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2017年11月7日 第3回「中小企業・小規模事業者の働き方改革・人手不足対応に関する検討会」議事録

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成29年11月7日(火) 13:00~15:00


○場所

経済産業省本館17階 第1特別会議室
(東京都千代田区霞が関1-3-1)


○出席者

植松氏、内田氏、北浦氏、柴田氏、竹内氏、立石氏、藻谷氏

○議題

(1)外部有識者からのヒアリング
(2)検討会委員による地方ヒアリングの進捗状況
(3)厚生労働省・中小企業庁による有識者ヒアリングの状況報告
(4)中小企業・小規模事業者における「働き方改革」実現に向けた対策(案)

○議事

○奈尾労働政策担当参事官 会議開始の前に事務局からお手元の資料の確認をさせていただきたいと思います。

 現在、検討会のペーパーレス化ということで委員の皆様にiPadをお配りしております。使い方は、机の上にこういう一枚紙が置かれているかと思いますが、まずホームボタン、右側の真ん中のちょっとへこんでいるところですが、これを押していただきまして、画面を右にスライドさせていただくと水色のファイルエクスプローラーというアイコンがございます。そのファイルエクスプローラーを開いていただきますと今日の資料が出てまいるということでございます。御不明な点がございましたら、お近くの事務局職員にお申しつけいただきたいと思います。

 今日の資料でございますが、お手元のiPadを御確認いただきまして、資料1「開催要綱」から始まりまして資料10まで、資料10が「中小企業・小規模事業者における『働き方改革』実現に向けた対策(案)」です。それから、机上配付資料といたしまして、伊藤委員の御意見ということでお配りしているものでございます。以上、もし不足がございましたらお近くの事務局までお申しつけいただきたいと思います。

 それから、資料2でございますが、机上配付のみということで非公表とさせていただきたいと思います。資料2については委員限りの取り扱いとさせていただきたいので、御了解をお願いしたいと思います。よろしゅうございますか。

○佐藤座長 それでは、ただいまから第3回「中小企業・小規模事業者の働き方改革・人手不足対応に関する検討会」を始めさせていただきます。

 お忙しい中、御出席いただき、ありがとうございます。

 本日は、川野委員、若林委員、原委員におかれましては、所用により欠席になっております。

 また、伊藤委員の代理として中澤様、小野木委員の代理として乾様、前田委員の代理として小林様、若林委員の代理として大谷様にそれぞれ御出席いただいております。なお、乾様は15分ほどおくれられるということです。

 もう一つ、本日より本検討会の委員に交代で御就任いただいた委員を御紹介させていただきます。資料1の開催要綱の別紙をごらんください。日本労働組合総連合副事務局長の内田厚様に今回から委員として御参加いただくということで、一言御挨拶をお願いします。

○内田委員 連合の内田でございます。よろしくお願いします。

○佐藤座長 カメラ撮影はここまでということですので、よろしくお願いいたします。

(報道関係者退室)

○佐藤座長 それでは、議事に入らせていただきます。本日は、議事次第にありますように、外部有識者からのヒアリング、検討会委員による地方ヒアリングの進捗状況及び厚生労働省・中小企業庁による有識者ヒアリングの状況について御説明いただきます。その後、9月28日に発表された、これは皆様からも御意見を伺っていますが、「中小企業・小規模事業者における『働き方改革』実現に向けた対策(案)」について事務局より報告させていただきます。ヒアリングと御報告をいただいた後に皆様から意見を伺うという形にさせていただければと思います。

 それではまず、議事1の「外部有識者からのヒアリング」です。本日は4名の方においでいただいています。社会保険労務士法人中村・中辻事務所の中辻めぐみ様、社会保険労務士法人シグナル代表の有馬美帆様、如水税理士法人代表社員の児玉邦康様、株式会社きらり.コーポレーション代表取締役の塚本薫様においでいただいています。

 それでは、皆様に御報告いただきます。今、御紹介しました中辻様、有馬様、児玉様、塚本様の順にお一人7~8分で、短時間で済みませんが、よろしくお願いいたします。初めに、中辻様、お願いいたします。

○社会保険労務士法人中村・中辻事務所中辻様 よろしくお願いします。立ってお話しさせていただいたほうがよろしいですか。

○佐藤座長 御希望であればいいですよ。資料は2ですか。

○社会保険労務士法人中村・中辻事務所中辻様 0203です。

○佐藤座長 では、よろしくお願いします。

○社会保険労務士法人中村・中辻事務所中辻様 私、社会保険労務士法人中村・中辻事務所の中辻めぐみと申します。きょう、この場に社会保険労務士として出席させていただきますことに心から感謝申し上げます。まことにありがとうございます。

 中小企業に対して働き方改革のアドバイスに至った経緯を簡単にお話しさせていただければと思います。

 当社は平成18年に設立いたしまして、ことしで11年目となりました。開業当初に決めたことは、中小企業のメンタルヘルス対策でございます。そのころは、社労士がメンタルヘルス対策にかかわることは少なかったと思いますが、中小企業で働く人たちがメンタルヘルス不調になった場合、ほとんどが退職となっているという現状を見まして、職場復帰ありきのメンタルヘルス対策を行おうと決意いたしました。

 少しずつ成功例が出ていく中で、そもそもの要因は何かということを考えるに至りまして、ハラスメントや過重労働が大きな要因であると気づいたところです。それらの要因を改善していくことが根本的な対応になるのではないかということで、それらについて対応をさせていただくようになりました。

 その経緯の中で、試行錯誤はありましたが、現在、こちらの資料にありますとおり、「過重労働削減等の全体像」と書かせていただいておりますが、このような形で私ども過重労働削減のアドバイスをさせていただいております。

 このような流れといたしましたのは、まず、中小企業の方たちが過重労働削減をしたいのだけれども、何から始めていいかわからない、どういったところをゴールにすればいいのかわからないという御意見をいただきまして、全体像と、どのような順番で進むべきかということをお示ししたものでございます。

 ポイントといたしまして、1番目にあります現状把握というところです。社内で事前に、労働基準監督署が調査を行うような模擬調査の項目をお伝えして、労務監査をしてくださいと申し上げますと、ほとんどの会社が何も問題はないと回答してくださいますが、実際にその後、社内の労働者の方にアンケートいたしますと、とんでもない状況で、例えば代休がここ1年間とれていない、1カ月間200時間の残業があるなどの意見が出てきたわけです。こういう状況をトップに伝えるという形になっております。

 アンケートのところです。字が小さくて申しわけないのですが、ある企業の例ということで、実際のものでございます。アンケートをそのまま行うのではなくて、アンケートを行う意義を最初にお伝えしております。例えば過重労働とは何か、会社の実態はどうであるか、過重労働のリスクにはどういうことがあるのか、今後の会社のあり方はどうするのかというものをここに書かせていただきました。アンケートの集計は顧問社労士が行い、つまり弊社ですが、匿名性が保たれるということの担保を書いております。

 最近行った回収率ですが、高いところでは94%、低いところでも62%ということで、かなり高い回収率になっているところでございます。

 残業の理由の中でよく目にする回答は、一番多かったのはやはり人手不足です。次に、特定の人に業務の負担が偏っている。また、取引先との対応、突発的な対応や納期の問題などもここに書かれていました。特定の時期に業務が集中するというのが非常に多かったと思っております。

 これが全体像の具体的な内容です。先ほど一律に並べておりましたが、ここもポイントを絞ってお話ししたいと思います。

 4のトップの意思表明というところで、こちらは具体的内容を読ませていただきたいと思います。「トップの本気度を全従業員に向けて発信します。トップが本気であればあるほど、管理職、従業員は本気で取り組みます。現場任せにするのではなく、顧客交渉、人員配置の見直し等、会社も積極的にサポートする旨を表明します」と書いております。これはなぜかというと、トップがただ「やれ」というようなところでとまってしまうことも多くて、そうではなくて経営者自身も汗を流してもらう。特に顧客交渉です。ここまでやって初めて動き始めますので、その本気度を従業員に見せてくださいというふうに私どもがかけ合ってお話しします。

 実際にやる中では、社内において反対勢力がかなりおりますので、その反対勢力に対して粘り強い交渉と、それが難しいときにはかならずトップが出てください、そもそもトップが反対勢力であるならば人事部長に対して必ず出てくださいということで、ここで約束してもらっているところです。

 5のプロジェクトチーム設立ですが、トップダウンのみならず、職場の中でキーマンをつくって、そのキーマンとともに動いていくという形をとっております。

 6の管理職・従業員の意識改革というところですが、こちらも具体的内容を読ませていただきます。「研修により過重労働削減の必要性を伝え、実際に過重労働削減を行う主役にやる気になってもらいます。また、時間を意識することは生産性を上げる上で大切ですので、時間の意識改革も行います」ということで、現場が主役というふうに伝えまして、働き方を変える意義を伝えています。

 さらに、能動的になってもらうために、自分自身のありたい姿をかなえるためのものなのだということを伝えております。ありたい姿というのは、この後、資料にありますので、簡単に後でお伝えしたいと思いますが、ありたい姿を皆さんで考えていただきます。その多くの意見が、もっと家族と過ごしたい、もっと眠りたい、趣味の時間が欲しいなどという意見が出てまいります。これらをかなえることが実は豊かな時間を過ごすこととなり、健康を確保することになりますので、ひいては生産性の高い仕事につながるということを意識してもらって、具体的にどういうアクションを考えるのかというところまで言っています。

 最終的には、ワーク・ライフ・バランスの実現と生産性の向上というお話になっています。

 実際に行っているガイダンスとディスカッションですが、これは実際に別の企業に使ったものなので、簡単にお伝えしたいと思います。

 具体的な対策として一番初めに、問いの立て方が重要であるというお話をさせていただいております。職場単位で考えていただくに当たっては、なぜ恒常的な過重労働が減らないのかというマイナスな質問ではなくて、どうしたら何々ができるのかという肯定的な問いを立てる、これが非常に重要であるということを最初にお伝えします。

 3つの層に分けてそれぞれの役割を伝えます。経営層が、今、行っていることを管理職や一般職に伝え、顧客にも説明する。みずからが伝えます。そのことによって会社は本気なのだということを理解してもらいます。管理職や一般職に対しては、みずからが行うことは何か、またみずからでできない場合は誰に相談すべきか伝えて、やるべきことに集中してもらうというアプローチをとっております。

 次に、タイムテーブルがありますが、最初に、ありたい姿を書き出すというふうになっています。

 そこから課題や現状を書き出していただきます。

 ありたい姿と現状の距離感を皆さんに確認していただいて、距離感を埋めるためにどのようなアクションをやるのか、スモールステップで考えていただくという形になっています。

 実際の内容を写真では出せませんでしたので、現状のまとめ方ということでひな形と書いておりますが、こういう意見がありました。

 フォーマットで模造紙に大きく記入していただきまして、これを現実にやっていただくという形です。こういうふうに現場で出したものをやっていただくようにしますと、会社から決めたものをやるのではなく能動的にやっていただけるということで、今いろんな取り組みをやっていただいています。

 実際に企業のほうにも具体的にお話もさせていただいていますが、これは厚生労働省の労働条件政策課のほうでやっておられまして、働き方改革実践ノウハウ獲得セミナーということで、昨年もやりました。全国8カ所を回って、これは中小企業に向けてやったのですが、実際に企業の方とお話しすると、やり方がわからないということで、やりたいというお気持ちは非常に強いというふうに感じたところです。

 そういう意味で、私ども社労士が中小企業の方たちの旗振り役となって、ノウハウを伝える、ないしは一緒に汗を流す、そういうことが今後も必要になってくるのかと思った次第でございます。

 私からの報告は以上です。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。

 次に、有馬様にお願いしたいと思います。事前に資料3を提出いただいておりますので、ごらんいただければと思います。よろしくお願いします。

○社会保険労務士法人シグナル有馬様 よろしくお願いいたします。私のほうからは「中小企業が企業成長するための働き方改革」についてお話しさせていただきます。

 働き方改革というのは、日本経済の成長ですし、もっと落とせば企業成長だと思います。そのためには3つあって、1の人材確保、2の業務効率化、3のコスト削減です。

 1の人材確保の方法論としてはいろいろあると思いますが、残業時間の削減、ワーク・ライフ・バランス支援、多様な勤務形態です。

 2の業務効率化の方法としては、設備投資、ITツールの導入です。

 3のコスト削減は、無駄なものの削減です。無駄な残業時間、無駄な紙、今日も紙を削減していただいていますし、無駄な会議時間、無駄な移動時間の削減だと思っています。

 中小企業の実態ですが、中小企業の場合、働き方改革は大企業だけの話だと思っています。人材の確保といっても離職者の補充だけですので、何とか補充できてしまっているという状況でもあります。またすぐに不景気が来ると思っているので、今、依頼が来ている仕事を断れないし、容易に人材補充や賃上げをしない。業務効率化やコスト削減にも踏み切らないので、既存労働者の負担は増えています。残業時間削減のみが働き方改革だと思っています。施策が多数あることを知りません。施策が多数あることを知ったとしても、どの施策を自社で導入すればいいのかわからない。経営者が現場に出ていますので、働き方改革について考える時間や施策導入する余裕がない。これは中小企業のいいところだと思いますが、育児や介護の問題が発生すると、制度として時短勤務や在宅勤務がなくてもその労働者に合った制度を導入していますので、問題が起きてから対応すればいいと思っているという状況でもあります。

 では、中小企業が働き方改革を推進するに当たって社労士を活用していただければと思いますが、その理由としては、社労士は毎月訪問するケースが多く、例えば、フレックスタイム制を導入してくださいで終わるわけではなくて、その後、企業と一緒に二人三脚で働き方改革を推進できます。社労士の場合、ほかの企業の成功事例と失敗事例を知っていますし、数ある施策の中からどの施策がその企業に合っているのか提案することができます。

 一つ事例を紹介させていただきます。弊社の顧問先ですが、全国に8拠点ありまして、従業員数が200人いる企業があります。

 管理部が3人で、そのうち1人が産休・育休を取得することになりましたが、代替要員を確保できませんでした。

 人材の確保に失敗しましたので、弊社に相談があり、サポートさせていただきました。

 弊社は毎月訪問していたので、管理部の業務内容を理解していまして、どの業務が他社と比べて非効率か知っていたので、ITツールの導入を勧めました。ITツールは数多くありますので、その中からどれが合うかも提案しました。ITツールを導入しても、基本設定が難しいツールが多くて、そこでリタイアしてしまうのですが、毎月訪問していたので、疑問点や不明点を解決していきました。

 これで業務の効率化が図れました。入れたものは、まず勤怠クラウドシステムです。要は出勤簿ですね。

 今まではそれを紙でやっていたので、工程が14日ぐらいかかっていました。

 クラウドシステムによって一人ずつがその中のデータを直接見に行けることになりました。

 それだけ工程が省けて3日で終わるようになりました。

 もう一つ、労務クラウドシステムも入れました。

15日ぐらいかかっていた入社の工程があります。

 直接、リアルタイムにデータを見に行くことが社労士も含めてできました。

 それで5日に短縮することができました。

 これによって業務の効率化が成功しました。

 勤怠・労務クラウドシステムでの効率化例を載せていますが、今回紹介した以外にまだまだ効率化することができます。

 コスト削減ですが、これだけの業務に人件費で25万円ぐらいかかっていました。クラウドシステムで6万、6万かかっているのですが、それでも12万円ですので、13万円のコスト削減にこの会社は成功しました。

 そんなにうまくいくのだったら、どの企業もクラウドシステムを入れればいいと思いますが、ITクラウドシステムにおける中小企業の実態として、存在は知っているのですが、高額だと思っていらっしゃいます。あと、どんなクラウドシステムがあるのかを知らない。実態として書類を探している無駄な時間があるのですが、紙をパソコン管理できれば検索機能などですぐに探せることを知りません。こんなにも業務効率化、コスト削減できることを知りません。自社の従業員がITリテラシーが高くないので、使いこなせないと思っています。経営者が提案しても「それは大企業の話ですよ」と言って遮る労働者が社内に絶対います。経営者もやはり現場に出ているので、日々の業務に忙殺されています。どのITクラウドシステムが自社に合っているのかわからない。どのクラウドシステムもお試しプランがあるのですが、基本設定が複雑なので、そこで放置してしまうケースがあります。ITリテラシーが低い社員からの反発に遭い、リタイアしてしまうというケースもあります。

 こういったケースにおいても社労士は活用していただけると思っておりまして、人事労務クラウドシステムであれば導入支援ができます。どのクラウドシステムがその企業に合っているのかも提案することができます。一番の強みとしては、毎月訪問しているケースが多いので、クラウドシステムの不明点や疑問点を解決できます。先ほど伝えた事例の会社は、今回の施策の成功をきっかけに、弊社のサポートも受けながら、ほかの施策も次々とチャレンジしていきました。

 残業時間の削減は、要りますか、要らないですか、ワーク・ライフ・バランス支援は要りますかというふうに一つずつ一緒に確認していきました。もともと残業はほぼない企業でしたが、それを採用でアピールしていなかった。あと、多様な勤務形態として短時間勤務制度と週休3日制度を導入しました。これも採用でアピールしたおかげで優秀な人材確保につながりました。無駄な紙削減ということでは、人事労務クラウドシステムを入れたことによって社内のITリテラシーが上がったので、これも結構最近では進んでいます。

 弊社の社労士がサポートし、どの施策にチャレンジするのか、どうチャレンジしていくのか検討して、実施後も毎月サポートしますので、それも含めて人事評価制度や就業規則も変更しました。採用活動でこれらのことがアピールできたので、優秀な人材の確保につながりました。

 中小企業の働き方改革の成功のコツですが、社労士とともにまず一つ施策にチャレンジして成功体験を積むことが中小企業にとってはすごく重要だと思っています。

 以上です。ありがとうございました。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。

 続きまして、児玉様にお願いします。児玉様は事前に資料4を提出いただいています。では、よろしくお願いします。

○如水税理士法人児玉様 私のほうから、公認会計士として中小企業クラウド導入によって働き方改革をどのように実現していったかという事例を3つほど御紹介させていただきたいと思います。

 自己紹介ですが、こちらは省略させていただきます。さまざまな士業がうちにいますので、ワンストップでやっております。

 事例紹介ですが、今回3つ、それぞれキーワードを出しています。

 事例1は、クラウドを活用した働き方改革(高齢者×クラウド)です。皆さん、高齢者というとクラウドはどうですか。やはりITは苦手というイメージがあると思います。

 こちらは、ある会社が事業承継でM&Aをして、顧問税理士であった私が入ってクラウドを導入しました。うちは福岡ですが、この会社は鹿児島です。毎月訪問するには遠い。ただ、親会社としては、毎月、経営状況は見ておきたいということでクラウド会計を入れさせていただきました。あと、チャットワークがありますが、これはコミュニケーションツールです。皆さんもショートメールとか使われると思いますが、それに似たようなビジネス用のショートメールですね。こういったものを導入させていただきました。

 こちらは経理の方が3名出ておられますが、平均年齢66歳です。普通でいくと高齢者ですね。真ん中の青いセーターの女性がクラウド会計を使いこなしていますが、何と73歳です。これから団塊の世代が後期高齢者の時代に入っていきますが、そういった部分を見てもITイコール高齢者苦手というのはどうなのかなというところがあります。

 実際にアンケートをとってみました。クラウド会計のよかった点として「不安もなく操作」「会計事務所と同時」「共有」「効率よく」と、キーワードだけ出しています。

 チャットツールですが、実は3カ月でスレッドが何と900行あります。73歳の女性がほぼ毎日30行ぐらいコミュニケーションしている、そういった状況です。

 もっとこうなったら便利というのは、この女性たちが出してきたのですが、彼女ら自身が使いながら、こんな機能があったらもっといいというものまで提案してきています。

 次は、高齢者クラウド活用の事例分析です。

 高齢者にはIT導入は難しいかというと、そんなことはありません。固定観念を払拭するとガイドラインにも書かれていましたが、まずそこかなと思います。

 クラウドにより生産性は上がるかというのは、先ほど有馬先生もおっしゃっていましたが、各自のレベルに合ったソフトですね。

 不安は本当にないのかというのは、導入で一番キーになってくるのはここかと思っていまして、コミュニケーションのハードルですね。これは御訪問であってもチャットツールであってもいいと思いますが、常にサポートできる体制をつくっていければと思っています。

 あと、エイジレスですね。恐らくクラウド会計を入れることによって、例えば銀行回り、そういった業務がなくなるわけです。銀行データが連携して自動仕訳で切られますので、労働時間も短くて済む。極端な話、そういったところで短時間労働でも在宅勤務でも大丈夫な状況になってきているというところです。

 続きまして、会計事務所、私自身の話になりますが、事例2で挙げさせていただきました。

 従来、クライアントが記帳代行とか頼んでくるニーズは、クライアントに人材がいないというところでアウトソーシングで会計事務所で受けておりました。ただ、昨今、福岡において新卒募集を行っても人が全然いないのです。うちは新卒を毎年2~3人ずつ入れていたのですが、来年は入りません。皆さん東京に行きます。地方からもすごい速さで来ています。そこで考えたのがクラウドソーシングです。

mamasan&companyは、うちと提携しているクラウドの会社ですが、ここはユニークなことに会社自体にはワーカーが1人もいないのです。クラウド上にワーカーがいて、それを取りまとめる、そういった会社です。そこに業務委託していただきまして、私たち会計事務所はコーディネーターです。本来、会計事務所の仕事は、でき上がったものをチェックしていくというところがあります。適正な情報なのかどうか、誤っていないか、税務的なアドバイス、会計的なアドバイス、そういったところに集中して、うちはほぼ残業なし、そういった状況になりました。

 こちらがうちのクラウドソーシングの事例分析です。

 優秀な人材が九州に本当にいないのかというのは、優秀な人材は目の前にいなくてもクラウド上に存在していると改めて感じました。ママさんワーカーは優秀です。なぜかというと、そこに登録されている方は転勤族の奥さんが多くて、転勤族の奥さんは優秀で一流企業で働いていた人が多いのですが、そういった人たちが参加していただきまして、やっているようです。

 クラウドソーシングは人材不安定、これもよく言われますが、優秀な人たちがやるので、かなり業務細分化、マニュアル化されているようです。

 会計事務所の働き方改革は、もともと士業は残業文化が当たり前でしたが、そういったところもなくなってきました。

 ママさんたちの働き方改革というのは、場所に縛られず、全世界のママさんが協力しているような話を聞いています。

 クラウドソーシングの導入により、人材不足、人手不足に対して新たな労働力の発見を実感いたしました。

 3つ目は事業承継絡みになってきます。

 先代社長が急逝しまして、突如、息子さんが会社を継がれました。ただ、もともと会社に入っていたわけではなく、現業の仕事がありましたが、その状況でも「私、やります」という話だったので、サポートしましょうということで、そのためにどうしたか。週末事業承継と書いています。

 全くの素人だから月次決算は赤字に陥りました。まず、何が会社の経費として出ているのか見えるようにしたいということでしたが、クラウド導入前は月次決算で1カ月おくれ、そういったものでした。クラウドを導入することによって日々の現金の動きが銀行データと連動するので、経費が全て見える、そういった形に変えていきました。経費見直し等やりまして、今では黒字企業になっております。クラウド導入により、専業しか難しいと思っていた事業承継が、週の初め、月火水は長崎におられて、週末、木金だけ唐津に帰ってきて仕事をされるというところでしたが、それで何とか回っていったという事例です。

 まとめです。

 高齢者にはITが難しいのか、そんなことはありません。

 アウトソーシングは限りがあるかというのは、今あらゆるバックオフィスがクラウドソーシングできています。

 事業承継は専業でないと難しいのかというのは、週末事業承継も可能です。

 クラウドにより生産性は上がるか、これはアップするというところだと思っております。

 では、士業はどういうサポートができるのかというところです。

 まず、固定観念の払拭と書いていますが、士業自身が考え方、見方を変化させていく必要があると思っております。

 次に、現場業務の細分化です。業務分析家と書いておりますが、例として私たちがやったのは3つです。ITAIで対応可能、クラウドソーシング、社内でしか対応できないもの、これがコア・コンピタンスです。そこに絞って人手を充てていく。これが生産性向上につながるのかと思います。

 次に、ツールを選ぶ。コーディネート役ですね。先ほど有馬先生もおっしゃっていましたが、どういったものが合うのか、そこを適切に提案していく。

 導入、サポート、コミュニケーションツールですが、私ども実は会社を訪問することはほぼないのです。クライアントは200件近くありますが、ほぼ訪問しません。何でやっているのかというと、基本、チャットであったり、スカイプという電話会議、そういったものでさせていただいています。データはクラウド上にあります。証憑はどうしているのか。先ほどの鹿児島のおばあちゃんたちが写メでひたすら領収書や請求書を撮ってクラウド上に上げてきますので、現場にもほぼ私ども行っていない状況です。

 士業による働き方改革の提案、生産性向上、特に人手不足対応、九州は困っておりますので、今後ともそういうことを進めていければと思っております。以上です。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。

 次に、塚本様にお願いいたします。資料5が事前に出ていますので、よろしくお願いします。

○株式会社きらり.コーポレーション塚本様 熊本から参りましたきらり.コーポレーションの塚本と申します。

 私たちは人材育成を主にやっています。資料をワードにしてしまったので、見にくいのですが、なぜこの仕事をするようになったのかというところからお話をさせていただきたいと思います。

 私は、専業主婦の時期が3年間ありました。私が休んだころはまだWindows95の時代、ISDNで、ネットもおせんべいを食べないとつながらないような状況でした。その中で前の会社から復職を言ってきてくださったので、私はすぐ復職したのですが、そのころ既にXPが導入されていました。東京が本社だったものですから、コミュニケーションのやり方が以前のファクスからデータに変わり、物すごいデジタルデバイドに陥ったという経験を持っています。復職することは本当にこんなに大変なのかと思いました。今は1日の情報量が江戸時代の1年分と言われているのを御存じだと思いますが、そういった中で復職する女性の気持ちというのが私はとても重要かと考えております。

 そんな中で、息子が病気をしまして、会社が九州から撤退もしたので、退職せざるを得なくなり、私は職業訓練校に行きました。職業訓練を受けながら、学童クラブの会計のくじを引いてしまって、学童クラブの会計は1,000万円ぐらいのお金を預かるにもかかわらず、ボランティアなのです。こんなことがあっていいのかと思いました。

 私はそのとき、これは仕組みをつくって事務職ができるなと思いました。なぜか知らないけれども、事務職は、机に座っていると仕事になるということで女性には人気でした。ただ、事務職の経験がないからだめ、パソコンのスキルもないしということころでシャットアウトされているところがありますが、これをテレワークに持っていけたらいいなと考えたのが10年前です。そのころはまだクラウドもなくて、どうやったらこのデータ通信を安全に行うことができるかということを考えたのですが、今、その時代になってきたと感じています。

 忘れもしないのですが、平成19年に熊日新聞の1面の記事にワーク・ライフ・バランスが載りました。その言葉を見て、私がやる仕事はこれだと思いました。時間は自分でつくるもので、どうやったら時間のつくり方を企業の中に浸透させていけるかということを思って起業しました。ですから、女性の気持ちに立ちながら、零細企業の経営者をしながら10年間やってまいりました。

 地震後、熊本でも深刻な人材不足が起こっていまして、このことを抽出してここに書きましたが、若者の流出もあります。それから、女性の活躍が期待されていますが、実際に女性は潜在労働力として出てきていない人たちがすごく多いという現状があります。そういった方たちを復職させるためにはどうしたらいいのかということで書いているのがこの流れです。ここら辺は割愛させていただきます。

 「雇用元気プロジェクト」という中間支援組織を立ち上げました。プロジェクトなので、これを寄附で賄おうと思い、中小企業の働き手を募集している人たちから寄附を募って、あなたたちが育てている人たちですよということで啓発セミナーをしたらどうかというのが最初のスタートでした。今、啓発セミナーだけをやっていまして、最初の資金はクラウドファンディングでやりました。

 5月からスタートして、月に2~3回やっているのですが、登録者が50名を超えております。この人たちが一体どうなのかといったときに、先ほどもお話がありましたように、ママさんたちは非常に優秀です。ただ、なかなか前へ進めない人たちがすごく多いのです。それをワークの中で掘り下げてみました。

 働く情報が本当に欲しいのか、未来の自分をどういうふうにプロデュースするのか、みんなでわいわい話しながら働き方のモチベーションを高めていきたいのか、「ママハタラクPROJECT」のチラシに3つぐらい、どこに人気があるのだろうかと試してみながら行っていますが、女性たちは自分の未来について非常に不安を持っていて、今のままでいいのかというところに何とか支援できないかと思って動いているような状況です。

 こういった活動をしながら、毎日、2~3社の企業から電話がかかってきます。私は職業訓練校もやっていますので、そういった中で「誰かいませんか」とかかってくるのですが、個々の企業の中にも私たちは入るべきだと思って、今は企業コンサルもやっています。

 その2つをマッチングさせるというところでやっているのですが、中小企業のことをママさんたちは全く知りません。このプロジェクトの中にPRというところが書いてありますが、PRするために動画サイトをつくっています。動画サイトは、社長が出てくるのはNGにしています。社長の話はもう聞きたくないので、どんなところで働くのか、どんな人たちと働くのかというところをメーンに動画サイトをつくっていますが、まず中小企業の働き方を知ってもらうというふうにするとうまくマッチングできると思っています。

 最後に添付していますが、ママさんたちの中でこういう情報がわかったら働きやすいということで求人票をつくりました。ハローワークの求人票だと何時から何時までというふうになっていて、そこの条件だけではねのけてしまったり、残念な結果に終わっているところがあって、ママハタラクのプロジェクトの求人票をつくっております。

 次に、企業側へ、働き手側へというところで改善点などをまとめております。企業側のほうは、先ほど如水さんも言われましたが、デジタルをツールとして使うということ、まずアプリが日進月歩になっていて、そのアプリの使い方もよくわかっていないところが多いです。第1ハードルとして、経営者の固定観念を変えるということ、第2に、仕組みの徹底見直しですね。今までの流れで、やれない、やれないでずっと来ているのですが、やれない理由が必ずそこにあると思います。第3に、ツールを選定してツールを習得するところまでのサポート支援が大事だと思います。人を探す傾向にありますが、探すのではなくて、自分のところでちゃんと育てる企業にすることを支援していくことが重要だと思っています。

 働き手側へということですが、不安なところは非常に大変なのですけれども、そこに寄り添いながら伴走してママさんたちを啓発していくこと、引き上げていく仕組みが必要だと思っていて、そういったことをやっています。

 外部的な要因としては、ファミリーサポートの仕組みは、いまいち浸透していません。家事支援やチャイルドマインダー制度を使った取り組みも非常に重要なこれからの外部環境になると思っています。私どもは4名のテレワーク社員がおりまして、そういった実績をもとにこれからも研さんしていきたいと思います。

 今回の報告は以上です。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。

 質疑は最後にまとめてということでございます。

 次は、議事2ということで、検討委員による地方ヒアリングを実施していただきましたので、それについて御報告いただければと思います。9月、10月が北海道、三重県、茨城県で実施しました。北海道は原委員、三重県は柴田委員と原委員、茨城県が立石委員に御参加いただきました。

 本日は、立石委員から地方ヒアリングの状況について御報告いただけるということです。資料6がありますので、それを見ながら、よろしくお願いします。

○立石委員 よろしくお願いいたします。立石でございます。

 私が行ったのは茨城県だけなのですが、全体としてまとめた資料を読み、いろいろ検討しておりますので、そこのところを総括して申し上げたいと思います。

 まず、生産性向上を支援するには財政措置が必要、こういう意見が多いです。これは北海道庁からも聞きました。また、働き方改革に当たっては生産性向上が必須、コスト面、ノウハウ面での支援策も必要ということを各地方で聞きました。

 厚労省の助成金の申請手続が煩雑、この意見は北海道の経済連合会から伺っております。

 行政は縦割りではなく横串で対応してほしい、柴田委員からそのようなお言葉をいただきました。

 地域サポート体制が不十分、中小企業の実態に即した相談体制の整備や専門家を配置してほしい、これは茨城の商工会の方の意見です。実態に即したという部分は、やはり先ほどからいろいろ出てきた御意見と一緒なのですが、中小企業と言っている言葉のイメージ大きさがちょっと大き目の企業という話ことです。中小企業は、いわゆる「下町ロケット」に出てくるクラスのところが基準になっています。もっと小さいところへの支援策が重要です。そうでないと、地域に行けば行くほどその比率が上がっていきます。大事なことは、「中小企業の9割が小規模企業」ということの認識です。実態に即した相談体制が非常に重要だと思っております。

 また、商工会、商工会議所等支援機関の経営指導員が業務多忙により大変疲弊している状況は深刻です。私、前回の委員会で申し上げましたが、再度申し上げます。働き方改革を考えるときに、経営者の働き方が重要である、この観点は絶対必要です。と同時に、その経営者を支援する支援機関の方々が現在、疲弊した状況になっています。このブラックになったところに、今回のこの委員会で出た施策をさらに乗せることで余計にブラックになっては、本末転倒、甚だしいことが起こります。ですから、そこのところをお考えいただいて、そこに対する財政措置が必要であると思っております。地域の支援機関の機能強化、支援機関そのものの働き方改革の必要性、ここを訴えなければいけないと思っております。

 また、働き方改革を推進するに当たっては生産性向上が不可欠です。ここでも一つ問題があります。これは提案なのですが、「生産性向上」という言葉を有名なコピーライターでも入れて変えていただけませんか?地域で小規模で頑張っている方々にしてみたら、生産性向上という言葉はどうしても自分のものに感じません。そこが働き方改革を推進していく上で心のハードルになっているのではないかと思っております。

 特に小規模事業者は伸び代があり、ちょっとした工夫で生産性が向上します。生産性向上の取り組みを後押しするため、頑張る小規模事業者を助成制度で支援することが必要です。小規模事業者、一人親方、家族経営を含みますが、こういう方々の生産性向上です。何度も申し上げますが、中小企業の9割が小規模企業ですので、ここのところの概念をしっかり入れていただきたいと思います。

 また、地域の支援機関の機能を強化し、専門家を配置して、十分なサポート、相談体制を構築するためには、地域の商工団体の協力が不可欠です。助成金を活用して働き方改革に対応する地域の商工団体の取り組みを支援すべきです。都道府県を通じた商工会・商工会議所等々、支援機関への助成金の創出がなければ、この部分の人手不足対応もできていかないのではないかと思っております。

 専門家という部分は、今回、社労士、税理士、会計士の方がいらっしゃって、まさしくおっしゃるとおりです。この方々の活用をもっと推進することが必要です。そして、小規模事業者、中小企業はIT弱者であるという偏見を払拭すること、使える方々はたくさんいらっしゃいます。そこのところをやっていただきたい。

 あえて耳の痛いことを言わせていただきますと、私、もともとホテル経営をやっていて感じたことです。が、私の時代からはかなり変わっているとはいえ、役所関係への紙資料の提出が多過ぎます。ここをいかにIT化して簡略化するか。うちのホテルだけでもどれだけ事務処理の時間がかかったか。あのときは今ほど進んでいませんが、ただ単に持っていって印鑑をもらうためだけにこれだけの人を使っていたということを当時はわかっていませんでした。そういう認識の方々が多い。これを一つの契機にして、中小企業・小規模事業はIT弱者ではなく、ちゃんと啓発することによって生産性が上がりますので、役所関係のびっくりするぐらいアナログ的な紙資料の提出は変えられるのではないかと思っております。お時間が来ました。よろしくお願いいたします。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。

 それでは、議事3ということで、厚生労働省と中小企業庁、それぞれが有識者ヒアリングを実施していただいています。厚労省は社会保険労務士へのヒアリング、中小企業庁は中小企業事業主と有識者のヒアリングを実施していただいているということですので、それぞれ資料に沿って御説明いただければと思います。厚生労働省からお願いします。

○藤枝労働基準局労働条件政策課長 労働基準局の労働条件政策課長でございます。

 この間、私どものほうで社会保険労務士の方々にヒアリングさせていただきました。その概要を御説明いたします。きょう御発表いただいた中辻先生、この検討会の委員でございます若林先生にも御協力いただきました。改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。

 資料7です。

 1枚目が、今回ヒアリングをさせていただいた先生方のお名前です。

 2枚目以降を見ていただきますと、今、御発表があったことの繰り返しになりますが、まず、長時間労働の要因をどのように把握されているか、お聞きしました。やはり1番目として人手不足でございまして、雇用のミスマッチによる人手不足、育児や介護を理由とする突然の欠員、その欠員の補充ができない。あるいは建設業でいえば東京に人をとられてしまうというお話があるということでございます。

 2番目としましては業務の属人化です。これも先ほどお話がありましたが、特定の方に仕事が偏ってしまう。できる方に仕事が偏る。あるいは若手の人材育成、技術承継ができていないことによる業務の特定の方への集中といったことがあるのではないかというお話でございました。

 3番目として、業務のやり方、マネジメント不足の問題でございます。管理者に労働時間の管理に関する意識が欠如していて優先順位をつけていない、だらだらとやらせてしまうというお話です。あるいはコミュニケーションがうまくいっていなくて、仕事のやり直し、製造現場に負担があるような受注をしてしまうというお話です。あるいは適正な原価管理ができていないために、労働時間の長さが人件費コストとして意識されていなくて時間管理が曖昧になっているのではないかという御意見もいただきました。また、先ほど来お話があったICT化の遅れがあるというお話でございます。

 4番目として意識の問題です。社内の雰囲気や、これまでの経験で長時間労働で頑張ってきたのだという意識が変わっていないのではないかというお話もいただいたところでございます。

 5番目としまして取引関係でございます。取引先から過度なサービスの提供を求められる。短納期発注や多頻度、こういったことがあって取引関係を継続するためになかなか断れないという事情があります。建設業などでは工期の問題があって残業が発生しています。大企業の働き方改革の結果として、大企業が受けないような短納期の仕事が中小企業に回ってきているという状況もあるのではないかというお話をいただきました。

 次に、社会保険労務士の先生方が行った助言・アドバイスの内容です。

 まず、人手不足に対しましては、先ほども御発表がありましたが、多様な働き方のメニューを用意する。あるいはICT化を進める。求人募集に当たっての条件を見直していただくということです。

 2番目の業務の属人化への対応といたしましては、仕事の「見える化」、マニュアル化を図る。あるいは1人に業務が集中する場合はそれを主担当と副担当に分けてお互いにカバーできるようにする。こういったことは事業継続計画(BCP)の観点からも必要ではないかというアドバイスをしているというお話でございました。

 3番目の意識啓発の問題としては、先ほども御発表がありましたが、トップダウンの取り組みが大事だということで、そこをしっかりとアドバイスしているというお話でございました。

 4番目のマネジメント・業務プロセスの見直しとしましては、仕事の棚卸し、業務の再配分を考えていただく。先ほどもありましたように、労使で話し合いの場を設けて、参加意識を持たせて進める。業務の内容としましては、オン・オフをしっかりと設定して、休憩をとるところ、業務に集中するところ、そこを明確にするというお話です。あるいは売り上げに占める人件費割合が高いような部分は思い切って定休日にしてしまうという判断も必要だというお話、それから、変形労働時間制やフレックスタイム制などの柔軟な働き方、多様な雇用形態を用意する。こういったこともアドバイスしているというお話でございました。

 5番目の取引関係の改善につきましては、先ほどありましたように、役員トップが取引先に理解を求める、そういった説明活動を行っていただくようにアドバイスしているというお話をいただいたところでございます。

 時間の関係で、詳しくはご覧いただければと思います。以上でございます。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。

 続いて、中小企業庁から説明いただければと思います。

○苗村経営支援課長 経営支援課長の苗村でございます。どうぞよろしくお願いします。

 私からは資料8と資料9に基づいて御説明させていただきます。

 まず、資料8「働き方改革関係ヒアリング等概要」をごらんいただければと思います。

 私ども、有識者の方、経済産業局のネットワークも活用いたしまして、中小企業・小規模事業者の方350社ほどにヒアリング、アンケート等を実施しております。それから、ベストプラクティス的なものについては、ヒアリングだけでは十分とれないものがありましたので、これまでの支援事例集からピックアップしたものを加えております。

 それでは、資料の中身の御説明に入ります。

 まず、1番目が小さな工夫による生産性向上でございます。先ほど立石委員のお話にもありましたが、生産性向上というとどうしても縁遠い世界のように思えてしまうのですけれども、実は小さな工夫でお金をかけずにその知恵でさまざまな生産性を高められるということがございます。

 販売手法、広告の見直しと書いていますが、パン屋さんのトレーのサイズを大きくする。パッケージを見直す。ちゃんとした写真を撮ってPRする。これも非常に重要なのですが、平日の中高年向けの高価格の宿泊メニューというふうに、ターゲットを明らかにして、それに合った商品サービスを提供する。こうしたさまざまな取り組みについての声がございます。

 空きスペース等の活用につきましても、2つほど例があります。空きスペースを活用したり、可動式の仕切りを導入して、その時間によって場所を変えることで売り上げが上昇するということもございます。

 2番目は、こちらも比較的お金をかけない話でございますが、業務見直しによる生産性向上ということでございます。やはり中小企業ですと経験や専門性が理由になって特定人物に業務が偏っていて、先ほど御報告いただいた方の話にもありましたが、そうした結果、長時間労働を招くことが多いということでございます。

 他方、いい例としましては、情報共有や業務マニュアルをつくることで業務のブラックボックス化を防ぎまして、ダブルアサイン、二人で一つの仕事を行うということで業務の平準化もできるということでございます。

 2ページ目に、その例を幾つか書いております。

 中小企業は、忙しい、専門性が高い。実際にはブレークダウンして考えればそうでもない場合もあるのかもしれませんが、業務がルーチン化できていないということがございます。他方で、手順を簡素化したり、ファイルにインデックスをつける、そうした小さな工夫や、優秀な社員の仕事を「見える化」する取り組み、こうしたものをやることで作業効率を高めています。

 ワークシェアリングにつきましても、ダブルアサイン化、マルチタスク化ということで、電子勤怠管理システムを使ってリアルタイムで残業時間を確認し、仕事の再配分を行う、こうしたことでしっかりと生産性を高めることもされています。

 突発性・季節性への対応や、人手が不足している業務の見詰め直しということですが、どうしても中小企業の方はこういう問題が非常に大きくのしかかってくるわけでございます。こうしたものにつきましても、3ページ目にありますように、さまざまな形で業務を見直しました。時間の関係で一つだけ御紹介しますと、これまでビル清掃については男性社員、ハウスクリーニングは女性社員というふうに業務分担されていたのを、発想を変えて混成のチームでやられるということで、女性目線により仕上がりがよくなって受注が増えたとか、こういう業務プロセス的な見直しに取り組んでおられる例もございます。

 3番目に、本日たくさん貴重なお話をいただきましたが、IT化による生産性向上ということがございます。バックオフィス等のIT化、データ分析の活用、ホームページの改修などによる売り上げ増、こうしたものがポイントになってくるかと思っております。むしろ小さい企業だからこそ、こういうところに取り組むことが求められている状況だと思っております。ここに書いておりますように、さまざまな事務が手作業であったり、それぞれのシステムがありますが、連携されていないということで事務の負担が重くなっているということでございます。

 こうしたものについて、毎日行う面倒くさい作業から手をつける、既存のソフトウエアをうまく組み合わせて使う、こうしたことで対応されている例がございます。なかなか中小企業だけで取り組めない部分がございますので、こうしたものをどうサポートしていくのかということが重要だと思います。

 3ページのデータ分析のところに書いておりますように、例えば老舗のそば屋で単価と利益率が高いものを分析して、それをお勧めメニューとされ、さらに写真つきのメニューにすることで170%売り上げ増を達成したということです。こうしたほんのちょっとしたことで変わっていくことをいかに伝えていくかということも重要ではないかと思っております。

 4ページの4番目の設備投資による生産性向上でございます。機械というようなものは投資が伴うわけでありますが、人手不足の中で、AIを含めて導入することで生産性を上げられるものについてはしっかりと取り組んでいくことが必要ということかと思います。

 例えば、お菓子の製造をやっておられる事業者の方ですが、作業状況をしっかり調べて、工程のボトルネックになっている焼きの工程を特定して、新しいオーブンを導入した結果、売り上げが増加したということであります。ある意味、皆様には常識的なということも、中小企業の方に気づきを与えるということは非常に重要だと思っております。そういう意味では、単に機械を導入するということではなくて、そうしたところも含めてしっかりと取り組んでいくことが非常に重要と思っております。

 5ページの5番目の人材確保でございます。定着率の問題が先ほど御指摘もありましたが、ミスマッチを防いで定着率を上げるという観点からも、経営課題の優先度に照らして必要な人材のスキル等を明確化、具体化することが重要であると考えております。単に人手が足りないということではなくて、なぜどういう人材が必要なのかということをしっかりと中小企業の側、受け入れる企業の側で考えていく、そのための支援が必要なのではないかと思っております。人手が不足している業務につきまして、固定概念を払拭して、業務を細分化するということで、女性、高齢者、外国人等、多様な人材活用を検討することも重要ではないかと思っております。

 6ページで幾つか御紹介をさせていただきます。例えば、子育て世代の女性スタッフについて時短勤務や休日シフトを融通するということ、これも主婦層の方でありますが、1日当たりの勤務時間を短くし、休みをフレキシブルにとれるようにするということで人材確保をされたり、有識者の御意見として、高齢者についても雇用延長、出勤時間の柔軟性の確保、こうしたもので採用や定着率を上げるという声がございます。

 それから、働く環境整備ということで、女性が働きやすい環境となる休憩室やトイレの設備面の充実、作業環境として男女ロッカー、女性専用トイレ、こうした声もございました。

 7ページ、6番目の事業承継でございます。中小企業の経営者の方の高齢化は物すごく進んでおりまして、現在、民間調査機関の調査によれば66歳の経営者が一番多いということでございまして、事業承継をしてしっかりと引き継いでいくということが非常に重要な課題になっているわけでございます。

 従業員への事業引き継ぎ、同業種への事業引き継ぎ、こうしたものについて、例えば同業種への事業引き継ぎということでいいますと、単に一つの企業に引き継ぐということだけではありませんで、地元食品加工メーカーで構成する協同組合のメンバーの一社が事業引き継ぎを決断して、こうした組合を通じた問題意識の共有や信頼関係で事業承継が成功したという事例があります。自動車整備業を事業承継された新社長の方がフランチャイズチェーン化をして、それを契機に再建され、そうした方をM&Aなどで集めて事業拡大をされているような例があります。

 異業種への引き継ぎということでは、個人経営のスーパーを事業承継センターが仲介役となりまして、シュノーケリングツアーを営む事業者の方が引き継いだような例があります。また、レトロなホテルを事業引き継ぎ支援センターや金融機関が仲介して、地元で自動車用品店を営む夫婦に引き継がれたということで、異業種を含めたさまざまなマッチングの機会の提供、サポート、こうしたものが重要ではないかと思われます。

 8ページ、7番目のその他でございます。こちらも立石委員のお話にございましたように、助成や認定申請作業の負担軽減、マイナンバーのこと、公共調達の時期が年末に集中しがちということが御意見としてございます。

 資料9をごらんいただきたいと思いますが、今のまとめ的なものでございます。

 働き方改革の理解促進ですが、働き方改革に求められるものが何であるか、どういうふうに実行していくべきかということの支援、情報提供がしっかりできる体制をつくることが方向性になるのではないかと思っております。

 小さな工夫による生産性向上、業務見直しによる生産性向上、こうしたものにつきましては、特に小さい企業の方はなかなか自力では取り組むことができないということで、やはり支援機関、商工会・商工会議所、よろず支援拠点などの能力向上、あと、支援機関の広がりということで、さまざまな士業の方、認定支援機関等の連携、それから、小規模事業者につきましては、持続化補助金などを契機としてさまざまな小さな成功事例を積み上げてきているわけでありますが、そうしたものをより知っていただく、広げていくことも重要ではないかと思っております。

ITによる生産性向上ですが、これにつきましても、きょう報告いただいた方々、委員の方からもお話がありましたように、実際に何を使ってどう導入していいのかわからないということがありますから、そうした面での支援体制をどう考えていくかということ、その後押しになるための制度、こうしたものが必要ではないかということでございます。

 人材確保につきましては、私ども、人手不足対応ガイドラインというものをつくっておりまして、単にどうやったら人が採れるかということではなくて、経営問題にさかのぼってしっかり業務を見直すきっかけにしてもらって、そこから人手不足について考えていくことを実例とともに御紹介しております。そうしたものを進めつつ、マッチングや労働移動を円滑にしていくことが課題なのかと思っております。

 事業承継につきましては、事業承継ネットワーク、事業引き継ぎ支援センター、こうしたものを今やっておりますが、さらに制度的な後押し、税制、補助金みたいなものも検討に値すると思っています。

 行政手続の簡素化については、これもしっかり検討していく必要があると思っております。

 こうした面における皆様の御意見を参考にさせていただきながら、今後の施策を考えていきたいと思っております。駆け足になりまして、失礼いたしました。

○佐藤座長 それでは、最後の議事4ということで「中小企業・小規模事業者における『働き方改革』実現に向けた対策()」について御説明いただければと思います。

○奈尾労働政策担当参事官 厚生労働省の労働政策担当参事官の奈尾です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 資料10をお開きいただきたいと思います。働き方改革の支援対策ですが、これまでのこの検討会における議論を踏まえて、まとめているものです。既に第2回、8月の場におきまして、内容については御紹介申し上げたところでございますが、その後、委員の皆様等の意見を踏まえまして、若干の修正を行ったところですので、今日御報告させていただきたいと思っております。

 主な修正点を申し上げます。

 3ページをご覧いただきたいと思います。1つ目の丸の1つ目のポツ、米印の2行目の「こうした事業者においても」以降が追加した部分でございます。この趣旨は、小規模な事業者においても、例えば経営者の働き方改革の話もありましたが、そういったものも含めて長時間労働是正等の働き方改革に取り組んでいただきたいというところです。

 それから、4つ目のポツの1行目の「取引先企業や消費者を含む」、BtoCも入れたというところです。

 4ページの上のほうに赤字で「予算総額」を入れまして、2,137億円です。この案につきましては、概算要求時点の予算額をまとめたものでございまして、計算するとこの額です。括弧で1,581億円とありますのが前年と比較した場合ですので、数百億円増えているということです。

 増えた要因をごく簡単に御紹介いたします。非正規労働者の雇用改善を6ページの2の()に書いておりますが、これが840億円になっていまして、今年は660億円でございました。キャリアアップ助成金の増額が一番大きなものです。

 それから、7ページの3の()の例えば1の企業内最賃の引き上げの支援策、こういったものが大きなものかと思います。

 生産性向上、経営力強化につきましては、9ページの5の()ですが、これは分野別の取組を書いておりまして、このあたりも増加が大きいものです。

 8ページの4の()の人材の育成・活用力の強化が504億円ということで、前年から比べると200億余り増額しております。

 額だけで重要性等を評価することは難しい面がございますが、主に前年度から増えたところを御紹介させていただきました。

 順番が前後して恐縮ですが、5ページの1の()の1です。働き方改革推進支援センター(仮称)のメンバーですが、労務管理等の専門家ということで専門性を例示させていただいたものです。

 最後ですが、6ページの2の()の産業医・産業保健機能の強化で周知広報の話を入れたというあたりでございます。

 主な追加点は以上でございますが、今後、年末の予算編成に向けまして、どういった支援策が効果的かということで引き続き検討していきたいと思っております。

 以上でございます。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。

 この後、皆さんから御意見を伺うのですが、こういうふうにさせてください。議事4に関心が多いのかもしれませんが、議事1でお三方にわざわざおいでいただいて御報告いただきましたので、御報告に御質問なり御意見があれば先に伺って、その後、議事4をやって、時間が余ればそれ以外を振り返っていただければと思います。

 まず、4名の方の御報告に何か御質問があれば、どうぞ。

○藻谷委員 めったに参りませんで申しわけありません。藻谷でございます。せっかく来ましたので、ぜひ御質問させてください。

 4名の方のお話は最初にお伺いしたとおりで、皆さんのお話も共通しているのですが、きちんと取り組んだ会社には向上余地がいっぱいある、事例が非常に豊富であるということです。そうなると参加率がどれぐらいになるかということが課題になるわけです。現場でやっていらっしゃる方の実感として、中小零細企業は改善すれば何とかなるのにという会社の参加率、皆さんに限らないのですが、誰かに相談に行って業務フローを改善している比率は100社のうち何社ぐらいのイメージか、ほとんどないという感じなのか、それなりにやっていらっしゃるのか、場所にもよると思うのですが、九州なら九州、比較的及びにくいところでどんな感じなのかですね。対象企業だから、零細でもいいです。最も非効率が発生している中心的な分野においてどんな感じかということをぜひお伺いしたい。

 もう一つは、仮に上がるとすると具体的なイメージは2割という感じなのか、8割という感じなのか、6割という感じなのか、100%という感じなのか、最終的な皆様のゴール感覚はどんな感じなのか。

 最後に、そのゴール感覚を達成するのにそれに従事する支援側の皆さんの数はどれぐらい足りていないのか。

 この3つです。

○佐藤座長 最初の話は、改善の余地がある企業を100とする。

○藻谷委員 そういうことです。

○佐藤座長 極端な言い方をすると、もうやっているところもあるかもわからないので。

○藻谷委員 おっしゃるとおりです。

○佐藤座長 改善したほうがいい企業を100とすると、最初の質問は、企業側が気づいて相談に行っているところがどれぐらいかということですね。

○藻谷委員 そうです。

○佐藤座長 できればみんな、100来たらということですね。

○藻谷委員 実際は最終的にどれぐらいの改善度数かということです。投票率であれば5割のところが9割になるというのは非現実的ですね。6割になれば意味があります。つまり、どの程度の参加率だと世の中的に変わるか。

○佐藤座長 効果があるかね。今度は、そのぐらい参加したとき支援側がどれぐらいということですね。

○藻谷委員 支援側の供給体制はどんなものか。この3つです。

○佐藤座長 では、わかる範囲内でざくっとでいいということです。ざくっとした質問なので。

○社会保険労務士法人中村・中辻事務所中辻様 では、私からお話しさせていただきます。

 一番初めに改善の余地がある企業を100とした場合に相談に来ている会社はどれぐらいかというお話ですが、実際に弊社の場合は100かなと思っています。なぜかといいますと、問題が起こっているので皆さん相談に来るのですね。メンタルヘルス不調者がいるとか、過重労働が多いとか、労働基準監督署から是正勧告が出たのだけれども、どうしたらいいかとか、そういうふうな形になっているので、皆さん既に来てくださっています。100です。

 上がる割合なのですが、これは時間はかかりますが、基本的に80から90%ぐらいと思っています。時間がかかるといったのは、先ほど申し上げたような反対勢力、例えば社長、取締役、そういう方たちに納得していただいて、現場の最後の最後まで伝わるまでには相当な時間がかかりますが、最終的に100%まではいかなくても80から90%ぐらい、粘り強く私たちも支援させていただいておりますので、できているのかなと思います。

 支援する側の数ということですが、社労士の数につきましては、やはりまだ足りないと思っております。

 もう一つ、社労士として常に思うことなのですが、特に若手の社労士の方たちが働き方改革に関して何とかしたいという思いが非常に強くあります。というのは、先輩方は1号・2号業務をたくさん持っておられて、社労士として生き抜いていくということもあるのですが、熱い思いを持って社労士になった方たちが非常に多いと感じております。そういう意味では、もっと社労士をふやして、なおかつ質の向上を高めていただくように、いろんな勉強会をやっていただければありがたいと思っています。

 以上です。

○佐藤座長 では、有馬さん、お願いします。

○社会保険労務士法人シグナル有馬様 私からは、1番目は2割、2番目は6割、3番目は、ちょっとずれて資金かなと思っています。

 1番目の2割という部分ですが、私、働き方改革だけをやっているわけではないので、通常の昔からの社労士業務もやっています。働き方改革は法令遵守が100%できた会社がチャレンジできると思っていますので、法令遵守が100%できていたとしても、そこが精いっぱいで、働き方改革までは手が出せないというので2割ぐらいかなと思っています。そこから頑張って6割です。社労士が働き方改革を支援するといっても、やはりそれ相応の報酬を中小企業からいただかないといけないので、そこの資金が中小企業には足りていないと思っております。

 以上です。

○佐藤座長 では、児玉さん、お願いします。

○如水税理士法人児玉様 まずは、余地がある会社で実際に生産性向上に取り組まれているのは、うちの感覚だと50%ぐらいかと思っております。残り50%というのはどっちかというと大きな会社ですね。中小企業と言いつつも大企業並みの会社です。先ほどうちはほとんど訪問しませんと言いましたが、訪問するのは大企業だけなのです。なぜ訪問するかというと、彼らはクラウドを入れていないのです。自分たちでサーバーを持って、サーバーの人員を抱えてやっています。実は大きいところほどそういった部分は非常におくれているのかなと感じます。

 生産性向上はどこを目指すかというと、私どもは、入れていく会社は最終的に100%を目指していきたいと思っています。でも、段階がありまして、まずできることからですね。一番簡単なクラウドのソフトを入れての生産性向上でいくと、銀行回りをしなくていい。経理の人というのは大概、毎日午前中、何個も通帳を持って銀行をぐるぐる回るのです。クラウドを入れることで連携してしまうので、経理の人は息抜きができなくなったと悲しまれたりしますが、まさにそういったところからスタートなのです。通帳がなくなったみたいな、そこからスタートして、徐々に経費精算をやりましょう、労務管理を入れましょうとか、いろいろ言って、最終的には全てクラウド上で完結できるようにする。これは実は中小企業、零細企業のほうがやりやすくなっているのかなと思っております。

 支援者ですが、税理士業界というのは非常に大きなソフト会社です。有名なところが何社かございます。昔から業界そのものみたいなソフトを扱っているところ、そういったところは、変えていきたくはないですね。そのシステムを全部自前でつくっているところがあります。多分、大きな会社、3社、4社ぐらいで税理士業界のソフトというのは恐らく7割ぐらい占められていると思います。実際のところ中小企業の内そこを利用するまでもない規模の会社が、今、新たなクラウドソフトの導入で動いているというところです。若手税理士が新規参入しても、税理士業界も過当競争の時代になっていますので、大先生たちとは戦わずに新規のところでやっていっています。そういった人材が支援者になっていくと思いますが、これがあと5年、10年たったときにどういう勢力図に変わっているのかというのは、私も業界的には関心があるところです。

 以上です。

○佐藤座長 塚本さん、採用のほうで中小企業が人手不足で採るような努力をしているところがどれぐらいかということでも結構ですが。

○株式会社きらり.コーポレーション塚本様 人手不足に対して採用の努力を皆さんされていません。私が活動している団体は、中小企業家同友会、商工会議所、経営者協会、3団体あります。その中で委員や監事もやっておりまして、その中では10%ぐらいと言ってもいいと思います。なぜならば、まだ探しているからです。そこの縛りからなかなか外れることができないので、自分のところで育てるという感覚を早く持ってもらいたいと思っています。

 ただ、キャリアアップ助成金、そういった助成金関係では意識はすごく変わってきていると思いますが、助成金目当てのところもなきにしもあらずで、そうではなくてこれを使って企業の中で人を育てないと最後のチャンスではないですかという話をさせてもらっています。

 改善されたところでは、うちもコンサルに入っていますが、前、地域人づくりという取り組みがあり、5社の企業コンサルに入らせていただいて、100%処遇改善と働き方改革を行うことができました。やはり取り組むとどっぷり入らないといけない。3番の人材確保のところにもつながるのですが、中に入って伴走するというマネジメントですね。私は士業を持っていません。一切資格はないのですが、社労士、税理士、中小企業診断士、いろんなブレーンの助けをいただいてマネジメントさせていただいています。熊本にこういう会社があるかといったら、私は知りません。こういったマネジメントに対する周知や人材育成をもっと行う必要があると感じています。

○藻谷委員 塚本さんのところはロジカーブの最初を上がりつつあるというところですね。

○株式会社きらり.コーポレーション塚本様 そうですね。

○藻谷委員 逆にそれぞれによって感じ方が違うぐらい、まだ幾らでも伸びる、全体としてはロジカーブの最初という感じでしたね。ありがとうございます。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。どうぞ。

○立石委員 一言だけいいですか。先ほどの話でいきますと、1番の質問に関しては、私も1割か2割だと思っています。これを小規模の生産性と考えれば、1割から2割ぐらいかなと思います。

 これは持続化補助金のアンケート結果ですが、どれぐらい生産性が伸びたか、売り上げが伸びたか、利益が伸びたか、9割を超えています。ですから、ちょっとやったら伸びるという話です。

 支援者の数は圧倒的に足りません。だから人手不足になっているということです。例えば小規模を見れば、社労士と契約している小規模はほぼないのではないでしょうか。中堅中規模企業ではありますが、これが実態かと思います。社員教育というものが小規模にはほとんどなされていない。集団研修がない。そこのリテラシーの部分、これは今後必要になってくるのかと思います。

 以上です。○佐藤座長 まだまだ伺いたいのですが、もう一つ大きなものがあるので、そっちを伺ってから、もしお時間があればということで、それでは、議事の4の「中小企業・小規模事業者における『働き方改革』実現に向けた対策()」で追加的御意見があれば伺っておいたほうがいいかと思います。ここは自由にお願いします。

○高松委員 きょうの資料の最後で、御説明いただいたとおり、来年度予算では「働き方改革」にかなりウエートを上げていただきました。まだ上げていただければと思いますが、それは一つ置いておきます。

 予算確保をしていただくのは当然大事なことですが、次に必要なのは、多くの方からも意見が出たとおり、中小零細企業者はまず助成金などの情報を知らないというところです。本日ご欠席の伊藤委員の意見書にも同様の意見が入っていましたが、さまざまな助成金や活用の支援があるにもかかわらず、その情報を中小企業・小規模事業者に周知し、利用してもらうことがなかなか難しい。先ほどのような士業の先生がついていれば別ですが、中小零細企業者にとってはそこに視点が行きません。現行の助成金は省庁間の縦割りになっているので「分かりにくい」「使いづらい」との声が上がっています。せっかくこのような中小企業庁と厚生労働省の合同の会議体もできたことですから、ぜひ協議をしていただきたい。

 中小企業庁では、地域ごとの中小企業支援制度を見ることができる「ミラサポ」というホームページを開設していますが、まだまだ掲載件数が少ないのではないかと思います。そういう意味では、各省庁の情報を「ミラサポ」に寄せてくることが一番適当ではないかと思います。各種助成金の制度に関する情報を一元管理し、中小企業・小規模事業者に確実に情報が届くようにして頂きたいです。ぜひこれはこの機会に、予算も増える中で活用していただくことを最優先で両省ともよろしくお願いいたします。

○佐藤座長 ミラサポは結構集まっているのかと思ったら、そうでもないのですね。

 では、内田委員、お願いします。

○内田委員 内田です。

 私は、中小企業における魅力ある職場づくりについて、とりわけ職業訓練と中小企業のPRという視点から、2点、意見、要望を申し上げたいと思います。

 今回、対策()を事務方から説明いただきましたが、中小企業における働き方改革の支援に向けたメニューを整備していくことは必要と考えています。ただ、一層重要なことは、中小企業みずからが競争力を高め、企業として魅力あるものにしていくことです。それにより中小企業も人材を確保できるようになる、このようなサイクルをつくっていくことが肝要ではないかと思っています。

 例えば、学校段階で実践的な職業スキルを身につけられるようなカリキュラムを組んだ上で、実践的な職業スキルを身につけた学生と中小企業とがマッチングできる仕組みを設けるというのも一考かと思っています。今回の対策()には、こうした職業訓練、教育という視点は希薄ではないかと感じているので、今後は、文部科学省とも連携しながら、政府全体として取り組んでいくという方策もあるのではないかと考えています。

 また、中小企業の中には、グローバル市場での競争力を持つ技術力のある企業や、働きやすい企業、社会的にも大きな存在価値がある企業などもあります。そのような存在があることも社会に向けてPRを打ち出していくことも必要ではないかと考えています。

 こういったことも含めて、この検討会は、「働き方改革」だけではなく、「人手不足対応」も論点の一つとして御検討いただければと思っています。

 以上です。

○佐藤座長 では、植松委員、お願いします。

○植松委員 植松でございます。

 私は、地銀協の会長行というステータスで参加させていただいているのですが、今回は植松個人の意見としてお話をさせていただきます。

 まず、今回の働き方改革実現に向けた施策は、助成金、セミナー、相談所、専門家活用といった幅広い施策が含まれており、期待をしております。弊行でも近々にセミナーなどを開催して広めていきたいと考えております。

 その一方で、施策を実行するに当たっては、事業者目線の確保が非常に重要な要素だと思っております。今回、本件において金融機関の役割というのは施策をいかに素早く的確に中小企業の皆さんに届けていくかということだと思いますので、この点に絞って2点意見を述べたいと思っております。

 1つ目が、中小企業のオーナーは非常にご多忙な方が多いため、発信する情報を絞り込むことが非常に重要だと思います。業種、規模を問わず多くの企業に共通する課題を解決する施策については、金融機関を通じた制度周知は有効だと思いますが、その場合、準備いただく制度周知用のパンフレットは、多忙な経営者が予備知識なしでも容易に理解できる内容、例えば、企業課題とそれに対するソリューションとしてどのような支援制度があるかが一目でわかるような見せ方とするのがよいと思います。

 2つ目は、相談窓口の件でございます。本日、社労士の先生方のお話を伺いましたが、中小企業診断士の方々も生産性向上に関する幅広い知見をお持ちでいらっしゃるので非常にいい窓口になると思います。また、窓口を都道府県別に設ける場合もよくありますが、効率的に運用する観点から、全国共通の窓口とし、電話やインターネットで相談を受けるようにしてはどうかと思います。これは、最近の取り組みであるテレワークのような形態での対応も検討できると思います。

 最後になりますが、中小企業はそもそも人手不足という大きな問題がありますので、支援センター、アドバイザーの方々におかれては、相談ということだけではなくて、計画作成、実務的な支援といったことまで踏み込んでやっていただけると、企業の皆さんは大変助かるのではないかと思います。

 以上です。

○佐藤座長 中小企業の人はご多忙だということですが、きょうの事例で取り組むと成果が出るということで、ただ問題は、物によって時間がかかるものもあります。その辺はどうですか。時間との関係で、支援するときのアドバイスがあれば、どなたか。

○社会保険労務士法人中村・中辻事務所中辻様 おっしゃるとおり、確かにオーナーはご多忙な方が多うございます。一番初めに、時間がかかるということをお伝えしておきます。時間はかかるけれども、必ず成果が出るから待ってくれというお話をします。大体3年はかかると思いますという話をして、実際に3年が2年になって1年になればいいわけで、まずは3年はかかるという話をして、あと、スモールステップを踏むようにしております。小さい成果を出して、それができましたねというふうに、それを社長にお伝えすると納得していただく。後は粘り強い社長との話し合いが私ども社労士のある意味、いいところかもしれませんので、そういったところでやらせていただいています。

○佐藤座長 時間と小さな成果、すぐ出るようなものもちゃんと見せるようにするということですね。お三方、何かありますか。いいですか。

 では、北浦委員。

○北浦委員 北浦です

 私からは政策的な観点で申し上げしたいと思います。2番目のところで働き方改革の環境整備ということが出ているわけで、これはかなめだと思いますので、ぜひ推進をお願いしたいと思います。

 特に注目したいのは、3番目、いわゆる産業保健機能の強化という問題です。ほかの同一賃金にしても時間外労働についてもまだ法案が通ってからという問題がありますが、実は3番目については安全衛生法の省令が既に先行して出ているわけで、かなり具体的にいろんな施策ができ上がっているわけです。

 そういった意味で言えば、ここのところの省令による施策の実効性を高めるということもこの中にもう少し大きく入れていただいてやっていただきたい。これは規模の問題もありますので、必ずしも小規模の方まで全部適用されるわけではありませんが、その精神というものを伝えていくのは大事と思います。

 とりわけ、中小ということになりますと、産保センターについては、都道府県センターはよろしいのですが、地域センターということになると、その活動実態が本当にちゃんと合うのかどうか、そういった点も含めて実効性を高めていただくことが大事だと思います。

 特にこの場合、大事なのは、フィジカルな面だけではなくてメンタルヘルスの問題、これはやはり一つ認識を入れていただきたいと思います。既に対策はいろいろ出てきているわけですが、私が注目しているのは、メンタルヘルスにおいては、これは厚生労働省だと思いますが、「こころの耳」というホームページがあるわけです。ああいう情報提供のようなものがもっと健康対策全般に、厚生労働省なのですから、そういうフィジカルな意味の情報というものも企業に与えていただく。いわゆる監督指導も大事ですが、そういったような情報提供も健康管理への機運を高める。今、企業の規模の大きいところでは健康経営とか、そういうことがたいへん話題になっていますが、その精神はどの企業も同じだと思いますので、この点が一つあります。

 2点目は、ここには書いていないのですが、一番問題になりますのは、先ほどの御発表にもありましたように、トップの意識を変える、これは非常に大事だと思います。この問題に限らず、いろんなところでトップ、トップと言われるのですが、働き方改革、特に時短関連のところで非常に大事だと思うのは、企業における価値観を変えるということです。トップがそういう認識を持っていただけば、人事評価とか、いろんな面に絡んできます。企業の従業員の行動にかなり影響を与えていくわけなので、そういった観点からも、単なるお題目を並べるという話ではなくて、企業における価値観を変える、そこのところを注目していただきたい。何となく朝の挨拶で言えばいいとか、年頭で言えばいいみたいな感じになってしまうと、メッセージを伝えるという意味に変わっていくわけです。この辺のところは企業によって違いがありますが、やはりそこの点が大事だと思います。

 同じようなことが風土改革でも言われるわけですが、中小企業の事業承継はすごく大事だと思っています。これは先ほどもいろいろ御説明があったのですが、企業の技能継承の問題も考えていかなければいけない。特に中小の場合ですと、ベテランがいなくなると譲る人がいない。せっかく若い人が来ても、そこにつながらない。この問題が大きいわけです。そこのところをつなげる対策というものをどう考えるか。実はコミュニケーションが下手で、できないというのがあって、建設の場合なども雇用管理改善のところではそこに注目した対策を打ち出しています。同じようなことが中小全般にも言えると思っています。

 以上です。

○佐藤座長 トップのところをどう変えるか。管理部門が変えたいと思ってもトップをどうするか。特に中小の場合はオーナーがいたり、これは外からやらなければなかなか変わらないかもしれない。それは確かに大事な点だと思います。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、柴田委員。

○柴田委員 柴田です。

 きょう聞かせていただいて、感じたことだけお話しさせていただきます。三重県のヒアリングにも来ていただいてお話はしたのですが、1つ目に、ITに詳しい社労士や税理士は一体どこにいるのだろうというのが正直わからないと思います。IT投資をしたいと思っていても、それをやっている社労士や税理士が三重県内のどこに何人いるのか、知りたいというのが一つです。

 当社はどう探したかというと、三重県は、メーンバンクは百五銀行がほとんどですので、百五銀行にお願いしました。金融のほうで探していただいて、先生を御紹介していただいたということもあります。IT投資に詳しくない先生とずっとやっているとアナログのまま抜け出せなくて、社長もアナログの頭のままになってしまいます。私たち会計をやる実務の担当者としても、会計ソフトが違うとか、データ連携がいつまでたってもできないので、私たちの手間がふえるということも一つあります。

 県のヒアリングでも言わせていただきましたし、立石さんからもお話がありましたが、商工会議所だけに頼らずに県や市町村とも連携していただければ、商工会だけに負担がかからないということもあると思います。私が今、実際に三重県で一緒に活動している方ですが、三重県のワーク・ライフ・バランス推進サポート事業の1期目で一緒に取り組んだ方の社長が新たな自社のビジネスモデルとして働き方改革を進めていく会社をつくっています。私もそうです。空いた時間で副業を始めて、今、働き方改革の会社をしています。民間も一緒になって広めていけば、まさに民間企業が自社で取り組んだ課題ですので、より具体的に指導というか、アドバイスしやすいのではないかと思っています。

 それから、この間、社労士の先生とセミナーをさせていただいたのですが、社労士の先生からすごくいいお話がありました。人手不足は、先ほど塚本さんから「探している」というお話がありましたが、今いる人材を戦力化するということをもっと考えてもいいのではないかというお話がありました。例えば三重はパートがとても多いのですが、松阪もそうですけれども、12月になると御主人の調整で休むのです。当社ですと12月に、インフルエンザの時期、一番繁忙期で、そのときに休みたいと言われると一気にパートがいなくなります。なぜ103万円の壁にこだわっているのか、そこのきちんとした説明をして、うちの場合は4名の方が保険に加入していただいて戦力になっていただきましたので、そこを防ぐことができました。それも社労士の先生と一緒にやらせていただいたということがあります。

 恐らく、社内で働いている女性パートの方は、税金のことがきちんとわかっていないだけで単純に103万円の壁で縛られている方がいらっしゃると思います。そういう方を活用すれば、社員との時間の分かち合いができ、社員ができなかった残業をその方々に負担していただいて生産性を上げるという方法も一つあるのではないかと思いました。

 以上です。

○佐藤座長 前半のほうのサポートをお願いする専門家の人たちも能力のばらつきが大きいのは事実ですね。正直言って、そこをどうするか。頼むほうからすれば、いい人をどう選ぶかという話もあって、確かに難しいところがあるのは御指摘のとおりだと思います。どうぞ、立石委員。

○立石委員 先ほど言ったとおりで、業務改善することによって人手不足対応ができます。この施策を進める上で大事なのは、業務改善することによって人手不足対応ができたことも成果だということを、この中に入れておかないと、政策評価するときに困ると思うのです。人手が減っていく中で、人手がふえなかったら評価しないというのではなくこれを評価の中に今の段階から入れておくということです。

 ダブルワークの話も出たので申し上げます。役所の生産性向上についてです。本当に役所の生産性向上を霞が関がや っていただいたら、地方も変わっていきます。おりていきます。それをちゃんとやっていただきたいです。また、役人の方々にもダブルワークを認めることが重要です。これだけの能力ある方々にダブルワークしていただくほうが絶対いいですよ。そこまで含めたところの議論をして行かなければならないと感じています。役所の生産性向上、ダブルワークを考える、この二つの議論も続けて下さい。それから、くどいようですが、今後のPDCAKPIを考える上で、業務改善することによって、人手不足が解消になったのだということを評価に入れることが大事かと思われます。

 以上です。

○佐藤座長 どうぞ。

○藻谷委員 今、配られたこの中には、やはり役所側の業務改善、特に中小企業からの受付窓口業務のIT化、クラウド化みたいなことをどこかに入れておけばいいと思いますが、入っていませんね。いきなりそんなことを言われても困るかもしれませんが、ほかの政策でもぜひお考えになったほうがいいのではないか。

 ちなみに、私は個人事業者なので、マイナンバーをやっているのですが、毎回、マイナンバーカードをPDFにして送って、これでやってくれよと思うのですが、一々手書きで記入しろ、その際には写真を撮れ、どこのこうのと、一人でやっているからいいのですが、仮に人を雇ってやっている場合、一人の人間の人件費がそれで逆に埋まってしまう可能性があります。人がいないので、私は拒否しているのですけれども、いるとついやらせますね。マイナンバーなどは氷山の一角で、非常にたくさんあると思っております。その点ぐらいはせめて何か取っかかりでも書いて、解釈できるところでもないのかと思いながらずっと拝見しておりました。

○佐藤座長 あとお二方ぐらいかもしれませんけれども、何かありますか。どうぞ、竹内委員。

○竹内委員 1回目に出ていなかったので、わからないところがありますが、話を聞いていて、小規模事業者の方の生産性とか出てきます。文章の中には、小規模事業者こそ生産性や伸び代が大きいと書かれていまして、確かにそのとおりの部分もあるのですが、そもそも生産性が低いことをやっているから小規模事業者なのですね。しかも、生産性が低いということに結構意味があったりします。例えばコンビニだと、いかに在庫の管理率を上げるかということを考えて品物を絞っていますが、中小の雑貨屋みたいなところだと年に1個しか売れないようなものを置いておくわけです。それがあるからお客さんがふえてくるというのがあります。余り効率ばかり求めてしまうと、その企業でなくてもいいではないかとなってしまいかねないということがあるので、もう少しその辺は配慮してほしいと思います。

 もちろん、そうしたビジネスはひょっとしたら要らないかもしれない。ホームセンターがあればいいということがあるかもしれないのですが、小規模企業の中でこれから伸びていくタイプの小規模企業も存在するのですが、小売店でいくと、これからの日本の5年後、10年後を考えたときに、EC化率はどんどん上がっていくと思います。アメリカや中国とか、ほとんどECで買うようになってきています。そうすると、人口が減っていく、リアルの店舗で売り上げも減っていくという状況の中で、ちょっとした改善をしても生産性向上はあり得ないです。もっと抜本的な改革ということも視野に入れないと、とりあえず目先の生産性改善はできるかもしれないけれども、もっと長期で考えたときに大丈夫かなという心配があるのが一点です。

 もう一点は、人手不足の関係です。人手不足と一律に言うのですが、その原因は幾つかのパターンがあると思います。事業が伸びていて人材の供給が追いついていないというケース、これは働き方を工夫する、業務見直しで対応できるかもしれません。余り人気がない職種、仕事としては需要があるのだけれども、なり手がないという業種、それはきょうお話のあったような働き方改革で本当に防げるのかという気がします。例えば介護がそうですね。介護需要はこれからどんどんふえていくにもかかわらず、介護の供給能力は低いです。今月から外国人の介護ビザを創設しましたが、果たしてどれだけ外国人でカバーできるのかわかりません。そういった業種はちょっと違う対策が求められるのではないかというのがあります。

 あと、地域によっては、そもそも絶対的に人がいないというところも中にはあると思いますので、人手不足を十把一からげにして、何かこうすれば対策できますというのはちょっと違和感があります。特に小規模な企業に関してはそれでうまくいくのかというのがありますので、そこも少し考えていただければと思います。

○佐藤座長 地域で考えると、奪い合いという状況があるところだと、どこかが採るとますます採れなくなる。改善したところをつくっていくとますます採れなくなる企業をつくるというのが実態なので、余りそういうことを考えていないというのは確かにもう一つ。

○竹内委員 それはしようがないとは思います。

○佐藤座長 しようがない。そういう意味では、実はそこは撤退してくれということなのですね。撤退がいいと考えるかどうかね。

○竹内委員 それが嫌だったら、新しく自分で事業を開発して生き残ることを考えなくてはいけないと思います。

○佐藤座長 では、中澤さん。

○伊藤委員代理全国中小企業団体中央会常務理事中澤様 伊藤がきょう欠席で、机上配付ということで伊藤の意見はタブレットに入っていると思います。先ほどのお話の中にありましたように、予算をいろいろつけていただいて感謝する次第でございます。助成金などの政策については、そこにも書いてございますが、重複感、複雑感というのがあるので、ぜひともこれを解消していただきたいということです。

 それから、業種別の取り組みについて、きめ細かい対応をしていただきたいということで、地域の雇用・労働環境に急激な悪影響が出現しないよう、拙速でない丁寧な施策展開をしていただきたいということでございます。

 先ほどのお話の中でございましたけれども、生産性向上について、事業承継も生産性向上の一つの取り組みであるという意識の御発表がありましたが、まさにそうだと思いますので、ぜひとも事業承継の円滑化ということについても御支援をいただければありがたいと思います。

 今回、いろいろと膨大な予算をつけていただいているわけでございます。一方で、働き方改革自体は、制度そのものを変える、法律改正を伴ったものでございますので、中小企業としても喫緊の課題であるということは理解できているわけですが、対応が非常に難しい部分があろうかと思います。

 それから、施策というものは効果が出るまでに相応のタイムラグがあります。先ほどのお話ではないですが、3年間ぐらいかかるというお話がございました。また、施策自体はあくまで呼び水であるということも事実であろうかと思いますので、その辺のところで全ての対象者に均等にすることも極めて困難であるということも御理解をいただきたいと思っている次第でございます。

 変な話ですが、働き方改革が労務費の増加につながって、労務倒産というのはもちろんですが、あるいは企業のダウンサイジングにつながって縮小することのないような方向で進めていただければありがたいと思っております。

○佐藤座長 では、乾さん。

○小野木委員代理全国商工会連合会専務理事乾様 商工会連合会の小野木の代理できょうは参りました。

 今ほど小規模企業に関する御意見も出ましたので、9割は小規模企業で構成されている商工会、黙ってはおれないと思ったのですが、例えば先ほどのまとめのときに、生産性向上でいろんなジャンルをまとめておられました。我々、商工会議所も含めてですが、長い間、指導の立場で地域の中小・小規模企業に対応して伴走型支援をやってきました。業務改善でかなりの部分が読み込めるといいますか、分類できるのではないかと思います。

 ところが、人手不足は最近特に起こってきた話で、さらには働き方改革という大きなテーマが追加されたわけです。必ずしも商工会だけ、会議所だけで全部をこなせるわけではないということでございますので、体制整備の中に盛り込まれておりますが、いろいろネットワークを充実させて、社労士さんが得意な部分、税理士さんの得意な部分、いろいろございますし、従来の生産性向上という観点で、経営指導員、中小企業診断士、商工会などが行ってきた機能をお互い両方高めていくというネットワークの整備をいただくことが大事だと思います。いかんせん、商工会も仕事が地方創生などで目いっぱいでございまして、先ほど立石委員から御指摘のあった一環でございますが、この新たなテーマをどうこなしていくか、大変頭が痛いところです。ぜひ追加的な御支援をお願いしたいと思います。

 もう一つは、先ほど厚生労働省からのいろいろな施策の御説明がございました。予算の多い少ないはともかくとして、かなりメニューは充実してきていると思います。従来からあったものも多いのですが、それは率直に我々も評価したいと思っております。どなたかがおっしゃっていました手続が物すごく煩雑であるとか、あるいは、ある施策とある施策の関係性がよくわからないとか、地域の小規模企業の立場からするとよくわからないというのがこれまでの率直な感想でございました。使い勝手のよさ、あるいは手続の簡素化といったものもあわせて運用面でも御検討いただければというのが小規模企業の本音の部分でございます。それもぜひお願いしたいと思います。

 それと、前段階で情報の徹底がないという御指摘もありましたが、それもまた地域の小規模企業の実態でございます。法令遵守の御指摘すらございましたが、それをうまく指導していくのもこういう指導機関のネットワークの役割だろうと思います。いかにいろんな対策の情報徹底をし、さらにそれから出てくるいろいろな取り組み方をうまくリードしていくかということで、相談窓口のネットワークというのが決め手かなと思いますので、改めてその点は御理解をいただきたいと思います。

 ほとんど地域の小規模企業というのは、新聞報道でいろいろ働き方改革の言葉が躍っておりましたが、一体これは何だという懸念ばかり高まって、理解が徹底しないというのが現状でございますので、これからも急いで我々も含めて努力していきたいと思っております。

 以上でございます。

○佐藤座長 時間ということでよろしいですか。本日の検討会はここまでにさせていただいて、事務局におかれましては、本日の議論を踏まえて政策の検討を引き続きお願いしたいと思います。

 それでは、次回の予定について事務局から御説明いただければと思います。

○奈尾労働政策担当参事官 今後の会議等につきましては、事務局から御連絡させていただきたいと思います。

○佐藤座長 活発な御意見、どうもありがとうございました。遠くから来ていただいた方もいらっしゃいますが、どうもありがとうございました。


(了)

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