ぶ非常に大部なものでありまして、本日は詳細に紹介している時間はございませんので、ここでは第4章で一体どのような検討がなされているかということを中心にお話をさせていただきたいと思います。

 この点、第4章ではまず、この労働4.0という文脈の中で、職業教育訓練政策の分野において取り組みが必要であるということが言われております。ここでの問題意識は何かというと、先ほど来言われていますように、AIあるいはロボット等の機械の活用によって、人間の仕事がどれだけ奪われるのかということが根本的な問題意識となっております。

 有名なフレイ・オズボーンの研究によると、ドイツでも42%の仕事が自動化し得るという結果が出ているわけでありますが、今回の白書によると、デジタル化というものを促進していくことによって、ドイツにおいては、雇用は減るのではなくて、むしろ増えるのだと。すなわち、2030年までに25万の新たな労働ポスト、新たな雇用が生まれるといった予測が示されております。

 ただ、問題は増加の仕方でありまして、白書によると、一方では確かに、雇用が減る産業分野もある。例えば、小売であったり、製紙・印刷業あるいは行政サービスといった分野では、75万の雇用が失われると予測されております。しかし他方では、機械製造、ITサービス、研究開発等の分野においては100万の新しい雇用が生まれるということで、差し引きして25万の新しい労働ポストが生まれるといった予想が示されております。

 そうすると、問題として出てくるのは、いわゆる雇用の二極化でありまして、今ある雇用全体のなかで、中間層が収縮して、人間が従事する仕事というのが、一方において非常にハイスペック、ハイクラスの仕事と、他方において、そんなにクオリフィケーションは高くないけれども、人間がやるべき仕事、ドイツでは、典型例として介護の仕事が例に出されておりますが、そういった形で雇用が二極化していくことが懸念されております。ただ、いま現にドイツで雇用の二極化が生じているかというと、そういった動きはまだないようでありますが、将来においてはそういったことが生じる可能性があるといった懸念が示されているわけです。

 そうすると、一体どういうことが政策課題になるかというと、デジタル化時代においても、全ての個々人について、いわゆるエイプロイアビリティ、就業能力と言ったらいいのでしょうか。こういうものを一生涯にわたって確保していく必要があるといったことが政策目標になるとされております。

 そして、そのための政策として、具体的にどういうことをやるべきかというと、2つ提示されております。

 まず、➀ですが、ここで注目されているのは、企業外の職業教育訓練システムにおける継続的職業教育訓練というものであります。ドイツでは、職業教育訓練は企業内でももちろん行われますが、企業外での職業訓練システムもあって、そこでは継続的な職業教育訓練、すなわち既に仕事に就いている人に対してさらなるスキルアップを目指して提供される職業教育訓練のシステムも従来から存在しております。そして、かかる継続的職業教育訓練のシステムを前提に、今後は国レベルで、デジタル化時代において、一体どういった職業能力や資格が必要とされるのかを検討し、デジタル化時代に対応できるような継続的職業教育訓練のプログラムをできちんと策定しようということが、まず1つ言われております。

 もう一つ、➁はアイディアとして面白いのですけれども、失業保険制度の事前予防機能の強化が提案されております。これは一体どういうことを言っているかというと、今、申し上げた企業外での継続的な職業教育訓練を受けるためには、もちろんそれに伴って、いろいろなコストというものがかかってくるわけですね。受講費用はもちろんですし、場合によっては訓練を受けている期間中、会社をお休みしないといけないかもしれない。そうすると、その間の生活費であったり、社会保険料であったり、そういったいろいろなコストが生まれてくるわけです。

 そして、ここで提案されている内容というのは、個々人の職業人生全体の中で、そもそも失業に陥ることを予防し、エンプロイアビリティというものを向上させていくことを可能とするために、今後、継続的な職業教育訓練を企業外で受けようというときに生じるコストを、今後は失業保険のほうからカバーしていくという方向性がアイデアとして示されております。このことは、白書の中では、「失業保険から労働のための保険へ」といった標語で示されているところであります。

 12月5日の日経新聞でも報道されておりましたが、日本でも2018年から、AI、ビッグデータ等のIT技術系の講座が雇用保険の専門実践教育訓練給付の対象になるということが既に方向性として決まっているようでありまして、これはまさにここで言われているドイツの政策の方向性と軌を一にするものであろうかと思われるところであります。

 次に、労働時間政策の分野についても、幾つかの提案がされております。ここでの問題意識は何かというと、まさにネットワーク技術の発展、あるいはモバイル機器等の活用によって、代表的にはテレワークでありますが、そういった時間的・場所的に柔軟な働き方というものが今後可能になっていくだろうと。こういった働き方というのは、もちろんワーク・ライフ・バランスやイノベーティブな働き方に資するというのが一方の問題意識としてありますが、他方で、そういった働き方というのは、ややもすると職場と私生活の曖昧化というものが生じる。すなわち、24時間、顧客や使用者から仕事の指示が来るといった事態も生じ得て、そうすると、新たな過重労働の問題が出てくるといったことが問題意識となっております。

 そのうえで、白書の中では、政策目標としまして、働き方に関する自己決定権といいますか、ドイツでは最近よく、時間主権といった言葉が使われているのですが、こういった働く場所・時間に対する柔軟性というのはできるだけ拡大していくべき一方で、過重労働にならないように保護も図っていく必要があるという、いわば両輪が政策目標として掲げられております。

 そして、かかる政策目標との関係で提案されているものの1つとして、労働時間選択法という法律を新たにつくるべきではないかといったことが言われております。これは一体どういう法律案かというと、内容としては2つありまして、1つは、労働者に対して働く時間・場所の柔軟化について使用者と協議を行う権利を与えるということ。また、もう1つとして、ドイツでも現在、法律による労働時間規制がもちろんありまして、1日8時間・1週48時間という上限規制と、11時間の休息時間規制、いわゆるインターバル規制が行われておりますが、こういった現行の労働時間規制というものが、ややもするとイノベーティブな働き方をしようとする人にとっては妨げになっているのではないかという問題意識のもとで、一定の労働者については、現行の労働時間規制からの逸脱、すなわち適用除外を認めるという内容も、この労働時間選択法の中に盛り込まれております。ただ、先ほども申し上げましたように、そういった働き方というのはややもすると過重労働のリスクがあるわけでありますから、要件はかなり厳格に縛られております。

 すなわち、まず、ある職場の一定の労働者について労働時間規制を適用除外するためには、労働組合、特にドイツは産業別の労働組合がありますが、労働組合と、適用除外のための労働協約を結ぶ必要がある。また、これに加えて、ドイツでは各事業所のレベルにおいて、従業員代表機関である事業所委員会、Betriebsratという機関があるのですが、かかる事業所委員会と事業所協定、いわゆる労使協定を締結する必要がある。そしてさらに、対象労働者本人の同意も必要であるといった3段階での縛りがかけられております。白書の中では、この労働時間選択法は、まずは2年間の時限立法として施行した上で、その間に政策効果を測定して、その後も継続していくかどうかを判断するといったことが提案されております。

 続いて、自営的就労の促進と保護政策であります。ここで、問題意識として指摘されているのはいるのは、いわゆるクラウドワークをはじめプラットフォーム・エコノミーというビジネスモデルの登場によって、今後、雇用労働から独立自営業者へ起業、Start-upして、独立自営業者として働くといったことがふえていく可能性があるということであります。ドイツにおいては、こういったスタートアップというのは、社会のイノベーションにとっては非常に重要な原動力であるということで、それ自体としては肯定的に捉えられていて、また、そういった働き方というのは、先ほど見た柔軟な働き方、すなわち働く人の時間主権にも資するといったメリットが一方にはあります。

 しかし他方で、そういった独立自営業者としての働き方というのは、仕事・受注が不安定であったり、社会的なリスク、すなわち病気、けが、失業、高齢化といったものに対する脆弱性というものもある。そういったことで、クラウドワーカーを初めとする独立自営業者という働き方が、今後、新たな貧困の原因となる可能性もあるということも白書の中では併せて指摘されております。

 従って、こういった自営的な働き方を、一方において促進しつつ、他方において保護を図っていくということが政策目標として掲げられておりまして、そのためにここでは促進の政策と保護の政策が、それぞれ検討されております。

 そして、このうちまず、促進の政策として提案されておりますものが、稼得活動個人口座というものを全国民について設置するということであります。これは一体どういうものかというと、今から働いてお金を得ようとする全ての個々人について、この口座というものが設置されて、その人の職業人生全体にわたって、その口座というのは国が管理するわけですね。そして、国からこの個々人の口座に最初に一定額の資金が払い込まれていて、例えば各人が起業しよう、スタートアップしようという場合には、それぞれ自身の口座から資金を引き出して、利用することができるといったものとして構想されております。

 おそらく岩村先生がお詳しいかと存じますが、フランスにおいては、これと似たようなCPAという制度が既に2017年から導入されているようでありまして、そういったものも参考にしたということが白書の中では述べられていたところであります。

 これが促進の政策でありますが、他方、保護の政策も重要でありまして、1つ方向性として挙げられておりますのは、年金政策であります。すなわち、現状、ドイツにおいては、独立自営業者というのは年金保険には任意加入となっております。日本は国民皆年金でありますが、ドイツにおいては、一定の自営業者を除いては、原則は任意加入であります。しかし、先ほど述べたように、今後、独立自営業者の働き方をする人がふえてくるという中では、そういった働き方をする人たちについてもきちんと年金保険に取り込んでいく必要があろうということが、まず1つ提案されております。

 また、もう一つ、これは就業条件の保護ということだろうと思いますが、独立自営業者の中でも、ドイツにおいては、労働者ではないのだけれども、労働者類似の者というカテゴリーがありまして、経済的従属性という要素を満たすと、この労働者類似の者に当てはまるということになるのですが、こういう労働者類似の者に関しては、労働組合に加入して労働協約を結ぶということが可能となっております。これは、現在でも労働協約法12a条にこういったルールが既にあるわけでありまして、連邦労働・社会省としては、今後、独立自営業者に対しては、こういった労働協約法12a条というルールについて情報提供を行っていくことを述べております。

 あと、独立自営業者の中でも、クラウドワーカーに関しては、ドイツも日本と同様に家内労働法がありますけれども、この家内労働法に類似した形での規制を検討することも考えられるということも白書の中では指摘されているところであります。

 なお、先ほど、石山先生のお話にあった、HR領域におけるAIの活用との関係で、今後、個人情報保護の話も非常に大事になっていくのだろうなと思われるところでありますが、済みません、ここは時間の関係上、割愛させていただきたいと思います。

 最後に、集団的労使関係政策というところであります。これまでお話させていただいたところによると、労働時間政策あるいは独立自営業の保護政策の箇所をみても分かるように、いずれもドイツにおける集団的労使関係のシステムを基盤として、制度の提案なり設計なりがなされていることに、皆様お気づきであろうとか思います。そうしますと、その各政策にとってのベースを整備するという意味でも、ドイツにおける集団的労使関係システムを今後より一層維持し、かつ強化していくことが根本的な政策目標として、重要となってまいります。

 ドイツにおける集団的労使関係というのは、二元的労使関係システムと言われておりまして、先ほども少し申し上げましたが、各産業分野のレベルにおいて、産別単位で組織された労働組合と使用者団体が団体交渉を行って労働協約を結ぶという営みが1つあります。これが労働協約システムと呼ばれるものです。

 一方、各企業の中の事業所においても、その事業所で働く全従業員の選挙で選ばれた従業員代表機関、これを事業所委員会と言いますが、この事業所委員会と、その企業主たる使用者が共同決定という形で労使協定・事業所協定を結んでいくという営みもあるわけでありまして、これが事業所内共同決定システムと呼ばれるものであります。

 このように、ドイツにおいては産業と事業所という2つのレベルにおいて集団的労使関係が展開されているわけでありますが、今後は、いずれについても強化していく必要がある。すなわち、まず産業レベルの労働協約システムに関して言うと、可能な限り多くの労働者と企業が労働組合・使用者団体に入って、それによってできるだけ多くの労働者と企業が労働協約、とりわけ産別協約によってカバーされているという状況をつくり出していく必要があるということが言われております。

 このために一体どういうツールを使って、それを実現していくかというと、1つが、労働協約による法規制からの逸脱規定の活用というものでありまして、これは一体何かというと、法律がある労働条件の水準を規制している場合に、労働協約であれば、それとは異なるルールを柔軟に定めることを認める法規定のことを逸脱規定と言うのですが、こういった規定があると、特に使用者のほうについて、法律が定める水準とは異なる柔軟なルールの適用を受けるために、使用者団体に入って労働協約の適用を受けようというインセンティブとして機能するわけですね。ドイツにおいては、こういった逸脱規定というのは従来から活用されておりまして、最近でも、2016年の労働者派遣法改正のときにそういった規定が活用されております。

 また、もう一つ提案されておりますのは、いわゆる一般的拘束力宣言制度の規制緩和であります。ドイツにおいても、日本と同様、労働協約というものは、労働組合に入っている組合員にしか適用されないのが原則でありますが、一定の要件を満たせば、その協約の適用範囲内にいる非組合員に対しても協約の拘束力が及ぶ一般的拘束力宣言という制度があります。これは、2014年に一度規制緩和されたのですけれども、これをより使いやすいシステムにしていって、それによってできるだけ協約のカバー率を上げていこうといったことが言われております。

 これが労働協約システムに関するものでありますが、次に事業所内共同決定システムについて見ていきますと、こちらについても可能な限り、できるだけ多くの事業所に事業所委員会があるという状況をつくり出していく必要があるとともに、かつ、その事業所委員会がデジタル化による雇用社会の変化にもスムーズに対応できるようにするために、様々な法的なサポートを行っていく必要があるということが言われております。

 そのためにどういった手段でそれを実現するかというと、事業所委員会というのは、先ほど申し上げたように、当該職場における選挙を行って選出するわけでありますが、例えばその選挙手続をより簡易なものにしていこうということであったり、あと法的なサポートというところで言いますと、事業所委員会というのは、職場の様々な労働条件について使用者と共同決定を行うのですが、例えば使用者がその職場に新しいデジタル技術・システムを導入しようというときに、事業所委員会としては、それに関する適切な知見を得て、交渉して取り決めを行うということができるようになる必要があるわけです。そのために、その問題に詳しい外部の専門家を呼んで、きちんと話をしてもらえる。それによって、適切な知見を得るといったことができるような権利を事業所委員会に与えていこうといったことも提案されております。

 以上が今回の白書の概要であります。

なお、201611月にこの白書が出されて以降、労使団体のナショナルセンター、すなわち労働組合側についてはドイツ労働総同盟(DGB)、使用者団体側についてはドイツ使用者団体連合(BDA)、双方がこの白書に対する意見表明のペーパーを出しております。このスライド10にあります表は、これまで見てきた白書が提案している様々な法政策に対するDGBBDAそれぞれの立場からの評価を整理したものでありまして、時間の関係上、詳しくは見ませんけれども、ある程度はっきり、それぞれの立場からの評価が分かれているということがおわかりいただけようかと思います。特に、全体的に見て、労働組合(DGB)側のほうが白書を肯定的に評価しているという点が特徴的と言えようかと思われるところであります。

 そろそろ時間が迫ってまいりましたが、最後に、このホワイトペーパーが出されて以降の関係機関・団体における取り組みというものを幾つか紹介して終わりにしたいと思います。

 まず、1つは、Fair Crowd Workという取り組みでありまして、これはドイツで一番大きい産別組合であるIG Metallという金属産業の組合がやっている取り組みです。このIG Metallが、他のヨーロッパ諸国、例えばデンマークとかスウェーデンとかオーストリアといったところの労働組合と共同で、クラウドワークのプラットフォームを評価するというサイトを立ち上げております。これは、クラウドワーカーに対するアンケート調査をベースにしたもので、複数の観点から各プラットフォームを利用した場合の就業条件等について評価を行っているわけです。これは、いわば評判のメカニズムを使ってクラウドワーカーを保護しようという取り組みの一つであると言えようかと思います。

 また、もう一つは、ドイツを拠点にしているいくつかのプラットフォームの運営事業者があるのですけれども、その運営事業者がお互いにCode of Conduct、行動指針・行為指針と言えばいいのですかね。内容としては自主規制なのですけれども、そういったものを策定しておりまして、IG MetallはこのCode of Conductの策定過程にずっと関与するという取り組みも行っております。

 ただ、これは従来は、あくまで拘束力のない、単なる自主規制にすぎなかったわけでありますけれども、201711月、ちょうど先月にこの指針をきちんとプラットフォーム事業者が守っているのかということを監視するためのオンブズマンが新たに設置されまして、このオンブズマンにもIG Metallは参画しております。もし、この行為指針・行動指針違反があった場合には、このオンブズマンが紛争解決のあっせんを行うことができるということになっております。実は、日本の働き方改革実行計画にも似たような取り組みを今後行うべきだといった記載があるわけですが、ドイツではIG Metallがこれに率先して取り組んでいるということであります。

 次に、未来の労働実験室というものについて御紹介したいのですけれども、これはドイツでフラウンホーファー財団という応用科学研究で有名な財団があるのですが、ここが日本で言う文科省から資金提供を受けて、労働組合や使用者団体とも連携しながら、新しいテクノロジーと、それが人間による労働に一体どんな影響を与えるのかということについて研究を行っております。

 その成果の一例が、きょうお配りいただいております資料1−2ですけれども、Future Work Labというタイトルで始まっている資料で、どんな研究成果があるかという例を2つほど紹介しております。このうち後者はいわゆるパワースーツで、これは非常にわかりやすいのですけれども、前者ほうは一体何かというと、組み立て作業場なのですけれども、上にセンサーがついていて、組み立てに使う部品の順番にライトが光って、この部品は、次にここにくっつけるということを示してくれるわけです。もし間違えるとセンサーが感知して、赤いライトで違うよと点滅して教えてくれる。

そして、組み立てが終わったら、それにどれだけ時間がかかったか、改善するには一体どうしたらいいかということを、機械が教えてくれる、フィードバックしてくれるというシステムになるわけです。また、これは、組み立ての説明書のような紙ベースのものが不要になるという点にもメリットがあるものとなっています。というのは、ドイツでは日本と同様、少子高齢化が進んでいて、労働力人口が減っていっているわけでありますが、このシステムを使えば、ドイツ語が苦手な移民の人でも比較的簡単に組み立て作業ができるという点で、かなり注目されているものであります。

 さらに、ちょうど先々月からですが、連邦労働・社会省が事業所内実験スペースの助成金プログラムというものを開始しております。これは一体何かというと、今ご紹介した未来の労働実験室でもいろいろな実験がされているわけですが、各企業の事業所の中でデジタル技術を一体どういうふうに労働プロセスに応用することができるかということについて、実験を行おうとする企業に対しては、3年間を限度に、最大で150万ユーロ、日本円で言うと約2億円の助成金を支払うというプログラムです。そして、各企業で実験スペースをつくって実験してもらい、その成果については連邦労働・社会省のほうにフィードバックしてもらうと。そのうえで、連邦労働・社会省が情報を集約して、それを特に中小企業に向けて情報提供するといったプログラムを実施しているところであります。

 最後に、簡単にまとめておきたいと思います。まず、大前提として、雇用社会のデジタル化が進んでいくということについては、ドイツにおいては政・労・使の間でのコンセンサスが既に形成されております。とりわけ、先ほどの未来の労働実験室であったり、あるいは事業所内実験スペースの助成金プログラム等によって、デジタル技術というものが人間の働き方や雇用社会に一体どういった影響を及ぼすのかということについて、国レベルでも実験・研究、あるいはその情報集約がなされているということは、ドイツの一つの大きな特徴なのかなと思うところであります。

 そして、今回の白書も、全体的に見まして、職場のデジタル化というのは促進すべきものなのだということが大前提としてあって、その上で、しかしデメリットも生じ得るでしょうと。そういったものについては、従来のドイツの雇用・労働あるいは労働法システムの骨格というものは維持した上で、必要であれば従来のシステムの部分的な見直し、あるいは適用範囲の拡大という形での法政策を展開していこうという姿勢が看取できるわけであります。

 こういったところから推察しますに、ドイツにおける従来の雇用・労働あるいは労働法システムというものは、デジタル化という新しい波・変化に対しても、比較的適応力といいますか、アダプタビリティが高い。少なくともそういったふうに白書は考えているように思われるわけであります。それは、二元的労使関係システムであったり、企業外での職業教育訓練システムであったり、そういったドイツにおける伝統的なシステムがそこには寄与しているのでありましょう。

 そうしますと、ドイツとは大きく異なる形で雇用・労働法システム、特に正社員中心の雇用システムというものを展開させてきた日本というのは、一体どういうふうにデジタル化というものに対してアダプトしていくのかということが、まさに今後、こちらの部会で議論されていくことなのかなと思います。むろん、ドイツにおける議論や取り組みが、直ちに日本に役立つかというと、そこは慎重に見ていかなければならないところもあります。ただ、モノによっては日本と同じ方向性での政策提案がされているなと思われるものもあるわけでありますが、いずれにせよ、問題状況というものをいわば相対的に見るための一つの材料として、今日、私がご紹介させていただいたところがいささかでもお役に立てれば幸いであります。

 ちなみに、ドイツの今後の展望でありますが、ドイツでは御承知のとおり、9月に連邦議会選挙がありまして、その後、ずっと連立政権のための交渉をやっており、これがまだまとまっておりません。従来のドイツというのは、メルケル率いるキリスト教民主・社会同盟と、それまで最大野党であった社会民主党(SPD)との大連立政権であったのですが、これが今後、引き続き維持されるかどうかといった交渉が現在、行われている最中であります。

 特に、今回の白書というのは、SPD出身のアンドレア・ナーレスという人が連邦労働大臣のときに取りまとめられたものでありまして、もしSPD出身の人が連邦労働大臣になれば、白書の中で提案された内容が今後のドイツの政策の基礎になることが予想されるのかなと思うところでありますが、これもまさに未来予想に他ならないわけでありまして、確定的なことは言えません。これは、今後の動向を見ていく必要があるのかなと思うところであります。

 大変雑駁ではありますが、私のほうからは以上であります。御清聴ありがとうございました。

○守島部会長 山本さん、どうもありがとうございました。

 それでは、質疑応答に入りたいと思います。ただいまの御説明に関して、何か御質問等がある方は挙手をお願いいたします。

 では、古賀さん。

○古賀委員 ありがとうございます。山本さん、大変ありがとうございました。

 山本さんは、ドイツの実態を見てきたのだと思いますけれども、その上で、私見でも結構ですから、3点御質問したいと思います。

 1点目は、これまでも技術革新というのは産業革命以降ずっとあったわけですけれども、現在の技術革新は過去の技術革新と比べてどういった違いがあるのでしょうか。これが質問の1点目です。

 2点目は、ご説明の中でも問題意識として指摘されていたように、今後、進むであろう雇用や働き方が二極化について、日本はどう対応すべきだと考えているのでしょうか。

 3点目は、今回のAI等の技術革新の中では、最後におっしゃられたように、いわゆるシェアリング・エコノミーのような働き方が進んでいくと予測されますが、日本はどのように対応すべきでしょうか。

私見で結構でございますので、お教えいただければありがたいと思います。以上です。

○山本氏 ありがとうございます。

 あくまでドイツとの比較でしか申し上げられないということもありますけれども、一番最初の技術革新が過去のものとどう違うのかということに関しては、私も完全な文系人間なものでありますから、これがこう違うとはっきり言えるかは、ちょっと自信がありません。ドイツでも、先ほどの未来の労働実験室の例にもありましたように、国レベルでも様々な研究が行われておりますけれども、こういった知見を得ながら、今後検討していくべきことだろうと思います。

 一方、雇用の二極化の問題でありますが、これはドイツにおいて、今現在そういった現象が生じているというわけではもちろんないのですけれども、一つの問題意識として提示されていて、それによって、特に企業外での継続的な職業教育訓練システムを活用した形での対応というものが提示されているわけです。

 日本と1点違うのは、先ほども少し御説明しましたように、日本でも雇用保険の教育訓練給付の制度を使って、AIIoT、ビッグデータのような新しい技術に対応できる講座にも補助を出せるようにしようといった政策の方向性があって、これはまさにドイツよりももしかしたら先を行っていると言えるかもしれないなと思うところでありますが、その先をの問題として、そういったAIあるいはIoTの新しい技術を身につけた人についての適切な処遇を一体どういうふうに確立するのかということも、少し考えておく必要があるように思います。

 というのは、これは、恐らくドイツであれば、産別の労使による交渉・話し合いによって対応が行われることになります。御承知のとおり、ドイツはジョブ型、職務給の社会でありますから、新たな職務・ジョブについても賃金等級上の格付というものを労働協約の中できちんと行って、それによって基本賃金が決まっていくといった形で、労働条件決定システムと職業教育訓練の問題がきちんとリンクしている社会となっているわけでありますが、日本においてこの点をどうするのかということは、1つ考えておかなければいけない将来的な課題なのかなと思うところであります。

 他方、シェアリング・エコノミーの問題でありますけれども、日本ではクラウドワーカーとして働いている人というのは、現状では恐らく兼業の人が多いのかなという予測はしますが、いずれにせよ、日本でもそういった働き方をする人もふえていっているだろうと。まさに働き方改革実行計画の中でも、そういった非雇用型のテレワークの人たちについても取り組みが必要であるということが言われているわけです。

 その点では、私はドイツのIG Metallの取り組みというのは、かなり先進的なものであるとの印象を受けましたけれども、そういった取り組みを行うときに、ドイツではクラウドワークのプラットフォームの事業者というのも、ある程度まとまった団体というものがあります。しかし、日本において、クラウドワークの問題について何か交渉して話をするにしても、一体どこの誰をつかまえればいいのかということが、使用者団体と何か物事の取り決めをするという伝統があまりない日本では、その点でなかなか難しい課題があるなというところが感想めいて思うところであります。

十分な回答になっていないかもしれませんが、とりあえず私のほうからは以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。

 では、大竹さん。

○大竹委員 ありがとうございます。大竹です。

 幾つか質問があります。まず、失業予防のため、あるいは失業した人に対応するための訓練という議論がありましたが、例えばITAIの技術者など、高度なものになると相当訓練しないと難しいと思いますが、その期間や難易度についてどのような議論がされているのかというのが1つ目の質問です。

 それから、2つ目は、柔軟な働き方について、働き方にかかわる自己決定を促進するということですが、これも以前にも議論になったと思いますが、その自己決定の能力を高めるような補完的な仕組みというものが何か用意されているのか。自己決定の機会がふえたとしても、特に日本に急に入ってきた場合に、そういう準備ができていない場合に、より悪化するという可能性もあると思いますが、それは何か議論されているのかというのを知りたいと思います。

3つめに、労働者類似の者ということは、日本では、プロ野球の労働組合というのは似たようなものだと思いますが、プロ野球選手は自営業ですね。それは、日本の労働法の中で、既にドイツと同じようにできる体制になっているのかどうか、教えていただければと思います。

 それから、最後に、AIを入れた働き方についての実験的な取り組みについての助成プログラムですけれども、これは科学的に評価できるようなランダム化比較試験のような条件を十分満たしているものに限っているのか、それとも従来型のモデル事業だったらそれにお金をつけるようになっているのかということを、もし御存じでしたら教えていただきたい。

 以上です。

○山本氏 ありがとうございます。

 この白書のなかでは、いくつかの政策オプションが提示されてはいるのですけれども、今後考えられうる政策のざっくりとした枠組みのみが提示されていて、詳細が詰められていないものもが、実は意外と多いのです。特に、先生が2つ目に御質問になった自己決定権を拡大したとしても、労働者がきちんとそれに対応できるのかといったことに関してましては、まだ白書の中ではきちんと詰められておりません。

 1番目の御質問に関しても、比較的それと近いところがあるのですけれども、今後、デジタル化社会の中で、どのような職業能力や資格といったものが必要とされているかということを、スライドの5ページにあるナショナル継続教育訓練会議という国レベルで会議体をつくって、そこでまず話し合っていこうではないかというところまでが、この白書の中で示されている方向性であります。したがって、訓練プログラムの難易度なり期間なりが、どういうものがあるのかということは、まさにこの会議体において議論されることなのであろうと思いますが、恐らくは、決して簡単な訓練プログラムばかりではなく、トレーニングに時間がかかるものも想定されているだろうとは思います。

 と申しますのは、白書の中では、企業外で職業教育訓練を受ける際に、その間については、会社との関係では、訓練休暇のようなものをとることができるといった制度。すなわち、訓練を受けることそのものを保障するだけではなくて、その訓練をきちんと受けられるように周辺環境を整えてあげるといったことも両にらみで考えていく必要があるということが言われておりますので、受講のために一定期間仕事を休む必要があるといったレベルの訓練というのも、白書の中では想定されているように思います。

 3番目のドイツにおける労働者類似の者と日本の労働組合法3条が定める労働者概念が、どの程度共通性があるかというと、単純比較は難しいと思うのですが。ドイツの労働者類似の者というのは、経済的従属性というものが要件となっていて、これは全体収入の中で特定の相手方からの収入が半分を超えているということが1つの基準になっているのですね。そういった形で、まず労働者という概念を柱に据えた場合に、その周辺的なところ、プロ野球選手などもそうかもしれませんが、そういった働き方をする人達についてもある程度拾える概念というものが、日本でもドイツでもそれぞれあるということであろうと思います。

 最後の、事業所内での実験スペースの助成金プログラムでありますけれども、これもきちんと資料として日本語に訳して持ってきたらよかったのですけれども、どんな研究が助成の対象になるのか、また、どんな要件を満たせば、この助成を受けることができるのかという助成の条件を詳細に定めた指針が2017年8月に示されております。時間の関係上、ここでその内容を完全に説明し切ることは難しいかと思われますので、これは何らかの形できちんと翻訳して提示することができればと思いますので、そちらに譲らせていただければと思います。

○守島部会長 では、御手洗さん。

○御手洗委員 プレゼンテーションをありがとうございました。大変勉強になりました。ありがとうございます。

 特に、私は継続的職業訓練のところに関心を持っておりまして、細かいことなのですけれども、質問があるのですが、10ページ目で、労使・団体からの評価のところで、継続的職業訓練に関して、法的請求権が論点になっているかと思います。ここで論点になっている法的請求権というのは、具体的にどのようなことでしょうか。

○山本氏 これは、まさに白書の中で極めて抽象的な形で書かれていたもので、一体どんな請求権として構想されているのか。例えば、先ほど言ったような、そのために仕事を休めるということなのか、あるいは必要な費用を誰かに請求できるというものなのかということまで、きちんと白書の中で示されていないものです。それに対して、抽象的なものではあるけれども、企業としてはとにかくそういったものには反対であるという形で、ポジションペーパーが示されているだけなのです。ですので、具体的なものに関して、何か具体的な反論をしているわけではないということで、この点に関して、それ以上にお答えできなくて申しわけないですけれども、そういうものであるということであります。

○御手洗委員 ありがとうございます。

○守島部会長 ありがとうございました。

 はい。

○川崎委員 済みません、ありがとうございます。非常におもしろいプレゼンテーションで、参考になる部分もたくさんあったのですけれども、2つ質問させていただければと思います。

 まず、7ページ目ですけれども、自営的就労ということで、確かにこういう仕組みがあると社会にイノベーションが起きやすくなってくるだろうと想像するわけですけれども、この稼得活動個人口座の設置というところで、本当にこれを機能させようと思うと、ある程度野放図にならないような仕掛けも、もう片方で検討する必要があると思いまして、そのようなものが何か検討されているのであれば、御紹介いただきたいというのが1点目になります。

 もう一点が、今回、デジタル化していく社会の中において、どう労働を位置づけていくのかということだと思いますけれども、これはドイツの国内を見据えた議論だとしながらも、国際的な競争力をドイツ全体として維持・向上していくという観点も、恐らくどの国も、労働市場がグローバル化していくということであれば、ある程度射程に入れて考えていかなければいけないだろうと想像するわけですが、グローバル化とか競争力をどう国際的に高めていくのかという観点で、何か議論があったのであれば、御紹介いただければと思います。

○山本氏 ありがとうございます。

 まず、1点目でありますが、これも先ほどの教育訓練の法的請求権と同様に、詳細に詰めて検討されているものではないのですけれども、もちろん野放図にならないように、どんな目的のために、この口座からお金を引き出すことができるのかということは特定されるわけです。これは、必ずしも起業、スタートアップだけに使途は限られておりませんで、先ほど申し上げました、例えば教育訓練を受けるためのコストを賄ったり、あるいは育児・介護等で仕事を一旦リーブするときに、この口座から例えばものを賄うといった、いろいろな、しかし特定された目的のために、この口座から資金を引き出すことができますよといった制度として構想されているものであります。

 ですので、実際、そういったものができるとなった場合には、もちろん国がきちんと管理していくことになると思うのですが、まだあくまで構想段階のものでありますので、現時点ではこれ以上は、お話しすることはなかなか難しいものであります。

 他方、国際的なグローバル化ということでありますけれども、スライドの3ページにもありますように、第1章2節で、白書というのはグローバル化というものも、今後の雇用社会を変化させる一つの大きな原動力として挙げているわけです。ドイツというのは製造業の国でありますから、製造業というものを念頭にデジタル化というものをまず徹底的に行っていくのだと。それによって国際的な競争力も勝ち取っていくのだというところが根本的にあるわけでありまして、グローバル化というものも、この議論の文脈の中ではもちろん、意識されております。

 きちんとしたお答えになっているかわからないのですが、とりあえず私からは以上です。

○川崎委員 ありがとうございます。

○守島部会長 では。

○佐々木委員 ありがとうございます。

 白書とはいえ、ここまで未来的に、そして合理的にまとめてあるのはすばらしいなと思って伺っておりましたけれども、日本で労働政策を考えたり、法律改正をしていこうと思うと、このように合理的に整理した白書すら出すのが難しいというか、そんな気がしております。労働改革に対して、こういった提案というのは、私もこの中に散りばめられているようなことを発言してきたことはありますが、日本の中では受け入れられないなという感じがしています。

 山本様が調べて、研究している中で、日本がこのようなまとめに、あるいは方向性、少なくとも議論していくということを妨げているものがあるとすれば、ドイツとの違いがあるとすれば、日本は今後、一体何を解決していくと、このぐらい合理的な議論をスタートできるのかという点が1つ目の質問です。

 2つ目は、白書なので、具体的なことはまだわからないのかもしれませんけれども、労働時間政策で自己決定権。この話も、私もよく労働基本法を今のものをAとするならば、それは触らずに、新しいこういった自由度のある労働基本法Bというものをつくって選択制にしたらどうかということも言ったことがあります。これは、ドイツの白書で書かれている中では、現実可能性がどのぐらいあるようなイメージで議論されている立場にある意見なのかということが2つ目の質問です。

 3つ目の質問が、事業所内実験スペース助成金プログラムの話ですが、先ほどの御説明ですと、レポートが上がってきたら中小企業にレポートを提供してという発言があったので、そうすると、大企業に向けての助成金を主に考えられているものなのか。これは、8月に出たという詳細な要件を拝読すればわかるのかなと思ったのですけれども、私などの小さな会社の立場で言うと、逆に小さな会社でいろいろな実験をするところに初めに使わせてもらって、その事例が広まっていったらいいのにと思うのですが、ドイツでは大企業を先にというイメージで進んでいるのかどうか、この3点を教えてください。

○山本氏 ありがとうございます。

 一番最初の点でありますけれども、ドイツと日本の法制度との単純比較で、これが妨げになっているといったことを言うのはなかなか難しいような気がしますが、ドイツにおける議論の一つの特徴というのは、デジタル化といういわゆる新しい波が来ようとしているなかで、そういったものをまさに産業別と事業所という2つのレベルの集団的労使関係というもので受けとめることが、まずドイツにおける白書の中での基本姿勢になっているわけです。また、今回の白書というものを国レベルでまとめるという際についても、そこにきちんと意見表明できるだけの骨太な集団的労使関係システムがあるというのが、ドイツの一つの強みなのかなということを、私としては思うところであります。

 デジタル化によってどういった変化が生じて、それによってどういった法政策が必要で、あるいは現場でどういった対応が今後必要であるのかという議論の文脈のなかでも、それを話し合うベースとして集団的な労使関係というものの再検討というテーマが、恐らくいま喫緊のテーマである同一労働・同一賃金、あるいは長時間労働の是正等の文脈を超えて、日本でも今後大事になっていくのではないかなというのは、ドイツを見ていて思うところであります。

○佐々木委員 ちなみに、日本と違ってジョブ型というか、ジョブに対しての体がなされるという基本的な大きな背景の違いがあって、あるいはAIのこととか労働時間について合理的に話せるという背景も大きいのかなと思ったのです。日本がまずそこに行かない限り、このステージに上がらないのかどうかということについてはどうですか。

○山本氏 それは、もしかしたらそういう言い方もできるかもしれませんが、日本のシステムをドイツのようにしようといった単純な議論はなかなかしづらいかと思います。ただ、ドイツではこういったシステムがあるから、こういったことができているということを念頭に置きながら、日本ではどういった形でやるべきなのかということを、いわば相対的に見ていく必要があるのかなと思います。

 2つ目の労働時間選択法の現実的可能性でありますが、これもあくまで、どちらかといえば提案レベルのものでありまして、何か具体的に法案が出てきているといったことではありません。というよりも、スライドの10ページの労働時間という項目でDGB側の主張の箇所をみると、ドイツでは、ここ数年ほどは期限つきパートタイム転換権というものが、労働時間という文脈でずっと議論されてまいりました。これは、ドイツは現在、フルタイマーがパートタイマーになるという意味での転換権はあるのですが、その後、フルタイムに戻ることについての権利までは一般的に保障されておりませんで、これを立法化すべきかどうか議論が、まずはなされてきたという経緯があります。

 実は、こちらに関しては、選挙直前に法案段階まで行ったけれども、経営側の反対があって結局は挫折したのですが、いずれにせよ、労働時間制度をめぐっては、この期限つきパートタイム就労転換権というものについて、ずっと議論してきたという経緯がありますので、労働時間選択法の現実的な議論にまでは、まだなかなか入れていないという状況です。

 さらに、先ほどの助成金プログラムでありますが、中小企業を排除しているとか、そういった話では決してないだろうと思います。これは、もしよろしければ、後ほど事務局の方へ、どういった形で連邦労働・社会省のホームページが立ち上がっているかについての情報をお送りさせていただければと思いますが、そこでは、例えばボッシュだったり、ダイムラーだったり、大企業がこういった実験をやっているということが動画つきで紹介されていたりするわけですけれども、それ以外のものを排除しているわけでは決してなかろうと思います。

 ただ、ドイツでは統計上、中小企業ではまだまだデジタル技術の応用が十分に進んでいないといった問題意識が前提としてありますので、まずはそこに情報提供をしていくというのが、このプログラムの一つの大きな目的となっているわけです。

○守島部会長 では、長谷川さん、最後。

○長谷川委員 ありがとうございます。本日のご説明、とても参考になりました。私もさらに勉強したいと思います。

 1点質問ですが、ドイツでは、事業所委員会の選挙の簡素化について、DGBが賛成で、使用者団体が反対しているとのことですが、簡素化の内容と、なぜ労使団体で意見が分かれているのかという理由をお聞きかせ下さい。

○山本氏 ありがとうございます。

 そもそも、事業所委員会を設置するときの選挙手続というのは、原則としては法律によってきっちりと決められた手続に従って、実施しなければならないのですけれども、現行法上、従業員数50人以下の事業所においては、例外的に比較的簡単な手続で選挙を行うことができるといルールがあって、白書では、その適用基準を従業員数100人以下にまで広げていこうといった提案がなされております。先ほど申し上げたように、デジタライゼーションというものを受けとめるインフラとしての事業所レベルでの労使関係というものが、白書のなかでは非常に重視されておりまして、そのようなインフラを拡大してゆくべきという方向性については、DGBも賛成しているということであります。

 しかし、選挙手続も含めて、事業所委員会にかかるコストは、法律上全て使用者が負担するということになっておりますので、BDA、経営側の意見としては、そういった提案には反対であるということで、意見の対立があるということであります。

○守島部会長 では、岩村さん。

○岩村委員 時間がなくなっているというのはよくわかっているのですが、きょうのお話を聞いていて、政治的な背景としては、SPD出身の大臣がつくったというものであるので、伝統的なドイツの労働法の骨格というのはきちんと維持しつつ、その中でどういう形でこのAI等のイノベーションに対して適用させていくかという発想だなと思いつつ、伺っていました。ドイツと日本では、そもそもの雇用制度も違うし、労働法制の考え方も非常に違うので、こういった議論をそのまま日本でというのは難しいなというのは、山本さんもおっしゃっていたとおり、私もちょっとそういう感じで聞いていました。

 それで、全体を理解する上での若干の追加的情報の御提供がもし可能であればいただきたいと思うのですが、1つは、ドイツの今の失業率はどのぐらいなのか。とりわけ若年層の失業というのがどういう状況にあるのか。特に、もともと東西でかなり差があるというのは昔から言われているのですが、その辺は今はどうなのか。

 もう一つは、労働協約のカバー率ですね。ドイツは産業別協約なので、日本と前提が全く違うのですが、労働協約でカバーされている労働者の比率というのは、今どのぐらいなのかというのがもしわかれば教えていただければということです。

 もう一つ、これは確認ですが、この白書なり報告書で言われた、きょう、プレゼンいただいたものは、基本的に連邦管轄のものであると考えてよろしいのかどうか。ドイツは連邦国家なので、州の管轄と連邦の管轄がありますが、きょうお話しいただいたのは、基本的に連邦管轄の問題だと考えていいのかということです。

 最後になりますが、ドイツで一生懸命こういうことをやっても、EUの枠内では全部尻抜けになる可能性があるのですが、その点についてはどういうふうにドイツは考えているのかというのをちょっとお聞きできればと思います。何年か前も聞いたのですが、ドイツの使用者団体は、規制強化でも何でも勝手にやってくれ。我々はドイツから外に出て行く。それだけの話だということがエピソードとして紹介されていましたけれども、この辺のところはどうなのかというのをちょっとお聞かせいただければと思います。

○山本氏 いずれも非常に重要な御質問を、ありがとうございます。

 失業率に関しては、今、手元に正確な数字がございませんが、調べればすぐわかりますので、これも後ほどの宿題として事務局の方に情報提供させていただければと思いますが、ドイツは今、非常に景気がいいものですから、若年者失業率はそのほかのヨーロッパ諸国に比べればかなり下がっております。それだけは確実にいえようかと思います。

 2番目の協約カバー率でありますが、これは実は年々下がっていっております。ドイツは産別組合の組織率も下がっておりますし、使用者団体の組織率も下がっているのですね。そうすると、当然協約カバー率もそれに応じてどんどん下がっていくということで、協約でカバーされない労働者層がかなり出てきている。ですから、2015年、ドイツで初めて法定最低賃金制度が施行されたという経緯もあります。

 先ほどスライドの9ページで御紹介した協約自治強化法という2014年の法律は、まさにこのような事態に対応するためのものだったのですけれども、そういった状況がある中で、全ての政策の基礎をなす集団的労使関係システム、なかでも協約カバー率というものを今後引き続き回復させていく必要があるということで、協約自治強化法等に続いて、今後もカバー率を向上させていく取り組みが必要であるということが白書の中で言われております。協約カバー率は、現在、50%前後であったかと思いますけれども、これも正確な数字は、後ほど情報提供させていただければと思います。

 3番目の連邦管轄かどうかということでありますが、例えば労働時間選択法等は連邦管轄の法律の話なのだろうと思いますが、例えば職業教育訓練等に関しては州政府をも巻き込んで決めていくということが白書のなかでは言われておりますので、全てが連邦レベルで決まっていくということでもなかろうと。コラボレートするべきところは、州政府とも連携しながら、やってゆくのだろうと思われるところであります。

 最後の点は、非常に重要な御指摘で、EUとの関係でありますが、例えばクラウドワーク規制の話をしていても、ドイツ一国内で規制することの虚しさというものがどうしても生まれてくるわけです。すなわち、IG Metallがどれだけ頑張っていても、別の自主規制の外にあるプラットフォームを使って仕事を受注されてしまえば問題解決できないわけであります。ですので、DGBなどは、クラウドワークについてはEUレベルで最低報酬規制というものを入れるべきであるといった提案もしているわけであります。

 じゃあ、EUレベルではどのような議論がされているのかというと、特にクラウドワークの問題に関しては、どちらかといえばプラットフォーム事業のようなものを、できるだけ各国の規制が市場参入の障壁とならないように、すなわちプラットフォーム事業者が活動しやすいようにといった方向性での議論が、EUレベルでは行われているようであります。これはおそらくIG Metallが考えているところとは逆のベクトルの議論になっているのでしょうが、それだけに非常に重要な問題として、引き続きドイツでも議論されていくのだろうと思うところであります。

○守島部会長 では、御手洗さん。

○御手洗委員 済みません、時間がない中で。

 岩村先生のポイントとも似ているかもしれないですけれども、私もこのお話を理解するに当たって、日本とドイツが置かれている産業状況の違いというのは理解したく、後ほど事務局に何か御提示されるときに、もしわかったらついでに教えていただきたいのが、1次、2次、3次産業の比率。それから、大企業、中小企業の企業数の比率。それから、都市部と地方における賃金格差などもわかりましたら、日独比較のデータがありますと大変勉強になります。

 よろしくお願いします。

○山本氏 ありがとうございます。

 これも直ちに宿題にさせていただきたいのですけれども、当機構が出しております国際比較のデータブックというものがありまして、そこに基本的にはご質問いただいた情報に関しても掲載されておりますので、これも後ほど事務局に情報提供させていただければと思います。

○守島部会長 ありがとうございました。

 では、武田委員。

○武田委員 本日は、貴重なプレゼンテーションありがとうございました。大変勉強になりました。まず、御礼申し上げます。

 2点、意見兼質問がございます。

 1点目ですが、先ほど山本様がおっしゃった教育と労働制度、特に処遇をどうしていくかという点とのリンクが非常に重要だというお話は、本当にそう思います。日本にも、再教育制度がないわけではなく、再教育制度もたくさん用意されているけれども、利用する人も少ない。なぜ利用しないかといえば、学び直し戻ってきた後の処遇にほとんど影響がなく、教育と処遇のリンクが極めて希薄であるといった点は、私も大いに賛成でございます。

 その点に加えて、労働移動に対して、もう少し制度的に、あるいは慣習として中立的な制度設計になるべきだと考えます。賃金制度に加え、退職金制度も25年や30年間同じところで勤務しないとカーブが上がらない仕組みになっているがゆえに、新しいスキルを身につけ、新しいことにチャレンジしよう。あるいは、会社に戻ってもう一回働く、違う会社で再チェンジする、どちらでもいいのですけれども、そうした動きをとどめてしまっている。そうした日本の制度についてのご示唆など、もしお持ちでしたら、御意見を伺いたいと思います。

2点目は、日本が直ちに本日の議論を受け入れるのは、ドイツと日本の労働市場の違いから難しいというのは、もちろんそうだと思います。ただし、将来的に起きようとしているインダストリー4.0という議論は、別に国による差はないわけです。したがって、これまでの労働市場が異なっているからといって、我々がこの変化を見ないでいい、労働法制がドイツと日本で違うのだから、これはドイツの話であって、日本は考慮しないでいいという話ではないと思っています。

 むしろ、そうした中長期的に起きることを念頭に、日本の労働市場がどうあるべきかということを議論する視点に立つと、今は日本とドイツの労働市場が違うことはわかっているけれども、それを前提に日本の労働市場が目指すべき姿は何なのか。そこには恐らく共通点もあり、それぞれスタート地点が違いますが、それをどうやって埋めていくべきなのかという議論がなされるべきで、日本とドイツで今が違う、あるいは過去が違うから、日本でこれらの議論をするのは難しいという結論には、少々違和感がございます。その点、山本先生はどのようにお考えか御意見を賜れればと思います。

 ありがとうございます。

○山本氏 これも、非常に重要な御質問かと思います。

 前者のほうは、御指摘のとおり、ドイツはまさに職務給の国でありますから、同じ労働協約の賃金等級上の格付である仕事、ジョブをする以上は、別の会社に行っても、基本給は変わらないというシステムとなっております。また、ドイツでは、退職金という制度は基本的にないわけで、その意味では、労働移動にとっては、ドイツのシステムは比較的ニュートラルなものとなっている。そして、それを踏まえた上で、こういった白書の議論は展開されているというのは、そのとおりだろうと思います。

 後者の点に関しては、なかなか難しい問題で、各国、もちろん法制度も含めてですが、歴史、文化、社会的背景が全く違うわけでありますから、目指すべきものが同じであるとしたとしても、その進め方についてはには各国なりの背景や文脈というものを、慎重に考慮しなければならないのではないかと思うところであります。

 いずれにせよ、本日ご紹介させていただいたドイツの議論を考えて、日本なりにどういうふうな方向性、どういうプロセスを目指していくのかということに関しては、まさにこの部会でお話しいただくことでしょうし、それは私も今後勉強させていただければと思っております。

○守島部会長 ありがとうございました。山本さん、長時間どうもありがとうございました。

 続きまして、事務局から前回のヒアリングについて、簡単に御紹介いただけますでしょうか。

○奈尾労働政策担当参事官 資料2をご覧ください。時間の都合で、簡潔に御説明いたします。前回のヒアリング、御欠席の方もいらっしゃいますので、お二方のヒアリング概要を御紹介します。

 まず、慶應義塾大学の山本先生ですけれども、ポイントは、90年以降、所得が二極化しているけれども、それは中間所得層のルーティン・タスクの雇用が減ったからだということ。それから、オズボーン報告に代表されるAI技術失業説については、これは主観的な予測に基づいている面が大きいこと、それから、新技術による雇用創出の可能性が考慮されていないのではないか。一方、日本では、日本的雇用慣行の存在によって、ルーティンが多く残っているが、中長期的には技術代替のおそれがあるとしています。

 最後ですけれども、AIは、人手不足の中で処方薬になり得るけれども、AI普及の正の影響を引き出すためには、経営・組織改革や働き方改革といった補完的イノベーションが必要であるというのが山本先生にヒアリングの状況でございます。

 それから、野村総合研究所上田上級コンサルタントのヒアリングでございますけれども、いわゆるオズボーン報告については、49%の労働人口が代替可能と出ていますが、これは技術的な可能性の最大値であり、諸要素、特に社会の受容性、費用対効果等に依存するので、現実の代替可能性は49%より低いとされています。

 それから、裏面に参りますけれども、AIによる自動化が難しい職業としては、創造的思考、例えば経営判断。それから、ソーシャル・インテリジェンス、非定型がある。

 単純にAIやロボットが人を代替するというよりは、人がAIを使いこなす、付加価値の高い業務にシフトすべきとの御説明がありました。

 最後ですけれども、AIの時代には、人材の流動性が高まる。1社のみに雇用されるというよりは、兼業や副業による複数社のプロジェクトに参画する方も増えているので、組織・人事もつくり変えていく必要がある、といったあたりが、前回の概略かと思います。

 以上でございます。

○守島部会長 ありがとうございました。

 それでは、時間が余りないのですけれども、議題2に入っていきたいと思います。先ほど申し上げたように、AI等の技術革新は労働にどのような影響を与えると考えるか。労働政策にAI等をどのように活用できるか。それから、技術革新の労働への影響を踏まえ、今後の労働政策をどう考えるべきか等について御議論いただきたいと思います。

 はい。

○岩村委員 先ほどの山本さんと武田委員とのやりとりについて、一言コメントさせていただきたいと思いますけれども、私も先ほど申し上げたように、ドイツと日本とでは、労働法制のあり方も雇用市場の構造といったものも非常に違う。ですので、山本さんが報告していただいた中身というのは、私自身は非常に興味深くて参考になることは多々あるのですが、他方で、きょう、御紹介いただいたドイツの議論というのは、ある意味ドイツ特有の労働法制と労働市場のあり方を前提としての議論なのですね。その前提のところを全部取り払ってしまって、ドイツがこう言っているから、では、日本も、という短絡的な議論はしないようにしましょうねというのが、私が言いたかったことなのです。

 例えば、一般的にと言うと問題ですけれども、フランスもドイツも、基本的には労働市場の構造の基礎にあるのは資格社会です。資格を持っていないと格付も得られないし、そもそも職につけない。昇進するためには、資格をとらないいけないという社会です。より上級のジョブにつこう、より高い賃金の仕事をしようと思うと、その高い賃金に見合うだけの資格というものを持っていないと、その職にそもそもつけない。だから、日本とは違ったコンテクストで職業訓練というものが、そもそも重要なのです。つまり、職業訓練を受けて、より上級の資格を得ない限りは、給料、基本給は上がらないという構造の中での議論だというのが、まず第1にあるとか、いろいろなものがある。

 きょうも、もう時間がないから、私、聞きませんが、例えばドイツの場合だと、基本的には製造業中心としていたので、比較的早い時期から職業訓練のコースに行く学生と、高等教育の学生というものが分かれてしまう。そういういろいろなことが社会背景としてある中での議論だということも頭に置きつつ、そこから先は、まさにどう考えるかの話なので、そういったものを理解した上で、では、日本の場合、どういうふうにそこを考えるのかというのを考えていくということが非常に重要なのだけれども、実はそれが一番難しい話だろうというのをさっき申し上げたかったので、ちょっとそれだけつけ加えておきたいと思います。

○守島部会長 では、武田委員。

○武田委員 どうもありがとうございます。

 私自身は、先生が今おっしゃったことと異なることを申しあげたとは思っておりません。過去や今が違うということは、もちろん理解しなければいけないと考えます。ただし、ドイツですら、シュレーダー政権のもとで労働市場改革を行い、ドイツ自身も変わってきたという歴史的な事実もありますし、未来において、産業構造が大きく変わる、あるいは技術が大きく変わるという共通要素が、日独あるいは世界にあるのも事実です。法律レベルでそろえましょうという話をしているわけではございません。

 例えば、政・労・使で、将来ここが変わりそうだから、この問題を一緒に考えていきましょうという枠組みや取り組んでいる点、あるいは必要な教育とは何だろうということを議論している点などです。法律レベルでそろえましょうということではなく、日本が取り組まなければいけないことへのヒントとして、得られるところは大いにございますし、実際、共通に起きる事象へ対処しなければいけない事実は変わりません。技術の変化がドイツだけで起きるわけではないので、それに備えるために我々が何をすべきかということを考えていかなければいけないということだと思います。

 その上で必要な法律は、当然、既存の法律に違いがあるわけですから、やるべきことはおのずと異なってくると理解しています。

○守島部会長 では、長谷川委員。

○長谷川委員 今、岩村先生のお話を聞きながら考えていましたが、ドイツは産業別労働組合と事業所委員会が並立する方式ですが、日本は企業別の労使が集団的労使関係を築きながら、技術革新に対して対応してきました。何千人、何万人といった大規模な合理化も、企業労使で話をしながら、企業の中でそれを受け入れるのか、企業の中で訓練して力をつけるのか、それとも労働市場に出していくのか。そのためにはどのような方策をとればいいのかということを、その時々の労働市場の変化を見据えつつ企業労使で知恵を出しあって、産業構造の変化や技術革新に対応してきました。こうした労使の取り組みにプラスして、雇用関係の助成金や雇用保険制度を見直して対応する際には、労働政策審議会で公・労・使で議論しながら、この間対応してきたのだと思います。

 先ほど古賀委員から質問が出ていましたけれども、今までの技術革新と、今回のAIの進展等の技術革新とは、どう違うのかを考えることが重要だと思います。先ほど介護の話もありましたが、介護の現場を見れば、人間ではきつい仕事もあるわけです。例えば、お風呂に入れるとか、おむつがえをするときは腰痛の原因になるとか、いろいろな問題があります。そういう仕事が技術革新によって、クリーンなイメージになる。そうすると、介護労働がすごくきつい労働から、もっとみんなが働ける、幸せになれる仕事になります。昔、新幹線の掃除などはなかなか大変な仕事だったのですけれども、今、喜んで若い人も働いていますね。恐らく、技術革新をしながら仕事を楽しくということになっていくのだと思います。今回の技術革新では、どこがどう変わるのかというのを予測することは難しいですが、それだけ技術革新のスピードが速いのだと思います。

 諸外国の事例や制度を勉強・学習しながら、その国のよさは受け入れていく。しかし、我が国のこれまでの歴史や集団的労使関係などは大切にしながら、未来に向かってどういう知恵が出せるのかというのを意見交換する。こうした視点が重要だと思います。ドイツのような厳しい労働法制を整備したら、日本の使用者は対応できないのではないですか。ドイツのように300章もあるような法律をつくられたら、とてもではないけれども、対応できない。そういう意味では、日本にも労働基準法という基本法があって、労使協定を結べば例外規定ができるといった柔軟な工夫がされています。そうした実態も踏まえて議論していく必要があるのではないか。

 日本は改革してこなかったというのはうそで、労使で話し合って改革を行ってきました。本日のヒアリングでも労働4.0に対してドイツの労使で意見対立があったとの報告がありましたが、議論のスタート段階では労使の意見に相違はあるのですけれども、それを寄せていくのが、こうした審議会ではないかと私は思います。審議会の議論では、日本の良さやこの間の集団的労使関係で培ってきた背景などを見ながら、今、自分たちの国で足りないものは何かという議論をしていくべきではないかと思います。

○守島部会長 山川さん。

○山川委員 水を差すようで恐縮ですけれども、私、個人的には、日本型雇用慣行があるのはわかりますよ。ドイツと違います。でも、現状ではそれがほとんどワークしていないというか、ひずみが大分大きくなって、もうどうにもならないから、新しい、それにかわるものも含めて検討するのではないか。しかも、急に変えるのが来年ぐらいならわかりますよ。中長期的、10年という話であれば、今の終身雇用がこのまま続くわけがないし、今の労働法制に不満を持っている人は幾らでもいると思うのですね。

 会社が自分のキャリアを決めるなんて、大きなお世話ではないですか。そういうふうに考えている若い人は幾らでもいるわけですし、いろいろな働き方の人がいたら、そういうふうになるわけだから、今まで、今までと余り言っていると、全然対応できないし、対応が後手後手になってしまって、こういう審議会をやっている意味もなくなってしまうのではないかという危惧が若干なくはないです。済みません、もしかすると私だけかもしれないですけれども、そういう感想を持っています。

○守島部会長 ありがとうございます。

 では、先に佐々木委員。

○佐々木委員 私もこの議論は大切なことだと思いますけれども、私が聞いている限り、武田さんが別に今までの日本のものが悪いとか、ドイツの真似をしろとはおっしゃっていなくて、私も多分同じような考え方で聞いていたかなと思いますけれども、IT化とグローバル化がこれだけ急激に進んで、そして働き方も自由になってきていて、海外の様子もわかってきているという中で、日本の若者を含め、男女は、教育も高いレベルで受けているすばらしい人材がいる。

 しかしながら、これからの10年、20年後を見ると、労働市場は日本国内におさまらず、全部がグローバルの労働市場になっていくという中で、日本の企業も含めて、どれだけ優秀な人を育て、確保して、そして国内でイノベーションを生むかというための労働のあり方を考えるということですから、今までを決して否定することではなく、積み上げていかなければ改革は起きませんというのも、考え方としてはさまざまな国のアイデアも頭に入れながら、それを決して真似することではなくて、そこから自分の脳みそをストレッチして、どういう働き方がいいのかという高いビジョンを持って、そこから逆算というのですか、する。

 これをもし山に例えるなら、私たちはこれだけギャップがあるけれども、どういうふうに登っていこうか。ドイツは向こう側にいて向こう側から登っている、アメリカはこっちから登っている、中国はこっちから登っている。私たちは、今、こんなところから登ろうとしているけれども、行こうとしている山のてっぺんは同じように見えるけれども、ここをどういう登り方をしようかなということを議論していきたいという話ではないかなと思っておりまして、過去を否定するとか、どこかの真似をするということではない。ただ、かなりストレッチして議論していかないと、積み上げ型ではもう間に合わないと私は思います。

○守島部会長 川崎委員。

○川崎委員 ありがとうございます。

 確かに日本型の労働慣行、いろいろな面があって、これまで積み上げられてきたということは、1点、事実としてあるわけですけれども、そこに至るこれまでのプロセスを考えてみると、長い間、労使ともに議論してきて現状があります。ここを全部取り払ってということではなくて、ここを前提にした上で、世の中の変化、AIIoTやロボットというものを取り込んだ中で、そのメリットをどう生かしつつ、ここで生じてきているデメリットを解消していくのか。その双方を見据えた形での議論が今後進められていければいいのかなと思っております。

 意見として、以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。よろしいですか。

 この問題というのは、ある意味ではなかなかわからないものを、わからない形で追っていくという難しさがあると思います。先ほど古賀委員も言われていましたし、ほかの方も言われていましたけれども、どういうタイプの技術革新なのだ。おっしゃっているように、グローバル化という局面とIT化という局面が両方交差して起こっている、クロスして起こっているということもあって、そういう意味ではなかなかわからないのです。そういう意味では、どうするかというのは、確かにおっしゃるように高いビジョンを掲げてという話になるのだと思いますけれども、そのときにどういう道を歩んでいくのかというのは、かなり慎重に議論しないといけないだろうなという気が私はいたします。

 ですから、多分これからもこういう議論を続けていくことが必要になると思いますけれども、10分ではとても終わらない議論でございますので、ここでちょっと。

○岩村委員 済みません、せっかく部会長が取りまとめに入ったところであれですが、私も佐々木委員が先ほどおっしゃったことについて、おっしゃるとおりだと思っていますし、そこのところはそういうことは考えなければいけない。さっきも申し上げたように、ドイツがこうなっているから日本もこうだという議論はおかしいけれども、そこからどうやって頭をひねって日本の問題を考えていくかということが、まさに我々が頭を使うところだと思っています。

 ただ、話として、抽象的レベルで同じことを考えても、具体的レベルになってくると、なかなか意見が折り合わないという話になってくるだろうなと思いますので、そこは今、部会長が取りまとめられたようなことなのかなと私は思っています。

 ありがとうございます。

○守島部会長 ほかにどなたか、最後に言っておきたいことはありますか。

 では。

○石山委員 ドイツと日本の違いで、サイエンス人材の割合みたいな話が1つあるかなと思っていまして、よくデータサイエンティスト協会等も引用するOECDのデータですけれども、ドイツのいわゆる大学における理系比率は63%、日本は23%。これは、そもそも高卒でボケーショナルトレーニングをやってみたいな構造も多分影響している部分もあると思います。なので、普通にやっても、普通に追いつけないみたいな構造になっているわけです。というふうに考えると、基本部会として抜本的にどういうふうに考えていくのかみたいなことは必要なのかなと思いました。

○守島部会長 ありがとうございます。

 それでは、そろそろ時間になってきましたので、事務局から何か最後に経緯とかその他。

○奈尾労働政策担当参事官 もうほとんど部会長におまとめいただいたとおりかと思っておりますけれども、この労働分野におけるAIの影響とか活用については、例えば生産性向上にどう役立てるとか、能力開発あるいはミスマッチ等、多様な働き方ということで、次回以降のトピックと重なる部分が大きいと思っております。

 その際、事務局としてこういう点に留意いただくとさらにいいかな、という点が若干ございまして、まず1つが、今後の人口の動向でございます。第2回の場でもあるいは申し上げたかもしれませんが、少子高齢化の中で確実に生産年齢人口の減が起きていくだろうと思います。社人研の中位推計によっても、2040年の生産年齢人口は2015年より23%弱ぐらい減少していく。2065年は、2015年を基点にすると40%以上減少する。これは、ほぼ確実に起こってくることだと思います。

 ですので、それを前提にすると、今年も労働経済白書というのを当省から出させていただいているのですが、新産業構造ビジョンの中で、前回、変革シナリオと現状維持シナリオという話をしたのですけれども、変革シナリオを前提にした場合でも、2030年度の失業者は増加しない。労働力は60万人不足するというのが、これは私どもの分析でございますが、出ています。そういう中で、働き方改革実行計画というものが3月に出されましたが、これも同じような問題意識を共有していまして、中間層が厚みを持って消費を押し上げて、ひいては日本全体を改善していくということをしないといけないという問題点がかなり書かれているかと思います。それが1点になります。

 もう一点は、先ほど二極化の話がございましたが、これも今年の労働経済白書で触れていまして、1995年以降のスキル別、高スキル、低スキル、中スキルで見ると、就業者は、日本もアメリカもイギリスもどこも中スキルが減少している。そのようなので、ここ20年ほど、皆様方、有識者と現場の労使の方を含めて、知恵を出しながら現に対応してきたという経緯があるのかなと思っております。

 そういった経緯も踏まえながら、次回以後、さらに御議論をお願いできればありがたいと思っていますし、これは9月の労働政策審議会の本審で、樋口会長のほうからも、確かフィージビリティが高いものをというオーダーがあったかと記憶しています。したがって、実現性なり実行可能性の高いものを取りまとめいただくと非常にありがたいと事務局としても思っていますので、蛇足ながらつけ加えさせていただいた次第でございます。

○守島部会長 ありがとうございました。

 それでは、本当にそろそろ時間になりましたので、今回の議論はこれで終了させていただきたいと思います。大変活発な御議論をありがとうございました。

 最後に、事務局から日程等について。

○奈尾労働政策担当参事官 次回の日程でございますが、来年2月ごろの開催ということで予定してございます。詳細につきましては、調整の上、改めて御連絡させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○守島部会長 ありがとうございました。

 それでは、本日はこれで閉会させていただきたいと思います。御苦労さまでした。

 本日の会議の議事録につきましては、本審議会の運営規程により、部会長である私のほか、2人の委員の方々に御署名いただくことになっております。つきましては、川崎委員、後藤委員に署名人になっていただきたいと思いますけれども、よろしくお願いいたします。

 それでは、本日はこれで終了したいと思います。どうも御苦労さまでした。


(了)

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