ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(生活困窮者自立支援及び生活保護部会)> 第9回社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」議事録(2017年10月31日)
2017年10月31日 第9回社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」議事録
社会・援護局
○日時
平成29年10月31日(火)15:00~17:30
○場所
東海大学校友会館 望星の間
○出席者
宮本 (部会長) | 駒村 (部会長代理) |
石橋 (委員) | 浦野 (委員) |
大西 (委員) | 大野 (委員) |
奥田 (委員) | 勝部 (委員) |
菊池 (委員) | 小杉 (委員) |
新保 (委員) | 竹田 (委員) |
平川 (委員) | 吉岡参考人 (岡崎委員代理) |
成田参考人 (福田委員代理) | 前河参考人 (松井委員代理) |
○議題
(1)一時生活支援・居住支援等のあり方について
(2)都道府県・町村・社会福祉法人の役割等について
(3)事業の適正な実施について
○議事
○竹垣課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第9回「社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、大変お忙しいところをお集まりいただき、まことにありがとうございます。
本日は、朝比奈委員、生水委員、松本委員、渡辺委員は御欠席でございます。
また、本日は、岡崎委員の代理として、高知市副市長の吉岡参考人、福田委員の代理として、川崎市健康福祉局長の成田参考人、松井委員の代理として、大阪府福祉部社会援護課長の前河参考人にお越しいただいております。
吉岡参考人、成田参考人、前河参考人の御出席につき、部会の御了承をいただければと思います。
(「異議なし」と声あり)
○竹垣課長 ありがとうございます。
それでは、これ以降の進行を宮本部会長にお願いしたいと存じます。
カメラの方がいらっしゃいましたら、御退室ください。
それでは、宮本部会長、よろしくお願いいたします。
○宮本部会長 皆様、お忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。第9回になりますけれども、「社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会」、始めさせていただきたいと思います。
寒暖の差が大変激しい奇妙な天気が続いておりまして、体調を崩されている方も多いのではないかと拝察いたしますが、かく言う私もかぜが全く抜けませんで、一部お聞き苦しいところがあるかもしれませんけれども、御容赦いただければと思います。
本日は、これまでの部会の議論をそろそろまとめていく方向をとらなければなりませんし、また、特に前々回の第7回の部会から、議論を踏まえて、より焦点を絞るという形で論点の設定をしてございます。まず最初に「一時生活支援・居住支援等のあり方」について、2番目に「都道府県・町村・社会福祉法人の役割等」について、そして3番目に「事業の適正な実施」について、この3点について議論を進めてまいりたいと思います。
まず、「一時生活支援・居住支援等のあり方」について事務局から資料の説明をいただいた上で質疑応答を進めて、その後、残りの論点についても議論を進めてまいりたいと思います。
それでは、事務局のほうから「一時生活支援・居住支援等のあり方」について御説明をお願いいたします。
○本後室長 それでは、御説明させていただきたいと思います。
資料の本体の御説明に入ります前に、参考資料2で、前回、前々回、委員の皆様方からいただいた宿題に対するお答えを整理いたしております。
まず、1ページ目でございます。これは、任意事業の実施状況が相談受付件数等に影響を与えているのではないか。そういう効果を示してほしいという御指摘がございました。任意事業の実施状況と新規相談受付件数、それから就労・増収者数の比較をまとめてございます。自立プラス就労プラス家計という場合に、いずれも件数が多くなっているというものでございます。
それから、2ページ目が情報の共有のところの議論で、どういった場合に有効だと考えられるのか、具体的に整理してほしいということでまとめた資料でございます。
それから、3ページ目は就労支援における交通費の支給の取組について、民間団体等々における取組というものがあるはずだということで、調べてほしいということでございました。都道府県の社会福祉協議会あるいは社会福祉法人経営者協議会での取組。千葉のユニバーサル就労ネットワークちばの取組で、中央ろうきん若者応援ファンドの助成を受けてファンドをつくっている例。それから、神戸市さんの例を紹介させていただいております。
それから、4ページ目、これは前回いただいたものですけれども、8050世帯というのは具体的にどういうものか、わかりやすく例示してほしいということでありましたので、それを整理させていただいております。
参考資料については、以上でございます。
それでは、資料1をごらんいただければと思います。一時生活支援・居住支援に関する御説明をさせていただければと思います。
最初が一時生活支援についてでございます。
2ページ目、ホームレス数の推移でありますけれども、ホームレスの高齢化、それから路上生活支援期間の長期化等が課題になっているということです。
一時生活支援事業の実施状況を見てみますと、実施自治体数は大幅に増加しています。特に、人口15万人未満の市区町村において、一時生活支援事業の実施箇所数が大幅に伸びており、借上型シェルターを実施する自治体が大幅に増加しております。
一番下のほう、フードバンクについてお尋ねがありました。この制度における取り扱い、位置づけを少し整理いたしております。自立相談支援事業の連携先として当座の食糧に困っている世帯に対する自立相談支援の中での連携先としての食糧支援ということ。それから、自立相談支援事業の受託者としてフードバンク活動が持つアウトリーチ機能に着目した事業の実施。それから、就労支援の協力事業者としてフードバンク活動を行う事業者が認定就労訓練事業者等となって、就労支援の場として機能するといった位置づけがなされております。
こういったことを踏まえまして、3ページ目、考え方でございます。
●の4つ目、効果的な自立支援を行うために、アウトリーチによる積極的な働きかけが必要であるとの指摘や、そのための人的な体制整備や人材育成を検討する必要があるという指摘がございました。
借上型シェルターにおいては、恒常的に利用があることを想定していないことから支援員は配置されていないということですが、借上型シェルターにおける人員の確保策をどのようにしていくのかを検討する必要があるといった指摘もございました。
論点でございます。一時生活支援事業の効果的な推進に当たって、借上型シェルターの効果的な活用策も含め、どのようなことが必要かということを挙げております。
続きまして、居住支援についてというところでございます。
5ページ目、居住に関する課題ですけれども、一番後ろのほうです。安価な家賃の住宅がないという課題。それから、「施設」ではない支援や見守りという機能が欠けていることが課題として挙げられております。
これに対しまして、住宅セーフティネット法、これは先日、10月25日に施行されております。
続きまして、7ページ目が考え方の整理でございます。
今のような状況を踏まえまして、●の3つ目、低家賃の住宅が少なく、入居拒否の傾向がある中で、住宅セーフティネットの機能強化が行われている。こういった制度的な対応がなされているのに対し、この住宅セーフティネット制度と実効的に連携していくことが求められる。
こうしたハード面での対応のみならず、ソフト面での対応として、社会的に孤立しているために、特に緊急時の連絡体制の確保など、一定の支援が必要となる。また、家主から見ても、そうした支援があることにより、安心して住宅を貸すことができてくるのではないか。これに対して、支援を必要とする人同士、地域住民とのつながりを作り、相互の支え合い、互助を促す取組を行っている事例もある。
高齢者については、地域支援事業の中で生活援助員の派遣ができるという事業がございます。また、障害者につきましては、平成30年、来年4月から「自立生活援助」という障害福祉サービスを利用して、定期的な巡回訪問等が可能になるといった状況もございます。
こういったことを踏まえました論点でございます。居住支援について、施設ほどではない支援や見守りの提供が求められる中、どのような支援が必要かということを挙げてございます。
○姫野推進官 続きまして、無料低額宿泊事業について御説明いたします。
9ページ、現状と課題の欄ですけれども、まず無料低額宿泊事業につきましては、社会福祉法において、「生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業」と規定されております。参考資料1として、詳細な調査結果もつけておりますので、後ほどごらんいただければと思いますけれども、平成27年時点での数字では、全国に537カ所の届出がございまして、約1万5,600名が利用しております。利用者の約90%が生活保護受給者となっております。また、無料低額宿泊所としての届出はないものの、複数の生活保護受給者が利用している、いわゆる無届け施設も全国で約1,200カ所ございます。
2つ目の●ですけれども、利用者の多くが路上生活や病院からの退院後の利用となっているほか、1年を超える長期の利用の方、高齢者の利用も多いという実態もうかがえます。
また、4つ目の●にございますけれども、介護や障害のサービスを受けている方は少ないですけれども、何らかの日常生活上の支援を必要とする人が多いと指摘されておりまして、職員を配置して緊急時の対応などを行ったり、利用者間の相互の関係づくりなど、社会生活上の支援を行っている施設も存在しております。
次のページですけれども、宿泊の他、食事や相談、金銭管理等様々なサービスを提供されるケースも多く見られております。
また、第2種社会福祉事業でございますので、経営主体に特段の制限はなく、届出のみで事業を開始できますけれども、法律に基づく最低基準がなく、通知に基づく指針が示されているというところにとどまっております。
こうした中、3つ目の●ですけれども、無料低額宿泊所などの中には、居室やサービスに見合わない利用料等を徴収する、いわゆる「貧困ビジネス」と考えられる施設も存在すると指摘されております。
次のページ、考え方でございますけれども、これまで、無料低額宿泊所を一時的な居所と位置づけてまいりましたけれども、独居が困難な生活困窮者等については、一定の生活支援を受けながら共同生活を行うことが自立の助長に資する場合もあるのではないかと考えられます。
一方で、住居費と生活支援サービスのための費用が利用料等として、合わせて請求されている実態もありますけれども、生活支援サービスの質を担保する仕組みがないことから、対価として適当であるか不透明になっていることも考えられます。
また、構造設備などの基準を担保する措置が法律に規定されておりませんので、基準を守っている施設と、それ以外が区別されないという課題もございます。
その次のページ、論点としてまとめておりますが、無料低額宿泊所における支援のあり方については、生活上の支援を提供する良質な無料低額宿泊所を生活保護制度の中に位置づけて、しっかり評価するということも考えられます。また、日常生活における支援の適正さを担保するために、支援の内容や提供体制などについて、さらに検討を進めてはどうかという点も論点かと考えております。
また、規制のあり方につきましては、法令に基づく最低基準を設ける必要性についてどう考えるかという点や、こちらは地方分権改革有識者会議においても提案されている案ではございますけれども、事業開始前の届出、いわゆる事前届出の仕組みとすることについてどう考えるかということでございます。
このほか、いわゆる無届け施設についてどのような対応が必要かということも含めて、御議論いただければと思っております。
続きまして、保護施設のあり方でございます。
まず、保護施設ですけれども、救護施設や更生施設などの類型がございますが、他法他施策では対応できないさまざまな生活課題を抱えている方を、福祉事務所からの措置委託により受け入れて支援を行っていただいております。他法の施設がある場合には、そこまでの経過的な施設という位置づけでございますけれども、地域移行の取組を進めていただいております。
ただ、入所者約1万6,000人に対して、1年間の地域移行者は約1,000人という現状でございます。
次のページ、課題でございますけれども、入所者像やニーズが多様であるため、専門職員の配置も進めておりますけれども、施設内であらゆるニーズに対応するということには限界があるという点ですとか、入所中に他法他施策を活用することが基本的に認められていないということ。
あるいは、退所先の調整等に困難を伴う場合が少なくないといったことが挙げられます。
また、入所者の援助方針について、保護の実施機関と保護施設の間で十分に共有されているのかという課題もあるかと考えられます。
次のページ、論点でございますけれども、以下、繰り返しになりますけれども、今、御説明したような課題を念頭に置きまして、保護施設の役割や機能について、どう考えるかということが1つ目のポイントかと考えております。
また、ページをおめくりいただきまして、最後のページでございますけれども、保護施設の体系について検討するに当たりましては、他法他施策ですとか、さきに御説明いたしました適切な生活支援を行う無料低額宿泊所等の見直しも踏まえた検討が必要ではないかということで整理しております。
○本後室長 お手元、委員の皆様は机上配布資料がございます。そちらをごらんいただければと思います。16ページでございます。
本日御欠席の朝比奈委員からの意見ということで提出いただいておりますので、読み上げさせていただきたいと思います。
一時生活支援について。
ネットカフェなど見えにくいホームレスの状態の人たちは、これまでのアプローチだけでは把握が困難で、一時生活支援事業の存在自体が住まいを持たない生活困窮者にとって自ら支援につながる具体的なきっかけとなり、役割は大きい。自立相談支援機関が相談支援の早期の段階で相談者の生活スキルの程度を理解することは、その後の適切な支援の展開に大きく関わることになる。一時生活支援事業においては、滞在期間中の日常生活の様子の観察等により面接だけでは及ばないより踏み込んだ具体的なアセスメントにつながる。
より具体的なアセスメントにつなげるためには、一時生活支援事業に一定の人的体制が必要となってくる。借り上げた部屋の一部をサロンとして提供し、その場を相談支援の一環として活用する等の方法も検討する必要があるということでございます。
○宮本部会長 ありがとうございました。
まず、最初にお話のあった第7回、8回部会における委員の皆様からのいわば宿題に対する事務局からの回答があったわけですけれども、これは4つの論点を出された委員の皆様のほう、これでよろしゅうございますか。もし何か追加的に確認しておきたいことがあれば、最初に出していただければと思いますが。よろしいでしょうか。はい。
それでは、一時生活支援・居住支援等のあり方についてということで、これは今度の報告書の中でも、特に無料低額宿泊所の規制等については、一つの大きなポイントになっていくということが予想されるわけでございまして、ぜひ活発な御議論をお願いしたいと思います。
それでは、まず岡部委員、よろしくお願いします。
○岡部委員 机上配布資料として15ページに、一時生活支援事業と無料低額宿泊所・宿泊所について入っておりますので、それを読み上げ、プラス、ちょっと補足をさせていただければと思います。
一点目、一時生活支援事業についてです。狭義のホームレス(路上生活者)の数は、生活困窮者自立支援法及びホームレス自立支援法等の政策・実践効果により減少傾向にある。しかしもう一方でネットカフェ、漫画喫茶など居住の不安定な場にいる広義のホームレスが一定数存在する。路上生活者の長期化・高齢化、それ以外にも女性のホームレスの方の課題もあり、それに対するアウトリーチ機能などの積極的な関わりと併せて広義のホームレスに対し相談支援や自立支援センター、シェルターの活用を促進すべきである。また自立支援センター、シェルターの地域的偏在が起きないよう広域的観点から自治体間で調整し事業を実施すべきである。
これは、自立支援センター、シェルターというものを、広義のホームレス、ここに書かれている以外にいろいろな例があるかと思いますので、お願いしたいということで、それも組み入れて考えていただきたい。
自立相談支援事業の中で巡回相談支援事業がございますが、自立相談支援事業の中で巡回相談、ホームレスに限らないのですけれども、アウトリーチをするためには、人的な体制を厚くしていただきたい。また、自立支援センター、シェルターについても、これをセパレート(分離)で考えるならば、そこにも一定の人的な配置をお願いしたいということです。
シェルターについては、借り上げシェルターですが、ホテルとか民間賃貸のアパートとか、福祉施設の空き室利用等が考えられます。このあたりのところは、場の提供以外にどこまで機能を補充するかどうか、より検討を進める方向が望ましいと考えます。
2点目の無料低額宿泊所・宿泊所については、生活保護制度に対する信頼性の観点から住居として相応しい基準に合致する無料低額宿泊所・宿泊所、それと支援の質が担保されている無料低額宿泊所のみを認めるように規制すべきであると考えます。この規制の仕方というのはいろいろあるかと思いますが、宿泊所そのものの規制と、もう一つは、生活保護の実施機関の中で、これは住居としてふさわしくないと認められる無料低額宿泊所・宿泊所は、相談・申請の場面で伝え、そして、適切な居所、居宅あるいは施設利用を紹介することが考えられるのではないか。
また、ふさわしい基準。住居としてふさわしく、かつ支援を行っているところについては、支援コストを何らかの措置を講ずるべき。これは、支援コストを積極的に出すという方向で考えていくべきではないかと考えます。
それと、書いていないのですが、保護施設の中に救護施設等が書かれてありますが、更生施設、宿泊提供施設等の数は非常に少なく、また救護施設の需要が高まっている。それだけ専門的な支援をしてくれる施設の需要があると考えられます。
しかしながら、そこでの難点があります。これは、生活保護の実施機関で、救護施設がどういう存在なのか、どういう機能を果たすのかということをもっと理解していただき、有効活用していただきたい。もう一つは、実施機関が施設と共同して支援をするということが、どうも十分されていない傾向にある。施設に入所することは、共に実施機関と施設がアセスメントあるいは介入して生活再建につなげていくという道筋をもう少しつけていくことが必要なのではないかと考えます。
以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
いわば見えにくいホームレスといいますか、広義のホームレスを見える化して、きちんと支援につなげていく回路として、一時生活支援事業をバージョンアップすべきだ。これは、朝比奈委員の文書発言とも共通する御議論だったのかなと思います。
続きまして、言い方がいいかどうかわかりませんけれども、現場感覚、現場の状況のようなものを少し出していただくという点でも、大西委員、続いて大野委員、よろしくお願いいたします。
○大西委員 ありがとうございます。
今、岡部委員からも後段でちょっと触れていただいたのですが、ご説明に時間がかかるかもしれませんが、3点ほどお話をしたいと思います。
冒頭に、救護施設等を含む保護施設についての問題であったり、課題をいろいろ列挙していただきました。見える範囲でお話をしていきますが、利用者の地域移行促進について、全く異論のないところで、私も長年仕事をしていますが、それは理想として第1番目に掲げております。
それから、保護施設のあり方について、よりよい形で機能をよくする意味での改革については、これも望むところで、大いにしていただきたいと思っております。
その中で、1点目として、救護施設が今まで果たしてきた役割を簡単に触れておきたいと思います。
資料の14ページに書かれていますように、さまざまな生活課題を抱えながらも、これまで他法他施策で対応できなかった人々を支援してきました。例えば、現在、依存症も含め、何らかの精神疾患・精神障害が疑われる入所者は全体の6割近くになっています。これも精神病院の社会的入院対策の退院後の受け皿として、国の施策として行われた緊急救護施設からの流れであることは、前回の部会でもお話ししたとおりでございます。
ご説明の中に、全国の救護施設の利用者1万6,000人のうちの1,000人しか地域移行していないという表現がありました。もちろん私どもは制度上、経過的な施設として位置づけられておりますので、そのための取り組みに全力を尽くしているところです。しかしながら、他法他施策の原則の中で、本来であれば他の福祉施設の対象となるべき方であっても、過去本人が働いた暴力行為等のために、それらの施設で受け入れてもらえず、家族はもとより、全く行き場のないなかで救護施設で支援を継続している方もおられます。このようにすぐには地域移行を実現することができないケースも多分におられるということは理解していただきたいという思いを持っております。
そういった意味で、わが国における保護施設の最後のセーフティネットとしての役割は、今後とも絶対に不可欠だろうと思っております。幾ら立派な制度ができたとしても、その網の目から漏れる人が必ずおられるということをしっかり認識していただきたいと思っております。
同時に、地域で生活可能な利用者の地域生活移行や定着支援、地域の生活困窮者の支援に向けて、全救協では「生活支援関係事業ガイドブック」を作成するなどして、通所事業や居宅生活訓練を活用して、地域生活移行に向けての取り組みを精いっぱいしておるところでございます。
次に、今、岡部委員からも発言がございましたが、福祉事務所に対して意見を言っておきたいと思います。
保護施設の利用が実施機関の措置で行われていることは言うまでもありません。そこで一番重要なのは、福祉事務所と関係が最も密接でなければいけないということであるかと思います。一方で、福祉事務所のケースワーカーの施設とのかかわりの持ち方については、全国津々浦々さまざまで、2年から3年でケースワーカーが変わっていく中で、救護施設が何たるかということも知らないケースワーカーが多分におられます。よほどのことがなければ施設には連絡がありません。そういった中で、大阪市では、こういった方が救護施設を利用するのですよというハンドブックをつくって配布しているところでございます。
また、私たちは救護施設個別支援計画というしっかりとしたものを担保しておりますので、その中で、支援の計画や、その根拠を明確にして、福祉事務所のケースワーカーが支援の取組状況にもしっかり関与していただくことを望む次第でございます。
第6回の部会で稲葉参考人から、劣悪な環境の宿泊所に福祉事務所のケースワーカーが誘導しているという発言がございました。もってのほかではないかと思っております。それが貧困ビジネスの温床になっているような発言もございました。被保護者のその後の人生を左右するという、最も基本的な、いわば水道の蛇口部分、根幹の部分でそういったことがあるということは、大変責任が大きいのではないかと思っております。
そういった意味で、逆に、本来ならば救護施設に入らなければいけない人が、そういった劣悪な環境の宿泊所に入っているという可能性も裏返しにあるかと思いますので、これについてはシステムをしっかりと、先日の医療扶助のときにもちょっと発言いたしましたが、福祉事務所の機能が全く不全状態となっており、保護費を支給するだけの、ややもすれば銀行とあまり変わらないような状況になっているという現実は、早急に国としても対応を考えなければいけないのではないかと思っています。
長くなりましたが、最後に、そういったことも含めて、措置権者である自治体などと私どもとしっかりと議論して、そのシステムづくりから考えていかなければ、今、問われている保護施設のあり方についても、なかなか進まないのではないかと思っております。
最後に、今、無料低額宿泊所の生活支援というのがよく出てまいりますが、どの範疇が生活支援であるのかというのをはっきりと示していただきたいと思います。当初、この部会の前に意見交換会があって、私が出ておる中で生活支援の話になったときに、ある事業者は電話で安否確認をしていますというお話でした。それがもし生活支援であるならば、大きな間違いではないかという思いを持っております。せめて見守り程度の表現が適切ではないかと思います。
救護施設と無料低額宿泊所のすみ分け等のことも議論の課題として挙がっておりますが、まずは無料低額所のすみ分けを先にしっかりして、どれだけの無料低額宿泊所が優良で、かつ適切な生活支援をしているのかということを評価する。それとあわせて、救護施設を含めて、保護施設のあり方についても検討していくべきではないかと思っています。
長くなりましたが、よろしくお願いしたいと思います。
○宮本部会長 どうもありがとうございました。
最後のセーフティネットと言われる生活保護であるわけですけれども、その中でも最も困難な事例をお引き受けされている救護施設の観点から、であるからこそ、支援のあり方を福祉事務所等との関係も含めて、具体的に論じていかなければいけないのではないかという御趣旨であったかなと思います。
大野委員、よろしくお願いいたします。
○大野委員 ありがとうございます。
居住支援のあり方についてですが、生活保護受給者や低所得高齢者の住まいの確保は、大きな問題だと考えております。先日、秋田で起きました、精神障害の方が多く入所していたアパートの火災のように、住まいの確保が難しい人のための居住インフラが脆弱で、質や安全の確保が不十分な住居で生活せざるを得ない人は少なくないと思います。福祉事務所においても、こうした住まいや施設をあっせんせざるを得ない現状があると伺っております。生活困窮者向けの住宅や施設の確保とともに、安全・安心の担保も重要なのではと感じております。
また、公営住宅に住んでいるひとり暮らし高齢者の孤立なども大変気になっているところでございます。近年、公営住宅においても、入居者の高齢化により、ひとり暮らし高齢者や高齢者のみの世帯がふえているのも現状だと思います。階段しかないなど、ハード面での改善の必要性を感じるとともに、こういった方たちが自宅に閉じこもってしまい、生活に困窮するケースや孤立している状況もあると思います。私たち民生委員自身も、常に頑張って見守り活動を行っているところですけれども、対象者数がふえている中で、限度があるのも事実でございます。公営住宅だからこその安心・安全の実現という観点を含め、地域全体で見守り、支え合っていく仕組みを考えていくことも必要だと思っております。
余談になりますけれども、現在、私の住む流山市というところでは、平成26年10月に地域支え合い活動推進条例というものができました。そして、日常的な見守り活動、災害時の避難支援活動もあわせて、携わる自治会等に対して、ひとり暮らしの高齢者等に関する情報、支え合い活動対象者名簿をあらかじめ提供するなどして、自治会の地域社会づくりを支援していただいております。活動に対する支援のための資金も援助していただいているところでございます。
現在、私も民生委員として、今、家にいることもままならないことが多々ございます。そんなときに、支え合いの人たちがいるということで、安心して外出ができるということも事実でございます。今、自治会数が170ございますが、そのうちの90自治会がこの活動に参加していただいているという状況でございます。
ありがとうございます。以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
これも居住支援の現状からということになるかと思いますが、続きまして、奥田委員、お願いできますでしょうか。
○奥田委員 今日、私、資料を持ってきていますので、机上配布資料の7ページをごらんください。まず、一時生活支援事業のことですが、3つのことを申し上げたいと思います。7ページはまとめて書いてあるので、8ページから見てください。
一番最初ですが、既に御議論が出ておりますけれども、一時生活支援事業に生活支援員等の配置が必要であるということです。自立相談支援との密な連携強化ということも当然図られますけれども、一方で、一時生活支援事業に係るスタッフの配置が必要ではないかと考えております。
次の9ページを見ていただきますと、エビデンス1-2ということで、今、一時生活支援事業をやっているところの、例えば就労自立などの結果を調べてみたのですが、類型としては、人件費つきで委託でやっているところ、人件費つきで直営でやっているところ等々、分かれますが、明らかに人件費つきで委託でやっているところが就労自立率も非常に高いということで、専門のスタッフがついたほうが、一時生活支援事業は、基本、生活の立て直しなのですけれども、就労自立ということから見ても、人がついて一体型でやっているところは効果を生んでいるということは明らかです。
ただ、全体で見ると、前の8ページになるのですが、自立相談事業所の就労支援の比率が非常に高くて、一時生活はその対象になっていない。ただ、ここに人を配置することで、同等の結果を生んでいける可能性は高いのではないかと思っています。これが提言1です。
次、10ページを見てください。一時生活支援をやっている施設の形態ですが、エビデンス2-1を見ていただきますと、一時生活支援では、就労ベースというよりは、その他の生活等々が一番の課題になっている。
そのときに、エビデンス2-2を見ていただきますと、直営でされているところのほうが、そのときそのときのホテルの借り上げで対応している率が非常に高い。ホテルを行政が直営でやっているところは、その日その日で借りている形態があるのですね。しかし、これではケアという概念がそもそも無理なのではないか。人を配置してくれということとともに、一定期間、生活ができるベースが必要で、それには日ごろ頻繁に相談員などが立ち寄れて、そこである意味住まいというベースの中で支援できる施設の形態が必要なのではないか。ですから、ホテル借り上げに関しては、なるべく避けたほうがよろしいのではないかということです。
提言3、11ページですが、これは既に国の資料にも出ておりますが、1つは、中核市クラスでは間違いなくニーズがあるので、最低、全中核市以上で一時生活支援事業をやるべきではないかというのが1つです。
エビデンス3-2では、相談員の数によって件数が上がる。相談員の数と件数が比例しているというのは、何回か前にそういう結果が出たと思いますが、同じことで、一時生活支援事業も、中核市以上のところになると、見えないホームレスも含めて、必ずホームレス等のニーズが出てきます。ですから、実施すると潜在的なニーズのキャッチが必ずできると思っております。
さらに、エビデンス3-3ですが、小さな市町では難しいということなので、広域実施をどう可能にするか。これは、今日の県の働き等のところにも出てきますけれども、一時生活支援事業の広域実施をどうするかということが大きな課題であると思います。
すみません、戻っていただきまして、急ぎ足でいきます。今度は、無料低額宿泊施設の話、5ページです。
私は、2のマル1からいきますが、無低に関しては、基本的スタンスとしては規制と事業支援という両面を必ず押さえるべきであるということです。貧困ビジネスと言わざるを得ない実態があるのも事実でありますし、法的規制を実施することは必要であると思います。
ただし、今回の国の資料2も、著しく狭くて設備が十分でない劣悪な施設、居室やサービスに見合わない料金の設定をしていることが問題視されているのですが、いずれにしても基準が不明確で、見合う料金と見合うサービスというものが何なのかということ。先ほど大西委員がおっしゃったとおりで、生活支援とは何なのかということが明確にない中で、こういう表現で問題だと言われても、何が問題なのかを正直、はっきり指摘することはできないと思います。例えば、本人が残す手持ち金額が問題なのか、あるいはサービスと料金が見合っていないことが問題なのか、ここもどうなのかということですね。
そして、規制の一環として住宅扶助の引き下げということが多分議論されると思うのですが、個々の居室の広さのみを対象とするのではなくて、ある程度施設として既にケアつきでやっているところが多いので、共有部分とか設備の程度も考慮すべきではないか。あるいは、地域によっては家賃の実情が非常に厳しい。東京都内は特にそうだと思うのですが、そのことの考慮もしないと、一律に下げるというのはなかなか難しいのではないかと思います。一方で、先ほどの繰り返しになりますが、必要とされる生活支援の中身の基準が必要で、これを早く決めないと規制はできないと思います。
さらに、無料低額宿泊施設の議論が生活保護の枠でずっとされているのですが、今回の国の資料を見ると、全体の中の1,500人程度が保護以外の利用者であるということが出てきます。ですので、生活保護の住宅扶助の金額で規制をかけるとなっても、そこに入らない人たちも出てきます。あるいは、支援費を生活保護の枠でつけるとしても、支援費の対象にならない人も出てきます。このあたりはどう考えるのかというのは、非常に難しいところです。
そこで、この間の議論を根本的に覆すような話で申しわけないのですが、無料低額宿泊施設としての議論はもう限界だ。今、必要なのは、居住支援をベースとした新たな支援つきの地域共同居住型の施設という概念が必要なのではないか。無料低額宿泊施設は、岡部先生が繰り返しおっしゃってくださっているのですが、そもそも宿泊を提供するというところにある意味特化された法の枠組みなので、今、我々が議論しているような居住支援とか就労支援とか生活支援ということは、そう想定されていないということです。ですから、今後、無料低額宿泊施設の活用を考える際に、そもそも法律で想定しない部分の議論をどこまでやるのかというのが大もとの問題です。
もともと居宅であって施設でないわけですから、2)になりますと、その中で何らかの支援を行ってきた無低施設というのはあるわけで、一時的な自立支援施設という形もとっていますし、あるいは一定の長期滞在型、地域での生活を支援しているということもあります。全体の87%の施設が職員を配置しているわけです。こうなると、もう無低の枠ではないので、新たな支援つき居住、3)になりますが、生活支援つきの地域共同居住施設、私は前から1.5種。あるいは、無低をどう引き上げるかという議論をしてきたのですが、私は準保護施設みたいな保護施設の連携で考えたほうがいい。
なぜかというと、保護施設こそがケアしきたわけですから、それをベースにしながら、保護施設との連携で、例えば先ほどから問題になっている出先の問題。刑余者の問題を私もやっていますので、相当難しいです。でも、例えば救護で受けてくださって、1年後に地域に出す。このワンクッションがあるだけで全然違うのですね。ですから、私は勝手にそんなことを言ったら怒られますけれども、準保護とか準救護という形で新たな支援体系をつくるべきだと思います。
先ほど大西委員、おっしゃったとおり、保護施設自体は経過的な施設だと。だけれども、一方で、救護のような高度なケアは要らないけれども、単身は無理という間の部分をどうするのかということで、準救護という発想はないか。高度な支援を備えている保護施設と、支援を想定していない無料低額宿泊施設の間に、比較的軽い支援を備えた生活支援付地域共同居住施設を創設することが有効であると考えます。保護施設の出先であり、また無料低額宿泊施設では支援できない人々のための準保護施設の位置づけとして、新たな体系が必要です。
最後に、6ページですが、1つは、無低の制限のときに、先ほどの家賃を下げるという話です。家賃を下げることは、あまりに狭小な施設である場合、考える余地は当然あると思います。一方で、下がった分、生活支援費として入れますということでは、何の解決にもなりません。そもそも本人の手持ち金も変わりません。
さらに、それでは事業者の実入りも変わらないわけでありますから、支援とか生活支援に重きを置いていくとするならば、今、手持ち金が1万円から3万円残っている施設が75%です。全額取っている施設は、実際にはそんなにないのですね。実は、4万、5万残している施設も結構あるという国のデータがこの後出てきていますので、その中で、生活支援費補助ということをどう考えるのかを、ぜひ積極的に家賃を下げただけ。その分、同じだけ埋めるというのは何の創造性もないということですので、そこは一言言っておきたい。
ただ一方で、最後に、保護世帯以外の人たちが1,500人いるわけですから、保護の制度の中での補助であるとか、削減であるという議論だけでは、実は全員をカバーできていません。この部分をどうするのでしょうかというところが、準保護施設と言ったものの、保護をベースに全て考えてしまうと、新たな枠にならないかもしれないという危惧もあります。
すみません、長くなりました。以上です。
○宮本部会長 皆さんの机上配布資料の多さからして、この問題への問題意識が強いということがうかがえますので、あえてあまり介入せずに少し時間を緩くお話しいただいておりますが、もちろん全体として時間は限られておりますので、この後も協力をよろしくお願いしたいと思います。
奥田委員のほうからは、特に無料低額宿泊所については、事業支援、規制という、いわばリアルな施策と、さらにその先に支援付居住施設のフレームそのものを変えていくという中長期的な展望、2段構えでお話しいただきました。
勝部委員、お願いいたします。
○勝部委員 一時生活支援のあり方についてということで、借り上げ型シェルターの活用のことで、我々の実践の中からの課題として、いつも挙がっていることを少しお話しさせていただきたいと思います。
先ほどの直営型でやっているということで、我々はホテルを借りるということがあるわけですけれども、そうしますと、例えばこの1週間はこのホテル、それからいろいろな手続をしている間に途中で何度も移動が出てくる。それも、豊中市内で対応するときと市外に行くときもありまして、その間にまた生保が決まっていくということでなければ、自立相談支援機関の職員が都度、それぞれのところまで車を出して病院に連れていくということで、相当な時間と労力が要るということもあって、これを前提でやっていくということになるのですが。
一方で、アウトリーチがどのぐらい全部の自立相談支援機関でできているのかということになると、先日、全国研修の中でアウトリーチをどれぐらいやっていますかということで参加者の方に手を挙げていただいたら、それはざっと見たところですけれども、4割ぐらいがやっていないというお話がありました。そうなると、こういうやり方でいくと、そういう人たちを救うことはなかなかできないという現状がありますので、ケアつきということも含めた体制がないと、こういうことは現実の問題としては、相当力を入れて頑張って支えたいということでないと難しいなというのを現状として感じています。
それから、もう一点が居住支援のところですが、これもこれまで何度も保証人とか緊急連絡先の確保ということが言われてきていますけれども、昨今、いろいろな自立相談支援機関から問い合わせや照会がある中で、大家さんが死後の対応で本当に困っている。どうしたらいいのかと。生活保護であれば、まだいろいろな連絡先がわかったり、市のほうで調べてもらえるけれども、実際に緊急連絡先に電話をしても、その方々はもうお亡くなりになっていたり、入所しておられたり、判断能力が乏しい状態になっていて、お話ししても全然つじつまが合わないということで、対応が困難であると。
こういう人たちを地域の中で支えていくというところで考えていきますと、確かに我々がやっている債務整理とか就労支援とか家計相談ということもあるのですが、死後事務の委任支援ということであるとか成年後見ということも含めて連携して、総合的に相談体制をやっていくことが必要だなということを強く思います。
それから、居住のところでは、こういう皆さんが社会的に孤立しているということが、どの事例からも社会的孤立への対応ということを考えていく上では、住民の皆さん方とのサロンであるとか、この方々の社会的な居場所ということを、あわせてどうつくっていくかということもすごく重要ではないかなと思います。
以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
少し自治体からの視点に移していきたいと思います。まず、吉岡参考人、よろしくお願いいたします。
○吉岡参考人 まず最初に、一時生活支援についてですけれども、借り上げシェルターの活用方策が論点でありましたが、借り入れ型であっても支援や見守りを強化することは必要であると考えておりまして、この事業は都市部以外で実施率が低いために、放浪生活を続けているホームレスが各自治体でたらい回しにされているような現状があります。例えば、民間のホテル等と圏域で協定等を結んで、相談を受けた自治体、または自立相談支援機関において協定先ホテルをシェルターとして利用できるようにするなどのハード面において、広域自治等を検討してはどうかと考えます。
それから、居住支援についてですけれども、理想的な日常生活における地域住民による支え合いと定期的な相談支援の訪問を中心に、状況に応じた専門職の介入も含めて支援する必要があると考えます。自立相談支援が住宅確保用の配慮者の居住環境づくり、互助づくりまでを行うことは現実的には難しいために、居住支援法人と自立相談支援機関の日常的な連携、また自立相談支援機関における居住支援専門職員の配置等を実施しなければ、効果的な支援は難しいと考えます。法制度上、6条5号の事業ではなくて、条文の文言で規定された事業にまで引き上げなければ難しいのではないかと考えております。
それから、無料低額宿泊所のあり方ですけれども、これは生活困窮者自立支援や生活保護法の見直しなどが予定されていますから、この宿泊所についても、本来の趣旨に沿った運用となるように、これらの制度と整合性を図る必要があると思います。一時的な保護という目的であれば、無料低額宿泊所との役割分担を考える必要がありますが、無料低額宿泊所はあくまでも一時的な生活を送る場所であり、生活困窮者自立支援制度、生活保護法の見直しにあわせて、この宿泊所の考え方を見直す必要があるのではないかと考えております。
それから、無料宿泊所の規制のあり方ですけれども、貧困ビジネスを排除する観点から、必要最低限、法制度上位置づけることは必要であり、悪質な業者を規制することなどができるように、法令上必要な規定の整備について検討を行う必要があると考えます。例えば、過去にアルコール依存、薬物依存の自立更生のための宿泊施設を全国展開している事業所が、平成22年4月から平成26年度に撤退するまでの間、高知市に参入してきたことがありまして、入所者のほとんどは県外から連れてこられたり、1室を2人で使用したり、保護費を施設管理者が一括して金銭管理していたことなどから、貧困ビジネスと疑われないように、金銭管理の明確化及び個々人の自立のため、個別のプログラムに沿った支援について、福祉事務所として指導した事例があります。
国において、現在のガイドラインという形ではなく、法令に基づく最低基準を設け、その基準を満たさない設備・運営となっている事業所等に対しては、行政の改善命令・勧告・公表を行うことなどができるように、法令上の必要な規定の整備について検討を行う必要があるのではないかと考えます。直ちに許認可制とすることは困難であるために、例えば都道府県等が適切に指導監督できるよう、届出制とか許認可制に見直すことにしてはどうかと考えます。
それから、保護施設の関係ですけれども、高知市の運営する保護施設は救護施設が1カ所ありますが、ADLの低下した利用者や障害者で支援施設への移行が望ましいと判断された利用者について、意向を確認の上、他法の施設移行を図っておりますけれども、現実問題として施設に空きがないなどの問題があり、スムーズな移行がされていない現状です。そういう意味では、循環型施設としての出口の部分や移行できる範囲、利用できる枠を拡大して解決すべき課題ではないかと考えております。
以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
たらい回しという問題も今、吉岡参考人のほうから言及されました。
広域自治体という観点から、前河参考人、いかがでしょうか。
○前河参考人 机上配布資料の1ページから4ページまで御紹介させていただきますが、大阪府内救護施設における一時生活支援事業への協力実施についてということで、大阪府では、2ページに記載のとおり、ビジネスホテルや旅館等を確保しまして、一時生活支援事業を大阪市以外の全自治体で連携実施しておりますが、平成27年度ごろから、インバウンドの増加によりビジネスホテルの確保が困難となり、大西委員の救護施設に協力依頼し、その後は府内の他の救護施設も含め、実施を進めております。
3ページに事業のスキームを書かせてたいておりますが、下のところに大阪府内の自治体からの意見を掲載していますように、救護施設は、生活指導、就労指導、ケースワーク機能等の専門機能を有しているため、緊急時や精神障害等のある方への対応が安心であることや、利用料が安価であること、利用者のアセスメントができるなどのメリットがありまして、他の宿泊施設と救護施設で利用者の特性により機能分担し、活用を図っております。
4ページに実際の事例を掲載しておりますので、後ほど御高覧いただければと思います。
次に、無料低額宿泊事業の規制のあり方についてでございますが、大阪府の条例では、事業開始前の届出を義務化しており、また規制についての実効性を確保するために、違反の疑いのあるものからの報告聴取、違反者に対する勧告、命令、公表、罰則についても規定するとともに、大阪府と福祉事務所との連携についても規定し、未届け事業所の把握及び届出推奨の実施を行うことにより一定の効果が見られておりまして、これらの法令に基づく規定の整備は必要であると考えております。
また、大阪府の条例では規定しておりませんが、サービスの水準を確保するため、設備や運営についての法令上の最低基準を設けることにも賛成です。
最後に、保護施設のあり方について述べさせていただきたいと思います。保護施設は、最後のセーフティネットである生活保護制度における居宅での自立した生活が困難な方の受け皿として、国民の生存権を保障する上でも非常に重要な施設であると考えます。生活保護法の他法他施策優先の原理から、ニーズの把握や整備をはじめ、その地域の他法他施策の社会資源のありように大きく左右されることから、一律にあり方についての議論を進められにくい状況があったのではないかと考えます。
その結果、生活保護受給者の置かれている実情から、居宅の確保や生活支援の必要性が先行しているというのが現状であり、この際、これらの実情をきちんと把握し、今日的な保護施設のあり方を中心に、居宅での自立した生活が困難な方の受け皿のあり方について、きちんと議論するべきではないかと考えます。
地方自治体の関与のあり方としましては、地域における施設や社会資源の状況、利用ニーズの把握、その結果に応じた他法他施策の整備状況を踏まえた整備の計画・検討が考えられ、また入所者の援助方針に関しては、福祉事務所と保護施設が自立支援計画を共有し、共同して支援を行う仕組みを構築していくべきではないかと考えます。
以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
続きまして、成田参考人、お願いいたします。
○成田参考人 一時生活支援事業と無料低額宿泊事業について、川崎市の状況も含めて発言させていただきます。
初めに、一時生活支援事業についてですが、川崎市では市内3カ所でホームレス自立支援センターを運営しております。路上のホームレスが減少しているという点では、本市も他都市と同様でございますが、ネットカフェなどの終夜営業店舗に起居しているなど、不安定な居住環境にある方の相談は依然として多く、自立支援センターの延べ入所者数はむしろ増加している状況でございます。ホームレス問題は都市問題と言われるように、大都市に集中する傾向があるのはやむを得ない面もございますが、他の自治体からの流入と思われるケースが散見されるのも事実でございまして、一時生活支援事業を実施していない自治体で生活されていた方が本市の相談窓口にいらっしゃる事例もございます。
生活困窮者自立支援制度の充実・推進という観点からも、相談者が住みなれた地域で自立を目指していただけるよう、支援体制を整えていくことが重要であり、借り上げ型シェルターなどに取り組まれる自治体数がふえていくことで、一時生活支援事業の一層の充実が図られていくことが望ましいと考えております。
次に、無料低額宿泊事業についてですが、本市では、ホームレスの方が福祉事務所に相談に来た場合はホームレス自立支援センターを紹介しており、福祉事務所から無料低額宿泊所を直接紹介することはしておりません。平成29年4月1日現在、市内の無料低額宿泊所は19施設、定員783人となっておりますが、同施設を利用し、本市で生活保護を受給されている方は392人であり、定員の約半数の入所となっていることから、一時生活支援事業と無料低額宿泊所については一定の関係性があると感じているところでございます。
現行の無料低額宿泊事業は届出制であることから、事業開始後の調査や指導では行政処分決定までに一定期間を要し、著しく狭隘で設備が不十分な場合でも、事業実施を規制することができない状況でございます。そのため、現在、指定都市長会では、現行の届出制を第1種社会福祉事業にある許認可制に改めるよう国に提案しております。川崎市では、ガイドラインを作成し、3カ月以上前に届出をするよう義務づけております。仮に許認可制での実施がすぐには難しい場合は、少なくとも事前の届出を義務づけることとし、例えば法令などにより設備や運営について最低基準を設け、その基準を満たさない場合は事業開始を認めないなど、適切な住環境を担保できるようにしていく必要があると考えております。
以上でございます。
○宮本部会長 ありがとうございました。
一連の自治体の視点からの御発言からも、居住支援と生活支援を連携させていくことの重要性、またおそらくは、この生活困窮者自立支援制度はそれが可能な制度であるということが浮かび上がってきたのではないかと思います。
続きまして、平川委員、よろしくお願いいたします。
○平川委員 ありがとうございます。
無料低額宿泊事業について発言をさせていただきます。
資料1の11ページの考え方のところで、基本的に一時的な宿泊型施設というよりは、生活支援を受けながら共同生活を行うということでありますので、ある意味生活施設として無料低額宿泊事業について位置づけていくという方向が示されているのではないかなと思っているところであります。
そういう観点で、参考資料1の調査結果で、現状、どうなっているかというと、2ページ目の居室面積を見てみますと、生活施設としてはなかなか厳しい状況であることが、見てとれるのではないかなと思っています。
例えば、居住基本法の中で、一定程度の単身者の居住スペースについて明示されているわけであります。いろいろな設備をつければ、単身者は25m2必要だとなっているのですが、例えば調理とか浴室というものを除いて、本当に必要最低限、例えば食事をする場とか寝る場所、収納スペースも考えあわせれば、10.8m2ぐらい必要だということが考えられますし、参考になるか別にして、特別養護老人ホームのユニット型個室居室面積は10.65m2でありますので、最低でも3畳ぐらいのスペースが生活の場ということで言えば必要ではないかとなっていますが、この居室面積の現状を見ますと、それについてはなかなか厳しい施設が多いのかなという点も指摘せざるを得ないのかなと思っています。
それから、資料1に戻りまして、12ページの論点であります。奥田委員からも大変大胆な提案がありまして、さすがそういう提案ができるのはすごいなと思いました。新たな類型をつくるということで、それも一つの考え方ということもあるかもしれませんし、それに向けて、どういうふうなことが考えていけるのかというのも、1つ整理していく必要があるのかなと思っています。
生活保護制度の中でと書いてあります。生活保護法で位置づける施設だという形になりますと、かといって措置施設でもないという形になるのかなと思いますが、そうなりますと、例えば形式的には保護費を本人に渡すのですけれども、代理納付という形で実態としては施設側に一定の保護費を渡さざるを得ないという仕組みが可能かどうかというのも検討していく必要がありますし、それが生活保護制度との整合性がとれるのかどうかということも整理していく必要があるのかなと思っています。
また、支援ということであります。支援というのは、多分、法定受託事務でなくて自治事務なのでしょうか。法令に詳しい先生方にお聞きしたいと思いますけれども、支援というものが法定受託事務という形ではなく自治事務という形になれば、生活保護費の中でそれを代理納付という形で本当に支給できるのかどうかということも、考えていかなければなりませんので、その辺、しっかりとした制度づくりが必要なのかなと思っています。
あと、参考資料1の1ページ、都道府県別の届出数ですけれども、押しなべて全国一律に配置されている制度ではないので、かなり格差があります。ただ、一方で未届けの施設もかなりあるのではないかなと思います。この辺、もう少しどういう施設があるのか、未届けの施設も含めて、どういうものになっているかというのは、よくよく見ていかないとだめではないかなと思っているところであります。だからどうすべきだというのはなかなか言えないところがあるのですけれども、どういうふうな事業を進めていくかというのは、いろいろなポイントがありますし、大胆な御提案もございましたので、もう少し検討していくことが必要ではないのかなと思いました。
すみません、以上、意見として言わせていただきます。
○宮本部会長 ありがとうございました。
居住支援と生活保護との関係、あるいは生活支援サービスと自治事務の位置づけ。これについては、後ほど菊池委員の御発言もまだ控えておりますので、コメントいただければと思います。
続きまして、竹田委員、お願いできますでしょうか。
○竹田委員 ありがとうございます。3点ほど述べさせていただきたいと思います。
まず、居住支援についてですけれども、今日の資料にもありますとおり、社会的な孤立を防いで、地域住民が主体的なつながりをつくっていく、互助を促進していくためには、地域における住民との意見の対立とか衝突、さまざまな排除という問題もありますので、よりよい関係を構築していくといった支援もあわせて検討していく必要があるのではないかなと思っています。つまり、居住支援においてもソーシャルワークの機能もあわせて考えていく必要があるのであろうと思っています。
2点目ですが、先ほど来、議論になっておりますが、無料低額宿泊事業について、現状として無届けのほうが圧倒的に多いという中で、仕組み的には貧困ビジネスを助長しているという側面も否定できないのではないかと思っておりまして、規制を強化することによって、さらに無届けが増えていくという可能性もなくはないのかなと。そうすると、実効性の観点から、届出へのインセンティブも含めて、工夫して取組を考えていかないと、規制を強化して無届けが増えたということでは、結果的に本末転倒になってしまうのではないかなと思っているところです。
3点目でございますが、保護施設のあり方について、先ほど来少し議論が出ておりますが、経過的な施設ということを前提にしますと、入所する前から具体的な支援の方法というものを多機関多職種で検討していくことが仕組みとして必要ではないかなと思っております。なぜ他法他施策では対応できないのかですとか、どこを経て、どういうところでさらに生活を続けていくのか。そういったことを退所する時点ではなく、入所する前から具体的な支援、仕組みを考えていく。そうした積み重ねが地域の課題を一緒に解決していく一助になるのではないかと思っています。そういった具体的な支援のあり方もあわせて位置づけていく必要があるのではないかなと思っています。
私からは以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
規制の強化と規制をすり抜ける無届け施設の増大は、高齢者の施設について既に繰り返されてきたことでございまして、その教訓・経験をどう生かしていくのか、大事な問題提起なのかなとお伺いいたしました。
新保委員、お願いできますでしょうか。
○新保委員 では、保護施設について2点お話ししたいと思います。
まず第1ですが、生活保護法の第39条、46条、47条において、保護施設の利用者に対する援助・支援を意味する言葉として、「処遇」という言葉がまだ使われています。生活保護の実施要領については、平成20年度より「処遇」の用語が「援助」や「支援」に変わっています。平成13年度に全国救護施設協議会が策定いたしました救護施設サービス評価基準における基本理念については、既に「支援」という用語が用いられており、現在は、更生施設も含めて、個別支援計画に基づく自立支援に取り組んでおられるという状況があると思います。「処遇」の用語については、生活保護施設が自立支援を実施しているという実態に即して、見直していただければと思うところです。
2点目ですが、16ページの論点について、地域移行が可能な利用者については、他制度のサービス利用を可能にするとともに、積極的に移行支援とフォローアップの支援を行うことが求められていると思います。
それから、入所継続が必要な者については、救護施設の先ほどの評価基準の基本理念でうたっているように、その人らしい豊かな生活の実現の支援というものを目標とした支援が行えるようになるとよいと思います。施設の機能を地域に開き、そして利用者もどんどん地域の中に出ていくということが、施設が社会に認知されていくということも含めて大事かと思います。
全救協さんのほうでは、平成25年度以降、救護施設が取り組む生活困窮者支援の行動指針に基づいて、利用者だけではなくて、地域で支援を必要とする方々も支援をするなど、非常に積極的に取組を進められていると思います。昨年度からの第2次行動指針においては、生活困窮者支援における認定就労訓練事業を全施設で取り組むという目標も掲げていらっしゃいまして、セーフティネット施設として、この施設の場所、人、ノウハウというものは非常に活用できる、豊かなものがあると思っております。
先ほど奥田委員からのお話もありましたように、まだまだ保護施設全体を見直していくということが、困窮者支援ですとか、本当に今、困っている方たちの支援にかなり有効に働いていくと思いますので、積極的な見直しを期待したいと思っております。
以上です。
○宮本部会長 どうもありがとうございました。
全救協は、この困窮者自立支援制度を全面的に活用してくださろうとしているわけですけれども、同時に、先ほど御発言があったように、非常に困難な事例もたくさん抱えておられることは承知しています。
最後になると思いますが、菊池委員、お願いいたします。
○菊池委員 先ほど振られた件はさておいて。無料低額についてと保護施設について意見を述べたいと思います。
まず、無料低額の規制のあり方についてですが、適切な住環境を確保するため、法令で最低基準を設けることには賛成いたします。有料老人ホームの規制と同じように、事業開始前の届出を義務づけるということもあってよいと思いますが、事後であっても届出があれば、これは受けざるを得ないだろうと思います。そうしないと、2種事業でありながら、実質的には許認可制に近い性格のものとなって、営業の自由とか居住移転の自由との兼ね合いが出てまいります。
これを1種事業化するというお話もありましたが、かなり大きな議論が必要でして、そもそも第1種事業と第2種事業をどういう観点から分けているのかという制度趣旨まで立ち戻った、かなり大きな議論をしなければいけないので、これをいきなり1種事業にというのは、難しいのではないかと考えます。
それから、行政指導や事業停止命令などを円滑に実施できるようにするために、届出施設について最低基準を設けた上で、改善命令などの法令上の規定整備を行うということは、先ほど申したように賛成ですが、無届け施設の場合、どうするか。この場合も、無認可保育施設などと同様に、児童福祉法59条では立入調査、質問、勧告、公表、事業停止、施設閉鎖などに係る明文規定を置いておりますが、何とかそういった規制をかけることができないかと私も考えております。
基本的にその方向で何とかお考えいただきたいのですが、その場合に、そもそも無届け施設はどういうものが規制の対象になるのか。社会福祉法2条3項8号の2種事業に当たるのかという要件該当性レベルでの不明確さが残ると言わざるを得ないですね。なので、この点、内閣法制局を通すのは結構大変かもしれません。
それでも、法令上、規制を行うことの意義は大きいと思っておりまして、例えば今の2条3項8号は施設を利用させると規定していますけれども、並びの9号では診療を行う、あるいは10号では老人保健施設を利用させるという、単に使わせるのではなくて、医療というサービスを行ったり、当然、老健でもその中で一定の処遇が行われていくというものが前提になっている。
先ほども御意見の中で生活支援というお話がありましたが、1つあり得るかなと思うのは、この8号を少し変えて、利用させる、プラス、何か生活支援的な面を入れ込んで、それを法令でもう少し明確化し、さらに通達、ガイドラインで具体化するということをした上で、その要件を少し明確にして規制をかける道筋がつけられないかということを、先ほどの皆さんの御意見を伺いながら考えました。それはできないということですと、これは生活保護法レベルで対応せざるを得ない。
そうすると、これも先ほど御意見が出ていましたように、基本的には生活保護受給者限りでの対応ということにならざるを得ないのかなというところで、無届け施設全体というか、保護受給者以外の方にも規制をかけられるような工夫が何とかできないかということを先ほど考えた次第です。
生活保護法上の対応について、社会福祉法上の規制というのは、今お話ししましたけれども、これは基本的には施設や事業としての最低基準をクリアしているかどうかという消極的・警察的な規制です。それに加えて、特定の給付や支援の仕組みを個別法で設けて、施設事業者の積極的な取組を評価し、それに見合った、さらに追加的な規制を行うというのは、これは介護、障害、児童といったほかの領域でもやっていることですので、生活保護法においても、そういう方向性というのは積極的に評価できると思っています。
それから、2つ目に保護施設ですけれども、さまざまな支援ニーズを抱える方々を受け入れ支えてきた保護施設は、一定の役割を担ってきたと評価できると思います。他方、地域共生社会の理念からすれば、施設退所後の地域生活を見据えたサービスや支援を積極的・継続的に行っていくということが必要になってきますので、その方向性というものは積極的に支持したいと思います。
また、措置費を個別化する。つまり、個人のニーズや属性に即して個別に措置費を算定するということも考えられ、私はその方向性が理想だとは思うのですが、入所者像が非常に多様であることがうかがえることからしますと、なかなか難しい面があるなと思いました。ただ、そうであるとしても、できるだけ柔軟に他法他施策の活用が図られるように工夫していただきたいと思います。
地域共生社会の理念を徹底すると、重度の要介護状態や精神障害などによって地域生活が困難と認められる場合には、それぞれの一般的な特養とか精神病院といった専門機関が対応すればよく、保護施設は経過的な位置づけでよいという議論もあり得るかと思います。しかし、現実に存在している多様な入所者像を前提にしますと、あらゆる施設を経過的な位置づけとするということには、まだ現時点ではやや無理があるのかなと感じます。
ただ、保護施設の施設体系は、老人福祉法の養護老人ホームに移行した養老施設を除きますと、1950年の生活保護法全面改正時と全く変わっていないということで、現在の社会状況や社会保障制度全体の体系を見据えた整理、見直しが必要である。今回改正では間に合わないと思いますが、遠からず、新しいタイプの施設類型の導入・移管も含めた検討が必要になってくると思います。
以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
菊池委員の御発言を最後までとっておいた目論見が見事に当たりまして、皆様の問題提起を収れんさせていただくような、つまり規制の中身として、生活支援と何らかの形でリンクさせていくという方向。これは、奥田委員のビジョンまでいくわけではございませんけれども、その前段階のところはかちっと押さえることになるのかなと伺いました。
どうもありがとうございました。
このあたりで第1の論点についての議論をひとまず終えて、4時30分まで、休憩と呼んでいいかどうかわかりませんけれども、4分間ほどお休みをさせていただきたいと思います。残りの時間、限られておりまして、論点は2つございますので、きちんと30分までに席にお戻りください。よろしくお願いします。
(休 憩)
○宮本部会長 大変短い休憩時間で恐縮でございますが、再開させていただきます。
続きまして、議題2「都道府県・町村・社会福祉法人の役割」、さらに議題3「事業の適正な実施について」議論していきたいと思います。
事務局からの説明をお願いいたします。
○本後室長 それでは、資料2をごらんいただければと思います。
まず、1ページ目でございます。生活困窮者自立支援制度についての都道府県の役割ということです。
現状と課題。都道府県については、市及び福祉事務所を設置する町村に対する必要な助言・情報提供その他の援助を行う責務が法律上、規定されています。
その責務規定の解釈として、任意事業の実施に向けた働きかけ、あるいは従事者に対する人材養成、関係機関のネットワークづくりといったことが行われ、かつ期待されているということでございます。
3ページ目に考え方をまとめております。先ほどの説明のとおり、責務が規定されていることと、それに基づくさまざまな支援が期待されているということ。
そして、3番目の●ですけれども、都道府県の役割として、管内自治体の従事者に対する研修や人材育成、市域を越えたネットワークづくり、事業の実施に当たっての支援が必要という意見が、これはこの場でも再三いただいております。
論点。都道府県による管内自治体の広域的な支援を効果的・効率的に実施するために必要な方策は何かということでございます。
続きまして、生活保護制度についての都道府県の役割ということでございます。
現状と課題です。生活保護制度における都道府県の役割ですけれども、町村部における保護の実施機関としての役割のほか、事務監査や医療機関等の指定・指導等の事務がございます。
それから、法令上の規定はありませんが、ケースワーカー等の研修なども行っていただいています。
考え方にありますとおり、就労支援事業、医療扶助に関する業務は、市町村の圏域を越えた人の動きがあります。地域資源が不十分な地域などでは、複数の自治体で事業を実施することが効率的な場合もありますので、都道府県が広域実施に向けた総合調整や助言等を行うことが効果的・効率的であると考えられます。
また、ケースワーカーの研修等を引き続き行っていただくことも効果的だと考えられるということであります。
こうした点を踏まえて、論点ですけれども、都道府県による広域的な支援を行っていくために必要な方策は何かということについて御議論いただきたいと思います。
続きまして、5ページ目、町村部における支援のあり方でございます。
現状と課題。現在では、福祉事務所を設置していない町村は実施主体とされておりません。この点について、相談機関が町村内に設置されているとは限らない。設置されていない町村では、役場が一時的な相談窓口として対応している自治体がございます。そうした中で、相談窓口の設置の必要性を感じている町村も1割強存在しているというデータを御紹介させていただきました。
こういったことを踏まえまして、考え方。福祉事務所を設置していない町村を実施主体とする場合には、一律ではなく、その実施を希望する町村が実施できるような仕組みとすべきという意見がございました。また、その際の都道府県の支援という意見もございました。
論点ですけれども、福祉事務所を設置していない町村において生活困窮者の相談を行うに当たって、どのような方法が効果的・効率的と考えられるかということを挙げております。
続きまして、社会福祉法人の役割でございます。
現状と課題。社会福祉法人については、生活困窮者自立支援法に定める各事業の担い手として参画とともに、3番目の●です。平成28年の改正社会福祉法において、「地域における公益的な取組」の実施に関する責務規定が創設されております。
1つ飛ばして、5つ目の●ですけれども、生活困窮者自立支援の分野においても「相談・現物給付による支援」「住まい確保のための支援」「認定就労訓練」などが行われております。
こうしたことについて、都道府県単位で複数の法人の連携による取組が進められていたり、最後の●ですけれども、こうした都道府県レベルの取組に加えて、市町村レベルで複数法人による取組も進められているということであります。
考え方でございます。社会福祉法人については、「地域における公益的な取組」として、生活困窮者分野において、創意工夫をこらした取組を進めるべき。その取組を進めるに当たって、他の福祉制度における事業を同一法人で行っている場合の人員配置基準、あるいは施設・設備の活用について柔軟な運用がなされるように改善を求める意見がありました。
創意工夫をこらした取組を進めていくために、どのようなことが必要かという論点を挙げております。
○姫野推進官 続きまして、資料3「事業の適正な実施について」ということについて御説明させていただきます。
まず、1点目、生活保護制度の保護の実施責任でございますが、現状と課題のところです。
生活保護制度におきましては、居住地を所管する福祉事務所が実施責任を負うことになっておりますが、保護施設とか介護老人福祉施設などに入所する受給者につきましては、施設に入所する前の居住地を所管する福祉事務所が保護を行うという居住地特例が設けられております。
他方で、有料老人ホームや軽費老人ホームにつきましては、介護保険制度では入所前の住所地を所管する市町村が保険者となっておりますけれども、生活保護では、こうした居住地特例を設けず、入所後の施設所在地の福祉事務所が保護を行うこととなっております。
また、無料低額宿泊所については、一時的な宿泊施設という位置づけでございますので、居住地特例の対象とはしておりませんけれども、入所前の居住地を所管する福祉事務所が保護を行うという運用が実態となっております。
考え方でございますけれども、有料老人ホームなどにつきましては、保護基準内で入所できるところは少なく、支障はないという考え方もございますが、有料老人ホームも増加しており、居住地特例の対象とすべきという考え方もございます。
また、無料低額宿泊所につきましては、長期間居住する方も多いという実態も考慮しまして、居住地特例の対象として位置づけるということも考えられます。
論点につきましては、以上の考え方につきまして御意見をいただければと考えております。
続きまして、返還金に関する論点でございます。
生活保護法に基づく返還金、2種類ございますけれども、不正受給に係る返還金につきましては、2つ目の●にございますように、平成25年改正におきまして、事前の本人同意を前提として、生活保護費との調整を行う規定が設けられており、また、税の滞納処分などと同様の手続も定められております。
他方で、資力があるものの、直ちに現金化できない場合などには、一旦保護を開始しまして、後日、資産などを現金化して返還してもらうということになりますけれども、こういった返還金につきましては保護費との調整ができないということで、受給者が口座振り込みを行う手間がかかるということであったり、あるいは振り込み忘れによる回収漏れが生じるといった問題が生じております。
また、要保護者が返還を約束した後に自己破産した場合に、保護費の返還金債権が破産管財人による偏頗行為否認の対象になるため、回収できないという事例も生じております。
考え方にございますように、こうした返還金債権につきましても確実に返還していただくことが必要であり、また、銀行振り込みの手続などの負担を回避するために保護費との調整をしてもらいたいという声もございます。
このため、次のページになりますけれども、不正受給の返還金と同様に、こうした返還金につきましても、本人同意を前提として生活に支障が出ないような配慮の上、生活保護費との調整を行うということが考えられます。
また、債権の性質につきましても、不正受給の返還金と同様に税の滞納処分の例によることとし、破産手続においても他の債権に優先するようにすることが考えられます。
なお、「その際」と書いておりますけれども、この返還金には福祉事務所の算定誤り等によるものも含まれますけれども、生活保護受給者の責めに帰すことができないものであり、返還金の理由に応じた慎重な検討が必要と考えられます。
論点につきましては、今、申し上げました生活保護費と返還金との調整を行うということと、税の滞納処分の例による処分を行えるようにするということの2点について、どう考えるかということをお示ししております。
続きまして、生活困窮者自立支援制度における事業の委託のあり方でございます。これは、前回の部会の中で問題提起いただいた論点でございます。
3つ目の●にございますけれども、事業の委託につきましては、通知の中で、専門的な知識・技術を有する職員の配置、法の理念に即した支援を展開できること、職員に対する指導・育成等を行う体制等が必要であるということが示されております。
これに対して、5つ目の●でございますけれども、支援の質の維持と継続性、委託事業者における職員の安定的確保の必要性等を考慮した委託事業者への委託のあり方等について検討すべきとの御意見がありました。
これを受けまして、論点ですけれども、事業における支援の質の維持や継続性の観点から、事業の委託のあり方について、どのように考えるかといった点を挙げております。
○本後室長 机上配布資料をごらんいただければと思います。本日御欠席の朝比奈委員、生水委員、渡辺委員から、関連する御意見を提出いただいておりますので、御紹介させていただきます。
16ページをお開きください。
朝比奈委員の2番目でございます。都道府県・町村の役割等についてということで、生活困窮者自立支援制度においては、就労の場は居住している市町村域にとどまらない。若年世代は比較的容易に居住の場を移動するということで、広域行政である都道府県の役割が重要になる。法律においても、そうした都道府県固有の広域調整や各市をバックアップする役割を明記すべきである。
それから、身近な市町村を中心とした地域共生社会づくりに向けた取組において、生活困窮者自立支援制度は重要な役割を担っていくことが期待されている。そのような政策の流れを踏まえながら、町村と生活困窮者自立支援制度との関係を明確にする必要がある。
続きまして、17ページ目、これは生水委員の提出資料でございます。
この17ページ目は、家計相談支援事業と就労準備支援事業の必須化に向けた生活困窮者支援のイメージということで、委員からお出しいただいている資料です。自立相談支援事業が生活困窮者支援のベースとして全ての相談に対応し、必須化した家計相談支援事業や就労準備支援事業などの支援メニューを組み込んだプランを作成してコーディネートする。個別事業の専門性を確保しつつ、事業を途切れなく、一体的に行うことができます。
次の18ページ目ですけれども、都道府県の役割についてのイメージ。都道府県が主体となって生活困窮者支援サポートセンターを設置し、都道府県が市町の生活困窮者支援をサポートすることを必須事業とします。具体的には、家計相談について単独では実施できない基礎自治体に対し、家計相談支援員による巡回相談を提供するなど、各自治体の家計相談支援事業をサポートする。
また、広域での実施が効率的と思われる就労準備支援や一時生活支援事業などについて、都道府県が広域的に実施を行い、独力で用意できない規模の自治体に場の提供を行う。
それから、相談員のスキルアップのための研修会の開催や、相談員に対するスーパーバイズ、任意事業の実施促進のサポートを行います。都道府県がサポートすることで、家計相談と就労準備支援の事業が必須化になっても実施が可能であること。また、自治体間の格差の解消にもつながりますということで、資料をお出しいただいております。
それから、資料の27ページ目が渡辺委員の事業委託のあり方についてのコメントでございます。
3行目の後ろからになります。行政委託事業に関しては、公平性の観点から、プロポーザル形式にならざるを得ないことは十分承知しておりますが、そのプロポーザルの審査や評価の観点は、自治体によってかなりバラツキがあり、事業受託者として課題を感じることもあります。
3年後の事業者選定の見直しにおいて、それまで積み上げてきた生徒や保護者との関係性が全く考慮されずに、学識経験者や自治体の有識者などのみで構成され、提案書ベースで審査が行われる可能性があります。
2行ほど飛ばしまして、優良な事業を実施しているにもかかわらず、その事業の事業評価が加味されずに、他候補と同列にゼロベースで審査され、継続して事業を受託できない場合、最も被害をこうむるのは、受益者である子どもたちや保護者になります。
一番下の段落でございます。生活困窮者自立支援制度における事業の委託に関しては、その事業の特性から、事業の評価によっては随意契約を可能とする、またプロポーザルの際にも、見えない資産である受益者との信頼も含めて、実施事業の評価をプロポーザルに加味するなど、受託事業者も受益者も安心して事業継続できる仕組みを考慮いただけますよう何卒よろしくお願いします。
以上でございます。
○宮本部会長 ありがとうございました。
前半の議論に比べますと、後半の議論は、都道府県・町村の問題、それから社会福祉法人の問題、生活保護の適正な実施の問題、さらに最後、話題になりましたように、事業の委託、継続性の問題、いずれも大事な問題がかなり入り交じって、少し議論がしにくいところがあるかと思います。しかも、時間も制約がございますが、早速、議論に入っていきたいと思います。
それでは、まず浦野委員、よろしくお願いいたします。
○浦野委員 ありがとうございます。
「社会福祉法人の役割について」に限ってお話し申し上げたいと思っております。本日、机上資料を用意しておりまして、19ページを御参照いただければと思います。これまでにも申し上げてきたことを改めて整理して、お話をしたいと思っております。
まず、「1.基本的な考え方」の2つ目の○でございますけれども、全国社会福祉法人経営者協議会が「地域における公益的な取組」の一環として、社会福祉法人・施設が持つ専門人材、施設・設備を活用して生活困窮者支援に積極的に取り組む。この前提のもとにお話をしたいと思っております。
多くの社会福祉法人・施設等は、社会福祉法24条2項に言う地域における公益的な取組、あるいはその中でも、こういった生活困窮者の自立支援に非常に関心を持っております。一方で、では、今、経営している保育所とは別に事業を行わなければならないとか、特別養護老人ホームとは別に職員を配置して事業を行わなければならないといった、いささか誤解し過ぎという部分もあるわけですけれども、そういった認識に陥りがちで、かなり大仕事にならざるを得ないという認識を持つ方も中にはいらっしゃいます。
ただ、そういった認識を持たせている背景もあるのかなと思っておりまして、2の現状と課題で、例えば(1)人員配置基準につきましては、この資料の21ページをごらんいただきますと、人員配置について、ある程度弾力的に扱いますということがある一方で、最後のところ、黄色いマーカーの部分にこのような記述があります。各社会福祉施設等の利用者を参加させる目的をもたない地域活動。つまり、特別養護老人ホームのような入所者を相手にした仕事ではない部分、当該社会福祉施設がその利用者に提供している福祉サービスとは別に行われるものであり、この場合については、社会福祉施設等の職員は、当該福祉サービスの提供業務に従事すべき時間帯と当該地域活動に従事する時間帯とを明確に区別すれば、当該地域活動を行うことができますと書いてあります。逆に読むと、明確に区別しない限り、行ってはならないとも読めるわけです。
これを、例えば相談支援という活動をとったときに、たまたまある日、あるときに相談の対応をしなければならないときに、明確に区別ができるかというと、できるわけがない。あるいは、そのように区別したときに、その相談対応に当たった時間の職員の人件費をどういうふうに配分するのか。そこを別経理にするのかどうか。会計区分を分けて、サービス区分を分けて、人件費を案分して経理するのか。特別養護老人ホームは年間何億という事業をやっている中で、そこに係るお金が10万円なのか20万円なのか30万円なのか。それをわざわざ切り分けてやる必要があるのかという問題があります。
また、19ページに戻っていただきますと、施設や設備に関してですけれども、これは同じく22ページ以降に現行のガイドラインが示されていまして、この部屋はこの範囲では他の目的に使ってよろしいということがずらっと出ております。かなり多くのものが出ているのですけれども、ここに限定して列挙しています。例えば、この限定列挙の中には居室というものが入っておりません。
もちろん、満床のときに居室が使えるはずがない。しかし、例えばショートステイでも、全国的に見て100%ということはなくて、95%とか96%程度がいいところでございます。利用者と利用者とのはざまで数日あいているということは、幾らでもございます。そういうときに、たまたま一時生活支援で二、三泊させてもらいたいという話があったときに、居室はここに入っていないからだめという話になりかねない。
そういう意味では、こういった限定列挙ということではなくて、生活困窮者の自立支援に資する取組であること、あるいは少なくとも社会福祉法24条2項に定める地域における公益的な取組として行うことについては、人、物、金といった資源を明確に切り分けて整理するということではなくて、むしろ社会福祉施設の本来の役割として行うものだという位置づけにしてはどうかなと思います。
もちろん、例えば特別養護老人ホームは心身に重度な障害を有し、常時介護を要する者ということが対象規定になっているわけですけれども、それらの者を介護するとともに、地域における住民の福祉課題に対応すると位置づける。つまり、全ての社会福祉施設、あるいは第2種社会福祉事業を含めて、福祉サービス事業所も含めてよろしいと思いますけれども、そういったものの共通責務として位置づけることによって、多くの社会福祉施設が取り組みやすくなるのではないかなと思っております。
資料19ページ、下のほうに施設数等の一部をお示ししておりますけれども、何万という福祉施設がございます。これに第2種社会福祉事業等の事業所まで加えれば、もっと大きい数になります。これらの施設が少しずつやることで非常に大きな効果を生むということになると思います。少数の事業者だけで取り組むよりは、多くの社会福祉施設が、表現は変ですけれども、少しずつ軒先を貸せば、大きな成果を上げることができるのではないかなという意味で、こういった限定列挙的な制限的な表現から、全ての社会福祉法人に普遍的・共通的な役割として位置づけるという考え方を持っていただければ大変ありがたいなと、私はそんなふうに考えております。
以上でございます。
○宮本部会長 ありがとうございました。
確かに地域共生社会をめぐる通知が、何かそれとは全く逆の方向の縛りをかけているようにも見えます。
続きまして、石橋委員、いかがでしょうか。
○石橋委員 島根県邑南町の町長の石橋でございます。福祉事務所を設置している町村として意見を述べたいと思います。ちなみに、全国で福祉事務所を持っている町村の県は、島根県と広島県と鳥取県しかございません。まだまだ町村は少ないという状況でございます。そういう中で、私どもの町も福祉事務所を持って、ちょうど10年になります。少しずつ成果も上がっているので、まず私どもの今の状況をお話しさせていただき、その後、県等の役割ということを申し上げたいと思います。
邑南町の生活保護の状況でございます。福祉事務所を持ったのが平成20年4月からでございます。そのときに生活保護を受けていた世帯・人数は、44世帯63人でございました。そして、10年たって今日でございますが、28世帯29人ということで減少傾向にあるわけでして、いわゆる保護率というものが0.23%ということで、県下でも最低の水準になっているということです。
このことは、福祉事務所を持って、町村、うちの町が実施機関となって、被保護世帯への距離、時間的な距離だとか生活空間の距離、そういったことが縮まったことで、より世帯の実態把握が進んだこと。あるいは、申請・相談段階でのいろいろなことについての活用が進んだこと。あるいは、就労支援による自立などが要因と考えられております。加えて、邑南町では、町の社会福祉協議会も以前から精力的に困窮者支援に取り組んでいただいていることも、生活保護率が低い大きな要因だと考えています。また、この生活困窮者自立支援制度も、平成27年度の開始時より実施機関を町の社会福祉協議会に委託しております。
また、任意事業については、人口1万1,000人の町ですから、小規模自治体ということで事業化が困難であったため、今、必須事業の自立相談支援事業を充実させているところでございます。また、任意事業にかわる困窮者支援としては、無料職業紹介所の運営を町で行っている。あるいは、いわゆる伴走型の支援ということで、町・社会福祉協議会の相談体制の充実や、情報でありますけれども、庁内LANの接続などによって、社協と町の日々の情報交換や情報共有をやっておるということでございます。
さて、都道府県・町村・社会福祉法人の役割でございますが、こういった中で、町での取組を進めている中で、ほかの町村は、一般的な事柄として考えてみますと、地方では近隣の市町村で広域的に実施しても、マンパワーが十分でない場合があります。また、単に町村が集まって広域で取り組めばよいということにもなりません。したがいまして、例えば県が主導して広域圏をつくり、市町村が実施主体となった場合、問題や難しい事案が発生した際には、県の担当者が来てくれて、仕組みや構築といったことをいろいろやるというような県の強力な支援が当然重要なものとなってまいります。
就労支援事業や家計相談支援事業等についても、県が市町村を支援するということを明確に位置づけていただいて、県によって取組に温度差が生じることがないようにやっていただきたい。
また、最後でありますけれども、国においても法律をつくって終わりではなくて、県や市町村がしっかりと役割を果たしているかといった評価をしていただくことも重要ではないかと考えております。
以上です。
○宮本部会長 どうもありがとうございました。
自治体からの御発言を続けてお願いしたいと思います。それでは、前河参考人、お願いいたします。
○前河参考人 都道府県の役割ですが、生活困窮者自立支援制度においては、都道府県が広域事業実施や情報提供・共有、研修実施、ネットワークづくり等の管内自治体への広域支援を法律上位置づけるとともに、補助率を上げるなどの財政的支援に加え、広域支援の具体的な内容・手法を示したガイドラインやマニュアルの策定により、広域自治体が取り組みやすくする工夫が必要と考えます。その際には、大阪府が広域実施しているノウハウについて提供していきたいと考えております。
生活保護制度においても、例えば生活困窮者自立支援制度の就労準備支援との一体的広域実施を行ったり、また監査業務や審査業務を通じて実施機関における課題を把握する立場にあるため、管内の福祉事務所に対し、監査指導に加え、研修や会議の場を通じて指導や支援を行う必要があると考えております。
あと、町村部における支援のあり方ですが、大阪府の福祉事務所を設置していない8町1村について、3カ所の福祉事務所を設置しております。そのそれぞれの福祉事務所が主催し、大阪府社会援護課、自立相談支援機関、広域就労支援事業の委託事業者、福祉事務所、町村の関係機関、関係団体、ハローワークによる合同支援調整会議を開催し、相談事例を含めた情報共有の機会を持っております。このような形で、福祉事務所を有していない町村が生活困窮の相談を行う際にも、都道府県や福祉事務所がネットワークづくりや相談事例も含めた情報共有や相談支援を行う際のスーパービジョン等のバックアップが有効ではないかと考えます。
生活保護制度の適正な実施ですが、保護の実施責任に関する広域的な対応としましては、大阪府は無料低額宿泊所とDV事案の増加に伴い、婦人相談所、または婦人相談所等が行う一時保護の施設について、府内実施機関に対し、取り扱いについての通知を発出しておりまして、無料低額宿泊所に加え、有料老人ホーム等についても特例を設けることについては賛成です。
あと、生活保護に係る返還金の関係では、法第78条同様、63条の場合も徴収ができるようになると、生活保護受給者に納付書を渡してもなかなか振り込んでもらえないことが多く、現金の取り扱いが不要となることから、かなりの事務負担軽減になると考えます。
最後に、委託のあり方ですが、大阪府は郡部の福祉事務所における自立相談支援機関と広域就労支援事業において委託実施しておりますが、事業開始の際には公募型プロポーザル方式により事業者の選定を行い、事業実施の際の質の確保を図っております。また、相談事業の継続性の観点から、実績を審査の上ではありますが、その後は随意契約で継続しつつ、契約の更新の際には、仕様書の内容を事業の質が確保されるよう工夫しております。
また、事業運営についても、委託事業者に丸投げではなく、先ほど紹介しました合同支援調整会議や相談支援員の連絡会議、また広域就労支援事業についても、大阪府、委託事業者、参加自治体と合同で、進捗状況や相談事例、事業所開設等について定期的に情報共有するための会議の開催、関係者向け研修、実施上の課題がある場合には直接調整を行うなど、共同運営に努めており、こうした取組は有効であると考えます。
以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
引き続いて、成田参考人、お願いいたします。
○成田参考人 生活保護制度の適正な実施について発言させていただきます。
法第63条は、資金・資力等がある者に保護を行った場合の返還金債権について、追って返還させることが制度の前提となっておりまして、公費の適正な支出を行う観点からも、制度に対する国民の信頼を確保する観点からも、確実に返還していただくことが必要です。本市におきましては、生活保護費の返還金に限らず、各債権について未収金の徴収等に大変力を入れているところでございます。生活保護費に係る返還金につきましては、本人の同意を前提とし、また、生活保護受給者の生活に支障が生じないよう配慮した上で、後日、支給される保護費との調整を行うよう法改正をお願いいたします。
以上でございます。
○宮本部会長 ありがとうございました。
吉岡参考人、続いて、岡部委員、お願いします。
○吉岡参考人 ありがとうございます。
まず、都道府県の役割についてですけれども、生活自立支援制度も生活保護制度も、いずれも都道府県による広域支援を位置づけることが必要であると考えております。
生活自立支援では、市町村単位での任意事業ではなく、市町村の区域を越えての移動・稼働する若年層も多いことから、都道府県行政枠組みの中で市町村が相互に利用できる仕組みとして実施する必要があると思います。例えば、認定訓練とか居住協議会の活動範囲の拡大と広域展開ということを考えてはどうかと思います。
また、生活保護も同じように、できれば都道府県の保健福祉圏ごとに包括する市町村に対する支援や研修、巡回指導や就労訓練などの展開をしていただいて、効率化・広域化を図っていただきたいと考えております。
それから、先ほど川崎市さんからもありましたけれども、63条の生活保護法の返還金の保護費からの徴収につきましては、法の第78条の不正受給に係る徴収金と同様に、返還金の確実な回収のため、本人同意の上で生活保護費と返還金の調整を行えるようにするべきではないかと考えております。
次に、生活困窮者自立支援制度における事業の委託のあり方ですけれども、高知市の場合は、事業開始当時は運営協議会方式で実施しておりましたが、現在は委託契約として、高知市社会福祉協議会と連携して自立相談支援事業の実施ができております。その手法として、2カ月に一度、各関係機関が運営方針を協議する運営委員会を行っておりまして、月に1回、事務担当者間で事業実施上の方針等について協議する事務局会議を行っており、日常的に課題を共有できる関係性を構築して、一体的な形で事業を実施できるものと考えております。
以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
生保の事業実施についても、自治体の観点からいろいろ議論が出ておりますけれども、岡部委員いかがでしょうか。
○岡部委員 2点発言します。
1点目は、机上配布資料15ページにも書いた事業委託についてです。
各種の事業の委託は、支援の質の担保、支援の継続性、利用者との信頼関係・支援関係構築の観点から、委託業者のミッションとか支援の質、実績等を考慮した上で契約を結ぶ必要がある。そこでは、入札価格の低さや、単年度・複数年の実績で判断するのではなく、一定期間事業委託し、支援の質や成果を総合的に判断するルールを設ける必要がある。
私、ある広域のところでの指定管理の委員長をやっているのですが、総合的に指定管理の審査をするときには、複数の側面からポイント制で判断している。それは、要するに透明性と説明責任を果たすためにです。それを行った上で、さらに一定期間継続し、それが一定担保されていれば継続ということを行う判断をしています。大阪府のほうでお話があったとおりかと思いますが、この点をルール化し明確にする必要がある。
これは、自治体区域内だけでなく、私が関わっている、全国から事業者が応募しているということがありますので、さらにそういうことを広く明確にルール化し判断していただきたい。
その上で、これをぜひ行っていただきたくもう一つの側面は、従事する支援者の安定した雇用、継続的な雇用が保障につながるということでもあります。これは、利用者のためにも、またそれに従事する人にとっても必要なことです。この委託に関しては、相当慎重に、量的充足と質の担保の両面からきちんとルール化していただきたい。生活困窮者自立支援法の事業が継続するようなことのためにも、ぜひお願いしたい。
2つ目は、都道府県・町村の役割です。都道府県は、広域調整、人材養成、計画的な業務、技術的な支援、財政的な支援ということが主たる役割であると考えます。そのためそういう観点から、ぜひその役割を十分に発揮していくため、きめ細かい対応をしていただきたい。
特にその関連で、これは生活困窮者自立支援法も生活保護も同じようなことかと思うのですが、計画の観点でいくと、広域的にどういうニーズがあるのかの把握と、資源配置がどうなっているのかを判断し地域福祉計画が作成されていくと考えますが、そこで、地域的な偏在があるときには基礎自治体と調整をして、広域調整をしていただく必要があると考えます。
それと、もう一つ、人材の関係でいくと、これは私の希望としては、これまでも発言していますように町村、市の基礎自治体で生活困窮者自立支援制度が展開されるのが、一番よいのではないか。福祉事務所の設置になると、未設置町村が同じようなステージでなくなりますので、もし可能であれば、都道府県の役割として、未設置の町村については、巡回相談的な自立相談事業の展開、この町村には何曜日に行くとか、そういう設定をしていただくことも考えられるのではないか。
これは、婦人相談所の例で考えますと、婦人相談員がそういう配置でやっていると思いますが、そういう方向で、町村における総合的な相談の技術的な助言をするスーパーバイズあるいはコンサルテーション的な機能が果たせるのではないかと考えます。
そして、技術的な支援で、生活保護の監査の関係です。生活保護はナショナルルールで行っていますので、事務監査が非常に大切だと思います。事務の標準化がきちんと果たされているかどうか。生活保護事務は最低生活保障と自立助長を目的としていますので給付に伴い相談援助が発生します。相談・援助・支援の質と適正な事務が行われているかどうかの両輪を監督することになります。事務的な側面と相談援助的な側面と両面ですので、そこをしっかりと見ていただくということが、事務監査上、必要なのではないか。引き続きそれをお願いしたい。
それに関して研修等の人材養成。これは、生活保護の職員の大半は、行政職を担っており、人事異動の年数からすると、絶えず研修と、適正な事務的な書式にのっとって行われているということをぜひ行っていただきたい。
私のほうからは以上です。
○宮本部会長 前半、御発言いただいていない小杉委員、駒村委員に優先してお話しいただくべきなのですけれども、奥田委員、もし事業継続に関することであるならば、ごく短時間でぎゅっと縮めてお話しください。数分でお願いします。
○奥田委員 皆さん、おっしゃったとおりなので、ちょうど3年目の見直しは委託先の見直し時期に重なっていますので、何らかのガイドラインを出さないと、特に価格競争入札のみでやるということに関しては、私は禁じたほうがいいと思います。こういうことをしていると制度が崩壊すると思います。雇用の問題も、経験の継続の問題もありますが、そもそも制度そのものにかかってきてしまう問題だ。
ただ、今、各自治体は来年度予算の編成に入ってきていますので、このことがどんどんおくれていくと、もう来年、3年目の見直しに間に合わないことになります。ですので、ここは何らかの形、この議論とはある意味別にというか、急がないとまずいところに来ていますので、そのことをぜひ申し上げたいと思いました。
以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
続きまして、小杉委員、お願いいたします。
○小杉委員 では、2つ。
今の受託先をどう決定するかという話にかかわりましては、基本的に皆様と同じような意見なのですけれども、実績評価というのをきちんとすること。その実績というのは、制度目的に照らして、つまり社会的孤立をどう防ぐかという点まで含めると、受益者視点での実績評価というのが柱として1つ要るだろう。
それから、それにかかわって、今からでは間に合わないかもしれませんが、中間評価というものを本当は入れたほうがいいのではないかと思います。それは、書面評価ではなくて、実際に現場に立ち入った形での中間評価というものを評価委員が事前にしておくと、何を見ればいいかがよくわかるので、今後、中間評価をぜひ入れて、評価委員は途中経過を見るということを含めたほうがいいのではないか。それが言いたいことの1つ。
もう一つは、就労支援関連ですけれども、都道府県の役割が非常に大きくて、これはもう既におっしゃっていることですけれども、特に認定訓練事業の場合は、実際に就労訓練をする方と認定訓練事業所とのマッチングというのは非常に微妙な問題で、その事業所で一体どんな訓練ができるのか。そのことを相談員がしっかりわかっていないと、うまくマッチングできないので、そのネットワークをきちんとつくる。そこに大きな役割があります。ほかは、スーパーバイズ機能とか、皆さん既に言われていることなので、そのマッチングのところが実は非常に大事だということだけ申し上げたいと思います。
以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
駒村委員、お願いします。
○駒村部会長代理 2つあります。
1つは、資料3の4ページに記述されている一連のことですけれども、この制度は都道府県と基礎的自治体の連携と役割分担と、それから、自治体と受託先の協働というのがまさに重要なわけですけれども、それぞれの間で思いの違いというものがあるのではないかと思います。うまくいっている例を早く提示されたほうがいいのではないか。協働して事業運営がうまくいっているような事例を、ベストな例として示すというのは重要なのではないかと思いました。
それから、もう一つ、今、ずっとお話があった委託の見直しの時期に入ってきている。よく、悪魔は細部に宿ると言いますけれども、一番ここが重要なところなのかなと思っています。今、4ページに書いてある自治体事務マニュアルをもう一回検索して見ているのですけれども、制度の趣旨については書いてあるのですけれども、委託先については、何か最小限のような情報になっているかなと思っていまして、この3年間の実績をちゃんと踏まえて、委託に際してはどういう点で実績、これまでの経験。質といっても、おそらく質の評価は一番難しいと思いますので、このマニュアルは早急に事業の特性を反映する形で見直さないと、今のままではまずいのではないかなと思います。
以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
最初の連携についてのベストプラクティスの提示は、事務局にお願いするということでよろしいでしょうか。
それから、今の一連の御発言の中で、事業実施継続について、これは非常に緊急の問題であるということで、小杉委員の言葉をかりれば、受益者視点からの事業委託、評価。これを現段階で進めていく方法といいますか、道筋というのは何かあるのでしょうか。
○本後室長 また追って御相談させていただきたいと思います。
○宮本部会長 ありがとうございました。
それでは、議論を続けていきたいと思います。
新保委員、お願いいたします。続けて、竹田委員、お願いします。残された時間はあと5分なのですけれども、今日は多少延長やむなしかなというところでございますが、よろしくお願いいたします。
○新保委員 ありがとうございます。
まず、生水委員の提出資料のような形で、事業必須化に向けた検討がしていけるとよいと思いました。
また、同じ生水委員の都道府県生活困窮者支援サポートセンターという案が出ていますけれども、このような形で都道府県の役割を明確にしていくということがとても大事かなと思います。
都道府県の役割としては、研修会の実施など人材養成の取組が非常に重要ですけれども、この都道府県が人材養成をしっかり行っていくには、国のかかわりというものが本当に不可欠です。都道府県による差異が出ないように、その時々に必要なカリキュラムのもとで質の高い人材養成ができるように、厚生労働省の継続的かつ積極的なかかわりを望みます。
人材養成研修については、生活保護と生活困窮者支援、それぞれの支援に共通して必要となる知識や技術というものがあると思います。支援関係の構築ですとか対象者理解とか就労支援、地域づくりのあり方・考え方、こういったところは研修を一体的に実施することで共通理解を深めるとともに、研修の回数も1回に絞れるというメリットもあるのではないかと考えます。こうした研修のモデルづくりにも取り組んでいけるといいのかなと思います。
生活保護制度の適切な実施については、多くの課題があって、なかなかこの場だけでは議論が尽くせない印象を持ちました。利用者の理解と協力が得られて、かつ利用者に不利益、過重な負担がかからないような対応方法が検討されていくことを願っております。
最後に、委託のあり方については、委員の皆様と同じ意見です。
以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
では、竹田委員、お願いします。
○竹田委員 ありがとうございます。1点だけ。
町村部における支援のあり方についてです。福祉事務所を設置していない町村部においても、例えば生活保護の相談・申請についてはそれぞれの役場で受けておりますし、このことは厚生労働省のホームページにもきちんと明記されています。実際、私も役場の職員として、生活保護の相談の際に、介護の問題を抱えていれば一緒に同席してお話を伺うこともありますし、この逆も然りで、介護の相談と合わせて、必要であれば生活保護の申請を促していくということで、相談窓口が身近にあることが効果的・効率的な支援を可能にしていくのではないかと思っています。
一方、生活困窮者自立支援制度に関しては、厚生労働省のホームページを拝見しますと、お住まいの都道府県・市にお問い合わせくださいとありますように、生活保護制度よりも相談・申請の窓口が少し遠くなっているように思っておりますし、特に北海道において言えば、さらに遠く感じるところもありまして、自らが住む町で相談・申請ができないという現状もあるのではないかと思っております。
相談窓口の機能を、例えば生活保護と同じように明確にすることによって、例えば町村の窓口から自立相談支援機関につないでいく。これは実際7割の自治体が経験しておりますし、これまでの部会の議論であった、例えば断らない相談の実現ですとか、情報の共有化、支援調整会議の活性化など、さまざまな効果が期待できるのではないかと思っております。
これまで自立相談支援機関を全ての市町村に置くのはなかなか難しいという部会の御議論もありましたが、現状を踏まえた実現可能性の観点からいえば、まず生活保護と同様に、相談・支援を行う窓口を町村に位置づけていくということが、本日の論点にある効果的・効率的な方法ではないかなと考えております。
私からは以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
続きまして、平川委員、お願いいたします。
○平川委員 最初に、今発言があった町村部における支援のあり方ですけれども、竹田委員の発言に賛同します。生活保護法第19条7項では、生活保護については協力事務というものが制度上明確になっておりますので、生活困窮者支援の中においても法的に明確にしていくのがいいのではないかなと思います。
それから、事業の適正な実施についてで、居住地特例であります。現行制度では、保護施設、介護老人福祉施設、障害者施設等々を含めて居住地特例が適用されております。これが有料老人ホームに拡大するというのは、事務の流れはそういう流れになるのかもしれませんが、有料老人ホームについてはさまざまな経営形態があります。多分、これが居住地特例という形になると、実際にケースワーカーがその施設に行く場合、旅費の工面もないでしょうし、年に1回、行くか行けないかという状況なのではないか。
そういった意味もありますし、有料老人ホームがさまざまな形での経営、ある意味貧困ビジネス的なところもなきにしもあらずということについて言うと、先ほど言った保護施設等々は別制度でさまざまな規制がかかっておりますけれども、有料老人ホームはある意味規制が緩い状況でして、この居住地特例を入れるということについては相当慎重に検討しなければならないのではないかと思います。
それから、4ページの事業の委託については、この間、私は発言しております。今までいろいろな方から御意見が出されておりますので、これについては総務省と調整していただいて、通知が出せれば一番いいのですけれども、そういうことも含めて、しっかりと事業が継続できるような対応ということをお願いしたいと思っているところであります。
以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
続いて、勝部委員、結果的にまた最後、菊池委員に締めていただくことになってしまいますが、よろしくお願いいたします。
○勝部委員 社会福祉法人の役割ですけれども、我々、基礎自治体単位で施設連絡会、都道府県単位では今、施設の連絡会があると思いますけれども、それぞれの自治体が困窮のスキームがいろいろ違うということもありますので、できれば市町村単位で連絡会をつくっていただいて、そこと社協などが連携しながら生活困窮事業のところとネットワークをつくっていくという形で、それぞれの自治体単位での中間的就労のやり方であるとか、居場所の確保であるとか、居住支援、緊急的な貸し付けの対応などを話し合っていけるような場づくりが、工夫としてはあるのではないかなというのが1点です。
それから、都道府県につきましては、これまで皆さん方がおっしゃっていただいているのですけれども、先般、ひきこもりの全国家族会の全国大会に出席させていただいた際に、自治体の困窮相談窓口の格差の問題をおっしゃっていて、先ほどもちょっと申し上げましたが、アウトリーチの違いというのも相当あって、相談窓口になかなか届かないというお話もありました。こういうお話を聞くと、地域がいい面と、もうちょっと広域で御相談に乗ってもらいたいという話もありますので、サポートできる体制を都道府県に明確にしていただいて、自治体任せでそれぞれが、うちはこれだけで終わりですという困窮の体制ではなく、全体の情報交換とか、もう一つは、いつも申し上げています支援者のケアの面がしっかりとできるような体制をぜひ充実していただきたいと思います。
最後に、プロポーザルの面につきましては、岡部委員、渡辺委員も含め、皆さんがおっしゃっていることに賛成です。相談者の質というのは、結局は経験であったり、対象者との支援の継続性のところがこの事業の命だと思いますので、ぜひともそこが勘案されるような入札の方法をしっかりと提案いただきたいと思います。
○宮本部会長 ありがとうございました。
最後、菊池委員、よろしくお願いします。
○菊池委員 簡単に3点です。
1点目は、皆さんと同じですが、事業委託についてです。行政として慎重な対応をしていただきたい。障害・児童にかかわる放課後とデイサービスで質の低い事業者が多数参入して、今、制度的に対応を余儀なくされているということに示されますように、この生活困窮者自立支援の予算規模が拡大していく。それに伴って、必ずしも十分ノウハウを持たない事業者が参入してからでは、もう遅いと思います。その意味で、1円でも安い事業者に見直されるような安易な自治体の対応がなされないように、行政の対応を求めたいと思います。
2つ目は、これは私、何度も述べてきたことですが、町村部の支援について。福祉事務所を設置しない町村でも1割強の自治体が必要性を感じていますので、ぜひとも町村における対応を認めてほしいと思います。ただ、そうであっても、町村が都道府県にかわって独立した実施主体になることにちゅうちょし、法律改正を行っても現状がほとんど変わらないということであれば、それも大変残念なことであります。
そこで、例えば、これも多くの皆さんから出た議論ですが、都道府県の役割・実施主体等の位置づけは変えずに、町村が独自に相談窓口を設けることを認める。そして、そうした町村の対応に対して、国としても財政的な支援を行っていく。都道府県との共同実施のような形にしていくこと。あるいは、町村が実施主体となって、大阪府さんからもお話があったように、都道府県が広域的に支援していくといった形。県も完全に引くのではない形で、共同で仕組みづくりができないかということをお願いしたいと思います。
最後に、生活保護費に係る返還金についてですが、不正受給でない場合における保護費の返還を、法63条を根拠に行わせる場合、この処分の適法性が争われた裁判例が、下級審でありますけれども、一定数存在します。最近、やや目立っていまして、これは平成24年の課長通知が一つの引き金になっている可能性もあると見ていますが、これらを分析しますと、裁判所は、返還処分時に被保護者が支給済み保護費を費消してしまっている場合には、返還免除の余地を広く認めている傾向があるように見られます。
ましてや、福祉事務所の算定誤りによる過誤払いの調整につき、資力がない、つまり現存利益がない保護受給者の保護費を減額して調整できるかどうかは、極めて慎重に考える必要があります。算定誤りなどが保護受給者の責めに帰すことができない以上、保護費を減額して最低基準を下回る生活を余儀なくさせるのは問題です。
実は、資料には「資力等」と書いていて、この「等」が何を意味するのか、やや気になるのですけれども、ここでは「資力等」を資産、能力と限定して読みます。おそらく資産がない場合だけではなくて、稼働能力がある場合も念頭に置かれていると思うのですけれども、稼働能力があって、さらに本人の同意があっても、調整によって最低生活を割り込んでしまうことがないということが原則で、そのような仕組みにしていただきたいと思います。これは、対応を少し誤ると、裁判という形で司法で争われることでもありますので、慎重な対応をお願いしたいと思います。
以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
もう時間が過ぎておりますので、ごく短くお願いいたします。
○岡部委員 前回、ちょっと欠席しましたので、ペーパーの15ページで生活保護の関係の子どもの貧困に関してです。
生活保護の子どもの教育機会や文化的・社会的機会を提供する方策として、生活扶助、教育扶助、生業扶助の増額をぜひお願いしたい。これは基準部会のマターです。
2点目ですけれども、これはここで議論になるかと思います。生活保護世帯の子どもの高校・大学等の修学費用に関連してです。これは、一般有子世帯との均衡や貧困の世代間継承の観点から、大学等の進学機会・修学費用の道を開く方策を要望する。具体的には、高等学校や大学等の進学機会の確保で、複数回の受験機会を認める方向で考えていただきたいということと、大学等の世帯内修学をぜひお願いしたい。これが1つ前回お伝えしたかったことです。あとは、現行がどうなっているかというのがここに書かれておりますので、見ていただければと思います。
以上です。
○宮本部会長 ありがとうございました。
タイムキーピングがうまくいかず、若干時間がずれ込んでしまいましたが、後段の議論もここまでとさせていただきたいと思います。
それでは、事務局から次回日程について、お知らせをお願いします。
○竹垣課長 次回は、11月16日木曜日14時からを予定しております。場所は、追ってお知らせいたします。
以上でございます。
○宮本部会長 それでは、次回、11月16日ということになります。だんだん寒くなってきますので、皆さん、夜は温かくしてお休みください。次の会議でまたお元気でお目にかかりたいと思います。
よろしくお願いいたします。
<委員名の漢字表記について>
岡崎委員の「おかざき」の「さき」のつくりの上部は、一部ブラウザ上で正しく表示されないために、便宜上「崎」の字で表示しています。正しくは「大」ではなく「立」ですので、あしからずご了承ください。
ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(生活困窮者自立支援及び生活保護部会)> 第9回社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」議事録(2017年10月31日)