ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(疾病対策部会臓器移植委員会)> 第48回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会議事録(2017年11月8日)




2017年11月8日 第48回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会議事録

健康局難病対策課移植医療対策推進室

○日時

平成29年11月8日(水) 10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎5号館 厚生労働省17階 専用第21会議室


○議題

1 臓器提供・移植に係る環境整備について
2 臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)の改正について
3 その他

○議事

 

 

○磯部委員長 定刻になりましたので、ただいまから「第48回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては御多用のところを御出席いただき、誠にありがとうございます。

 まず事務局から、本日の委員の出席・欠席の状況の報告と資料の確認等をお願いいたします。

○蔵満室長補佐 本日の委員の皆様の出欠状況でございますが、市川委員、山本委員から欠席との御連絡をいただいております。

 また、事務局に異動がありましたのでお知らせいたします。厚生労働省健康局長の福田祐典でございます。ここで一言御挨拶をさせていただきます。

○福田健康局長 皆さん、おはようございます。健康局長の福田でございます。本年7月から着任しております、どうぞよろしくお願いいたします。

 委員の皆様方におかれましては、大変御多忙中のところをお集まりいただき誠にありがとうございます。また、日ごろから移植医療への御支援、また御協力を賜わっていただきますことに厚く御礼申し上げます。

 本日は臓器を御提供いただいたドナーの皆様と、その家族の皆様の崇高な御決断をいかすための環境整備などを推進するための、臓器提供・移植に関する環境整備やガイドラインの改正などにつきまして、先生方に御審議をいただく予定としております。本日の審議が臓器移植に関する課題の解消につながり、移植希望者が少しでも早く移植を受けることができるよう、委員の皆様には忌憚のない御意見を賜りますように重ねてお願いを申し上げたいと思います。限られた時間ではございますが何卒よろしくお願いいたします。

○蔵満室長補佐 本日の審議会におきましては、厚生労働省として取り組んでおります審議会等のペーパーレス化の一環として、前回同様タブレットを使用して議事を進行させていただきます。お手元に配布しておりますペーパーレス審議会等タブレット操作説明書に操作方法が記載されています。御不明な点がございましたら手を挙げていただければ事務局がお伺いいたします。

 また、机の上に現行の法令、ガイドライン等をまとめたファイルを置いておりますので、議論の際に参考にしてください。なお、ファイルは会議終了後持ち帰らず、机の上に置いたままとしていただきますようお願いいたします。

 それでは、これより議事の進行に移らせていただきます。今後の議事進行を磯部委員長にお願いいたします。

○磯部委員長 それでは議題に入らせていただきます。本日、議題は2つございます。1つ目が臓器提供・移植に係る環境整備について、2つ目が「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)の改正についてとなっております。最初の議題である臓器提供・移植に係る環境整備について、事務局から御説明をお願いします。

○井内移植医療対策推進室長 事務局から資料1に従いまして御説明いたします。本日、この臓器提供・移植に係る環境整備ということで御審議いただきたいと考えておりますのは、今後、3年後、5年後、10年後の臓器移植をどのような形で進めていくことがいいのかということを院内環境の整備の観点から、現在、厚生科学研究班のほうで検討していただいているところです。その中身は、まだこういった形で進めたいというところまでは固まっていない段階ですが、方向性等が打ち出されてまいりましたので、その方向性を踏まえて御説明させていただき、本日、この委員会で忌憚のない御意見を頂いた上で、また研究班にもフィードバックさせていただき、今後の移植医療の体制を検討させていただきたいという趣旨です。いつもと違い、資料1、議題の1つ目に関しましては、これでよろしいかというものではないのですが、そういった趣旨ですので、御理解の上で御意見を賜れればと思っております。よろしくお願いいたします。

 資料1の説明を順次してまいります。資料11ページ目、1.「臓器移植の現状」ということで、まず現状がどうかという御説明をさせていただきます。1つ目の棒グラフ、臓器提供数の推移です。青が心停止、赤が脳死となっております。平成26年に、トータルで言いますと一番落ち込んだ77例があります。平成28年には96例、今年も現在91例ということで、11月のこの時点ですので、恐らく昨年度をオーバーする数にはなる、100を超えてどこまで行くかというのが今年の予想と考えております。

 その次の棒グラフ、脳死下の臓器提供です。本人の意思表示による臓器提供と家族の承諾による臓器提供で色を分けたものです。法改正以降、脳死下での臓器提供に関しては右肩上がりに増加をしております。今年も61で、昨年が63ですので去年を超えてくる数になると考えております。こういった現状で、臓器移植・臓器提供に関しては脳死下を中心に現在右肩上がり、諸外国と比べてはまだまだというところではありますが、じわじわと我が国においても増加してきつつあるという現状です。

 こういった現状の中、2ページを御覧ください。今現在、厚生労働省でいわゆる院内環境の整備ということで、どのようなことをやっているかという御説明です。提供施設の状況ということで、現在896施設で、大学病院、日本救急医学会指導医指定施設、脳神経外科、救命センター、小児総合医療施設協議会の会員施設等々でこれだけの数になっているものです。

 その下の円グラフですが、この896を全体を100%といたしまして、体制が整っていないのが左側で51.4%、18歳未満も含め体制が整っているのが26918歳以上のいわゆる成人のみの体制が整っているのが166でございます。「体制が整っている」という右側の施設を更に分析してみたというのがその下の円グラフです。体制が整っているというお答えをいただいてはいるのですが、実際、施設で今まで提供事例が0例という所が241の施設、体制が整っているのが435施設ですので、その54.5%、半分以上がまだ臓器提供には至っていない。さらに、1事例という所を見ますと90施設ということで、両方合わせますと、おおむね4分の3程度が今までで1事例以下で収まっているということで、現在の臓器提供というのは、この2事例以上のところを中心に臓器提供を進めていただいているという形で進んでいると認識しております。

2. 「提供施設の環境整備について」ということで、現在、厚生労働省においては、平成25年度より日本臓器移植ネットワークを通じた院内体制整備支援事業を実施しております。内容ですが、その次のページになります。Aプラン、Bプラン、Cプランとありますが、それぞれの施設に応じて、院内でのマニュアル作りや研修というようなことをやっていただくということで進めているものです。

 その下の左側に平成25年度の17というものがありますが、院内体制整備支援事業に参加していただいている施設の数の推移です。平成27年度までは都道府県の推薦という形でしていたこともあり1617で収まっていましたが、平成28年度以降、臓器移植ネットワークから各施設に対し、直接自院でやりたいという所につきまして希望を募るという形に変えたというのもあって、平成28年度は6629年度は85ということで、基本的には臓器移植ネットワークの作業量に対してかなり負荷にはなっていますが、それでも、手を挙げた施設は断らないという形で現在受けていただいているものです。

 先ほどのように、この85施設を提供事例数のほうで分析してみたというのが左の円グラフです。0事例が471事例が16ということで、前ページで見ていただいた分布とほぼ同じような形になっております。この手挙げの所、右の円グラフになるのですが、体制未整備が1施設ということで、先ほどのいわゆる5類型施設の中では半数以上を占める体制未整備ではありますが、院内で取り組もうという姿勢というのは当然、こういったところでもやっていただくというのは支援はしておりますが、なかなか手が挙がってこない。どちらかというと、体制は既に整備ができているが、まだ事例が出ていない施設を中心に、今、厚生労働省の補助事業を進めさせていただいているという現状でございます。ここまでが今までの現状です。

 本日、この委員会で御議論いただきたいのは4ページ以降です。これに関しまして、3年後、5年後の臓器移植の医療提供体制を見据えた中で、研究班の中で検討をしていただいております。この検討は本委員会の委員でもあります横田先生の研究班でやっていただいているものです。まず、研究班は大きく2つに分かれます。1つが臓器提供施設、いわゆる提供施設の院内体制整備という観点での議論ということでしていただいているものです。ここには書いてはおりませんが、横田先生のいわゆる臓器提供する側の検討に関しては、救急医学会、臨床救急医学会、脳神経外科学会、集中治療学会、それぞれの学会からメンバーを出していただき、各学界がコミットする形で内容を検討していただいているものです。検討項目につきましてはその下、1、2、3と書いてあります。1搬送から摘出までを網羅した手順マニュアルの作成、2選択肢提示の方法、3検証会議の方法、この3点につきまして検討をしていただいているものです。

5 ページです。具体的に検討をしていただいている内容ですが、1搬送から摘出までを網羅した手順マニュアルの作成です。法的脳死判定マニュアルに関しては平成22年度に厚生科研で検討していただき、国のマニュアルとして成立しているものです。ただ、院内の体制、我々のほうも研究班のほうも現場の先生方にいろいろな御意見をお聞きしますと、いわゆる脳死判定の部分に関しては、この20年の間でかなりやり方として広まってきて、ある意味、できる人はできる状態になっている。ただ、それよりも、まず患者さんが臓器提供をしたい、説明を聞きたいというところから始まって、実際に移植医の先生方が来て臓器提供、臓器の摘出を行うというプロセスまであるのですが、全体のプロセスをどう運用するか、院内マニュアルの作成というところでなかなか難しいことがあると聞いております。そういった実態を踏まえ、この研究班の中では、院内でどのような準備をし、おおむね23日の形でいわゆる患者さんのほうが臓器提供したいといったところから提供が終わるまでかかるのですが、その中でどういった実務が出てくるのか、それをどうやってこなしていけばいいのか、留意点は何なのかを検討をして、いわゆる病院のための手引書というか、例えば先ほどありましたようにまだ提供を1例もしていない病院若しくは1例しかしていない病院、そういった所を対象に、混乱なく提供できるような体制作りが院内でより迅速に簡便にできるような教科書作りをしたらどうかということで今検討を進めていただいております。

 さらに、2選択肢提示の方法です。その下にあるポンチ絵で説明させていただきます。左から患者搬送、各種検査、手術、集中治療があって、その結果、不幸にして脳死とされうる状態になるということです。こういった中で、現在は当然、主治医、担当看護師は救急医療の中で患者さんをしっかりと治療することに留意をしていただいて、治療に当たっていただいておりますが、実際、これが最後、臓器提供の選択肢提示、いわゆる意思の確認となりますと、一番最後の部分で選択肢提示をする。現場の先生方は今まで集中治療、いわゆる救命にずっと携わってきた中で、急に臓器提供の意思を確認するというのはハードルが高いという御意見も頂いております。

 今回、研究班の中で検討いただいていますのがその下です。これに関しては、ソーシャルワーカー等とありますが、実際、意識レベルが低い方につきまして、最初からソーシャルワーカーがいわゆる患者さんの社会復帰若しくは患者さんの家族のケアを中心的にやるということで、いわゆる臓器提供の有無にかかわらず付くということを考えていただいております。ソーシャルワーカー等の方が付きましたら、治療方法とは一歩引きまして、家族の方の支援ということで、ドクターとの間の調整であったりとか、今どういった状況にあるのか、そういった家族のサポートや、患者さんが社会復帰する場合は社会復帰のサポートをしていただくことを考えております。

 そういった中で、一番最後の段階で選択肢提示という決め打ちをするのではなく、家族とソーシャルワーカーが話をする中で、例えば御家族若しくは御本人に選択肢提示、いわゆる臓器提供の意思の有・無をこのポイントで、この書類を使ってというのではなくて、普通に信頼関係を築く中でお話をしていただくことでやっていく。それにより、いわゆる提供施設で急に選択肢提示をあるタイミングでしなければならないという混乱を避けるということで、こういった人を配置して、こういったことを評価してもらえるようにするべきではないかという形で今議論をしていただいているものです。

 次の6ページ、3検証会議の方法です。検証会議は現在、一例一例のあっせん又は救急の医療の医療現場の状況につきまして検証会議ということで検証いただいています。正直、我々の実務の実態等を考えましても、1症例、大体30分から1時間は会議でもかかります。その前の段階の会議もございますので、そういった中で、月5例をするというのがほぼ限界になっております。現在、昨年でも64例ということですので、このまま行けば検証するタイミングと臓器提供があったタイミングの乖離がどんどん増えていくことが今後予想されます。そういったところで、この検証作業を正確にやるのはもちろんなのですが、それをより迅速化できないか。また、資料を作るというのも現場での業務負担が非常にある。特に、先ほど初めて症例を出したような所が作ると非常な負荷がかかっているということも聞いておりますので、そういったことを軽減する方法はないかということを検討していただいているものです。

 次に、移植環境整備プロジェクト会議です。今までお話させていただきましたのは、提供施設側でどのようなことを考え、どのような検討を進めていくかということで、今、横田先生の所でやっていただいている先ほどの4学会が中心になって検討していただいているものです。この移植環境整備プロジェクトは、提供する側ではなくて、今度は実際に移植をする施設のほうにターゲットを絞り、そこで今後どのような検討するかという検証項目です。この検討項目は1メディカルコンサルタントの派遣、2手術関連物品・臓器搬送、3摘出チーム互助制度、4移植実施施設数の妥当性・院内体制連携システムという4点を検討していただいているものです。

 この各論につきましては次のページのメディカルコンサルタントの派遣から御説明いたします。現在、臓器提供がある場合、メディカルコンサルタントがその病院に行くという形になっております。これが現在、足下で臓器提供数がどんどん増えてきている、なおかつ先ほど提供施設の環境整備ということで様々な取組をしていただいている中で、今後、臓器提供数が増えてくるということが予想されています。その中で、現在と同じメディカルコンサルタントが毎回派遣されるという方法が、現在の何倍ぐらいまで耐えられるのか、実際に行く人の負荷も考えなければならないということで、メディカルコンサルタント派遣のシステムをどのようにしていくかを1点考えていただいています。

2 つ目ですが、臓器移植の実施施設での環境整備に関しましては、今後、臓器提供数が増えていくという前提で、そのときにどのような体制を取らなければならないかという検討です。手術関連物品・臓器搬送ですが、現在、手術の関連物品は、移植を実施する施設の摘出チームがそれぞれ持っていっている。臓器の搬送に関しても、それぞれの移植実施施設のドクターが持って帰っているということです。ここにありますように、現在、心臓で45名、肺で35名という形で配置されている中から行っているものです。こういった人的負担が、今から移植数が2倍、3倍、5倍、10倍と増えていく中で耐えられるかを検討いただいているものです。

 摘出チームの互助制度ということで、これも移植を実施する施設が、提供する施設に、全てチームを派遣するという形で対応しております。これも今後、臓器提供数が増えるという中で、こういった体制がいつまでできるのか。例えばブロック制であったり、あとは今は各臓器ごとに行っていただいているのですが、欧米では例えば胸部、心臓と肺を取る人は同じ、肝臓・腎臓・膵臓を取る人が同じということも聞いておりますので、そういった体制を作れないか。今後増えていく中でどう対応するかということで、こういった観点も検討していただいているというものです。

4 点目ですが、移植実施施設数の妥当性・院内体制連携システムです。現在、移植実施施設に関しては、学会でその基準を決めていただき、その施設を認定していただいているものです。その中で、現在の施設数をどうするのか、臓器提供数がこれから増えていくという中で、移植実施施設数をどう考えるのかということで検討いただいております。1つが、いわゆる施設数を増やさなければパンクをする、施設が回らなくなるという観点、もう1点は、実際に施設数を限定して、集約化することによって、現場での業務を集約化して、今かかっている移植施設側への負荷を減らすことができないかという観点、両方の観点から将来の移植実施施設数の妥当性を検討していただいております。今、移植実施施設では、おおむね移植から退院まで、移植医がしっかりとウォッチをしているという体制ですが、これが移植の提供数が増えてくる中で、それに合わせて臓器移植医が増えてくるというのは考えにくいことから、院内体制での役割システム、院内での連携分担の検討を進めなければいけない。こういった観点からも検討していただいているというものです。

 以上、研究班で臓器提供の部分、さらに、臓器移植を実施するという観点から、今後、臓器提供数が増えていく中でどのように対応していくかということで、今、検討を進めていただいているということを本日御報告させていただき、本委員会におきましても忌憚のない御意見をいただけたらと思っております。御議論のほどよろしくお願いいたします。

○磯部委員長 ありがとうございました。よく分かりました。大変に重要な課題について、また意欲的な取組を含めて御提案、あるいは課題の提示を頂いたと思います。皆さんそれぞれ御意見がたくさんあろうかと思いますので、議論としては、まず2ページの提供施設の環境整備のことから始めて、後で移植側の話に進んでいきたいと思います。提供施設の問題について、横田先生のほうから、補足がありましたらお願いいたします。

○横田委員 今、井内室長のほうから御説明のあったとおりなのですが、2ページの円グラフ、上と下があるのですが、この円グラフを見るだけでも、臓器を提供したい、あるいはしたくない、移植を受けたい、受けたくないという4つの権利が十分行使されないということが現れていると思います。いわゆる五類型でも体制整備が整っていないのが約半数あるということは、いろいろな事情があると思います。我々も救急、あるいは脳外科の施設に勤務している中で、何で体制が整わないのかという現状も把握しているつもりです。

 一方で、その体制が整っているという中でも、下の円グラフでは約半数以上がまだ1例も脳死下臓器提供の経験がないというのが現状なのです。いろいろな対策があると思うのですが、ここで同じような対策をすると効率も悪くなると思います。そこで、例えば体制が整備されていない所、あるいは今まで1例も経験がない施設と、10例以上、5例以上あるような施設では、対策として異なった方法が必要なのではないかというのが、まず1点です。特に体制整備が整っていないという所は、どうしても提供時の負担感が先に念頭に起きてしまうということで、研究班としていろいろ検討しています。

 今回のこの委員会の委員であられます脳外科学会で本件を担当している小笠原先生の協力も頂きまして、ここに書いてあるように4つの学会から2人ずつ委員を出していただいて、現在活動しています。実際、提供施設のマニュアルは、確か平成22年に有賀先生が作られたマニュアルがあるのですが、それを基本に体制整備が整っていない、あるいはまだ1例も経験していない施設にとって、どのように人員を配置すべきか、あるいは支援体制も整っているので、どういった形で支援を受ければいいかというところを書き込んでいこうと思っています。項目立てもできて、3つサンプル動画も作りました。ということで、進捗としては順調に進んでいるのですが、今年中に一応、マニュアルのドラフト版みたいなものを各委員で出し合って、それを更にブラッシュアップしてということを考えています。

 もう1つ、現場の医師や看護師に負担がかかってしまうという一方で、先ほどの4つの権利は、我々医療者側としては非常に重要に考えています。そのような中、家族への手厚いサポートを、どのような職種が家族支援に参加できるかという議論をさせていただきました。そういう中で1つ出てきたのは、先ほど室長からお話のありましたMSWの方です。MSWは我々の感覚では、退院時の支援で、転院とか、在宅への支援ということになってしまうのですが、厚労省健康局の局長通知(平成141129日)ではMSWは患者さん側の精神的、心理的サポートも行えるようです。そういう中で、様々な方々が参加していただくと、家族に対しても非常に手厚い支援ができるのではないか。その延長線上に臓器提供ということがあり得るのではないかという議論があります。ここの部分に関しても、動画を作成した状況です。

 もう1点、脳死下臓器提供後の医学検証に関してです。これも臓器提供の後に負担感を持ってしまうところなのですが、少し簡単で効率よく正確な検証ができるのではないかという視点で議論を始めたところです。私からは以上です。

○磯部委員長 では、お名前が挙がった小笠原先生と有賀先生から、順に御意見があればお願いします。

○小笠原委員 5ページの今の選択肢提示の方法は、これは是非やっていただきたいのですが、ちょっとお聞きしたいのは、多分これはパイロットスタディとして、どこかの施設を借りてやって、どのように家族が考えているのかとやって、それをデータで出されると思うのですが、やっていただきたいのは、ソーシャルワーカーのほうから、家族だけではなくて医療従事者へも評価をしていただきたいのです。要するに、何を言いたいかというと、我々医療従事者、看護師も医者もそうですが、その家族がどう思っているか、本当のところは分からないし、我々には言わないのです。言い方が悪いのですが、当然、彼らにとっては医療従事者は神様みたいなものですから、どうしてもそういう思いがあるので、本当はそうでなくても本当のことを言えないのです。メディカルソーシャルワーカーが是非そこの本音の部分を聞いて、こういう患者さんが来たときに一体、家族は我々従事者にどういう考えを持っているのか、是非そこもあぶり出していただきたいというのが私のお願いです。

 我々はそこをどうしても知り得ないものですから、家族の思いと、医療従事者に対する考え方、両方、是非やっていただきたい。それをやっていただければ、我々が家族に対する対し方も変わるのではないかなと思いまして、そこのところを是非お願いします。これを最終的には厚生労働省として全国に広げていただきたいというのがお願いです。これをやると、負担は大分減ります。よろしくお願いいたします。

○有賀委員 今のMSWの件は、確かに今聞きながら、神様とおっしゃいましたが、実は人質を取っているという話になりますよね。そういう意味で、いわゆる360度評価の中にMSWによる医療従事者へのそれというのは意味があるだろう。

 もうちょっと本題に触れますが、ソーシャルワーカーの働きぶりというのは、病院によってはものすごく昔から積極的にやっている病院があるのです。多分、腎臓だと思いますが、船橋医療センターで臓器提供した患者さんのお腹の中から鋏が出てきた。まあ、ペアンですけれども。そのときに、家族が最初に訴え出たのは、船橋医療センターのソーシャルワーカーなのです。私は船橋医療センターのソーシャルワーカーではなくて、当時、副院長だか脳外科の部長だった唐沢先生に、「どうしてそんなことが起こるのか」と聞いたら、ソーシャルワーカーがこの絵と同じように、かなり早い段階から患者さんに接していると、良くなった人は良くなった人なりに、そうでない人はそうでない形で、場合によってはということで、臓器提供のところまで十二分に相談に乗ってきたと。だから、お腹から出てきたときにも、ソーシャルワーカーに話がいくというのはもう当然だと。今から30年ぐらい前だと思いますが、その病院では当時もう既に10数名のソーシャルワーカーが働いているということを聞きました。

 この件は、病院という所の相談というのは、ちょっと言葉を選ばなければいけないのですが、宗教的な観点からでも、やはり相談に乗っていかなければいけないという場面は、実はあるのではないかと、病院長をやりながらずっと私は思っていたところがあります。そういう意味では、ソーシャルワーカーに宗教的な背景まで持てとは言いませんが、亡くなっていくプロセスで患者さんたちが何かにすがるとすれば、そういうこともあるのかもしれないので、相談をするならばそういうことを含めた勉強を是非やっていただく必要もありそうです。

 都合のいいことに、横田先生のほうが現状におけるプロセスはより知っていると思いますが、例の臨床救急医学会の中で、救急医療に関連する、例えば薬剤師の資格について一定の水準で勉強していれば資格認定しようと。これは任意団体である病院薬剤師会と臨床救急医学会がやっている。このソーシャルワーカーについても、臨床救急医学会と、ソーシャルワーカーの職能団体が一緒になって救急専門ソーシャルワーカーの資格制度とやっているはずです。ですから、その中に本件を上手に入れ込むということがあれば、多分このことはそんなにびっくりするほど困らずに展開するのではないかと思う次第です。ですから、是非よろしくお願いしたいと思います。以上です。

○磯部委員長 では、フリーディスカッションで、挙手を頂ければと思います。

○相川委員 ソーシャルワーカーなのですが、院内コーディネーターとの位置関係がどうなのかをお聞きしたいのですけれども。

○横田委員 これは、ソーシャルワーカーが全て、このような役割を担ってくれということではなくて、今、有賀先生からもお話があったように、そういうこともできるのだというのがまず1点です。それから、もちろん、MSWの方が院内コーディネーターとして活躍もできるのだというのが、MSWの職域を調べていくと可能であることが判明しました。かなり熱心な方も中にはおられるのです。ですから、そういう方々が活躍できる現場を提示してもいいのかなと、そんな位置付けです。

○有賀委員 今のことに関連して、この漫画によると、ソーシャルワーカーが1人しか書いていませんよね。たった1人のソーシャルワーカーが四六時中、救命救急センターに張り込んでいるなどということは絶対あり得ないわけですよね。ですから、例えば昭和大で言うと、ソーシャルワーカーも朝や夕方のカンファレンスに救命センターに来ているわけですよね。それがいつも同じ人が来ているわけではなくて、何人かいるソーシャルワーカーがグルグル回りで来ているわけですよね。たった1人が全部の患者さんの面倒を見ているわけでもありませんから、そういう意味で、こういうことも仕事に入れるということなのだということを、その病院の院長以下に理解してもらって、新たな職種としてこういう人が入れば、その人を、ここではソーシャルワーカーですが、ソーシャルワーカーなど、患者さんの相談に応じる中で入ってもらって、それで、この人もできるし、あの人もできるという形でやっていかないと、これは病院の機能としては成り立ちませんから、そのように考えていただくといいのではないかと思います。

○相川委員 ソーシャルワーカーなのですが、小笠原先生の発言から考えると、医師・看護師でないほうがむしろいいということになりますけれども。

○小笠原委員 そうです。先ほどの議論で、私は医療コーディネーターは全く別に考えるべき。そうなってしまうと、患者の立場から言ったら、コーディネーターはこっちの立場だろうと思いますよね。という立場に絶対なると思うので、あくまでもニュートラルな立場、移植と全く関係しないでやったほうが。もし患者さんがそこで希望したら、そこの時点でコーディネーターに渡すという格好で、客観的に家族の気持ちを受け取る、医者が言っていることも受け取るという、あくまでも客観的立場のほうが私はいいと思います。

○相川委員 院内コーディネーターに関しては、実際コーディネーターは任命はされているのですが、日本の場合には、はっきり言って機能はそれほどないのです。スペインの場合には、院内コーディネーターとして、これはほとんど医師がやっているのですが、その中で、年間8時間以上グリーフケア、つまり悲嘆家族のケアにそれだけ時間を割いている研修時間があるのです。日本にはそういう体制がないですから、なかなかそこまでもっていけないと。先生がおっしゃっているように、コーディネーターであったとしても、これは臓器提供を目的にしているわけではないのです。悲嘆家族のケアをした上で、最終的に臓器提供があればいいという位置付けになっています。

 だから、まず悲嘆家族のケアをして、それが集中治療だったら、絶対私は必要だと思いますし、実際、集中治療、ICUにいる看護師さんたちは、みんな非常に興味を持っている話題なのです。これはやらなくてはいけないということになっているのですが、日本の現状はなかなかそこまで行っていないと。だから、先生がおっしゃったように、これはむしろ医療者でないほうが、日本の場合はいいのではないかと、私もちょっと考えを今、変えています。

○磯部委員長 私から伺います。とても良いシステムだと思いますが、ソーシャルワーカーがその役割を行うとして、その教育、あるいは研修のシステムを作って、きっちりと共通の基盤を作らないといけないと思うのですが、それについてはどういうお考えなのでしょうか。

○横田委員 先ほど有賀先生がおっしゃったように、MSWの職能団体としての団体と、日本臨床救急医学会が協力して、この点に関してではないのですが、一定水準以上のMSWの方には、学会から認定しようと、そういうプログラムがもう走り出していると聞いています。そういう中に、こういったグリーフケア、あるいはその延長線上の臓器提供ということを組み込んでいく、そんな議論を今しています。

○磯部委員長 厚労省も、学会認定の資格のようなものをお考えでいらっしゃるのですか。

○井内移植医療対策推進室長 我々のほうとしては、まだそこまでは考えておりませんので、実際、本日の御議論とか、研究班でのお考えを聞きながら、考えてまいりたいと思っています。

○木下委員 非常に良い議論だと思うのですね。1つ、ポジティブに考えたときにはすごくいいのですが、ソーシャルワーカーというのは社会福祉士であるとか、精神保険福祉士であるとか、そういうものも十分トレーニングされた人が、大きなというか、ここに関係されるような病院はなっておられると思うのですが、必ずしもそういう制限はないですよね。ですから、ネガティブなほうを考えると、よかれと思って素人的に対応したときには、逆に働くところもあるかと思いますので、何らかの形の横田先生が言っておられるような、学会主導の、これだけのものはミニマムリクワイアメントとして、認定になるのか何か分かりませんが、受けた、あるいは認定したというところが、ネガティブなものを排除するためにも必要かなと思いました。

○有賀委員 看護学の中には、家族看護というのがあって、私ども医学の分野では家族医学という概念ではなかなかやらないのですが、家族のことも知っていなければいけないので、医学にも実態としては家族看護のようなこともあり得ます。しかし看護学には学問体系として家族看護というのがあって、その中でICUやら救命センターの中で、看護師さんたちがそれなりのことをやろうとしている。ですから、そのようなことも混ぜながら、今の話をやっていかないといけないのではないか。突然新しい仕事がポンと出るのではなくて、今でも一生懸命頑張っているナーシングスタッフの中に、そのことをやっている方がいますので、是非そのような人たちとこの件をみんなで作ろう。渡邊さん、それでいいのですよね。あなたが言わないから、私が言ってしまいました。すみません。

○渡邊委員 おっしゃるとおり、私たち看護師は現場の中で家族看護をすごく重要視しています。私が前にいた大学病院では、もう既に同じソーシャルワーカーが救命センターに入り込んで、毎日、医局の朝のカンファレンスに入り、その後看護師ともカンファレンスをやっておりました。その中で、御家族の方の御意向とか、いろいろな情報交換行っていました。ソーシャルワーカーは、転院調整をしており非常に負担が掛かっていました。ここにまた臓器提供時の家族対応が入ってくると、ソーシャルワーカーに負担がまた掛かってくるのかなと思います。ソーシャルワーカーを活用するというのはすごく良い考えだなと思ったのですが負担が増えてくる点でちょっと危惧します。

 私は前回も発言させてもらったのですが、院内コーディネーターについては検討していただきたいと思っております。私たち看護師は、家族看護に力を入れていますし、グリーフケアというところにもすごく焦点を置いていますので、是非そういったことを専門的にやる院内コーディネーターを制度的に配置してもらえると有り難いと思います。いかがでしょうか。

○平澤委員 院内コーディネーターの立場としてお話させていただくと、選択肢提示でソーシャルワーカーを窓口にされるというのは、すごく合理的でいいと思うのですが、きっとマンパワーの問題で、ちょっとした専門的な話があったときに、誰かに相談できるという身近な関係性の人がいるのと、いないのとでは、大きく違うと思うのです。やはり病院の中でも臓器提供の話は突発的に出てくることでもありますので、そういった意味ではこの矢印が、かなり入院して病状説明が入った、一番最初のファーストコンタクトの段階から介入していくということを考えて、広い視野で見ていったときに、ソーシャルワーカーの方はピンポイントというよりは、チームで動くような形として、その中に院内コーディネーターも入れていただいて、初動から動かしていただくというのが、私たちとしても早めに情報も入ってくるので、重症集中の認定の看護師などとも役割も棲み分けできますし、いいかなと思います。

 ただ、私も院内コーディネーターを平成14年からさせていただいていますが、実際、10数年やらせていただいていて、活動の内容はほとんど変わりがないというか、動きとして、病院としてもどのように使っていいのかが分からないところが正直な部分で、しかも今、多少の委嘱状なりで動きやすくはなっていますが、今、看護師として家族ケアの勉強はもちろんしますが、更に終末期医療、看取りという部分に特化した教育を受けてきたかというと、やはりみんな経験値でやっているところが主かなと思うのです。そうなったときに、今、院内コーディネーターの8割は看護師がやっているというところも考えると、臓器提供の家族ケアというところに院内コーディネーターを置いていただくというのは、これは一番良い形ではあると思っているので、そういった意味で病院としてこういった重症集中、いわゆる看取り、終末期医療になったときに、院内コーディネーターが臓器提供にかかわらず、全てにおいて介入できるような仕組みができると、私たちの活動の幅も広がりますし、また活動の内容も限局してくるので、非常に明確化して病院の中で動きやすいかなと考えています。

 看護師としては、やはり認定看護師が病院の中では診療報酬に一番関わってくるので、特に緩和ケアに関しては、診療加算が1400点付くというところもあると、明確に数字的評価が出てくると非常に置きやすくなってきますが、私たちはそういった意味でなかなか立ち位置が難しいと思うので、こういった認定という立ち位置で、日看協に一緒に協力していただくような形で、終末期若しくは看取りケアの認定看護師のようなもので、私たち院内のコーディネーターが介入できるようにしていただけると、活動の幅はグッと広がって、臓器提供にもグッと介入しやすくなるのではないかと思っています。

○小笠原委員 ちょっと今の議論がコンフュージョンしていて、要するに家族に対してどうするかという話ですから、それが病院として誰が情報を共有して活動するか。それはその病院で私は全然問題ないと思うのですが、やはり家族にとっては、いろいろな立場の人が次から次へと代わるというのはちょっとまずくて、有賀先生が言われたように、この家族に接する方々はやはりある程度数を限定してやらないと、ダイレクトにそこにコーディネーターが入ってくるというのは、ちょっと違和感があると思うのです。その中で、情報を共有して活動するのは構わないのですが、ダイレクトに家族に伝わるのはある程度限定しないと、家族の立場で考えると、ちょっと違和感があるかなと思います。ただ、その情報を共有して、チームとして活動するのは全く異論はありません。

○平澤委員 院内コーディネーターが必ずしも臓器提供だけについてやっているわけではなくて、看取りの中の1つの選択肢として、臓器提供ということに介入しているだけです。病院によっては、ICUとかHCU、若しくは脳外科の病棟に院内コーディネーターを必ず設置して、通常の日常業務の看護ケアの一環の1つとして、そのようなお話もできる立場の人間がいるという役割でやっているので、必ずしも院内コーディネーターが臓器移植の専門家だから、そのときにだけ出てくるというわけではないのです。家族にしてみると、あそこの病院の看護師が何かそういったことの専門的なお話をしてくれるので、JOTの方が来られると、もう断れないというように思われがちですが、院内の同じ制服を着たスタッフが、そういった家族の立場でお話を伺う延長線上で、そういった話に対する相談を受けることは日常的にやっていることなので、そこは問題ないと思っています。

○渡邊委員 救命センターでも、家族ケアに関しては、なるべく同じ看護師が御家族の方に対応するという配慮もしています。そのような中で、ソーシャルワーカーは、早い段階から介入しており、いろいろな場面で御家族の方との面談により情報収集をして医師や看護師と情報交換をしております。そのような体制の施設もたくさんあると思います。今後、ソーシャルワーカーと院内コーディネーターや対象患者さんを受け持っている看護師、そして担当医とのコミュニケーションが円滑になることによって、御家族の方への対応がかなりスムーズになるのかなと思いますし、御家族の本音がいろいろなところから聞けるのではないかと思っています。

○有賀委員 この漫画を見ると、みんな臓器提供みたいになっていますが、私どもが救命センターで頑張れば、つまり頑張り続けてきたわけですが、助かる人も結構いるわけですよね。その人たちも相談に乗ってあげなければいけないというのは、この話のキーなのです。ですから、看取りの部分で、場合によってはという話はもちろんいいのですが、そうではなくて、突然、自分の家族が救命センターに運ばれたと。それで、病院に来た。だけど、どうなってしまっているのだ、ドキドキドキというところから出発だという話なのですよ。

 そういう意味で、職種がナースであれ、MSWであれ、場合によってはドクターでもいいのかもしれませんが、グリーフケアまで含めた形で一気通貫的に面倒を見るような、そういう仕組みを是非確立していただくと、先ほど言った本題であるところの、臓器提供するかもしれない施設の負担感が減るということで、議論が出発しているのです。

 ですから、院内コーディネーターという話は、そういう意味では名前を変えていただいたほうがいいのかもしれません。でないと、さっき車に跳ねられたというお母さんとお父さんが来たときに、院内コーディネーターが突然出てきて「相談ですよ」と言われたら、「一体、何だ、これは」と、むしろ混乱しますよね。そういうことを今ここで議論しようとしている。

○渡邊委員 以前、熱傷センターで働いていたときに、熱傷の患者さんが運ばれてくると同時に、経済的な問題とか、社会福祉の適応などのために翌日からソーシャルワーカーが介入して御家族の方にお話を聞いて、経済状態や、御家族の背景とか、いろいろなことを聞いてました。そういった意味合いからも、入院と同時にソーシャルワーカーが介入していくというのは、もう既にベースがでている施設もあるのではないかと思います。私たちが各専門職チームで、チーム医療をどう展開するのか、そして、臓器提供の話があったときに各専門職チームがどのように情報交換を円滑にするのかなどが今後の課題だと思います。

○木下委員 ちょっと違う観点でいいですか。厚生労働省的にどう考えておられるのかということなのですが、各病院にいる現状のソーシャルワーカーであるとか、その現状の中の職種的にというか、業務を臓器移植のこういうことにも増やしていくというのか、あるいはソーシャルワーカー全体に人数というか、あるサポートをして、増やして、そして臓器移植を更に盛り上げていこうというのかによって、かなり金目のことになるのですが、それも基本的なところなので、ちょっとお考えを。

○井内移植医療対策推進室長 この議題に関しては、大前提として、我々の考え方は、まだ確固たるものはまずはないです。議論をして研究班で検討いただいて、本日の御意見等を頂く中で、どのようなものがいいのかを検討していただく。その中で、我々としても考え方をブラッシュアップしていくというのが、まずベースです。

 ただ、我々としては実際こういったことを研究班で検討していただいている出発点としては、選択肢提示をあるタイミングで急にするのがなかなか難しいという医療現場からの声があり、それはなぜかというと、それまでにいわゆるドナーになるかもしれない方との信頼関係を築くというところが、なかなか皆さん、ドクターもやりたいとは思いながらも忙しすぎてできないという現状がある。なので、選択肢提示などがすごい唐突感があるということがありましたので、そういう意味で、いわゆる臓器提供だけのことを考えるのではなく、救急で運ばれてきた患者さん、若しくは患者家族のケアを一定程度しないと、結果として臓器提供につながりにくいというロジックになるのかなと我々は感じておりますので、どちらかというと具体的にどういった方が何を担当するかというよりも、いわゆる救急で運ばれた患者さん、ドナーになるかもしれない患者さん、若しくはその家族に対して、どのようなアプローチをすることが一番適切かという観点で、まずは御議論いただいた上で、そこが固まれば、おのずとやり方等は変わってくるのかなとは思っております。具体的な手法で、こういう考えでというところまでは、まだ至っていないというのが私の印象です。

○磯部委員長 今の議論からしますと、少し飛躍するかもしれませんが、臓器移植の臓器のドナーの提供を増やすという視点で、このシステムに賛同される方が多いと思うのですが、実際これが動くとなると、臓器提供施設だけではなくて、日本津々浦々、救急病院、あるいはICUといったところで、こういったニーズが出てくると思います。まだお決めになっていらっしゃらないのだと思いますが、そういう方向で議論を広げなければいけないと私は思いますので、併せて御検討いただければと思います。

○奥山委員 先ほど熱傷センターの話が出たのですが、例えばがんの問題だったら、チーム医療のあり方のモデルがありますよね。例えば重症患者さんに対するチーム医療モデルといったものを出して、そういうのをみんなで進めていくと考えたほうが、突然、メディカルソーシャルワーカーだけ入れなさいというよりは、もう少し広がるのではないかと思います。特に子供の場合などは、やはり重症のお子さんがいると、兄弟の問題等も大きいので、チャイルド・ライフ・スペシャリストやホスピタル・プレー・セラピストとか、そういったいろいろなコメディカルの方々が入って兄弟ケアをするとか、その他いろいろな対応をしますので、チーム医療という考え方でやったほうがいいのかなと思います。ただ、先ほど第三者的にと言われると、また少し話が違ってくるので、そこをはっきりしたほうがいいのではないかと思います。ソーシャルワーカーも医療者ですから、その病院の中のチーム医療と考えて、情報は共有されるというところでスタートしたほうがいいのではないかなと思いました。以上です。

○加藤委員 先ほど横田先生から、負担感を減らさないと、これは進まないというお話だったのですが、例えば脳死判定医がよそから人を借りてくることができるとか、そういうことが、各救急病院で指定された病院の中で周知徹底されているかどうかを考えたときに、知らない病院が恐らくすごくたくさんあると思うのです。まだ全部を自分の所でやらなければいけないと思っている病院もたくさんありますので、その辺をもう少し周知徹底して、こういう貸し借り関係できますよみたいなことですね。そうすると、多少気が楽になるのかなとも思います。

 あと、グリーフケアの問題なのですが、私も何例か経験した段階では、気持ちをよく察してということは当然なのですが、これだけ臓器移植の概念が浸透してきている段階ですので、優しい言葉をかけたとか、話を聞いたとか、もちろんそういうことは非常に大事だと思うのですが、そういうことの体制作りも私は非常に大事かなと思います。

 先ほどからMSWの方のトレーニングといいますか、先生がおっしゃったみたいに組織立ったモデル的なものを1つ作るのもいいのではないのかと。時々変わった意見を言うなという医者のように捉えているかもしれませんが、オプション提示という言葉は余り良くないのではないかと。つまり、医者が寄ってきて、どうすると言われたら、もう断り切れないなというところがあることもあって、オプション提示ではなくて、これは情報提供ですと。だから、この先はコーディネーターの方にお話を聞いていただく、そういう場を提供いたしますよというだけのことを言うだけにとどまれば、オプション提示という重い荷を負った、例えば主治医なり、担当医なり、そういう人たちの気持ちが楽になるということはあるかと思います。だから、180度、手の平を返したようなことを言わなければいけない。

 ただ、そういう言い方をしたら失礼ですが、臓器も増やしたいという気持ちもあるものですから、そうした段階では、ゆっくり時間をかけて、絶対あせってはいけないということは重々承知はしているのですが、もし患者さんの御家族、あるいは御本人の意思の中で、臓器を提供したいという気持がある方が、ゆっくりのんびりやっていたところで急変してしまったという場合もたくさんあります。だから、そのようなことを考えて、前から言っているのですが、坦々と誰が見てもこれは脳死、脳死でなくてもいいのですが、ほぼ脳死に近い段階のところで、簡単な臨床的脳死判定はできると思いますが、その段階で情報を提供、つまり、「コーディネーターの方にお話を聞きませんか」というぐらいのことは、自動的に話を流していってもいいのではないかと。それが多分、一番早いかなと思います。以上です。

○横田委員 今、加藤先生の言われたところは非常に重要で、いろいろな支援体制が整ってきた中で、まだそれを知らないという施設が多いということです。先ほど冒頭に私が申し上げた、過去の実績によって、支援の仕方を異なった形で考えているという話の中で、これから作成しようとしているマニュアルは、その部も細かく、実績のない施設にも分かりやすいような、そんな項目立てにしてあります。一方、先ほどのMSWは、少し実績のある施設を念頭に置いています。こんな形で今、議論を進めています。以上です。

○渡邊委員 集中治療室、救命センターでは看護師が21で患者さんを受け持っておりますので、かなり御家族の方に寄り添う時間を設けております。そこで家族の方の気持ちは、看護師たちが、御家族の方がこうしたいとか、いろいろな悩みや希望を吸い上げています。必要に応じて「家族の方がこう言っています」と担当医に報告しディスカッションをして対応を検討しています。そこに臓器提供の情報が得られたら、医師に話すことでご家族に対して臓器提供に関する情報提供やコーディネーターへの連絡などが行われます。先ほど有賀先生が言ってくださった家族看護は、臓器提供の話が出る前から集中治療の場面で実践されています。ご家族は、担当看護師にいろいろな気持ちを、本当に率直に話してくださっています。そういった現状を付け加えさせていただきます。

○磯部委員長 議論は尽きませんが、提供側のことでは、あと手順マニュアルと検証会議の改善について御提案いただいています。これに関して御提案なり、追加なり、御要望なりいただければと思います。手順マニュアルは、大体作りつつあったということですね。検証会議を迅速化するというのは、厚生労働省の方は何か具体的な手立てをお考えなのでしょうか。

○井内移植医療対策推進室長 現時点では、具体的なイメージは、特に我々としても予断を持っておりません。研究班のほうで医学的に適切で、かつ迅速に現場の負担感が減るような方法を、検討いただければと思っております。

○横田委員 提出の書類の中には、同じことを何回も記載しないといけないようなところがあるのですね。そもそもそういうところは、脳死判定記録書で十分ではないかと、そんなことで少しでも負担感を少なくするという議論で進んでいます。

○磯部委員長 次に、6ページ以降の移植側の施設についての御提案がいくつかありました。順に御意見いただければと思いますが、いかがでしょうか。

○小笠原委員 このメディカルコンサルタントの派遣の件ですが、ここに移植側の施設の負担とありますが、これは実は提供側も負担でして、我々の経験としては、ある日突然、全く知らないコンサルタントが来て、いろんなものを要求していくのです。あれは非常に違和感がありまして、何でこれを同じ施設の中の専門の科ができないのか、私は全くそれは理解できませんで、聞いたら、結局はメディカルコンサルタントが少ないと。それは移植を受ける側の学会の中の意識の問題だと言ったことがあるのですが、要するに移植に対して興味のある外科医が少ないからだと、そう言われたのです。これは非常にゆゆしき話で、やはりこの辺のところは移植をする学会の中で、きちんとこのコンサルタントを、少なくとも移植をする病院に関しては全部置かないと駄目だみたいなことを、学会としてすべきではないかなとこのときは思いました。是非、これをお願いいたします。我々にとって、非常に違和感がありました。いきなり来られるので、あなたは誰ですかと、私は怒ったことがあるのです。これはそこにセキュリティの問題が出てくるわけですね。本当にこの人かと分からないわけですから、非常にリスクが高いと思って言わせていただきました。

○小野委員 私はメディカルコンサルタントを、日本で2人しかいない時代から15年ほどずっとやっておりますが、現在は次の世代の先生方にバトンタッチをして、実際の現場で困ったときなどにアドバイスをするような立場でやっております。日本で実際にドナーが少ないときに、提供側の先生方も、非常にいろいろな形で御協力は頂くのですが、どうやったら臓器提供につながるかを全く御存じない。非常に協力的な病院が以前からずっとあったことは事実ですが、だけれども、そうではなくて、やはり一生懸命、救命しようという情熱を燃やしていた状況から、突然その方向性が変わると。かつ、第2回脳死判定をした後は自分たちの手から離れるという状況になりますと、それでも熱心に見ていただける先生は、少数派でありましたけれどいらっしゃいましたが、全く、もう振り返りもしないという状況になって、やはり臓器の提供というのは、自然に脳死になれば臓器が使えるようになるわけでは全くありませんので、脳死の状態で、その臓器が提供に適したコンディションにする必要があるといったことについては、国循にいる福嶌先生と私などで、かなりマニュアルはこれまでも随分作ってまいりましたけれども、そういった啓蒙活動というのは、非常に現在のドナーが増えた段階で、臓器提供率、1人のドナーの方からの臓器提供数が世界でダントツに多いという実績を作っていることは間違いない事実です。

 今、小笠原先生がおっしゃったとおり、救急側、脳神経側の先生方で非常に理解をして、ほとんどメディカルコンサルタントとして行っても、特にやることがない場合があることは事実であります。実際、関東甲信越の情報は全て私に入ってきますので、その段階で、メディカルコンサルタントとして行ったときに、問題、あるいは何か少し気が付いたことがあったら必ず報告するようにさせて、ほぼ全ての症例については報告を受けておりますが、確かに行き違いがあることは事実です。これは、それぞれの初対面の先生方同士でやる場合が多数ありますので、行き違いはあるとは思うのですが、これまでの日本の臓器の提供、あるいは臓器の提供の意思を示した御家族並びに患者様の意思を、どれだけ数多く臓器の提供につなげるかということを果たすためにやってきたものでありまして、ですのでメディカルコンサルタント自身についても、現在、教育システムをとって、年1回ないし2回はそういったトレーニングをやるようになってまいりました。

 確かに若い世代になりますと、とにかく行けと言われて、なかなか現状を把握しないまま、そこに行って評価をするといったような、中にはそれぞれの病院のしきたりというものを十分に理解できないままに行ってしまうことはあるかもしれませんので、その辺は今後どういう形にしようかということを考えております。現実的には、特にメディカルコンサルタントはほとんどが心臓で、肺の先生方がここ数年は加わっておりますが、心臓の場合は数百例ある心臓手術のうちの一部が心臓移植でありまして、心臓移植だけをやっているわけでは全くありません。ですので、数はどうしてもそこまでは増えない。では、どうしたらよいのかということで、様々な形で救急医学会、あるいは集中治療学会の先生方とも協議をしながら、必ずしも心臓の外科医、移植医だけがメディカルコンサルタントとしてのファンクションを果たす義務ではないだろうということで、より広く、もし必要であればそういった職種の先生方にメディカルコンサルタントを務めていただければと思います。また、例えば、自施設で独自に脳神経外科の先生、あるいは集中治療の先生がメディカルコンサルタントとしてのファンクションになっていただけるのであれば、それはそれのほうが全く自然の流れでありますので、むしろそういう方向にこれから進んでいったほうがよいのではないかと私も考えていますし、メディカルコンサルタント教育という観点から言っても、そちらの方向に徐々に進んでいくと考えています。

○磯部委員長 ほかにいかがでしょうか。

○猪股委員 私はメディカルコンサルタントではないのですけれども、随時、ネットワークから依頼されて行ったことは何度かあります。ですから、移植臓器としての妥当性を見慣れた医師が随時派遣されるシステムがあるので、例えば自分の所属する施設のドナー症例であれば、その臓器のチェックを慣れた移植医自身がすることは今までも可能であったので、そういう互助的なシステムがこれからできていけば、より両方(提供側、移植側)の負担軽減にはなると思います。それと、先ほど摘出に関する、臓器提供に関するマニュアルを作るとおっしゃいましたので、その中に具体的に、どういうタイミングになったらそういう人(MC)が行くのだと、地域によって、あるいは臓器によって、もう特定の名前を挙げてもいいと思うのですけれども、そういう人がいらっしゃって、タイミングをみて行く可能性がありますということを提供側に周知して、できれば地域によってそのようなMC候補者名簿のアップデートしていくとか、そういったことも必要なのかなと思います。以上です。

○上本委員 京都大学の上本です。私は肝臓なのですけれども、通常の肝臓を見る先生が、この患者さんの肝臓が移植可能かどうかというのはなかなかすぐには難しいと思うのです。かえって非常にストレスになる可能性があると思いますので、方向性に関しては、小野先生がおっしゃいましたように、提供施設の専門の先生に判断してもらうというのが最終的な方向だと思うのですが、少し時間がかかるのではないかと思います。それは脂肪肝の程度とか、あるいは肝機能の、ワンポイントではなくて数日間の推移で、適しているかどうかという判断にもなってきますので、今、やはりメディカルコンサルタントが突然行って失礼な対応をしたというのは、私は初めて聞いたので、これは本当に改善しなくてはいけないと思うのですけれども、これはまた別問題なのですが、そちらのほうに移行するのに少し時間がかかるのではないかと思っております。

○小笠原委員 これは自分の施設からドナーが出た場合には、メディカルコンサルタントがもし自分の施設にいればやってもいいということですか。実は我々、外科がずっとカルテを見ているのですけれども、一切見に来なくて、何でこういうことが起こるのだろうと。それで外からわざわざ来たわけですよ。うちの外科は移植をやっているわけですけれども、何で自分の外科が来てそれをやらないのか、非常に違和感がありました。それは結局、コンサルタントと認定されていて、自施設のその人はできないという理由か、私は聞きませんでしたけれども、そういう理解でしょうか。

○小野委員 メディカルコンサルタントの認定というシステムは、かつては比較的、一定の評価の仕方などの教育と言いますか、マニュアルがありますので、その教育も最初はペアで行って、実際に先輩医師が次の世代の先生方に、こういったところに注意しながら見ていくということで教えていました。ところがドナーが増えてきたので、そうは言ってられないということで、今、どんどん増やしていく方向になっています。かつてはその移植施設の医師が責任をもって、例えばドナー、臓器が他施設に提供されるとしてもきちんと評価をしましょうという方向になっていましたが、更に先ほど申し上げたとおり、救急医学会や集中治療医学会にもいろいろな形でお話を差し上げて、必ずしも移植に携わらない先生方であっても、評価のプロセスをきちんと理解していれば、メディカルコンサルタントとしてやはりお願いしようではないかという動きが、ここ数年ようやく出てきていることは事実です。

 ですので、先生方の施設で、例えば外科の先生方あるいは循環器内科の先生方、あるいは呼吸器の先生方で、自施設で出たときはお手伝いしますよという意思をお持ちであれば、そういった先生方は、先ほど申し上げた年1回又は2回のメディカルコンサルタントのトレーニングをやっておりますので、一度その場に来ていただければ、最終的には臓器移植ネットワークへの登録が必要になりますが、多分、登録はできるということで、さほど現在は、そういう特定の施設あるいは特定の人たちに限定するというハードルは設けてはいないと認識しています。

○磯部委員長 議論を伺っていますと、ドナー管理の標準化あるいはメディカルコンサルタントのシステム構築という厚労省からのご提案ですけれども、やはり少し情報を共有して議論の場を設けないと、すぐに何か提案が出てくる状況ではないような気がいたしました。今後、どういう場でこれを議論されていくお考えでしょうか。

○井内移植医療対策推進室長 これは、先ほどありました厚生労働科学研究の中の横田先生の研究班の中で、こちらに関しましては移植学会の江川先生が筆頭になりまして、各臓器からメンバーを選出していただいていますが、ここで今回、提案させていただいているような事項については、今現在この研究班の中で検討を進めていただいております。本日の意見は、これも含めて、江川先生のその検討のほうに戻していきたいと思っておりますので、今の委員長からいただいた御意見も踏まえて伝えておきます。

○磯部委員長 是非、1つの場で情報共有して進めていただかないと、少し混乱しているような気もいたしましたので。移植側のことにつきましては、あと、4番の今後の移植実施施設をどうするかという、これも大問題だと思うのですけれども、御提案の中では集約化、あるいは増加させる、相対するような御提案がありましたが、何か御意見がこの場であれば、確かに数が200300とかに増えていくと、到底対応できないのが現状だと思います。

○相川委員 腎移植に関しては、登録の報告を見ますと、年間1例しかやっていない施設が一番多いということになっております。これは泌尿器科又は外科の職種の方がそういうふうになっているのですけれども、一般外科、一般泌尿器科をやりながら、また移植もやっていると。これは臓器提供が増えてきますとそういうわけにはいかなくなると思うのです。ある意味では、泌尿器科又は外科の中で移植専門のチームを構築して、そこでやらないと、とてもじゃないけれど対応できないということが起こります。だから腎移植の場合には、集約化しないとなかなかうまくいかないのではないかと考えています。

○磯部委員長 順に肝臓と心臓とお伺いしたいと思いますが。

○上本委員 肝臓のほうは、肝臓学会が中心になって、施設の成績と症例数等の評価を2年から3年に1回やっています。そのときにほとんど症例がない、あるいは成績の悪い所は、外れてもらうという方向です。それと肝臓の場合は生体肝移植もございますので、生体肝移植の症例数が非常に増えて、その地域で脳死の施設が必要であろうと思われる所は、手挙げ方式ですが、募集も掛けて新陳代謝を図っているということですので、今後の流れにはその方向で付いて行けるのではないかと、今考えております。

○磯部委員長 増加させるということが、やはり集約化と増加ということなのですね。

○上本委員 そうですね。

○磯部委員長 心臓はいかがでしょう。

○小野委員 心臓移植のほうは、心臓移植・心肺同時移植関連学会協議会というのを学会合同で現在組織しておりまして、そこで心臓移植施設の追加の認定をすべきかどうかという議論を継続的に行っております。最近では、成人の心臓移植実施施設の追加認定を昨年から開始しておりまして、昨年、議論をして、今年1施設増加いたしました。その後、また、成人の施設については3施設のうち1施設の追加認定でして、残りの2施設については、今後、院内体制整備がきちんとした段階で、再度、検証を行う形で進んでおります。

 また、小児の臓器提供はまだ、十分多くはありませんが、これまでは小児の心臓移植は年間、3例ないしは4例でしたが、今年は6例ということで、過去最高になっております。心臓移植の数も昨年は50数例です。今年はもう少し増えるだろうということで、やはりトータルの脳死のドナーが増えていることを鑑みて、今後、特に小児の心臓移植については、やはりもう少し施設の数も増加させたほうがいいのではないかということで、現在、小児の新規の心臓移植実施施設の追加の認定作業をちょうど始めたところです。更に継続的に心臓移植の実施施設を増やすかどうかは、先ほど申し上げた協議会の中で、各学会から逐次派遣された代表委員の先生方と御議論をしながら、逐次その年間の心臓移植数と照らし合わせながら考えていきたいということです。現在、10施設ですが、今後はゆっくり増加の傾向に行くというのが、心臓移植の実施施設の動向と考えています。

○磯部委員長 私から、1つ感じていることを追加いたします。ほとんど移植を行っていない施設が実はあります。教室の体制が変わってということもありまして、クオリティーのコントロールの観点からは、そういった施設についても検討して、肝臓は取捨選択というようなことをおっしゃっていましたけれども、再審査をするなり、検証するなりというシステムをやはり入れていかないといけないと私は思っています。

○小野委員 磯部委員長からの御指摘のとおりで、各心臓移植の実施施設についても、やはり定期的な一定の期間のうちに、検証といいますか、移植施設の検証をしなければいけないということがございましたので、それは現在、継続議論になっていて、どういうタイミングでこれまでの移植施設の検証を行うかということは、まだ決定はしておりませんが、これはやるべきであるということが決まっていることは事実ですので。追加です。

○相川委員 3番目の「摘出チームの互助制度」なのですが、これは実は3年前に日本臨床腎移植学会、日本膵・膵頭移植研究会から、この摘出チームの互助制度を臓器移植ネットワークに案を出しております。残念ながら、まだこれが実施されていないのですけれども、実は去年の日本移植学会総会で、ネットワーク側と話合いを持ちまして、一応決まったのですが、今度はこの摘出の互助制度に乗せるということで、まだ、そのままペンディングになっております。具体的に申しますと、死体腎の実施施設に、今の状態では2チームがほかの所から駆けつけて腎臓を摘出していると、こんな国は日本以外には他にないわけで、実施施設が摘出して2腎を搬送すればいいと、これは当たり前のことなのですけれども、それも行われていない状況です。

 また、神奈川県、そして兵庫県は、実際、この互助制度を取り入れていて、たとえ自分が移植の患者さんの担当でなくても、それぞれの日程の調整を行って、兵庫県などは3チーム、神奈川県では4チームがお互いに協力して摘出のために備います。死体腎の特に心停止下の臓器提供の場合には、待機する問題がありますので、その病院に泊まり込むのもずっと同じチームが泊まり込むわけにはいきませんので、実際、交代で行われています。ですから、これをやはり全国に広げていくべきだと考えます。以上です。

○磯部委員長 まだまだ課題があるようですので、この1番、2番、3番につきましては、是非、議論の場を1つにして、深い議論をして、また、こちらに御提案を頂いてという形に進めていただきたいと思います。4につきましても、各協議会でやっているということなのだと思いますけれども、全体の今後の見通しも含めて、どのぐらいの年度までにどれぐらいの数を見込んで整備しなくてはいけないかとか、そういった見通しについても御提示いただかないと、各学会はなかなか動きづらいと思いますので、学会とも協議をして、現状を踏まえて、厚労省の見通しを見せていただいた上で議論をしていただきたいと思います。この議題の全体を通じて、提供側、移植側を通じて御意見が最後にもしあれば、よろしいでしょうか。

○木下委員 大変些末なことなのですが、この臓器提供数は臓器移植ネットワークから得られたデータだと思うのです。と言うのは、一応、角膜というか眼球が入っていますので、アイバンクから入っているのは1,000件ぐらい、この上に上乗せされますので、臓器移植ネットワークからの臓器提供数というデータになりますので、記載していただけると有り難いです。

○磯部委員長 大変、有益な御意見をたくさん頂いたと思います。これを踏まえて先に進めていただければと思います。それでは次の議題に移らせていただきます。事務局から御説明をお願いいたします。

○井内移植医療対策推進室長 それでは資料2に従いまして、「臓器移植に関する法律」の運用に関する指針、ガイドラインの改正についての御説明をさせていただきます。このガイドラインの改正につきましては2点あります。2点とも事実関係に基づき、変更させていただきたいというところです。

1 点目です。臓器提供施設に関する事項、第4というものがありますが、この中で「日本脳神経外科学会の基幹施設又は研修施設」と書いております。これにつきまして、日本脳神経外科学会の専門医認定制度に係る施設類型の変更ということで、簡単に申しますと、この「研修施設」というのが、「連携施設」と、日本脳神経外科学会の中で変わったというものです。こういった変更を踏まえ、参考資料1-4に現行と改正案というものを右左で出しておりますが、その部分を変えたいというのが1点です。

2 点目ですが、資料23ページ、2.生体からの臓器移植の取り扱いに関する事項、第13というものです。この中で平成24年愛媛県宇和島徳洲会病院より、修復腎を用いた腎移植術を先進医療として適用するよう申請されたが、審議の結果、否認されたという経緯が過去にありました。それを基に現在のガイドラインが書かれているというものです。それが平成284月、同病院より再度の申請があり、同年8月及び平成293月の先進医療技術審査部会において、継続審議の評価を受けたと。その結果、平成291019日に先進医療技術審査部会において、修復腎移植の技術的妥当性が審査され、以下のとおり条件付きとはなりましたが、「適」と評価されたということがありました。

 この下のほうに先進医療Bというものがありますが、一部、先進医療で認めていくということを、厚生労働省の中では、この移植の分野に関しても、先進医療技術審査部会という中で検証をしているということで、そこでの一元的な検証の中で、条件付き適となったという事実があります。その条件につきましては、この下に書いている4つのチェックですが、4点について条件付きとなったというものです。

 この先進医療技術審査部会の動きを受け、次の4ページ、(2)先進医療技術部会における審査を受けた学会の動きということで、平成29111日に、日本泌尿器科学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本臨床腎移植学会、日本移植学会の連名で、「腎摘出術による病気腎を用いた修復腎移植の先進医療適応に関する要望書」というものが提出されております。これが参考資料1-3になります。

 これにつきましては、要望事項として、先進医療Bとして行うことが厚生労働省の中の部会で決まったことを踏まえ、適正に実施すること、新しい治療法として適正に手術を記録保存すること、術後リスクを適正に評価することなどが指摘され、要望されたという事実があります。これを踏まえ、臓器移植に関するガイドラインについては、2点の変更をお願いしたいというものです。

 この下に改正案と現行案というものがあります。右側が現行案で、5ページ目に掛かる部分の1点目は、現行案の下線部のところ、「現時点では医学的に妥当性がないとされている」とありますが、これに関しては同じ厚生労働省内の先進医療技術審査部会のほうで、技術的に「適」となったことを踏まえ、この部分を削除して、左側の改正案のような改正ができないかというところが1点です。

 もう1点ですが、下の「さらに」以降のところです。右のほうが現行案で、「さらに、研究実施に当たっての適正な手続きの確保、臓器の提供者からの研究に関する問い合わせへの的確な対応、研究に関する情報の適切かつ正確な公開等を通じて、研究の透明性の確保を図らなければならないこと」となっておりますが、今回、この先進医療技術審査部会での議論の推移及び学会からの要望等を踏まえ、これの一部、左側の下線部ですが、「研究の透明性の確保を図り」に「適正な評価を行う」という記述をプラスアルファできないかということで、一部削除、一部付け足しという形での変更を、厚生労働省内のほかの部会ではありますが、そこの審議結果及び学会からの要望等を踏まえ、このような改正ができないかという御提案です。事務局からは以上です。

○磯部委員長 2点ありました。1点は、参考資料1-4の「研修施設」を「連携施設」にという改正案ですが、御議論ありますか。これについては承認ということにいたします。2点目は、最後に御説明があったとおり、先進医療Bの議論を踏まえて、ガイドラインの文言の削除と追加という御提案です。御議論ありますでしょうか。 

○相川委員 私の個人的な意見を申し述べますけれども、まず、5学会の反対声明は、まだ生きているという事実があります。つまり、積極的には病腎移植には賛成していない。これは幾つか問題点がありまして、審査部会及び要望書に欠けている点があります。1つは小径腎がん、つまり小さい腎がんは、良性腫瘍と鑑別ができない場合があるということです。特にオンコサイトーマ、そして脂肪成分の少ない腎血管筋脂肪腫というものがあります。

 これは彼らが参考にしている、デビット・ニコルが著者の病腎移植の論文ですけれども、この中の26%が実は良性腫瘍だったということが記載されています。良性腫瘍は摘出する必要がないものでして、ある意味では、これは非常に問題なところがあります。がんと鑑別ができないということは確かにありますが、部分切除だったらまだしも腎機能は温存できますが、良性腫瘍で全摘してしまっているというのが、かなりの症例に多いことがわかります。その議論が、ここの要望書にも、そして先進医療会議でも欠けています。良性腫瘍を全摘したら医療過誤にも発展しますので、その点、やはり注意が必要だと私は思います。

 もう1つは、腎がん患者というのは、高血圧、高脂血症、高齢者、糖尿病という患者さんが多いです。こういう患者さんに腎の部分切除ではなくて、全摘してしまうと、将来的に腎障害を起こして腎不全になるということになりかねません。腎がんの場合、これは摘出しなければいけないですから、手術はしなくてはいけない。生体腎ドナーの場合には、生体腎ドナーのガイドラインに沿って、将来的に腎臓が1つになった場合に、腎不全になる可能性が高いドナーは除くことができます。しかし腎がん患者は摘出すると腎不全になる危険性があってもがんは摘出しなければいけません。だから摘出をしなくてはいけない。しかも今、部分切除術というのは、ロボット手術でも保険適用になっています。これは、もう部分切除術が一般化しているということになります。確かにロボット手術の適応外を、病腎移植のドナーとしての適応にはしているのですが、米国では、米国泌尿器科学会元理事長のジョン・バリー、そしてクリーブランドクリニックのキャンベルという方が、第三者の腎がんをドナーにしてはいけないと、これは倫理的な問題がある、インフォームド・コンセントが取れない。つまり腎がん患者をドナーとすることに、その腎がん患者にとって不利な点が多過ぎるということで、実際に米国ではこういう意見が大半です。ですから、日本において世界に先駆けてどうしてこれが認められたのか、私はよく分かりませんが、問題があるということを御指摘しました。

 もう1つは、今までは4cm以下の腫瘍で応募していたのです。今回の応募では7cm以下に拡大しております。私は4cm以下の腎がんの方から、家族間がほとんどなのですけれども、これを部分切除して移植したのは、レポートなどで見ておりますが、7cm以下というのは、私自身が見たレポートはありません。これによって1から10%、恐らくがんが、場合によってはレシピエントに行ってしまう可能性がある。でも、レシピエントの場合はインフォームド・コンセントが取れますので、これは余り問題ないと思うのですけれども、問題はやはり腎がん患者の保護、権利をちゃんと守らなくてはいけないというところが必要だと思います。

 もう一つは、ちょっと長くなって申し訳ないのですが、診療報酬上、生体腎移植を行う施設基準として日本移植学会、日本臨床腎移植学会の登録事業、つまり移植患者がどういう状態だったのかを登録することに協力しなければならないと記載されております。

 今後、病腎移植がこの先進医療会議に通りますと、一部が保険適用になりますので、一般の腎移植患者の登録においても正確に行ってもらうことが条件になると思います。実は室長は条件付き承認で承認されたと言われました。これは事実ですが、最後の審査部会で、施設について疑問を持っている、不承知を出している方が2名おります。ですから、以上のことを解決しない限りは、なかなか実施は難しいところがあると思います。確かに5学会で監視をすることは大事なのです。もちろん決まったことに、私は従いたいと思いますが、良性腫瘍のこと、腎不全のリスク、一般の腎移植の登録、術式の違いであるインフォームドコンセントなどが欠けていることは、十分に注意しなくてはいけない点だと、個人的には思います。以上です。

○小笠原委員 今のお話と関係するのですが、この先進医療は、要するにこれは何が問題かというと、腎移植のドナーが足りないから、苦肉の策としてやるという考え方ですよね、バッググラウンドにあるのは。もしこれが足りていたら、こんなことをやる必要はないと。であれば、こういうことが将来来るかどうか、私は分かりませんけれども、もしこのドナーが足りたら、この先進医療はなくなるという考え方でよろしいのですか。それが前提でないと、違和感を私も感じるのですが、そういうことなのでしょうか。

○井内移植医療対策推進室長 恐らく、臓器移植が順調に増えたとしても、腎臓に関しては、やはりレシピエント希望者が非常に多い。透析の方、全員になりますので、桁が変わってくると。なので、腎臓を希望される全部のレシピエントに腎臓が行くということは、多分、諸外国を見てもないのかなという前提はあります。

○相川委員 米国では、いわゆる生体腎移植は、たまたまドナーを調べていて、小さな腎がんが見付かった場合には、これをやっています。それから第三者であっても、献腎移植、つまり死体腎の移植は認めていいのではないかという方向性が出ております。ところがやはり、第三者の腎がん患者に対して、将来的に腎不全になる確率が非常に高くなること、又は良性腫瘍が混じっていること、こういう危険がありますので、米国では一応、倫理的に問題があるのではないかということで、実際は行っていないと思います。

○今村委員 私も今、相川委員が言われたことと全く同様の危惧を持ちます。5年前の審査部会の状況と、今回の状況とは、どこがどう変わって「条件付き適」になったのか、さっぱり分からない。学会の慎重な審査の結果、このようになったということですけれども、少なくとも一般の医師が聞いて、どう変わったのか説明できない。

 そしてまた、今、言われましたけれども、倫理的にも非常に問題で、今の状況をきちんと説明して、きちんとしたインフォームド・コンセントが取れるのかと。いい加減な情報だけでICを取って、そしてやっていくということについては、患者の保護という面で非常に問題があるということで、これはよほど慎重に追跡調査をやって、その結果、差戻しても駄目だという結果も当然あり得るべきだと思っております。今回のこの審査部会の決定については、非常に変なところがあるなという感触を持っております。

○井内移植医療対策推進室長 我々が所掌する会議ではないのですが、5年前と今回の大きな変更点というところで、基本的に腎の部分摘出術、前回は、部分摘出術が適応の患者さんも、例えばその患者さんがドナーになりたいと希望すれば、いわゆるドナーになれたというデザインでしたが、今回は全摘をしなければいけないという患者さんがドナーになることのみを許すということで、いわゆる部分摘出で乗り切れる患者さんについては、ドナー候補者にもならないというのが、1点大きな変更だと聞いております。

 あと、今村委員のほうからも御指摘がありましたように、第三者委員会というものを設置して、腎全摘の適応を判断することの客観性を高めると。これにつきまして、先ほどの資料にもあるのですが、この第三者委員会の中に、先ほどの5学会の代表が推薦する外部委員が入るということが、条件付き適の条件として入れられております。

 先ほどの条件の中にもありますように、試験開始後5症例程度については、1例ごとに厚生労働省に実績報告し、先ほどこれをすることを「技術的適」と決めた先進医療技術審査部会で審議することも条件として入っている形です。私もこちらの会議には参加していなかったので分からないのですが、ここで出されているような危惧につきましても、恐らく審議の上、こういった決定がされたというように、私としては理解しております。

○木幡委員 すごく素朴な疑問ですけれども、病腎移植については、明らかになった当時、どちらかと言いますと少しセンセーショナルにといいますか、ネガティブに報道されていたように記憶しています。ですから、今回の決定を初めて目にしたときに、正直、「えっ」というような驚きが私の中でもありました。これまでガイドラインでは、医学的に妥当性がないと書かれていたものが、今回、有効性も予測されるというような言い回しに変わった、その一番の根拠、もしこれをニュースとして国民に伝えるときに、何が一番変わった点なのかというのを、1つ教えていただきたいと思います。

○井内移植医療対策推進室長 まず我々が、今回、ガイドラインを変更するというときの御提案になった理由ですが、厚生労働省の中で、先ほどの先進医療技術審査部会のほうで、条件は付きますが、技術的適となったという事実と、ここのガイドラインに書かれている医学的妥当性がないということが、いわゆる齟齬をするということで、最新の決めた先進医療技術審査部会の決定に合わせたいというのが1点です。

 国民の方から、「では、何が変わったのか」ということなのですが、今回に関しましては、先ほど先進医療技術審査部会の中での議論で、5年前は駄目だったのが、今回はいけるようになった大きな理由としての変更点というのが、少なくともドナーになることができる患者さんの資格、いわゆる部分摘出をする患者さん、部分摘出で腎がんが治る患者さんについて、前回、5年前の駄目だったときのモデルは、その患者さんも希望すればドナーになれますよというものだったのですが、それが駄目になったと。これは一般医療としてやるという意味ではなくて、臨床研究として始めるかどうかというのが駄目だったのが、良くなったということなので、一般医療としてやるかどうかというのは、また先の話で、この結果が出てから、またこの臓器移植委員会の中での検討になります。

 ですから、一般医療として始まったのではなくて、臨床研究として始めるということが適切かどうかということの議論の中で、先ほどの変更点で、今村先生や相川先生が危惧をされていた、そういった患者さんの適応をしっかり見るというような条件が加わって、臨床研究としてやられると。そういった中で、一定程度、技術的にはやってもいいというような結論が出たということだと思っております。

○木幡委員 ちょっと、まだ分からない部分もあるのですけれども、では、これは第三者に移植するということになって、そのレシピエントは誰がどうやって選ぶのですか。

○井内移植医療対策推進室長 それは一定のルールをもって、いわゆる実施施設の中で、結局、これは腎がんがうつるかもしれないというレシピエントのリスクがありますので、そういったリスクも十分に説明した上で、レシピエントとして手を挙げた方を選ぶと。つまり、臓器移植ネットワークがやっている、ここで決めているあっせんのルールとは全く別のところで、一部限られた中だけでやるということです。

○木幡委員 病院の中でですか?

○井内移植医療対策推進室長 基本的に、この臨床研究に参加している施設の中でということです。

○見目委員 患者団体の見目です。今の御意見に引き続きの話ではないかもしれませんけれども、当時、この話が出たときに、私ども患者団体は待つ側の団体ですから、この話は非常に有り難い話だと、実は理解したのです。ほとんどの人が移植を受けられずに亡くなるという現状から見れば、捨てている腎臓を使うということは、大変有り難いと思っています。ですから、初めに話を聞いたときは大歓迎だった。

 ところが、その後、何か委員会ができて、実際にどういうことが行われたのかということを、どんどん聞くにつれて、この話はドナーの保護が全然できていないのではないかと。要は、あの当時の理解は、確かに医療として成り立っている方もいらっしゃるけれども、取られる必要のない方からも取っているし、そして取るときのやり方が、本来取るべきやり方ではない方法で取っていると、いや、取りやすい方法で取ってしまっているということが、非常に私たちの中で議論になったのです。要は移植をすることを前提とした手術の術法がされていますよと。

 そういう違和感が幾つもあって、なおかつインフォームド・コンセントをどうするのだと、これは脳死の話ではなくて、死体腎の話でもないですから、本来であれば生体間の話ですから、よく双方が理解の上にやらなければいけないのに、そこのところは分断されてしまっていると。それで一番大事なのは、この話については、レシピエントのほうの話ははっきり言ってどうでもいい話だと思うのです。リスクをどこまで負うのか、今、抱えているリスクと将来のリスクを考えて、レシピエントがどちらを取るかというだけの話ですから、それはいいのだと。でも、ドナーにとっては、この話はメリットがあるのかと、何なのだというところが非常に起こったのです。

 それで学会の方々も、その視点も踏まえて、多くの方々が多分反対をされたと理解したのですが、何かそこの議論のところが、今でも当時の5学会の方々は、きちんと議論したのかと。何か突然パラシュートのように出てきて、「はい、やりますよ」と、「これは小さな所でやるだけだから、これはいいのではないですか」と言うのだけれど、でも将来のことを考えて、その判断でいいのかと、この話は何か禍根を残すような気持ちが残ります。本当に良ければ、我々はやってほしいのです。でも、一歩下がってよく見たときに、この話はまともかというと、ちょっとクエスチョンが付くのです。

○井内移植医療対策推進室長 正に、今、言っていただいたところが、今回の大きな改善点になります。ですので、基本的には腎の全摘をするという患者さんしかドナーにはなれない。医学的にそれが腎がんの手術であっても、部分摘出では無理、全摘をしなければならない。そういったときに、相川先生のほうから、「そうではない可能性もあるから、そこはしっかりとインフォームド・コンセントをする必要がある」という御指摘があったと思われます。今回の大きなデザインの改正点で一番大きなところはそこです。

 あとは、ドナー候補者へのインフォームド・コンセントがしっかりとできているかどうかということが、実際にこの条件付きのところにも入っておりまして、今回は第三者委員会を置く、そこの実施施設だけで決めきってしまわない、外部委員を入れる。その外部委員に5学会からも参加して、しっかりとそのドナーが適応かどうかを見ると。あと、先ほどこれをやると決めた厚生労働省の先進医療技術審査部会の中でも、5症例程度は、しっかりと1例ずつ、どのように選ばれて、どのようにやられたのか、検証をするというように、多分、今、言っていただいたような危惧は、こちらの会議でも持っておられて、そこに十分な手当てをするという形で、実施することが決まったものです。

 このような経緯などもふまえまして、5学会として、今回はそういったドナーへの配慮を十分にするということと、そして出た結果がどういうものかというのを適切に評価するという2点が大きな眼目だと、私は理解しております。そういったことを必ずするようにという要望書を、厚生労働省に提出されたということです。

○磯部委員長 よろしいでしょうか。

○相川委員 先ほど、見目委員が言いましたけれども、私は泌尿器科なので、腎がんの場合、全摘の場合は腎がん根治術といって、普通は動脈、静脈の血管を最初に縛るのです。というのは、がんの細胞をなるべく流出しないようにという観点から、全摘の場合には最初に血管を縛ると。ところが、ドナーの腎採取術というのですが、これは最初の血管を縛ると、腎臓の細胞が死んでしまいますので、最後まで血管はそのまま残すことになります。先進医療会議ではどちらも小さな腎がんの場合は成績が同じだから構わないとの議論になっていますが、がんの定期的手術でなく移植用の腎採取術をすることをインフォームド・コンセントできちんと患者さんに説明したら、普通、患者さんは「成績が同じでもがんの手術をしてください」と、私は言うと思うのですけれども、その辺のインフォームド・コンセントが正確に伝わるかどうか不思議ですよね。これは親族間であれば、自分の子供のため、自分の奥さんのためと言って提供する方はいるかもしれませんが、相手が第三者ですので、そのためになぜがんの手術をしてくれないのかなと疑問に思うと思うのです。それをインフォームド・コンセントして、やはり腎不全で苦しんでいる人のために提供したいという人が何人いるかどうか、その辺が私は疑問だと思います。

○井内移植医療対策推進室長 今の御議論のところは、こちらの先進医療部会のほうでも大きな議論になりました。実施施設のほうからは、外科の先生から、泌尿器科の先生から、今、相川先生がおっしゃったような、術前に縛る、術後に縛る、そういったところでのリスクの変化というものがあるのではないか、そういう考えがあるということも伺っております。

 ただ、この先進医療技術審査部会の中で出たのが、結局、血管処理をしないでやる部分摘出と、血管処理を事前にやって全摘をする全摘術、それについての死亡率が、アメリカのほうだと聞いているのですが、諸外国でやった死亡率の差を見たときに、変化がないという事実をもって、この先進医療技術審査部会の中では、そういった血管処理を事前にする、事後にするということをもって、がんのリスクが上がる、下がるというのは、明確ではないというようなことも持ち出されていたと聞いています。

 ですので、どちらが正しいかというのは、現時点ではまだ分からないのですが、恐らく両論併記の中で、いわゆるインフォームド・コンセントをしていくことで、多分、先生のおっしゃる危惧のところも、外科医の専門家としては、そういう意見もあることも、当然、インフォームド・コンセントがされるものだと、我々は理解していますし、そういうデータもあることも説明される。そういったことをされるように、5学会の方から推薦された方が、外部委員の中に入っていくという理解を、現在、我々はしているというものです。

○磯部委員長 非常に重要な議論でした。

○奥山委員 お聞きしたいのですが、臨床研究に関する倫理指針は、今度、疫学・臨床研究倫理指針が「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に変わったのではないかと思いますが、そこは変えなくてもいいのでしょうか。

○井内移植医療対策推進室長 そこは実務上のことなので、少し確認させていただきます。

○磯部委員長 今の議論は大変重要な議論だと思いますけれどもこの議論の場は、先進医療のほうで認められた研究を前提として、このガイドラインの整合性をとるために内容の改定ということです。先進医療が終了して、その後の議論がもちろんあると思いますし、また更にその後に、臓器移植委員会での議論も当然あると思いますので、今の議論は議論として記録にとどめて、ここはこのガイドラインの文言の修正につきまして進めていきたいと思います。いかがでしょうか。これをお認めするという方向で、お認めいただけますでしょうか。異議のある方はいらっしゃいますか。

( 異議なし)

○磯部委員長 全員、賛成されたということで、この指針の改正については承認ということで進めさせていただきたいと思います。どうも御協力ありがとうございます。これで本日の議事は終了ですが、事務局のほうからお願いいたします。

○蔵満室長補佐 本日は活発な御議論を頂きまして、ありがとうございました。事務局におきましては、本日、頂きました御意見を踏まえ、引き続き臓器移植の課題の解決に向け、取り組んでまいります。また、次回以降の開催につきましては、別途、調整させていただきますので、よろしくお願いいたします。タブレット、タッチペン及びファイルにつきましては、そのまま机の上に置いておいてください。以上です。

○磯部委員長 では、閉会したいと思います。どうもありがとうございました。

 


(了)
<照会先>

健康局難病対策課移植医療対策推進室
 代表: 03(5253)1111
 内線:2365

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(疾病対策部会臓器移植委員会)> 第48回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会議事録(2017年11月8日)

ページの先頭へ戻る